内燃機関の制御装置
【課題】排気管内に生じる凝縮水質量に基づき、空燃比センサのセンサ素子加熱制御の可否判定を精度良く行う内燃機関の制御装置を得ること。
【解決手段】本発明の内燃機関1の制御装置は、排ガスの飽和水蒸気圧と水蒸気分圧に基づいて排気管41内の凝縮水質量変化率を演算し、排気管41内で凝縮水が受け取る熱量に基づいて排気管41内の蒸発質量変化率を演算する。そして、凝縮水質量変化率と蒸発質量変化率に基づいて凝縮水質量を更新し、その更新後の凝縮水質量に基づいて加熱制御手段による加熱制御を行うか否かを判定する。
【解決手段】本発明の内燃機関1の制御装置は、排ガスの飽和水蒸気圧と水蒸気分圧に基づいて排気管41内の凝縮水質量変化率を演算し、排気管41内で凝縮水が受け取る熱量に基づいて排気管41内の蒸発質量変化率を演算する。そして、凝縮水質量変化率と蒸発質量変化率に基づいて凝縮水質量を更新し、その更新後の凝縮水質量に基づいて加熱制御手段による加熱制御を行うか否かを判定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気管内に生じる凝縮水質量に基づき、空燃比センサのセンサ素子加熱制御の可否判定を行う内燃機関の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、内燃機関の排気管に設けられた排ガスセンサを加熱するヒータの通電状態を制御する排ガスセンサの制御装置において、推定した排気管温度と露点との差異である相対壁温と、排ガス質量流量に基づいて凝縮水積算量をマップ演算し、これを前回値に加算して凝縮水質量を演算する技術が開示されている。そして、凝縮水積算量マップは、相対壁温が大きいほど凝縮水質量が小さくなり、排ガス質量流量が基準値以上で負の値をとるように設定される。演算された凝縮水質量に基づき排気管内に凝縮水が無いと判定された場合に排ガスセンサのヒータ通電を許可する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-228564号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、内燃機関の始動後において排気管内に凝縮水の存在する期間のうちの大部分が、排気管が露点以上となる蒸発過程であって、この間は排ガスと凝縮水との間の質量およびエネルギの授受が重要因子として働くため、相対壁温と排ガス質量流量のみで凝縮水量を精度良く演算することができない。
【0005】
したがって、凝縮水の完全に無くなる本来のタイミングに対して早い側にヒータ起動した場合には、センサ素子の被水割れを生じ、一方、凝縮水の完全に無くなるタイミングに対して遅い側にヒータ起動した場合には、始動時の空燃比制御精度悪化にともなう排気性能の悪化を生じるといった課題があった。
【0006】
本発明は上述した問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、排気管内に生じる凝縮水質量に基づき、空燃比センサのセンサ素子加熱制御の可否判定を精度良く行う内燃機関の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する本発明の内燃機関の制御装置は、排ガスの飽和水蒸気圧と水蒸気分圧に基づいて排気管内の凝縮水質量変化率を演算し、排気管内の凝縮水が受け取る熱量に基づいて排気管内の蒸発質量変化率を演算する。そして、凝縮水質量変化率と蒸発質量変化率とに基づいて排気管内の凝縮水質量を更新し、その更新された凝縮水質量に基づいて加熱制御手段による加熱制御を行うか否かの判定を行う。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、排気管内の凝縮水質量を精度良く演算でき、空燃比センサのセンサ素子加熱制御の可否判定を精度良く実施することができるので、内燃機関の始動時において空燃比センサのセンサ素子の被水割れを適切に防止でき、燃費および排気性能の悪化を低減することができる。なお、上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1実施の形態におけるエンジンシステムの構成を説明する図。
【図2】排気管内に凝縮水が発生するメカニズムを説明する図。
【図3】空燃比センサのセンサ素子加熱制御の可否判定を行うフローチャートを説明する図。
【図4】排ガス質量流量、排ガス温度および排気管温度を演算するブロック線図を説明する図。
【図5】排ガス質量流量と管内熱伝達率との関係を説明する図。
【図6】排気管温度と外気温度との差と、管外熱伝達率との関係、ならびに車速と管外熱伝達率との関係を説明する図。
【図7】内燃機関停止後における外気温、冷却水温および排気管温度の推移を説明する図。
【図8】質量とエネルギの収支にもとづいて凝縮水質量を演算するブロック線図を説明する図。
【図9】センサ素子加熱制御の可否判定を行うブロック線図を説明する図。
【図10】飽和水蒸気圧と大気圧との比と、温度との関係、ならびに飽和水蒸気圧と大気圧との比と、当量比との関係を説明する図。
【図11】大気圧の変化が沸点に与える影響を説明する図。
【図12】蒸発潜熱と凝縮水温度との関係を説明する図。
【図13】排気管への凝縮水の付着割合と排ガス質量流量との関係を説明する図。
【図14】内燃機関の始動時における排ガス質量流量、排ガス温度、排気管温度、凝縮水質量、加熱制御判定の変化を説明する図。
【図15】エンジンの停止時期と再始動時からセンサ素子加熱制御開始までの期間との関係を説明する図。
【図16】内燃機関の始動と停止が繰り返し行われた場合における排ガス質量流量、排ガス温度、排気管温度、凝縮水質量、センサ加熱制御判定の変化を説明する図。
【図17】始動後の凝縮水質量推移に与える排気管初期温度、排ガス温度、排ガス質量流量および排気中の水蒸気分圧の影響を説明する図。
【図18】伝達関数にもとづいて凝縮水質量を演算するブロック線図を説明する図。
【図19】排気管温度が始動時より露点に至るまでの間に発生する凝縮水質量と始動時排気管温度との関係を説明する図。
【図20】凝縮・蒸発過程の時定数と排ガス質量流量との関係、ならびに凝縮・蒸発過程の時定数と点火リタードとの関係を説明する図。
【図21】内燃機関の始動時における排ガス質量流量、排ガス温度、排気管温度、凝縮水質量、加熱制御判定の変化を説明する図。
【図22】内燃機関の始動と停止が繰り返し行われた場合における排ガス質量流量、排ガス温度、排気管温度、凝縮水質量、センサ加熱制御判定結果の変化を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図にもとづいて説明する。
[第1実施の形態]
図1は、第1実施の形態の構成におけるエンジンシステムを説明する図である。本実施の形態のエンジンシステムは、自動車用のエンジンシステムであり、内燃機関1を備えている。内燃機関1には、吸気流路および排気流路が連通している。吸気流路には、エアフローセンサおよびエアフローセンサに内蔵された吸気温度センサ2が組付けられている。吸気流路と排気流路には、ターボ過給機3が接続されている。ターボ過給機3は、コンプレッサーが吸気流路に、タービンが排気流路にそれぞれ接続されている。ターボ過給機3は、排ガスの有するエネルギをタービン翼の回転運動に変換するためのタービンと、タービン翼に連結されたコンプレッサー翼の回転によって吸入空気を圧縮するためのコンプレッサーとで構成されている。ターボ過給機3のコンプレッサー側の下流には、断熱圧縮されて上昇した吸気温度を冷却するためのインタークーラ5が備えられている。インタークーラ5の下流には、冷却後の過給温度を計測するための過給温度センサ6が組付けられている。過給温度センサ6の下流には、吸気流路を絞りシリンダに流入する吸入空気量を制御するためのスロットルバルブ7が備えられている。スロットルバルブ7はアクセル踏量とは独立にスロットル開度を制御することができる電子制御式スロットルバルブである。
【0011】
スロットルバルブ7の下流には吸気マニホールド8が連通している。インタークーラをスロットルバルブ7下流の吸気マニホールド8に一体化させて備える構成としてもよい。それによってコンプレッサー下流からシリンダまでの容積を小さくすることができ、トルクの応答性を向上させることができる。吸気マニホールド8には過給圧センサ9が組付けられている。吸気マニホールド8の下流には、吸気に偏流を生じさせることによって、シリンダ内流れの乱れを強化するタンブルコントロールバルブ10と、吸気ポート内に燃料を噴射する燃料噴射弁11が配置されている。燃料噴射弁はシリンダに直接燃料を噴射する方式としてもよい。
【0012】
内燃機関1は、バルブ開閉の位相を連続的に可変とする可変バルブ機構12および13を、吸気バルブ31および排気バルブ32にそれぞれ備えている。可変バルブ機構12、13には、バルブ開閉位相を検知するためのセンサ14および15が、吸気バルブ31および排気バルブ32にそれぞれ組付けられている。シリンダヘッド部にはシリンダ内に電極部を露出させ、スパークによって可燃混合気を引火する点火プラグ16が組付けられている。さらにシリンダにはノックの発生を検知するノックセンサ17が組付けられている。クランク軸にはクランク角度センサ18が組付けられている。クランク角度センサ18から出力される信号に基づき、内燃機関1の回転速度を検出することができる。
【0013】
排気流路の一部を構成する排気管41には、空燃比センサ20が組付けられており、空燃比センサ20の検出結果に基づき燃料噴射弁11より供給される燃料噴射量が目標空燃比となるように、フィードバック制御が行われる。空燃比センサ20の下流には、排気浄化触媒21が設けられており、一酸化炭素、窒素酸化物および未燃炭化水素などの有害排出ガス成分が触媒反応によって浄化される。
【0014】
ターボ過給機3には、エアバイパスバルブ4およびウェストゲートバルブ19が備えられている。エアバイパスバルブ4は、コンプレッサーの下流部からスロットルバルブ7の上流部における圧力が過剰に上昇するのを防ぐために備えられている。過給状態においてスロットルバルブ7を急激に閉止した場合に、エアバイパスバルブ4を開くことでコンプレッサー下流部のガスをコンプレッサー上流部へ逆流させ、過給圧を下げることができる。一方、ウェストゲートバルブ19は、内燃機関1が過剰な過給レベルとなるのを防ぐために設けられている。過給圧センサ9により検知された過給圧が所定の値に達した場合に、ウェストゲートバルブ19を開くことで、排ガスが排気タービンを迂回するように誘導され、過給を抑制あるいは保持することができる。
【0015】
本実施の形態におけるエンジンシステムは、図1に示すように、ECU(Electronic Control Unit)22を備えている。ECU22には、上述した各種センサと各種アクチュエータが接続されている。スロットルバルブ7、燃料噴射弁11、可変バルブ機構12および13などのアクチュエータは、ECU22により制御されている。さらに、上述した各種センサより入力された信号に基づき、内燃機関1の運転状態を検知し、運転状態に応じてECU22により決定されたタイミングで点火プラグ16が点火を行う。
【0016】
図2は、排気管内の凝縮水発生メカニズムを説明する図である。内燃機関の始動時において、排気バルブ32により内燃機関1のシリンダから排出された排ガス中の水蒸気は、排気管41やターボ過給機3への熱伝達によって冷却され露点(露点温度)に到達すると凝縮水を生じ、これが排気管41の内壁面に付着することで滞留する。この凝縮水が排ガスの流れによって活性化温度にまで加熱された空燃比センサ20のセンサ素子(図示せず)に付着すると、熱衝撃による素子割れを生じるおそれがある。これを適切に防止するためには、排気管41に滞留する凝縮水質量を検知し、これに基づき、空燃比センサ20のセンサ素子を加熱するための通電の可否を判定する必要がある。
【0017】
図3は、センサ素子加熱制御判定を行うフローチャートを説明する図である。図3に示すステップ301〜ステップ304の処理は、例えばECU22内において所定のプログラムサイクルで繰り返し実行される。
【0018】
