説明

入力装置

【課題】小型で薄型の入力装置を構成でき、操作部を操作して動作部材の変形を検出する際、操作力により基板などとの接続部に過大な力が作用するのを防止する。
【解決手段】下部ケース2の凹部24内に動作部材4が収納され、蓋体3が固定される。動作部材4は、4隅に固定部42が設けられ、この固定部42が下部ケース2の凹部24の底面24aと蓋体3とで挟持されて固定される。動作部材4には、操作部41の周囲の4方向に、前記固定部42よりも厚さ寸法の薄い変形部44a,44b,44c,44dが設けられ、この変形部に歪み検出素子が取り付けられている。操作ノブ41aを操作して変形部を変形させたときに、その力がケース内にのみ作用し、接続端子61,62,63,64と基板などとの接続部に過大な力が作用しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部から与えられる操作力で変形する動作部材と、前記動作部材の変形を検出する検出素子を備えた入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
パーソナルコンピュータの操作部には、キーボード装置とともに、棒状の操作部が突出した入力装置が実装されている。この入力装置は、棒状の操作部の周囲に、4方向に延びる変形部が設けられ、この変形部に歪み検出素子が貼られている。前記操作部を指で倒すと、4方向に延びる変形部のいずれかが変形し、この変形量が前記歪み検出素子で検出されて、操作部が倒された方向および操作部に加えられた荷重の大きさに基づいて、X−Y座標データとして出力することができる。
【0003】
従来の前記入力装置は、操作部と変形部および固定部を有し、固定部が板金で形成された支持板に固定されており、この支持板がパーソナルコンピュータの操作部において、キーボード装置の基板などに固定されている。そのため、入力装置そのものが大きくなり、また前記支持板を、これを実装するキーボード装置の基板などの構造に対応するように、個別に設計して製造する必要があった。
【0004】
以下の特許文献1ないし3に記載の入力装置は、操作部と変形部と固定部とが一体に形成され、前記変形部に歪み検出素子が取り付けられている。そして、操作部と変形部と固定部とが一体に形成された部材を、直接に基板などに実装できるようにしている。
【特許文献1】特開2001−331270号公報
【特許文献2】特開2001−331271号公報
【特許文献3】特開2000−267803号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1ないし3に記載のように、操作部と変形部と固定部とが一体に形成された部材を、直接に基板などに実装できるようにすると、入力装置を小型にでき、入力装置を複数種類のキーボード装置に共通に使用することが可能になる。
【0006】
しかし、特許文献1ないし3に記載の入力装置は、いずれも前記部材の固定部を直接に基板に固定している。そのため、操作部を操作して変形部に歪みを与えようとしたときに、前記固定部にも応力が作用し、固定部と基板との固定構造を破壊しかねない。特許文献1と特許文献2に記載のものは、前記固定部を単に半田付けで基板などに固定しているため、操作部を操作したときに、半田付け部分が破壊されやすい。また、特許文献2に記載のものは、入力装置を固定する専用の金具が必要となるため、入力装置を基板などの固定する固定構造が複雑になる。
【0007】
また、特許文献1ないし3に記載のものは、いずれも、変形部と固定部とが同じ厚さで一体に形成されているため、操作部を操作したときに歪みを変形部に集中させることが困難であり、操作力が固定部に直接に作用して、固定部と基板などとの接続部を破壊しやすい。
【0008】
さらに、従来の入力装置は、前記変形部が外部に露出している。よって、この変形部に外部の部品や機構などが当たって、変形部に少しでも力が作用すると、検出素子が誤動作するおそれがある。
【0009】
本発明は上記従来の課題を解決するものであり、小型で、実装しやすく、しかも操作力によって実装部を破壊することが生じにくい入力装置を提供することを目的としている。
【0010】
また、変形部が外部に露出することなく、変形部に誤って外力が作用することが生じにくい入力装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、ケースと、このケース内に収納された動作部材と、前記動作部材の変形を検出する検出素子とを有し、
