説明

内燃機関によって駆動される自動車用電気機器の運転方法

【課題】停止過程の間の内燃機関の挙動を改善する、内燃機関によって駆動される自動車用電気機器(10)の運転方法を提供する。
【解決手段】内燃機関(1)の停止のために燃料供給が中断される、内燃機関によって駆動される自動車用電気機器(10)の運転方法において、燃料供給の中断の後及び内燃機関の停止過程の間に、電気機器(10)が出力側で少なくとも一時に短絡される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特許請求の範囲の請求項1の上位概念に基づく、内燃機関によって駆動される自動車用電気機器の運転方法並びに電源ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
最近の内燃機関にはしばしば、いわゆる自動スタート/ストップ装置が備えられている。その様な自動スタート/ストップ装置の場合、内燃機関は、通常、特定の条件に応じて、噴射の停止(即ち、燃料供給の中断)によって停止される。これは、通常、自動車が停止した時に行われる。ドライバーが再発進しようと意図し、且つこのことが操作要素、例えば、アクセルペダル或いはクラッチペダルの操作によって示されるや否や、内燃機関は自動的にスタートする。このことは、本発明では再始動と呼ばれる。
【0003】
この再始動のためには、様々な方法が用いられる。
【0004】
一方では、内燃機関が、いわゆる始動装置或いはスターターによって再び始動される。そのためには、しばしば、低コストのピニオンスターターが用いられる。この場合、内燃機関が回転している時には噛合わせができないことが多いので、内燃機関が停止していることが前提となる。従って、ドライバーの再始動の意思を遅らせなくても済むようにするために、噴射の停止から完全な内燃機関の停止までの時間間隔をできるだけ短く保つことが望ましい。
【0005】
他方、いわゆる直接スタート法が知られているが、これは既に内燃機関の停止過程の間に、再始動のために有利な混合気をシリンダ内に用意しておき、スターターを使うこと無しに点火によって直接スタートできるようにするものである。この場合、停止過程の間に、しばしば実際に実施されているステップは残留ガスの排出である。そのために、吸気管圧力が、とりわけエンジン停止過程の間にスロットルバルブを開くことによって、引き上げられる。しかしながら、引き上げられたシリンダ内の空気量は、振動、震動等を伴う不快なエンジン停止過程をもたらす。これは、エンジン停止過程の間に、クランクシャフトの回転数がドライブトレーンの共振帯を越えて変化した時に問題となる。何故なら、そこではクランクシャフトの加速は、この作動行程(燃焼無し、即ち、膨張だけが行われる)でとりわけ強く働くからである。その様な不快なエンジン停止過程は、とりわけ快適性の理由から望ましくない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、停止過程の間の内燃機関の挙動を改善すること、とりわけ上述の欠点を克服することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によって独立の諸請求項のメルクマールを持つ、内燃機関によって駆動される、自動車用電気機器の運転方法、並びにエネルギー供給ユニットが提案される。有利な実施態様は、諸従属請求項並びに以下の説明の対象となっている。
【0008】
本発明は、内燃機関によって駆動される電気ジェネレータ(しばしば、オルタネータと呼ばれる)がエンジン停止過程の間に意図的に出力側で短絡されることによって、上述の欠点を克服する。ジェネレータは、低い回転数の時でも、とりわけほとんどエンジン停止に至るまでのアイドリング回転数の下側でも、少なくとも二つの相が短絡されると、クランクシャフト回転からかなりのトルクを受け取ることができる。これによって、ジェネレータはクランクシャフトの加速に逆らって働き、このことが結果としてより短時間の又より静かなエンジン停止過程をもたらす。
【0009】
好ましい実施態様では、ジェネレータの短絡は、クランクシャフトの回転数及び/または位置に応じて行われる。
【0010】
とりわけ短時間のエンジン停止過程は、ジェネレータが上方の回転閾値の下側で短絡される時に達成される。ジェネレータ側での引き上げられたトルク受入れはク、ランクシャフトに対して追加のエンジンブレーキトルクのように働き、これによって、停止がより早く実現する。エンジン停止過程は、ジェネレータの積極的な影響によって決定的に短縮される。
