内燃機関の空燃比制御装置
【課題】フレキシブルフューエルビークルにおいて、アルコール濃度補正学習制御中の燃料供給量の過不足量を減らす空燃比制御装置を提供する。
【解決手段】三元触媒20の上流排気通路内及び下流排気通路内に配置された空燃比センサ23及び酸素センサ24を具備し、空燃比センサの出力値に基づいて燃料供給量を補正するメインフィードバック制御と、酸素センサの出力値に基づいて燃料供給量を補正するサブフィードバック制御と、アルコール濃度補正学習値を学習するアルコール濃度補正学習制御と、サブフィードバック制御における補正値に基づいて算出された学習値を学習するサブフィードバック学習制御とを実行し、アルコール濃度補正学習値が増加する学習時は排気空燃比をリッチにするサブフィードバック制御を行い、アルコール濃度補正学習値が減少する学習時は排気空燃比をリーンにするサブフィードバック制御を行う。
【解決手段】三元触媒20の上流排気通路内及び下流排気通路内に配置された空燃比センサ23及び酸素センサ24を具備し、空燃比センサの出力値に基づいて燃料供給量を補正するメインフィードバック制御と、酸素センサの出力値に基づいて燃料供給量を補正するサブフィードバック制御と、アルコール濃度補正学習値を学習するアルコール濃度補正学習制御と、サブフィードバック制御における補正値に基づいて算出された学習値を学習するサブフィードバック学習制御とを実行し、アルコール濃度補正学習値が増加する学習時は排気空燃比をリッチにするサブフィードバック制御を行い、アルコール濃度補正学習値が減少する学習時は排気空燃比をリーンにするサブフィードバック制御を行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は内燃機関の空燃比制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガソリンの他にアルコールとガソリンの各種組成の混合燃料でも走行可能な、いわゆるフレキシブルフューエルビークル(FFV)と称される自動車がある。アルコールは、通常のガソリンと比べてC(炭素)原子の含有量が異なるため、フレキシブルフューエルビークルに用いられる内燃機関にアルコールとガソリンの混合燃料を供給するにあたっては、燃料内のアルコール濃度に従って燃料供給量を調整する必要がある。
【0003】
ところで、内燃機関本体から排出された排気ガス中には炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)及び窒素酸化物(NOx)等の成分が含まれており、従来からこれら成分を浄化するために三元触媒が利用されている。三元触媒は排気ガスの空燃比(以下、「排気空燃比」と称す)が略理論空燃比となっているときにその浄化能力が高くなることから、三元触媒によって排気ガスの浄化を行う際には排気空燃比が略理論空燃比となるように燃焼室への燃料供給量等を制御する必要がある。
【0004】
従って、フレキシブルフューエルビークルにおいて、三元触媒の上流排気通路内に排気空燃比を検出することができる空燃比センサを設け、排気空燃比が燃料内のアルコール濃度に応じて定まる理論空燃比になるように、燃焼室への燃料供給量を調整するフィードバック制御を行う空燃比制御装置が公知である(特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2004−308540号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、排気ガスの熱による空燃比センサの劣化や、特に、給油等によって燃料中のアルコール濃度が大きな変化等によって、空燃比センサが実際の排気空燃比を正確に検出することができない場合がある。このような場合には上述したフィードバック制御(以下、「メインフィードバック制御」と称す)による排気空燃比の制御精度が低下してしまう。
【0007】
そこで、三元触媒の下流排気通路内に排気空燃比を検出することができる空燃比センサを設け、下流側空燃比センサの出力に基づいて上流側空燃比センサの出力値が実際の排気空燃比と一致するように上流側空燃比センサの出力値を(結果的には燃料供給量を)補正するフィードバック制御(以下、「サブフィードバック制御」と称す)を行うことにより排気空燃比の制御精度を改善することが考えられる。
【0008】
そして、このような三元触媒の上流及び下流の排気通路内に空燃比センサを配置した構成においては、上流側空燃比センサの出力値と実際の排気空燃比との間の定常的なずれに対応する学習値をサブフィードバック制御における補正量に基づいて算出すると共に、算出された学習値に基づいて上流側空燃比センサの出力値を補正する学習制御(以下、「サブフィードバック学習制御」と称す)を行うことが考えられる。
【0009】
更に、フレキシブルフューエルビークルにおいては、メインフィードバック制御によるフィードバック補正値に基づいて、燃料中のアルコール濃度に応じて燃料供給量を調整するためのアルコール濃度補正学習値を算出するアルコール濃度補正学習制御を行うことが考えられる。
【0010】
しかし、前述のように給油等によってアルコール濃度が大きく変化した場合、排気空燃比を、燃料中のアルコール濃度に応じた理論空燃比とするような補正値及び学習値となるまでの間、燃料供給量の過不足が発生し、それによって、排気エミッションの悪化や、ノッキングの発生等によるドライバビリティの悪化が生じる恐れがある。
【0011】
更に、給油等によってアルコール濃度が大きく変化した場合、アルコール濃度補正学習制御と共に、サブフィードバック制御及びサブフィードバック学習制御も同時に行われと、アルコール濃度補正学習制御によって学習され補正されるべきアルコール濃度のずれが、アルコール濃度補正学習制御による学習値、サブフィードバック制御による補正値及びサブフィードバック学習制御による学習値に分散してしまう。そうすると、アルコール濃度補正学習制御による学習の精度が悪化し、燃料供給量の過不足が発生し、それによって、排気エミッションの悪化や、ノッキングの発生等によるドライバビリティの悪化が生じる恐れがある。
【0012】
そこで本発明は、フレキシブルフューエルビークルにおいて、アルコール濃度補正学習制御中の燃料供給量の過不足量を減らし、それによって排気エミッション及びドライバビリティの悪化を防止することが可能な内燃機関の空燃比制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決するために請求項1に記載の発明によれば、燃料としてアルコールとガソリンとをそれぞれ単独で又は混合して使用可能な内燃機関の空燃比制御装置であって、機関排気通路内に設けられた排気浄化触媒の上流排気通路内及び下流排気通路内にそれぞれ配置され且つ排気ガスの空燃比を検出する上流側空燃比センサ及び下流側空燃比センサと、前記上流側空燃比センサの出力値が目標空燃比に対応する値となるようにフィードバック補正値に基づいて燃料供給量を補正するメインフィードバック制御手段と、前記上流側空燃比センサの出力値に基づく排気空燃比と実際の排気空燃比とのずれを補償すべく前記下流側空燃比センサの出力値に基づいて排気空燃比が目標空燃比となるように燃料供給量を補正するサブフィードバック制御手段と、前記フィードバック補正値に基づいて算出されたアルコール濃度補正学習値を学習すると共にそれに基づいて前記燃料供給量を補正するアルコール濃度補正学習制御手段と、前記サブフィードバック制御手段における補正値に基づいて算出された学習値を学習すると共にそれに基づいて前記燃料供給量を補正するサブフィードバック学習制御手段とを具備する内燃機関の空燃比制御装置において、前記アルコール濃度補正学習値が増加する学習をしているときは、排気空燃比が前記目標空燃比よりもリッチになるように前記サブフィードバック制御手段における補正値を補正し、前記アルコール濃度補正学習値が減少する学習をしているときは、排気空燃比が前記目標空燃比よりもリーンになるように前記サブフィードバック制御手段における補正値を補正する内燃機関の空燃比制御装置が提供される。
【0014】
即ち、請求項1に記載の発明では、アルコール濃度補正学習制御による学習が進んでいる過程において生じる燃料供給量の過不足を、アルコール濃度補正学習値の増減から判断し、燃料供給量をそれに合わせて増減させるためにサブフィードバック制御における補正値を補正する。それによって、排気エミッションの悪化やドライバビリティの悪化を防止することが可能になる。
【0015】
また、請求項2に記載の発明によれば請求項1に記載の発明において、前記アルコール濃度補正学習値の増加量に応じてリッチの度合いを変化させ、前記アルコール濃度補正学習値の減少量に応じてリーンの度合いを変化させる内燃機関の空燃比制御装置が提供される。即ち、請求項2に記載の発明では、アルコール濃度補正学習値の増減に応じてサブフィードバック制御における補正値を増減させることで、供給燃料の過不足に応じた燃料供給量の増減を図ることが可能となる。
【0016】
また、請求項3に記載の発明によれば、燃料としてアルコールとガソリンとをそれぞれ単独で又は混合して使用可能な内燃機関の空燃比制御装置であって、機関排気通路内に設けられた排気浄化触媒の上流排気通路内及び下流排気通路内にそれぞれ配置され且つ排気ガスの空燃比を検出する上流側空燃比センサ及び下流側空燃比センサと、前記上流側空燃比センサの出力値が目標空燃比に対応する値となるようにフィードバック補正値に基づいて燃料供給量を補正するメインフィードバック制御手段と、前記上流側空燃比センサの出力値に基づく排気空燃比と実際の排気空燃比とのずれを補償すべく前記下流側空燃比センサの出力値に基づいて排気空燃比が目標空燃比となるように燃料供給量を補正するサブフィードバック制御手段と、前記フィードバック補正値に基づいて算出されたアルコール濃度補正学習値を学習すると共にそれに基づいて前記燃料供給量を補正するアルコール濃度補正学習制御手段と、前記サブフィードバック制御手段における補正値に基づいて算出された学習値を学習すると共にそれに基づいて前記燃料供給量を補正するサブフィードバック学習制御手段とを具備する内燃機関の空燃比制御装置において、前記アルコール濃度補正学習値を学習しているときは、前記サブフィードバック制御手段における補正を制限する内燃機関の空燃比制御装置が提供される。
【0017】
即ち、請求項3に記載の発明では、アルコール濃度補正学習制御による学習が進んでいる過程において、サブフィードバック制御手段における補正を制限することによってアルコール濃度補正学習制御による学習精度の悪化を防止し、それによって燃料供給量の過不足量を減らし、排気エミッションの悪化やドライバビリティの悪化を防止することが可能になる。
【発明の効果】
【0018】
各請求項に記載の発明によれば、フレキシブルフューエルビークルにおいて、アルコール濃度補正学習制御中の燃料供給量の過不足量を減らし、それによって排気エミッション及びドライバビリティの悪化を防止することが可能になるという共通の効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、燃料としてアルコールとガソリンとをそれぞれ単独で又は混合して使用可能な本発明の内燃機関の空燃比制御装置について説明する。図1は本発明の制御装置が搭載される内燃機関全体の図である。図1に示した実施形態では本発明の空燃比制御装置が筒内直噴型火花点火式内燃機関に用いられた場合を示しているが、他の火花点火式内燃機関や圧縮自着火式内燃機関等にも用いることができる。
【0020】
