説明

内燃機関の制御装置

【課題】状況に応じた適切な制御を選択することで、効果的に燃費向上を図ることのできる内燃機関の制御装置を提供する。
【解決手段】本発明は、電動ターボチャージャーを備える内燃機関の制御装置1であって、フューエルカット時に内燃機関の吸排気弁を停止状態にする弁停止制御を行う弁状態切替制御部17と、フューエルカット時に内燃機関の吸排気弁の開弁期間をオーバーラップさせて開弁するオーバーラップ開弁制御を行うオーバーラップ開弁制御部18と、内燃機関の運転状態に基づいて弁停止制御による燃費向上率を演算すると共に、内燃機関及び電動モータの運転状態に基づいてオーバーラップ開弁制御による燃費向上率を演算する燃費向上率演算部15と、を備え、車両の減速時に、弁停止制御及びオーバーラップ開弁制御のうち燃費向上率の高い方の制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動ターボチャージャーを備えた内燃機関の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内燃機関の制御装置に関する技術文献として特開2008−303725号公報が知られている。この公報には、車両の内燃機関に付設されたターボチャージャーと、ターボチャージャーのタービンの回転を利用して発電すると共にターボチャージャーのコンプレッサを回転させる電動発電機と、からなる電動ターボチャージャーを備えた内燃機関の制御装置が記載されている。
【0003】
この内燃機関の制御装置では、車両減速時に内燃機関からの排気を増やすように排気バルブを制御することで、より多くの排気エネルギーをタービンの回転に利用し、電動発電機の発電効率を増加させている。電動発電機の発電効率の増加は、車両の燃費向上に貢献する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−303725号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、内燃機関からの排気を増やすことによる発電効率の増加は、内燃機関や電動発電機の運転状態により変動するため、燃費向上の観点から常に最適な制御であるとは限らない。このため、状況に応じた制御を行うことで更なる燃費向上を図ることのできる装置が求められていた。
【0006】
そこで、本発明は、状況に応じた適切な制御を選択することで、効果的に燃費向上を図ることのできる内燃機関の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、車両の内燃機関に付設されたターボチャージャーと、ターボチャージャーのタービンの回転を利用して発電すると共にターボチャージャーの過給をアシストする電動モータと、を備える内燃機関の制御装置であって、車両の減速時において、内燃機関の吸排気弁を停止状態にする弁停止制御又は内燃機関の吸排気弁の吸排気弁の開弁期間をオーバーラップさせて開弁するオーバーラップ開弁制御を行う吸排気弁制御手段と、内燃機関の運転状態に基づいて弁停止制御による燃費向上率を演算すると共に、電動モータの運転状態に基づいてオーバーラップ開弁制御による燃費向上率を演算する燃費向上率演算手段と、を備え、吸排気弁制御手段は、車両の減速時に、弁停止制御及びオーバーラップ開弁制御のうち燃費向上率の高い方の制御を行うことを特徴とする。
【0008】
本発明に係る内燃機関の制御装置によれば、弁停止制御におけるポンピングロス低減による燃費向上率と、オーバーラップ開弁制御における内燃機関からの排気量の増加及び電動モータの発電効率向上による燃費向上率と、を演算し、車両の減速時に燃費向上率の高い方の制御を行うことで、車両の燃費向上を図ることができる。従って、この内燃機関の制御装置によれば、状況に応じた適切な制御を選択することで、効果的に車両の燃費向上を図ることができる。
【0009】
本発明に係る内燃機関の制御装置においては、車両の走行状況に基づいて車両の減速を予測する減速予測手段を更に備え、燃費向上率演算手段は、減速予測手段が車両の減速を予測した場合に、弁停止制御による燃費向上率とオーバーラップ開弁制御による燃費向上率とを演算することが好ましい。