【0011】
直接スタートシステムの場合、ジェネレータがクランクシャフト角度に応じて短絡されると、とりわけ静かなエンジン停止過程が達成される。その際には、ジェネレータの相の短絡は、好ましくは一つ又は複数の特定のクランクシャフト角度インターバルで、即ちシリンダ内で圧縮空気の膨張によって引き起こされる望ましくない加速が行われるクランクシャフト角度インターバルで、行われる。それは、とりわけ、ジェネレータを少なくとも一時的に内燃機関の作動行程の間に短絡するということを可能にする。今や、停止過程で、例えばスロットルバルブを開いた状態に保持することができるので、シリンダから残留ガスを排出することができる。かくして、その後の直接始動のための有利な初期条件が可能となる。シリンダ内のより高い充填効率に基づく(その時々の上死点の後の)膨張の際の周期的なクランクシャフト加速(より高い振動として感じられる)は、ジェネレータ側でのより高いトルク受入れによってバランスされる。
【0012】
電気的に励起されるジェネレータの場合、相短絡の前には励起電流が最大値へ引き上げられることが好ましい。その際、PWM(パルス幅変調)制御式の励起電流の場合には、本質的に持続的な通電が行われるであろう。しかしながら、ジェネレータによって望ましいブレーキトルクを生成するために、励起電流を変化させたり或いは意図的にプリセットしたりすることが得策となることもあり得る。
【0013】
本発明は、出力電圧が制御可能のスイッチング要素の付いた整流器によって整流されるジェネレータの場合に有利に使用される。その様な整流器は、同期整流器として、昇圧コンバータとして、降圧コンバータとして、パルスインバータ等として、作動可能である。次いで、スイッチング要素のしかるべき制御によって少なくとも二つの相が短絡される。
【0014】
本発明は、既存のシステムの場合でさえ、とりわけ簡単に実施可能である。ダイオード整流器を備えたジェネレータの場合でも、本発明は、僅かなスイッチング要素、例えばIGBTやMOSFET等を備えることによって実施可能である。
【0015】
本発明に基づくエネルギー供給ユニットは、電気機器の出力側の短絡のための機器やコンピュータユニット、とりわけプログラム技術的にこの発明に基づく方法を実施するために作られた、例えば自動車の制御装置を備えている。
【0016】
本方法のソフトウェアの形による実施も又有利である。何故なら、それはとりわけ、この方法を実施するための制御装置が更に他の任務のためにも用いられ、従って、何れにせよ存在しているという時には、とりわけ低コストをもたらすからである。コンピュータプログラムの提供のために適したデータ媒体は、とりわけフロッピーディスク、ハードディスク、フラッシュメモリー、EEPROM、CD−ROM、DVD等である。コンピュータネット(インターネット、イントラネット等)を介したプログラムのダウンロードも可能である。
【0017】
本発明のその他の利点や実施態様は以下の説明と付属の図面から明らかとなる。
【0018】
先に述べられたメルクマールや、以下に尚説明されるメルクマールは、それぞれ提示された組合せによってだけではなく、本発明の枠組みを越えること無しにその他の組合せによって或いは単独で利用可能である。
【0019】
本発明が一つの実施例に基づいて図面に略示されており、以下にこの図面を参照しながら詳しく説明される。図1及び図2において、同じ要素には同じ参照符号が付けられており、煩雑さを避けるために重複して説明はされない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、内燃機関によって駆動される、本発明に基づくエネルギー供給ユニットの第一の実施態様を略示している。
【図2】図2は、内燃機関によって駆動される、本発明に基づくエネルギー供給ユニットの第二の実施態様を略示している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
【実施例1】
【0022】
