説明

内燃機関の排気浄化装置

【課題】NOx吸蔵触媒昇温時におけるNOxの放出を考慮して尿素供給量を算出する。
【解決手段】機関排気通路内にNOx選択還元触媒14を配置し、NOx選択還元触媒14上流の機関排気通路内にNOx吸蔵触媒12を配置する。NOx吸蔵触媒12の吸蔵NOx量が予め定められている許容値を越えたときにはNOx吸蔵触媒12を昇温させてNOx吸蔵触媒12からNOxを放出させる。機関の運転状態から定まる尿素供給量に対し算出された吸蔵NOx量の還元分だけ尿素供給量を減少させ、機関の運転状態から定まる尿素供給量に対し算出された放出NOx量の還元分だけ尿素供給量を増大させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は内燃機関の排気浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
機関排気通路内にNOx選択還元触媒を配置し、NOx選択還元触媒上流の機関排気通路内に、排気ガス中に含まれるNOxを硝酸塩の形で吸蔵し還元剤を供給すると吸蔵したNOxを放出するNOx吸蔵触媒を配置し、NOx選択還元触媒に尿素を供給して尿素から発生するアンモニアにより排気ガス中に含まれるNOxを選択的に還元するようにした内燃機関が公知である(例えば特許文献1を参照)。この内燃機関ではNOx吸蔵触媒に吸蔵されるNOx量およびNOx吸蔵触媒から放出されるNOx量を考慮して尿素供給量が決定されている。例えばNOx吸蔵触媒からNOxが放出されているときには放出NOx量の還元分だけ尿素供給量が増大せしめられる。
【特許文献1】特開2005−2925号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながらこの内燃機関ではNOx吸蔵触媒からNOxを放出させるために還元剤、即ち燃料を供給した場合、一部の吸蔵NOxはNO又はNO2の形でNOx吸蔵触媒から放出されるが一部の吸蔵NOxはNOよりも更に還元されてアンモニアNH3の形で放出される。この場合、吸蔵NOxがどの程度NOxとなって放出されるか、どの程度アンモニアNH3となって放出されるかは明確ではない。この場合、アンモニアNH3となって放出される量が多いと放出されたNOxがこのアンモニアNH3によって還元されるので尿素供給量は増大させる必要がなくなる。
【0004】
ところが上述の内燃機関では吸蔵NOxは全てNOxとなって放出されるとの前提に立っており、従って放出されたNOx量の還元分だけ尿素供給量が増大せしめられるので尿素供給量が過剰になってしまうという問題がある。このような問題は還元剤を用いてNOx吸蔵触媒からNOxを放出させるようにしている限り生ずる。
本発明は、還元剤を供給することなくNOxを放出させ、それにより上述の如き問題が生ずることのない内燃機関の排気浄化装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
即ち、本発明によれば機関排気通路内にNOx選択還元触媒を配置し、NOx選択還元触媒に尿素を供給してこの尿素から発生するアンモニアにより排気ガス中に含まれるNOxを選択的に還元するようにした内燃機関の排気浄化装置において、NOx選択還元触媒上流の機関排気通路内にNOx吸蔵触媒を配置し、NOx吸蔵触媒はNOx吸蔵触媒の温度に応じて排気ガス中に含まれるNOxを吸蔵するか或いは吸蔵されているNOxを放出する性質を有し、NOx吸蔵触媒への吸蔵NOx量およびNOx吸蔵触媒からの放出NOx量を算出し、算出された吸蔵NOx量が予め定められている許容値を越えたときにはNOx吸蔵触媒を昇温させてNOx吸蔵触媒からNOxを放出させ、機関の運転状態から定まる尿素供給量に対し算出された吸蔵NOx量の還元分だけ尿素供給量を減少させ、機関の運転状態から定まる尿素供給量に対し算出された放出NOx量の還元分だけ尿素供給量を増大させるようにしている。
【発明の効果】
【0006】
NOx吸蔵触媒から放出されるのはNO又はNO2であり、アンモニアNH3の形では放出されない。また、NOx吸蔵触媒を強制的に昇温させるとNOxが短時間のうちにまとまって放出され、それにより単位時間当りのNOx放出量を正確に求めることができるようになる。斯くしてNOxの還元に必要な尿素供給量を正確に算出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