まず、ステップ301において、排ガス温度および排ガス質量流量を演算する処理が行われる。そして、ステップ302において、前記排ガス温度および排ガス質量流量に基づき、排気管温度を演算する処理が行われる。それから、ステップ303において、前記排ガス温度、排ガス質量流量および排気管温度に基づき、凝縮水質量を演算する処理が行われる。したがって、排気管41内の凝縮水質量を正確に把握することができる。
【0019】
そして、ステップ304において、前記凝縮水質量に基づき空燃比センサ20のセンサ素子を加熱するための通電の可否を判定するセンサ素子加熱制御判定処理が行われる。例えば、凝縮水質量が予め設定された基準量よりも多い場合には、凝着水の付着によるセンサ割れを生じるおそれがあるとして、センサ素子加熱制御を不可と判定し、凝着水質量が基準値以下の場合には、センサ割れを生じるおそれがないとして、センサ素子加熱制御を可能と判定する。
【0020】
この様な構成とすることで、空燃比センサ20のセンサ素子加熱制御の可否の判定を精度良く実施することができ、凝縮水によるセンサ素子の素子割れを防止できるとともに、排気空燃比フィードバック制御開始までの無駄を排除して、内燃機関の冷機始動時の排気性能を向上することができる。
【0021】
また、本実施の形態のエンジンシステムにおいては、排ガス温度および排気管温度を演算する構成としたが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、温度センサによって排ガス温度および排気管温度を直接検知する構成としてもよく、上述の排ガス温度および排気管温度を演算する構成と同様の効果を奏することができる。
【0022】
図4は、排ガス質量流量、排ガス温度および排気管温度を演算するブロック線図を説明する図である。同ブロック線図は、図3中のステップ301および302内の演算処理の詳細な内容を示している。
【0023】
ブロック401の排ガス温度演算手段では、回転速度、充填効率、空燃比や燃料カットフラグおよび点火リタード等の点火時期制御量に基づき排気管41内を流れる排ガスの排ガス温度を演算する処理が行われる。ブロック402の排ガス質量流量演算手段では、回転速度、充填効率および空燃比や燃料カットフラグに基づき排気管41内を流れる排ガスの排ガス質量流量を演算する処理が行われる。
【0024】
ブロック403の管内熱伝達率演算手段では、排ガス温度および排ガス質量流量に基づき、排気管41内を流れる排ガスから排気管41の内壁面への管内熱伝達率を演算する処理が行われる。ブロック404の管内伝達熱量演算手段では、排ガス温度、排気管温度および管内熱伝達率に基づき排気管41内を流れる排ガスから排気管41の内壁面への管内伝達熱量を演算する処理が行われる。
【0025】
一方、ブロック405の管外熱伝達率演算手段では、排気管温度、エアフローセンサに内蔵された吸気温度センサ2にて検知された外気温、および車速に基づき、排気管41の外壁面から外気への管外熱伝達率を演算する処理が行われる。ブロック406の管外伝達熱量演算手段では、排気管温度と外気温と管外熱伝達率に基づき排気管41の外壁面から外気への管外伝達熱量を演算する処理が行われる。
【0026】
ブロック407の始動時排気管温度演算手段では、排気管温度、外気温、冷却水温および内燃機関1の運転状態(運転/停止)の情報に基づき、内燃機関の始動時における排気管温度を演算する処理が行われる。ブロック408の排気管温度演算手段では、排気管内伝達熱量、排気管外伝達熱量、始動時排気管温度および排気管41の熱容量に基づき、排気管温度を演算する処理が行われる。この様な構成とすることで、排気管41内外の熱伝達現象を詳細に考慮して、排気管温度を精度良く演算することができる。また排ガス温度および排気管温度検出のための温度センサを備える必要がなく、コストの低減ができる。
【0027】
図5は、排ガス質量流量と管内熱伝達率との関係を説明する図である。排気管41内における排ガスの排気管内流れは、乱流場を呈しており、排ガス質量流量が増加するにしたがって管内熱伝達率が増加する傾向を示す。図4中のブロック403の管内熱伝達率演算手段は、上述した排ガス質量流量と管内熱伝達率との関係をテーブル化したデータを有しており、排ガス質量流量を引数として管内熱伝達率をテーブル演算する。この様な構成とすることで、管内熱伝達率におよぼす排ガス質量流量の影響を適切に考慮することができ、排気管温度を精度良く予測することができる。
【0028】
図6(a)は、排気管温度と外気温度との差と、管外熱伝達率との関係を説明する図、図6(b)は、車速と管外熱伝達率との関係を説明する図である。管外熱伝達は、排気管と外気との温度差によって排気管周りの空気に働く浮力が排気管外の熱伝達の主要因として生じる自然対流熱伝達と、排気管周りの空気の乱流状態が排気管外の熱伝達の主要因として生じる強制対流熱伝達とに分類することができる。
【0029】
自然対流条件においては、排気管温度と外気温との差異が増加するにしたがって、管外熱伝達率が増加する傾向を示す。また、強制対流条件においては、車速が増加するにしたがって、管周り流れのレイノルズ数が増加し、管外熱伝達率が増加する傾向を示す。図4中のブロック405の管外熱伝達率演算手段は、上述した排気管温度と外気温度との差と、管外熱伝達率との関係、および、車速と管外熱伝達率との関係をそれぞれテーブル化したデータを有しており、排気管温度、外気温および車速に基づいて管外熱伝達率をテーブル演算する。この様な構成とすることで、管外熱伝達率におよぼす排気管温度と外気温との差および車速を適切に考慮することができ、排気管温度を精度良く予測することができる。
【0030】
図7は、内燃機関停止後における外気温、冷却水温および排気管温度の推移を説明する図である。図7に示すように、内燃機関停止後には、冷却水温θclおよび排気管温度θemのいずれも外気温θatmに収束する様に温度低下し、十分な時間が経過した後、均熱状態に至る。したがって、外気温と冷却水温との差異の大小によって均熱状態にあるか否かを判定することができる。始動時に冷却水温と外気温を検知し、これらの差異が所定値以上である場合には、均熱状態に至る途中の段階であり、その場合、下記の式(1)に基づいて、始動時の排気管温度を求める。
【0031】
【数1】
【0032】
図4中のブロック407の始動時排気管温度演算手段は、上記式(1)の関係を用いて排気管温度の初期値を演算する。この様な構成とすることで、排気管温度が始動時より露点に至るまでの間に発生する凝縮水質量を演算する上で重要な始動時排気管温度を、精度良く演算することができる。
【0033】
図8は、質量とエネルギの収支に基づいて凝縮水質量を演算するブロック線図を説明する図である。同ブロック線図は、図3中のステップ303内の演算処理の詳細な内容を示している。
【0034】
ブロック801の凝縮水残留質量記録手段では、内燃機関1の運転状態情報である運転/停止の情報および凝縮水質量の前回値に基づき内燃機関1の停止時における凝縮水の残留質量を記録する処理が行われる。ブロック801の凝縮水残留質量記録手段は、ECU22への通電が遮断された場合においても、残留質量のデータを保持可能とし、次回の内燃機関1の始動時において、凝縮水質量の初期値設定に用いることができる。
【0035】
ブロック802の飽和水蒸気演算手段では、排気管温度に基づき飽和水蒸気圧を演算する処理が行われる。そして、ブロック803の凝縮水質量変化率演算手段では、排ガスの水蒸気分圧、排ガス質量流量および飽和水蒸気圧に基づき排気管41内の凝縮水質量変化率を演算する処理が行われる。凝縮水質量変化率とは、単位時間当たりに凝縮して増加する水の質量である。
【0036】
ブロック804の凝縮エネルギ変化率演算手段では、凝縮水質量変化率、排気管温度、水の比熱および凝縮水受熱量に基づき凝縮エネルギ変化率を演算する。凝縮エネルギ変化率とは、単位時間当たりに凝縮して増加する水の有するエネルギである。
【0037】
ブロック805の凝縮水受熱量演算手段では、排ガス質量流量、排ガス温度、凝縮水質量の前回値(更新された凝縮水質量)および凝縮水温度の前回値に基づき凝縮水受熱量を演算する。凝縮水受熱量演算には、図4中ブロック403にて演算される排気管内熱伝達率が考慮される。
【0038】
ブロック806の蒸発質量変化率演算手段では、蒸発潜熱と凝縮水受熱量と沸点に基づき蒸発質量を演算する。蒸発質量変化率とは、単位時間当たりに蒸発して減少する水の質量である。
【0039】
ブロック807の蒸発潜熱演算手段では、凝縮水温度に基づき蒸発潜熱を演算する。
【0040】
ブロック808の蒸発エネルギ変化率演算手段では、蒸発潜熱と蒸発質量変化率と沸点に基づき蒸発エネルギ変化率を演算する。蒸発エネルギ変化率とは、単位時間当たりに蒸発して減少する水の有するエネルギである。ブロック809の沸点演算手段では、大気圧に基づき沸点を演算する。
【0041】
ブロック810の凝縮水質量演算手段では、凝縮水残留質量、凝縮水質量変化率および蒸発質量変化率に基づいて、排気管41内の凝縮水質量を更新する処理が行われる。ブロック811の凝縮水温度演算手段では、凝縮水質量、凝縮エネルギ変化率および蒸発エネルギ変化率に基づき凝縮水温度を演算する。
【0042】
このように、ブロック803の凝縮水質量変化率演算手段において、排ガスの水蒸気分圧と飽和水蒸気圧に基づき、排気管41内で凝縮される凝縮水の凝縮水質量変化率が演算され、ブロック806の蒸発質量変化率演算手段において、排気管41内の凝縮水が排ガスから受け取る熱量と蒸発潜熱とに基づき排気管41内で凝縮水の蒸発質量変化率が演算される。そして、ブロック810の凝縮水質量演算手段において、ブロック803の凝縮量とブロック806の蒸発量の両方に基づき排気管41内の凝縮水質量が更新される。したがって、凝縮および蒸発に関わる物理現象を詳細に考慮して、凝縮水質量を精度良く演算することができる。
【0043】
図9は、センサ素子加熱制御の可否判定を行うブロック線図を説明する図である。同ブロック線図は、図3中のステップ304内の演算処理の詳細な内容を示している。ブロック901の露点演算手段は、大気圧および排ガスの水蒸気分圧に基づき露点を演算する。ブロック902のセンサ素子加熱制御判定手段では、露点、排気管温度および凝縮水質量に基づき、空燃比センサ20のセンサ素子加熱制御の可否を判定する。この様な構成とすることで、凝縮水付着に伴う空燃比センサ20のセンサ素子割れを適切に防止することができる。ただし、本発明はこれに限定されるものではなく、凝縮水質量とその時間変化率にもとづいて空燃比センサ20のセンサ素子加熱制御の可否を判定する構成としても、同様の効果を奏することができる。
【0044】
図10(a)は、飽和水蒸気圧と大気圧との比と、温度との関係を説明する図、図10(b)は、飽和水蒸気圧と大気圧との比と、当量比との関係を説明する図である。図10(a)に示すように、飽和水蒸気圧と大気圧との比は、温度が増加するにしたがって増加する傾向を示す。また、高地条件においては大気圧が低下するため、上記飽和水蒸気圧と大気圧との比が増加する傾向を示す。排気管温度が高温条件から徐々に温度低下し露点に達すると、水蒸気が凝縮し排気管内に水滴を生じ始める。ガソリンが理論空燃比にて燃焼した際に排出されるガスの水蒸気のモル分率は約0.15であり、上記関係によれば露点は約55℃に対応する。また、大気圧の低下する高地条件では、露点は減少する傾向を示す。飽和水蒸気圧と大気圧との比は、空燃比によって変化し、理論空燃比を境にしてリーン側、リッチ側いずれに対しても減少する傾向を示す。また、大気中に含まれる水蒸気が増加するほど、飽和水蒸気圧と大気圧との比が増加する傾向を示す。飽和水蒸気圧と大気圧との比が増加すると、同一大気圧条件においては、露点が上昇する。図9中のブロック901の露点演算手段において、上述する関係を用いて露点を演算することで、露点に与える大気圧、空燃比および相対湿度の影響を適切に加味することができ、凝縮水質量を高精度に予測することができる。
【0045】
図11は、大気圧の変化が沸点に与える影響を説明する図である。飽和水蒸気圧と大気圧との比と、凝縮水温度との関係を示しており、高地条件となるほど大気圧が低下するので、同一凝縮水温度では飽和水蒸気圧と大気圧との比が増加する傾向を示す。飽和水蒸気圧と大気圧とが一致する沸点は、大気圧が低下する高地条件において低下する傾向を示す。図8中のブロック809の沸点演算手段において、上述する関係を用いて沸点を演算することで、沸点に与える大気圧の影響を適切に加味することができ、凝縮水質量を高精度に予測することができる。
