説明

内燃機関の再始動制御装置

【課題】 車両の乗員が走行挙動に違和感を感じることを防止しつつ燃費を向上させる。
【解決手段】 再始動以後において内燃機関の車速が所定車速#V0に到達せずに低下傾向に変化する場合、再始動後アイドル停止禁止タイマの計数が実行される所定時間Bまたは再始動以後において車速がゼロに到達するまでの車速ゼロ到達時間Dのうちの何れか長い方と、車速がゼロに到達してからの経過時間である所定時間Cとを加算して得た値を再アイドル停止許可遅延時間αとして設定し、再アイドル停止許可遅延時間αの経過後に再度のアイドル停止の実行を許可する。再始動以後に再始動後燃料噴射開始遅延タイマの計数が実行される所定時間Aまたはアイドル停止許可遅延時間αのうちの何れか長い方を燃料噴射開始遅延時間βとして設定し、燃料噴射開始遅延時間βの期間に亘って内燃機関への燃料噴射を開始するタイミングを遅延する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の再始動制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、駆動源としての内燃機関およびモータを備え、少なくとも内燃機関またはモータの何れか一方の駆動力を駆動輪に伝達して走行するハイブリッド車両において、所定の条件が成立した場合に内燃機関を自動停止することにより燃料消費量を低減すると共に、所定条件で内燃機関を再始動する装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−257462号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記従来技術の一例に係るハイブリッド車両においては、モータの駆動力により内燃機関を再始動させた際に、所定の吸気管負圧を確保した状態で燃料供給を行うために、内燃機関への燃料供給の開始を所定時間だけ遅延させる場合がある。また、モータの駆動力により内燃機関を再始動させた際に、内燃機関の再始動と運転停止との切換が頻繁に繰り返されるハンチングが生じてしまうことを防止するために、運転停止の実行を所定期間に亘って禁止する場合がある。しかしながら、これらの各制御を単に独立して実行するだけでは、例えば内燃機関の運転停止が予定されている状態で不必要に燃料供給が実行されてしまう等の不具合が生じる虞がある。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、車両の乗員が走行挙動に対して違和感を感じることを防止しつつ燃費を向上させることが可能な内燃機関の再始動制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決して係る目的を達成するために、請求項1に記載の本発明の内燃機関の再始動制御装置は、所定条件下で運転停止された車両の駆動源としての内燃機関を再始動させる内燃機関の再始動制御装置であって、車両の速度を検出する速度検出手段(例えば、実施の形態での車速センサ20)と、前記内燃機関の再始動以後に前記内燃機関の回転数を所定回転数まで増大させる内燃機関駆動手段(例えば、実施の形態でのモータ12)と、所定の条件下で前記内燃機関に燃料を供給する燃料供給手段(例えば、実施の形態でのステップS14)と、前記内燃機関の再始動以後に前記内燃機関の状態(例えば、実施の形態での車速)が所定状態(例えば、実施の形態での所定車速#V0)に到達せず、かつ、前記速度が低下傾向に変化する場合には、前記速度が所定速度(例えば、実施の形態でのゼロ)に到達してから所定遅延時間(例えば、実施の形態での所定時間C)の経過後に前記内燃機関の運転停止を許可する停止許可手段(例えば、実施の形態でのステップS06)と、前記内燃機関の再始動時から前記停止許可手段により前記内燃機関の運転停止が許可されるまでの期間に亘って前記燃料供給手段による前記内燃機関への燃料供給を禁止する燃料供給禁止手段(例えば、実施の形態でのステップS12)とを備えることを特徴としている。
【0005】
上記構成の内燃機関の再始動制御装置によれば、内燃機関の再始動以後の運転停止の許可判定と、内燃機関への燃料供給開始の許可判定とを協調的に制御することができ、例えば運転停止が許可された状態で不必要に燃料供給が実行されてしまうことを防止し、燃費を向上させることができる。
【0006】
さらに、請求項2に記載の本発明の内燃機関の再始動制御装置では、前記停止許可手段は前記所定速度をゼロとし、前記内燃機関の再始動以後に前記内燃機関の状態が所定状態に到達せず、かつ、前記速度が低下傾向に変化する場合には、前記速度がゼロに到達してから所定遅延時間(例えば、実施の形態での所定時間C)の経過後に前記内燃機関の運転停止を許可することを特徴としている。
