説明

内燃機関の排気浄化装置

【課題】リッチずれを防ぐことが可能な内燃機関の排気浄化装置を提供する。
【解決手段】内燃機関の排気浄化装置は、吸気通路及び排気通路上に設けられた第1及び第2の過給機と、第1及び第2の過給機の両方を動作させるモードと第1の過給機のみを動作させるモードとの間で動作モードを切り替える吸気切替弁及び排気切替弁と、を有する内燃機関、いわゆるツインターボシステムに適用される。内燃機関の排気浄化装置は、排気通路上に設けられたNOx吸蔵還元触媒と、NOx吸蔵還元触媒の上流側の排気通路上に設けられた還元剤添加弁と、を有する。また、内燃機関の排気浄化装置は、判定手段及び制御手段を備える。判定手段は、排気切替弁の開度に応じて、所定時間当たりの過給圧の変化量が所定値以上となるか否かについて判定する。制御手段は、過給圧の変化量が所定値以上となる場合には、還元剤添加弁による還元剤の添加を禁止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ツインターボシステムにおける内燃機関の排気浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、排気通路上にNOx吸蔵還元触媒を設け、この触媒を用いてNOxを浄化する技術が提案されている。以下の特許文献1にも記載されているように、NOx吸蔵還元触媒では、空燃比がリーンである際にNOxを吸蔵し、空燃比がリッチ又はストイキである際に還元剤(炭化水素(HC)など)を用いて吸蔵しているNOxを還元する。なお、特許文献2及び3にも本発明と関連のある技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3719350号明細書
【特許文献2】特開2008−280952号公報
【特許文献3】特開2009−13842号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ツインターボシステムでは、吸気切替弁及び排気切替弁を切替えることにより、1つの過給機を動作させるモードと2つの過給機を動作させるモードとを切替えることができる。ここで、還元剤添加弁より還元剤をNOx吸蔵還元触媒に添加する際において、排気切替弁の開度を変化させた場合、過給圧や背圧が急変することにより吸入空気量が変化して、還元剤をNOx吸蔵還元触媒に添加するタイミングと空燃比がリッチになるタイミングとがずれる可能性がある。このようなタイミングのずれ(リッチずれ)が発生すると、還元剤添加弁より添加されたHCなどの還元剤がNOx吸蔵還元触媒をすり抜けることにより、エミッションが悪化する恐れがある。
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、ツインターボシステムにおいて、リッチずれを防ぐことが可能な内燃機関の排気浄化装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の1つの観点では、吸気通路及び排気通路上に設けられた第1及び第2の過給機と、前記第1及び第2の過給機の両方を動作させるモードと前記第1の過給機のみを動作させるモードとの間で動作モードを切り替える吸気切替弁及び排気切替弁と、を有する内燃機関に適用される内燃機関の排気浄化装置であって、前記排気通路上に設けられたNOx吸蔵還元触媒と、前記NOx吸蔵還元触媒の上流側の前記排気通路上に設けられた還元剤添加弁と、前記NOx吸蔵還元触媒の還元要求時において、前記排気切替弁の開度に応じて、過給圧の変化量が所定値以上となるか否かについて判定する判定手段と、前記過給圧の変化量が所定値以上となる場合には、前記還元剤添加弁による還元剤の添加を禁止する制御手段と、を備える。
【0007】