【0046】
図12は、蒸発潜熱と凝縮水温度との関係を説明する図である。凝縮水の温度が増加するほど蒸発潜熱は減少する傾向を示す。図8中のブロック807の蒸発潜熱演算手段において、上述する関係を用いて蒸発潜熱を演算することで、蒸発潜熱に与える凝縮水温度の影響を適切に加味することができ、凝縮水質量を高精度に予測することができる。
【0047】
図13は、凝縮水の排気管への付着割合と排ガス質量流量との関係を説明する図である。図8中のブロック803の凝縮水質量変化率演算手段において、排ガスの水蒸気分圧と飽和水蒸気圧/大気圧との差、これと排ガス質量流量との積によって、排気管41内において単位時間当たりに凝縮して増加する水の総質量が演算される。単位時間当たりに凝縮して増加する水のうち,一定割合が排気管41の内壁面に付着し滞留する。排ガス質量流量が増加するほど排気管41の内壁面への凝縮水の付着割合は増加する傾向を示す。図8中のブロック803の凝縮水質量変化率演算手段は、上記した凝縮水の排気管付着割合と排ガス質量流量との関係をテーブル化したデータを有しており、排ガス質量流量を引数として、排気管への凝縮水の付着割合を演算する。さらに上記凝縮水の付着割合を単位時間当たりに凝縮して増加する水の総質量に乗じることによって凝縮水質量変化率を演算する構成としている。このように、排気管41内に凝縮して増加する水の総質量と、排気管41の内壁面に付着する割合とを考慮することによって、センサ素子加熱制御の判定に影響を及ぼす凝縮水質量を精度良く演算することができる。
【0048】
図14は、内燃機関の始動時における排ガス質量流量、排ガス温度、排気管温度、凝縮水質量、加熱制御判定の変化を説明する図である。図14(a)〜(c)は、内燃機関始動後の排ガス質量流量および排ガス温度の推移、図14(d)は、図4に示したブロック線図による排気管温度の演算結果、図14(e)は、図8に示したブロック線図による凝縮水質量の演算結果、図14(f)は、図9に示したブロック線図によるセンサ素子加熱制御判定の判定結果を示している。
【0049】
図14(a)〜(c)に示すように、内燃機関1の始動後、排ガス質量流量および排ガス温度が直ちに増加するのに対して、排気管温度は遅れを伴いながら増加する。凝縮水質量は、排気管温度が露点に達するまでの期間増加し、露点以上において蒸発により減少に転じる。凝縮水質量が判定基準以下でかつ排気管温度が露点以上において、センサ素子の加熱が可能と判断し、かかるセンサ素子加熱制御を起動させる。
【0050】
図15は、内燃機関の停止時期と再始動時からセンサ素子加熱制御の開始までの期間との関係を説明する図である。内燃機関1の停止時期を変化させると、排気管41内に残留する凝縮水の残留凝縮水質量が変化する。図15(a)に示す例では、停止時期Bのときが最も残留凝縮水質量が多く、続いて停止時期A、C、Dの順に少なくなっている。
【0051】
そのため、残留した凝縮水と、再始動後新たに生成した凝縮水とが完全に蒸発するまでに要する期間は、残留凝縮水質量の影響を受けて変化する。したがって、図15(b)に示すように、停止時期A〜Dに応じて、再始動時からセンサ素子加熱制御が開始可能となる状態となるまでの期間も変化する。この様に、内燃機関1の始動と停止を繰返し行われた場合には、残留凝縮水質量の影響を考慮してセンサ素子加熱制御の可否判定を実施する必要がある。
【0052】
図16は、内燃機関の始動と停止が繰り返し行われた場合における排ガス質量流量、排ガス温度、排気管温度、凝縮水質量、センサ加熱制御判定の変化を説明する図である。図16(a)〜(c)は、内燃機関の運転状態、排ガス質量流量および排ガス温度の推移、図16(d)は、図4に示したブロック線図による排気管温度の演算結果、図16(e)は、図8に示したブロック線図による凝縮水質量の演算結果、図16(f)は、図9に示したブロック線図によるセンサ素子加熱制御判定の判定結果を示している。
【0053】
例えば、信号待ち等のタイミングで内燃機関1のアイドリングを停止する制御を行うアイドリング停止制御手段を有する車両や、内燃機関1と電動モータの駆動力を利用するハイブリッドエンジン車両では、短時間で内燃機関1の始動と停止が繰り返し行われる。
【0054】
図16(a)〜(c)に示すように、内燃機関1の始動と停止の繰返しに応じて、排ガス質量流量および排ガス温度が直ちに増減するのに対して、排気管温度は、遅れを伴いながら増減を繰返す傾向を示す。凝縮水質量は、図16(e)に示すように、排気管温度が始動時温度から露点に達するまでの期間に急激に増加し、排気管温度が露点以上において蒸発によって緩やかな減少に転じる。図16(e)に示す例では、始動時Aから排気管温度が露点を越えるまでの間、急激に増加し、排気管温度が露点を越えると、緩やかに減少し始める。
【0055】
そして、停止時Bのように、凝縮水質量が完全に蒸発する以前に内燃機関が停止されると、排気管41内に凝縮水が残留し、次回の始動時Cの凝縮水に持ち越される。このように、次回始動時に排気管温度が露点に達した時点での凝縮水質量は、持ち越された分だけ増加するので、次回始動後、完全に蒸発するまでに要する期間も増加する。
【0056】
そして、時点Dのように、凝縮水質量が判定基準以下でかつ排気管温度が露点以上となる条件において、センサ素子加熱制御を起動させる。この様に、内燃機関1の始動と停止が繰返し行われた場合においても、センサ素子加熱制御の可否判定を精度良く実施することができる。
【0057】
図17は、始動後の凝縮水質量推移に与える排気管初期温度、排ガス温度、排ガス質量流量および排ガス中の水蒸気分圧の影響を説明する図である。
【0058】
同一排ガス温度および排ガス質量流量においては、図17(a)に示すように、排気管初期温度が低いほど排気管温度が露点に到達するまでに要する期間が長期化するとともに、その間の凝縮水質量は増加する。そのため、凝縮水が全て蒸発するまでの期間は長期化する。
【0059】
同一排ガス質量流量および排気管初期温度においては、図17(b)に示すように、排ガス温度が高いほど、すなわち、点火時期をリタードさせるほど、凝縮水が全て蒸発するのに要する期間は短期化する。
【0060】
同一排ガス温度および排気管初期温度においては、図17(c)に示すように、排ガス質量流量が大きいほど排気管温度が露点に到達するまでに発生する凝縮水質量は増加する一方、凝縮水が全て蒸発するまでの期間は短期化する。
【0061】
同一排ガス温度、排ガス質量流量および排気管初期温度において、図17(d)に示すように、排ガス中の水蒸気分圧が大きいほど、すなわち、外気の相対湿度が大きいほど、凝縮水質量は増加し、凝縮水が全て蒸発するのに要する期間は長期化する。
【0062】
この様に、内燃機関の始動条件が変化した場合においても、凝縮・蒸発過程に与える影響を図3のステップ303に考慮しているので、センサ素子加熱制御の可否判定を精度良く実施することができる。
【0063】
本実施の形態における内燃機関1の制御装置は、内燃機関の始動時に点火時期を遅角させて排ガスを昇温させる排ガス昇温制御手段と、凝縮水質量が所定値以上、あるいは、凝縮水質量が増加していると判定したときに、排ガス昇温制御手段による排ガス昇温制御の実行を許可する排ガス昇温制御判定手段を有している。したがって、凝縮水を早期に蒸発させることができ、始動時の空燃比制御をより早く実施することができ、排気性能の向上を図ることができる。なお、上記した排ガス昇温制御手段と排ガス昇温制御判定手段は、ECU22内で予め設定されたプログラムを実行することによって具現化される。
【0064】
また、本実施の形態における内燃機関1の制御装置は、内燃機関に吸入される空気量を制御する吸入空気量制御手段と、凝縮水質量が所定値以上、あるいは、凝縮水質量が増加していると判定したときに、吸入空気量の単位時間当たりの増加量が所定値以下となるように、吸入空気量制御手段による吸入空気量制御の動作範囲に制限を設ける動作範囲制限手段とを有している。したがって、排気管41の内壁面に付着した凝縮水が吸入空気量の急激な増加により吹き飛ばされることでセンサ素子が被水し割れを生じる問題を防止することができる。上記した吸入空気量制御手段と動作範囲制限手段は、ECU22内で予め設定されたプログラムを実行することによって具現化される。
【0065】
また、本実施の形態における内燃機関の制御装置は、内燃機関のアイドリングを停止する制御を行うアイドリング停止制御手段と、凝縮水質量が所定値以上、あるいは、凝縮水質量が増加していると判定したときに、アイドリング停止制御手段によるアイドリング停止制御を禁止するアイドリング停止制御禁止手段とを有している。
【0066】
したがって、アイドリングが停止される条件であっても、凝縮水質量が所定値以上、あるいは、凝縮水質量が増加している場合にはアイドリングが継続される。したがって、凝縮水を早期に蒸発させることができ、始動時の空燃比制御をより早く実施することができ、排気性能の向上を図ることができる。この様な構成とすることで、アイドリング停止制御手段によって繰返される内燃機関1の始動操作においても、空燃比センサ20のセンサ素子の被水割れを適切に防止できる。上記したアイドリング停止制御手段とアイドリング停止制御禁止手段は、ECU22内で予め設定されたプログラムを実行することによって具現化される。
【0067】
また、本実施の形態における内燃機関の制御装置は、凝縮水質量に応じてセンサ素子の加熱度合いを連続的に変化させる手段と、凝縮水量が所定値以上であるときに、凝縮水質量に基づき加熱制御手段によってセンサ素子を予熱する手段を有している。したがって、内燃機関の始動時において空燃比センサのセンサ素子の被水割れを適切に防止でき、センサ素子の活性化温度への迅速な加熱制御を行うことができる。
【0068】
上記構成を有する内燃機関1の制御装置によれば、排気管41内の凝縮水質量を精度良く演算でき、空燃比センサ20のセンサ素子加熱制御の可否判定を精度良く実施することができる。したがって、内燃機関1の始動時において空燃比センサ20のセンサ素子の被水割れを適切に防止でき、燃費および排気性能の悪化を低減することができる。
【0069】
上記構成を有する内燃機関1の制御装置によれば、内燃機関1の停止時に凝縮水の残留値を記録し、その記録された凝縮水の残留値を次回の始動時の凝縮水量の初期値に設定するので、十分な暖機状態に至らずに始動停止を繰返された場合の内燃機関1の始動時においても、空燃比センサ20のセンサ素子の被水割れを適切に防止できる。
【0070】
[第2実施の形態]
次に、本発明の第2実施の形態について説明する。本実施の形態において特徴的なことは、凝縮と蒸発の伝達関数に基づいて凝縮水質量を演算することである。なお、第1実施の形態と同様の構成要素には、同一の符号を付することでその詳細な説明を省略する。
【0071】
図18は、伝達関数に基づいて凝縮水質量を演算するブロック線図を説明する図である。同ブロック線図は、図3中のステップ303内の演算処理の詳細な内容を示している。ブロック1801の露点演算手段では、大気圧、排ガス水蒸気分圧に基づき露点を演算する。ブロック1802の排気管温度演算手段では、排ガス温度、排ガス質量流量、外気温、車速および始動時排気管温度に基づき排気管温度を演算する。
【0072】
ブロック1803の凝縮・蒸発過程判定手段では、露点および排気管温度の比較にもとづいて、排気管41内が凝縮過程にあるか、蒸発過程にあるかを判定する。ブロック1804の始動時排気管温度演算手段では、外気温、冷却水温、内燃機関の運転/停止の情報および排気管温度に基づいて始動時排気管温度を演算する。
【0073】