【0007】
上記構成の内燃機関の再始動制御装置によれば、車両の速度がゼロに到達してから所定遅延時間の経過後に内燃機関の運転停止を許可することにより、内燃機関の再始動と運転停止とが交互に頻繁に繰り返されてしまうハンチングが発生してしまうことを防止し、車両挙動が不安定となることを防止することができる。
【0008】
さらに、請求項3に記載の本発明の内燃機関の再始動制御装置では、前記内燃機関駆動手段は車両を駆動可能なモータ(例えば、実施の形態でのモータ12)であることを特徴としている。
【0009】
上記構成の内燃機関の再始動制御装置によれば、内燃機関の再始動以後に内燃機関への燃料供給が禁止される場合であっても、モータにより車両を駆動させることができ、車両の走行挙動に運転者の意志を的確に反映させることができる。
【0010】
さらに、請求項4に記載の本発明の内燃機関の再始動制御装置では、前記停止許可手段は、前記内燃機関の再始動時からの所定経過時間(例えば、実施の形態での所定時間B、車速ゼロ到達時間D)と、前記速度が所定速度に到達してからの所定遅延時間(例えば、実施の形態での所定時間C)とに基づき、前記内燃機関の運転停止を許可することを特徴としている。
【0011】
上記構成の内燃機関の再始動制御装置によれば、停止許可手段は、先ず、内燃機関の再始動時からの経過時間が所定経過時間に到達したか否かを判定する。そして、この判定結果が「YES」の場合には、さらに、車両の速度が所定速度に到達したか否かを判定する。そして、この判定結果が「YES」の場合には、車両の速度が所定速度に到達してからの経過時間が所定遅延時間に到達したか否かを判定する。そして、この判定結果が「YES」の場合には、内燃機関の運転停止を許可する。
これにより、内燃機関の再始動と運転停止とが交互に頻繁に繰り返されてしまうハンチングが発生してしまうことを防止し、車両挙動が不安定となることを防止することができると共に、内燃機関の再始動以後の運転停止の許可判定と、内燃機関への燃料供給とを協調的に制御することができ、燃費を向上させることができる。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、請求項1に記載の本発明の内燃機関の再始動制御装置によれば、内燃機関の再始動以後の運転停止の許可判定と、内燃機関への燃料供給開始の許可判定とを協調的に制御することができ、燃費を向上させることができる。
さらに、請求項2に記載の本発明の内燃機関の再始動制御装置によれば、内燃機関の再始動と運転停止とが交互に頻繁に繰り返されてしまうハンチングが発生してしまうことを防止し、車両挙動が不安定となることを防止することができる。
さらに、請求項3に記載の本発明の内燃機関の再始動制御装置によれば、内燃機関の再始動以後に内燃機関への燃料供給が禁止される場合であっても、モータにより車両を駆動させることができ、車両の走行挙動に運転者の意志を的確に反映させることができる。
さらに、請求項4に記載の本発明の内燃機関の再始動制御装置によれば、内燃機関の再始動と運転停止とが交互に頻繁に繰り返されてしまうハンチングが発生してしまうことを防止し、車両挙動が不安定となることを防止することができると共に、内燃機関の再始動以後の運転停止の許可判定と、内燃機関への燃料供給開始の許可判定とを協調的に制御することができ、燃費を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態に係る内燃機関の再始動制御装置ついて添付図面を参照しながら説明する。
本発明の一実施形態に係る内燃機関の再始動制御装置10は、例えば図1に示すように、内燃機関(ENG)11と、モータ(MOT)12と、トランスミッション(T/M)13とを直列に直結した構造のハイブリッド車両1に搭載されており、このハイブリッド車両1では、例えば内燃機関11およびモータ12の両方の駆動力は、例えばオートマチックトランスミッション(AT)あるいはマニュアルトランスミッション(MT)等のトランスミッション13から左右の駆動輪(前輪あるいは後輪)W,W間で駆動力を配分するディファレンシャル(図示略)を介して車両の駆動輪W,Wに伝達される。