上記の内燃機関の排気浄化装置は、吸気通路及び排気通路上に設けられた第1及び第2の過給機と、第1及び第2の過給機の両方を動作させるモードと第1の過給機のみを動作させるモードとの間で動作モードを切り替える吸気切替弁及び排気切替弁と、を有する内燃機関、いわゆるツインターボシステムに適用される。内燃機関の排気浄化装置は、排気通路上に設けられたNOx吸蔵還元触媒と、NOx吸蔵還元触媒の上流側の排気通路上に設けられた還元剤添加弁と、を有する。また、内燃機関の排気浄化装置は、例えばECU(Electronic Control Unit)などにより実現される判定手段及び制御手段を備える。判定手段は、排気切替弁の開度に応じて、所定時間当たりの過給圧の変化量が所定値以上となるか否かについて判定する。制御手段は、過給圧の変化量が所定値以上となる場合には、還元剤添加弁による還元剤の添加を禁止する。このようにすることで、リッチずれを防ぐことができ、エミッションの悪化を抑えることができる。
【0008】
上記の内燃機関の排気浄化装置の好適な実施例では、前記判定手段は、前記排気切替弁の開度が0%よりも大きく、かつ、所定開度よりも小さい場合に、前記過給圧の変化量が所定値以上となるか否かについて判定する。
【0009】
上記の内燃機関の排気浄化装置の他の一態様は、前記判定手段は、前記排気切替弁の開度が0%よりも大きく、かつ、前記吸気切替弁が閉じている場合に、前記過給圧の変化量が所定値以上となるか否かについて判定する。これによっても、リッチずれを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0010】
吸気通路及び排気通路上に設けられた第1及び第2の過給機と、前記第1及び第2の過給機の両方を動作させるモードと前記第1の過給機のみを動作させるモードとの間で動作モードを切り替える吸気切替弁及び排気切替弁と、を有する内燃機関に適用される内燃機関の排気浄化装置であって、前記排気通路上に設けられたNOx吸蔵還元触媒と、前記NOx吸蔵還元触媒の上流側の前記排気通路上に設けられた還元剤添加弁と、前記NOx吸蔵還元触媒の還元要求時において、前記排気切替弁の開度に応じて、過給圧の変化量が所定値以上となるか否かについて判定する判定手段と、前記過給圧の変化量が所定値以上となる場合には、前記還元剤添加弁による還元剤の添加を禁止する制御手段と、を備える。このようにすることで、リッチずれを防ぐことができ、エミッションの悪化を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】エンジンシステムの概略構成を示す図である。
【図2】第1実施形態に係る制御方法を示すタイムチャートである。
【図3】第1実施形態に係る制御方法を示すフローチャートである。
【図4】第2実施形態に係る制御方法を示すタイムチャートである。
【図5】第2実施形態に係る制御方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施の形態について説明する。
【0013】
[装置構成]
まず、各実施形態に係る内燃機関の排気浄化装置が適用されたエンジンシステムについて図1を参照して説明する。
【0014】
図1は、内燃機関の排気浄化装置が適用された内燃機関(エンジンシステム)の構成を示す図である。図1において、実線の矢印は吸気及び排気の流れを示し、破線の矢印は制御信号を示す。
【0015】
各実施形態に係るエンジンシステムは、ツインターボシステムであり、エンジン1と、2個の過給機5、6と、ECU(Electronic Control Unit)10と、を備える。2個の過給機5、6は、エンジン1に接続された吸気通路2及び排気通路3に設けられている。ここで、本発明における第1の過給機は過給機5に対応し、第2の過給機は過給機6に対応する。ここで、エンジン1は、例えばガソリンエンジン又はディーゼルエンジンである。
【0016】
吸気通路2は、吸気通路2aと、当該吸気通路2aをバイパスしている吸気通路2bとを有する。吸気通路2aには過給機5のコンプレッサ5aが設けられ、吸気通路2bには過給機6のコンプレッサ6aが設けられている。
【0017】
吸気通路2bには吸気切替弁11が設けられている。吸気切替弁11は、全開状態と全閉状態の2つの状態をとるオンオフ弁であり、ECU10からの制御信号S11に基づいてアクチュエータなどにより制御される。吸気切替弁11には、当該吸気切替弁11の開度を検出する開度センサ21が設けられている。開度センサ21は、検出した吸気切替弁11の開度に対応する検出信号S21をECU10に送信する。また、吸気通路2bには、コンプレッサ6aをバイパスしているバイパス通路2bb1が設けられており、バイパス通路2bb1には吸気バイパス弁13が設けられている。吸気バイパス弁13は、ECU10からの制御信号に基づいてアクチュエータなどにより動作される。さらに、吸気通路2bには、吸気切替弁11をバイパスしているバイパス通路2bb2が設けられており、バイパス通路2bb2にはリード弁15が設けられている。