前記動作部材は、操作部と、固定部と、前記操作部に作用する操作力で変形可能な変形部とが一体に形成され、前記検出素子が前記変形部に設けられており、
前記固定部が、前記ケース内で固定され、前記操作部および前記変形部が、前記ケース内で動くことが可能とされていることを特徴とするものである。
【0012】
本発明の入力装置は、動作部材がケースの内部に保持され、このケースがキーボード装置の基板などに実装される。そのため、動作部材の操作部に操作力が作用し、変形部に歪みが与えられたときに、ケースが前記基板などから剥がれにくい。またケースの寸法を小さくすることで、小型の入力装置を構成しやすい。さらに、同じ入力装置を、複数種類の基板などに共通に実装することが可能である。
【0013】
本発明では、前記ケースは、凹部を有する下部ケースと、前記凹部を覆う蓋体とを有しており、前記動作部材が前記凹部内に挿入されて、前記動作部材の前記固定部が、前記凹部の底部と前記蓋体とで挟まれて固定されている構造が好ましい。
【0014】
この入力装置は、組み立て作業が容易であり、しかも動作部材の固定部を、ケース内でしっかりと固定することができる。
【0015】
この場合に、本発明は、前記動作部材は、中央部に前記操作部が設けられ、前記中央部よりも外側の複数箇所または前記中央部を囲む全周に前記固定部が設けられており、前記固定部が前記変形部よりも厚く形成されていることが好ましい。
【0016】
動作部材の変形部を固定部よりも薄く構成することにより、操作部に操作力が作用したときに、変形部に歪みを集中させることができ、歪み検出素子から大きな検出出力を得ることができる。しかも、操作力により固定部に大きな応力が与えられるのを防止できる。
【0017】
また、本発明は、前記動作部材の前記変形部が、前記ケースの内部に密閉されていることが好ましい。変形部がケースの内部に収納されており、好ましくは密閉されていることにより、誤って外力が変形部に作用するのを防止できる。
【0018】
さらに、本発明は、前記動作部材には、可撓性基板が貼られ、前記可撓性基板の前記変形部に重ねられた部分に前記検出素子が実装されていることが好ましい。
【0019】
この構造では、動作部材に可撓性基板を貼着するのみで、変形部に歪み検出素子を実装できる。なお、本発明では、前記検出素子が、動作部材の変形部に直接に貼着されているものであってもよいし、検出素子が、変形部に、印刷工程などで直接に形成されているものであってもよい。
【0020】
さらに、前記ケースには、外部へ突出する端子が固定されており、前記検出素子が前記端子に接続されている構造が好ましい。
【0021】
前記ケースに端子を設けることで、入力装置を、キーボード装置の基板などに容易に実装できるようになる。
【0022】
この場合に、前記端子の先部が、前記ケースの底面と同一面上に位置していることが好ましい。この構造では、端子の先端を基板の表面のランド部などに半田付けしたときに、ケースの底面が前記基板の表面に接する。そのため、操作部が操作されたときの力が、ケースと基板との当接部で受けられ、端子とランド部などとの半田付け部に大きな応力が作用するのを防止しやすい。
【0023】
また、本発明では、前記ケース内では、前記操作部と対向する位置にスイッチ機構が装備されており、前記動作部材には、前記操作部に進退自在に取り付けられたノブが設けられ、前記ノブで前記変形部を変形させることができるとともに、前記ノブを押圧することで、前記スイッチ機構を動作させることが可能に構成できる。
【0024】
また、本発明は、前記ケース内には、前記検出素子の出力を処理する回路が実装された回路部が設けられているものとすることも可能である。
【0025】
あるいは、前記ケース内に、前記回路部に代えてあるいは前記回路部と共に、パーソナルコンピュータなどのホスト機器との間で信号を授受するインターフェースを有する回路が実装されていてもよい。
【発明の効果】
【0026】
本発明の入力装置は、小型に構成でき、複数の機器に共通に実装することも可能となる。また、操作部に操作力が作用したときに、キーボード装置の基板などに対する取付け部に破壊力が作用しにくい。また、操作していないときに、変形部に外力が作用するのを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