そして、モータ12はハイブリッド車両1の運転状態に応じてハイブリッド車両1および内燃機関11を駆動する駆動力あるいは内燃機関11の駆動力を補助する補助駆動力を発生するようになっている。また、ハイブリッド車両1の減速時に駆動輪W側からモータ12側に駆動力が伝達されると、モータ12は発電機として機能していわゆる回生制動力を発生し、車体の運動エネルギーを電気エネルギーとして回収する。さらに、ハイブリッド車両1の運転状態に応じて、モータ12は内燃機関11の出力によって発電機として駆動され、発電エネルギーを発生するようになっている。
【0014】
例えば3相(U相、V相、W相)のDCブラシレスモータ等からなるモータ12は、パワードライブユニット(PDU)14に接続されている。パワードライブユニット14は、トランジスタのスイッチング素子を複数用いてブリッジ接続してなるブリッジ回路を具備するパルス幅変調(PWM)によるPWMインバータを備えて構成されている。
パワードライブユニット14にはモータ12と電力(例えば、モータ12の駆動またはアシスト動作時にモータ12に供給される供給電力や回生動作時にモータ12から出力される回生電力)の授受を行う高圧系のバッテリ(高圧バッテリ)15が接続されている。
そして、パワードライブユニット14は、制御装置16からの制御指令を受けてモータ12の駆動および回生作動を制御する。例えばモータ12の駆動時には、制御装置16から出力されるトルク指令に基づき、高圧バッテリ15から出力される直流電力を3相交流電力に変換してモータ12へ供給する。一方、モータ12の回生動作時には、モータ12から出力される3相交流電力を直流電力に変換して高圧バッテリ15を充電する。
このパワードライブユニット14の電力変換動作は、制御装置16からPWMインバータの各スイッチング素子に入力されるパルス、つまりパルス幅変調(PWM)により各スイッチング素子をオン/オフ駆動させるためのパルスに応じて制御され、このパルスのデューティ、つまりオン/オフの比率のマップ(データ)は予め制御装置16に記憶されている。
【0015】
また、各種補機類からなる電気負荷17を駆動するための12Vバッテリ18は、DC−DCコンバータ19を介して、パワードライブユニット14および高圧バッテリ15に対して並列に接続されている。
制御装置16により電力変換動作が制御されるDC−DCコンバータ19は、例えば双方向のDC−DCコンバータであって、高圧バッテリ15の端子電圧(蓄電電圧VB)あるいはモータ12を回生作動または昇圧駆動した際のパワードライブユニット14の端子電圧を所定の電圧値まで降圧して12Vバッテリ18を充電すると共に、高圧バッテリ15の残容量(SOC:State Of Charge)が低下している場合には、12Vバッテリ18の端子電圧を昇圧して高圧バッテリ15を充電可能である。
【0016】
制御装置16は、内燃機関11の運転状態や、パワードライブユニット14およびDC−DCコンバータ19の各電力変換動作や、電気負荷17の作動状態等を制御する。
このため、制御装置16には、例えばパワープラント(つまり内燃機関11およびモータ12)の状態を検出する各種のセンサ(例えば、内燃機関11の回転数を検出する回転数センサや、モータ12のロータの磁極位置(位相角)を検出する回転角センサ等)から出力される信号およびハイブリッド車両1の状態を検出する各種のセンサ、例えば速度を検出する車速センサ20から出力される信号等に加えて、高圧バッテリ15の蓄電電圧VBを検出するバッテリ電圧センサ21から出力される信号と、高圧バッテリ15の充電電流および放電電流を検出するバッテリ電流センサ22から出力される信号と、高圧バッテリ15の温度(バッテリ温度)TBを検出するバッテリ温度センサ23から出力される信号と、パワードライブユニット14の温度(PDU温度)TPを検出するPDU温度センサ24から出力される信号と、DC−DCコンバータ19の温度(DC−DCコンバータ温度)TDを検出するDC−DCコンバータ温度センサ25から出力される信号とが入力されている。
【0017】
例えば、制御装置16がパワードライブユニット14を制御して高圧バッテリ15を充電する際には、制御装置16は回転角センサの出力波形に基づいてPWMインバータへ送出するパルスの同期をとりつつ、PWMインバータによって所定の電圧値まで昇圧を行う。すなわち、制御装置16は、所定の電圧値を得るためのモータ12の回転数に応じたデューティのマップ(データ)等を予め記憶しており、制御装置16は、このマップ(データ)を参照して、PWMインバータの各スイッチング素子をオン/オフ駆動させるためのパルスのデューティを制御する。