【0010】
本発明に係る内燃機関の制御装置によれば、車両の減速が予測された場合に予測された減速時の燃費向上率を予め演算することで、十分な演算時間が確保されるので、高精度な燃費向上率の演算を行うことができる。これにより、燃費向上率の高い制御の選択をより確実に行うことができるので、燃費向上に係る信頼性の向上を図ることができる。
【0011】
本発明に係る内燃機関の制御装置においては、車両の排気ガス浄化用の触媒の温度が所定の劣化閾値温度以下であるか否かを判定する触媒温度判定手段を更に備え、吸排気弁制御手段は、触媒温度判定手段が触媒の温度は劣化閾値温度以下ではないと判定した場合、車両の減速時に弁停止制御を行うことが好ましい。
【0012】
本発明に係る内燃機関の制御装置によれば、触媒の温度が高温である場合に未燃焼ガスが触媒に流入すると劣化が生じることから、触媒の温度が所定の劣化閾値温度を超えている場合にはオーバーラップ開弁制御を行わないことで、触媒の劣化を避けることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、状況に応じた適切な制御を選択することで、効果的に燃費向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る内燃機関の制御装置の一実施形態を示すブロック図である。
【図2】内燃機関の制御装置におけるフューエルカット開始時の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0016】
図1に示されるように、本発明に係る内燃機関の制御装置1は、車両のエンジンを制御するものである。制御装置1の制御するエンジンは、電動ターボチャージャーを備えたレシプロエンジンである。電動ターボチャージャーは、エンジンに付設されたターボチャージャーと、ターボチャージャーの過給をアシストする電動モータと、から構成されている。この電動モータは、ターボチャージャーのタービンの回転を利用して発電する回生機としても機能する。
【0017】
この制御装置1は、車両の減速時においてエンジン回転数が所定の設定回転数以上である場合に、エンジンに対する燃料供給を一時的に停止するフューエルカットを実行する。制御装置1は、運転者がアクセルペダルを操作するか、又はエンジン回転数が減少して所定の設定回転数に至るまでフューエルカットを継続する。
【0018】
制御装置1は、車両のエンジンを統括的に制御するエンジンECU[Electronic Control Unit]2を備えている。ECU2は、CPU[Central Processing Unit]、ROM[Read Only Memory]、RAM[Random Access Memory]などからなる電子制御ユニットである。ECU2は、エンジンの各気筒に備えられた吸排気弁を制御するための吸排気弁制御CPU3を有している。
【0019】
このECU2は、クランク角度センサ4、アクセル開度センサ5、ナビゲーションシステム6、車速センサ7、及び触媒温度センサ8と接続されている。また、ECU2は、エンジン回転数検出部9、ターボ回転数検出部10、電動モータ回転数検出部11、及び弁制御用ソレノイド12と接続されている。
【0020】
クランク角度センサ4は、エンジンのクランク軸の回転角を検出するセンサである。クランク角度センサ4は、クランク軸の回転角をパルス信号であるクランク角度信号としてECU2に出力する。アクセル開度センサ5は、エンジンのスロットルバルブの開度を検出するセンサである。アクセル開度センサ5は、検出したスロットルバルブの開度をアクセル開度信号としてECU2に出力する。
【0021】
ナビゲーションシステム6は、車両の運転者に対して目的地までの経路案内を行うシステムである。ナビゲーションシステム6は、車両の現在位置を検出するためのGPS[Global Positioning System]受信部と、地図上における交差点や踏切の位置、道路形状や道路傾斜などの情報を記憶した地図データベースと、を備えている。ナビゲーションシステム6は、GPS受信部から取得した車両の現在位置情報と地図データベースから読み出した車両の現在位置周辺の地図情報とをナビ信号としてECU2に出力する。