図1は本発明の第1の実施の形態の入力装置1を示す斜視図、図2は前記入力装置1の分解斜視図、図3は、動作部材4と可撓性基板5を背面側から見た斜視図、図4は前記入力装置1の回路図、図5は前記入力装置1の半断面図である。
【0028】
図2の分解斜視図に示すように、第1の実施の形態の入力装置1は、下部ケース2と、上部ケースである蓋体3とを有しており、下部ケース2と蓋体3とでケースが構成されている。そして、下部ケース2と蓋体3との間に、動作部材4と可撓性基板5とが収納されている。
【0029】
前記下部ケース2は、電気的に絶縁な合成樹脂材料で形成されている。図2および図5に示すように、下部ケース2は、下面21と上面22が平面であり、下面21と上面22は互いに平行である。また、第1の外側面2aと第2の外側面2bは互いに平行な平面であり、第3の外側面2cと第4の外側面2dは互いに平行な平面である。第1の外側面2aおよび第2の外側面2bと、第3の外側面2cおよび第4の外側面2dは、互いに直交している。よって、下部ケース2は、平面形状がほぼ正方形であり且つ幅寸法よりも高さ寸法が小さい薄型形状である。なお、下部ケース2の下面21に、入力装置1を位置決めするための突起が一体に形成されていてもよい。
【0030】
下部ケース2の上面22の四隅には、蓋体3を固定するための突起23が設けられている。それぞれの突起23は、円柱形状であり、合成樹脂により下部ケース2と一体に形成されている。
【0031】
下部ケース2には、上面22に開口する有底の凹部24が形成されている。凹部24は、互いに平行に対向する内側面24bと内側面24cおよび底面24aで囲まれる中央の領域が、前記動作部材4を収納する収納領域である。また、前記凹部24は、前記収納領域から、第1の外側面2aに向けて延長する保持領域25aと、前記収納領域から、第2の外側面2bに向けて延長する保持領域25bを有している。前記底面24aは、前記収納領域から前記保持領域25aおよび保持領域25bに向けて連続する平面である。
【0032】
前記下部ケース2には、接続端子61,62,63,64が取り付けられている。この接続端子61,62,63,64は、前記下部ケース2を成型する際に、インサートされたものである。
【0033】
接続端子61,62,63,64は、導電性の金属板で形成されている。接続端子61と62は、前記保持領域25aにおいて、凹部24の底面24aとほぼ同一面で露出する接続片61a,62aと、これら接続片61a,62aから垂直に曲げられたクランプ片61b,62bを有している。接続端子63,64は、前記保持領域25bにおいて、底面24aとほぼ同一面で露出する接続片63a,64aと、これら接続片63a,64aから垂直に曲げられたクランプ片63b,64bを有している。
【0034】
また、下部ケース2には、FG端子66,66がインサートされている。このFG端子66,66は、静電対策用であり、その一部66a,66aが、下部ケース2の上面22に露出している。
【0035】
蓋体3は、金属板であり、その形状は、下部ケース2の平面形状とほぼ一致している。蓋体3には、下部ケース2の4箇所に形成されたそれぞれの前記突起23に対応する位置に固定穴31が形成されている。また蓋体3の中心には操作穴32が開口している。
【0036】
前記動作部材4は合成樹脂材料で一体に形成されている。図2と図3および図5に示すように、動作部材4は平面形状がほぼ正方形であり、対向する側面4a,4bおよび対向する側面4c,4dを有している。側面4cと側面4dの間隔は、下部ケース2の凹部24の内側面24bと内側面24cとの間隔とほぼ位置しており、動作部材4は、凹部24の収納領域内に動くことなく保持される。
【0037】
図3では、動作部材4の側面4cと側面4dとの中点を通り側面4cおよび側面4dに平行な軸をX軸として示し、動作部材4の側面4aと側面4bとの中点を通り側面4aおよび側面4bに平行な軸をY軸として示している。
【0038】
動作部材4は、その中央部分が操作部41であり、操作部41では、上方に向かって延びる操作ノブ41aが一体に形成されている。動作部材4は、その4つの角部が固定部42である。固定部42は、前記X軸を挟んでその両側に距離を空けて配置されており、また固定部42は、前記Y軸を挟んでその両側に距離を空けて配置されている。図3に示すように、それぞれの固定部42には、裏面側に段差を介して突出する下部支持面42aが一体に形成されている。それぞれの下部支持面42aは、互いに同一平面上に位置している。図2に示すように、それぞれの固定部42には、表面側に段差を介して突出する上部支持面42bが一体に形成されている。それぞれの上部支持面42bは、互いに同一平面上に位置している。
