説明

入力装置

【課題】 特に、フレキシブルプリント基板の先端領域の縦幅を従来に比べて小さくできるともに各配線延出部の引き出し領域を幅細で形成することが可能な入力装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 フレキシブルプリント基板54は、先端領域54aと引き出し領域54bとを備える。第1端子部80及び第2端子部81は、横方向に間隔を空けて並設されている。第1配線延出部82a,82bは、第1端子部80における横方向の端部から前記横方向に向けて延出している。第2配線延出部83a,83bは、第2端子部81における横方向の端部から前記横方向に向けて延出している。横方向に向けて延出した第1配線延出部及び前記第2配線延出部が引き出し領域54bに向けて集約されるとともに、第1配線延出部及び第2配線延出部が、引き出し領域54bにて縦方向に向けて引き出されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材表面に透明導電層及び配線層が形成された下部基板及び上部基板と、各基板に電気的に接続されるフレキシブルプリント基板とを有し、特にフレキシブルプリント基板の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1ないし4には、基材表面に透明導電層及び配線層が形成された下部基板及び上部基板と、各基板に電気的に接続されるフレキシブルプリント基板とを備えた入力装置の構造が開示されている。
【0003】
図10に示すように、従来におけるフレキシブルプリント基板1には、先端領域1aに複数の端子部2と端子部2から引き出される配線延出部2aが形成されている。そして各配線延出部2aは集約されて幅細の引き出し領域1bに引き出されている。図10に示すように、各端子部2は横方向(X1−X2方向)に間隔を空けて配列されており、各配線延出部2aは、各端子部2の縦方向(Y1−Y2方向)の端部2bから縦方向に向けて引き出されている。フレキシブルプリント基板1の先端領域1aは、横方向に各端子部2が配列可能な幅寸法T1にて縦方向に比較的長い長さ寸法L1を有して形成される。
【0004】
このような形状のために、フレキシブルプリント基板1を下部基板及び上部基板の各基板3の接続部(図示しない)に電気的に接続したときに、フレキシブルプリント基板1の先端領域1aが長さ寸法L2だけ各基板3から外部にはみ出しやすくなる。このように比較的、横幅(X1−X2方向への幅寸法)もある先端領域1aの一部が、各基板3からはみ出すことで、はみ出した先端領域1aの部分を折り曲げようとすると、フレキシブルプリント基板1の各端子部2と各基板3の接続部との間に大きな剥がし力が加わりやすく、各端子部2と各基板3間の接続信頼性を低下させる要因となっていた。
【0005】
また、図10に示す従来の形状では、フレキシブルプリント基板1を外部に引き出すために、各基板3に対して引き出し空間3aを大きく形成しなければならない。このため、フレキシブルプリント基板1の引き出し部分での入力装置の強度が低下しやすい問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−58319号公報
【特許文献2】特開平10−312244号公報
【特許文献3】特開2005−251692号公報
【特許文献4】特開2008−21304号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明は上記従来の課題を解決するためのものであり、特に、フレキシブルプリント基板の先端領域の縦幅を従来に比べて小さくできるともに各配線延出部の引き出し領域を幅細で引き出すことが可能な入力装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明における入力装置は、下部基板と上部基板とが高さ方向に対向配置され、前記下部基板及び前記上部基板は、夫々、表面に透明導電層が形成された基材と、前記基材の表面にて前記透明導電層と電気的に接続された配線層とを有して構成され、前記下部基板に設けられた第1配線層は、フレキシブルプリント基板との接続位置まで引き延ばされて第1接続部を構成し、前記上部基板に設けられた第2配線層は、前記フレキシブルプリント基板との接続位置まで引き延ばされ、平面視にて前記第1接続部と重ならない位置にて第2接続部を構成しており、