ブロック1805の凝縮水残留質量記録手段では、内燃機関の運転/停止の情報および凝縮水質量に基づいて凝縮水残留質量を記録する。ブロック1806の露点凝縮水質量演算手段では、回転速度、充填効率および始動時排気管温度に基づいて、排気管温度が始動時より露点に至るまでの間に発生する露点凝縮水質量を演算する。ブロック1807の凝縮・蒸発時定数演算手段では、内燃機関の回転速度、充填効率および点火リタード等の点火時期制御量に基づいて、凝縮水の増加減を伝達関数で近似するための時定数を演算する。ブロック1809の凝縮水質量演算手段では、凝縮・蒸発過程の判定結果、凝縮水残留質量と露点凝縮水質量との和、および時定数を用いて一次遅れの伝達関数に基づき凝縮水質量を演算する。この様な構成とすることで、凝縮水質量に関わる物理モデル演算の大部分をECU22にてオンボードで実施する必要がなく、演算負荷を大幅に低減することができる。
【0074】
図19は、排気管温度が始動時より露点に至るまでの間に発生する凝縮水質量と始動時排気管温度との関係を説明する図である。始動時排気管温度が減少するほど、また排ガス質量流量が増加するほど、排気管温度が始動時より露点に至るまでの間に発生する凝縮水質量は増加する。始動時排気管温度が露点以上を示す場合においては、凝縮水は生じない。図18中のブロック1806の露点凝縮水質量演算手段は、上述の関係をテーブル化したデータを有しており、始動時排気管温度と排ガス質量流量とを引数として、露点に至るまでの間に発生する露点凝縮水質量を演算する。この様な関係を考慮することで、排気管温度が始動時より露点に至るまでの間に発生する露点凝縮水質量を精度良く演算することができる。
【0075】
図20(a)は、凝縮・蒸発過程の時定数と排ガス質量流量との関係を説明する図、図20(b)は、凝縮・蒸発過程の時定数と点火リタードとの関係を説明する図である。図20(a)に示すように、排ガス質量流量が増加するにしたがって、凝縮水が凝縮によって増加する速度を近似するための時定数が減少し、凝縮水が蒸発によって減少する速度を近似するための時定数は減少する。
【0076】
また、図20(b)に示すように、点火時期をリタードするにしたがって凝縮水が凝縮によって増加する速度を近似するための時定数が減少し、凝縮水が蒸発によって減少する速度を近似するための時定数は減少する。同一排ガス質量流量および点火時期における暖機条件においては、凝縮によって増加する側の時定数は蒸発によって減少する側の時定数と比較して小さく設定される。
【0077】
図18中のブロック1807の凝縮・蒸発時定数演算手段は、上述の関係をテーブル化したデータを有しており、排ガス質量流量と点火リタードを引数として時定数を演算する。この様な関係を考慮することで、凝縮水が凝縮・蒸発によって増加減する速度を近似するための時定数を適切に設定することができ、凝縮水質量を精度良く予測することができる。なお、本実施の形態では、排ガス質量流量と点火リタードを引数として時定数をテーブル演算する構成としたが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、凝縮・蒸発過程に関わる他のパラメータに帰着させて、時定数をテーブル演算する構成としても同様の効果を奏する。
【0078】
図21は、内燃機関の始動時における排ガス質量流量、排ガス温度、排気管温度、凝縮水質量、加熱制御判定の変化を説明する図である。図21(a)〜(c)は、内燃機関始動後の排ガス質量流量および排ガス温度の推移、図21(d)は、図4に示したブロック線図による排気管温度の演算結果、図14(e)は、図18に示したブロック線図による凝縮水質量の演算結果、図14(f)は、図9に示したブロック線図によるセンサ素子加熱制御判定の判定結果を示している。
【0079】
図21(a)〜(d)に示すように、内燃機関の始動後は、排ガス質量流量および排ガス温度が直ちに増加するのに対して、排気管温度は遅れを伴いながら増加する。凝縮水質量は、図21(e)に示すように、排気管温度が始動時温度から露点に達するまでの期間、露点時の凝縮水質量(露点凝縮水質量)を入力(図21(e)の太破線に対応)とした一次遅れの伝達関数にしたがって増加する。
【0080】
そして、排気管温度が露点以上の状況に転じると、凝縮水質量はゼロを入力(図21(e)の太破線に対応)とした一次遅れの伝達関数にしたがって減少する。そして、時点Bのように、凝縮水質量が判定基準以下でかつ排気管温度が露点以上となる条件において、センサ素子加熱制御を起動させる。
【0081】
図22は、内燃機関の始動と停止が繰り返し行われた場合における排ガス質量流量、排ガス温度、排気管温度、凝縮水質量、センサ加熱制御判定結果の変化を説明する図である。図22(a)〜(c)は、内燃機関の運転状態、排ガス質量流量および排ガス温度の推移、図22(d)は、図4に示したブロック線図による排気管温度の演算結果、図22(e)は、図18に示したブロック線図による凝縮水質量の演算結果、図22(f)は、図9に示したブロック線図によるセンサ素子加熱制御判定の判定結果を示している。
【0082】
内燃機関1のアイドリングを停止する制御を行うアイドリング停止制御手段を有する車両や、内燃機関1と電動モータの駆動力を利用するハイブリッドエンジン車両では、図22(a)に示すように、短時間で内燃機関1の始動と停止が繰り返し行われる。
【0083】
この場合、凝縮水質量は、図22(e)に示すように、排気管温度が始動時温度から露点に達するまでの期間、露点時の凝縮水質量(露点凝縮水質量)を入力(図22(e)の太破線に対応)とした一次遅れの伝達関数にしたがって増加する。露点以上においては、凝縮水質量はゼロを(図22(e)の太破線に対応)とした一次遅れの伝達関数にしたがって減少する。
【0084】
そして、停止時Bのように、凝縮水質量が完全に蒸発する以前に内燃機関1が停止されると、排気管41内に凝縮水が残留し、次回の始動時Cの凝縮水に持ち越される。このように、次回始動時に排気管温度が露点に達した時点での凝縮水質量は、持ち越された分だけ増加するので、増加分が入力(図22の破線に対応)に加味され、完全に蒸発するまでに要する期間も増加する。そして、時点Dのように、次回始動後、凝縮水質量が判定基準以下でかつ排気管温度が露点以上となる条件において、センサ素子加熱制御を起動させる。この様に、内燃機関1の始動と停止が繰返し行われた場合においても、センサ素子加熱制御の可否判定を精度良く実施することができる。
【0085】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。例えば、前記した実施の形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。さらに、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0086】
1 内燃機関
2 エアフローセンサおよび吸気温センサ
20 空燃比センサ
22 ECU
41 排気管
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気管内に生じる凝縮水質量に基づき、空燃比センサのセンサ素子加熱制御の可否判定を行う内燃機関の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、内燃機関の排気管に設けられた排ガスセンサを加熱するヒータの通電状態を制御する排ガスセンサの制御装置において、推定した排気管温度と露点との差異である相対壁温と、排ガス質量流量に基づいて凝縮水積算量をマップ演算し、これを前回値に加算して凝縮水質量を演算する技術が開示されている。そして、凝縮水積算量マップは、相対壁温が大きいほど凝縮水質量が小さくなり、排ガス質量流量が基準値以上で負の値をとるように設定される。演算された凝縮水質量に基づき排気管内に凝縮水が無いと判定された場合に排ガスセンサのヒータ通電を許可する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-228564号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、内燃機関の始動後において排気管内に凝縮水の存在する期間のうちの大部分が、排気管が露点以上となる蒸発過程であって、この間は排ガスと凝縮水との間の質量およびエネルギの授受が重要因子として働くため、相対壁温と排ガス質量流量のみで凝縮水量を精度良く演算することができない。
【0005】
したがって、凝縮水の完全に無くなる本来のタイミングに対して早い側にヒータ起動した場合には、センサ素子の被水割れを生じ、一方、凝縮水の完全に無くなるタイミングに対して遅い側にヒータ起動した場合には、始動時の空燃比制御精度悪化にともなう排気性能の悪化を生じるといった課題があった。
【0006】
本発明は上述した問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、排気管内に生じる凝縮水質量に基づき、空燃比センサのセンサ素子加熱制御の可否判定を精度良く行う内燃機関の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する本発明の内燃機関の制御装置は、排ガスの飽和水蒸気圧と水蒸気分圧に基づいて排気管内の凝縮水質量変化率を演算し、排気管内の凝縮水が受け取る熱量に基づいて排気管内の蒸発質量変化率を演算する。そして、凝縮水質量変化率と蒸発質量変化率とに基づいて排気管内の凝縮水質量を更新し、その更新された凝縮水質量に基づいて加熱制御手段による加熱制御を行うか否かの判定を行う。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、排気管内の凝縮水質量を精度良く演算でき、空燃比センサのセンサ素子加熱制御の可否判定を精度良く実施することができるので、内燃機関の始動時において空燃比センサのセンサ素子の被水割れを適切に防止でき、燃費および排気性能の悪化を低減することができる。なお、上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1実施の形態におけるエンジンシステムの構成を説明する図。
【図2】排気管内に凝縮水が発生するメカニズムを説明する図。
【図3】空燃比センサのセンサ素子加熱制御の可否判定を行うフローチャートを説明する図。
【図4】排ガス質量流量、排ガス温度および排気管温度を演算するブロック線図を説明する図。
【図5】排ガス質量流量と管内熱伝達率との関係を説明する図。
【図6】排気管温度と外気温度との差と、管外熱伝達率との関係、ならびに車速と管外熱伝達率との関係を説明する図。
【図7】内燃機関停止後における外気温、冷却水温および排気管温度の推移を説明する図。
【図8】質量とエネルギの収支にもとづいて凝縮水質量を演算するブロック線図を説明する図。
【図9】センサ素子加熱制御の可否判定を行うブロック線図を説明する図。
【図10】飽和水蒸気圧と大気圧との比と、温度との関係、ならびに飽和水蒸気圧と大気圧との比と、当量比との関係を説明する図。
【図11】大気圧の変化が沸点に与える影響を説明する図。
【図12】蒸発潜熱と凝縮水温度との関係を説明する図。
【図13】排気管への凝縮水の付着割合と排ガス質量流量との関係を説明する図。
【図14】内燃機関の始動時における排ガス質量流量、排ガス温度、排気管温度、凝縮水質量、加熱制御判定の変化を説明する図。
【図15】エンジンの停止時期と再始動時からセンサ素子加熱制御開始までの期間との関係を説明する図。
【図16】内燃機関の始動と停止が繰り返し行われた場合における排ガス質量流量、排ガス温度、排気管温度、凝縮水質量、センサ加熱制御判定の変化を説明する図。
【図17】始動後の凝縮水質量推移に与える排気管初期温度、排ガス温度、排ガス質量流量および排気中の水蒸気分圧の影響を説明する図。
【図18】伝達関数にもとづいて凝縮水質量を演算するブロック線図を説明する図。
【図19】排気管温度が始動時より露点に至るまでの間に発生する凝縮水質量と始動時排気管温度との関係を説明する図。
【図20】凝縮・蒸発過程の時定数と排ガス質量流量との関係、ならびに凝縮・蒸発過程の時定数と点火リタードとの関係を説明する図。
【図21】内燃機関の始動時における排ガス質量流量、排ガス温度、排気管温度、凝縮水質量、加熱制御判定の変化を説明する図。
【図22】内燃機関の始動と停止が繰り返し行われた場合における排ガス質量流量、排ガス温度、排気管温度、凝縮水質量、センサ加熱制御判定結果の変化を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図にもとづいて説明する。