図1を参照すると1は機関本体、2はシリンダブロック、3はシリンダブロック2内で往復動するピストン、4はシリンダブロック2上に固定されたシリンダヘッド、5はピストン3とシリンダヘッド4との間に形成された燃焼室、6は吸気弁、7は吸気ポート、8は排気弁、9は排気ポートをそれぞれ示す。図1に示したようにシリンダヘッド4の内壁面の中央部には点火プラグ10が配置され、シリンダヘッド4内壁面周辺部には燃料噴射弁11が配置される。またピストン3の頂面上には燃料噴射弁11の下方から点火プラグ10の下方まで延びるキャビティ12が形成されている。
【0021】
各気筒の吸気ポート7はそれぞれ対応する吸気枝管13を介してサージタンク14に連結され、サージタンク14は吸気管15を介してエアクリーナ(図示せず)に連結される。吸気管15内にはエアフロメータ16が配置されると共にステップモータ17によって駆動されるスロットル弁18が配置される。一方、各気筒の排気ポート9は排気マニホルド19に連結され、この排気マニホルド19は三元触媒20を内蔵した触媒コンバータ21に連結される。触媒コンバータ21の出口は排気管22に連結される。排気マニホルド19、即ち排気浄化触媒20上流側の排気通路内には空燃比センサ23が配置されると共に、排気管22、即ち三元触媒20下流側の排気通路内には酸素センサ24が配置される。アルコールを含む燃料は燃料タンク25に貯蔵され、燃料供給管を介して電子制御式の吐出量可変な燃料ポンプ26によって燃料噴射弁11へ供給され、噴射される。本実施形態では、排気浄化触媒として三元触媒20を用いているが、酸素吸蔵能力を有していれば、他のタイプの触媒、例えばNOx吸蔵還元触媒、リーンNOx触媒、DPNR等を用いてもよい。
【0022】
電子制御ユニット31はディジタルコンピュータからなり、双方向性バス32を介して相互に接続されたRAM(ランダムアクセスメモリ)33、ROM(リードオンリメモリ)34、CPU(マイクロプロセッサ)35、バックアップRAM36、入力ポート37及び出力ポート38を具備する。バックアップRAM36は常時電源に接続されており、車両のイグニッションスイッチを切っても記憶した内容を保存することが可能である。従って、後述する学習値等を保存するために使用される。
【0023】
エアフロメータ16は吸入空気流量に比例した出力電圧を発生し、その出力電圧は対応するAD変換器39を介して入力ポート37に入力される。また、空燃比センサ23は、図2に示したように、排気マニホルド19内を通過する排気ガス中の酸素濃度に基づいて、斯かる排気ガスの空燃比に略比例した出力電圧を発生する。一方、酸素センサ24は、図3に示したように、排気管22内を通過する排気ガス、即ち三元触媒20を通過した後の排気ガス中の酸素濃度に基づいて、斯かる排気ガスの空燃比が理論空燃比AFTよりもリッチであるかリーンであるかによって大きく異なる出力電圧を発生する。これら出力電圧は対応するAD変換器39を介して入力ポート37に入力される。
【0024】
また、アクセルペダル41にはアクセルペダル41の踏込み量に比例した出力電圧を発生する負荷センサ42が接続され、負荷センサ42の出力電圧は対応するAD変換器39を介して入力ポート37に入力される。クランク角センサ43は例えばクランクシャフトが30度回転する毎に出力パルスを発生し、この出力パルスが入力ポート37に入力される。CPU35ではこのクランク角センサ43の出力パルスから機関回転数Neが計算される。一方、出力ポート38は対応する駆動回路39を介して点火プラグ10、燃料噴射弁11及びステップモータ17に接続される。
【0025】
上述した三元触媒20は、酸素吸蔵能力を有しており、これにより三元触媒20に流入する排気ガスの空燃比がリーンであるときには排気ガス中の酸素を吸蔵すると共に、三元触媒20に流入する排気ガスの空燃比がリッチであるときには吸蔵している酸素を放出することにより排気ガス中に含まれるHC、COを酸化・浄化する。
【0026】
このような三元触媒20の酸素吸蔵能力を効果的に利用するためには、排気ガスの空燃比がその後リッチ及びリーンのいずれになっても排気ガスを浄化することができるように、三元触媒20中に吸蔵されている酸素の量を所定量(例えば、最大酸素吸蔵量の半分)に維持することが必要である。三元触媒20の酸素吸蔵量が上記所定量に維持されていれば、三元触媒20は常に或る程度の酸素吸蔵作用及び酸素放出作用を発揮することが可能であり、結果として三元触媒20により常に排気ガス中の成分の酸化・還元を行うことができるようになる。このため、本実施形態では、三元触媒20による排気浄化性能を維持すべく、三元触媒の酸素吸蔵量を一定に維持するように空燃比制御を行うこととしている。
【0027】
そこで、本実施形態では、三元触媒20よりも上流排気通路内に配置された空燃比センサ(上流側空燃比センサ)23によって排気空燃比(三元触媒20上流側の排気通路、燃焼室5及び吸気通路に供給された空気と燃料との比率)を検出すると共に、空燃比センサ23の出力値が理論空燃比に対応した値となるように燃料噴射弁11からの燃料供給量についてフィードバック制御(メインフィードバック制御)を行うこととしている。これにより、排気空燃比は理論空燃比付近に維持され、その結果三元触媒の酸素吸蔵量が一定に維持され、よって排気エミッションを改善することができる。
【0028】
以下、メインフィードバック制御について具体的に説明する。まず、本実施形態では、燃料噴射弁11から各気筒へと供給すべき燃料量(以下、「目標燃料供給量」と称す)Qft(n)は下記式(1)によって算出される。
Qft(n)=Mc(n)/AFT+DQf(n−1) …(1)
【0029】
ここで、上記式(1)においてnはECU31における計算回数を示す値であり、例えばQft(n)は第n回目の計算によって算出された目標燃料供給量を表している。また、Mc(n)は、吸気弁6の閉弁時までに各気筒の筒内に吸入されたと予想される空気量(以下、「筒内吸入空気量」と称す)を示している。筒内吸入空気量Mc(n)を算出するために、例えば機関回転数Neと吸気管15内を通過した空気の流量(以下、「吸気管通過空気流量」と称す)mtとを引数としたマップ又は計算式を予め実験的に又は計算によって求め、このマップ又は計算式をROM34に保存する。そして、機関運転中に検出された機関回転数Ne及び吸気管通過空気流量mtに基づいて上記マップ又は計算式により筒内吸入空気量Mc(n)が算出される。
【0030】
また、AFTは、排気空燃比の目標値を示し、本実施形態では燃料中のアルコール濃度に応じて変化する理論空燃比とする。理論空燃比における出力値は、そのアルコール濃度にかかわらず一定の値V0を示す(図2参照)。即ち、例えば或るアルコール濃度における理論空燃比がAFTである場合において、給油等によってアルコール濃度が変化して理論空燃比がAFT’になったとする。その場合においてもアルコール濃度変化後の理論空燃比に相当する出力値はV0のままであり、略比例した出力値の傾向も同様の傾向まま破線のようにシフトする。従って、図4に示されるように、アルコール濃度補正学習値FALCを用いて、それと理論空燃比AFTとのマップ又は計算式から燃料中のアルコール濃度に応じた理論空燃比AFTを求めることができる。
【0031】
アルコール濃度補正学習値FALCは、燃料中のアルコール濃度に応じて基本燃料噴射量Qbを補正するための学習値であり、詳細は後述する。図4を参照すると、例えば、E0(燃料中のアルコール濃度が0%)のとき、アルコール濃度補正学習値FALCが1.0であり、理論空燃比は14.7となる。また、E85(85%のエタノール混合燃料)のとき、アルコール濃度補正学習値FALCが1.4であり、理論空燃比は10.0となる。
【0032】
そして、DQfは、後述するメインフィードバック制御に関して算出される燃料補正量を示す。燃料噴射弁11では、このように上記式(1)によって算出された目標燃料供給量に対応する量の燃料が噴射される。
【0033】
なお、上記説明では、筒内吸入空気量Mc(n)は、機関回転数Neと吸気管通過空気流量mtとを引数としたマップ等に基づいて算出されるとしているが、例えばスロットル弁18の開度及び大気圧等に基づいた計算式等、他の方法によって求められてもよい。
【0034】
図5は、燃料噴射弁11からの目標燃料供給量Qft(n)を算出する目標燃料供給量算出制御操作のフローチャートである。この操作はECU31によって予め定められた所定時間毎の割り込みによって実行されるルーチンとして行われる。
【0035】
まず、ステップ101において、クランク角センサ43及びエアフロメータ16によって機関回転数Ne及び吸気管通過空気流量mtが検出される。次いで、ステップ102では、後述するアルコール濃度補正学習値FALCがバックアップRAM36より読み込まれる。次いで、ステップ103では、ステップ101において検出された機関回転数Ne及び吸気管通過空気流量mtに基づいてマップにより又は計算式により第n回目の計算時における筒内吸入空気量Mc(n)が算出される。次いで、ステップ104では、ステップ102において読み込まれたアルコール濃度補正学習値FALCに基づいて図4に示されるマップにより、燃料中のアルコール濃度に応じた理論空燃比AFTが算出される。
【0036】
次いで、ステップ105では、ステップ103で算出された筒内吸入空気量Mc(n)及び後述するメインフィードバック制御操作において算出された第n−1回目の計算時における燃料補正量DQf(n−1)に基づいて上記式(1)により目標燃料供給量Qft(n)が算出され、ルーチンを終了する。燃料噴射弁11からは、このように算出された目標燃料供給量Qft(n)に相当する量の燃料が噴射される。
【0037】
次に、メインフィードバック制御について説明する。本実施形態では、メインフィードバック制御として、空燃比センサ23の出力に基づいて算出された実際の燃料供給量と、上述した目標燃料供給量Qftとの燃料偏差量ΔQfを計算回数毎に算出し、この燃料偏差量ΔQfがゼロになるように燃料補正量DQfを算出している。具体的には、燃料補正量DQfは下記式(2)により算出される。なお、下記式(2)においてDQf(n−1)は、第n−1回目の計算、即ち前回の計算における燃料補正量であり、Kmpは比例ゲイン、Kmiは積分ゲインをそれぞれ示している。これら比例ゲインKmp、積分ゲインKmiは予め定められた一定の値であってもよいし、機関運転状態に応じて変化する値であってもよい。
【数1】
【0038】
図6は、燃料補正量DQfを算出するメインフィードバック制御操作のフローチャートである。この操作はECU31によって予め定められた所定時間毎の割り込みによって実行されるルーチンとして行われる。
【0039】
まず、ステップ111では、メインフィードバック制御の実行条件が成立しているか否かが判定される。メインフィードバック制御の実行条件が成立している場合とは、例えば内燃機関の冷間始動中ではないこと(即ち、機関冷却水温が一定温度以上であって始動時燃料増量等が行われていないこと)や、機関運転中に燃料噴射弁からの燃料噴射を停止する燃料カット制御中ではないこと等が挙げられる。ステップ111においてメインフィードバック制御の実行条件が成立していると判定された場合には、ステップ112へと進む。一方、ステップ111においてメインフィードバック制御の実行条件が成立していないと判定された場合には、ルーチンを終了し、メインフィードバック制御は実行されない。
【0040】
ステップ112では、第n回目の計算時における空燃比センサ23の出力値VAF(n)が検出される。次いで、ステップ113では、後述するサブフィードバック制御及びサブフィードバック学習制御によって算出された空燃比センサ23の出力補正値であるサブフィードバック補正値efsfb(n)及びサブフィードバック学習値efsfbgをステップ112で検出された出力値VAF(n)に加算することで、空燃比センサ23の出力値が補正されて第n回目の計算時における補正出力値VAF’(n)が算出される(VAF’(n)=VAF(n)+efsfb(n)+efsfbg(n))。