前記フレキシブルプリント基板は、先端領域と引き出し領域とを備え、前記先端領域には、前記第1接続部に電気的に接続される第1端子部と、前記第1端子部から延出する第1配線延出部と、前記第2接続部に電気的に接続される第2端子部と、前記第2端子部から延出する第2配線延出部とを、有して形成されており、
平面視にて直交する2方向を横方向と縦方向としたとき、前記第1端子部及び前記第2端子部は、前記横方向に間隔を空けて並設されており、
前記第1配線延出部は、前記第1端子部における横方向の端部から前記横方向に向けて延出し、
前記第2配線延出部は、前記第2端子部における横方向の端部から前記横方向に向けて延出しており、
前記横方向に向けて延出した前記第1配線延出部及び前記第2配線延出部が前記引き出し領域に向けて集約されるとともに、集約された前記第1配線延出部及び前記第2配線延出部が、前記引き出し領域にて前記縦方向に向けて引き出されていることを特徴とするものである。
【0009】
本発明では、フレキシブルプリント基板における先端領域の縦幅を小さく形成することができるとともに、引き出し領域を幅細で引き出すことができる。よって本発明では、フレキシブルプリント基板に形成された幅細の前記引き出し領域のみを入力装置の端部や裏面から外部に出すことができる。このため、入力装置の端部等から外部に引き出された幅細の前記引き出し領域の部分を折り曲げても、各端子部と各接続部間に加わる剥がし力を小さくでき、各端子部と各接続部間の接続信頼性を効果的に向上させることができる。また本発明では、フレキシブルプリント基板を入力装置の端部や裏面から外部に出すのに必要な下部基板や上部基板に形成される引き出し空間を小さくすることができる。よって、入力装置の強度を高く保つことが出来る。例えばフレキシブルプリント基板の引き出し領域付近に入力装置の表面側から荷重がかかっても、その荷重によって入力装置の表面層が撓むのを抑制することができる。
【0010】
本発明では、前記第1端子部よりも前記縦方向に離れて第1領域が設けられており、前記第1端子部と前記第1領域間を分断する第1スリット部が形成されており、
前記第2端子部よりも前記縦方向に離れて第2領域が設けられており、前記第2端子部と前記第2領域間を分離する第2スリット部が形成されていることが好ましい。
【0011】
第1端子部は第1接続部に電気的に接続され、第2端子部は第2接続部に夫々電気的に接続されるが、第1端子部と第2端子部の接続位置は高さ方向で夫々異なっている。よって本発明のようにスリット部を設けることで、第1端子部及び第2端子部を夫々の接続部に接続する際、各端子部にかかる応力を緩和でき、より効果的に接続信頼性を向上させることができる。
【0012】
また本発明では、前記第1配線延出部は前記第1領域を通って引き回されており、前記第2配線延出部は前記第2領域を通って引き回されていることが好ましい。このように、第1領域及び第2領域を夫々利用して各配線延出部を引き出すことで、引き回しパターンを適切且つ簡単にできる。
【0013】
また本発明では、前記第1端子部及び前記第2端子部は夫々、複数個、設けられており、前記第1スリット部は、各第1端子部と前記第1領域との間に連続して形成されており、前記第2スリット部は、各第2端子部と前記第2領域との間に連続して形成されていることが好ましい。これにより、より効果的に、各端子部にかかる応力を緩和できる。
【0014】
また本発明では、前記先端領域には、前記第1端子部が2個、設けられており、前記引き出し領域から見て、遠い側に位置する前記第1端子部から引き回される第1配線延出部は、前記第1領域を通って前記引き出し領域に向けて引き回されており、近い側に位置する前記第1端子部から引き回される第1配線延出部は、前記第1領域を通らずに各第1端子部が形成されている領域側から前記引き出し領域に向けて引き回されており、
前記先端領域には、前記第2端子部が2個、設けられており、前記引き出し領域から見て、遠い側に位置する前記第2端子部から引き回される第2配線延出部は、前記第2領域を通って前記引き出し領域に向けて引き回されており、近い側に位置する前記第2端子部から引き回される第2配線延出部は、前記第2領域を通らずに各第2端子部が形成されている領域側から前記引き出し領域に向けて引き回されていることが好ましい。これにより、各第1配線延出部及び各第2配線延出部を先端領域から引き出し領域にかけて無理なく引き回しながら、フレキシブルプリント基板の先端領域における縦幅(縦方向への長さ寸法)を狭くできるとともに、各第1配線延出部及び各第2配線延出部を適切に引き出し領域に集約することが出来る。
