内燃機関の制御装置
【課題】EGR装置を備えたエンジンにおいて、EGRガスの漏れに起因する燃焼状態の悪化を抑制できるようにする。
【解決手段】EGR弁31が全閉位置に制御されるアイドル運転中にEGRガス漏れ量を検出又は推定し、このEGRガス漏れ量が所定の許容値を越えたときにEGRガス漏れ量が所定値以下となるように目標インマニ圧を設定し、インマニ圧が目標インマニ圧となるように吸入空気量を増加させる吸入空気量増加制御を実行する。これにより、吸入空気量を増加させると共にEGR弁31の前後差圧を小さくしてEGRガス漏れ量を減少させて、EGR率を効果的に減少させる。更に、吸入空気量増加制御による吸入空気量の増加に応じて点火時期を遅角させて、吸入空気量増加制御によるトルク増加(吸入空気量増加)を点火時期の遅角による要求トルク増加(要求吸入空気量増加)によって吸収する。
【解決手段】EGR弁31が全閉位置に制御されるアイドル運転中にEGRガス漏れ量を検出又は推定し、このEGRガス漏れ量が所定の許容値を越えたときにEGRガス漏れ量が所定値以下となるように目標インマニ圧を設定し、インマニ圧が目標インマニ圧となるように吸入空気量を増加させる吸入空気量増加制御を実行する。これにより、吸入空気量を増加させると共にEGR弁31の前後差圧を小さくしてEGRガス漏れ量を減少させて、EGR率を効果的に減少させる。更に、吸入空気量増加制御による吸入空気量の増加に応じて点火時期を遅角させて、吸入空気量増加制御によるトルク増加(吸入空気量増加)を点火時期の遅角による要求トルク増加(要求吸入空気量増加)によって吸収する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排出ガスの一部をEGRガスとして吸気通路に還流させる際のEGRガス流量を調節するEGR弁を備えた内燃機関の制御装置に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載される内燃機関においては、燃費向上や排気エミッション低減等を目的として、排出ガスの一部をEGRガスとして吸気通路に還流させるEGR装置を搭載するようにしたものがあり、一般的なEGR装置は、EGR通路に配置したEGR弁の開度を制御してEGRガス流量を制御するように構成されている。
【0003】
しかし、EGRガス流量を増加させると、筒内に吸入される空気(新気)の割合が減少するため、混合気の燃焼状態が悪化する可能性がある。
【0004】
EGR装置を搭載した内燃機関の燃焼改善技術としては、例えば、特許文献1(実開昭5−32243号公報)に記載されているように、EGR装置の作動時又はアイドル運転時に点火時期を進角させるようにしたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭53−32243号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、EGR弁の摩耗や噛み込み等によってEGR弁の全閉時の隙間が拡大して、EGRガスの漏れ量(EGR弁の全閉時に吸気通路に流れるEGRガス量)が増加することがある。特にアイドル運転時のような低負荷時(吸入空気量が少ないとき)には、EGRガスの漏れの影響でEGRガスが過多となり、燃焼状態の悪化を招く可能性がある。
【0007】
しかし、EGRガスの漏れがある場合に、上記特許文献1の技術のように、点火時期を進角させるだけでは、要求出力に対して必要となる吸入空気量が減少し、逆にEGRガスの漏れの影響が大きくなって燃焼状態の悪化を抑制することができない可能性がある。
【0008】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、EGRガスの漏れに起因する燃焼状態の悪化を抑制することができる内燃機関の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、内燃機関の排気通路から排出ガスの一部をEGRガスとして吸気通路に還流させる際のEGRガス流量を調節するEGR弁を備えた内燃機関の制御装置において、EGR弁の全閉時に吸気通路に流れるEGRガス量又はこれに応じて変化する情報(以下これらを「EGRガス漏れ量情報」と総称する)を検出又は推定するEGRガス漏れ量情報判定手段と、EGRガス漏れ量情報に応じて、吸気通路内の吸気圧が目標吸気圧となるように吸入空気量を増加させる吸入空気量増加制御を実行する吸入空気量増加制御手段とを備えた構成としたものである。
【0010】
この構成では、EGRガス漏れ量情報に応じて、吸気圧が目標吸気圧となるように吸入空気量を増加させる吸入空気量増加制御を実行することで、吸入空気量を増加させることができると共に、EGR弁の上流側圧力(排気通路側圧力)と下流側圧力(吸気通路側圧力)との差圧を小さくしてEGRガス漏れ量を減少させることができる。これにより、EGR率(=筒内流入EGRガス量/筒内流入総ガス量)を効果的に減少させることができ、EGRガスの漏れに起因する燃焼状態の悪化を抑制して燃焼状態を改善することができる。
【0011】
この場合、請求項2のように、EGRガス漏れ量情報が所定の許容値を越えたときに吸入空気量増加制御を実行するようにすると良い。このようにすれば、EGRガス漏れ量が許容値を越えたときだけ吸入空気量増加制御を実行して、EGRガス漏れ量が許容値以下のときには、EGRガスの漏れによる悪影響がほとんどないと判断して、吸入空気量増加制御を実行しないようにできる。
【0012】
一般に、EGR弁の上流側圧力と下流側圧力との差圧が大きいほどEGRガス漏れ量が増加するため、請求項3のように、目標吸気圧を設定する際に、EGRガス漏れ量情報が所定値以下となるようにEGR弁の上流側圧力と下流側圧力との差圧(以下「前後差圧」という)の目標値である目標前後差圧を算出し、前後差圧が目標前後差圧となるように目標吸気圧を算出するようにしても良い。このようにすれば、EGRガス漏れ量情報が所定値以下となるように目標吸気圧を設定することができる。
【0013】
また、請求項4のように、吸入空気量増加制御による吸入空気量の増加に応じて点火時期を遅角させるようにすると良い。このようにすれば、吸入空気量増加制御によるトルク増加(吸入空気量の増加)を点火時期の遅角による要求トルクの増加(要求吸入空気量の増加)によって吸収することができる。
【0014】
或は、請求項5のように、吸入空気量増加制御による吸入空気量の増加に応じて内燃機関の補機負荷を増加させるようにしても良い。このようにすれば、吸入空気量増加制御によるトルク増加(吸入空気量の増加)を補機負荷(例えばオルタネータの負荷)の増加による要求トルクの増加(要求吸入空気量の増加)によって吸収することができる。
【0015】
また、請求項6のように、吸入空気量増加制御による吸入空気量の増加に応じて内燃機関の目標回転速度を上昇させるようにしても良い。このようにすれば、吸入空気量増加制御によるトルク増加(吸入空気量の増加)を目標回転速度の上昇による要求トルクの増加(要求吸入空気量の増加)によって吸収することができる。
【0016】
EGRガス漏れ量情報を検出又は推定する具体的な方法としては、例えば、請求項7のように、吸気通路内のEGRガス濃度を検出するEGRガスセンサを設け、このEGRガスセンサの出力に基づいてEGRガス漏れ量を検出するようにしても良い。このようにすれば、EGRガス漏れ量を精度良く検出することができる。
【0017】
或は、請求項8のように、吸気通路内の吸気圧、EGRガスを冷却するEGRクーラの下流側のガス温度、EGR弁の駆動トルクのうちの少なくとも一つに基づいてEGRガス漏れ量を推定するようにしても良い。EGRガス漏れ量が多くなるほど吸気圧が高くなる。また、EGRガス漏れ量が多くなるほどEGRクーラの下流側のガス温度が高くなる。また、EGR弁の全閉時の隙間が大きくなるほどEGRガス漏れ量が多くなると共にEGR弁の駆動トルク(例えば駆動モータのトルク)が小さくなる。このように、吸気圧、EGRクーラの下流側のガス温度、EGR弁の駆動トルクは、いずれもEGRガス漏れ量を精度良く反映したパラメータとなり、これらのパラメータ(吸気圧、EGRクーラの下流側のガス温度、EGR弁の駆動トルク)のうちの少なくとも一つを用いれば、EGRガス漏れ量を精度良く推定することができる。
【0018】
また、請求項9のように、EGRガス漏れ量情報として、内燃機関の回転変動を検出するようにしても良い。EGRガス漏れ量が多くなるほど内燃機関の回転変動(例えば回転速度の標準偏差)が大きくなるため、内燃機関の回転変動は、EGRガス漏れ量を精度良く反映したパラメータとなる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は本発明の実施例1におけるエンジン制御システムの概略構成を示す図である。
【図2】図2は目標インマニ圧の設定方法を説明する図である。
【図3】図3はEGRガス漏れ量の検出方法又は推定方法を説明する図である。
【図4】図4は実施例1の吸入空気量増加制御ルーチンの処理の流れを示すフローチャートである。
【図5】図5はEGRガス漏れ量検出ルーチンの処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】図6はEGRガス漏れ量推定ルーチンの処理の流れを示すフローチャートである。