図1には、本発明に基づくエネルギー供給ユニットの第一の好ましい実施態様が配線図によって示され、ユニット全体が参照符号100で示されている。エネルギー供給ユニット100は、電気機器10と電流変換器コンポーネント20を備えている。この電流変換器コンポーネントは、電気機器がジェネレータとして作動される際には通常、整流器として、エンジン作動の際にはインバータとして作動される。電気機器10は、内燃機関1のクランクシャフト2によって駆動される。
【0023】
ジェネレータコンポーネント(電気機器)10は、単に図式的に、星形に配線されたステータコイル11と、ダイオードに対して並列に接続された励起コイル或いはロータコイル12の形で示されている。ロータコイルは、電流変換器コンポーネント20の接続端24と接続されているパワースイッチ13によって、時間制御スイッチングされる。パワースイッチ13の制御は、界磁コントローラ15によって行われ、その際、パワースイッチ13も、ロータコイル12に対して並列に接続されたダイオードも、一般に界磁コントローラ15の特定用途向け集積回路(ASIC)に統合されている。
【0024】
本出願の枠組みの中では、三相ジェネレータが示されている。しかしながら、本発明は原理的にもっと少ない或いはもっと多い多相ジェネレータ、例えば五相ジェネレータの場合にも適用可能である。
【0025】
電流変換器コンポーネント20は、ここではB6結線回路として作られており、例えばMOSFET或いはIGBTとして作られることのできるスイッチ要素21を備えている。このスイッチ要素21は、例えば母線を介してジェネレータのそれぞれのステータコイル11と接続されている。更に、スイッチ要素21は接続端24、24′と接続されており、しかるべく制御されれば、自動車のバッテリー30を含む車載電源回路のために直流を供給する。スイッチ要素21の制御は、制御チャンネル26を介して制御装置25によって行われるが、制御チャンネル26については、煩雑さを避けるために全てに参照符号は付けられていない。制御装置25は、位相チャンネル27を通じてそれぞれ個々のステータコイルの位相電圧を受け取る。これ等の位相電圧を生成するために他の装置が備えられることがあるが、それ等の装置は、煩雑さを避けるために図示されていない。位相チャンネルを通じて、制御装置25は内燃機関の回転数を決定する。制御装置25は、エンジン制御装置の構成部分であることもある。
【0026】
制御装置25は、(同期)整流器作動中には、位相チャンネル27を通じて送られる位相電圧の評価を行い、この評価から個々のMOSFET21のその時々のオン/オフ時点を決定する。制御チャンネル26を介した制御は、MOSFET21のゲート回路に対して働く。
【0027】
本実施態様の枠組みの中で備えられている界磁コントローラ15のような既知の界磁コントローラは、ジェネレータのステータコイルの一つの位相と接続された、いわゆるクランプV結線19を備えている。クランプV信号或いは位相入力信号の周波数は、コントローラ15で評価され、この信号の特性値に応じて、コントローラ作動の起動又は作動停止のために、また最終的には制御線14を介したパワースイッチ13の制御のために用いられる。位相信号入力19のための位相信号は、図示されているように、制御装置25からも送られることがある。
【実施例2】
【0028】
図2には、本発明に基づくエネルギー供給ユニットの第二の好ましい実施態様が配線図によって示され、ユニット全体が参照符号200で指示されている。エネルギー供給ユニット200は、ここでも電気機器10と電流変換器コンポーネント220を備えている。この電流変換器コンポーネント220は、整流ダイオード221を用いたダイオード整流器として作られている。
【0029】
ステータコイル11の短絡のために、エネルギー供給ユニット200はスイッチング手段301、例えばIGBTやMOSFETを用いたスイッチ回路300を備えている。スイッチング手段は、好ましくはエンジン制御装置によって、例えば制御装置25によって制御される。
【0030】
以下に本発明に基づく方法の好ましい実施態様が、図1及び図2を参照しながら説明される。
【0031】
内燃機関1が停止される際には、先ず燃料供給が中断されるので、結果として内燃機関の回転数が低下する。ここで説明されている実施態様では、回転数が予め定められている回転数閾値の下方へ低下していることを制御装置25が検知するや否や、本発明の方法がスタートされる。回転数の監視によって、ジェネレータの出力側の短絡が高過ぎる電流によって損傷をもたらさないということを確認することができる。
【0032】