【0022】
車速センサ7は、車両の速度を検出するセンサである。車速センサ7は、検出した車両の速度を車速信号としてECU2に出力する。触媒温度センサ8は、車両に備えられた排気ガス浄化用の触媒の温度を検出するセンサである。触媒温度センサ8は、検出した触媒の温度を触媒温度信号としてECU2に出力する。
【0023】
エンジン回転数検出部9は、車両のエンジン回転数を検出するものである。エンジン回転数検出部9は、検出したエンジン回転数をエンジン回転数信号としてECU2に出力する。
【0024】
ターボ回転数検出部10は、エンジンに付設された電動ターボチャージャーのタービン回転数を検出するものである。ターボ回転数検出部10は、検出したタービン回転数をターボ回転数信号としてECU2に出力する。
【0025】
電動モータ回転数検出部11は、電動ターボチャージャーにおける電動モータの回転軸の回転数を検出するものである。電動モータ回転数検出部11は、検出した電動モータの回転軸の回転数を電動モータ回転数信号としてECU2に出力する。
【0026】
弁制御用ソレノイド12は、ソレノイドコイルへの通電による電磁的作用を利用することで、エンジンの吸排気弁を制御するためのものである。弁制御用ソレノイド12は、ECU2からの信号により吸排気弁の制御を行う。弁制御用ソレノイド12は、ECU2から弁停止信号が入力された場合、吸排気弁を閉じた状態で保持する弁停止状態にする。弁制御用ソレノイド12は、ECU2から弁駆動信号が入力された場合、吸排気弁をクランクシャフトに連動させて駆動させる弁駆動状態にする。弁制御用ソレノイド12は、ECU2からオーバーラップ開弁制御信号が入力された場合、吸気弁及び排気弁の両方が同時に開放されている期間が発生するように吸排気弁を作動させる。オーバーラップ期間を車両が減速中でない場合よりも延長するように吸排気弁を作動させるオーバーラップ期間延長制御を行うとなお良い。
【0027】
吸排気弁制御CPU3は、フューエルカット開始予測部13、触媒温度判定部14、燃費向上率演算部15、制御内容選択部16、弁状態切替制御部17、及びオーバーラップ開弁制御部18を有している。
【0028】
フューエルカット開始予測部13は、クランク角度センサ4のクランク角度信号、アクセル開度センサ5のアクセル開度信号、ナビゲーションシステム6のナビ信号、及び車速センサ7の車速信号に基づいて、フューエルカット開始の予測を行う。本実施形態におけるフューエルカット開始条件は、車両が減速中であり、かつエンジン回転数が所定の設定回転数以上であることである。
【0029】
フューエルカット開始予測部13は、アクセル開度信号、ナビ信号、及び車速信号から車両の減速を予測する。具体的には、フューエルカット開始予測部13は、クランク角度信号からエンジン回転数が所定の設定回転数以上であることを予測する。また、フューエルカット開始予測部13は、アクセルペダルの踏み込み変化や車速の変化などから車両の減速を予測する。更に、フューエルカット開始予測部13は、ナビ信号に含まれる交差点や踏切などの一時停止場所や車両が減速する可能性の高い下り坂までの距離から車両の減速を予測する。このように、フューエルカット開始予測部13は、車両の減速と減速時のエンジン回転数とを予測することでフューエルカット開始の予測を行う。このフューエルカット開始予測部13は、特許請求の範囲に記載の減速予測手段として機能する。
【0030】
また、フューエルカット開始予測部13は、実際にフューエルカット開始条件が満たされたとき、エンジンの燃料噴射装置に停止信号を出力してフューエルカットを実行する。
【0031】
更に、フューエルカット開始予測部13は、クランク角度センサ4のクランク角度信号及びアクセル開度センサ5のアクセル開度信号に基づいて、フューエルカット終了条件が満たされたか否かを判定する。フューエルカット終了条件は、運転者がアクセルペダルを操作したこと、又はエンジン回転数が減少して所定の設定回転数に至ったことである。フューエルカット開始予測部13は、フューエルカット終了条件が満たされたと判定した場合、吸排気弁の制御を通常時制御に復帰させる。