[第1実施の形態]
図1は、第1実施の形態の構成におけるエンジンシステムを説明する図である。本実施の形態のエンジンシステムは、自動車用のエンジンシステムであり、内燃機関1を備えている。内燃機関1には、吸気流路および排気流路が連通している。吸気流路には、エアフローセンサおよびエアフローセンサに内蔵された吸気温度センサ2が組付けられている。吸気流路と排気流路には、ターボ過給機3が接続されている。ターボ過給機3は、コンプレッサーが吸気流路に、タービンが排気流路にそれぞれ接続されている。ターボ過給機3は、排ガスの有するエネルギをタービン翼の回転運動に変換するためのタービンと、タービン翼に連結されたコンプレッサー翼の回転によって吸入空気を圧縮するためのコンプレッサーとで構成されている。ターボ過給機3のコンプレッサー側の下流には、断熱圧縮されて上昇した吸気温度を冷却するためのインタークーラ5が備えられている。インタークーラ5の下流には、冷却後の過給温度を計測するための過給温度センサ6が組付けられている。過給温度センサ6の下流には、吸気流路を絞りシリンダに流入する吸入空気量を制御するためのスロットルバルブ7が備えられている。スロットルバルブ7はアクセル踏量とは独立にスロットル開度を制御することができる電子制御式スロットルバルブである。
【0011】
スロットルバルブ7の下流には吸気マニホールド8が連通している。インタークーラをスロットルバルブ7下流の吸気マニホールド8に一体化させて備える構成としてもよい。それによってコンプレッサー下流からシリンダまでの容積を小さくすることができ、トルクの応答性を向上させることができる。吸気マニホールド8には過給圧センサ9が組付けられている。吸気マニホールド8の下流には、吸気に偏流を生じさせることによって、シリンダ内流れの乱れを強化するタンブルコントロールバルブ10と、吸気ポート内に燃料を噴射する燃料噴射弁11が配置されている。燃料噴射弁はシリンダに直接燃料を噴射する方式としてもよい。
【0012】
内燃機関1は、バルブ開閉の位相を連続的に可変とする可変バルブ機構12および13を、吸気バルブ31および排気バルブ32にそれぞれ備えている。可変バルブ機構12、13には、バルブ開閉位相を検知するためのセンサ14および15が、吸気バルブ31および排気バルブ32にそれぞれ組付けられている。シリンダヘッド部にはシリンダ内に電極部を露出させ、スパークによって可燃混合気を引火する点火プラグ16が組付けられている。さらにシリンダにはノックの発生を検知するノックセンサ17が組付けられている。クランク軸にはクランク角度センサ18が組付けられている。クランク角度センサ18から出力される信号に基づき、内燃機関1の回転速度を検出することができる。
【0013】
排気流路の一部を構成する排気管41には、空燃比センサ20が組付けられており、空燃比センサ20の検出結果に基づき燃料噴射弁11より供給される燃料噴射量が目標空燃比となるように、フィードバック制御が行われる。空燃比センサ20の下流には、排気浄化触媒21が設けられており、一酸化炭素、窒素酸化物および未燃炭化水素などの有害排出ガス成分が触媒反応によって浄化される。
【0014】
ターボ過給機3には、エアバイパスバルブ4およびウェストゲートバルブ19が備えられている。エアバイパスバルブ4は、コンプレッサーの下流部からスロットルバルブ7の上流部における圧力が過剰に上昇するのを防ぐために備えられている。過給状態においてスロットルバルブ7を急激に閉止した場合に、エアバイパスバルブ4を開くことでコンプレッサー下流部のガスをコンプレッサー上流部へ逆流させ、過給圧を下げることができる。一方、ウェストゲートバルブ19は、内燃機関1が過剰な過給レベルとなるのを防ぐために設けられている。過給圧センサ9により検知された過給圧が所定の値に達した場合に、ウェストゲートバルブ19を開くことで、排ガスが排気タービンを迂回するように誘導され、過給を抑制あるいは保持することができる。
【0015】
本実施の形態におけるエンジンシステムは、図1に示すように、ECU(Electronic Control Unit)22を備えている。ECU22には、上述した各種センサと各種アクチュエータが接続されている。スロットルバルブ7、燃料噴射弁11、可変バルブ機構12および13などのアクチュエータは、ECU22により制御されている。さらに、上述した各種センサより入力された信号に基づき、内燃機関1の運転状態を検知し、運転状態に応じてECU22により決定されたタイミングで点火プラグ16が点火を行う。
【0016】
図2は、排気管内の凝縮水発生メカニズムを説明する図である。内燃機関の始動時において、排気バルブ32により内燃機関1のシリンダから排出された排ガス中の水蒸気は、排気管41やターボ過給機3への熱伝達によって冷却され露点(露点温度)に到達すると凝縮水を生じ、これが排気管41の内壁面に付着することで滞留する。この凝縮水が排ガスの流れによって活性化温度にまで加熱された空燃比センサ20のセンサ素子(図示せず)に付着すると、熱衝撃による素子割れを生じるおそれがある。これを適切に防止するためには、排気管41に滞留する凝縮水質量を検知し、これに基づき、空燃比センサ20のセンサ素子を加熱するための通電の可否を判定する必要がある。
【0017】
図3は、センサ素子加熱制御判定を行うフローチャートを説明する図である。図3に示すステップ301〜ステップ304の処理は、例えばECU22内において所定のプログラムサイクルで繰り返し実行される。
【0018】
まず、ステップ301において、排ガス温度および排ガス質量流量を演算する処理が行われる。そして、ステップ302において、前記排ガス温度および排ガス質量流量に基づき、排気管温度を演算する処理が行われる。それから、ステップ303において、前記排ガス温度、排ガス質量流量および排気管温度に基づき、凝縮水質量を演算する処理が行われる。したがって、排気管41内の凝縮水質量を正確に把握することができる。
【0019】
そして、ステップ304において、前記凝縮水質量に基づき空燃比センサ20のセンサ素子を加熱するための通電の可否を判定するセンサ素子加熱制御判定処理が行われる。例えば、凝縮水質量が予め設定された基準量よりも多い場合には、凝着水の付着によるセンサ割れを生じるおそれがあるとして、センサ素子加熱制御を不可と判定し、凝着水質量が基準値以下の場合には、センサ割れを生じるおそれがないとして、センサ素子加熱制御を可能と判定する。
【0020】
この様な構成とすることで、空燃比センサ20のセンサ素子加熱制御の可否の判定を精度良く実施することができ、凝縮水によるセンサ素子の素子割れを防止できるとともに、排気空燃比フィードバック制御開始までの無駄を排除して、内燃機関の冷機始動時の排気性能を向上することができる。
【0021】
また、本実施の形態のエンジンシステムにおいては、排ガス温度および排気管温度を演算する構成としたが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、温度センサによって排ガス温度および排気管温度を直接検知する構成としてもよく、上述の排ガス温度および排気管温度を演算する構成と同様の効果を奏することができる。
【0022】
図4は、排ガス質量流量、排ガス温度および排気管温度を演算するブロック線図を説明する図である。同ブロック線図は、図3中のステップ301および302内の演算処理の詳細な内容を示している。
【0023】
ブロック401の排ガス温度演算手段では、回転速度、充填効率、空燃比や燃料カットフラグおよび点火リタード等の点火時期制御量に基づき排気管41内を流れる排ガスの排ガス温度を演算する処理が行われる。ブロック402の排ガス質量流量演算手段では、回転速度、充填効率および空燃比や燃料カットフラグに基づき排気管41内を流れる排ガスの排ガス質量流量を演算する処理が行われる。
【0024】
ブロック403の管内熱伝達率演算手段では、排ガス温度および排ガス質量流量に基づき、排気管41内を流れる排ガスから排気管41の内壁面への管内熱伝達率を演算する処理が行われる。ブロック404の管内伝達熱量演算手段では、排ガス温度、排気管温度および管内熱伝達率に基づき排気管41内を流れる排ガスから排気管41の内壁面への管内伝達熱量を演算する処理が行われる。
【0025】
一方、ブロック405の管外熱伝達率演算手段では、排気管温度、エアフローセンサに内蔵された吸気温度センサ2にて検知された外気温、および車速に基づき、排気管41の外壁面から外気への管外熱伝達率を演算する処理が行われる。ブロック406の管外伝達熱量演算手段では、排気管温度と外気温と管外熱伝達率に基づき排気管41の外壁面から外気への管外伝達熱量を演算する処理が行われる。
【0026】
ブロック407の始動時排気管温度演算手段では、排気管温度、外気温、冷却水温および内燃機関1の運転状態(運転/停止)の情報に基づき、内燃機関の始動時における排気管温度を演算する処理が行われる。ブロック408の排気管温度演算手段では、排気管内伝達熱量、排気管外伝達熱量、始動時排気管温度および排気管41の熱容量に基づき、排気管温度を演算する処理が行われる。この様な構成とすることで、排気管41内外の熱伝達現象を詳細に考慮して、排気管温度を精度良く演算することができる。また排ガス温度および排気管温度検出のための温度センサを備える必要がなく、コストの低減ができる。
【0027】
図5は、排ガス質量流量と管内熱伝達率との関係を説明する図である。排気管41内における排ガスの排気管内流れは、乱流場を呈しており、排ガス質量流量が増加するにしたがって管内熱伝達率が増加する傾向を示す。図4中のブロック403の管内熱伝達率演算手段は、上述した排ガス質量流量と管内熱伝達率との関係をテーブル化したデータを有しており、排ガス質量流量を引数として管内熱伝達率をテーブル演算する。この様な構成とすることで、管内熱伝達率におよぼす排ガス質量流量の影響を適切に考慮することができ、排気管温度を精度良く予測することができる。
【0028】
図6(a)は、排気管温度と外気温度との差と、管外熱伝達率との関係を説明する図、図6(b)は、車速と管外熱伝達率との関係を説明する図である。管外熱伝達は、排気管と外気との温度差によって排気管周りの空気に働く浮力が排気管外の熱伝達の主要因として生じる自然対流熱伝達と、排気管周りの空気の乱流状態が排気管外の熱伝達の主要因として生じる強制対流熱伝達とに分類することができる。
【0029】
自然対流条件においては、排気管温度と外気温との差異が増加するにしたがって、管外熱伝達率が増加する傾向を示す。また、強制対流条件においては、車速が増加するにしたがって、管周り流れのレイノルズ数が増加し、管外熱伝達率が増加する傾向を示す。図4中のブロック405の管外熱伝達率演算手段は、上述した排気管温度と外気温度との差と、管外熱伝達率との関係、および、車速と管外熱伝達率との関係をそれぞれテーブル化したデータを有しており、排気管温度、外気温および車速に基づいて管外熱伝達率をテーブル演算する。この様な構成とすることで、管外熱伝達率におよぼす排気管温度と外気温との差および車速を適切に考慮することができ、排気管温度を精度良く予測することができる。
【0030】
図7は、内燃機関停止後における外気温、冷却水温および排気管温度の推移を説明する図である。図7に示すように、内燃機関停止後には、冷却水温θclおよび排気管温度θemのいずれも外気温θatmに収束する様に温度低下し、十分な時間が経過した後、均熱状態に至る。したがって、外気温と冷却水温との差異の大小によって均熱状態にあるか否かを判定することができる。始動時に冷却水温と外気温を検知し、これらの差異が所定値以上である場合には、均熱状態に至る途中の段階であり、その場合、下記の式(1)に基づいて、始動時の排気管温度を求める。
【0031】
【数1】
【0032】
図4中のブロック407の始動時排気管温度演算手段は、上記式(1)の関係を用いて排気管温度の初期値を演算する。この様な構成とすることで、排気管温度が始動時より露点に至るまでの間に発生する凝縮水質量を演算する上で重要な始動時排気管温度を、精度良く演算することができる。
【0033】