【0015】
また本発明では、前記引き出し領域は、前記先端領域の前記横方向の端部に位置することが好ましい。これにより先端領域の縦幅を広げることなく、幅細の引き出し領域をフレキシブルプリント基板の端部に形成することができる。
【0016】
また本発明では、前記下部基板の表面には凹部が形成されており、前記凹部内に前記フレキシブルプリント基板が配置されることが好ましい。これにより、適切かつ簡単にフレキシブルプリント基板を下部基板と上部基板間に配置することができる。
【0017】
また本発明では、前記凹部の側面にはスロープ部が形成されており、前記スロープ部の表面に沿って前記第1配線層が形成されていることが好ましい。これにより適切に第1配線層を前記凹部内に配置でき、第1配線層の先端に位置する第1接続部とフレキシブルプリント基板の第1端子部間の接続安定性をより効果的に向上させることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の入力装置によれば、フレキシブルプリント基板における先端領域の縦幅を小さく形成することができるとともに、引き出し領域を幅細で引き出すことができる。よって本発明では、フレキシブルプリント基板に形成された幅細の前記引き出し領域のみを入力装置の端部や裏面から外部に出すことができる。このため、入力装置の端部等から外部に引き出された幅細の前記引き出し領域の部分を折り曲げても、各端子部と各接続部間に加わる剥がし力を小さくでき、各端子部と各接続部間の接続信頼性を効果的に向上させることができる。また本発明では、フレキシブルプリント基板を入力装置の端部や裏面から外部に出すのに必要な下部基板や上部基板に形成される引き出し空間を小さくすることができる。よって、入力装置の強度を高く保つことが出来る。また、引き出し空間から入力装置の内部に塵や水分等が侵入する不具合を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本実施形態における入力装置(タッチパネル)の分解斜視図、
【図2】図1に示す入力装置の部分縦断面図、
【図3】本実施形態におけるフレキシブルプリント基板の部分拡大平面図、
【図4】入力装置を構成する下部基板の一部を拡大して示した部分拡大斜視図、
【図5】図5(a)は、下部基板に設けられた第1接続部とフレキシブルプリント基板の第1端子部との接続部分を示す部分縦断面図、図5(b)は、上部基板に設けられた第2接続部とフレキシブルプリント基板の第2端子部との接続部分を示す部分縦断面図、
【図6】図5(a)と異なる構成であり、下部基板に設けられた第1接続部とフレキシブルプリント基板の第1端子部との接続部分を示す部分縦断面図、
【図7】フレキシブルプリント基板の外部への引き出し方の一例を示す部分縦断面図、
【図8】図8(a)は、本実施形態における入力装置の模式図、図8(b)は、比較例における入力装置の模式図、
【図9】第2実施形態におけるフレキシブルプリント基板の部分拡大平面図、
【図10】従来におけるフレキシブルプリント基板の部分拡大平面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、本実施形態における入力装置(タッチパネル)の分解斜視図、図2は図1に示す入力装置の部分縦断面図、図3は本実施形態におけるフレキシブルプリント基板の部分拡大平面図、図4は入力装置を構成する下部基板の一部を拡大して示した部分拡大斜視図、図5(a)は、下部基板に設けられた第1接続部とフレキシブルプリント基板の第1端子部との接続部分を示す部分縦断面図、図5(b)は、上部基板に設けられた第2接続部とフレキシブルプリント基板の第2端子部との接続部分を示す部分縦断面図、図6は図5(a)と異なる構成であり、下部基板に設けられた第1接続部とフレキシブルプリント基板の第1端子部との接続部分を示す部分縦断面図、図7は、フレキシブルプリント基板の外部への引き出し方の一例を示す部分縦断面図、図8(a)は、本実施形態における入力装置の模式図、図8(b)は、比較例における入力装置の模式図、図9は、第2実施形態におけるフレキシブルプリント基板の部分拡大平面図である。
【0021】