【0032】
触媒温度判定部14は、触媒温度センサ8の触媒温度信号に基づいて、触媒の温度が所定の劣化閾値温度以下であるか否かを判定する。劣化閾値温度は、触媒の温度が未燃焼ガスの流入により触媒劣化が過剰に生じる温度であるか否かを判定するための閾値の温度である。すなわち、触媒の温度が劣化閾値温度以下の場合には未燃焼ガスが触媒に送り込まれても過剰な劣化は生じないが、劣化閾値温度を超えている場合は触媒劣化が過剰に生じてしまう。この劣化閾値温度は、車両に備えられた触媒の特性に応じて設定される。
【0033】
燃費向上率演算部15は、エンジンの吸排気弁を停止させる弁停止制御による燃費向上率と吸排気弁の開弁期間をオーバーラップさせて開弁するオーバーラップ開弁制御による燃費向上率との演算を行う。燃費向上率演算部15は、触媒の温度が劣化閾値温度を超えている場合にはオーバーラップ開弁制御は行えないため、触媒温度判定部14が触媒の温度は劣化閾値温度以下であると判定した場合に燃費向上率の演算を開始する。
【0034】
まず、燃費向上率演算部15では、ナビゲーションシステム6のナビ信号、車速センサ7の車速信号、及びエンジン回転数検出部9のエンジン回転数信号に基づいて、フューエルカットの実行時間の予測が行われる。フューエルカットの実行時間は、例えばエンジン回転数の減少率からエンジン回転数が所定の設定回転数に至るまでの予測時間やナビ信号及び車速から車両が踏切などの一時停止場所に接近するまでの予測時間などに基づいて予測される。
【0035】
燃費向上率演算部15は、予測したフューエルカットの実行時間及びエンジン回転数検出部9のエンジン回転数信号に基づいて、弁停止制御による燃費向上率を演算する。弁停止制御による燃費向上率とは、弁停止制御においてポンピングロスが低減することによる燃費向上率である。この燃費向上率は、弁停止によるポンピングロスの低減量、すなわち弁停止を行わない場合のポンピングロスから弁停止を行った場合のポンピングロスを差し引いた差分として求められる。なお、ポンピングロス自体は、エンジンの気筒に生じる負圧に気筒の体積を乗じた値として求められる。
【0036】
このポンピングロスの低減量はエンジン回転数と所定の対応関係にある。燃費向上率演算部15は、ポンピングロスの低減量とエンジン回転数との対応関係をデータマップとして持っておくことで、エンジン回転数からポンピングロスの低減量すなわち弁停止制御による燃費向上率を直接求めることができる。
【0037】
また、燃費向上率演算部15は、予測したフューエルカットの実行時間、エンジン回転数検出部9のエンジン回転数信号、ターボ回転数検出部10のターボ回転数信号、及び電動モータ回転数検出部11の電動モータ回転数信号に基づいて、オーバーラップ開弁制御による燃費向上率を演算する。オーバーラップ開弁制御による燃費向上率とは、オーバーラップ開弁制御においてエンジンから排出される排気エネルギーが増加し、ターボチャージャーのタービン回転数が上がることで電動モータの発電効率が向上することによる燃費向上率である。この燃費向上率は、弁停止時にはタービンを回転させる排気がないことから、オーバーラップ開弁制御時の発電効率から演算される。オーバーラップ開弁制御時の発電効率は、フューエルカットの実行時間、エンジン回転数、ターボ回転数、及び電動モータ回転数から予測される。
【0038】
制御内容選択部16は、燃費向上率演算部15の算出した弁停止制御による燃費向上率とオーバーラップ開弁制御による燃費向上率とを比較する。制御内容選択部16は、弁停止制御及びオーバーラップ開弁制御のうち燃費向上率の高い方の制御を選択する。
【0039】
弁状態切替制御部17は、制御内容選択部16が弁停止制御を選択した場合又は触媒温度判定部14が触媒の温度は劣化閾値温度以下ではないと判定した場合、弁停止制御を実行する。弁状態切替制御部17は、フューエルカット開始予測部13によるフューエルカットの実行後に弁停止制御を実行する。
【0040】
弁状態切替制御部17は、弁制御用ソレノイド12により吸排気弁を停止状態に切り替えることで弁停止制御を実行する。また、弁状態切替制御部17は、フューエルカット開始予測部13がフューエルカット終了条件が満たされたと判定した場合、フューエルカットの終了に合わせて吸排気弁を駆動状態に切り替える。この弁状態切替制御部17とオーバーラップ開弁制御部18とは、特許請求の範囲に記載の吸排気弁制御手段として機能する。