図1に圧縮着火式内燃機関の全体図を示す。
図1を参照すると、1は機関本体、2は各気筒の燃焼室、3は各燃焼室2内に夫々燃料を噴射するための電子制御式燃料噴射弁、4は吸気マニホルド、5は排気マニホルドを夫々示す。吸気マニホルド4は吸気ダクト6を介して排気ターボチャージャ7のコンプレッサ7aの出口に連結され、コンプレッサ7aの入口は吸入空気量検出器8を介してエアクリーナ9に連結される。吸気ダクト6内にはステップモータにより駆動されるスロットル弁10が配置され、更に吸気ダクト6周りには吸気ダクト6内を流れる吸入空気を冷却するための冷却装置11が配置される。図1に示される実施例では機関冷却水が冷却装置11内に導かれ、機関冷却水によって吸入空気が冷却される。
【0008】
一方、排気マニホルド5は排気ターボチャージャ7の排気タービン7bの入口に連結され、排気タービン7bの出口はNOx吸蔵触媒12の入口に連結される。このNOx吸蔵触媒12の出口は排気管13を介してNOx選択還元触媒14に連結される。このNOx選択還元触媒14は低温で高いNOx浄化率を有するアンモニア吸着タイプのFeゼオライトから構成されているか、或いはアンモニアの吸着機能がないチタニア・バナジウム系の触媒から構成されている。
【0009】
NOx選択還元触媒14上流の排気管13内には尿素水供給弁15が配置され、この尿素水供給弁15は供給管16、供給ポンプ17を介して尿素水タンク18に連結される。尿素水タンク18内に貯蔵されている尿素水は供給ポンプ17によって尿素水供給弁15から排気管13内を流れる排気ガス中に噴射され、尿素から発生したアンモニア((NH22CO+H2O→2NH3+CO2)によって排気ガス中に含まれるNOxがNOx選択還元触媒14において還元される。
【0010】
排気マニホルド5と吸気マニホルド4とは排気ガス再循環(以下、EGRと称す)通路19を介して互いに連結され、EGR通路19内には電子制御式EGR制御弁20が配置される。また、EGR通路19周りにはEGR通路19内を流れるEGRガスを冷却するための冷却装置21が配置される。図1に示される実施例では機関冷却水が冷却装置21内に導かれ、機関冷却水によってEGRガスが冷却される。一方、各燃料噴射弁3は燃料供給管22を介してコモンレール23に連結され、このコモンレール23は電子制御式の吐出量可変な燃料ポンプ24を介して燃料タンク25に連結される。燃料タンク25内に貯蔵されている燃料は燃料ポンプ24によってコモンレール23内に供給され、コモンレール23内に供給された燃料は各燃料供給管22を介して燃料噴射弁3に供給される。
【0011】
電子制御ユニット30はデジタルコンピュータからなり、双方向性バス31によって互いに接続されたROM(リードオンリメモリ)32、RAM(ランダムアクセスメモリ)33、CPU(マイクロプロセッサ)34、入力ポート35および出力ポート36を具備する。NOx吸蔵触媒12にはNOx吸蔵触媒12の床温を検出するための温度センサ26が取付けられ、この温度センサ26および吸入空気量検出器8の出力信号は夫々対応するAD変換器37を介して入力ポート35に入力される。
【0012】
また、アクセルペダル40にはアクセルペダル40の踏込み量Lに比例した出力電圧を発生する負荷センサ41が接続され、負荷センサ41の出力電圧は対応するAD変換器37を介して入力ポート35に入力される。更に入力ポート35にはクランクシャフトが例えば15°回転する毎に出力パルスを発生するクランク角センサ42が接続される。一方、出力ポート36は対応する駆動回路38を介して燃料噴射弁3、スロットル弁10の駆動用ステップモータ、尿素水供給弁15、供給ポンプ17、EGR制御弁20および燃料ポンプ24に接続される。
【0013】