図1に示す入力装置20は、例えば、FP(Film-Plastics)構造の抵抗式入力装置を構成する。図1,図2に示すように入力装置20は、下部基板22、上部基板21、表面部材60及びフレキシブルプリント基板54とを有して構成される。なお図1には表面部材60を図示していない。
【0022】
図2,図3に示すように、下部基板22は、表面にITO等の透明導電層24が形成されたプラスチック基材(透光性基材)23と、透明導電層24に電気的に接続される第1配線層52とを有して構成される。
【0023】
ここで本実施形態では、「透光性」や「透明」は可視光線透過率が60%以上(好ましくは80%以上)の状態を指す。更にヘイズ値が6以下であることが好適である。
【0024】
図1,図2に示すように、上部基板21は、下部基板22と高さ方向(Z1−Z2方向)にて所定間隔を空けて対向している。上部基板21は、表面にITO等の透明導電層25が形成されたフィルム基材66と第2配線層45とを有して構成される。
【0025】
各配線層45,52は、入力領域20aの周囲に位置する非入力領域20bに形成されている。
【0026】
下部基板22や上部基板21に用いられる透光性基材はポリカーボネート樹脂(PC樹脂)やポリエチレンテレフタレート樹脂(PET樹脂)、ポリエチレンナフタレート樹脂(PEN樹脂)、環状ポリオレフィン(COP樹脂)、ポリメタクリル酸メチル樹脂(アクリル)(PMMA)等で形成される。
【0027】
下部基板22及び上部基板21に用いられる透明導電層は、ITO(Indium Tin Oxide)、SnO2,ZnO等の無機透明導電材料を、スパッタや蒸着等で成膜して形成される。又は、これらの無機透明導電材料の微粉末を固着したものでもよい。あるいは、有機透明導電材料として、カーボンナノチューブやポリチオフィン、ポリピロール等の有機導電性ポリマーをコーティングしたものでもよい。
【0028】
下部基材及び上部基材の表面に形成される配線層45,52は例えばAg塗膜をスクリーン印刷して形成されたものである。各配線層45,52は透光性基材の表面に形成されている透明導電層上に重ねて形成されている。あるいは配線層45,52の一部は、透明導電層が除去されて露出した透光性基材の表面に形成されてもよい。
【0029】
図2に示すように、下部基板22と上部基板21の間は、入力領域20aの外周に位置する非入力領域20bにて粘着層40を介して接合されている。粘着層40は、アクリル系両面テープやアクリル系粘着剤である。
【0030】
図2に示すように、入力領域20aでは、下部基板22と上部基板21との間に粘着層40は無く、空気層41が設けられている。
【0031】
図2に示す表面部材60は、表面層61と表面層61の下面に形成された加飾層62とを有して構成される。表面層61は、可撓性の透光性基材で形成される。加飾層62は、非入力領域20bに形成される。表面部材60と上部基板21との間は光学用透明粘着層(OCA)63を介して接合されている。
【0032】
操作者が図1に示す表面層61の表面に位置する入力領域20aを指やペンで下方向へ押圧すると、上部基板21が下方向へ撓み、入力領域20aに位置する下部基板22及び上部基板21の夫々の透明導電層24,25同士が当接する。このとき、各透明導電層24,25に電気的に接続された配線層45,52にて、透明導電層24,25同士の接触位置に対応した検出出力(電圧)を得ることができ、検出出力に基づいて入力領域20aでの操作位置を検知することが可能になっている。
【0033】
図1,図3に示すように、下部基板22に設けられた第1配線層52は、フレキシブルプリント基板54に形成される複数の第1端子部80,80との接続位置まで引き延ばされており、第1接続部52a,52aを構成している。
【0034】
また、図1,図3に示すように、上部基板21に設けられた第2配線層45は、フレキシブルプリント基板54に形成される複数の第2端子部81,81との接続位置まで引き延ばされており、第2接続部45a,45aを構成している。各接続部52a,45aは平面視にて重ならない位置に形成される。
【0035】
図3に示すようにフレキシブルプリント基板54は、横長(縦方向(Y1−Y2方向)に比べて横方向(X1−X2方向)に長い)で形成された先端領域54aと、引き出し領域54bとを備えて構成される。
【0036】