【0041】
次いで、ステップ114では、前述のようにアルコール濃度補正学習値FALCと図4から求められたAFTが読み込まれる。次いで、ステップ115では、ステップ113で算出された補正出力値VAF’(n)及びステップ114で読み込まれたAFTに基づいて図2に示したマップを用いて第n回目の計算時における実空燃比AFR(n)が算出される。このようにして算出された実空燃比AFR(n)は、第n回目の計算時における三元触媒20に流入する排気ガスの実際の空燃比に略一致した値となっている。
【0042】
次いで、ステップ116では、下記式(3)により、空燃比センサ23の出力に基づいて算出された燃料供給量と目標燃料供給量Qftとの燃料偏差量ΔQfが算出される。なお、下記式(3)において、筒内吸入空気量Mc及び目標燃料供給量Qftについては第n回目の計算時における値が用いられているが、第n回目の計算時よりも前の値が用いられてもよい。
ΔQf(n)=Mc(n)/AFR(n)−Qft(n) …(3)
【0043】
ステップ117では、上記式(2)により第n回目の計算時における燃料補正量DQf(n)が算出され、ルーチンを終了する。算出された燃料補正量DQf(n)は、図5に示した操作のステップ105において用いられる。
【0044】
ところで、排気ガスの熱により空燃比センサ23が劣化すること等により空燃比センサ23の出力にはずれが生じる場合がある。このような場合、本来図2に実線で示したような出力値を発生させる空燃比センサ23が、例えば図2に破線で示したような出力値を発生させてしまう。このように空燃比センサ23の出力値にずれが生じると、空燃比センサ23は例えば本来であれば排気空燃比が理論空燃比になっているときに発生させる出力値を、理論空燃比よりもリーンであるときに発生させてしまう。そこで、本実施形態では、酸素センサ(下流側空燃比センサ)24を用いたサブフィードバック制御により空燃比センサ23の出力値に生じたずれを補償して、空燃比センサ23の出力値が実際の排気空燃比に対応した値となるようにすることとしている。
【0045】
即ち、酸素センサ24は、図3に示したように、排気空燃比が理論空燃比よりもリッチであるかリーンであるかを検出することができ、理論空燃比よりもリッチであるかリーンであるかの判定にずれを生じることがほとんどない。このため、実際の排気空燃比がリーンとなっているときには酸素センサ24の出力値は低い値となっており、実際の排気空燃比がリッチとなっているときには酸素センサ24の出力値は高い値となっている。従って、実際の排気空燃比が略理論空燃比となっているとき、即ち理論空燃比付近で上下を繰り返しているときには、酸素センサ24の出力値は高い値と低い値との間で反転を繰り返す。従って、本実施形態では、酸素センサ24の出力値が高い値と低い値との間で反転を繰り返すように空燃比センサ23の出力値を補正することとしている。
【0046】
図7は、実際の排気空燃比と、酸素センサの出力値と、サブフィードバック補正値efsfbと、サブフィードバック学習値efsfbgとのタイムチャートである。図7のタイムチャートは、実際の排気空燃比が理論空燃比になるように制御しているにもかかわらず、空燃比センサ23にずれが生じていて実際の排気空燃比が理論空燃比となっていない場合に、空燃比センサ23に生じているずれが補償されていく様子を示している。
【0047】
図7に示した例では、時刻t0において、実際の排気空燃比は理論空燃比となっておらず、理論空燃比よりもリーンとなっている。これは、空燃比センサ23にずれが生じていて、実際の排気空燃比が理論空燃比よりもリーンである空燃比となっているときに空燃比センサ23により理論空燃比に対応する出力値が出力されているためである。このとき酸素センサ24の出力値は低い値となっている。
【0048】
サブフィードバック補正値efsfbは、上述したように、図6のステップ113において補正出力値VAF’(n)を算出するために出力値VAF(n)に加算される。従って、このサブフィードバック補正値efsfbが正の値となっている場合には空燃比センサ23の出力値VOはリーン側に補正され、負の値となっている場合には空燃比センサ23の出力値VOはリッチ側に補正される。そしてサブフィードバック補正値efsfbの絶対値が大きいほど空燃比センサ23の出力値VOが大きく補正される。
【0049】
空燃比センサ23の出力値が略理論空燃比となっているにもかかわらず酸素センサ24の出力値が低い値となっているときには空燃比センサ23の出力値がリッチ側にずれていることを意味する。そこで、本実施形態では、酸素センサ24の出力値が低い値となっているときには、図7に示したように、サブフィードバック補正値efsfbの値を増加させて、空燃比センサ23の出力値をリーン側へ補正することとしている。一方、空燃比センサ23の出力値が略理論空燃比となっているにもかかわらず酸素センサ24の出力値が高い値となっているときには、サブフィードバック補正値efsfbの値を減少させて、空燃比センサ23の出力値をリッチ側へ補正することとしている。
【0050】
具体的にはサブフィードバック補正値efsfbの値は下記式(4)により計算される。なお、下記式(4)において、Kspは比例ゲイン、Ksiは積分ゲインをそれぞれ示している。また、ΔVO(n)は、目標出力値(本実施形態では、理論空燃比に対応する値)と第n回目の計算時における酸素センサ24の出力値との出力偏差を示している。
【数2】
【0051】
図7に示した例では、サブフィードバック補正値efsfbの値が増加するにつれて、空燃比センサ23の出力値に生じているずれが補正され、実際の排気空燃比が徐々に理論空燃比に近づいていく。
【0052】
こうしてサブフィードバック制御により空燃比センサ23の出力値は適宜補正されるが、例えば内燃機関を停止させた場合等にはサブフィードバック制御が中断され、その結果、サブフィードバック補正値efsfbの値はゼロにリセットされる。その後、再び内燃機関を始動させた場合等には、サブフィードバック制御が再開されるが、通常のRAM33に保存されていたサブフィードバック補正値efsfbはゼロにリセットされているため、空燃比センサ23の出力値を再び適切な値にまで補正するには時間がかかる。
【0053】
そこで、本実施形態では、空燃比センサ23の出力値と実際の排気空燃比に対応する値との間に生じている定常的なずれに対応するサブフィードバック学習値efsfbgを上記サブフィードバック補正値efsfbに基づいて算出すると共に、図6のステップ113に示したように、算出されたサブフィードバック学習値efsfbgに基づいて空燃比センサ23の出力値VAFを補正することとしている(以下、このような制御を「サブフィードバック学習制御」と称す)。このようにして算出されたサブフィードバック学習値efsfbgは、バックアップRAM36に保存されるので内燃機関の停止等の後でも消去されることがない。従って、このサブフィードバック学習値efsfbgを用いれば比較的早期に空燃比センサ23の出力値を再び適切な値にまで補正することができるようになる。
【0054】
具体的には、前回の学習時期(即ち、サブフィードバック学習値efsfbgの算出時期)から所定時間ΔTが経過したときのサブフィードバック補正値efsfbが正の値である場合にはサブフィードバック学習値efsfbgを増加させると共に、サブフィードバック補正値efsfbが負の値である場合にはサブフィードバック学習値efsfbgを減少させるようにしている。また、サブフィードバック学習値efsfbgの増加量又は減少量は、サブフィードバック補正値efsfbの絶対値が大きくなるほど多くなるようにしている。
【0055】
特に本実施形態では、前回の学習時期から所定時間ΔTが経過したときのサブフィードバック補正値efsfb及びサブフィードバック学習値efsfbgはそれぞれ下記式(5)及び(6)により更新される。なお、下記式(5)及び(6)において、αは取り込み割合を示すなまし率(0<α≦1)である。従って、図6に示した例では、時刻t1においてサブフィードバック補正値efsfbが正の値となっているため、下記式(5)及び(6)によりサブフィードバック補正値efsfbが減少と共にサブフィードバック学習値efsfbgが増加する。同様に時刻t2においてもサブフィードバック補正値efsfbが正の値となっているため、下記式(5)及び(6)によりサブフィードバック補正値efsfbが減少すると共にサブフィードバック学習値efsfbgが増加する。
efsfb=efsfb−efsfb・α …(5)
efsfbg=efsfbg+efsfb・α …(6)
【0056】
こうして算出されたサブフィードバック学習値efsfbgは、上述したように、図6のステップ113において補正出力値VAF’(n)を算出するために出力値VAF(n)に加算される。そしてサブフィードバック学習値efsfbgは、バックアップRAM36に保存されるので内燃機関の停止等の後でも消去されることがない。このため、内燃機関の停止後、運転を再開したときに、サブフィードバック補正値efsfbがゼロにリセットされていても、サブフィードバック学習値efsfbgを用いて空燃比センサ23の出力値を迅速に適切な値に補正することができる。
【0057】
なお、上記例では、サブフィードバック学習値efsfbgの増加量又は減少量は、サブフィードバック補正値efsfbの絶対値が大きくなるほど多くなるようにしているが、サブフィードバック補正値efsfbに応じて変化させずに一定量としてもよい。この場合、例えば、サブフィードバック補正値efsfbの絶対値が所定値以上である場合にのみサブフィードバック補正値efsfbのサブフィードバック学習値efsfbgへの取り込みが行われる。
【0058】
図8は、サブフィードバック補正値efsfbを算出するサブフィードバック制御及びサブフィードバック学習値efsfbgを算出するサブフィードバック学習制御の操作を示すフローチャートである。この操作はECU31によって予め定められた所定時間毎の割り込みによって実行されるルーチンとして行われる。
【0059】
まず、ステップ121では、サブフィードバック制御の実行条件が成立しているか否かが判定される。サブフィードバック制御の実行条件が成立している場合とは、例えばメインフィードバック制御の実行条件と同様に、内燃機関の冷間始動中ではないことや、機関運転中に燃料噴射弁からの燃料噴射を停止する燃料カット制御中ではないこと等が挙げられる。ステップ121においてサブフィードバック制御の実行条件が成立していると判定された場合には、ステップ122へと進み、サブフィードバック制御が実行される。一方、ステップ121において、サブフィードバック制御の実行条件が成立していないと判定された場合には、ルーチンを終了し、サブフィードバック制御及びサブフィードバック学習制御は実行されない。
【0060】
ステップ122では、第n回目の計算時における酸素センサ24の出力値VO(n)が検出される。次いで、ステップ123では、目標出力値VOTとステップ122で検出された酸素センサ24の出力値VO(n)との出力偏差ΔVO(n)が算出される(ΔVO(n)=VOT−VO(n))。ステップ124では、下記式(7)により第n回目の計算時における比例項Msp(n)の値が算出される。
Msp(n)=Ksp・ΔVO(n) …(7)
【0061】
次いで、ステップ125では、下記式(8)により第n回目の計算時における積分項Msi(n)の値が算出され、ステップ126へと進む。ステップ126ではステップ145で算出された比例項Msp(n)の値と、ステップ125で算出された積分項Mip(n)の値とに基づいて下記式(9)により出力補正量efsfb(n)が算出される。