NOx吸蔵触媒12は排気ガス中のNOxを吸収するタイプの触媒であってもよいし、排気ガス中のNOxが吸着するタイプの触媒であってもよい。NOxを吸収するタイプのNOx吸蔵触媒12では触媒担体の表面上に貴金属触媒が分散して担持されており、更に触媒担体の表面上にはNOx吸収剤の層が形成されている。この場合、例えば貴金属触媒としては白金Ptが用いられており、NOx吸収剤を構成する成分としてはカリウムK、ナトリウムNa、セシウムCsのようなアルカリ金属、バリウムBa、カルシウムCaのようなアルカリ土類、ランタンLa、イットリウムYのような希土類から選ばれた少なくとも一つが用いられている。
【0014】
このNOx吸蔵触媒12は排気ガスの空燃比がリーンのときにはNOxを吸収し、排気ガスの空燃比が理論空燃比又はリッチになると吸収したNOxを放出する機能を有する。圧縮着火式内燃機関では排気ガスの空燃比がリーンであり、従って通常排気ガス中に含まれているNOxの一部がNOx吸蔵触媒12に吸収される。
【0015】
ところでNOx選択還元触媒14はほぼ200℃以上にならないと活性化せず、従って機関始動後、NOx選択還元触媒14の温度が上昇するまではNOx選択還元触媒14によるNOxの浄化作用は期待できない。ところがNOx吸蔵触媒12はNOx選択還元触媒14が活性化していない低い温度のときでも排気ガス中のNOxを吸収する能力を有する。従って図1に示されるようにNOx選択還元触媒14の上流にNOx吸蔵触媒12が配置されているとNOx選択還元触媒14が活性化していないときには排気ガス中のNOxはNOx吸蔵触媒12に吸収され、斯くしてNOxが大気中に放出されるのが抑制されることになる。
【0016】
一方、NOx吸蔵触媒12のNOx吸収能力が飽和してしまうとNOx吸蔵触媒12によりNOxを吸収できなくなってしまう。ところがこの場合、NOx吸蔵触媒12を昇温すると吸収されていたNOxがNOx吸蔵触媒12から放出され、このときNOx選択還元触媒14も昇温する。そこで本発明ではNOx吸蔵触媒12のNOx吸収能力が飽和する前にNOx吸蔵触媒12を昇温させてNOx吸蔵触媒12からNOxを放出させ、この放出されたNOxをNOx選択還元触媒14において浄化するようにしている。
【0017】
なお、NOx吸蔵触媒12に流入する排気ガスの空燃比をリッチにしてもNOx吸蔵触媒12からNOxが放出される。しかしながらこの場合には前述したようにNOxの一部が更に還元されてアンモニアの形で放出されるので本発明では排気ガスの空燃比をリッチにしてNOxを放出させることはせず、NOx吸蔵触媒12を昇温させることによってNOxを放出させるようにしている。
【0018】
一方、NOx吸蔵触媒12としてNOxを吸着するタイプの触媒を用いた場合でも同様である。即ち、NOxを吸着するタイプのNOx吸蔵触媒12は多数の細孔を有するコージライト或いはゼオライトからなる基体を有しており、この基体上には例えばアルミナからなる触媒担体の層が形成されていてこの触媒担体上に例えば白金のような貴金属触媒が担持されている。
【0019】
このNOx吸蔵触媒12はNOx吸蔵触媒12の温度が低くなるほど吸着しうるNOx量が増大する。従ってこの場合にもNOx選択還元触媒14が活性化していないときには排気ガス中のNOxはNOx吸蔵触媒12に吸着され、斯くしてNOxが大気中に放出されるのが抑制されることになる。更に、このNOx吸蔵触媒12でもNOx吸蔵触媒12を昇温すると吸着されていたNOxがNOx吸蔵触媒12から放出される。
【0020】
従ってNOxを吸着するタイプのNOx吸蔵触媒12を用いた場合でも、NOx吸蔵触媒12のNOx吸着能力が飽和する前にNOx吸蔵触媒12を昇温させてNOx吸蔵触媒12からNOxを放出させ、この放出されたNOxをNOx選択還元触媒14において浄化するようにしている。
【0021】
図2はNOx吸蔵触媒12が吸収又は吸着しうるNOxの最大吸蔵量NMAXを示している。なお、図2において縦軸はNOx吸蔵触媒12へのNOx吸蔵量ΣNOXを示しており、横軸はNOx吸蔵触媒12の床温TCを示している。図2に示されるように最大NOx吸蔵量NMAXはNOx吸蔵触媒12の床温TCが低くなるほど増大し、従ってNOx吸蔵触媒12はNOx吸蔵触媒12の床温TCが低いとき、例えば機関始動時に多量のNOxを吸収又は吸着する機能を有していることがわかる。
【0022】