図3に示すように、先端領域54aには第1端子部80及び第2端子部81が夫々、2個ずつ設けられている。そして、各端子部80,81が横方向(X1−X2方向)に間隔を空けて並設されている。図3に示すように、2個の第1端子部80は先端領域54aのX2側に設けられ、2個の第2端子部81は先端領域54aのX1側に夫々、設けられている。
【0037】
図3に示すように、各第1端子部80の横方向(X1−X2方向)の端部80aから各第1配線延出部82a,82bが横方向に向けて延出形成されている。各第1端子部80と各第1配線延出部82a,82bとは一体として形成されている。また図3に示すように、各第2端子部81の横方向(X1−X2方向)の端部81aから第2配線延出部83a,83bが横方向に向けて延出形成されている。各第2端子部81と各第2配線延出部83a,83bとは一体として形成されている。なお各端子部及び各配線延出部はAg塗膜等で可撓性基材の表面に形成されたものである。例えば各配線延出部82a,83aは複数の可撓性基材間に位置しており、可撓性基材が除去されて露出するAg塗膜の部分が前記端子部80,81を構成している。
【0038】
図3に示すように、フレキシブルプリント基板54の先端領域54aには、各第1端子部80よりもY2側に離れて第1領域84が形成されている。また、先端領域54aには各第2端子部81よりもY1側に離れて第2領域85が形成されている。
【0039】
図3に示すように、各第1端子部80と第1領域84との間には、横方向(X1−X2方向)に向けて第1スリット部86が形成されている。第1スリット部86の両側に形成された穴86a,86aはスリットを形成する際の基準穴であり、無くてもよい。
【0040】
また、各第2端子部81と第2領域85との間には、横方向(X1−X2方向)に向けて第2スリット部87が形成されている。
【0041】
図3に示すように、引き出し領域54bから見て、遠い側に位置する第1端子部80から引き回される第1配線延出部82aは、第1領域84を通って引き出し領域54bに向けて引き回されている。一方、引き出し領域54bから見て、近い側に位置する第1端子部80から引き回される第1配線延出部82bは、第1領域84を通らずに第1端子部80が形成されている領域側(Y1側)から引き出し領域54bに向けて引き回されている。
【0042】
また、図3に示すように、引き出し領域54bから見て、遠い側に位置する第2端子部81から引き回される第2配線延出部83aは、第2領域85を通って引き出し領域54bに向けて引き回されている。一方、引き出し領域54bから見て、近い側に位置する第2端子部81から引き回される第2配線延出部83bは、第2領域85を通らずに第2端子部81が形成されている領域側(Y2側)から引き出し領域54bに向けて引き回されている。
【0043】
図3に示すように、各配線延出部82a,82b,83a,83bが引き出し領域54bに向けて集約されるとともに、集約された各各配線延出部82a,82b,83a,83bが引き出し領域54bにて縦方向(Y1−Y2方向)に向けて引き出されている。
【0044】
図4に示すように下部基板22の非入力領域20bの表面には有底の凹部22aが形成されている。この凹部22a内にフレキシブルプリント基板54に形成された横長の先端領域54aが設置される。また凹部22aには、フレキシブルプリント基板54の引き出し領域54bを外部へ引き出すための引き出し空間22bが形成されている。
【0045】
図4に示すように下部基板22の非入力領域20bの表面には第1配線層52が引き回されており、第1配線層52の先端に位置する第1接続部52a,52aが凹部22a内に形成されている。図4に示すように、第1配線層52が凹部22a内に向けて引き回される位置での前記凹部22aの側面はスロープ部(傾斜面)22cとなっており、第1配線層52は前記スロープ部22cの表面に沿って形成されている。
【0046】
図4に示すように、凹部22a内には、高さ方向(Z1−Z2方向)に貫通する位置決め貫通孔22d,22dが形成されている。また図3に示すようにフレキシブルプリント基板54の先端領域54aには、前記位置決め貫通孔22d,22dと対向する位置に貫通した位置決め穴54d,54dが形成されている。フレキシブルプリント基板54の先端領域54aを下部基板22に形成された凹部22a内に設置し、位置決め貫通孔22d,22dと位置決め穴54d,54dとを高さ方向にて一致させた状態で、図示しない固定部材を、位置決め貫通孔22d,22dと位置決め穴54d,54dとに通してフレキシブルプリント基板54を凹部22a内に固定することが出来る。あるいは、位置決め貫通孔22d,22dに代えて位置決め突部を形成してもよい。