また、制御装置16は、例えば電流積算法等により高圧バッテリ15の残容量を算出する。この電流積算法では、制御装置16は、電圧センサ21により検出される高圧バッテリ15の充電電流および放電電流を所定期間毎に積算して積算充電量および積算放電量を算出し、これらの積算充電量および積算放電量を初期状態あるいは充放電開始直前の残容量に加算または減算することで残容量を算出する。このとき、制御装置16は、例えばバッテリ温度TBによって変化する内部抵抗等に対する所定の補正処理や高圧バッテリ15の蓄電電圧VBに応じた所定の補正処理を行う。
【0018】
本実施の形態による内燃機関の再始動制御装置10は上記構成を備えており、次に、この内燃機関の再始動制御装置10の動作、特に、ハイブリッド車両1のアイドル停止状態からの復帰時における内燃機関11の運転停止の許可判定と、内燃機関11への燃料供給の許可判定との協調制御について説明する。
この協調制御では、先ず、ステップS01からステップS08でのアイドル停止許可判定の処理を実行し、次に、ステップS11からステップS17での燃料噴射許可判定の処理を実行する。
【0019】
先ず、アイドル停止許可判定の処理では、例えば図2に示すステップS01において、内燃機関11のアイドル運転を停止するアイドル停止状態から内燃機関11を再始動させた状態であるか否かを判定する。
この判定結果が「YES」の場合には、ステップS02に進み、このステップS02においては、再度のアイドル停止の実行を禁止して、一連の処理を終了する。
一方、この判定結果が「NO」の場合には、ステップS03に進む。
そして、ステップS03においては、内燃機関11の再始動以後においてアイドル停止の実行を禁止する所定時間Bが経過したか否かを判定する。
ステップS03の判定結果が「NO」の場合には、上述したステップS02に進む。
一方、ステップS03の判定結果が「YES」の場合には、ステップS04に進む。
【0020】
そして、ステップS04においては、内燃機関11の再始動以後において、内燃機関11の状態が所定状態に到達したか否か、例えば車両の速度(車速)が所定車速#V0以上に到達したか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、後述するステップS07に進む。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS05に進む。
そして、ステップS05においては、他のアイドル停止条件、例えば内燃機関11の冷却水の温度が所定温度以上となる状態や、アクセルペダルの踏み込み量が所定値未満となる状態や、ブレーキスイッチのON状態や、高圧バッテリ15の残容量が所定値以上となる状態等が成立したか否かを判定する。
ステップS05の判定結果が「NO」の場合には、上述したステップS02に進む。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS06に進む。
そして、ステップS06においては、アイドル停止の実行を許可し、一連の処理を終了する。
【0021】
また、ステップS07においては、車速が所定車速、例えばゼロであるか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、上述したステップS02に進む。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS08に進む。
そして、ステップS08においては、車速が所定車速、例えばゼロに到達してから所定時間Cが経過したか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、上述したステップS02に進む。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、上述したステップS05に進む。
【0022】
次に、燃料噴射許可判定の処理では、例えば図3に示すステップS11において、アイドル停止の実行が許可されているか否かを判定する。
この判定結果が「YES」の場合には、ステップS12に進み、このステップS12においては、燃料噴射の停止状態として、一連の処理を終了する。
一方、この判定結果が「NO」の場合には、ステップS13に進む。
そして、ステップS13においては、内燃機関11の再始動以後において燃料噴射を実行したか否かを判定する。
ステップS13の判定結果が「NO」の場合には、後述するステップS15に進む。
一方、ステップS13の判定結果が「YES」の場合には、ステップS14に進み、このステップS14においては、燃料噴射の実行を許可して、一連の処理を終了する。
【0023】