Msi(n)=Msi(n−1)+Ksi・VO(n) …(8)
efsfb(n)=Msp(n)+Msi(n) …(9)
【0062】
次いで、ステップ127では、サブフィードバック学習制御の実行条件が成立しているか否かが判定される。サブフィードバック学習制御の実行条件が成立している場合とは、例えば燃料カット制御が解除されてから所定時間以上経過している場合、サブフィードバック制御が前回サブフィードバック学習制御実行時から所定回数行われている場合等が上げられる。ステップ127においてサブフィードバック学習制御の実行条件が成立していると判定された場合には、ステップ128へと進み、上記式(5)及び(6)により、サブフィードバック学習制御が実行される。逆にサブフィードバック学習制御の実行条件が成立してないと判定された場合には、ルーチンを終了し、サブフィードバック学習制御は実行されない。
【0063】
なお、上記実施形態では、サブフィードバック制御としてPI制御が行われた場合を示しているが、PID制御等、他の制御が行われてもよい。
【0064】
次に、アルコール濃度補正学習制御について図9(A)から図9(C)を参照しながら説明する。まず、図9(A)に示される実線は、メインフィードバック制御によるフィードバック補正値FAFを示し、破線は、フィードバック補正値FAFに対して、例えばローパスフィルタ等によるなまし処理(平滑化処理)を施したフィードバック補正なまし値FAFSMを示す。図9(B)に示される実線はアルコール濃度補正学習値FALCを示す。
【0065】
ここで、フィードバック補正値FAFとは、以下の式(10)に基づいて算出される燃料噴射量Qftを算出する際に、基本燃料噴射量Qbをフィードバック補正するための係数である。また、FALCはアルコール濃度補正学習値であり、燃料中のアルコール濃度に応じて基本燃料噴射量Qbを補正するための学習値である。アルコール濃度補正学習値FALCはバックアップRAM36に保存される。
Qft=Qb・(1+FALC)+Qb・FAF …(10)
【0066】
上記式(10)と、上記式(1)と同様の以下の式(11)とは、燃料噴射量Qftを算出する同じ式を表し、第一項及び第二項はそれぞれの式で対応している。
Qft=Mc/AFT+DQf …(11)
【0067】
従って、フィードバック補正値FAFと燃料補正量DQfとの関係は、上記式(10)及び式(11)それぞれの第二項より、式(12)のように表される。以下、フィードバック補正値FAFを用いて本発明による実施形態を説明する。
FAF=DQf/Qb …(12)
【0068】
図9(A)及び図9(B)に示されるように、アルコール濃度補正学習制御は、一定間隔毎に実行され、実行時点におけるフィードバック補正なまし値FAFSMの値分だけ、フィードバック補正値FAFを減少させると共にアルコール濃度補正学習値FALCを増加させ、フィードバック補正なまし値FAFSMをゼロにリセットしている。
【0069】
アルコール濃度補正学習制御を繰り返すことによって、アルコール濃度補正学習値FALCが、排気空燃比を理論空燃比とするために、燃料中のアルコール濃度に適した補正値へと徐々に近づく。しかし、給油等によって燃料中のアルコール濃度の変化が非常に大きい場合、そのアルコール濃度に応じた最適な補正値及び学習値に収束するまでの間、燃料供給量に過不足が発生し、それによって、前述のように排気エミッションの悪化やドライバビリティの悪化が生じる問題がある。そこで、本発明では、通常のメインフィードバック制御による燃料供給量の補正に加え、以下に説明するようにアルコール濃度の変化に応じてサブフィードバック補正値efsfbを補正することで、最適な燃料供給量に対する過不足量を減少させ、上記問題を解決している。
【0070】
これに関し、例えば、給油等によって燃料中のアルコール濃度が増大した場合を用いて説明する。アルコール濃度が増大したということは、現在よりも多くの燃料を供給しなければ排気空燃比は理論空燃比とならない。そのために、サブフィードバック補正値efsfbについては増加させる必要があり、サブフィードバック補正値efsfbを増加させる方法として、まず、目標電圧を変更する方法について説明する。
【0071】
ここで、図10(A)から図10(C)は時間と酸素センサ24の出力値VOとの関係を示している。図10(A)は、従来のサブフィードバック制御による酸素センサ24の出力値VOを示しており、リッチ空燃比時の出力値(例えば、0.8V)及びリーン空燃比時の出力値(例えば、0.2V)の略中間の理論空燃比おける出力値Vm(例えば、0.5V)(図3参照)を目標出力値VOTとしている。
【0072】
これに対し、図10(B)は、目標出力値VOTを理論空燃比出力値VMよりも高い値(例えば、0.7V)、即ちリッチ側に設定している。実線で図示される酸素センサ24の出力値VOの時間の経過に伴う出力傾向は変わらないので、一定時間におけるサブフィードバック補正値efsfbの平均値が増加し、結果として燃料供給量は増加する。即ち、目標出力値VOTを理論空燃比出力値VMよりも高い値に設定することによって、上述の図8のステップ123において説明したように、リッチ空燃比時のマイナスの出力偏差ΔVOよりリーン空燃比時のプラスの出力偏差ΔVOの方が多くなり、平均するとプラスの出力偏差ΔVOとなって燃料供給量を増加させることができる。
【0073】
上記は、アルコール濃度が増大した場合について説明したが、当然のことながらアルコール濃度が減少した場合は、酸素センサ24の目標出力値VOTを理論空燃比出力値VMよりも低い値に設定することで、燃料供給量を減少させることができる。
【0074】
図11及び図12は、アルコール濃度補正学習値を求め、アルコール濃度補正学習値の変化に応じて酸素センサ24の目標出力値を変更するアルコール濃度補正学習制御操作を示すフローチャートである。この操作はECU31によって予め定められた所定時間毎の割り込みによって実行されるルーチンとして行われる。
【0075】
図11を参照すると、まず、ステップ131では、フィードバック補正値FAFが読み込まれる。次いで、ステップ132では、ステップ131で読み込んだFAFに対してなまし処理を施し、フィードバック補正なまし値FAFSMを算出する。次いで、ステップ133では、時間カウンタCNTがインクリメントされる。次いで、ステップ134では、ステップ133でインクリメントされた時間カウンタCNTが、アルコール濃度補正学習制御実行間隔CNTsadg以上であるか否かが判定される。ここで、時間カウンタCNTが、アルコール濃度補正学習制御実行時間CNTsadg以上であるならば、アルコール濃度補正学習制御を行うべく、ステップ135へと進む。一方、ステップ134において、時間カウンタCNTがアルコール濃度補正学習制御実行時間CNTsadgよりも小さい場合、アルコール濃度補正学習制御及び目標出力値の変更を行うことなくルーチンを終了する。
【0076】
次いで、ステップ135では、後述するアルコール濃度補正学習値FALCの前回の値と今回学習後の差分を求めるために、前回のアルコール濃度補正学習値FALCを前回アルコール濃度補正学習値FALCpにセットし、ステップ136へと進む。
【0077】
次に、ステップ136及び137で行われるアルコール濃度補正学習制御について説明する。ステップ136において、アルコール濃度補正学習値FALCは、その前回値に対してフィードバック補正なまし値FAFSMを加算することで算出される。それと同時に、フィードバック補正値FAFは、その前回値に対してアルコール濃度補正学習値FALCに加算した分のフィードバック補正なまし値FAFSMを減算することで算出される。その後、ステップ137へと進む。ステップ137では、フィードバック補正なまし値FAFSMをゼロにリセットし、ステップ138へと進む。
【0078】
次いで、ステップ138では、ステップ136で求めた学習後のアルコール濃度補正学習値FALCから、ステップ135でセットした前回アルコール濃度補正学習値FALCpを減算し、アルコール濃度補正学習値偏差ΔFALCを算出し、次いでステップ141へと進む。
【0079】
次いで、図12のステップ141において、ステップ138で算出したアルコール濃度補正学習値偏差ΔFALCの絶対値から目標出力変更量VOCを算出する。そのために、アルコール濃度補正学習値偏差ΔFALCの絶対値と、目標出力変更量VOCとの関係をマップ又は計算式を予め実験的に又は計算によって求め、このマップ又は計算式をROM34に保存する。
【0080】
図13に示すのは、このマップの一例である。これによると、アルコール濃度補正学習値偏差ΔFALCの絶対値が予め定められた値FALCdshよりも小さい場合、即ち、アルコール濃度補正学習値FALCの変化量が少ないとき、目標出力変更量VOCはゼロである。即ち、アルコール濃度補正学習値FALCの変化量が小さいときは、排気エミッションの悪化やドライバビリティの悪化といった問題が生じにくいと考えられるため、酸素センサ24の目標出力値を変更することなく、通常のサブフィードバック制御が行われる。
【0081】
一方、アルコール濃度補正学習値偏差ΔFALCの絶対値が予め定められた値FALCdshよりも大きい場合、即ち、アルコール濃度補正学習値FALCの変化量が大きいとき、目標出力変更量VOCはアルコール濃度補正学習値偏差ΔFALCの絶対値に応じて増大する。即ち、アルコール濃度補正学習値偏差ΔFALCの変化量が大きいときは、補正又は学習の過程において、排気エミッションの悪化やドライバビリティの悪化といった問題が生じやすいと考えられるため、酸素センサ24の目標出力値を変更し、燃料供給量を調整する。
【0082】
ステップ141において、目標出力変更量VOCを設定した後、ステップ142へと進む。次いで、ステップ142では、アルコール濃度補正学習値偏差ΔFALCが0以上か否かが判定される。アルコール濃度補正学習値偏差ΔFALCが0以上である場合には、ステップ143へと進む。ここで、アルコール濃度補正学習値偏差ΔFALCが0以上である場合とは、アルコール濃度が高くなる方向にアルコール濃度補正学習がなされている、即ち、給油等によって燃料中のアルコール濃度が高くなったことを意味する。従って、これは先ほど図10(B)を参照しながら説明した例と同様の場合であって、目標出力値VOTを理論空燃比出力値VMよりも高い値に変更する必要がある。従って、ステップ143では、目標出力値VOTにステップ141で算出された目標出力変更量VOCが加算され、次いで、ステップ145に進んで時間カウンタCNTをゼロにリセットしてルーチンを終了する。
【0083】
一方、ステップ142でアルコール濃度補正学習値偏差ΔFALCが0未満である場合には、ステップ144へと進む。ここで、アルコール濃度補正学習値偏差ΔFALCが0未満である場合とは、アルコール濃度が低くなる方向にアルコール濃度補正学習がなされている、即ち、給油等によって燃料中のアルコール濃度が低くなったことを意味する。従って、図10(B)を参照しながら説明した例とは反対に、目標出力値VOTを理論空燃比出力値VMよりも低い値に変更する必要がある。従って、ステップ144では、目標出力値VOTからステップ141で算出された目標出力変更値VOCが減算され、次いで、ステップ145に進んで時間カウンタCNTをゼロにリセットしてルーチンを終了する。
【0084】
上述の一番目の実施形態は、アルコール濃度の変化に応じてサブフィードバック補正値efsfbを補正する方法として、目標出力値VOTを変更することによって、サブフィードバック補正値efsfbを補正する方法を用いている。次に、二番目の実施形態として、サブフィードバック補正値efsfbの算出に関する上記式(4)及び(7)で使用される比例ゲインKspを変更する方法について説明する。