【0047】
図4に示すように、凹部22a内には、高さ方向(Z1−Z2方向)に貫通する空間部22eが形成されている。この空間部22eは、図3に示すように、フレキシブルプリント基板54の第2端子部81,81と上部基板21の第2接続部45a,45aとの接続位置と高さ方向にて対向する位置に設けられている。
【0048】
図5(a)に示すように、下部基板22の表面に形成された第1接続部52aとフレキシブルプリント基板54の第1端子部80とが例えば異方性導電層74を介して電気的に接続されている。
【0049】
一方、図5(b)に示すように、上部基板21の表面に形成された第2接続部45aとフレキシブルプリント基板54の第2端子部81とが例えば異方性導電層74を介して電気的に接続されている。なお図5(b)に示す空間部22eから例えば治具を挿入して、第2接続部45aと第2端子部81間の接続位置に押し当てることで、第2接続部45aと第2端子部81間をより効果的に密着させることが出来る。
【0050】
図5(a)に示す第1端子部80と第1接続部52aとの接続位置と、図5(b)に示す第2端子部81と第2接続部45aとの接続位置とは、高さ方向(Z1−Z2方向)にて異なっている。第1端子部80と第1接続部52aとの接続位置は、下部基板22の表面に形成された凹部22a内であり、第2端子部81と第2接続部45aとの接続位置よりも下方(Z2側)に位置している。
【0051】
このため、図3を用いて説明したように、第1端子部80と第1領域84との間に第1スリット部86を設け、第2端子部81と第2領域85との間に第2スリット部87を設けて、各端子部80,81と各領域84,85間を分離することで、図5(a)に示すように、第1端子部80のY2側に位置する第1領域84は、第1端子部80と第1接続部52aとの接続位置よりも上方(Z1側)に位置する第2端子部81と第2接続部45aとの接続位置の方向に向けて変形しやすくなり、第1端子部80と第1接続部52a間にかかる応力を適切に緩和することができる。同様に、図5(b)に示すように、第2端子部81のY1側に位置する第2領域85は、第2端子部81と第2接続部45aとの接続位置よりも下方(Z2側)に位置する第1端子部80と第1接続部52aとの接続位置の方向に向けて変形しやすくなり、第2端子部81と第2接続部45a間にかかる応力を適切に緩和することが出来る。
【0052】
本実施形態では図3に示すように、フレキシブルプリント基板54の先端領域54aに形成される各第1端子部80及び各第2端子部81を横方向(X1−X2方向)に間隔を空けて配列するとともに、各端子部80,81から延出される各配線延出部82a,82b,83a,83bを各端子部80,81の横方向の端部80a,81aから横方向に向けて延出した。そして、各配線延出部82a,82b,83a,83bを引き出し領域54bに向けて集約し、集約された各配線延出部82a,82b,83a,83bを引き出し領域54bにて縦方向(Y1−Y2方向)に向けて引き出した。
【0053】
このため図3に示すようにフレキシブルプリント基板54の先端領域54aを横長で形成でき、縦方向への長さ寸法(縦幅)L3を従来に比べて小さくすることができるとともに、引き出し領域54bの横幅T2を幅細で引き出すことが出来る。
【0054】
よって本実施形態では、図3や図8(a)に示すように、フレキシブルプリント基板54に形成された幅細の前記引き出し領域54bのみを入力装置20の端部20cから外部に出すことができる。このため、入力装置20の端部20cから外部に引き出された前記引き出し領域54bの部分を図1のように折り曲げても、各端子部80,81と各接続部52a,45a間に加わる剥がし力を小さくでき、各端子部80,81と各接続部52a,45a間の接続信頼性を効果的に向上させることができる。また本実施形態では、図8(a)に示すように、フレキシブルプリント基板54を入力装置20の端部20cから外部に出すのに必要な下部基板22や上部基板21に形成する引き出し空間90(図4に示す引き出し空間22bに相当する)を小さくすることができる。