そして、ステップS15においては、内燃機関11の再始動以後において所定時間Aが経過したか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、上述したステップS12に進む。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、所望の吸気管負圧が確保されたと判断して、ステップS16に進む。
そして、ステップS16においては、他のアイドル停止条件、例えば内燃機関11の冷却水の温度が所定温度以上となる状態や、アクセルペダルの踏み込み量が所定値未満となる状態や、ブレーキスイッチのON状態や、高圧バッテリ15の残容量が所定値以上となる状態等が成立したか否かを判定する。
ステップS16の判定結果が「NO」の場合には、上述したステップS14に進む。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS17に進む。
【0024】
そして、ステップS17においては、車速が所定車速、例えばゼロに到達してからの経過時間が所定時間C未満であるか否かを判定する。
この判定結果が「YES」の場合には、上述したステップS12に進む。
一方、この判定結果が「NO」の場合には、上述したステップS14に進む。
【0025】
例えば図4に示すように、内燃機関11のアイドル運転が停止されたアイドル停止状態が時刻t1において解除されると、先ず、モータ12の駆動力が内燃機関11のクランクシャフトに伝達されて、内燃機関11の回転数(エンジン回転数)が所定回転数以上の値に到達するようにして増大傾向に変化すると共に、モータ12の駆動力がトランスミッション13を介して駆動輪W,Wに伝達されて車速が増大傾向に変化する。
そして、時刻t1以降において内燃機関11への燃料供給(燃料噴射)を開始するタイミングを少なくとも所定時間Aだけ遅延させるために、例えば減算タイマからなる再始動後燃料噴射開始遅延タイマの計数が開始されると共に、時刻t1以降の所定時間Bに亘って内燃機関11のアイドル停止の実行を禁止するために、減算タイマからなる再始動後アイドル停止禁止タイマの計数が開始される。
【0026】
これらの各タイマの計数が継続される状態では、例えば時刻t2に示すように、車速以外の他のアイドル停止条件、例えば内燃機関11の冷却水の温度が所定温度以上となる状態や、アクセルペダルの踏み込み量が所定値未満となる状態や、ブレーキスイッチのON状態や、高圧バッテリ15の残容量が所定値以上となる状態等が成立した場合であっても、アイドル停止の実行は禁止される。
そして、この時刻t2以降のように、再始動以後において内燃機関11の状態(例えば、車速)が所定状態(例えば、所定車速#V0)に到達せずに、車速が低下傾向に変化する場合には、再始動後アイドル停止禁止タイマの計数が実行される期間である所定時間B、または、再始動以後において車速が所定車速(例えば、ゼロ)に到達するまでの時間(例えば、車速ゼロ到達時間D)のうちの何れか長い方と、車速が所定車速(例えば、ゼロ)に到達してからの経過時間である所定時間Cとを加算して得た値が、再アイドル停止許可遅延時間αとして設定され、この再アイドル停止許可遅延時間αの経過後に再度のアイドル停止の実行が許可される。
【0027】
例えば図4においては、時刻t3において再始動後アイドル停止禁止タイマの計数が終了し、時刻t2以降において減少傾向に変化する車速は時刻t4においてゼロに到達することから、所定時間Bよりも長い車速ゼロ到達時間Dと、所定時間Cとを加算して得た値が、再アイドル停止許可遅延時間αとして設定される。
【0028】
そして、車速が所定車速(例えば、ゼロ)に到達した時刻t4以降において、内燃機関11のアイドル停止の実行を許可するタイミングを所定時間Cだけ遅延させるために、例えば減算タイマからなる車速ゼロ経過タイマの計数が開始される。
そして、例えば時刻t4から時刻t6の期間のように、車速ゼロ経過タイマの計数が継続される状態、つまり車速以外の他のアイドル停止条件が成立すると共に車速がゼロに到達してから所定時間Cが経過するまでの期間では、例えば時刻t5に示すように、再始動以後の所定時間Aに亘る再始動後燃料噴射開始遅延タイマの計数が終了した場合であっても、内燃機関11への燃料噴射の開始は禁止される。
つまり、再始動以後に再始動後燃料噴射開始遅延タイマの計数が実行される期間である所定時間A、または、再始動以後に所定時間Cに亘る車速ゼロ経過タイマの計数が終了するまでの期間(つまりアイドル停止許可遅延時間α)のうちの何れか長い方が、燃料噴射開始遅延時間βとして設定され、この燃料噴射開始遅延時間βの期間に亘って内燃機関11への燃料噴射を開始するタイミングが遅延される。