【0085】
図10(C)は、図10(B)と同様に、給油等によって燃料中のアルコール濃度が増大した場合において、比例ゲインKspを変更することによる酸素センサ24の出力値VOの変化を示している。
【0086】
具体的には、図10(C)において、酸素センサ24の出力値VOが理論空燃比出力値VMよりもリッチ側にある場合とリーン側にある場合とで、比例ゲインKspにそれぞれ異なる値を設定している。即ち、酸素センサ24の出力値VOが理論空燃比出力値VMよりもリッチ側にある場合における、比例ゲインをリッチ時比例ゲインKsprとし、酸素センサ24の出力値VOが理論空燃比出力値VMよりもリーン側にある場合における、比例ゲインをリーン時比例ゲインKsplとすると、図10(C)においては、リッチ時比例ゲインKsprよりもリーン時比例ゲインKsplの方が大きく設定されている。
【0087】
酸素センサ24の出力値VOがリッチ時とリーン時において、目標出力値VOT、即ち理論空燃比出力値VMとの出力偏差ΔVOは略等しいため、結果として、比例ゲインの大きいリーン時の方がリッチ時よりもサブフィードバック補正値efsfbが大きくなる。従って、最終的に、燃料供給量を増加させることができる。
【0088】
上記は、アルコール濃度が増大した場合について説明したが、当然のことながらアルコール濃度が減少した場合は、リッチ時比例ゲインKsprとリーン時比例ゲインKsplの大小関係を逆転させることで、燃料供給量を減少させることができる。
【0089】
図14は、比例ゲインKspを排気空燃比によって切り替えるための、図8に示すフローチャートと類似する本実施形態によるサブフィードバック制御及びサブフィードバック学習制御の操作を示すフローチャートである。図8に示すフローチャートとは、図8のステップ123に相当するステップ153の後にステップ154からステップ156が加わった点において異なる。
【0090】
図8に示すフローチャートと異なる点についてのみ説明すると、ステップ153で酸素センサ24の出力偏差ΔVO(n)を算出した後、ステップ154へと進む。ステップ154では、ΔVO(n)が0以上か否か、即ち、排気空燃比がリーンか否かが判定される。ステップ154において、ΔVO(n)が0以上、即ち、排気空燃比がリーンであると判定された場合、ステップ155へと進み、比例ゲインKspにリーン時比例ゲインKsplをセットしてステップ157へと進む。一方、ステップ154において、ΔVO(n)が0未満、即ち、排気空燃比がリッチであると判定された場合、ステップ156へと進み、比例ゲインKspにリッチ時比例ゲインKsprをセットしてステップ157へと進む。ステップ157以降の処理は、図8のステップ124以降の処理と同じである。
【0091】
図15は、図14に示すステップ155又は156で比例ゲインKspにセットするリーン時比例ゲインKspl及びリッチ時比例ゲインKsprを決定するための、アルコール濃度補正学習制御操作の後半部分を示すフローチャートである。アルコール濃度補正学習制御操作の前半部分は図11と同じである。
【0092】
従って、図11のステップ138でアルコール濃度補正学習値偏差ΔFALCを算出した後、次いで、図15のステップ171へと進む。ステップ171では、ステップ138で算出したアルコール濃度補正学習値偏差ΔFALCの絶対値からゲイン補正係数GKを算出する。そのために、アルコール濃度補正学習値偏差ΔFALCの絶対値と、ゲイン補正係数GKとの関係をマップ又は計算式を予め実験的に又は計算によって求め、このマップ又は計算式をROM34に保存する。
【0093】
図16に示すのは、このマップの一例である。これによると、アルコール濃度補正学習値偏差ΔFALCの絶対値が予め定められた値FALCdshよりも小さい場合、即ち、アルコール濃度補正学習値FALCの変化量が少ないとき、ゲイン補正係数GKは1.0である。即ち、アルコール濃度補正学習値FALCの変化量が小さいときは、排気エミッションの悪化やドライバビリティの悪化といった問題が生じにくいと考えられるため、比例ゲインKspを変更することなく、通常のサブフィードバック制御が行われる。
【0094】
一方、アルコール濃度補正学習値偏差ΔFALCの絶対値が予め定められた値FALCdshよりも大きい場合、即ち、アルコール濃度補正学習値FALCの変化量が大きいとき、ゲイン補正係数GKはアルコール濃度補正学習値偏差ΔFALCの絶対値に応じて減少する。即ち、アルコール濃度補正学習値偏差ΔFALCの変化量が大きいときは、補正又は学習の過程において、排気エミッションの悪化やドライバビリティの悪化といった問題が生じやすいと考えられるため、比例ゲインKspに1.0以下のゲイン補正係数GKを掛け、燃料供給量を調整する。
【0095】
ステップ171において、ゲイン補正係数GKを設定した後、ステップ172へと進む。次いで、ステップ172では、アルコール濃度補正学習値偏差ΔFALCが0以上か否かが判定される。アルコール濃度補正学習値偏差ΔFALCが0以上である場合には、ステップ173へと進む。ここで、アルコール濃度補正学習値偏差ΔFALCが0以上である場合とは、アルコール濃度が高くなる方向にアルコール濃度補正学習がなされている、即ち、給油等によって燃料中のアルコール濃度が高くなったことを意味する。従って、これは先ほど図10(C)を参照しながら説明した例と同様の場合であって、リッチ時比例ゲインKsprよりもリーン時比例ゲインKsplの方を大きく設定する必要がある。従って、ステップ173では、リッチ時比例ゲインKsprには通常の比例ゲインKspにゲイン補正係数GKを掛けた値を、リーン時比例ゲインKsplには通常の比例ゲインをセットし、次いで、ステップ175に進んで時間カウンタCNTをゼロにリセットしてルーチンを終了する。
【0096】
一方、ステップ172でアルコール濃度補正学習値偏差ΔFALCが0未満である場合には、ステップ174へと進む。ここで、アルコール濃度補正学習値偏差ΔFALCが0未満である場合とは、アルコール濃度が低くなる方向にアルコール濃度補正学習がなされている、即ち、給油等によって燃料中のアルコール濃度が低くなったことを意味する。従って、図10(C)を参照しながら説明した例とは反対に、リーン時比例ゲインKsplよりもリッチ時比例ゲインKsprの方を大きく設定する必要がある必要がある。従って、ステップ174では、リッチ時比例ゲインKsprには通常の比例ゲインKspを、リーン時比例ゲインKsplには通常の比例ゲインにゲイン補正係数GKを掛けた値をセットし、次いで、ステップ175に進んで時間カウンタCNTをゼロにリセットしてルーチンを終了する。
【0097】
ところで、給油等によってアルコール濃度が大きく変化した場合、アルコール濃度補正学習制御と共に、サブフィードバック制御及びサブフィードバック学習制御も同時に行われる。これは即ち、アルコール濃度補正学習制御によって学習され補正されるべきアルコール濃度のずれが、アルコール濃度補正学習値FALC、サブフィードバック補正値efsfb及びサブフィードバック学習値efsfbgに分散してしまい、アルコール濃度補正学習制御による学習の精度の悪化という問題を引き起こす。
【0098】
そこで、本発明では、アルコール濃度の変化が大きい場合、サブフィードバック制御及びサブフィードバック学習制御による補正及び学習を制限することで、アルコール濃度補正学習制御がより正確に行えるようになる。
【0099】
図17は、サブフィードバック補正値efsfb及びサブフィードバック学習値efsfbgの補正及び学習を制限するための、図8に示すフローチャートと類似する本実施形態によるサブフィードバック制御及びサブフィードバック学習制御の操作を示すフローチャートである。図8に示すフローチャートとは、図8のステップ126に相当するステップ186における処理のみが異なる。
【0100】
具体的には、ステップ186において、サブフィードバック補正値efsfbを算出する際、全体にサブフィードバック補正値補正係数COF(0≦COF≦1)を掛けている。これによって、サブフィードバック制御による補正を制限することが可能となり、それと同時にステップ189において算出されるサブフィードバック学習制御による学習も制限される。
【0101】
図18は、図17に示すステップ186で用いるサブフィードバック補正値補正係数COFを決定するための、アルコール濃度補正学習制御操作の後半部分を示すフローチャートである。アルコール濃度補正学習制御操作の前半部分は図11と同じである。
【0102】
従って、図11のステップ138でアルコール濃度補正学習値偏差ΔFALCを算出した後、次いで、図18のステップ191へと進む。ステップ191では、ステップ138で算出したアルコール濃度補正学習値偏差ΔFALCの絶対値からサブフィードバック補正値補正係数COFを算出する。そのために、アルコール濃度補正学習値偏差ΔFALCの絶対値と、サブフィードバック補正値補正係数COFとの関係をマップ又は計算式を予め実験的に又は計算によって求め、このマップ又は計算式をROM34に保存する。
【0103】
図19に示すのは、このマップの一例である。これによると、アルコール濃度補正学習値偏差ΔFALCの絶対値が予め定められた値FALCdshよりも小さい場合、即ち、アルコール濃度補正学習値FALCの変化量が少ないとき、サブフィードバック補正値補正係数COFは1.0である。即ち、アルコール濃度補正学習値FALCの変化量が小さいときは、サブフィードバック制御及びサブフィードバック学習制御によるアルコール濃度補正学習制御の学習精度への影響が少ないと考えられるため、サブフィードバック制御及びサブフィードバック学習制御による補正及び学習を制限することなく、通常のサブフィードバック制御及びサブフィードバック学習制御が行われる。
【0104】
一方、アルコール濃度補正学習値偏差ΔFALCの絶対値が予め定められた値FALCdshよりも大きい場合、即ち、アルコール濃度補正学習値FALCの変化量が大きいとき、サブフィードバック補正値補正係数COFはアルコール濃度補正学習値偏差ΔFALCの絶対値に応じて減少する。即ち、アルコール濃度補正学習値偏差ΔFALCの変化量が大きいときは、サブフィードバック制御及びサブフィードバック学習制御によるアルコール濃度補正学習制御の学習精度への影響が大きいと考えられるため、サブフィードバック補正値efsfbに1.0以下のサブフィードバック補正値補正係数COFを掛け、サブフィードバック制御及びサブフィードバック学習制御による補正及び学習を制限する。
【0105】
ステップ191において、サブフィードバック補正値補正係数COFを算出した後、次いで、ステップ192に進んで時間カウンタCNTをゼロにリセットしてルーチンを終了する。
【0106】
なお、本実施形態におけるアルコール濃度の変化に応じたサブフィードバック制御及びサブフィードバック学習制御による補正及び学習の制限は、前述の一番目の実施形態における目標出力値VOTの変更による燃料供給量の調整及び二番目の実施形態における比例ゲインKspの変更による燃料供給量の調整と併せて実施してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】本発明の空燃比制御装置が用いられる内燃機関全体の図である。
【図2】排気空燃比と空燃比センサの出力値との関係を示した図である。
【図3】排気空燃比と酸素センサの出力電圧との関係を示した図である。
【図4】アルコール濃度補正学習値と理論空燃比との関係を示した図である。
【図5】目標燃料供給量算出制御操作を示すフローチャートである。