【図7】図7は吸入空気量増加制御の際の各パラメータの関係を示す図である。
【図8】図8は実施例1の吸入空気量増加制御の実行例を示すタイムチャートである。
【図9】図9は吸入空気量増加と点火遅角による燃焼改善を示す図である。
【図10】図10は吸入空気量増加とエンジン回転速度上昇による燃焼改善を示す図である。
【図11】図11は実施例2の吸入空気量増加制御ルーチンの処理の流れを示すフローチャートである。
【図12】図12は実施例3の吸入空気量増加制御ルーチンの処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態を具体化した幾つかの実施例を説明する。
【実施例1】
【0021】
本発明の実施例1を図1乃至図10に基づいて説明する。
まず、図1に基づいてエンジン制御システム全体の構成を概略的に説明する。
内燃機関であるエンジン11の吸気管12(吸気通路)の最上流部には、エアクリーナ13が設けられ、このエアクリーナ13の下流側に、吸入空気量を検出するエアフローメータ14が設けられている。一方、エンジン11の排気管15(排気通路)には、排出ガス中のCO,HC,NOx等を浄化する三元触媒等の触媒16が設置されている。
【0022】
このエンジン11には、吸入空気を過給する排気タービン駆動式の過給機17が搭載されている。この過給機17は、排気管15のうちの触媒16の上流側に排気タービン18が配置され、吸気管12のうちのエアフローメータ14の下流側にコンプレッサ19が配置されている。この過給機17は、排気タービン18とコンプレッサ19とが一体的に回転するように連結され、排出ガスの運動エネルギで排気タービン18を回転駆動することでコンプレッサ19を回転駆動して吸入空気を過給するようになっている。
【0023】
吸気管12のうちのコンプレッサ19の下流側には、モータ20によって開度調節されるスロットルバルブ21と、このスロットルバルブ21の開度(スロットル開度)を検出するスロットル開度センサ22とが設けられている。
【0024】
更に、スロットルバルブ21の下流側には、吸入空気を冷却するインタークーラがサージタンク23(吸気通路)と一体的に設けられている。尚、サージタンク23やスロットルバルブ21の上流側にインタークーラを配置するようにしても良い。サージタンク23には、エンジン11の各気筒に空気を導入する吸気マニホールド24(吸気通路)が設けられ、各気筒毎に筒内噴射又は吸気ポート噴射を行う燃料噴射弁(図示せず)が取り付けられている。エンジン11のシリンダヘッドには、各気筒毎に点火プラグ(図示せず)が取り付けられ、各点火プラグの火花放電によって各気筒内の混合気に着火される。
【0025】
エンジン11の各気筒の排気口には排気マニホールド25(排気通路)が接続され、各気筒の排気マニホールド25の下流側の集合部が排気タービン18の上流側の排気管15に接続されている。また、排気タービン18の上流側と下流側とをバイパスさせる排気バイパス通路26が設けられ、この排気バイパス通路26に、排気バイパス通路26を開閉するウェイストゲートバルブ27が設けられている。
【0026】
このエンジン11には、触媒16の上流側の排気通路(排気マニホールド25又は排気管15)から排出ガスの一部をEGRガスとしてスロットルバルブ21の下流側の吸気通路(サージタンク23又は吸気マニホールド24)に還流させるEGR装置28が搭載されている。このEGR装置28は、触媒16の上流側の排気通路とスロットルバルブ21の下流側の吸気通路との間にEGR配管29が接続され、このEGR配管29に、EGRガスを冷却するEGRクーラ30と、EGRガス流量を調節するEGR弁31が設けられている。このEGR弁31は、DCモータやステッピングモータ等の駆動モータ(図示せず)によって開度が調整される。また、EGR配管29のうちのEGRクーラ30の下流側には、EGRクーラ30の下流側のガス温度を検出する温度センサ32が設けられている。
【0027】
その他、エンジン11には、冷却水温を検出する冷却水温センサ33や、クランク軸(図示せず)が所定クランク角回転する毎にパルス信号を出力するクランク角センサ34等が設けられ、クランク角センサ34の出力信号に基づいてクランク角やエンジン回転速度が検出される。また、EGRガスが還流される吸気通路(サージタンク23又は吸気マニホールド24)には、EGRガス濃度を検出するEGRガスセンサ35(例えば空燃比センサや酸素センサ等)と、インマニ圧(サージタンク23又は吸気マニホールド24内の吸気圧)を検出する吸気圧センサ36が設けられている。
【0028】
これら各種センサの出力は、電子制御ユニット(以下「ECU」と表記する)37に入力される。このECU37は、マイクロコンピュータを主体として構成され、内蔵されたROM(記憶媒体)に記憶された各種のエンジン制御用のプログラムを実行することで、エンジン運転状態に応じて、燃料噴射量、点火時期、スロットル開度(吸入空気量)等を制御する。
【0029】
その際、ECU37は、エンジン運転状態(例えばエンジン回転速度や負荷等)に応じて目標EGR流量(又は目標EGR率)を算出し、この目標EGR流量(又は目標EGR率)を実現するようにEGR弁31の開度を制御する。例えば、アイドル運転時(低負荷運転時)には、EGR弁31を全閉位置に制御する。
【0030】
ところで、EGR弁31の摩耗や噛み込み等によってEGR弁31の全閉時の隙間が拡大して、EGRガスの漏れ量(EGR弁31の全閉時に吸気通路に流れるEGRガス量)が増加することがある。特にアイドル運転時のような低負荷運転時(吸入空気量が少ないとき)には、EGRガスの漏れの影響でEGRガスが過多となり、燃焼状態の悪化を招く可能性がある。
【0031】
そこで、本実施例1では、ECU37により後述する図4及び図5の各ルーチン(又は図4及び図6の各ルーチン)を実行することで、EGR弁31が全閉位置に制御されるアイドル運転中(低負荷運転中)に、EGRガス漏れ量(EGR弁31の全閉時に吸気通路に流れるEGRガス量)を検出又は推定し、このEGRガス漏れ量が所定の許容値を越えたときに、インマニ圧(吸気圧)が目標インマニ圧(目標吸気圧)となるように吸入空気量を増加させる吸入空気量増加制御を実行する。
【0032】
このように、EGRガス漏れ量が許容値を越えたときに、インマニ圧が目標インマニ圧となるように吸入空気量を増加させる吸入空気量増加制御を実行することで、吸入空気量を増加させることができると共に、EGR弁31の上流側圧力(排気通路側圧力)と下流側圧力(吸気通路側圧力)との差圧を小さくしてEGRガス漏れ量を減少させることができ、EGR率(=筒内流入EGRガス量/筒内流入総ガス量)を効果的に減少させることができる。
【0033】
図2(a)に示すように、一般に、EGR弁31の上流側圧力と下流側圧力との差圧(以下「前後差圧」という)が大きいほどEGRガス漏れ量が増加するため、本実施例1では、目標インマニ圧を設定する際に、EGRガス漏れ量が所定値以下となるようにEGR弁31の前後差圧の目標値である目標前後差圧ΔPtgを算出し、図2(b)に示すように、EGR弁31の前後差圧が目標前後差圧ΔPtgとなるように目標インマニ圧Ptg(つまり目標前後差圧ΔPtgに対応する目標インマニ圧Ptg)を算出することで、EGRガス漏れ量が所定値以下となるように目標インマニ圧Ptgを設定する。
【0034】
EGRガス漏れ量を検出又は推定する具体的な方法としては、例えば、EGRガスセンサ35の出力に基づいてEGRガス漏れ量を検出する。このようにすれば、EGRガス漏れ量を精度良く検出することができる。
【0035】
或は、吸気圧センサ36で検出したインマニ圧(吸気圧)、温度センサ32で検出したEGRクーラ下流温度(EGRクーラ30の下流側のガス温度)、EGR弁31の全閉付近の駆動トルク(駆動モータのトルク)のうちの少なくとも一つに基づいてEGRガス漏れ量を推定するようにしても良い。
【0036】
図3(a)及び(b)に示すように、EGRガス漏れ量が多くなるほどインマニ圧が高くなる。また、図3(c)に示すように、EGRガス漏れ量が多くなるほどEGRクーラ下流温度が高くなる。また、図3(d)に示すように、EGR弁31の全閉時の隙間が大きくなるほどEGRガス漏れ量が多くなると共にEGR弁31の全閉付近の駆動トルクが小さくなる。尚、EGR弁31の全閉付近は、EGR弁31の摩擦抵抗でモータ電流が増加して角速度が変化するため、モータ電流や角速度に基づいてEGR弁31の全閉付近の駆動トルク(駆動モータのトルク)を算出することができる。
【0037】
図3(a)〜(d)に示すように、インマニ圧、EGRクーラ下流温度、EGR弁31の全閉付近の駆動トルクは、いずれもEGRガス漏れ量を精度良く反映したパラメータとなり、これらのパラメータ(インマニ圧、EGRクーラ下流温度、EGR弁31の全閉付近の駆動トルク)のうちの少なくとも一つを用いれば、EGRガス漏れ量を精度良く推定することができる。この場合、EGRガス漏れ量を検出するためのEGRガスセンサ35を省略することができる。
【0038】