【0029】
上述したように、本実施の形態による内燃機関の再始動制御装置10によれば、内燃機関11の再始動と運転停止とが交互に頻繁に繰り返されてしまうハンチングが発生してしまうことを防止し、車両の走行挙動に対して乗員が違和感を感じることを防止することができると共に、内燃機関11の再始動以後の運転停止の許可判定と、内燃機関11への燃料供給開始の許可判定とを協調的に制御することができ、燃費を向上させることができる。
【0030】
なお、上述した実施の形態においては、ステップS04〜ステップS06に示すように、車速が所定車速#V0以上に到達した場合には、車速以外の他のアイドル停止条件、例えば内燃機関11の冷却水の温度が所定温度以上となる状態や、アクセルペダルの踏み込み量が所定値未満となる状態や、ブレーキスイッチのON状態や、高圧バッテリ15の残容量が所定値以上となる状態等が成立したときに、アイドル停止の実行を許可するとしたが、これに限定されず、さらに、車速が所定の車速(例えば、15km/h等)未満となる状態が成立したときに、アイドル停止の実行を許可してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施形態に係る内燃機関の再始動制御装置を備えるハイブリッド車両の構成図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る内燃機関の再始動制御装置の動作、特に、アイドル停止許可判定の処理を示すフローチャートである。
【図3】本発明の一実施形態に係る内燃機関の再始動制御装置の動作、特に、燃料噴射許可判定の処理を示すフローチャートである。
【図4】車両状態の時間変化の一例を示すグラフ図である。
【符号の説明】
【0032】
10 内燃機関の再始動制御装置
12 モータ(内燃機関駆動手段)
20 車速センサ(速度検出手段)
ステップS06 停止許可手段
ステップS12 燃料供給禁止手段
ステップS14 燃料供給手段


【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定条件下で運転停止された車両の駆動源としての内燃機関を再始動させる内燃機関の再始動制御装置であって、
車両の速度を検出する速度検出手段と、
前記内燃機関の再始動以後に前記内燃機関の回転数を所定回転数まで増大させる内燃機関駆動手段と、
所定の条件下で前記内燃機関に燃料を供給する燃料供給手段と、
前記内燃機関の再始動以後に前記内燃機関の状態が所定状態に到達せず、かつ、前記速度が低下傾向に変化する場合には、前記速度が所定速度に到達してから所定遅延時間の経過後に前記内燃機関の運転停止を許可する停止許可手段と、
前記内燃機関の再始動時から前記停止許可手段により前記内燃機関の運転停止が許可されるまでの期間に亘って前記燃料供給手段による前記内燃機関への燃料供給を禁止する燃料供給禁止手段と
を備えることを特徴とする内燃機関の再始動制御装置。
【請求項2】
前記停止許可手段は前記所定速度をゼロとし、前記内燃機関の再始動以後に前記内燃機関の状態が所定状態に到達せず、かつ、前記速度が低下傾向に変化する場合には、前記速度がゼロに到達してから所定遅延時間の経過後に前記内燃機関の運転停止を許可することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の再始動制御装置。
【請求項3】
前記内燃機関駆動手段は車両を駆動可能なモータであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の内燃機関の再始動制御装置。
【請求項4】
前記停止許可手段は、前記内燃機関の再始動時からの所定経過時間と、前記速度が所定速度に到達してからの所定遅延時間とに基づき、前記内燃機関の運転停止を許可することを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1つに記載の内燃機関の再始動制御装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−283735(P2006−283735A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−108534(P2005−108534)
【出願日】平成17年4月5日(2005.4.5)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】