図8は、質量とエネルギの収支に基づいて凝縮水質量を演算するブロック線図を説明する図である。同ブロック線図は、図3中のステップ303内の演算処理の詳細な内容を示している。
【0034】
ブロック801の凝縮水残留質量記録手段では、内燃機関1の運転状態情報である運転/停止の情報および凝縮水質量の前回値に基づき内燃機関1の停止時における凝縮水の残留質量を記録する処理が行われる。ブロック801の凝縮水残留質量記録手段は、ECU22への通電が遮断された場合においても、残留質量のデータを保持可能とし、次回の内燃機関1の始動時において、凝縮水質量の初期値設定に用いることができる。
【0035】
ブロック802の飽和水蒸気演算手段では、排気管温度に基づき飽和水蒸気圧を演算する処理が行われる。そして、ブロック803の凝縮水質量変化率演算手段では、排ガスの水蒸気分圧、排ガス質量流量および飽和水蒸気圧に基づき排気管41内の凝縮水質量変化率を演算する処理が行われる。凝縮水質量変化率とは、単位時間当たりに凝縮して増加する水の質量である。
【0036】
ブロック804の凝縮エネルギ変化率演算手段では、凝縮水質量変化率、排気管温度、水の比熱および凝縮水受熱量に基づき凝縮エネルギ変化率を演算する。凝縮エネルギ変化率とは、単位時間当たりに凝縮して増加する水の有するエネルギである。
【0037】
ブロック805の凝縮水受熱量演算手段では、排ガス質量流量、排ガス温度、凝縮水質量の前回値(更新された凝縮水質量)および凝縮水温度の前回値に基づき凝縮水受熱量を演算する。凝縮水受熱量演算には、図4中ブロック403にて演算される排気管内熱伝達率が考慮される。
【0038】
ブロック806の蒸発質量変化率演算手段では、蒸発潜熱と凝縮水受熱量と沸点に基づき蒸発質量を演算する。蒸発質量変化率とは、単位時間当たりに蒸発して減少する水の質量である。
【0039】
ブロック807の蒸発潜熱演算手段では、凝縮水温度に基づき蒸発潜熱を演算する。
【0040】
ブロック808の蒸発エネルギ変化率演算手段では、蒸発潜熱と蒸発質量変化率と沸点に基づき蒸発エネルギ変化率を演算する。蒸発エネルギ変化率とは、単位時間当たりに蒸発して減少する水の有するエネルギである。ブロック809の沸点演算手段では、大気圧に基づき沸点を演算する。
【0041】
ブロック810の凝縮水質量演算手段では、凝縮水残留質量、凝縮水質量変化率および蒸発質量変化率に基づいて、排気管41内の凝縮水質量を更新する処理が行われる。ブロック811の凝縮水温度演算手段では、凝縮水質量、凝縮エネルギ変化率および蒸発エネルギ変化率に基づき凝縮水温度を演算する。
【0042】
このように、ブロック803の凝縮水質量変化率演算手段において、排ガスの水蒸気分圧と飽和水蒸気圧に基づき、排気管41内で凝縮される凝縮水の凝縮水質量変化率が演算され、ブロック806の蒸発質量変化率演算手段において、排気管41内の凝縮水が排ガスから受け取る熱量と蒸発潜熱とに基づき排気管41内で凝縮水の蒸発質量変化率が演算される。そして、ブロック810の凝縮水質量演算手段において、ブロック803の凝縮量とブロック806の蒸発量の両方に基づき排気管41内の凝縮水質量が更新される。したがって、凝縮および蒸発に関わる物理現象を詳細に考慮して、凝縮水質量を精度良く演算することができる。
【0043】
図9は、センサ素子加熱制御の可否判定を行うブロック線図を説明する図である。同ブロック線図は、図3中のステップ304内の演算処理の詳細な内容を示している。ブロック901の露点演算手段は、大気圧および排ガスの水蒸気分圧に基づき露点を演算する。ブロック902のセンサ素子加熱制御判定手段では、露点、排気管温度および凝縮水質量に基づき、空燃比センサ20のセンサ素子加熱制御の可否を判定する。この様な構成とすることで、凝縮水付着に伴う空燃比センサ20のセンサ素子割れを適切に防止することができる。ただし、本発明はこれに限定されるものではなく、凝縮水質量とその時間変化率にもとづいて空燃比センサ20のセンサ素子加熱制御の可否を判定する構成としても、同様の効果を奏することができる。
【0044】
図10(a)は、飽和水蒸気圧と大気圧との比と、温度との関係を説明する図、図10(b)は、飽和水蒸気圧と大気圧との比と、当量比との関係を説明する図である。図10(a)に示すように、飽和水蒸気圧と大気圧との比は、温度が増加するにしたがって増加する傾向を示す。また、高地条件においては大気圧が低下するため、上記飽和水蒸気圧と大気圧との比が増加する傾向を示す。排気管温度が高温条件から徐々に温度低下し露点に達すると、水蒸気が凝縮し排気管内に水滴を生じ始める。ガソリンが理論空燃比にて燃焼した際に排出されるガスの水蒸気のモル分率は約0.15であり、上記関係によれば露点は約55℃に対応する。また、大気圧の低下する高地条件では、露点は減少する傾向を示す。飽和水蒸気圧と大気圧との比は、空燃比によって変化し、理論空燃比を境にしてリーン側、リッチ側いずれに対しても減少する傾向を示す。また、大気中に含まれる水蒸気が増加するほど、飽和水蒸気圧と大気圧との比が増加する傾向を示す。飽和水蒸気圧と大気圧との比が増加すると、同一大気圧条件においては、露点が上昇する。図9中のブロック901の露点演算手段において、上述する関係を用いて露点を演算することで、露点に与える大気圧、空燃比および相対湿度の影響を適切に加味することができ、凝縮水質量を高精度に予測することができる。
【0045】
図11は、大気圧の変化が沸点に与える影響を説明する図である。飽和水蒸気圧と大気圧との比と、凝縮水温度との関係を示しており、高地条件となるほど大気圧が低下するので、同一凝縮水温度では飽和水蒸気圧と大気圧との比が増加する傾向を示す。飽和水蒸気圧と大気圧とが一致する沸点は、大気圧が低下する高地条件において低下する傾向を示す。図8中のブロック809の沸点演算手段において、上述する関係を用いて沸点を演算することで、沸点に与える大気圧の影響を適切に加味することができ、凝縮水質量を高精度に予測することができる。
【0046】
図12は、蒸発潜熱と凝縮水温度との関係を説明する図である。凝縮水の温度が増加するほど蒸発潜熱は減少する傾向を示す。図8中のブロック807の蒸発潜熱演算手段において、上述する関係を用いて蒸発潜熱を演算することで、蒸発潜熱に与える凝縮水温度の影響を適切に加味することができ、凝縮水質量を高精度に予測することができる。
【0047】
図13は、凝縮水の排気管への付着割合と排ガス質量流量との関係を説明する図である。図8中のブロック803の凝縮水質量変化率演算手段において、排ガスの水蒸気分圧と飽和水蒸気圧/大気圧との差、これと排ガス質量流量との積によって、排気管41内において単位時間当たりに凝縮して増加する水の総質量が演算される。単位時間当たりに凝縮して増加する水のうち,一定割合が排気管41の内壁面に付着し滞留する。排ガス質量流量が増加するほど排気管41の内壁面への凝縮水の付着割合は増加する傾向を示す。図8中のブロック803の凝縮水質量変化率演算手段は、上記した凝縮水の排気管付着割合と排ガス質量流量との関係をテーブル化したデータを有しており、排ガス質量流量を引数として、排気管への凝縮水の付着割合を演算する。さらに上記凝縮水の付着割合を単位時間当たりに凝縮して増加する水の総質量に乗じることによって凝縮水質量変化率を演算する構成としている。このように、排気管41内に凝縮して増加する水の総質量と、排気管41の内壁面に付着する割合とを考慮することによって、センサ素子加熱制御の判定に影響を及ぼす凝縮水質量を精度良く演算することができる。
【0048】
図14は、内燃機関の始動時における排ガス質量流量、排ガス温度、排気管温度、凝縮水質量、加熱制御判定の変化を説明する図である。図14(a)〜(c)は、内燃機関始動後の排ガス質量流量および排ガス温度の推移、図14(d)は、図4に示したブロック線図による排気管温度の演算結果、図14(e)は、図8に示したブロック線図による凝縮水質量の演算結果、図14(f)は、図9に示したブロック線図によるセンサ素子加熱制御判定の判定結果を示している。
【0049】
図14(a)〜(c)に示すように、内燃機関1の始動後、排ガス質量流量および排ガス温度が直ちに増加するのに対して、排気管温度は遅れを伴いながら増加する。凝縮水質量は、排気管温度が露点に達するまでの期間増加し、露点以上において蒸発により減少に転じる。凝縮水質量が判定基準以下でかつ排気管温度が露点以上において、センサ素子の加熱が可能と判断し、かかるセンサ素子加熱制御を起動させる。
【0050】
図15は、内燃機関の停止時期と再始動時からセンサ素子加熱制御の開始までの期間との関係を説明する図である。内燃機関1の停止時期を変化させると、排気管41内に残留する凝縮水の残留凝縮水質量が変化する。図15(a)に示す例では、停止時期Bのときが最も残留凝縮水質量が多く、続いて停止時期A、C、Dの順に少なくなっている。
【0051】
そのため、残留した凝縮水と、再始動後新たに生成した凝縮水とが完全に蒸発するまでに要する期間は、残留凝縮水質量の影響を受けて変化する。したがって、図15(b)に示すように、停止時期A〜Dに応じて、再始動時からセンサ素子加熱制御が開始可能となる状態となるまでの期間も変化する。この様に、内燃機関1の始動と停止を繰返し行われた場合には、残留凝縮水質量の影響を考慮してセンサ素子加熱制御の可否判定を実施する必要がある。
【0052】
図16は、内燃機関の始動と停止が繰り返し行われた場合における排ガス質量流量、排ガス温度、排気管温度、凝縮水質量、センサ加熱制御判定の変化を説明する図である。図16(a)〜(c)は、内燃機関の運転状態、排ガス質量流量および排ガス温度の推移、図16(d)は、図4に示したブロック線図による排気管温度の演算結果、図16(e)は、図8に示したブロック線図による凝縮水質量の演算結果、図16(f)は、図9に示したブロック線図によるセンサ素子加熱制御判定の判定結果を示している。
【0053】
例えば、信号待ち等のタイミングで内燃機関1のアイドリングを停止する制御を行うアイドリング停止制御手段を有する車両や、内燃機関1と電動モータの駆動力を利用するハイブリッドエンジン車両では、短時間で内燃機関1の始動と停止が繰り返し行われる。
【0054】
図16(a)〜(c)に示すように、内燃機関1の始動と停止の繰返しに応じて、排ガス質量流量および排ガス温度が直ちに増減するのに対して、排気管温度は、遅れを伴いながら増減を繰返す傾向を示す。凝縮水質量は、図16(e)に示すように、排気管温度が始動時温度から露点に達するまでの期間に急激に増加し、排気管温度が露点以上において蒸発によって緩やかな減少に転じる。図16(e)に示す例では、始動時Aから排気管温度が露点を越えるまでの間、急激に増加し、排気管温度が露点を越えると、緩やかに減少し始める。
【0055】
そして、停止時Bのように、凝縮水質量が完全に蒸発する以前に内燃機関が停止されると、排気管41内に凝縮水が残留し、次回の始動時Cの凝縮水に持ち越される。このように、次回始動時に排気管温度が露点に達した時点での凝縮水質量は、持ち越された分だけ増加するので、次回始動後、完全に蒸発するまでに要する期間も増加する。
【0056】
そして、時点Dのように、凝縮水質量が判定基準以下でかつ排気管温度が露点以上となる条件において、センサ素子加熱制御を起動させる。この様に、内燃機関1の始動と停止が繰返し行われた場合においても、センサ素子加熱制御の可否判定を精度良く実施することができる。
【0057】
図17は、始動後の凝縮水質量推移に与える排気管初期温度、排ガス温度、排ガス質量流量および排ガス中の水蒸気分圧の影響を説明する図である。
【0058】
同一排ガス温度および排ガス質量流量においては、図17(a)に示すように、排気管初期温度が低いほど排気管温度が露点に到達するまでに要する期間が長期化するとともに、その間の凝縮水質量は増加する。そのため、凝縮水が全て蒸発するまでの期間は長期化する。
【0059】
同一排ガス質量流量および排気管初期温度においては、図17(b)に示すように、排ガス温度が高いほど、すなわち、点火時期をリタードさせるほど、凝縮水が全て蒸発するのに要する期間は短期化する。
【0060】
同一排ガス温度および排気管初期温度においては、図17(c)に示すように、排ガス質量流量が大きいほど排気管温度が露点に到達するまでに発生する凝縮水質量は増加する一方、凝縮水が全て蒸発するまでの期間は短期化する。