また、本実施例1では、吸入空気量増加制御を実行したときに、吸入空気量増加制御による吸入空気量の増加に応じて点火時期を遅角させて、吸入空気量増加制御によるトルク増加(吸入空気量の増加)を点火時期の遅角による要求トルクの増加(要求吸入空気量の増加)によって吸収する。
【0039】
或は、吸入空気量増加制御による吸入空気量の増加に応じてエンジン11の補機負荷(例えばオルタネータの負荷)を増加させて、吸入空気量増加制御によるトルク増加(吸入空気量の増加)を補機負荷(例えばオルタネータの負荷)の増加による要求トルクの増加(要求吸入空気量の増加)によって吸収するようにしても良い。
【0040】
また、吸入空気量増加制御による吸入空気量の増加に応じて目標エンジン回転速度(目標アイドル回転速度)を上昇させて、吸入空気量増加制御によるトルク増加(吸入空気量の増加)を目標エンジン回転速度の上昇による要求トルクの増加(要求吸入空気量の増加)によって吸収するようにしても良い。
【0041】
以上説明した吸入空気量増加制御は、ECU37によって図4及び図5の各ルーチン(又は図4及び図6の各ルーチン)に従って実行される。以下、各ルーチンの処理内容を説明する。
【0042】
[吸入空気量増加制御ルーチン]
図4に示す吸入空気量増加制御ルーチンは、ECU37の電源オン期間中(イグニッションスイッチのオン期間中)に所定周期で繰り返し実行され、特許請求の範囲でいう吸入空気量増加制御手段としての役割を果たす。本ルーチンが起動されると、まず、ステップ101で、アイドル運転中(低負荷運転中)であるか否かを判定し、アイドル運転中ではないと判定された場合には、ステップ102以降の処理を実行することなく、本ルーチンを終了する。
【0043】
一方、上記ステップ101で、アイドル運転中であると判定された場合には、ステップ102に進み、後述する図5のEGRガス漏れ量検出ルーチンを実行してEGRガス漏れ量を検出する。或は、後述する図6のEGRガス漏れ量推定ルーチンを実行してEGRガス漏れ量を推定するようにしても良い。
【0044】
この後、ステップ103に進み、EGRガス漏れ量が所定の許容値を越えているか否かを判定し、EGRガス漏れ量が許容値以下であると判定された場合には、EGRガスの漏れによる悪影響がほとんどないと判断して、吸入空気量増加制御を実行することなく、本ルーチンを終了する。
【0045】
これに対して、上記ステップ103で、EGRガス漏れ量が許容値を越えていると判定された場合には、ステップ104に進み、目標インマニ圧を設定する。この場合、EGRガス漏れ量が所定値以下となるようにEGR弁31の前後差圧の目標値である目標前後差圧ΔPtgを算出し、EGR弁31の前後差圧が目標前後差圧ΔPtgとなるように目標インマニ圧Ptg(つまり目標前後差圧ΔPtgに対応する目標インマニ圧Ptg)を算出することで、EGRガス漏れ量が所定値以下となるように目標インマニ圧Ptgを設定する。
【0046】
この後、ステップ105に進み、インマニ圧が目標インマニ圧Ptgとなるようにスロットル開度を増加させて吸入空気量を増加させる吸入空気量増加制御を実行する。これにより、図7(a)に示すように、EGRガス漏れ量に応じて吸入空気量を増加させると共に、EGR弁31の前後差圧を小さくしてEGRガス漏れ量を減少させる。
【0047】
この後、ステップ106に進み、図7(c)に示すように、吸入空気量増加制御による吸入空気量の増加に応じて点火時期を遅角させる。或は、図7(d)に示すように、吸入空気量増加制御による吸入空気量の増加に応じてエンジン11の補機負荷(例えばオルタネータの負荷)を増加させるようにしても良い。また、図7(e)に示すように、吸入空気量増加制御による吸入空気量の増加に応じて目標エンジン回転速度(目標アイドル回転速度)を上昇させるようにしても良い。
【0048】
尚、点火時期の遅角、補機負荷の増加、目標エンジン回転速度の上昇のうちのいずれか一つのみを実行するようにしても良いが、点火時期の遅角、補機負荷の増加、目標エンジン回転速度の上昇のうちの二つ又は三つを組み合わせて実行するようにしても良い。
【0049】
[EGRガス漏れ量検出ルーチン]
図5に示すEGRガス漏れ量検出ルーチンは、前記図4の吸入空気量増加制御ルーチンのステップ102で実行されるサブルーチンであり、特許請求の範囲でいうEGRガス漏れ量情報判定手段としての役割を果たす。本ルーチンが起動されると、ステップ201で、EGRガスセンサ35の出力に基づいてEGRガス漏れ量を検出する。このようにすれば、EGRガス漏れ量を精度良く検出することができる。
【0050】
[EGRガス漏れ量推定ルーチン]
前記図5のEGRガス漏れ量検出ルーチンに代えて、図6に示すEGRガス漏れ量推定ルーチンを実行するようにしても良い。この場合、図6のEGRガス漏れ量推定ルーチンが特許請求の範囲でいうEGRガス漏れ量情報判定手段としての役割を果たす。本ルーチンが起動されると、まず、ステップ301で、吸気圧センサ36で検出したインマニ圧、温度センサ32で検出したEGRクーラ下流温度、EGR弁31の全閉付近の駆動トルクのうちの一つ又は二つ以上を読み込む。
【0051】
この後、ステップ302に進み、インマニ圧、EGRクーラ下流温度、EGR弁31の全閉付近の駆動トルクのうちの一つ又は二つ以上を用いて、マップ又は数式等によりEGRガス漏れ量を算出(推定)する。
【0052】
次に図8を用いて本実施例1の吸入空気量増加制御の実行例を説明する。
EGR弁31が全閉位置に制御されるアイドル運転中に、EGRガス漏れ量を検出又は推定し、このEGRガス漏れ量が所定の許容値を越えた時点t1 で、EGR弁31の前後差圧が目標前後差圧ΔPtgとなるように目標インマニ圧Ptgを算出することで、EGRガス漏れ量が所定値以下となるように目標インマニ圧tgを設定し、インマニ圧が目標インマニ圧Ptgとなるように吸入空気量を増加させる吸入空気量増加制御を実行する。これにより、吸入空気量を増加させることができると共に、EGR弁31の前後差圧を小さくしてEGRガス漏れ量を減少させることができ、その結果、EGR率を効果的に減少させることができ、EGRガスの漏れに起因する燃焼状態の悪化を抑制して燃焼状態を改善することができる。
【0053】
更に、吸入空気量増加制御を実行したときに、吸入空気量増加制御による吸入空気量の増加に応じて点火時期を遅角させる。これにより、吸入空気量増加制御によるトルク増加(吸入空気量の増加)を点火時期の遅角による要求トルクの増加(要求吸入空気量の増加)によって吸収することができ、不快なトルク変動を発生させることなく、燃焼状態を改善してエンジン回転変動を抑制することができる(図9参照)。
【0054】
或は、吸入空気量増加制御による吸入空気量の増加に応じてエンジン11の補機負荷(例えばオルタネータの負荷)を増加させるようにしても良い。これにより、吸入空気量増加制御によるトルク増加(吸入空気量の増加)を補機負荷(例えばオルタネータの負荷)の増加による要求トルクの増加(要求吸入空気量の増加)によって吸収することができ、不快なトルク変動を発生させることなく、燃焼状態を改善してエンジン回転変動を抑制することができる。
燃焼状態を改善しながらエンジン回転変動を抑制することができる(図9参照)。
【0055】
また、吸入空気量増加制御による吸入空気量の増加に応じて目標エンジン回転速度(目標アイドル回転速度)を上昇させるようにしても良い。これにより、吸入空気量増加制御によるトルク増加(吸入空気量の増加)を目標エンジン回転速度の上昇による要求トルクの増加(要求吸入空気量の増加)によって吸収することができ、不快なトルク変動を発生させることなく、燃焼状態を改善してエンジン回転変動を抑制することができる(図10参照)。
【実施例2】
【0056】
次に、図11を用いて本発明の実施例2を説明する。但し、前記実施例1と実質的に同一部分については説明を省略又は簡略化し、主として前記実施例1と異なる部分について説明する。
【0057】
本実施例2では、ECU37により後述する図11の吸入空気量増加制御ルーチンを実行することで、EGRガス漏れ量情報として、エンジン回転変動(例えばエンジン回転速度の標準偏差)を検出し、このエンジン回転変動(例えばエンジン回転速度の標準偏差)が所定の許容値を越えたときに、インマニ圧が目標インマニ圧となるように吸入空気量を増加させる吸入空気量増加制御を実行する。図3(e)に示すように、EGRガス漏れ量が多くなるほどエンジン回転変動(例えばエンジン回転速度の標準偏差)が大きくなるため、エンジン回転変動は、EGRガス漏れ量を精度良く反映したパラメータとなる。
【0058】
図11の吸入空気量増加制御ルーチンでは、まず、ステップ401で、アイドル運転中(低負荷運転中)であるか否かを判定し、アイドル運転中であると判定された場合には、ステップ402に進み、クランク角センサ34で検出したエンジン回転速度に基づいてエンジン回転変動(例えばエンジン回転速度の標準偏差)を算出(検出)する。このステップ402の処理が特許請求の範囲でいうEGRガス漏れ量情報判定手段としての役割を果たす。
【0059】
この後、ステップ403に進み、エンジン回転変動が所定の許容値を越えているか否かを判定し、エンジン回転変動が許容値以下であると判定された場合には、EGRガスの漏れによる悪影響がほとんどないと判断して、吸入空気量増加制御を実行することなく、本ルーチンを終了する。