一方、本発明では最大NOx吸蔵量NMAXよりもわずかばかりNOx吸蔵量の少ない許容値NWが予め定められており、NOx吸蔵量ΣNOXがこの予め定められている許容値NWを越えたときにNOx吸蔵触媒12を昇温させてNOx吸蔵触媒12からNOxを放出させるようにしている。
【0023】
例えば図2においてNOx吸蔵量ΣNOXがA点に達するとNOx吸蔵触媒12が昇温せしめられる。このとき床温TCがB点で示される温度まで上昇したとすると、このときには最大吸蔵量NMAXに対する超過NOx吸蔵量ΔNXがNOx吸蔵触媒12から放出されることになる。
【0024】
さて、NOx吸蔵触媒12は概略的に言うと低温時にNOxを吸蔵し、即ち吸収又は吸着し、高温時にNOxを放出する性質を有する。即ち、NOx吸蔵触媒12はNOx吸蔵触媒12の温度に応じて排気ガス中に含まれるNOxを吸蔵するか或いは吸蔵されているNOxを放出する性質を有する。従って機関から一定量のNOxが排出されているとするとNOxがNOx吸蔵触媒12に吸蔵されたときにはNOx吸蔵触媒12から流出する排気ガス中のNOx量は減少し、NOxがNOx吸蔵触媒12から放出しているときにはNOx吸蔵触媒12から流出する排気ガス中のNOx量は増大する。
【0025】
この場合、NOxを還元するのに必要な尿素量はNOx吸蔵触媒12から流出する排気ガス中のNOx量が減少すれば減少し、NOx吸蔵触媒12から流出する排気ガス中のNOx量が増大すれば増大する。一方、機関の運転状態が定まると機関からのNOx排出量が定まり、従って機関の運転状態が定まると機関からの排出NOxを還元するのに必要な尿素供給量が定まる。そこで本発明ではNOx吸蔵触媒12への吸蔵NOx量およびNOx吸蔵触媒12からの放出NOx量を算出し、機関の運転状態から定まる尿素供給量に対し算出された吸蔵NOx量の還元分だけ尿素供給量を減少させ、機関の運転状態から定まる尿素供給量に対し算出された放出NOx量の還元分だけ尿素供給量を増大させるようにしている。
【0026】
次に図3から図5を参照しつつ本発明による尿素供給方法の一実施例について説明する。
上述したように機関から排出されるNOxは機関の運転状態に応じて定まる。本発明による実施例では機関から単位時間当り排出されるNOx量NOXAが要求トルクTQおよび機関回転数Nの関数として図3(A)に示すマップの形で予めROM32内に記憶されている。
【0027】
一方、機関から排出されたNOxのうちNOx吸蔵触媒12に吸蔵されるNOxの吸蔵率はNOx吸蔵触媒12に吸蔵されているNOx吸蔵量ΣNOXとNOx吸蔵触媒12内における排気ガス流の空間速度との関数となる。即ち、図3(B)においてK1で示されるように吸蔵率はNOx吸蔵触媒12に吸蔵されているNOx吸蔵量ΣNOXが増大するほど減少し、図3(C)においてK2で示されるように吸蔵率はNOx吸蔵触媒12内における排気ガス流の空間速度、即ち吸入空気量Gaが増大するほど減少する。これら吸蔵率K1,K2は予めROM32内に記憶されている。本発明による実施例では機関からの排出NOx量NOXAに吸蔵率K1およびK2を乗算することによって単位時間当りNOx吸蔵触媒12に吸蔵されるNOx量NOXA・K1・K2が算出される。
【0028】
さて、図4における超過NOx吸蔵量ΔNXは一気に放出されるのではなくて、NOx吸蔵触媒12へのNOx吸蔵量ΣNOXおよびNOx吸蔵触媒12内における排気ガスの空間速度、即ち吸入空気量Gaに応じた速度でもって徐々に放出される。即ち、図4(A)に示されるように或る吸入空気量GaにおけるNOxの脱離速度W、即ちNOx吸蔵触媒12から単位時間当り放出されるNOx量WはNOx吸蔵量ΣNOXが増大するほど高くなる。即ち、NOx吸蔵量ΣNOXが多いほど多量のNOxが放出される。
【0029】
一方、NOx吸蔵触媒12から脱離されるNOxの脱離率は図4(B)に示されるように吸入空気量Gaが増大するほど高くなる。この場合、実際のNOx脱離速度、即ちNOx吸蔵触媒12から単位時間当り実際に脱離されるNOx量は図4(A)に示される脱離速度Wに図5(B)に示される脱離率Dを乗算した値W・Dとなる。なお、これら脱離速度Wおよび脱離率Dは予めROM32内に記憶されている。
【0030】