一方、図8(b)は、図10のように従来のフレキシブルプリント基板1を用いた場合を示しており、図8(b)の比較例では、引き出し領域1bのみならず各端子部が形成された幅広の先端領域1aの一部も入力装置91の端部91cから外部にはみ出す構造となるため、下部基板22や上部基板21に形成する引き出し空間92(図10に示す引き出し空間3aに相当)を本実施形態よりも大きく形成しなければならない。このように本実施形態では、フレキシブルプリント基板54を入力装置20の外部に引き出すのに必要な引き出し空間90を小さくできるからフレキシブルプリント基板54が引き出される入力装置20の端部付近の強度を高く保つことが出来る。また引き出し空間90を介して塵や水分等が入力装置20の内部に侵入する不具合を比較例に比べて低減できる。
【0055】
また図3に示すように引き出し領域54bは、先端領域54aの横方向(X1−X2方向)の端部に位置することが好ましい。これにより、フレキシブルプリント基板54の先端領域54aの縦幅L3を広げることなく、先端領域54aの横から幅細の引き出し領域54bを外部に引き出すことが可能になる。
【0056】
本実施形態では、各第1端子部80と第1領域84との間に、連続して第1スリット部86が形成され、各第2端子部81と第2領域85との間に、連続して第2スリット部87が形成されている。第1領域84及び第2領域85を各配線延出部82a,83aの引き回し領域として用いることができ、また、第1スリット部86及び第2スリット部87を設けることで、第1端子部80及び第2端子部81を夫々の接続部52a,45aに接続する際、各端子部80,81にかかる応力を緩和でき、より効果的に接続信頼性を向上させることができる。
【0057】
図5(a)では、下部基板22に形成された凹部22a内にて、フレキシブルプリント基板54の第1端子部80と第1配線層52の先端に位置する第1接続部52aとを電気的に接続していたが、図6に示すように下部基板22の表面はフラットな面で、フレキシブルプリント基板54の第1端子部80と第1配線層52の先端に位置する第1接続部52aとを電気的に接続してもよい。図6のように、上部基板21には、フレキシブルプリント基板54を上方へ逃がすための空間部21aが形成されていることが好ましい。
【0058】
また図7に示すように、例えば下部基板22に貫通孔95を形成してフレキシブルプリント基板54の引き出し領域54bを下部基板22の裏面から外部に引き出してもよい。
【0059】
また図3におけるフレキシブルプリント基板54では、第1端子部80が第1領域84よりもY1側に位置し、第2端子部81が第2領域85よりもY2側に位置しているが、図9に示すように、第1端子部80及び第2端子部81がともに第1領域84及び第2領域85よりも先端領域54aのY2側に位置した構造とすることも出来る。図9に示すフレキシブルプリント基板でも、各第1端子部80と第1領域84との間、各第2端子部81と第2領域85との間に、夫々、スリット部86,87が形成されており、また第1領域84及び第2領域85を利用して各配線延出部82a,82b,83a,83bを引き出し領域54bに向けて引き回し、集約された各配線延出部を引き出し領域54bにて縦方向(Y1−Y2方向)に向けて引き出している。
【0060】
本実施形態におけるフレキシブルプリント基板54は、FP(Film-Plastics)構造以外にFFP(Film-Film-Plastics)構造においても好ましく適用することが出来る。FFP構造では、下部基板は上部基板と同様にフォルム状であり、フィルム状の下部基板がプレスチック基板に貼着された構造である。
【0061】
また本実施形態におけるフレキシブルプリント基板54の構造は、抵抗式の入力装置のみならず静電容量式の入力装置等にも適用できる。
【符号の説明】
【0062】
20 入力装置
20a 入力領域
20b 非入力領域
21 上部基板
22 下部基板
22a 凹部
22b、90 引き出し空間
24、25 透明導電層
45 第2配線層
45a 第2接続部
52 第1配線層
52a 第1接続部
54 フレキシブルプリント基板
54a 先端領域
54b 引き出し領域
60 表面部材
61 表面層
62 加飾層
74 異方性導電層
80 第1端子部
81 第2端子部
82a、82b 第1配線延出部
83a、83b 第2配線延出部
84 第1領域
85 第2領域
86 第1スリット部