【図6】メインフィードバック制御操作を示すフローチャートである。
【図7】排気空燃比、酸素センサの出力値、サブフィードバック補正値及びサブフィードバック学習値のタイムチャートである。
【図8】サブフィードバック制御操作及びサブフィードバック学習制御操作を示すフローチャートである。
【図9】アルコール濃度補正学習制御操作のタイムチャートである。
【図10】時間と酸素センサの出力電圧との関係を示した図である。
【図11】アルコール濃度補正学習制御操作のフローチャートの一部である。
【図12】図11から続くアルコール濃度補正学習制御操作のフローチャートの一部である。
【図13】アルコール濃度補正学習値偏差と目標出力変更量との関係を示した図である。
【図14】サブフィードバック制御操作及びサブフィードバック学習制御操作の別の実施形態を示すフローチャートである。
【図15】図11から続くアルコール濃度補正学習制御操作のフローチャートの別の実施形態の一部である。
【図16】アルコール濃度補正学習値偏差とゲイン補正係数GKとの関係を示した図である。
【図17】サブフィードバック制御操作及びサブフィードバック学習制御操作の更に別の実施形態を示すフローチャートである。
【図18】図11から続くアルコール濃度補正学習制御操作のフローチャートの更に別の実施形態の一部である。
【図19】アルコール濃度補正学習値偏差とサブフィードバック補正値補正係数COFとの関係を示した図である。
【符号の説明】
【0108】
1 機関本体
3 ピストン
5 燃焼室
6 吸気弁
8 排気弁
10 点火栓
11 燃料噴射弁
31 ECU
23 空燃比センサ
24 酸素センサ
42 負荷センサ
43 クランク角センサ
【技術分野】
【0001】
本発明は内燃機関の空燃比制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガソリンの他にアルコールとガソリンの各種組成の混合燃料でも走行可能な、いわゆるフレキシブルフューエルビークル(FFV)と称される自動車がある。アルコールは、通常のガソリンと比べてC(炭素)原子の含有量が異なるため、フレキシブルフューエルビークルに用いられる内燃機関にアルコールとガソリンの混合燃料を供給するにあたっては、燃料内のアルコール濃度に従って燃料供給量を調整する必要がある。
【0003】
ところで、内燃機関本体から排出された排気ガス中には炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)及び窒素酸化物(NOx)等の成分が含まれており、従来からこれら成分を浄化するために三元触媒が利用されている。三元触媒は排気ガスの空燃比(以下、「排気空燃比」と称す)が略理論空燃比となっているときにその浄化能力が高くなることから、三元触媒によって排気ガスの浄化を行う際には排気空燃比が略理論空燃比となるように燃焼室への燃料供給量等を制御する必要がある。
【0004】
従って、フレキシブルフューエルビークルにおいて、三元触媒の上流排気通路内に排気空燃比を検出することができる空燃比センサを設け、排気空燃比が燃料内のアルコール濃度に応じて定まる理論空燃比になるように、燃焼室への燃料供給量を調整するフィードバック制御を行う空燃比制御装置が公知である(特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2004−308540号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、排気ガスの熱による空燃比センサの劣化や、特に、給油等によって燃料中のアルコール濃度が大きな変化等によって、空燃比センサが実際の排気空燃比を正確に検出することができない場合がある。このような場合には上述したフィードバック制御(以下、「メインフィードバック制御」と称す)による排気空燃比の制御精度が低下してしまう。
【0007】
そこで、三元触媒の下流排気通路内に排気空燃比を検出することができる空燃比センサを設け、下流側空燃比センサの出力に基づいて上流側空燃比センサの出力値が実際の排気空燃比と一致するように上流側空燃比センサの出力値を(結果的には燃料供給量を)補正するフィードバック制御(以下、「サブフィードバック制御」と称す)を行うことにより排気空燃比の制御精度を改善することが考えられる。
【0008】
そして、このような三元触媒の上流及び下流の排気通路内に空燃比センサを配置した構成においては、上流側空燃比センサの出力値と実際の排気空燃比との間の定常的なずれに対応する学習値をサブフィードバック制御における補正量に基づいて算出すると共に、算出された学習値に基づいて上流側空燃比センサの出力値を補正する学習制御(以下、「サブフィードバック学習制御」と称す)を行うことが考えられる。
【0009】
更に、フレキシブルフューエルビークルにおいては、メインフィードバック制御によるフィードバック補正値に基づいて、燃料中のアルコール濃度に応じて燃料供給量を調整するためのアルコール濃度補正学習値を算出するアルコール濃度補正学習制御を行うことが考えられる。
【0010】
しかし、前述のように給油等によってアルコール濃度が大きく変化した場合、排気空燃比を、燃料中のアルコール濃度に応じた理論空燃比とするような補正値及び学習値となるまでの間、燃料供給量の過不足が発生し、それによって、排気エミッションの悪化や、ノッキングの発生等によるドライバビリティの悪化が生じる恐れがある。
【0011】
更に、給油等によってアルコール濃度が大きく変化した場合、アルコール濃度補正学習制御と共に、サブフィードバック制御及びサブフィードバック学習制御も同時に行われと、アルコール濃度補正学習制御によって学習され補正されるべきアルコール濃度のずれが、アルコール濃度補正学習制御による学習値、サブフィードバック制御による補正値及びサブフィードバック学習制御による学習値に分散してしまう。そうすると、アルコール濃度補正学習制御による学習の精度が悪化し、燃料供給量の過不足が発生し、それによって、排気エミッションの悪化や、ノッキングの発生等によるドライバビリティの悪化が生じる恐れがある。
【0012】
そこで本発明は、フレキシブルフューエルビークルにおいて、アルコール濃度補正学習制御中の燃料供給量の過不足量を減らし、それによって排気エミッション及びドライバビリティの悪化を防止することが可能な内燃機関の空燃比制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決するために請求項1に記載の発明によれば、燃料としてアルコールとガソリンとをそれぞれ単独で又は混合して使用可能な内燃機関の空燃比制御装置であって、機関排気通路内に設けられた排気浄化触媒の上流排気通路内及び下流排気通路内にそれぞれ配置され且つ排気ガスの空燃比を検出する上流側空燃比センサ及び下流側空燃比センサと、前記上流側空燃比センサの出力値が目標空燃比に対応する値となるようにフィードバック補正値に基づいて燃料供給量を補正するメインフィードバック制御手段と、前記上流側空燃比センサの出力値に基づく排気空燃比と実際の排気空燃比とのずれを補償すべく前記下流側空燃比センサの出力値に基づいて排気空燃比が目標空燃比となるように燃料供給量を補正するサブフィードバック制御手段と、前記フィードバック補正値に基づいて算出されたアルコール濃度補正学習値を学習すると共にそれに基づいて前記燃料供給量を補正するアルコール濃度補正学習制御手段と、前記サブフィードバック制御手段における補正値に基づいて算出された学習値を学習すると共にそれに基づいて前記燃料供給量を補正するサブフィードバック学習制御手段とを具備する内燃機関の空燃比制御装置において、前記アルコール濃度補正学習値が増加する学習をしているときは、排気空燃比が前記目標空燃比よりもリッチになるように前記サブフィードバック制御手段における補正値を補正し、前記アルコール濃度補正学習値が減少する学習をしているときは、排気空燃比が前記目標空燃比よりもリーンになるように前記サブフィードバック制御手段における補正値を補正する内燃機関の空燃比制御装置が提供される。
【0014】
即ち、請求項1に記載の発明では、アルコール濃度補正学習制御による学習が進んでいる過程において生じる燃料供給量の過不足を、アルコール濃度補正学習値の増減から判断し、燃料供給量をそれに合わせて増減させるためにサブフィードバック制御における補正値を補正する。それによって、排気エミッションの悪化やドライバビリティの悪化を防止することが可能になる。
【0015】
また、請求項2に記載の発明によれば請求項1に記載の発明において、前記アルコール濃度補正学習値の増加量に応じてリッチの度合いを変化させ、前記アルコール濃度補正学習値の減少量に応じてリーンの度合いを変化させる内燃機関の空燃比制御装置が提供される。即ち、請求項2に記載の発明では、アルコール濃度補正学習値の増減に応じてサブフィードバック制御における補正値を増減させることで、供給燃料の過不足に応じた燃料供給量の増減を図ることが可能となる。
【0016】
また、請求項3に記載の発明によれば、燃料としてアルコールとガソリンとをそれぞれ単独で又は混合して使用可能な内燃機関の空燃比制御装置であって、機関排気通路内に設けられた排気浄化触媒の上流排気通路内及び下流排気通路内にそれぞれ配置され且つ排気ガスの空燃比を検出する上流側空燃比センサ及び下流側空燃比センサと、前記上流側空燃比センサの出力値が目標空燃比に対応する値となるようにフィードバック補正値に基づいて燃料供給量を補正するメインフィードバック制御手段と、前記上流側空燃比センサの出力値に基づく排気空燃比と実際の排気空燃比とのずれを補償すべく前記下流側空燃比センサの出力値に基づいて排気空燃比が目標空燃比となるように燃料供給量を補正するサブフィードバック制御手段と、前記フィードバック補正値に基づいて算出されたアルコール濃度補正学習値を学習すると共にそれに基づいて前記燃料供給量を補正するアルコール濃度補正学習制御手段と、前記サブフィードバック制御手段における補正値に基づいて算出された学習値を学習すると共にそれに基づいて前記燃料供給量を補正するサブフィードバック学習制御手段とを具備する内燃機関の空燃比制御装置において、前記アルコール濃度補正学習値を学習しているときは、前記サブフィードバック制御手段における補正を制限する内燃機関の空燃比制御装置が提供される。
【0017】
即ち、請求項3に記載の発明では、アルコール濃度補正学習制御による学習が進んでいる過程において、サブフィードバック制御手段における補正を制限することによってアルコール濃度補正学習制御による学習精度の悪化を防止し、それによって燃料供給量の過不足量を減らし、排気エミッションの悪化やドライバビリティの悪化を防止することが可能になる。
【発明の効果】
【0018】
各請求項に記載の発明によれば、フレキシブルフューエルビークルにおいて、アルコール濃度補正学習制御中の燃料供給量の過不足量を減らし、それによって排気エミッション及びドライバビリティの悪化を防止することが可能になるという共通の効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、燃料としてアルコールとガソリンとをそれぞれ単独で又は混合して使用可能な本発明の内燃機関の空燃比制御装置について説明する。図1は本発明の制御装置が搭載される内燃機関全体の図である。図1に示した実施形態では本発明の空燃比制御装置が筒内直噴型火花点火式内燃機関に用いられた場合を示しているが、他の火花点火式内燃機関や圧縮自着火式内燃機関等にも用いることができる。
【0020】