図2におけるA点から床温TCがゆっくりと上昇するときにはNOx吸蔵量ΣNOXは最大NOx吸蔵量NMAXに沿って減少し、NOxが少しずつ放出される。しかしながらこのようにNOxの放出量が少ないときにこの少量のNOxを還元するのに必要な尿素水を正確に算出するのは実際問題として困難である。そこで本発明ではNOx吸蔵触媒12を強制的に昇温させて短時間のうちにNOxがまとまって放出されるようにしている。NOxがまとまって放出されると単位時間当りのNOx放出量が多くなり、その結果放出されたNOxを還元するのに必要な尿素水の供給量を正確に算出することができるようになる。
【0031】
図5は尿素の供給を制御するためのルーチンを示している。なお、このルーチンは一定時間毎の割込みによって実行される。
図5を参照するとまず初めにステップ50において図3(A)に示すマップから機関からの単位時間当りの排出NOx量NOXAが算出される。次いでステップ51ではNOx吸蔵触媒12の昇温制御中であるか否かが判別される。NOx吸蔵触媒12の昇温制御中でないときにはステップ52に進んでNOx吸蔵触媒12への吸蔵NOx量ΣNOXが図2に示される許容値NWよりも少ないか否かが判別される。ΣNOX<NWのとき、即ちまだNOxを吸蔵する余地があるときにはステップ53に進む。
【0032】
ステップ53では図3(B)に示す関係から吸蔵率K1が算出され、次いでステップ54では図3(C)に示す関係から吸蔵率K2が算出される。次いでステップ55では単位時間当りNOx吸蔵触媒12に実際に吸蔵されるNOx量NOXA・K1・K2をΣNOXに加算することによってNOx吸蔵量ΣNOXが算出される。次いでステップ56では排出NOx量NOXAから単位時間当り実際に吸蔵されるNOx量NOXA・K1・K2を減算することによってNOx吸蔵触媒12から単位時間当り流出する排気ガス中のNOx量NOXZが算出される。
【0033】
次いでステップ64ではNOx吸蔵触媒12から流出する排気ガス中のNOx、即ちNOx選択還元触媒14に流入する排気ガス中のNOxを還元するのに必要な尿素量が算出される。本発明による実施例ではこの尿素量は還元すべきNOx量に対して当量比=1となる量にされている。次いでステップ65では尿素水供給弁15からの尿素水の供給作用が行われる。
【0034】
一方、ステップ52においてΣNOX≧NWであると判断されたときにはステップ57に進んでNOx吸蔵触媒12の昇温制御が行われる。この昇温制御は例えば燃料噴射時期を遅角させ、リーン空燃比のもとで排気ガス温を上昇させることにより行われる。次いでステップ58では図4(A)に示す関係から脱離速度Wが算出され、次いでステップ59では図4(B)に示す関係から脱離率Dが算出される。次いでステップ60では単位時間当り実際に脱離するNOx量W・DをΣNOXから減算することによってNOx吸蔵量ΣNOXが算出される。次いでステップ61では排出NOx量NOXAに単位時間当り実際に脱離するNOx量W・Dを加算することによってNOx吸蔵触媒12から単位時間当り流出する排気ガス中のNOx量NOXAが算出される。次いでステップ64ではこのNOxを還元するのに必要な尿素量が算出される。
【0035】
このように本発明による実施例では機関から排出されるNOx量NOXAから吸蔵NOx量NOXA・K1・K2を減算し或いは機関から排出されるNOx量NOXAに放出NOx量W・Dを加算することによってNOx吸蔵触媒12から流出する排気ガス中のNOx量NOXZが算出され、このNOx量NOXZから供給尿素量が算出される。
【0036】
一方、ステップ51において昇温制御中であると判別されたときにはステップ62に進んでNOx吸蔵触媒12への吸蔵NOx量ΣNOXが図2に示される最大NOx吸着量NMAXよりも少なくなったか否かが判別される。ΣNOX≧NMAXのときにはステップ57に進んで昇温制御が続行される。これに対し、ΣNOX<NMAXになるとステップ63に進んで昇温制御が停止される。
【0037】
図6に別の実施例を示す。この実施例では排気管13内にNOx選択還元触媒14に流入する排気ガス中のNOx濃度を検出するためのNOxセンサ43が配置され、このNOxセンサ43の出力信号に基づいて尿素水の供給量が制御される。この実施例ではNOx選択還元触媒14において還元すべきNOxを直接計測しているのでNOxを還元するために必要な尿素水の供給量を正確に算出することができる。