【0039】
動作部材4には、4箇所に切欠き部43が形成されている。それぞれの切欠き部43は、動作部材4を上下に貫通する貫通穴である。切欠き部43は、それぞれの固定部42と前記操作部41との間に形成されている。すなわち、切欠き部43は、前記X軸を挟んでその両側に距離を空けた位置に形成され、また前記Y軸を挟んでその両側に距離を空けた位置に形成されている。
【0040】
図3に示すように、動作部材4には、側面4aの内側で且つ切欠き部43で挟まれた領域に第1のX方向変形部44aが形成され、側面4bの内側で且つ切欠き部43で挟まれた領域に第2のX方向変形部44bが形成されている。また、側面4cの内側で且つ切欠き部43で挟まれた領域に第1のY方向変形部44cが形成され、側面4dの内側で且つ切欠き部43で挟まれた領域に第2のY方向変形部44dが形成されている。
【0041】
動作部材4は、前記操作部41および4箇所の固定部42以外の箇所では、厚さ寸法が一定である。よって、各変形部44a,44b,44c,44dは、それぞれの固定部42よりも厚さ寸法が小さい。また、第1のX方向変形部44aから側面4aにかけて、X軸上で厚さ寸法が均一であり、第2のX方向変形部44bから側面4bにかけて、X軸上で厚さ寸法が一定である。第1のY方向変形部44cから側面4cにかけて、Y軸上で厚さ寸法が均一であり、第2のY方向変形部44dから側面4dにかけて、Y軸上で厚さ寸法が一定である。
【0042】
前記可撓性基板5は、動作部材4の裏面に接着固定されている。ただし、可撓性基板5は、動作部材4の裏面において4箇所の下部支持面42aを除いた位置に接着固定されている。
【0043】
前記可撓性基板5の裏面には、歪み検出素子Ra,Rb,Rc,Rdが固定されて実装されている。この歪み検出素子Ra,Rb,Rc,Rdは、伸び方向の歪み量に応じて電気抵抗が変化するものである。歪み検出素子Raは、第1のX方向変形部44aの裏面に取り付けられている。同様に歪み検出素子Rb,Rc,Rdは、それぞれ第2のX方向変形部44b、第1のY方向変形部44c、第2のY方向変形部44dの裏面に取り付けられている。歪み検出素子Raが、第1のX方向変形部44aの裏面において側面4a側にやや片寄った位置に取り付けられていると、第1のX方向変形部44aの変形量を効果的に検出できる。これは歪み検出素子Rb,Rc,Rdにおいても同じである。
【0044】
図3に示すように、可撓性基板5には動作部材4の側面4aから突出する突出部55が形成されており、この突出部55に一対の導電性のランド51,52が露出している。同様に、可撓性基板5には動作部材4の側面4bから突出する突出部56が形成されており、この突出部56に一対のランド53,54が露出している。可撓性基板5の面には、それぞれのランド51,52,53,54と、それぞれの歪み検出素子Ra,Rb,Rc,Rdを導通させる導電パターンが形成されている。可撓性基板5上で構成されている回路は図4に示す通りである。
【0045】
上記入力装置1の組み立て方法は、動作部材4の裏面に可撓性基板5を貼着した後に、動作部材4を下部ケース2の凹部24内に収納する。このとき、可撓性基板5に形成されたランド51を、接続端子61の接続片61aに対向させ、可撓性基板5のランド52を、接続端子62の接続片61aに対向させる。同様に、可撓性基板5に形成されたランド53と54を、接続端子63,64の接続片63a,64aに対向させる。さらに接続端子61のクランプ片61bと接続端子62のクランプ片62bとを折り曲げて、可撓性基板5の突出部55を保持し、ランド51,52と接続片61a,62aとを導通させる。同様にして、接続端子63のクランプ片63bと接続端子64のクランプ片64bとを折り曲げて突出部56を保持し、ランド53,54と接続片63a,64aとを導通させる。
【0046】
その後、下部ケース2の上に蓋体3を被せ、下部ケース2に設けられたそれぞれの突起23を蓋体3の固定穴31に挿入し、それぞれの突起23の先部を加圧しまたは加熱して加圧して潰すことにより、下部ケース2に蓋体3が固定される。
【0047】