【0018】
吸気通路2a、2bが合流した下流側の吸気通路2には、過給圧センサ17、インタークーラ(IC)33が設けられる。過給圧センサ17は、所定時間毎に過給圧を検出し、検出した過給圧に対応する検出信号S17をECU10に送信する。
【0019】
排気通路3は、排気通路3aと、当該排気通路3aをバイパスしている排気通路3bとを有する。排気通路3aには過給機5のタービン5bが設けられ、排気通路3bには過給機6のタービン6bが設けられている。ここで、過給機5は可変容量式(Variable Nozzle Turbo:VNT)の過給機であり、タービン5bには、可動ノズルベーン16が取り付けられている。可動ノズルベーン16は、ECU10からの制御信号により制御される。
【0020】
排気通路3a、3bが合流した下流側の排気通路3上には、NOx吸蔵還元触媒32が設けられている。NOx吸蔵還元触媒32は、排気中のNOxを吸蔵すると共に、吸蔵しているNOxを還元する機能を有する高温活性型の触媒である。具体的には、NOx吸蔵還元触媒32は、基本的には、空燃比がリーンである際にNOxを吸蔵し、空燃比がリッチ又はストイキである際に還元剤(HCなど)を用いて吸蔵しているNOxを還元する。NOx吸蔵還元触媒32の上流側の排気通路3には、NOx吸蔵還元触媒32に還元剤を添加するための還元剤添加弁31が設けられている。還元剤添加弁31は、ECU10からの制御信号により制御されている。
【0021】
排気通路3bには排気切替弁12が設けられている。排気切替弁12は、ECU10からの制御信号S12に基づいて、アクチュエータにより動作される。排気切替弁12には、当該排気切替弁12の開度を検出する開度センサ22が設けられている。開度センサ22は、検出された排気切替弁12の開度に対応する検出信号S22をECU10に送信する。排気通路3bには、タービン5bをバイパスしているパイパス通路3aaが設けられており、バイパス通路3aaには排気バイパス弁14が設けられている。排気バイパス弁14も、ECU10からの制御信号に基づいて、アクチュエータにより動作される。
【0022】
ECU10は、図示しないCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)などを備える。ECU10は、開度センサ22により検出された排気切替弁12の開度や、過給圧センサ17により検出された過給圧に基づいて、還元剤添加弁31の制御を行う。
【0023】
[第1実施形態]
次に、第1実施形態に係る制御方法について説明する。
【0024】
吸気切替弁11及び排気切替弁12が開弁状態になると、外部から吸気通路2に取り入れられた吸気は吸気通路2a、2bの両方を通過し、エンジン1に供給される。一方、エンジン1から排出された排気は排気通路3a、3bの両方を通過する。そのため、この場合には、過給機5、6の両方が動作することとなる。一方、吸気切替弁11及び排気切替弁12が閉弁状態になると、吸気は吸気通路2bを通過できなくなり、排気は排気通路2bを通過できなくなる。そのため、この場合には、過給機6は動作せず、過給機5のみが動作することとなる。ECU10は、吸気切替弁11及び排気切替弁12の開度を制御することにより、1つの過給機を動作させるモードと2つの過給機を動作させるモードとを切替える。
【0025】
ここで、モードを切替える際において、背圧や吸気圧が急変することにより吸入空気量が変動して、還元剤をNOx吸蔵還元触媒32に添加するタイミングと空燃比がリッチになるタイミングとがずれる発生する恐れがある。このようなずれ(リッチずれ)が発生すると、還元剤添加弁31より添加された還元剤がNOx吸蔵還元触媒をすり抜け、炭化水素(HC)などが増加して、エミッションが悪化する恐れがある。
【0026】