【0060】
これに対して、上記ステップ403で、エンジン回転変動が許容値を越えていると判定された場合には、EGRガス漏れ量が許容値を越えていると判断して、ステップ404に進み、EGR弁31の前後差圧が目標前後差圧ΔPtgとなるように目標インマニ圧Ptgを算出することで、EGRガス漏れ量が所定値以下となるように目標インマニ圧Ptgを設定する。
【0061】
この後、ステップ405に進み、インマニ圧が目標インマニ圧Ptgとなるようにスロットル開度を増加させて吸入空気量を増加させる吸入空気量増加制御を実行する。この後、ステップ406に進み、吸入空気量増加制御による吸入空気量の増加に応じて点火時期を遅角させる。或は、吸入空気量増加制御による吸入空気量の増加に応じてエンジン11の補機負荷(例えばオルタネータの負荷)を増加させるようにしても良い。また、吸入空気量増加制御による吸入空気量の増加に応じて目標エンジン回転速度(目標アイドル回転速度)を上昇させるようにしても良い。
【0062】
尚、点火時期の遅角、補機負荷の増加、目標エンジン回転速度の上昇のうちのいずれか一つのみを実行するようにしても良いが、点火時期の遅角、補機負荷の増加、目標エンジン回転速度の上昇のうちの二つ又は三つを組み合わせて実行するようにしても良い。
【0063】
以上説明した本実施例2では、EGRガス漏れ量情報として、エンジン回転変動(例えばエンジン回転速度の標準偏差)を検出し、このエンジン回転変動が所定の許容値を越えたときに、インマニ圧が目標インマニ圧Ptgとなるように吸入空気量を増加させる吸入空気量増加制御を実行するようにしたので、前記実施例1とほぼ同じ効果を得ることができる。また、EGRガス漏れ量を検出するためのEGRガスセンサ35を省略することができる。
【実施例3】
【0064】
次に、図12を用いて本発明の実施例3を説明する。但し、前記実施例1,2と実質的に同一部分については説明を省略又は簡略化し、主として前記実施例1,2と異なる部分について説明する。
【0065】
本実施例3では、ECU37により後述する図12の吸入空気量増加制御ルーチンを実行することで、EGRガス漏れ量を検出又は推定すると共にエンジン回転変動を検出し、EGRガス漏れ量が所定の許容値を越え、且つ、エンジン回転変動が所定の許容値を越えたときに、インマニ圧が目標インマニ圧となるように吸入空気量を増加させる吸入空気量増加制御を実行する。
【0066】
図12の吸入空気量増加制御ルーチンでは、まず、ステップ501で、アイドル運転中(低負荷運転中)であるか否かを判定し、アイドル運転中であると判定された場合には、ステップ502に進み、前述した図5のEGRガス漏れ量検出ルーチンを実行してEGRガス漏れ量を検出する。或は、前述した図6のEGRガス漏れ量推定ルーチンを実行してEGRガス漏れ量を推定するようにしても良い。
【0067】
この後、ステップ503に進み、クランク角センサ34で検出したエンジン回転速度に基づいてエンジン回転変動(例えばエンジン回転速度の標準偏差)を算出(検出)する。
この後、ステップ504に進み、EGRガス漏れ量が所定の許容値を越えているか否かを判定し、EGRガス漏れ量が許容値を越えていると判定された場合には、ステップ505に進み、エンジン回転変動が所定の許容値を越えているか否かを判定する。
【0068】
上記ステップ504でEGRガス漏れ量が許容値以下であると判定された場合、又は、上記ステップ505でエンジン回転変動が許容値以下であると判定された場合には、EGRガスの漏れによる悪影響がほとんどないと判断して、吸入空気量増加制御を実行することなく、本ルーチンを終了する。
【0069】
これに対して、上記ステップ504でEGRガス漏れ量が許容値を越えていると判定され、且つ、上記ステップ505でエンジン回転変動が許容値を越えていると判定された場合には、ステップ506に進み、EGR弁31の前後差圧が目標前後差圧ΔPtgとなるように目標インマニ圧Ptgを算出することで、EGRガス漏れ量が所定値以下となるように目標インマニ圧Ptgを設定する。
【0070】
この後、ステップ507に進み、インマニ圧が目標インマニ圧Ptgとなるようにスロットル開度を増加させて吸入空気量を増加させる吸入空気量増加制御を実行する。この後、ステップ508に進み、吸入空気量増加制御による吸入空気量の増加に応じて点火時期を遅角させる。或は、吸入空気量増加制御による吸入空気量の増加に応じてエンジン11の補機負荷(例えばオルタネータの負荷)を増加させるようにしても良い。また、吸入空気量増加制御による吸入空気量の増加に応じて目標エンジン回転速度(目標アイドル回転速度)を上昇させるようにしても良い。
【0071】
尚、点火時期の遅角、補機負荷の増加、目標エンジン回転速度の上昇のうちのいずれか一つのみを実行するようにしても良いが、点火時期の遅角、補機負荷の増加、目標エンジン回転速度の上昇のうちの二つ又は三つを組み合わせて実行するようにしても良い。
【0072】
以上説明した本実施例3では、EGRガス漏れ量とエンジン回転変動が両方とも許容値を越えたときだけ吸入空気量増加制御を実行するようにしたので、必要以上に吸入空気量増加制御を実行することを回避することができる。
【0073】
尚、上記各実施例1〜3では、アイドル運転中にEGRガス漏れ量情報が許容値を越えたときに吸入空気量増加制御を実行するようにしたが、これに限定されず、アイドル運転以外でもEGR弁31が全閉位置に制御される運転状態でEGRガス漏れ量情報が許容値を越えたときに吸入空気量増加制御を実行するようにしても良い。
【0074】
また、上記各実施例1〜3では、過給機を搭載したエンジンに本発明を適用したが、これに限定されず、過給機を搭載していない自然吸気エンジン(NAエンジン)に本発明を適用しても良い。
【符号の説明】
【0075】
11…エンジン(内燃機関)、12…吸気管(吸気通路)、15…排気管(排気通路)、21…スロットルバルブ、23…サージタンク(吸気通路)、24…吸気マニホールド(吸気通路)、25…排気マニホールド(排気通路)、28…EGR装置、29…EGR配管、30…EGRクーラ、31…EGR弁、32…温度センサ、34…クランク角センサ、35…EGRガスセンサ、36…吸気圧センサ、37…ECU(EGRガス漏れ量情報判定手段,吸入空気量増加制御手段)
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排出ガスの一部をEGRガスとして吸気通路に還流させる際のEGRガス流量を調節するEGR弁を備えた内燃機関の制御装置に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載される内燃機関においては、燃費向上や排気エミッション低減等を目的として、排出ガスの一部をEGRガスとして吸気通路に還流させるEGR装置を搭載するようにしたものがあり、一般的なEGR装置は、EGR通路に配置したEGR弁の開度を制御してEGRガス流量を制御するように構成されている。
【0003】
しかし、EGRガス流量を増加させると、筒内に吸入される空気(新気)の割合が減少するため、混合気の燃焼状態が悪化する可能性がある。
【0004】
EGR装置を搭載した内燃機関の燃焼改善技術としては、例えば、特許文献1(実開昭5−32243号公報)に記載されているように、EGR装置の作動時又はアイドル運転時に点火時期を進角させるようにしたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭53−32243号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、EGR弁の摩耗や噛み込み等によってEGR弁の全閉時の隙間が拡大して、EGRガスの漏れ量(EGR弁の全閉時に吸気通路に流れるEGRガス量)が増加することがある。特にアイドル運転時のような低負荷時(吸入空気量が少ないとき)には、EGRガスの漏れの影響でEGRガスが過多となり、燃焼状態の悪化を招く可能性がある。
【0007】
しかし、EGRガスの漏れがある場合に、上記特許文献1の技術のように、点火時期を進角させるだけでは、要求出力に対して必要となる吸入空気量が減少し、逆にEGRガスの漏れの影響が大きくなって燃焼状態の悪化を抑制することができない可能性がある。
【0008】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、EGRガスの漏れに起因する燃焼状態の悪化を抑制することができる内燃機関の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、内燃機関の排気通路から排出ガスの一部をEGRガスとして吸気通路に還流させる際のEGRガス流量を調節するEGR弁を備えた内燃機関の制御装置において、EGR弁の全閉時に吸気通路に流れるEGRガス量又はこれに応じて変化する情報(以下これらを「EGRガス漏れ量情報」と総称する)を検出又は推定するEGRガス漏れ量情報判定手段と、EGRガス漏れ量情報に応じて、吸気通路内の吸気圧が目標吸気圧となるように吸入空気量を増加させる吸入空気量増加制御を実行する吸入空気量増加制御手段とを備えた構成としたものである。