このとき、蓋体3を、下部ケース2の上面22に密着させて固定する。これにより、図5に示すように、動作部材4の固定部42の下面に突出して形成された下部支持面42aが、下部ケース2の凹部24の底面24aに押し付けられ、蓋体3が、動作部材4の固定部42の上面に突出して形成された上部支持面42bに押し付けられる。動作部材4は、4隅に設けられた固定部42が、下部ケース2の底面24aと蓋体3とで挟まれて動かないように固定されている。一方、各変形部44a,44b,44c,44dは、下部ケース2の凹部24の底面24aから離れており、且つ蓋体3からも離れている。よって、各変形部44a,44b,44c,44dは、ケース内で変形可能である。また、図5に示すように、操作部41に設けられた操作ノブ41aは、蓋体3の操作穴32の内周縁から距離を空けて位置しており、操作ノブ41aを倒すように操作することが可能である。
【0048】
この入力装置1では、接続端子62およびランド52に電源電圧が与えられ、接続端子63およびランド53が接地電位に設定される。またFG端子66,66は、この入力装置1が搭載される機器本体側の接地部に接続される。操作ノブ41aが、下部ケース2の第1の外側面2aに向かう方向に倒され、または第2の外側面2bに向かう方向へ倒されると、第1のX方向変形部44aと第2のX方向変形部44bが変形し、この部分に取り付けられている歪み検出素子Ra,Rbの抵抗値が変化する。その結果、図4の回路図に示す歪み検出素子Raと歪み検出素子Rbとの中点の電位が変化し、この電位の変化は、ランド51から接続端子61を経て出力される。
【0049】
また、操作ノブ41aが下部ケース2の第3の外側面2cに向かう方向へ倒され、または第4の外側面2dに向かう方向へ倒されると、第1のY方向変形部44cと第2のY方向変形部44dが変形し、この部分に設けられた歪み検出素子RcとRdの抵抗値が変化する。よって、歪み検出素子Rcと歪み検出素子Rdとの中点の電位が変化し、この電位の変化が、ランド54から接続端子64を経て出力される。
【0050】
図5に示すように、この入力装置1では、動作部材4に設けられた各変形部44a,44b,44c,44dが、4隅に設けられた固定部42よりも肉厚が薄いため、操作ノブ41aが操作されたときに各変形部44a,44b,44c,44dが変形しやすい。図3に示すように、第1のX方向変形部44aは、両側が切欠き部43,43で挟まれ、且つ第1のX方向変形部44aは、固定部42よりも薄く形成され、さらに第1のX方向変形部44aから、動作部材4の側面4aに向けて、同じ肉厚が形成されている。そのため、操作ノブ41aを倒したときの変形量を多く確保できるようになる。これは、第2のX方向変形部44b、第1のY方向変形部44cおよび第2のY方向変形部44dにおいても同じである。
【0051】
そのため、操作ノブ41aに操作力を与えたときに、接続端子61と64から高感度の検出出力を得ることができる。
【0052】
なお、この実施の形態では、動作部材4の4隅に固定部42が設けられているが、この固定部42が、動作部材の外周の全周に連続して形成されているものであってもよい。
【0053】
この入力装置1は、下部ケース2の大きさの範囲内で構成されているため、全体が小型で薄型である。この入力装置1は、接続端子61,62,63,64、およびFG端子66,66を、キーボード装置の基板などに形成された導電パターンに半田付けすることで実装できる。前記のように、操作ノブ41aを倒すように操作したときに、その応力が、ケース内に設けられた動作部材4の変形部44a,44b,44c,44dに集中して作用するため、ケースから延びる接続端子61,62,63,64と基板との半田付け部に大きな応力が作用することはない。よって、操作ノブ41aを操作する操作力によって、半田付け部が破壊されることなどを防止できる。
【0054】
図6は本発明の第2の実施の形態の入力装置101を示す分解斜視図、図7は第2の実施の形態の入力装置101の下部ケースに取り付けられた接続端子を示す斜視図、図8(A)(B)は、入力装置101の動作別の断面図である。
【0055】
図6に示すように、第2の実施の形態の入力装置101は、動作部材104の変形部144a,144b,144c,144dが変形することで検知出力を得ることができ、この動作原理は、第1の実施の形態の入力装置1と同じである。
【0056】