【0041】
オーバーラップ開弁制御部18は、制御内容選択部16がオーバーラップ開弁制御を選択した場合、オーバーラップ開弁制御を実行する。オーバーラップ開弁制御部18は、フューエルカット開始予測部13によるフューエルカットの実行後にオーバーラップ開弁制御を実行する。オーバーラップ開弁制御部18は、弁制御用ソレノイド12により吸排気弁の開弁期間をオーバーラップさせて開弁することでオーバーラップ開弁制御を実行する。
【0042】
次に、内燃機関の制御装置1におけるフューエルカット開始時の動作について説明する。
【0043】
図2に示されるように、まず、内燃機関の制御装置1におけるフューエルカット開始予測部13では、クランク角度センサ4のクランク角度信号、アクセル開度センサ5のアクセル開度信号、ナビゲーションシステム6のナビ信号、及び車速センサ7の車速信号に基づいて、フューエルカット開始の予測が行われる(S1)。
【0044】
次に、触媒温度判定部14は、触媒温度センサ8の触媒温度信号に基づいて、触媒の温度が所定の劣化閾値温度以下であるか否かを判定する(S2)。触媒温度判定部14が触媒の温度が劣化閾値温度以下ではないと判定した場合、ステップS3に移行する。
【0045】
ステップS3において、フューエルカット開始予測部13は、フューエルカット開始条件が満たされるまで待機し、条件が満たされたときにフューエルカットを実行する。その後、弁状態切替制御部17は、弁制御用ソレノイド12により吸排気弁を停止状態に切り替えることで弁停止制御を実行する(S4)。弁停止制御が実行された場合、制御装置1はフューエルカット開始時の動作を終了する。
【0046】
一方、ステップS2において触媒温度判定部14が触媒の温度は劣化閾値温度以下であると判定した場合、燃費向上率演算部15は、各種信号に基づいて、エンジンの吸排気弁を停止させる弁停止制御による燃費向上率と吸排気弁の開弁期間をオーバーラップさせて開弁するオーバーラップ開弁制御による燃費向上率との演算を行う(S5)。
【0047】
次に、制御内容選択部16は、燃費向上率演算部15の算出した弁停止制御による燃費向上率とオーバーラップ開弁制御による燃費向上率とを比較して、弁停止制御及びオーバーラップ開弁制御のうち燃費向上率の高い方の制御を選択する(S6)。制御内容選択部16が弁停止制御を選択した場合、ステップS7に移行する。
【0048】
ステップS7において、フューエルカット開始予測部13は、フューエルカット開始条件が満たされるまで待機し、条件が満たされたときにフューエルカットを実行する。その後、弁状態切替制御部17は、弁制御用ソレノイド12により吸排気弁を停止状態に切り替えることで弁停止制御を実行する(S8)。弁停止制御が実行された場合、制御装置1はフューエルカット開始時の動作を終了する。
【0049】
一方、ステップS5において、制御内容選択部16が弁停止制御を選択した場合、ステップS9に移行する。ステップS9において、フューエルカット開始予測部13は、フューエルカット開始条件が満たされるまで待機し、条件が満たされたときにフューエルカットを実行する。その後、オーバーラップ開弁制御部18は、弁制御用ソレノイド12により吸排気弁の開弁期間をオーバーラップさせて開弁することでオーバーラップ開弁制御を実行する(S10)。オーバーラップ開弁制御が実行された場合、制御装置1はフューエルカット開始時の動作を終了する。
【0050】
以上説明した内燃機関の制御装置1によれば、弁停止制御におけるポンピングロス低減による燃費向上率と、オーバーラップ開弁制御における内燃機関からの排気量の増加及び電動モータの発電効率向上による燃費向上率と、を演算し、車両の減速時に燃費向上率の高い方の制御を行うことで、車両の燃費向上を図ることができる。従って、この制御装置1によれば、状況に応じた適切な制御を選択することで、効果的に車両の燃費向上を図ることができる。
【0051】