【0010】
この構成では、EGRガス漏れ量情報に応じて、吸気圧が目標吸気圧となるように吸入空気量を増加させる吸入空気量増加制御を実行することで、吸入空気量を増加させることができると共に、EGR弁の上流側圧力(排気通路側圧力)と下流側圧力(吸気通路側圧力)との差圧を小さくしてEGRガス漏れ量を減少させることができる。これにより、EGR率(=筒内流入EGRガス量/筒内流入総ガス量)を効果的に減少させることができ、EGRガスの漏れに起因する燃焼状態の悪化を抑制して燃焼状態を改善することができる。
【0011】
この場合、請求項2のように、EGRガス漏れ量情報が所定の許容値を越えたときに吸入空気量増加制御を実行するようにすると良い。このようにすれば、EGRガス漏れ量が許容値を越えたときだけ吸入空気量増加制御を実行して、EGRガス漏れ量が許容値以下のときには、EGRガスの漏れによる悪影響がほとんどないと判断して、吸入空気量増加制御を実行しないようにできる。
【0012】
一般に、EGR弁の上流側圧力と下流側圧力との差圧が大きいほどEGRガス漏れ量が増加するため、請求項3のように、目標吸気圧を設定する際に、EGRガス漏れ量情報が所定値以下となるようにEGR弁の上流側圧力と下流側圧力との差圧(以下「前後差圧」という)の目標値である目標前後差圧を算出し、前後差圧が目標前後差圧となるように目標吸気圧を算出するようにしても良い。このようにすれば、EGRガス漏れ量情報が所定値以下となるように目標吸気圧を設定することができる。
【0013】
また、請求項4のように、吸入空気量増加制御による吸入空気量の増加に応じて点火時期を遅角させるようにすると良い。このようにすれば、吸入空気量増加制御によるトルク増加(吸入空気量の増加)を点火時期の遅角による要求トルクの増加(要求吸入空気量の増加)によって吸収することができる。
【0014】
或は、請求項5のように、吸入空気量増加制御による吸入空気量の増加に応じて内燃機関の補機負荷を増加させるようにしても良い。このようにすれば、吸入空気量増加制御によるトルク増加(吸入空気量の増加)を補機負荷(例えばオルタネータの負荷)の増加による要求トルクの増加(要求吸入空気量の増加)によって吸収することができる。
【0015】
また、請求項6のように、吸入空気量増加制御による吸入空気量の増加に応じて内燃機関の目標回転速度を上昇させるようにしても良い。このようにすれば、吸入空気量増加制御によるトルク増加(吸入空気量の増加)を目標回転速度の上昇による要求トルクの増加(要求吸入空気量の増加)によって吸収することができる。
【0016】
EGRガス漏れ量情報を検出又は推定する具体的な方法としては、例えば、請求項7のように、吸気通路内のEGRガス濃度を検出するEGRガスセンサを設け、このEGRガスセンサの出力に基づいてEGRガス漏れ量を検出するようにしても良い。このようにすれば、EGRガス漏れ量を精度良く検出することができる。
【0017】
或は、請求項8のように、吸気通路内の吸気圧、EGRガスを冷却するEGRクーラの下流側のガス温度、EGR弁の駆動トルクのうちの少なくとも一つに基づいてEGRガス漏れ量を推定するようにしても良い。EGRガス漏れ量が多くなるほど吸気圧が高くなる。また、EGRガス漏れ量が多くなるほどEGRクーラの下流側のガス温度が高くなる。また、EGR弁の全閉時の隙間が大きくなるほどEGRガス漏れ量が多くなると共にEGR弁の駆動トルク(例えば駆動モータのトルク)が小さくなる。このように、吸気圧、EGRクーラの下流側のガス温度、EGR弁の駆動トルクは、いずれもEGRガス漏れ量を精度良く反映したパラメータとなり、これらのパラメータ(吸気圧、EGRクーラの下流側のガス温度、EGR弁の駆動トルク)のうちの少なくとも一つを用いれば、EGRガス漏れ量を精度良く推定することができる。
【0018】
また、請求項9のように、EGRガス漏れ量情報として、内燃機関の回転変動を検出するようにしても良い。EGRガス漏れ量が多くなるほど内燃機関の回転変動(例えば回転速度の標準偏差)が大きくなるため、内燃機関の回転変動は、EGRガス漏れ量を精度良く反映したパラメータとなる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は本発明の実施例1におけるエンジン制御システムの概略構成を示す図である。
【図2】図2は目標インマニ圧の設定方法を説明する図である。
【図3】図3はEGRガス漏れ量の検出方法又は推定方法を説明する図である。
【図4】図4は実施例1の吸入空気量増加制御ルーチンの処理の流れを示すフローチャートである。
【図5】図5はEGRガス漏れ量検出ルーチンの処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】図6はEGRガス漏れ量推定ルーチンの処理の流れを示すフローチャートである。
【図7】図7は吸入空気量増加制御の際の各パラメータの関係を示す図である。
【図8】図8は実施例1の吸入空気量増加制御の実行例を示すタイムチャートである。
【図9】図9は吸入空気量増加と点火遅角による燃焼改善を示す図である。
【図10】図10は吸入空気量増加とエンジン回転速度上昇による燃焼改善を示す図である。
【図11】図11は実施例2の吸入空気量増加制御ルーチンの処理の流れを示すフローチャートである。
【図12】図12は実施例3の吸入空気量増加制御ルーチンの処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態を具体化した幾つかの実施例を説明する。
【実施例1】
【0021】
本発明の実施例1を図1乃至図10に基づいて説明する。
まず、図1に基づいてエンジン制御システム全体の構成を概略的に説明する。
内燃機関であるエンジン11の吸気管12(吸気通路)の最上流部には、エアクリーナ13が設けられ、このエアクリーナ13の下流側に、吸入空気量を検出するエアフローメータ14が設けられている。一方、エンジン11の排気管15(排気通路)には、排出ガス中のCO,HC,NOx等を浄化する三元触媒等の触媒16が設置されている。
【0022】
このエンジン11には、吸入空気を過給する排気タービン駆動式の過給機17が搭載されている。この過給機17は、排気管15のうちの触媒16の上流側に排気タービン18が配置され、吸気管12のうちのエアフローメータ14の下流側にコンプレッサ19が配置されている。この過給機17は、排気タービン18とコンプレッサ19とが一体的に回転するように連結され、排出ガスの運動エネルギで排気タービン18を回転駆動することでコンプレッサ19を回転駆動して吸入空気を過給するようになっている。
【0023】
吸気管12のうちのコンプレッサ19の下流側には、モータ20によって開度調節されるスロットルバルブ21と、このスロットルバルブ21の開度(スロットル開度)を検出するスロットル開度センサ22とが設けられている。
【0024】
更に、スロットルバルブ21の下流側には、吸入空気を冷却するインタークーラがサージタンク23(吸気通路)と一体的に設けられている。尚、サージタンク23やスロットルバルブ21の上流側にインタークーラを配置するようにしても良い。サージタンク23には、エンジン11の各気筒に空気を導入する吸気マニホールド24(吸気通路)が設けられ、各気筒毎に筒内噴射又は吸気ポート噴射を行う燃料噴射弁(図示せず)が取り付けられている。エンジン11のシリンダヘッドには、各気筒毎に点火プラグ(図示せず)が取り付けられ、各点火プラグの火花放電によって各気筒内の混合気に着火される。
【0025】
エンジン11の各気筒の排気口には排気マニホールド25(排気通路)が接続され、各気筒の排気マニホールド25の下流側の集合部が排気タービン18の上流側の排気管15に接続されている。また、排気タービン18の上流側と下流側とをバイパスさせる排気バイパス通路26が設けられ、この排気バイパス通路26に、排気バイパス通路26を開閉するウェイストゲートバルブ27が設けられている。
【0026】
このエンジン11には、触媒16の上流側の排気通路(排気マニホールド25又は排気管15)から排出ガスの一部をEGRガスとしてスロットルバルブ21の下流側の吸気通路(サージタンク23又は吸気マニホールド24)に還流させるEGR装置28が搭載されている。このEGR装置28は、触媒16の上流側の排気通路とスロットルバルブ21の下流側の吸気通路との間にEGR配管29が接続され、このEGR配管29に、EGRガスを冷却するEGRクーラ30と、EGRガス流量を調節するEGR弁31が設けられている。このEGR弁31は、DCモータやステッピングモータ等の駆動モータ(図示せず)によって開度が調整される。また、EGR配管29のうちのEGRクーラ30の下流側には、EGRクーラ30の下流側のガス温度を検出する温度センサ32が設けられている。
【0027】
その他、エンジン11には、冷却水温を検出する冷却水温センサ33や、クランク軸(図示せず)が所定クランク角回転する毎にパルス信号を出力するクランク角センサ34等が設けられ、クランク角センサ34の出力信号に基づいてクランク角やエンジン回転速度が検出される。また、EGRガスが還流される吸気通路(サージタンク23又は吸気マニホールド24)には、EGRガス濃度を検出するEGRガスセンサ35(例えば空燃比センサや酸素センサ等)と、インマニ圧(サージタンク23又は吸気マニホールド24内の吸気圧)を検出する吸気圧センサ36が設けられている。