そこで、第1実施形態に係る制御方法では、ECU10は、排気切替弁12の開度に応じて、過給圧の変化量が所定値以上となるか否かについて判定し、過給圧の変化量が所定値以上となる場合には、還元剤添加弁31による還元剤の添加を禁止することとする。
【0027】
図2は、第1実施形態に係る制御方法を示すタイムチャートであり、1つの過給機を動作させるモードから2つの過給機を動作させるモードへと切替えるときの制御を示している。具体的には、図2は、添加要求フラグ、還元剤添加弁31に対し還元剤の添加を指示するための制御信号である添加信号、排気切替弁12の開度(排気切替弁開度)、過給圧のそれぞれについて時間に対する変化を示している。
【0028】
まず、時刻t0において、ECU10は、1つの過給機を動作させるモードから2つの過給機を動作させるモードへと切替えるため、排気切替弁12の開度を開き側に制御し始める。続く時刻t1において、添加要求フラグがオフからオンになると、ECU10は、排気切替弁12の開度が所定開度よりも小さいか否かについて判定する。これは、排気切替弁12の開度が0%よりも大きく所定開度よりも小さい範囲にあると、過給圧や背圧が急変しやすいからである。ここで、所定開度は、予め実験などにより求められた適合値であり、過給圧や背圧が安定するときの排気切替弁12の開度の最小値(例えば開度5%)に設定される。
【0029】
時刻t1では、排気切替弁12の開度が所定開度よりも小さくなっている。そこで、このとき、ECU10は、実際に過給圧が急激に変化しているか否かを判定する。具体的には、ECU10は、このときに過給圧センサ17により検出された過給圧(今回過給圧)とその前回に検出された過給圧(前回過給圧)との差分の絶対値、即ち、所定時間当たりの過給圧の変化量(以下、「過給圧変化量」と称することもある)が所定値以上となっている否かについて判定する。ECU10は、過給圧変化量が所定値以上となっている場合には、過給圧の急変により、リッチずれが発生する恐れがあるとして、還元剤添加弁31による還元剤の添加を禁止する。なお、ここで、所定時間及び所定値は、予め実験などにより求められた適合値である。
【0030】
図2における過給圧の時間に対する変化を示すタイムチャートにおいて、グラフ201は、過給圧変化量が所定値よりも小さくなっている場合の過給圧の変化を示し、グラフ202は、過給圧変化量が所定値以上となっている場合の過給圧の変化を示している。
【0031】
時刻t1では、過給圧変化量は所定値以上となっている。従って、この場合、ECU10は、還元剤添加弁31による還元剤の添加を禁止する。
【0032】
時刻t2では、排気切替弁12の開度は所定開度よりも小さいままである。従って、このとき、グラフ201に示すように、過給圧変化量が所定値よりも小さくなっている場合には、ECU10は、還元剤添加弁31に対し添加信号を供給して還元剤の添加を行う。一方、グラフ202に示すように、過給圧変化量が所定値以上となっている場合には、ECU10は、還元剤添加弁31による還元剤の添加を禁止し、排気切替弁12の開度が所定開度以上となる時刻t3において、即ち、過給圧が安定した段階で、還元剤の添加を行う。
【0033】
以上に述べたことから分かるように、第1実施形態に係る制御方法では、ECU10は、排気切替弁12の開度が0%よりも大きく所定開度よりも小さい範囲にある場合で、かつ、過給圧の変化量が所定値以上となる場合には、還元剤添加弁31による還元剤の添加を禁止する。別の言い方をすると、ECU10は、排気切替弁12の開度が0%よりも大きく所定開度よりも小さい範囲にある場合であっても、過給圧の変化量が所定値よりも小さくなる場合には、還元剤添加弁31による還元剤の添加を行う。このようにすることで、リッチずれの発生を防ぐことができる。
【0034】
次に、上述の第1実施形態に係る制御処理について図3に示すフローチャートを用いて説明する。図3のフローチャートは、第1実施形態に係る還元剤添加弁31の制御処理を示すフローチャートである。
【0035】