【0061】
同一排ガス温度、排ガス質量流量および排気管初期温度において、図17(d)に示すように、排ガス中の水蒸気分圧が大きいほど、すなわち、外気の相対湿度が大きいほど、凝縮水質量は増加し、凝縮水が全て蒸発するのに要する期間は長期化する。
【0062】
この様に、内燃機関の始動条件が変化した場合においても、凝縮・蒸発過程に与える影響を図3のステップ303に考慮しているので、センサ素子加熱制御の可否判定を精度良く実施することができる。
【0063】
本実施の形態における内燃機関1の制御装置は、内燃機関の始動時に点火時期を遅角させて排ガスを昇温させる排ガス昇温制御手段と、凝縮水質量が所定値以上、あるいは、凝縮水質量が増加していると判定したときに、排ガス昇温制御手段による排ガス昇温制御の実行を許可する排ガス昇温制御判定手段を有している。したがって、凝縮水を早期に蒸発させることができ、始動時の空燃比制御をより早く実施することができ、排気性能の向上を図ることができる。なお、上記した排ガス昇温制御手段と排ガス昇温制御判定手段は、ECU22内で予め設定されたプログラムを実行することによって具現化される。
【0064】
また、本実施の形態における内燃機関1の制御装置は、内燃機関に吸入される空気量を制御する吸入空気量制御手段と、凝縮水質量が所定値以上、あるいは、凝縮水質量が増加していると判定したときに、吸入空気量の単位時間当たりの増加量が所定値以下となるように、吸入空気量制御手段による吸入空気量制御の動作範囲に制限を設ける動作範囲制限手段とを有している。したがって、排気管41の内壁面に付着した凝縮水が吸入空気量の急激な増加により吹き飛ばされることでセンサ素子が被水し割れを生じる問題を防止することができる。上記した吸入空気量制御手段と動作範囲制限手段は、ECU22内で予め設定されたプログラムを実行することによって具現化される。
【0065】
また、本実施の形態における内燃機関の制御装置は、内燃機関のアイドリングを停止する制御を行うアイドリング停止制御手段と、凝縮水質量が所定値以上、あるいは、凝縮水質量が増加していると判定したときに、アイドリング停止制御手段によるアイドリング停止制御を禁止するアイドリング停止制御禁止手段とを有している。
【0066】
したがって、アイドリングが停止される条件であっても、凝縮水質量が所定値以上、あるいは、凝縮水質量が増加している場合にはアイドリングが継続される。したがって、凝縮水を早期に蒸発させることができ、始動時の空燃比制御をより早く実施することができ、排気性能の向上を図ることができる。この様な構成とすることで、アイドリング停止制御手段によって繰返される内燃機関1の始動操作においても、空燃比センサ20のセンサ素子の被水割れを適切に防止できる。上記したアイドリング停止制御手段とアイドリング停止制御禁止手段は、ECU22内で予め設定されたプログラムを実行することによって具現化される。
【0067】
また、本実施の形態における内燃機関の制御装置は、凝縮水質量に応じてセンサ素子の加熱度合いを連続的に変化させる手段と、凝縮水量が所定値以上であるときに、凝縮水質量に基づき加熱制御手段によってセンサ素子を予熱する手段を有している。したがって、内燃機関の始動時において空燃比センサのセンサ素子の被水割れを適切に防止でき、センサ素子の活性化温度への迅速な加熱制御を行うことができる。
【0068】
上記構成を有する内燃機関1の制御装置によれば、排気管41内の凝縮水質量を精度良く演算でき、空燃比センサ20のセンサ素子加熱制御の可否判定を精度良く実施することができる。したがって、内燃機関1の始動時において空燃比センサ20のセンサ素子の被水割れを適切に防止でき、燃費および排気性能の悪化を低減することができる。
【0069】
上記構成を有する内燃機関1の制御装置によれば、内燃機関1の停止時に凝縮水の残留値を記録し、その記録された凝縮水の残留値を次回の始動時の凝縮水量の初期値に設定するので、十分な暖機状態に至らずに始動停止を繰返された場合の内燃機関1の始動時においても、空燃比センサ20のセンサ素子の被水割れを適切に防止できる。
【0070】
[第2実施の形態]
次に、本発明の第2実施の形態について説明する。本実施の形態において特徴的なことは、凝縮と蒸発の伝達関数に基づいて凝縮水質量を演算することである。なお、第1実施の形態と同様の構成要素には、同一の符号を付することでその詳細な説明を省略する。
【0071】
図18は、伝達関数に基づいて凝縮水質量を演算するブロック線図を説明する図である。同ブロック線図は、図3中のステップ303内の演算処理の詳細な内容を示している。ブロック1801の露点演算手段では、大気圧、排ガス水蒸気分圧に基づき露点を演算する。ブロック1802の排気管温度演算手段では、排ガス温度、排ガス質量流量、外気温、車速および始動時排気管温度に基づき排気管温度を演算する。
【0072】
ブロック1803の凝縮・蒸発過程判定手段では、露点および排気管温度の比較にもとづいて、排気管41内が凝縮過程にあるか、蒸発過程にあるかを判定する。ブロック1804の始動時排気管温度演算手段では、外気温、冷却水温、内燃機関の運転/停止の情報および排気管温度に基づいて始動時排気管温度を演算する。
【0073】
ブロック1805の凝縮水残留質量記録手段では、内燃機関の運転/停止の情報および凝縮水質量に基づいて凝縮水残留質量を記録する。ブロック1806の露点凝縮水質量演算手段では、回転速度、充填効率および始動時排気管温度に基づいて、排気管温度が始動時より露点に至るまでの間に発生する露点凝縮水質量を演算する。ブロック1807の凝縮・蒸発時定数演算手段では、内燃機関の回転速度、充填効率および点火リタード等の点火時期制御量に基づいて、凝縮水の増加減を伝達関数で近似するための時定数を演算する。ブロック1809の凝縮水質量演算手段では、凝縮・蒸発過程の判定結果、凝縮水残留質量と露点凝縮水質量との和、および時定数を用いて一次遅れの伝達関数に基づき凝縮水質量を演算する。この様な構成とすることで、凝縮水質量に関わる物理モデル演算の大部分をECU22にてオンボードで実施する必要がなく、演算負荷を大幅に低減することができる。
【0074】
図19は、排気管温度が始動時より露点に至るまでの間に発生する凝縮水質量と始動時排気管温度との関係を説明する図である。始動時排気管温度が減少するほど、また排ガス質量流量が増加するほど、排気管温度が始動時より露点に至るまでの間に発生する凝縮水質量は増加する。始動時排気管温度が露点以上を示す場合においては、凝縮水は生じない。図18中のブロック1806の露点凝縮水質量演算手段は、上述の関係をテーブル化したデータを有しており、始動時排気管温度と排ガス質量流量とを引数として、露点に至るまでの間に発生する露点凝縮水質量を演算する。この様な関係を考慮することで、排気管温度が始動時より露点に至るまでの間に発生する露点凝縮水質量を精度良く演算することができる。
【0075】
図20(a)は、凝縮・蒸発過程の時定数と排ガス質量流量との関係を説明する図、図20(b)は、凝縮・蒸発過程の時定数と点火リタードとの関係を説明する図である。図20(a)に示すように、排ガス質量流量が増加するにしたがって、凝縮水が凝縮によって増加する速度を近似するための時定数が減少し、凝縮水が蒸発によって減少する速度を近似するための時定数は減少する。
【0076】
また、図20(b)に示すように、点火時期をリタードするにしたがって凝縮水が凝縮によって増加する速度を近似するための時定数が減少し、凝縮水が蒸発によって減少する速度を近似するための時定数は減少する。同一排ガス質量流量および点火時期における暖機条件においては、凝縮によって増加する側の時定数は蒸発によって減少する側の時定数と比較して小さく設定される。
【0077】
図18中のブロック1807の凝縮・蒸発時定数演算手段は、上述の関係をテーブル化したデータを有しており、排ガス質量流量と点火リタードを引数として時定数を演算する。この様な関係を考慮することで、凝縮水が凝縮・蒸発によって増加減する速度を近似するための時定数を適切に設定することができ、凝縮水質量を精度良く予測することができる。なお、本実施の形態では、排ガス質量流量と点火リタードを引数として時定数をテーブル演算する構成としたが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、凝縮・蒸発過程に関わる他のパラメータに帰着させて、時定数をテーブル演算する構成としても同様の効果を奏する。
【0078】
図21は、内燃機関の始動時における排ガス質量流量、排ガス温度、排気管温度、凝縮水質量、加熱制御判定の変化を説明する図である。図21(a)〜(c)は、内燃機関始動後の排ガス質量流量および排ガス温度の推移、図21(d)は、図4に示したブロック線図による排気管温度の演算結果、図14(e)は、図18に示したブロック線図による凝縮水質量の演算結果、図14(f)は、図9に示したブロック線図によるセンサ素子加熱制御判定の判定結果を示している。
【0079】
図21(a)〜(d)に示すように、内燃機関の始動後は、排ガス質量流量および排ガス温度が直ちに増加するのに対して、排気管温度は遅れを伴いながら増加する。凝縮水質量は、図21(e)に示すように、排気管温度が始動時温度から露点に達するまでの期間、露点時の凝縮水質量(露点凝縮水質量)を入力(図21(e)の太破線に対応)とした一次遅れの伝達関数にしたがって増加する。
【0080】
そして、排気管温度が露点以上の状況に転じると、凝縮水質量はゼロを入力(図21(e)の太破線に対応)とした一次遅れの伝達関数にしたがって減少する。そして、時点Bのように、凝縮水質量が判定基準以下でかつ排気管温度が露点以上となる条件において、センサ素子加熱制御を起動させる。
【0081】
図22は、内燃機関の始動と停止が繰り返し行われた場合における排ガス質量流量、排ガス温度、排気管温度、凝縮水質量、センサ加熱制御判定結果の変化を説明する図である。図22(a)〜(c)は、内燃機関の運転状態、排ガス質量流量および排ガス温度の推移、図22(d)は、図4に示したブロック線図による排気管温度の演算結果、図22(e)は、図18に示したブロック線図による凝縮水質量の演算結果、図22(f)は、図9に示したブロック線図によるセンサ素子加熱制御判定の判定結果を示している。
【0082】
内燃機関1のアイドリングを停止する制御を行うアイドリング停止制御手段を有する車両や、内燃機関1と電動モータの駆動力を利用するハイブリッドエンジン車両では、図22(a)に示すように、短時間で内燃機関1の始動と停止が繰り返し行われる。
【0083】
この場合、凝縮水質量は、図22(e)に示すように、排気管温度が始動時温度から露点に達するまでの期間、露点時の凝縮水質量(露点凝縮水質量)を入力(図22(e)の太破線に対応)とした一次遅れの伝達関数にしたがって増加する。露点以上においては、凝縮水質量はゼロを(図22(e)の太破線に対応)とした一次遅れの伝達関数にしたがって減少する。
【0084】
そして、停止時Bのように、凝縮水質量が完全に蒸発する以前に内燃機関1が停止されると、排気管41内に凝縮水が残留し、次回の始動時Cの凝縮水に持ち越される。このように、次回始動時に排気管温度が露点に達した時点での凝縮水質量は、持ち越された分だけ増加するので、増加分が入力(図22の破線に対応)に加味され、完全に蒸発するまでに要する期間も増加する。そして、時点Dのように、次回始動後、凝縮水質量が判定基準以下でかつ排気管温度が露点以上となる条件において、センサ素子加熱制御を起動させる。この様に、内燃機関1の始動と停止が繰返し行われた場合においても、センサ素子加熱制御の可否判定を精度良く実施することができる。
【0085】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。例えば、前記した実施の形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。さらに、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0086】
1 内燃機関
2 エアフローセンサおよび吸気温センサ
20 空燃比センサ
22 ECU