【0028】
これら各種センサの出力は、電子制御ユニット(以下「ECU」と表記する)37に入力される。このECU37は、マイクロコンピュータを主体として構成され、内蔵されたROM(記憶媒体)に記憶された各種のエンジン制御用のプログラムを実行することで、エンジン運転状態に応じて、燃料噴射量、点火時期、スロットル開度(吸入空気量)等を制御する。
【0029】
その際、ECU37は、エンジン運転状態(例えばエンジン回転速度や負荷等)に応じて目標EGR流量(又は目標EGR率)を算出し、この目標EGR流量(又は目標EGR率)を実現するようにEGR弁31の開度を制御する。例えば、アイドル運転時(低負荷運転時)には、EGR弁31を全閉位置に制御する。
【0030】
ところで、EGR弁31の摩耗や噛み込み等によってEGR弁31の全閉時の隙間が拡大して、EGRガスの漏れ量(EGR弁31の全閉時に吸気通路に流れるEGRガス量)が増加することがある。特にアイドル運転時のような低負荷運転時(吸入空気量が少ないとき)には、EGRガスの漏れの影響でEGRガスが過多となり、燃焼状態の悪化を招く可能性がある。
【0031】
そこで、本実施例1では、ECU37により後述する図4及び図5の各ルーチン(又は図4及び図6の各ルーチン)を実行することで、EGR弁31が全閉位置に制御されるアイドル運転中(低負荷運転中)に、EGRガス漏れ量(EGR弁31の全閉時に吸気通路に流れるEGRガス量)を検出又は推定し、このEGRガス漏れ量が所定の許容値を越えたときに、インマニ圧(吸気圧)が目標インマニ圧(目標吸気圧)となるように吸入空気量を増加させる吸入空気量増加制御を実行する。
【0032】
このように、EGRガス漏れ量が許容値を越えたときに、インマニ圧が目標インマニ圧となるように吸入空気量を増加させる吸入空気量増加制御を実行することで、吸入空気量を増加させることができると共に、EGR弁31の上流側圧力(排気通路側圧力)と下流側圧力(吸気通路側圧力)との差圧を小さくしてEGRガス漏れ量を減少させることができ、EGR率(=筒内流入EGRガス量/筒内流入総ガス量)を効果的に減少させることができる。
【0033】
図2(a)に示すように、一般に、EGR弁31の上流側圧力と下流側圧力との差圧(以下「前後差圧」という)が大きいほどEGRガス漏れ量が増加するため、本実施例1では、目標インマニ圧を設定する際に、EGRガス漏れ量が所定値以下となるようにEGR弁31の前後差圧の目標値である目標前後差圧ΔPtgを算出し、図2(b)に示すように、EGR弁31の前後差圧が目標前後差圧ΔPtgとなるように目標インマニ圧Ptg(つまり目標前後差圧ΔPtgに対応する目標インマニ圧Ptg)を算出することで、EGRガス漏れ量が所定値以下となるように目標インマニ圧Ptgを設定する。
【0034】
EGRガス漏れ量を検出又は推定する具体的な方法としては、例えば、EGRガスセンサ35の出力に基づいてEGRガス漏れ量を検出する。このようにすれば、EGRガス漏れ量を精度良く検出することができる。
【0035】
或は、吸気圧センサ36で検出したインマニ圧(吸気圧)、温度センサ32で検出したEGRクーラ下流温度(EGRクーラ30の下流側のガス温度)、EGR弁31の全閉付近の駆動トルク(駆動モータのトルク)のうちの少なくとも一つに基づいてEGRガス漏れ量を推定するようにしても良い。
【0036】
図3(a)及び(b)に示すように、EGRガス漏れ量が多くなるほどインマニ圧が高くなる。また、図3(c)に示すように、EGRガス漏れ量が多くなるほどEGRクーラ下流温度が高くなる。また、図3(d)に示すように、EGR弁31の全閉時の隙間が大きくなるほどEGRガス漏れ量が多くなると共にEGR弁31の全閉付近の駆動トルクが小さくなる。尚、EGR弁31の全閉付近は、EGR弁31の摩擦抵抗でモータ電流が増加して角速度が変化するため、モータ電流や角速度に基づいてEGR弁31の全閉付近の駆動トルク(駆動モータのトルク)を算出することができる。
【0037】
図3(a)〜(d)に示すように、インマニ圧、EGRクーラ下流温度、EGR弁31の全閉付近の駆動トルクは、いずれもEGRガス漏れ量を精度良く反映したパラメータとなり、これらのパラメータ(インマニ圧、EGRクーラ下流温度、EGR弁31の全閉付近の駆動トルク)のうちの少なくとも一つを用いれば、EGRガス漏れ量を精度良く推定することができる。この場合、EGRガス漏れ量を検出するためのEGRガスセンサ35を省略することができる。
【0038】
また、本実施例1では、吸入空気量増加制御を実行したときに、吸入空気量増加制御による吸入空気量の増加に応じて点火時期を遅角させて、吸入空気量増加制御によるトルク増加(吸入空気量の増加)を点火時期の遅角による要求トルクの増加(要求吸入空気量の増加)によって吸収する。
【0039】
或は、吸入空気量増加制御による吸入空気量の増加に応じてエンジン11の補機負荷(例えばオルタネータの負荷)を増加させて、吸入空気量増加制御によるトルク増加(吸入空気量の増加)を補機負荷(例えばオルタネータの負荷)の増加による要求トルクの増加(要求吸入空気量の増加)によって吸収するようにしても良い。
【0040】
また、吸入空気量増加制御による吸入空気量の増加に応じて目標エンジン回転速度(目標アイドル回転速度)を上昇させて、吸入空気量増加制御によるトルク増加(吸入空気量の増加)を目標エンジン回転速度の上昇による要求トルクの増加(要求吸入空気量の増加)によって吸収するようにしても良い。
【0041】
以上説明した吸入空気量増加制御は、ECU37によって図4及び図5の各ルーチン(又は図4及び図6の各ルーチン)に従って実行される。以下、各ルーチンの処理内容を説明する。
【0042】
[吸入空気量増加制御ルーチン]
図4に示す吸入空気量増加制御ルーチンは、ECU37の電源オン期間中(イグニッションスイッチのオン期間中)に所定周期で繰り返し実行され、特許請求の範囲でいう吸入空気量増加制御手段としての役割を果たす。本ルーチンが起動されると、まず、ステップ101で、アイドル運転中(低負荷運転中)であるか否かを判定し、アイドル運転中ではないと判定された場合には、ステップ102以降の処理を実行することなく、本ルーチンを終了する。
【0043】
一方、上記ステップ101で、アイドル運転中であると判定された場合には、ステップ102に進み、後述する図5のEGRガス漏れ量検出ルーチンを実行してEGRガス漏れ量を検出する。或は、後述する図6のEGRガス漏れ量推定ルーチンを実行してEGRガス漏れ量を推定するようにしても良い。
【0044】
この後、ステップ103に進み、EGRガス漏れ量が所定の許容値を越えているか否かを判定し、EGRガス漏れ量が許容値以下であると判定された場合には、EGRガスの漏れによる悪影響がほとんどないと判断して、吸入空気量増加制御を実行することなく、本ルーチンを終了する。
【0045】
これに対して、上記ステップ103で、EGRガス漏れ量が許容値を越えていると判定された場合には、ステップ104に進み、目標インマニ圧を設定する。この場合、EGRガス漏れ量が所定値以下となるようにEGR弁31の前後差圧の目標値である目標前後差圧ΔPtgを算出し、EGR弁31の前後差圧が目標前後差圧ΔPtgとなるように目標インマニ圧Ptg(つまり目標前後差圧ΔPtgに対応する目標インマニ圧Ptg)を算出することで、EGRガス漏れ量が所定値以下となるように目標インマニ圧Ptgを設定する。
【0046】
この後、ステップ105に進み、インマニ圧が目標インマニ圧Ptgとなるようにスロットル開度を増加させて吸入空気量を増加させる吸入空気量増加制御を実行する。これにより、図7(a)に示すように、EGRガス漏れ量に応じて吸入空気量を増加させると共に、EGR弁31の前後差圧を小さくしてEGRガス漏れ量を減少させる。
【0047】
この後、ステップ106に進み、図7(c)に示すように、吸入空気量増加制御による吸入空気量の増加に応じて点火時期を遅角させる。或は、図7(d)に示すように、吸入空気量増加制御による吸入空気量の増加に応じてエンジン11の補機負荷(例えばオルタネータの負荷)を増加させるようにしても良い。また、図7(e)に示すように、吸入空気量増加制御による吸入空気量の増加に応じて目標エンジン回転速度(目標アイドル回転速度)を上昇させるようにしても良い。
【0048】
尚、点火時期の遅角、補機負荷の増加、目標エンジン回転速度の上昇のうちのいずれか一つのみを実行するようにしても良いが、点火時期の遅角、補機負荷の増加、目標エンジン回転速度の上昇のうちの二つ又は三つを組み合わせて実行するようにしても良い。
【0049】
[EGRガス漏れ量検出ルーチン]
図5に示すEGRガス漏れ量検出ルーチンは、前記図4の吸入空気量増加制御ルーチンのステップ102で実行されるサブルーチンであり、特許請求の範囲でいうEGRガス漏れ量情報判定手段としての役割を果たす。本ルーチンが起動されると、ステップ201で、EGRガスセンサ35の出力に基づいてEGRガス漏れ量を検出する。このようにすれば、EGRガス漏れ量を精度良く検出することができる。