まず、ステップS101において、ECU10は、NOx還元添加要求が有るか否かについて判定する。具体的には、ECU10は、添加要求フラグがオンの場合にNOx還元添加要求が有ると判定し、添加要求フラグがオフの場合にNOx還元添加要求が無いと判定する。ECU10は、NOx還元添加要求が無いと判定した場合には(ステップS101:No)、本制御処理を終了する。一方、ECU10は、NOx還元添加要求があると判定した場合には(ステップS101:Yes)、ステップS102の処理へ進む。
【0036】
ステップS102において、ECU10は、開度センサ22により排気切替弁12の開度を検出する。続くステップS103において、ECU10は、検出された排気切替弁12の開度が0%よりも大きく所定開度よりも小さいか否かについて判定する。ECU10は、排気切替弁12の開度が0%又は所定開度以上になっていると判定した場合には(ステップS103:No)、ステップS105の処理へ進み、NOx還元添加の実施、即ち、還元剤添加弁31による還元剤の添加を行う。一方、ECU10は、排気切替弁10の開度が0%よりも大きく、かつ、所定開度よりも小さくなっていると判定した場合には(ステップS103:Yes)、ステップS104の処理へ進む。
【0037】
ステップS104において、ECU10は、過給圧センサ17により検出された過給圧に基づいて、前回過給圧と今回過給圧との差分の絶対値、即ち、過給圧変化量が所定値以上となっている否かについて判定する。
【0038】
ステップS104において、ECU10は、過給圧変化量が所定値以上となっていると判定した場合には(ステップS104:Yes)、NOx還元添加を禁止して、ステップS106の処理へ進み、NOx排出量を算出した後、ステップS102の処理へ戻る。ECU10は、このとき算出されたNOx排出量に基づいて、過給圧が安定した段階における還元剤添加の添加量を算出する。なお、ここで、前回過給圧と今回過給圧との差分が正となり、かつ、差分の絶対値が所定値以上となる状態とは、排気切替弁12が開き側となっているときの過給圧の急変状態を示し、前回過給圧と今回過給圧との差分が負となり、かつ、差分の絶対値が所定値以上となる状態とは、排気切替弁12が閉じ側となっているときの過給圧の急変状態を示している。
【0039】
ステップS104において、ECU10は、過給圧変化量が所定値よりも小さくなっていると判定した場合には(ステップS104:No)、ステップS105の処理へ進み、NOx還元添加の実施、即ち、還元剤添加弁31による還元剤の添加を行う。ECU10は、ステップS105の処理後、本制御処理を終了する。
【0040】
以上に述べたように、第1実施形態に係る制御方法では、ECU10は、排気切替弁12の開度が0%よりも大きく、かつ、所定開度よりも小さくなっていると判定した場合には、過給圧変化量が所定値以上となっているか否かについて判定する。そして、ECU10は、過給圧変化量が所定値以上となっていると判定した場合には、還元剤添加弁31による還元剤の添加を禁止する。このようにすることで、リッチずれを防ぐことができ、エミッションの悪化を防ぐことができる。
【0041】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態に係る制御方法について説明する。
【0042】
第2実施形態に係る制御方法では、ECU10は、排気切替弁12の開度が0%よりも大きく、かつ、吸気切替弁11が閉弁している場合において、過給圧変化量が所定値以上となっている場合に、還元剤添加弁31による還元剤の添加を禁止することとする。
【0043】
図4は、第2実施形態に係る制御方法を示すタイムチャートであり、1つの過給機を動作させるモードから2つの過給機を動作させるモードへと切替えるときの制御を示している。具体的には、図4は、添加要求フラグ、還元剤添加弁31に対し還元剤の添加を指示するための制御信号である添加信号、排気切替弁12の開度(排気切替弁開度)、吸気切替弁11の開度(吸気切替弁開度)、過給圧のそれぞれについて時間に対する変化を示している。また、グラフ211は、過給圧変化量が所定値よりも小さくなっている場合の過給圧の変化を示し、グラフ212は、過給圧変化量が所定値以上となっている場合の過給圧の変化を示している。
【0044】