できる限り短いエンジン停止過程に価値が置かれる場合には、ジェネレータ10のステータコイル11は回転数閾値を割り込んだ後、対応するスイッチング手段21又は301を介して、内燃機関が停止状態に到達するまで、本質的に永続的に短絡される。
【0033】
これに対して、例えば直接スタートシステムの場合等に、できる限り静粛なエンジン作動に価値が置かれる場合には、ステータコイル11の短絡は、回転数閾値を割り込んだ後、クランクシャフト2の角度に応じて行われる。即ち、静粛でないエンジン停止過程は、本質的に、作動行程の中のシリンダの膨張充填によるクランクシャフトの加速によって引き起こされるということが分かっている。この理由から、作動行程の間に、ジェネレータの短絡によって追加のトルクを生成し、これによってクランクシャフトの加速を阻止することが目的に適っている。
【符号の説明】
【0034】
1 内燃機関、
2 クランクシャフト
10 電気機器(ジェネレータコンポーネント)
11 ステータコイル
12 ロータコイル(励起コイル)
13 パワースイッチ
14 信号線
15 界磁コントローラ
19 クランプV結線(位相信号入力)
20 電流変換器コンポーネント
21 スイッチ要素(MOSFET)
24及び24′ 接続端
25 制御装置
26 制御チャンネル
27 位相チャンネル
30 バッテリー(バッテリーを含む車載電源回路)
100 エネルギー供給ユニット(電源ユニット)、
200 エネルギー供給ユニット
220 電流変換器コンポーネント
221 整流ダイオード
300 スイッチ回路
301 スイッチング手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関(1)の停止のために燃料供給が中断される、内燃機関によって駆動される自動車用電気機器の運転方法において、
燃料供給の中断の後及び内燃機関の停止過程の間に、電気機器(10)が出力側で少なくとも一時に短絡されることを特徴とする自動車用電気機器の運転方法。
【請求項2】
電気機器(10)が、内燃機関(1)の回転数に応じて短絡される請求項1に記載の運転方法。
【請求項3】
電気機器(10)が、上限の回転数閾値の下側でのみ短絡されることを特徴とする請求項2に記載の運転方法。
【請求項4】
電気機器(10)が、回転毎に90°超のクランクシャフト角度および全回転角度の少なくともいずれかにわたって短絡される請求項1ないし3のいずれかに記載の運転方法。
【請求項5】
電気機器(10)が、回転毎に180°未満のクランクシャフト角度および全回転角度の少なくともいずれかにわたって短絡される請求項1ないし3のいずれかに記載の運転方法。
【請求項6】
電気機器(10)が、内燃機関(1)のクランクシャフト位置に応じて短絡される請求項1ないし5のいずれかに記載の運転方法。
【請求項7】
電気機器(10)が、内燃機関(1)の作動行程の間に少なくとも一時的に短絡される請求項6に記載の運転方法。
【請求項8】
電気機器(10)の全ての出力位相(11)が短絡される請求項1ないし7のいずれかに記載の運転方法。
【請求項9】
電気機器(10)が電気的に励起される機器の場合、励起電流が短絡の間に変化されるか或いは最大化される請求項1ないし8のいずれかに記載の運転方法。
【請求項10】
内燃機関(1)によって駆動される電気機器(10)と、電気機器(10)の出力側の短絡のためのスイッチング手段(21;31)と、請求項1ないし9のいずれかに記載の運転方法を実施する演算ユニット(25)とを備えた、自動車の車載電源回路(30)のためのエネルギー供給ユニット。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−202407(P2012−202407A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−65482(P2012−65482)
【出願日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.フロッピー
【出願人】(591245473)ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング (591)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【Fターム(参考)】