図1を参照すると1は機関本体、2はシリンダブロック、3はシリンダブロック2内で往復動するピストン、4はシリンダブロック2上に固定されたシリンダヘッド、5はピストン3とシリンダヘッド4との間に形成された燃焼室、6は吸気弁、7は吸気ポート、8は排気弁、9は排気ポートをそれぞれ示す。図1に示したようにシリンダヘッド4の内壁面の中央部には点火プラグ10が配置され、シリンダヘッド4内壁面周辺部には燃料噴射弁11が配置される。またピストン3の頂面上には燃料噴射弁11の下方から点火プラグ10の下方まで延びるキャビティ12が形成されている。
【0021】
各気筒の吸気ポート7はそれぞれ対応する吸気枝管13を介してサージタンク14に連結され、サージタンク14は吸気管15を介してエアクリーナ(図示せず)に連結される。吸気管15内にはエアフロメータ16が配置されると共にステップモータ17によって駆動されるスロットル弁18が配置される。一方、各気筒の排気ポート9は排気マニホルド19に連結され、この排気マニホルド19は三元触媒20を内蔵した触媒コンバータ21に連結される。触媒コンバータ21の出口は排気管22に連結される。排気マニホルド19、即ち排気浄化触媒20上流側の排気通路内には空燃比センサ23が配置されると共に、排気管22、即ち三元触媒20下流側の排気通路内には酸素センサ24が配置される。アルコールを含む燃料は燃料タンク25に貯蔵され、燃料供給管を介して電子制御式の吐出量可変な燃料ポンプ26によって燃料噴射弁11へ供給され、噴射される。本実施形態では、排気浄化触媒として三元触媒20を用いているが、酸素吸蔵能力を有していれば、他のタイプの触媒、例えばNOx吸蔵還元触媒、リーンNOx触媒、DPNR等を用いてもよい。
【0022】
電子制御ユニット31はディジタルコンピュータからなり、双方向性バス32を介して相互に接続されたRAM(ランダムアクセスメモリ)33、ROM(リードオンリメモリ)34、CPU(マイクロプロセッサ)35、バックアップRAM36、入力ポート37及び出力ポート38を具備する。バックアップRAM36は常時電源に接続されており、車両のイグニッションスイッチを切っても記憶した内容を保存することが可能である。従って、後述する学習値等を保存するために使用される。
【0023】
エアフロメータ16は吸入空気流量に比例した出力電圧を発生し、その出力電圧は対応するAD変換器39を介して入力ポート37に入力される。また、空燃比センサ23は、図2に示したように、排気マニホルド19内を通過する排気ガス中の酸素濃度に基づいて、斯かる排気ガスの空燃比に略比例した出力電圧を発生する。一方、酸素センサ24は、図3に示したように、排気管22内を通過する排気ガス、即ち三元触媒20を通過した後の排気ガス中の酸素濃度に基づいて、斯かる排気ガスの空燃比が理論空燃比AFTよりもリッチであるかリーンであるかによって大きく異なる出力電圧を発生する。これら出力電圧は対応するAD変換器39を介して入力ポート37に入力される。
【0024】
また、アクセルペダル41にはアクセルペダル41の踏込み量に比例した出力電圧を発生する負荷センサ42が接続され、負荷センサ42の出力電圧は対応するAD変換器39を介して入力ポート37に入力される。クランク角センサ43は例えばクランクシャフトが30度回転する毎に出力パルスを発生し、この出力パルスが入力ポート37に入力される。CPU35ではこのクランク角センサ43の出力パルスから機関回転数Neが計算される。一方、出力ポート38は対応する駆動回路39を介して点火プラグ10、燃料噴射弁11及びステップモータ17に接続される。
【0025】
上述した三元触媒20は、酸素吸蔵能力を有しており、これにより三元触媒20に流入する排気ガスの空燃比がリーンであるときには排気ガス中の酸素を吸蔵すると共に、三元触媒20に流入する排気ガスの空燃比がリッチであるときには吸蔵している酸素を放出することにより排気ガス中に含まれるHC、COを酸化・浄化する。
【0026】
このような三元触媒20の酸素吸蔵能力を効果的に利用するためには、排気ガスの空燃比がその後リッチ及びリーンのいずれになっても排気ガスを浄化することができるように、三元触媒20中に吸蔵されている酸素の量を所定量(例えば、最大酸素吸蔵量の半分)に維持することが必要である。三元触媒20の酸素吸蔵量が上記所定量に維持されていれば、三元触媒20は常に或る程度の酸素吸蔵作用及び酸素放出作用を発揮することが可能であり、結果として三元触媒20により常に排気ガス中の成分の酸化・還元を行うことができるようになる。このため、本実施形態では、三元触媒20による排気浄化性能を維持すべく、三元触媒の酸素吸蔵量を一定に維持するように空燃比制御を行うこととしている。
【0027】
そこで、本実施形態では、三元触媒20よりも上流排気通路内に配置された空燃比センサ(上流側空燃比センサ)23によって排気空燃比(三元触媒20上流側の排気通路、燃焼室5及び吸気通路に供給された空気と燃料との比率)を検出すると共に、空燃比センサ23の出力値が理論空燃比に対応した値となるように燃料噴射弁11からの燃料供給量についてフィードバック制御(メインフィードバック制御)を行うこととしている。これにより、排気空燃比は理論空燃比付近に維持され、その結果三元触媒の酸素吸蔵量が一定に維持され、よって排気エミッションを改善することができる。
【0028】
以下、メインフィードバック制御について具体的に説明する。まず、本実施形態では、燃料噴射弁11から各気筒へと供給すべき燃料量(以下、「目標燃料供給量」と称す)Qft(n)は下記式(1)によって算出される。
Qft(n)=Mc(n)/AFT+DQf(n−1) …(1)
【0029】
ここで、上記式(1)においてnはECU31における計算回数を示す値であり、例えばQft(n)は第n回目の計算によって算出された目標燃料供給量を表している。また、Mc(n)は、吸気弁6の閉弁時までに各気筒の筒内に吸入されたと予想される空気量(以下、「筒内吸入空気量」と称す)を示している。筒内吸入空気量Mc(n)を算出するために、例えば機関回転数Neと吸気管15内を通過した空気の流量(以下、「吸気管通過空気流量」と称す)mtとを引数としたマップ又は計算式を予め実験的に又は計算によって求め、このマップ又は計算式をROM34に保存する。そして、機関運転中に検出された機関回転数Ne及び吸気管通過空気流量mtに基づいて上記マップ又は計算式により筒内吸入空気量Mc(n)が算出される。
【0030】
また、AFTは、排気空燃比の目標値を示し、本実施形態では燃料中のアルコール濃度に応じて変化する理論空燃比とする。理論空燃比における出力値は、そのアルコール濃度にかかわらず一定の値V0を示す(図2参照)。即ち、例えば或るアルコール濃度における理論空燃比がAFTである場合において、給油等によってアルコール濃度が変化して理論空燃比がAFT’になったとする。その場合においてもアルコール濃度変化後の理論空燃比に相当する出力値はV0のままであり、略比例した出力値の傾向も同様の傾向まま破線のようにシフトする。従って、図4に示されるように、アルコール濃度補正学習値FALCを用いて、それと理論空燃比AFTとのマップ又は計算式から燃料中のアルコール濃度に応じた理論空燃比AFTを求めることができる。
【0031】
アルコール濃度補正学習値FALCは、燃料中のアルコール濃度に応じて基本燃料噴射量Qbを補正するための学習値であり、詳細は後述する。図4を参照すると、例えば、E0(燃料中のアルコール濃度が0%)のとき、アルコール濃度補正学習値FALCが1.0であり、理論空燃比は14.7となる。また、E85(85%のエタノール混合燃料)のとき、アルコール濃度補正学習値FALCが1.4であり、理論空燃比は10.0となる。
【0032】
そして、DQfは、後述するメインフィードバック制御に関して算出される燃料補正量を示す。燃料噴射弁11では、このように上記式(1)によって算出された目標燃料供給量に対応する量の燃料が噴射される。
【0033】
なお、上記説明では、筒内吸入空気量Mc(n)は、機関回転数Neと吸気管通過空気流量mtとを引数としたマップ等に基づいて算出されるとしているが、例えばスロットル弁18の開度及び大気圧等に基づいた計算式等、他の方法によって求められてもよい。
【0034】
図5は、燃料噴射弁11からの目標燃料供給量Qft(n)を算出する目標燃料供給量算出制御操作のフローチャートである。この操作はECU31によって予め定められた所定時間毎の割り込みによって実行されるルーチンとして行われる。
【0035】
まず、ステップ101において、クランク角センサ43及びエアフロメータ16によって機関回転数Ne及び吸気管通過空気流量mtが検出される。次いで、ステップ102では、後述するアルコール濃度補正学習値FALCがバックアップRAM36より読み込まれる。次いで、ステップ103では、ステップ101において検出された機関回転数Ne及び吸気管通過空気流量mtに基づいてマップにより又は計算式により第n回目の計算時における筒内吸入空気量Mc(n)が算出される。次いで、ステップ104では、ステップ102において読み込まれたアルコール濃度補正学習値FALCに基づいて図4に示されるマップにより、燃料中のアルコール濃度に応じた理論空燃比AFTが算出される。
【0036】
次いで、ステップ105では、ステップ103で算出された筒内吸入空気量Mc(n)及び後述するメインフィードバック制御操作において算出された第n−1回目の計算時における燃料補正量DQf(n−1)に基づいて上記式(1)により目標燃料供給量Qft(n)が算出され、ルーチンを終了する。燃料噴射弁11からは、このように算出された目標燃料供給量Qft(n)に相当する量の燃料が噴射される。
【0037】
次に、メインフィードバック制御について説明する。本実施形態では、メインフィードバック制御として、空燃比センサ23の出力に基づいて算出された実際の燃料供給量と、上述した目標燃料供給量Qftとの燃料偏差量ΔQfを計算回数毎に算出し、この燃料偏差量ΔQfがゼロになるように燃料補正量DQfを算出している。具体的には、燃料補正量DQfは下記式(2)により算出される。なお、下記式(2)においてDQf(n−1)は、第n−1回目の計算、即ち前回の計算における燃料補正量であり、Kmpは比例ゲイン、Kmiは積分ゲインをそれぞれ示している。これら比例ゲインKmp、積分ゲインKmiは予め定められた一定の値であってもよいし、機関運転状態に応じて変化する値であってもよい。
【数1】
【0038】
図6は、燃料補正量DQfを算出するメインフィードバック制御操作のフローチャートである。この操作はECU31によって予め定められた所定時間毎の割り込みによって実行されるルーチンとして行われる。
【0039】
まず、ステップ111では、メインフィードバック制御の実行条件が成立しているか否かが判定される。メインフィードバック制御の実行条件が成立している場合とは、例えば内燃機関の冷間始動中ではないこと(即ち、機関冷却水温が一定温度以上であって始動時燃料増量等が行われていないこと)や、機関運転中に燃料噴射弁からの燃料噴射を停止する燃料カット制御中ではないこと等が挙げられる。ステップ111においてメインフィードバック制御の実行条件が成立していると判定された場合には、ステップ112へと進む。一方、ステップ111においてメインフィードバック制御の実行条件が成立していないと判定された場合には、ルーチンを終了し、メインフィードバック制御は実行されない。
【0040】
ステップ112では、第n回目の計算時における空燃比センサ23の出力値VAF(n)が検出される。次いで、ステップ113では、後述するサブフィードバック制御及びサブフィードバック学習制御によって算出された空燃比センサ23の出力補正値であるサブフィードバック補正値efsfb(n)及びサブフィードバック学習値efsfbgをステップ112で検出された出力値VAF(n)に加算することで、空燃比センサ23の出力値が補正されて第n回目の計算時における補正出力値VAF’(n)が算出される(VAF’(n)=VAF(n)+efsfb(n)+efsfbg(n))。