【0050】
[EGRガス漏れ量推定ルーチン]
前記図5のEGRガス漏れ量検出ルーチンに代えて、図6に示すEGRガス漏れ量推定ルーチンを実行するようにしても良い。この場合、図6のEGRガス漏れ量推定ルーチンが特許請求の範囲でいうEGRガス漏れ量情報判定手段としての役割を果たす。本ルーチンが起動されると、まず、ステップ301で、吸気圧センサ36で検出したインマニ圧、温度センサ32で検出したEGRクーラ下流温度、EGR弁31の全閉付近の駆動トルクのうちの一つ又は二つ以上を読み込む。
【0051】
この後、ステップ302に進み、インマニ圧、EGRクーラ下流温度、EGR弁31の全閉付近の駆動トルクのうちの一つ又は二つ以上を用いて、マップ又は数式等によりEGRガス漏れ量を算出(推定)する。
【0052】
次に図8を用いて本実施例1の吸入空気量増加制御の実行例を説明する。
EGR弁31が全閉位置に制御されるアイドル運転中に、EGRガス漏れ量を検出又は推定し、このEGRガス漏れ量が所定の許容値を越えた時点t1 で、EGR弁31の前後差圧が目標前後差圧ΔPtgとなるように目標インマニ圧Ptgを算出することで、EGRガス漏れ量が所定値以下となるように目標インマニ圧tgを設定し、インマニ圧が目標インマニ圧Ptgとなるように吸入空気量を増加させる吸入空気量増加制御を実行する。これにより、吸入空気量を増加させることができると共に、EGR弁31の前後差圧を小さくしてEGRガス漏れ量を減少させることができ、その結果、EGR率を効果的に減少させることができ、EGRガスの漏れに起因する燃焼状態の悪化を抑制して燃焼状態を改善することができる。
【0053】
更に、吸入空気量増加制御を実行したときに、吸入空気量増加制御による吸入空気量の増加に応じて点火時期を遅角させる。これにより、吸入空気量増加制御によるトルク増加(吸入空気量の増加)を点火時期の遅角による要求トルクの増加(要求吸入空気量の増加)によって吸収することができ、不快なトルク変動を発生させることなく、燃焼状態を改善してエンジン回転変動を抑制することができる(図9参照)。
【0054】
或は、吸入空気量増加制御による吸入空気量の増加に応じてエンジン11の補機負荷(例えばオルタネータの負荷)を増加させるようにしても良い。これにより、吸入空気量増加制御によるトルク増加(吸入空気量の増加)を補機負荷(例えばオルタネータの負荷)の増加による要求トルクの増加(要求吸入空気量の増加)によって吸収することができ、不快なトルク変動を発生させることなく、燃焼状態を改善してエンジン回転変動を抑制することができる。
燃焼状態を改善しながらエンジン回転変動を抑制することができる(図9参照)。
【0055】
また、吸入空気量増加制御による吸入空気量の増加に応じて目標エンジン回転速度(目標アイドル回転速度)を上昇させるようにしても良い。これにより、吸入空気量増加制御によるトルク増加(吸入空気量の増加)を目標エンジン回転速度の上昇による要求トルクの増加(要求吸入空気量の増加)によって吸収することができ、不快なトルク変動を発生させることなく、燃焼状態を改善してエンジン回転変動を抑制することができる(図10参照)。
【実施例2】
【0056】
次に、図11を用いて本発明の実施例2を説明する。但し、前記実施例1と実質的に同一部分については説明を省略又は簡略化し、主として前記実施例1と異なる部分について説明する。
【0057】
本実施例2では、ECU37により後述する図11の吸入空気量増加制御ルーチンを実行することで、EGRガス漏れ量情報として、エンジン回転変動(例えばエンジン回転速度の標準偏差)を検出し、このエンジン回転変動(例えばエンジン回転速度の標準偏差)が所定の許容値を越えたときに、インマニ圧が目標インマニ圧となるように吸入空気量を増加させる吸入空気量増加制御を実行する。図3(e)に示すように、EGRガス漏れ量が多くなるほどエンジン回転変動(例えばエンジン回転速度の標準偏差)が大きくなるため、エンジン回転変動は、EGRガス漏れ量を精度良く反映したパラメータとなる。
【0058】
図11の吸入空気量増加制御ルーチンでは、まず、ステップ401で、アイドル運転中(低負荷運転中)であるか否かを判定し、アイドル運転中であると判定された場合には、ステップ402に進み、クランク角センサ34で検出したエンジン回転速度に基づいてエンジン回転変動(例えばエンジン回転速度の標準偏差)を算出(検出)する。このステップ402の処理が特許請求の範囲でいうEGRガス漏れ量情報判定手段としての役割を果たす。
【0059】
この後、ステップ403に進み、エンジン回転変動が所定の許容値を越えているか否かを判定し、エンジン回転変動が許容値以下であると判定された場合には、EGRガスの漏れによる悪影響がほとんどないと判断して、吸入空気量増加制御を実行することなく、本ルーチンを終了する。
【0060】
これに対して、上記ステップ403で、エンジン回転変動が許容値を越えていると判定された場合には、EGRガス漏れ量が許容値を越えていると判断して、ステップ404に進み、EGR弁31の前後差圧が目標前後差圧ΔPtgとなるように目標インマニ圧Ptgを算出することで、EGRガス漏れ量が所定値以下となるように目標インマニ圧Ptgを設定する。
【0061】
この後、ステップ405に進み、インマニ圧が目標インマニ圧Ptgとなるようにスロットル開度を増加させて吸入空気量を増加させる吸入空気量増加制御を実行する。この後、ステップ406に進み、吸入空気量増加制御による吸入空気量の増加に応じて点火時期を遅角させる。或は、吸入空気量増加制御による吸入空気量の増加に応じてエンジン11の補機負荷(例えばオルタネータの負荷)を増加させるようにしても良い。また、吸入空気量増加制御による吸入空気量の増加に応じて目標エンジン回転速度(目標アイドル回転速度)を上昇させるようにしても良い。
【0062】
尚、点火時期の遅角、補機負荷の増加、目標エンジン回転速度の上昇のうちのいずれか一つのみを実行するようにしても良いが、点火時期の遅角、補機負荷の増加、目標エンジン回転速度の上昇のうちの二つ又は三つを組み合わせて実行するようにしても良い。
【0063】
以上説明した本実施例2では、EGRガス漏れ量情報として、エンジン回転変動(例えばエンジン回転速度の標準偏差)を検出し、このエンジン回転変動が所定の許容値を越えたときに、インマニ圧が目標インマニ圧Ptgとなるように吸入空気量を増加させる吸入空気量増加制御を実行するようにしたので、前記実施例1とほぼ同じ効果を得ることができる。また、EGRガス漏れ量を検出するためのEGRガスセンサ35を省略することができる。
【実施例3】
【0064】
次に、図12を用いて本発明の実施例3を説明する。但し、前記実施例1,2と実質的に同一部分については説明を省略又は簡略化し、主として前記実施例1,2と異なる部分について説明する。
【0065】
本実施例3では、ECU37により後述する図12の吸入空気量増加制御ルーチンを実行することで、EGRガス漏れ量を検出又は推定すると共にエンジン回転変動を検出し、EGRガス漏れ量が所定の許容値を越え、且つ、エンジン回転変動が所定の許容値を越えたときに、インマニ圧が目標インマニ圧となるように吸入空気量を増加させる吸入空気量増加制御を実行する。
【0066】
図12の吸入空気量増加制御ルーチンでは、まず、ステップ501で、アイドル運転中(低負荷運転中)であるか否かを判定し、アイドル運転中であると判定された場合には、ステップ502に進み、前述した図5のEGRガス漏れ量検出ルーチンを実行してEGRガス漏れ量を検出する。或は、前述した図6のEGRガス漏れ量推定ルーチンを実行してEGRガス漏れ量を推定するようにしても良い。
【0067】
この後、ステップ503に進み、クランク角センサ34で検出したエンジン回転速度に基づいてエンジン回転変動(例えばエンジン回転速度の標準偏差)を算出(検出)する。
この後、ステップ504に進み、EGRガス漏れ量が所定の許容値を越えているか否かを判定し、EGRガス漏れ量が許容値を越えていると判定された場合には、ステップ505に進み、エンジン回転変動が所定の許容値を越えているか否かを判定する。
【0068】
上記ステップ504でEGRガス漏れ量が許容値以下であると判定された場合、又は、上記ステップ505でエンジン回転変動が許容値以下であると判定された場合には、EGRガスの漏れによる悪影響がほとんどないと判断して、吸入空気量増加制御を実行することなく、本ルーチンを終了する。
【0069】
これに対して、上記ステップ504でEGRガス漏れ量が許容値を越えていると判定され、且つ、上記ステップ505でエンジン回転変動が許容値を越えていると判定された場合には、ステップ506に進み、EGR弁31の前後差圧が目標前後差圧ΔPtgとなるように目標インマニ圧Ptgを算出することで、EGRガス漏れ量が所定値以下となるように目標インマニ圧Ptgを設定する。
【0070】