87 第2スリット部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部基板と上部基板とが高さ方向に対向配置され、前記下部基板及び前記上部基板は、夫々、表面に透明導電層が形成された基材と、前記基材の表面にて前記透明導電層と電気的に接続された配線層とを有して構成され、前記下部基板に設けられた第1配線層は、フレキシブルプリント基板との接続位置まで引き延ばされて第1接続部を構成し、前記上部基板に設けられた第2配線層は、前記フレキシブルプリント基板との接続位置まで引き延ばされ、平面視にて前記第1接続部と重ならない位置にて第2接続部を構成しており、
前記フレキシブルプリント基板は、先端領域と引き出し領域とを備え、前記先端領域には、前記第1接続部に電気的に接続される第1端子部と、前記第1端子部から延出する第1配線延出部と、前記第2接続部に電気的に接続される第2端子部と、前記第2端子部から延出する第2配線延出部とを、有して形成されており、
平面視にて直交する2方向を横方向と縦方向としたとき、前記第1端子部及び前記第2端子部は、前記横方向に間隔を空けて並設されており、
前記第1配線延出部は、前記第1端子部における横方向の端部から前記横方向に向けて延出し、
前記第2配線延出部は、前記第2端子部における横方向の端部から前記横方向に向けて延出しており、
前記横方向に向けて延出した前記第1配線延出部及び前記第2配線延出部が前記引き出し領域に向けて集約されるとともに、集約された前記第1配線延出部及び前記第2配線延出部が、前記引き出し領域にて前記縦方向に向けて引き出されていることを特徴とする入力装置。
【請求項2】
前記第1端子部よりも前記縦方向に離れて第1領域が設けられており、前記第1端子部と前記第1領域間を分断する第1スリット部が形成されており、
前記第2端子部よりも前記縦方向に離れて第2領域が設けられており、前記第2端子部と前記第2領域間を分離する第2スリット部が形成されている請求項1記載の入力装置。
【請求項3】
前記第1配線延出部は前記第1領域を通って引き回されており、前記第2配線延出部は前記第2領域を通って引き回されている請求項2記載の入力装置。
【請求項4】
前記第1端子部及び前記第2端子部は夫々、複数個、設けられており、前記第1スリット部は、各第1端子部と前記第1領域との間に連続して形成されており、前記第2スリット部は、各第2端子部と前記第2領域との間に連続して形成されている請求項2又は3に記載の入力装置。
【請求項5】
前記先端領域には、前記第1端子部が2個、設けられており、前記引き出し領域から見て、遠い側に位置する前記第1端子部から引き回される第1配線延出部は、前記第1領域を通って前記引き出し領域に向けて引き回されており、近い側に位置する前記第1端子部から引き回される第1配線延出部は、前記第1領域を通らずに各第1端子部が形成されている領域側から前記引き出し領域に向けて引き回されており、
前記先端領域には、前記第2端子部が2個、設けられており、前記引き出し領域から見て、遠い側に位置する前記第2端子部から引き回される第2配線延出部は、前記第2領域を通って前記引き出し領域に向けて引き回されており、近い側に位置する前記第2端子部から引き回される第2配線延出部は、前記第2領域を通らずに各第2端子部が形成されている領域側から前記引き出し領域に向けて引き回されている請求項4記載の入力装置。
【請求項6】
前記引き出し領域は、前記先端領域の前記横方向の端部に位置する請求項1ないし5のいずれか1項に記載の入力装置。
【請求項7】
前記下部基板の表面には凹部が形成されており、前記凹部内に前記フレキシブルプリント基板が配置される請求項1ないし6のいずれか1項に記載の入力装置。
【請求項8】
前記凹部の側面にはスロープ部が形成されており、前記スロープ部の表面に沿って前記第1配線層が形成されている請求項7記載の入力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−43333(P2012−43333A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−185989(P2010−185989)
【出願日】平成22年8月23日(2010.8.23)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】