また、この制御装置1によれば、フューエルカット開始が予測された場合にそのときの燃費向上率を予め演算することで、十分な演算時間が確保されるので、高精度な燃費向上率の演算を行うことができる。これにより、燃費向上率の高い制御の選択をより確実に行うことができるので、燃費向上に係る信頼性の向上を図ることができる。
【0052】
更に、この制御装置1によれば、触媒の温度が高温である場合に未燃焼ガスが触媒に流入すると劣化が生じることから、触媒の温度が所定の劣化閾値温度を超えている場合にはオーバーラップ開弁制御を行わない。これにより、触媒の温度が高温である場合に未燃焼ガスが触媒に入り込み、触媒劣化が生じることを避けることができる。
【0053】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。
【0054】
例えば、必ずしもフューエルカット開始を予測する必要はなく、フューエルカット開始条件が満たされた後に燃費向上率の演算を開始する態様であっても良い。また、燃費向上率の演算方法は上述のものに限られない。
【符号の説明】
【0055】
1…内燃機関の制御装置 2…エンジン制御ECU 3…吸排気弁制御CPU 4…クランク角度センサ 5…アクセル開度センサ 6…ナビゲーションシステム 7…車速センサ 8…触媒温度センサ 9…エンジン回転数検出部 10…ターボ回転数検出部 11…電動モータ回転数検出部 12…弁制御用ソレノイド 13…フューエルカット開始予測部(減速予測手段) 14…触媒温度判定部(触媒温度判定手段) 15…燃費向上率演算部(燃費向上率演算手段) 16…制御内容選択部 17…弁状態切替制御部(吸排気弁制御手段) 18…オーバーラップ開弁制御部(吸排気弁制御手段)







【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の内燃機関に付設されたターボチャージャーと、前記ターボチャージャーのタービンの回転を利用して発電すると共に前記ターボチャージャーの過給をアシストする電動モータと、を備える内燃機関の制御装置であって、
前記車両の減速時において、前記内燃機関の吸排気弁を停止状態にする弁停止制御又は前記内燃機関の吸排気弁の開弁期間をオーバーラップさせて開弁するオーバーラップ開弁制御を行う吸排気弁制御手段と、
前記内燃機関の運転状態に基づいて前記弁停止制御による燃費向上率を演算すると共に、前記電動モータの運転状態に基づいて前記オーバーラップ開弁制御による燃費向上率を演算する燃費向上率演算手段と、を備え、
前記吸排気弁制御手段は、前記車両の減速時に、前記弁停止制御及び前記オーバーラップ開弁制御のうち燃費向上率の高い方の制御を行うことを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項2】
前記車両の走行状況に基づいて前記車両の減速を予測する減速予測手段を更に備え、
前記燃費向上率演算手段は、前記減速予測手段が前記車両の減速を予測した場合に、前記弁停止制御による燃費向上率と前記オーバーラップ開弁制御による燃費向上率とを演算することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項3】
前記車両の排気ガス浄化用の触媒の温度が所定の劣化閾値温度以下であるか否かを判定する触媒温度判定手段を更に備え、
前記吸排気弁制御手段は、前記触媒温度判定手段が前記触媒の温度は前記劣化閾値温度以下ではないと判定した場合、前記車両の減速時に前記弁停止制御を行うことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の内燃機関の制御装置。





【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−112303(P2012−112303A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−261528(P2010−261528)
【出願日】平成22年11月24日(2010.11.24)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】