図6に示すように、入力装置101は、下部ケース102を有し、この下部ケース102に凹部124が形成されている。下部ケース102の上面の4隅部にはそれぞれ突起123が一体に形成され、この突起123が蓋体103に形成された連結穴131に挿入されて、下部ケース102と蓋体103とが固定される。
【0057】
動作部材104は、下部ケース102の凹部124内に収納される。動作部材104は、第1の実施の形態の動作部材4と同様に、中央部に操作部141が形成され、その外側の4隅に固定部142が設けられ、それぞれの固定部142には、下部支持面142aと上部支持面142bが一体に形成されている。そして、下部支持面142aと上部支持面142bが、下部ケース102の凹部124の底面と蓋体103との間に挟まれて固定される。
【0058】
動作部材104には、それぞれの固定部142の内側に切欠き部143が形成されており、切欠き部143で挟まれた部分に、4箇所の変形部144a,144b,144c,144dが一体に形成されている。
【0059】
動作部材104の中心部には、上方に向けて突出する操作部141が一体に形成されており、この操作部141の中心に、上下に貫通する摺動穴141aが形成されている。この実施の形態では、操作ノブ146が動作部材104と別体に形成されている。図6および図8(A)(B)に示すように、操作ノブ146は、蓋体103の操作穴132の内部に位置し、操作ノブ146の基部の周囲に形成されたフランジ部146bが、蓋体103の中心部の隆起部133内に位置している。また、操作ノブ146は、動作部材104の操作部141の外周部に摺動自在に取り付けられており、操作ノブ146の中心に形成された押圧突起146aが、前記動作部材104の摺動穴141aに摺動自在に挿入されている。
【0060】
図6に示す可撓性基板105は、動作部材104の裏面に接着されており、この可撓性基板105に、図3に示すのと同じ歪み検出素子Ra,Rb,Rc,Rdが実装されている。それぞれの歪み検出素子Ra,Rb,Rc,Rdは、動作部材104の各変形部144a,144b,144c,144dの下面に取り付けられている。
【0061】
可撓性基板105の中央部には穴105aが形成されており、前記操作ノブ146に形成された押圧突起146aは、この穴105aを貫通している。
【0062】
この入力装置101では、下部ケース102の凹部124の底部にスイッチ機構が設けられている。このスイッチ機構は、導電性で且つばね性を有する板材でドーム状に形成された反転板171を有している。また、下部ケース102の凹部124の底面には、外側電極172と内側電極173とが設けられ、前記反転板171の外周縁が、前記外側電極172に導通している。
【0063】
図7に示すように、下部ケース102内には、前記外側電極172と一体のスイッチ端子172aと、前記内側電極173と一体のスイッチ端子173aが埋設されている。それぞれのスイッチ端子172a,173aは、下部ケース102の側面から外側へ突出している。
【0064】
図7に示すように、下部ケース102には、接続端子161,162,163,164が埋設されているが、これは、第1の実施の形態の入力装置1に設けられた接続端子61,62,63,64と同じである。また図7に示すFG端子166,166は、第1の実施の形態のFG端子66,66と同じである。
【0065】
この入力装置101は、図8(A)に示すように、操作ノブ146に押圧力を与えないと、反転板171の弾性力で、操作ノブ146が上方へ押し上げられている。また、図8(B)に示すように、操作ノブ146を押圧すると、操作ノブ146に形成された押圧突起146aによって反転板171が変形させられて、反転板171の中央部が内側電極173に当接し、外側電極172と内側電極173とが導通する。
【0066】
また、図8(A)ようにスイッチ機構がOFFの状態、または図8(B)に示すようにスイッチ機構がONの状態で、操作ノブ146を倒すと、動作部材104の変形部144a,144b,144c,144dが変形し、歪み検出素子RaとRbの中点電位が変化し、また歪み検出素子RcとRdの中点電位が変化する。
【0067】
この入力装置101においても、動作部材104は、4隅に設けられた固定部142が、下部ケース102の凹部124の底面と蓋体103との間に挟まれて固定され、操作ノブ146を操作すると、ケース内で、変形部144a,144b,144c,144dが変形する。よって、操作ノブ146に操作力を与えたときに、各接続端子161,162,163,164などと基板の導電パターンとの半田付け部に過大な力が作用するのを防止できる。