時刻ta0において、ECU10は、1つの過給機を動作させるモードから2つの過給機を動作させるモードへと切替えるため、排気切替弁12の開度を開き側に制御し始める。続く時刻ta1において、添加要求フラグがオフからオンになると、ECU10は、吸気切替弁11が開いているか否かについて判定する。これは、排気切替弁12の開度が0%よりも大きく、かつ、吸気切替弁11が閉弁している場合に、過給圧や背圧が急変しやすいからである。
【0045】
時刻ta1では、吸気切替弁11は閉弁している。そこで、このとき、ECU10は、実際に過給圧が急激に変化していないか否か、を判定する。具体的には、ECU10は、前回過給圧と今回過給圧との差分の絶対値たる過給圧変化量が所定値以上となっているか否かについて判定する。ECU10は、過給圧変化量が所定値以上となっている場合には、リッチずれが発生する恐れがあるとして、還元剤添加弁31による還元剤の添加を禁止する。なお、ここで、所定値は、予め実験などにより求められた適合値である。時刻ta1では、過給圧変化量は所定値以上となっている。従って、この場合、ECU10は、還元剤添加弁31による還元剤の添加を禁止する。
【0046】
時刻ta2では、吸気切替弁11は閉弁したままである。従って、このとき、グラフ211に示すように、過給圧変化量が所定値よりも小さくなっている場合には、ECU10は、還元剤添加弁31に対し添加信号を供給して還元剤の添加を行う。一方、グラフ212に示すように、過給圧変化量が所定値以上となっている場合には、ECU10は、還元剤添加弁31による還元剤の添加を禁止し、吸気切替弁11が開弁する時刻ta3において、即ち、過給圧が安定した段階で、還元剤の添加を行う。
【0047】
以上に述べたことから分かるように、第2実施形態に係る制御方法では、ECU10は、排気切替弁の開度が0%よりも大きく、かつ、吸気切替弁11が閉じている場合において、過給圧変化量が所定値以上となっている場合に、還元剤添加弁31による還元剤の添加を禁止する。別の言い方をすると、ECU10は、吸気切替弁11が閉じていても、過給圧変化量が所定値よりも小さくなる場合には、還元剤添加弁31による還元剤の添加を行う。このようにしても、リッチずれの発生を防ぐことができる。
【0048】
次に、上述の第2実施形態に係る制御処理について図5に示すフローチャートを用いて説明する。図5のフローチャートは、第2実施形態に係る還元剤添加弁31の制御処理を示すフローチャートである。
【0049】
まず、ステップS201において、ECU10は、NOx還元添加要求が有るか否かについて判定する。具体的には、ECU10は、添加要求フラグがオンの場合にNOx還元添加要求が有ると判定し、添加要求フラグがオフの場合にNOx還元添加要求が無いと判定する。ECU10は、NOx還元添加要求が無いと判定した場合には(ステップS201:No)、本制御処理を終了する。一方、ECU10は、NOx還元添加要求があると判定した場合には(ステップS201:Yes)、ステップS202の処理へ進む。
【0050】
ステップS202において、ECU10は、開度センサ22により検出された排気切替弁12の開度が0%よりも大きいか否かについて判定する。ECU10は、排気切替弁12の開度が0%よりも大きくなっていない、即ち、排気切替弁12の開度が0%となっている場合には(ステップS202:No)、ステップS205の処理へ進み、NOx還元添加の実施、即ち、還元剤添加弁31による還元剤の添加を行う。一方、ECU10は、排気切替弁12の開度が0%よりも大きくなっていると判定した場合には(ステップS202:Yes)、ステップS203の処理へ進む。
【0051】
ステップS203において、ECU10は、吸気切替弁11が開弁しているか否かについて判定する。ECU10は、吸気切替弁11が開弁していると判定した場合には(ステップS203:Yes)、テップS205の処理へ進み、NOx還元添加の実施を行う。一方、ECU10は、吸気切替弁11が開弁していない、即ち、閉弁していると判定した場合には(ステップS203:No)、ステップS204の処理へ進む。
【0052】