【0038】
図7(A),(B),(C)は機関排気通路内に排気ガス中に含まれるパティキュレートを捕集するためのパティキュレートフィルタ44を配置した夫々別の実施例を示している。図7(A)に示される実施例ではパティキュレートフィルタ44はNOx吸蔵触媒12の下流に配置され、図7(B)に示される実施例ではパティキュレートフィルタ44はNOx選択還元触媒14の下流に配置され、図7(C)に示される実施例ではパティキュレートフィルタ44はNOx吸蔵触媒12の上流に配置される。
【0039】
これらの実施例ではNOx吸蔵触媒12の昇温作用に合わせてパティキュレートフィルタ44を昇温させ、それによってパティキュレートフィルタ44上に堆積したパティキュレートを燃焼させるようにしている。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】圧縮着火式内燃機関の全体図である。
【図2】NOx吸蔵触媒の最大NOx吸蔵量NMAX等を示す図である。
【図3】機関から排出されるNOx量NOXAのマップ等を示す図である。
【図4】NOxの脱離速度等を示す図である。
【図5】尿素の供給制御を行うためのフローチャートである。
【図6】圧縮着火式内燃機関の別の実施例を示す全体図である。
【図7】圧縮着火式内燃機関の更に別の実施例を示す図である。
【符号の説明】
【0041】
4 吸気マニホルド
5 排気マニホルド
7 排気ターボチャージャ
12 NOx吸蔵触媒
14 NOx選択還元触媒
15 尿素水供給弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機関排気通路内にNOx選択還元触媒を配置し、該NOx選択還元触媒に尿素を供給して該尿素から発生するアンモニアにより排気ガス中に含まれるNOxを選択的に還元するようにした内燃機関の排気浄化装置において、上記NOx選択還元触媒上流の機関排気通路内にNOx吸蔵触媒を配置し、該NOx吸蔵触媒はNOx吸蔵触媒の温度に応じて排気ガス中に含まれるNOxを吸蔵するか或いは吸蔵されているNOxを放出する性質を有し、NOx吸蔵触媒への吸蔵NOx量およびNOx吸蔵触媒からの放出NOx量を算出し、算出された吸蔵NOx量が予め定められている許容値を越えたときにはNOx吸蔵触媒を昇温させてNOx吸蔵触媒からNOxを放出させ、機関の運転状態から定まる尿素供給量に対し算出された吸蔵NOx量の還元分だけ尿素供給量を減少させ、機関の運転状態から定まる尿素供給量に対し算出された放出NOx量の還元分だけ尿素供給量を増大させるようにした内燃機関の排気浄化装置。
【請求項2】
機関から排出されるNOx量から上記算出された吸蔵NOx量を減算し或いは機関から排出されるNOx量に、上記算出された放出NOx量を加算することによってNOx吸蔵触媒から流出する排気ガス中のNOx量を算出し、このNOx量から供給尿素量を算出するようにした請求項1に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項3】
上記NOx吸蔵触媒はNOx吸蔵触媒の上流に還元剤を供給せずしてNOxを放出しうる請求項1に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項4】
NOx吸蔵触媒、NOx選択還元触媒に加えて更にパティキュレートフィルタを機関排気通路内に配置し、NOx吸蔵触媒の昇温作用に合わせてパティキュレートフィルタを昇温させ、それによりパティキュレートフィルタ上に堆積したパティキュレートを燃焼させるようにした請求項1に記載の内燃機関の排気浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−41442(P2009−41442A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−207015(P2007−207015)
【出願日】平成19年8月8日(2007.8.8)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】