【0068】
また、図8(A)に示すようにスイッチ機構がOFFの状態で、操作ノブ146を倒したときと、図8(B)に示すようにスイッチ機構がONの状態で、操作ノブ146を倒したときとで、別々の入力信号を生成することが可能である。
【0069】
図9は本発明の第3の実施の形態の入力装置201を示す分解斜視図、図10は、回路部と可撓性基板を示す斜視図、図11は、入力装置201の断面図である。
【0070】
第3の実施の形態の入力装置201において、第1の実施の形態の入力装置1と同じ構成の部分は同じ符号を付して、その詳しい説明を省略する。
【0071】
図9および図11に示すように、下部ケース202の高さ寸法は、第1の実施の形態の下部ケース2よりもやや大きい。下部ケース202の上面22には、4箇所に突起23が一体に形成されており、この突起23が蓋体3の固定穴31内に挿入されて、下部ケース202と蓋体3とが固定される。
【0072】
下部ケース202には、第1の凹部224が形成されており、この第1の凹部224の底部には、4隅に支持台224aが一体に突出して形成されている。動作部材4は、下部ケース202の第1の凹部224内に収納される。このとき、動作部材4の固定部42の下面に突出する下部支持面42aが、それぞれの前記支持台224aの上に設置される。そして、蓋体3により、固定部42の上面に突出する上部支持面42bが加圧される。これにより、ケース内において、動作部材4は、その4隅の固定部42が、上下から挟まれた状態で確実に固定される。
【0073】
下部ケース202には、前記第1の凹部224の内部において、この第1の凹部224よりもさらに深く形成された第2の凹部225が設けられている。この第2の凹部225内に回路部207が収納されている。この回路部207は、多層基板の各面に能動素子などが薄膜形成された集積回路素子である。回路部207は正方形で、前記第2の凹部225も正方形であり、回路部207は、第2の凹部225内に動くことなく収納される。
【0074】
動作部材4の下面には、可撓性基板205が接着されている。この可撓性基板205の動作部材4に接着される面と逆側の面には、図3に示した歪み検出素子Ra,Rb,Rc,Rdが実装されており、それぞれの歪み検出素子Ra,Rb,Rc,Rdは、動作部材4の各変形部44a,44b,44c,44dの下面に取り付けられる。
【0075】
図10に示すように、前記可撓性基板205には、同じ可撓性基板で一体に形成された延長基板215が設けられている。そして、この延長基板215に前記回路部207が実装されている。図9に示すように、可撓性基板205が、動作部材4の下面に接着固定された状態で、延長基板215が可撓性基板205に重なるように180度反転するように折り畳まれ、その結果、回路部207が、前記第2の凹部225内に収納できるようになる。
【0076】
延長基板215には、3方向に延びるコネクタ部215aが設けられている。延長基板215には導電パターンが形成されており、回路部207の各電極は、この導電パターンを介して、コネクタ部215aの各ランド部に導通されている。そして、下部ケース202に設けられた複数の接続端子260のそれぞれが前記ランド部に半田付けなどで接続されている。
【0077】
前記回路部207には、図4の回路図の歪み検出素子Ra,Rbの中点電位を検出して、その電位の変化をX座標出力とする回路、歪み検出素子Rc,Rdの中点電位を検出して、その電位の変化をY座標出力とする回路、およびパーソナルコンピュータなどのホスト側機器と通信するインターフェースを備えた回路などが収納されている。よって、図9ないし図11に示す入力装置201をキーボード装置などに実装すると、入力装置201の各接続端子260から、X−Y座標データを含む、マウスの出力データと同等のデータを出力させることができる。あるいは、回路部207および、パーソナルコンピュータにインストールしたドライバーとで、入力装置201の出力をマウスの出力データと同等のデータに変換することができる。
【0078】
図12は本発明の第4の実施の形態の入力装置301を示す斜視図である。