ステップS204において、ECU10は、過給圧センサ17により検出された過給圧に基づいて、前回過給圧と今回過給圧の差分の絶対値、即ち、過給圧変化量が所定値以上となっている否かについて判定する。ステップS204において、ECU10は、過給圧変化量が所定値よりも大きいと判定した場合には(ステップS204:Yes)、NOx還元添加を禁止して、ステップS206の処理へ進み、NOx排出量を算出した後、ステップS202の処理へ戻る。ECU10は、このとき算出されたNOx排出量に基づいて、過給圧が安定した段階における還元剤添加の添加量を算出する。
【0053】
ステップS204において、ECU10は、過給圧変化量が所定値よりも小さくなっていると判定した場合には(ステップS204:No)、ステップS205の処理へ進み、NOx還元添加の実施、即ち、還元剤添加弁31による還元剤の添加を行う。ECU10は、ステップS205の処理後、本制御処理を終了する。
【0054】
以上に述べたように、第2実施形態に係る制御方法では、ECU10は、排気切替弁12の開度が0%以上で、かつ、吸気切替弁11が閉じている場合には、過給圧変化量が所定値以上となっているか否かについて判定する。そして、ECU10は、過給圧変化量が所定値以上となっていると判定した場合に、還元剤添加弁31による還元剤の添加を禁止する。このようにしても、リッチずれの発生を防ぐことができる。
【0055】
なお、上述の実施形態では、2個の過給機が並列に配置されたエンジンシステムを例に説明したが、本発明を適用可能な例としてはこれに限られず、2個の過給機が直列に配置され、過給機1個で動作する動作モードと過給機2個で動作する動作モードとの間で切り替えを行うことが可能なエンジンシステムにおいても本発明を適用可能である。
【0056】
また、本発明は、上述した各実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う実施形態もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0057】
1 エンジン
2 吸気通路
3 排気通路
5、6 過給機
11 吸気切替弁
12 排気切替弁
17 過給圧センサ
31 還元剤添加弁
32 NOx吸蔵還元触媒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気通路及び排気通路上に設けられた第1及び第2の過給機と、
前記第1及び第2の過給機の両方を動作させるモードと前記第1の過給機のみを動作させるモードとの間で動作モードを切り替える吸気切替弁及び排気切替弁と、を有する内燃機関に適用される内燃機関の排気浄化装置であって、
前記排気通路上に設けられたNOx吸蔵還元触媒と、
前記NOx吸蔵還元触媒の上流側の前記排気通路上に設けられた還元剤添加弁と、
前記NOx吸蔵還元触媒の還元要求時において、前記排気切替弁の開度に応じて、所定時間当たりの過給圧の変化量が所定値以上となるか否かについて判定する判定手段と、
前記過給圧の変化量が所定値以上となる場合には、前記還元剤添加弁による還元剤の添加を禁止する制御手段と、を備えることを特徴とする内燃機関の排気浄化装置。
【請求項2】
前記判定手段は、前記排気切替弁の開度が0%よりも大きく、かつ、所定開度よりも小さい場合に、前記過給圧の変化量が所定値以上となるか否かについて判定することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項3】
前記判定手段は、前記排気切替弁の開度が0%よりも大きく、かつ、前記吸気切替弁が閉じている場合に、前記過給圧の変化量が所定値以上となるか否かについて判定することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の排気浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−216434(P2010−216434A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−66565(P2009−66565)
【出願日】平成21年3月18日(2009.3.18)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】