41 排気管
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気管に設けられた排ガス成分を検出するセンサのセンサ素子を加熱する加熱制御手段を備えた内燃機関の制御装置であって、
排ガスの飽和水蒸気圧と水蒸気分圧に基づいて前記排気管内の凝縮水質量変化率を演算する凝縮水質量変化率演算手段と、
前記排気管内の凝縮水が受け取る熱量に基づいて前記排気管内の蒸発質量変化率を演算する蒸発質量変化率演算手段と、
前記凝縮水質量変化率と前記蒸発質量変化率とに基づいて前記排気管内の凝縮水質量を更新する凝縮水質量演算手段と、
前記更新された凝縮水質量に基づいて前記加熱制御手段による加熱制御を行うか否かの加熱制御判定を行う加熱制御判定手段と、
を有することを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項2】
前記排気管の排気管温度に基づいて前記排気管内を通過する排ガスの飽和水蒸気圧を演算する飽和水蒸気圧演算手段を有し、
前記凝縮水質量変化率演算手段は、前記飽和水蒸気圧演算手段により演算された飽和水蒸気圧と、前記排ガスの排ガス質量流量と、前記排ガスの水蒸気分圧に基づいて前記凝縮水質量変化率を演算することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項3】
前記排ガスから前記凝縮水が受け取る受熱量を演算する凝縮水受熱量演算手段と、
前記凝縮水の蒸発に伴う蒸発潜熱を演算する蒸発潜熱演算手段と、を有し、
前記蒸発質量変化率演算手段は、前記受熱量と前記蒸発潜熱に基づいて前記蒸発質量変化率を演算することを特徴とする請求項2に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項4】
前記凝縮水質量変化率に基づいて前記凝縮水の凝縮エネルギ変化率を演算する凝縮エネルギ変化率演算手段と、
前記蒸発質量変化率に基づいて前記凝縮水の蒸発エネルギ変化率を演算する蒸発エネルギ変化率演算手段と、
前記凝縮エネルギ変化率と前記蒸発エネルギ変化率に基づいて凝縮水温度を演算する凝縮水温度演算手段と、を有し、
前記凝縮水受熱量演算手段は、前記凝縮水温度と、前記更新された凝縮水質量と、前記排ガス質量流量と、前記排ガス温度に基づいて前記凝縮水受熱量を演算することを特徴とする請求項3に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項5】
前記内燃機関の停止時における凝縮水質量を凝縮水残留質量として記録する凝縮水残留質量記録手段を有し、
前記凝縮水質量演算手段は、前回の内燃機関停止時に前記凝縮水残留質量記録手段に記録された凝縮水残留質量を、前記内燃機関の始動時における凝縮水質量の初期値に設定することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項6】
前記凝縮水質量変化率演算手段は、前記排ガス流量質量に基づいて前記凝縮水の前記排気管内の内壁面に付着する付着割合を演算し、該演算した付着割合を用いて前記凝縮水質量変化率を演算することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項7】
前記内燃機関の始動時に点火時期を遅角させて排ガスを昇温させる排ガス昇温制御を行う排ガス昇温制御手段と、
前記凝縮水質量が所定値以上、あるいは、前記凝縮水質量が増加していると判定したときに、前記排ガス昇温制御手段による排ガス昇温制御の実行を許可する排ガス昇温制御判定手段と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項8】
前記内燃機関に吸入される空気量を制御する吸入空気量制御手段と、
前記凝縮水質量が所定値以上、あるいは、前記凝縮水質量が増加していると判定したときに、前記吸入空気量の単位時間当たりの増加量が所定値以下となるように、前記吸入空気量制御手段による吸入空気量制御の動作範囲に制限を設ける動作範囲制限手段と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項9】
内燃機関のアイドリングを停止する制御を行うアイドリング停止制御手段と、
前記凝縮水質量が所定値以上、あるいは、前記凝縮水質量が増加していると判定したときに、前記アイドリング停止制御手段による前記アイドリング停止制御を禁止するアイドリング停止制御禁止手段と、を有することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項10】
前記凝縮水質量に応じて前記センサ素子の加熱度合いを連続的に変化させる手段と、
前記凝縮水質量が所定値以上である場合に、前記凝縮水質量に基づき前記加熱制御手段によって前記センサ素子を予熱する手段と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項11】
排気管に設けられた排ガス成分を検出するセンサのセンサ素子を加熱する加熱制御手段を備えた内燃機関の制御装置であって、
排ガスの露点と排気管温度に基づいて排気管内が凝縮過程と蒸発過程のいずれにあるかを判定する凝縮・蒸発過程判定手段と、
前記排気管温度が前記内燃機関の始動時から露点に到達するまでの間に前記排気管内で凝縮されて発生する露点凝縮水質量を演算する露点凝縮水質量演算手段と、
前記凝縮水の増加減を伝達関数で近似するための時定数を演算する凝縮・蒸発時定数演算手段と、
前記凝縮・蒸発過程の判定結果と、前記露点凝縮水質量と、前記時定数を用いて一次遅れの伝達関数に基づき前記排気管内の凝縮水質量を演算する凝縮水質量演算手段と、
前記凝縮水質量に基づいて前記加熱制御手段による加熱制御を行うか否かの加熱制御判定を行う加熱制御判定手段と、
を有することを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項1】
排気管に設けられた排ガス成分を検出するセンサのセンサ素子を加熱する加熱制御手段を備えた内燃機関の制御装置であって、
排ガスの飽和水蒸気圧と水蒸気分圧に基づいて前記排気管内の凝縮水質量変化率を演算する凝縮水質量変化率演算手段と、
前記排気管内の凝縮水が受け取る熱量に基づいて前記排気管内の蒸発質量変化率を演算する蒸発質量変化率演算手段と、
前記凝縮水質量変化率と前記蒸発質量変化率とに基づいて前記排気管内の凝縮水質量を更新する凝縮水質量演算手段と、
前記更新された凝縮水質量に基づいて前記加熱制御手段による加熱制御を行うか否かの加熱制御判定を行う加熱制御判定手段と、
を有することを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項2】
前記排気管の排気管温度に基づいて前記排気管内を通過する排ガスの飽和水蒸気圧を演算する飽和水蒸気圧演算手段を有し、
前記凝縮水質量変化率演算手段は、前記飽和水蒸気圧演算手段により演算された飽和水蒸気圧と、前記排ガスの排ガス質量流量と、前記排ガスの水蒸気分圧に基づいて前記凝縮水質量変化率を演算することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項3】
前記排ガスから前記凝縮水が受け取る受熱量を演算する凝縮水受熱量演算手段と、
前記凝縮水の蒸発に伴う蒸発潜熱を演算する蒸発潜熱演算手段と、を有し、
前記蒸発質量変化率演算手段は、前記受熱量と前記蒸発潜熱に基づいて前記蒸発質量変化率を演算することを特徴とする請求項2に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項4】
前記凝縮水質量変化率に基づいて前記凝縮水の凝縮エネルギ変化率を演算する凝縮エネルギ変化率演算手段と、
前記蒸発質量変化率に基づいて前記凝縮水の蒸発エネルギ変化率を演算する蒸発エネルギ変化率演算手段と、
前記凝縮エネルギ変化率と前記蒸発エネルギ変化率に基づいて凝縮水温度を演算する凝縮水温度演算手段と、を有し、
前記凝縮水受熱量演算手段は、前記凝縮水温度と、前記更新された凝縮水質量と、前記排ガス質量流量と、前記排ガス温度に基づいて前記凝縮水受熱量を演算することを特徴とする請求項3に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項5】
前記内燃機関の停止時における凝縮水質量を凝縮水残留質量として記録する凝縮水残留質量記録手段を有し、
前記凝縮水質量演算手段は、前回の内燃機関停止時に前記凝縮水残留質量記録手段に記録された凝縮水残留質量を、前記内燃機関の始動時における凝縮水質量の初期値に設定することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項6】
前記凝縮水質量変化率演算手段は、前記排ガス流量質量に基づいて前記凝縮水の前記排気管内の内壁面に付着する付着割合を演算し、該演算した付着割合を用いて前記凝縮水質量変化率を演算することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項7】
前記内燃機関の始動時に点火時期を遅角させて排ガスを昇温させる排ガス昇温制御を行う排ガス昇温制御手段と、
前記凝縮水質量が所定値以上、あるいは、前記凝縮水質量が増加していると判定したときに、前記排ガス昇温制御手段による排ガス昇温制御の実行を許可する排ガス昇温制御判定手段と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項8】
前記内燃機関に吸入される空気量を制御する吸入空気量制御手段と、
前記凝縮水質量が所定値以上、あるいは、前記凝縮水質量が増加していると判定したときに、前記吸入空気量の単位時間当たりの増加量が所定値以下となるように、前記吸入空気量制御手段による吸入空気量制御の動作範囲に制限を設ける動作範囲制限手段と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項9】
内燃機関のアイドリングを停止する制御を行うアイドリング停止制御手段と、
前記凝縮水質量が所定値以上、あるいは、前記凝縮水質量が増加していると判定したときに、前記アイドリング停止制御手段による前記アイドリング停止制御を禁止するアイドリング停止制御禁止手段と、を有することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項10】
前記凝縮水質量に応じて前記センサ素子の加熱度合いを連続的に変化させる手段と、
前記凝縮水質量が所定値以上である場合に、前記凝縮水質量に基づき前記加熱制御手段によって前記センサ素子を予熱する手段と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項11】
排気管に設けられた排ガス成分を検出するセンサのセンサ素子を加熱する加熱制御手段を備えた内燃機関の制御装置であって、
排ガスの露点と排気管温度に基づいて排気管内が凝縮過程と蒸発過程のいずれにあるかを判定する凝縮・蒸発過程判定手段と、
前記排気管温度が前記内燃機関の始動時から露点に到達するまでの間に前記排気管内で凝縮されて発生する露点凝縮水質量を演算する露点凝縮水質量演算手段と、
前記凝縮水の増加減を伝達関数で近似するための時定数を演算する凝縮・蒸発時定数演算手段と、
前記凝縮・蒸発過程の判定結果と、前記露点凝縮水質量と、前記時定数を用いて一次遅れの伝達関数に基づき前記排気管内の凝縮水質量を演算する凝縮水質量演算手段と、
前記凝縮水質量に基づいて前記加熱制御手段による加熱制御を行うか否かの加熱制御判定を行う加熱制御判定手段と、
を有することを特徴とする内燃機関の制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2013−24093(P2013−24093A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−158269(P2011−158269)
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】
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