この入力装置301は、動作部材304の上面の4箇所に操作突起341aが一体に形成されており、この操作突起341が、蓋体303に形成された4つの操作穴332のそれぞれから上方へ突出している。動作部材304では、前記操作突起341aが、変形部の上に形成されており、いずれかの操作突起341を押圧すると、その下の変形部が変形する。この変形が歪み検出素子により検出される。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の第1の実施の形態の入力装置を示す斜視図、
【図2】第1の実施の形態の入力装置の分解斜視図、
【図3】第1の実施の形態の入力装置の動作部材と可撓性基板を裏側から示す斜視図、
【図4】入力装置の回路構成図、
【図5】第1の実施の形態の入力装置の断面図、
【図6】本発明の第2の実施の形態の入力装置の分解斜視図、
【図7】第2の実施の形態の下部ケース内に埋設された端子の斜視図、
【図8】(A)(B)は第2の実施の形態の入力装置を動作別に示す断面図、
【図9】本発明の第3の実施の形態の入力装置の分解斜視図、
【図10】第3の実施の形態の入力装置に設けられた回路部と可撓性基板を示す斜視図、
【図11】第3の実施の形態の入力装置を示す断面斜視図、
【図12】本発明の第4の実施の形態の入力装置の分解斜視図、
【符号の説明】
【0080】
1 入力装置
2 下部ケース
3 蓋体
4 動作部材
5 可撓性基板
24 凹部
41 操作部
41a 操作ノブ
42 固定部
42a 下部支持面
42b 上部支持面
43 切欠き部
44a 第1のX方向変形部
44b 第2のX方向変形部
44c 第1のY方向変形部
44d 第2のY方向変形部
61,62,63,64 接続端子
Ra,Rb,Rc,Rd 歪み検出素子
171 反転板
172 外側電極
173 内側電極
202 下部ケース
205 可撓性基板
207 回路部
215 延長基板
224 第1の凹部
224a 支持台
225 第2の凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースと、このケース内に収納された動作部材と、前記動作部材の変形を検出する検出素子とを有し、
前記動作部材は、操作部と、固定部と、前記操作部に作用する操作力で変形可能な変形部とが一体に形成され、前記検出素子が前記変形部に設けられており、
前記固定部が、前記ケース内で固定され、前記操作部および前記変形部が、前記ケース内で動くことが可能とされていることを特徴とする入力装置。
【請求項2】
前記ケースは、凹部を有する下部ケースと、前記凹部を覆う蓋体とを有しており、前記動作部材が前記凹部内に挿入されて、前記動作部材の前記固定部が、前記凹部の底部と前記蓋体とで挟まれて固定されている請求項1記載の入力装置。
【請求項3】
前記動作部材は、中央部に前記操作部が設けられ、前記中央部よりも外側の複数箇所または前記中央部を囲む全周に前記固定部が設けられており、前記固定部が前記変形部よりも厚く形成されている請求項2記載の入力装置。
【請求項4】
前記動作部材の前記変形部が、前記ケースの内部に密閉されている請求項1ないし3のいずれかに記載の入力装置。
【請求項5】
前記動作部材には、可撓性基板が貼られ、前記可撓性基板の前記変形部に重ねられた部分に前記検出素子が実装されている請求項1ないし4のいずれかに記載の入力装置。
【請求項6】
前記ケースには、外部へ突出する端子が固定されており、前記検出素子が前記端子に接続されている請求項1ないし5のいずれかに記載の入力装置。
【請求項7】
前記端子の先部が、前記ケースの底面と同一面上に位置している請求項6記載の入力装置。
【請求項8】
前記ケース内では、前記操作部と対向する位置にスイッチ機構が装備されており、前記動作部材には、前記操作部に進退自在に取り付けられたノブが設けられ、前記ノブで前記変形部を変形させることができるとともに、前記ノブを押圧することで、前記スイッチ機構を動作させることが可能である請求項1ないし7のいずれかに記載の入力装置。
【請求項9】
前記ケース内には、前記検出素子の出力を処理する回路が実装された回路部が設けられている請求項1ないし8のいずれかに記載の入力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−59210(P2008−59210A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−234452(P2006−234452)
【出願日】平成18年8月30日(2006.8.30)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】