この後、ステップ507に進み、インマニ圧が目標インマニ圧Ptgとなるようにスロットル開度を増加させて吸入空気量を増加させる吸入空気量増加制御を実行する。この後、ステップ508に進み、吸入空気量増加制御による吸入空気量の増加に応じて点火時期を遅角させる。或は、吸入空気量増加制御による吸入空気量の増加に応じてエンジン11の補機負荷(例えばオルタネータの負荷)を増加させるようにしても良い。また、吸入空気量増加制御による吸入空気量の増加に応じて目標エンジン回転速度(目標アイドル回転速度)を上昇させるようにしても良い。
【0071】
尚、点火時期の遅角、補機負荷の増加、目標エンジン回転速度の上昇のうちのいずれか一つのみを実行するようにしても良いが、点火時期の遅角、補機負荷の増加、目標エンジン回転速度の上昇のうちの二つ又は三つを組み合わせて実行するようにしても良い。
【0072】
以上説明した本実施例3では、EGRガス漏れ量とエンジン回転変動が両方とも許容値を越えたときだけ吸入空気量増加制御を実行するようにしたので、必要以上に吸入空気量増加制御を実行することを回避することができる。
【0073】
尚、上記各実施例1〜3では、アイドル運転中にEGRガス漏れ量情報が許容値を越えたときに吸入空気量増加制御を実行するようにしたが、これに限定されず、アイドル運転以外でもEGR弁31が全閉位置に制御される運転状態でEGRガス漏れ量情報が許容値を越えたときに吸入空気量増加制御を実行するようにしても良い。
【0074】
また、上記各実施例1〜3では、過給機を搭載したエンジンに本発明を適用したが、これに限定されず、過給機を搭載していない自然吸気エンジン(NAエンジン)に本発明を適用しても良い。
【符号の説明】
【0075】
11…エンジン(内燃機関)、12…吸気管(吸気通路)、15…排気管(排気通路)、21…スロットルバルブ、23…サージタンク(吸気通路)、24…吸気マニホールド(吸気通路)、25…排気マニホールド(排気通路)、28…EGR装置、29…EGR配管、30…EGRクーラ、31…EGR弁、32…温度センサ、34…クランク角センサ、35…EGRガスセンサ、36…吸気圧センサ、37…ECU(EGRガス漏れ量情報判定手段,吸入空気量増加制御手段)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気通路から排出ガスの一部をEGRガスとして吸気通路に還流させる際のEGRガス流量を調節するEGR弁を備えた内燃機関の制御装置において、
前記EGR弁の全閉時に前記吸気通路に流れるEGRガス量又はこれに応じて変化する情報(以下これらを「EGRガス漏れ量情報」と総称する)を検出又は推定するEGRガス漏れ量情報判定手段と、
前記EGRガス漏れ量情報に応じて、前記吸気通路内の吸気圧が目標吸気圧となるように吸入空気量を増加させる吸入空気量増加制御を実行する吸入空気量増加制御手段と
を備えていることを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項2】
前記吸入空気量増加制御手段は、前記EGRガス漏れ量情報が所定の許容値を越えたときに前記吸入空気量増加制御を実行することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項3】
前記吸入空気量増加制御手段は、前記目標吸気圧を設定する際に、前記EGRガス漏れ量情報が所定値以下となるように前記EGR弁の上流側圧力と下流側圧力との差圧(以下「前後差圧」という)の目標値である目標前後差圧を算出し、前記前後差圧が前記目標前後差圧となるように前記目標吸気圧を算出することを特徴とする請求項1又は2に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項4】
前記吸入空気量増加制御による吸入空気量の増加に応じて点火時期を遅角させる手段を備えていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の内燃機関の制御装置。
【請求項5】
前記吸入空気量増加制御による吸入空気量の増加に応じて内燃機関の補機負荷を増加させる手段を備えていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の内燃機関の制御装置。
【請求項6】
前記吸入空気量増加制御による吸入空気量の増加に応じて内燃機関の目標回転速度を上昇させる手段を備えていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の内燃機関の制御装置。
【請求項7】
前記吸気通路内のEGRガス濃度を検出するEGRガスセンサを備え、
前記EGRガス漏れ量情報判定手段は、前記EGRガスセンサの出力に基づいて前記EGRガス漏れ量を検出することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の内燃機関の制御装置。
【請求項8】
前記EGRガス漏れ量情報判定手段は、前記吸気通路内の吸気圧、前記EGRガスを冷却するEGRクーラの下流側のガス温度、前記EGR弁の駆動トルクのうちの少なくとも一つに基づいて前記EGRガス漏れ量を推定することを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の内燃機関の制御装置。
【請求項9】
前記EGRガス漏れ量情報判定手段は、前記EGRガス漏れ量情報として、内燃機関の回転変動を検出することを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の内燃機関の制御装置。
【請求項1】
内燃機関の排気通路から排出ガスの一部をEGRガスとして吸気通路に還流させる際のEGRガス流量を調節するEGR弁を備えた内燃機関の制御装置において、
前記EGR弁の全閉時に前記吸気通路に流れるEGRガス量又はこれに応じて変化する情報(以下これらを「EGRガス漏れ量情報」と総称する)を検出又は推定するEGRガス漏れ量情報判定手段と、
前記EGRガス漏れ量情報に応じて、前記吸気通路内の吸気圧が目標吸気圧となるように吸入空気量を増加させる吸入空気量増加制御を実行する吸入空気量増加制御手段と
を備えていることを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項2】
前記吸入空気量増加制御手段は、前記EGRガス漏れ量情報が所定の許容値を越えたときに前記吸入空気量増加制御を実行することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項3】
前記吸入空気量増加制御手段は、前記目標吸気圧を設定する際に、前記EGRガス漏れ量情報が所定値以下となるように前記EGR弁の上流側圧力と下流側圧力との差圧(以下「前後差圧」という)の目標値である目標前後差圧を算出し、前記前後差圧が前記目標前後差圧となるように前記目標吸気圧を算出することを特徴とする請求項1又は2に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項4】
前記吸入空気量増加制御による吸入空気量の増加に応じて点火時期を遅角させる手段を備えていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の内燃機関の制御装置。
【請求項5】
前記吸入空気量増加制御による吸入空気量の増加に応じて内燃機関の補機負荷を増加させる手段を備えていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の内燃機関の制御装置。
【請求項6】
前記吸入空気量増加制御による吸入空気量の増加に応じて内燃機関の目標回転速度を上昇させる手段を備えていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の内燃機関の制御装置。
【請求項7】
前記吸気通路内のEGRガス濃度を検出するEGRガスセンサを備え、
前記EGRガス漏れ量情報判定手段は、前記EGRガスセンサの出力に基づいて前記EGRガス漏れ量を検出することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の内燃機関の制御装置。
【請求項8】
前記EGRガス漏れ量情報判定手段は、前記吸気通路内の吸気圧、前記EGRガスを冷却するEGRクーラの下流側のガス温度、前記EGR弁の駆動トルクのうちの少なくとも一つに基づいて前記EGRガス漏れ量を推定することを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の内燃機関の制御装置。
【請求項9】
前記EGRガス漏れ量情報判定手段は、前記EGRガス漏れ量情報として、内燃機関の回転変動を検出することを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の内燃機関の制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−113180(P2013−113180A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−258664(P2011−258664)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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