【0041】
次いで、ステップ114では、前述のようにアルコール濃度補正学習値FALCと図4から求められたAFTが読み込まれる。次いで、ステップ115では、ステップ113で算出された補正出力値VAF’(n)及びステップ114で読み込まれたAFTに基づいて図2に示したマップを用いて第n回目の計算時における実空燃比AFR(n)が算出される。このようにして算出された実空燃比AFR(n)は、第n回目の計算時における三元触媒20に流入する排気ガスの実際の空燃比に略一致した値となっている。
【0042】
次いで、ステップ116では、下記式(3)により、空燃比センサ23の出力に基づいて算出された燃料供給量と目標燃料供給量Qftとの燃料偏差量ΔQfが算出される。なお、下記式(3)において、筒内吸入空気量Mc及び目標燃料供給量Qftについては第n回目の計算時における値が用いられているが、第n回目の計算時よりも前の値が用いられてもよい。
ΔQf(n)=Mc(n)/AFR(n)−Qft(n) …(3)
【0043】
ステップ117では、上記式(2)により第n回目の計算時における燃料補正量DQf(n)が算出され、ルーチンを終了する。算出された燃料補正量DQf(n)は、図5に示した操作のステップ105において用いられる。
【0044】
ところで、排気ガスの熱により空燃比センサ23が劣化すること等により空燃比センサ23の出力にはずれが生じる場合がある。このような場合、本来図2に実線で示したような出力値を発生させる空燃比センサ23が、例えば図2に破線で示したような出力値を発生させてしまう。このように空燃比センサ23の出力値にずれが生じると、空燃比センサ23は例えば本来であれば排気空燃比が理論空燃比になっているときに発生させる出力値を、理論空燃比よりもリーンであるときに発生させてしまう。そこで、本実施形態では、酸素センサ(下流側空燃比センサ)24を用いたサブフィードバック制御により空燃比センサ23の出力値に生じたずれを補償して、空燃比センサ23の出力値が実際の排気空燃比に対応した値となるようにすることとしている。
【0045】
即ち、酸素センサ24は、図3に示したように、排気空燃比が理論空燃比よりもリッチであるかリーンであるかを検出することができ、理論空燃比よりもリッチであるかリーンであるかの判定にずれを生じることがほとんどない。このため、実際の排気空燃比がリーンとなっているときには酸素センサ24の出力値は低い値となっており、実際の排気空燃比がリッチとなっているときには酸素センサ24の出力値は高い値となっている。従って、実際の排気空燃比が略理論空燃比となっているとき、即ち理論空燃比付近で上下を繰り返しているときには、酸素センサ24の出力値は高い値と低い値との間で反転を繰り返す。従って、本実施形態では、酸素センサ24の出力値が高い値と低い値との間で反転を繰り返すように空燃比センサ23の出力値を補正することとしている。
【0046】
図7は、実際の排気空燃比と、酸素センサの出力値と、サブフィードバック補正値efsfbと、サブフィードバック学習値efsfbgとのタイムチャートである。図7のタイムチャートは、実際の排気空燃比が理論空燃比になるように制御しているにもかかわらず、空燃比センサ23にずれが生じていて実際の排気空燃比が理論空燃比となっていない場合に、空燃比センサ23に生じているずれが補償されていく様子を示している。
【0047】
図7に示した例では、時刻t0において、実際の排気空燃比は理論空燃比となっておらず、理論空燃比よりもリーンとなっている。これは、空燃比センサ23にずれが生じていて、実際の排気空燃比が理論空燃比よりもリーンである空燃比となっているときに空燃比センサ23により理論空燃比に対応する出力値が出力されているためである。このとき酸素センサ24の出力値は低い値となっている。
【0048】
サブフィードバック補正値efsfbは、上述したように、図6のステップ113において補正出力値VAF’(n)を算出するために出力値VAF(n)に加算される。従って、このサブフィードバック補正値efsfbが正の値となっている場合には空燃比センサ23の出力値VOはリーン側に補正され、負の値となっている場合には空燃比センサ23の出力値VOはリッチ側に補正される。そしてサブフィードバック補正値efsfbの絶対値が大きいほど空燃比センサ23の出力値VOが大きく補正される。
【0049】
空燃比センサ23の出力値が略理論空燃比となっているにもかかわらず酸素センサ24の出力値が低い値となっているときには空燃比センサ23の出力値がリッチ側にずれていることを意味する。そこで、本実施形態では、酸素センサ24の出力値が低い値となっているときには、図7に示したように、サブフィードバック補正値efsfbの値を増加させて、空燃比センサ23の出力値をリーン側へ補正することとしている。一方、空燃比センサ23の出力値が略理論空燃比となっているにもかかわらず酸素センサ24の出力値が高い値となっているときには、サブフィードバック補正値efsfbの値を減少させて、空燃比センサ23の出力値をリッチ側へ補正することとしている。
【0050】
具体的にはサブフィードバック補正値efsfbの値は下記式(4)により計算される。なお、下記式(4)において、Kspは比例ゲイン、Ksiは積分ゲインをそれぞれ示している。また、ΔVO(n)は、目標出力値(本実施形態では、理論空燃比に対応する値)と第n回目の計算時における酸素センサ24の出力値との出力偏差を示している。
【数2】
【0051】
図7に示した例では、サブフィードバック補正値efsfbの値が増加するにつれて、空燃比センサ23の出力値に生じているずれが補正され、実際の排気空燃比が徐々に理論空燃比に近づいていく。
【0052】
こうしてサブフィードバック制御により空燃比センサ23の出力値は適宜補正されるが、例えば内燃機関を停止させた場合等にはサブフィードバック制御が中断され、その結果、サブフィードバック補正値efsfbの値はゼロにリセットされる。その後、再び内燃機関を始動させた場合等には、サブフィードバック制御が再開されるが、通常のRAM33に保存されていたサブフィードバック補正値efsfbはゼロにリセットされているため、空燃比センサ23の出力値を再び適切な値にまで補正するには時間がかかる。
【0053】
そこで、本実施形態では、空燃比センサ23の出力値と実際の排気空燃比に対応する値との間に生じている定常的なずれに対応するサブフィードバック学習値efsfbgを上記サブフィードバック補正値efsfbに基づいて算出すると共に、図6のステップ113に示したように、算出されたサブフィードバック学習値efsfbgに基づいて空燃比センサ23の出力値VAFを補正することとしている(以下、このような制御を「サブフィードバック学習制御」と称す)。このようにして算出されたサブフィードバック学習値efsfbgは、バックアップRAM36に保存されるので内燃機関の停止等の後でも消去されることがない。従って、このサブフィードバック学習値efsfbgを用いれば比較的早期に空燃比センサ23の出力値を再び適切な値にまで補正することができるようになる。
【0054】
具体的には、前回の学習時期(即ち、サブフィードバック学習値efsfbgの算出時期)から所定時間ΔTが経過したときのサブフィードバック補正値efsfbが正の値である場合にはサブフィードバック学習値efsfbgを増加させると共に、サブフィードバック補正値efsfbが負の値である場合にはサブフィードバック学習値efsfbgを減少させるようにしている。また、サブフィードバック学習値efsfbgの増加量又は減少量は、サブフィードバック補正値efsfbの絶対値が大きくなるほど多くなるようにしている。
【0055】
特に本実施形態では、前回の学習時期から所定時間ΔTが経過したときのサブフィードバック補正値efsfb及びサブフィードバック学習値efsfbgはそれぞれ下記式(5)及び(6)により更新される。なお、下記式(5)及び(6)において、αは取り込み割合を示すなまし率(0<α≦1)である。従って、図6に示した例では、時刻t1においてサブフィードバック補正値efsfbが正の値となっているため、下記式(5)及び(6)によりサブフィードバック補正値efsfbが減少と共にサブフィードバック学習値efsfbgが増加する。同様に時刻t2においてもサブフィードバック補正値efsfbが正の値となっているため、下記式(5)及び(6)によりサブフィードバック補正値efsfbが減少すると共にサブフィードバック学習値efsfbgが増加する。
efsfb=efsfb−efsfb・α …(5)
efsfbg=efsfbg+efsfb・α …(6)
【0056】
こうして算出されたサブフィードバック学習値efsfbgは、上述したように、図6のステップ113において補正出力値VAF’(n)を算出するために出力値VAF(n)に加算される。そしてサブフィードバック学習値efsfbgは、バックアップRAM36に保存されるので内燃機関の停止等の後でも消去されることがない。このため、内燃機関の停止後、運転を再開したときに、サブフィードバック補正値efsfbがゼロにリセットされていても、サブフィードバック学習値efsfbgを用いて空燃比センサ23の出力値を迅速に適切な値に補正することができる。
【0057】
なお、上記例では、サブフィードバック学習値efsfbgの増加量又は減少量は、サブフィードバック補正値efsfbの絶対値が大きくなるほど多くなるようにしているが、サブフィードバック補正値efsfbに応じて変化させずに一定量としてもよい。この場合、例えば、サブフィードバック補正値efsfbの絶対値が所定値以上である場合にのみサブフィードバック補正値efsfbのサブフィードバック学習値efsfbgへの取り込みが行われる。
【0058】
図8は、サブフィードバック補正値efsfbを算出するサブフィードバック制御及びサブフィードバック学習値efsfbgを算出するサブフィードバック学習制御の操作を示すフローチャートである。この操作はECU31によって予め定められた所定時間毎の割り込みによって実行されるルーチンとして行われる。
【0059】
まず、ステップ121では、サブフィードバック制御の実行条件が成立しているか否かが判定される。サブフィードバック制御の実行条件が成立している場合とは、例えばメインフィードバック制御の実行条件と同様に、内燃機関の冷間始動中ではないことや、機関運転中に燃料噴射弁からの燃料噴射を停止する燃料カット制御中ではないこと等が挙げられる。ステップ121においてサブフィードバック制御の実行条件が成立していると判定された場合には、ステップ122へと進み、サブフィードバック制御が実行される。一方、ステップ121において、サブフィードバック制御の実行条件が成立していないと判定された場合には、ルーチンを終了し、サブフィードバック制御及びサブフィードバック学習制御は実行されない。
【0060】
ステップ122では、第n回目の計算時における酸素センサ24の出力値VO(n)が検出される。次いで、ステップ123では、目標出力値VOTとステップ122で検出された酸素センサ24の出力値VO(n)との出力偏差ΔVO(n)が算出される(ΔVO(n)=VOT−VO(n))。ステップ124では、下記式(7)により第n回目の計算時における比例項Msp(n)の値が算出される。
Msp(n)=Ksp・ΔVO(n) …(7)
【0061】
次いで、ステップ125では、下記式(8)により第n回目の計算時における積分項Msi(n)の値が算出され、ステップ126へと進む。ステップ126ではステップ145で算出された比例項Msp(n)の値と、ステップ125で算出された積分項Mip(n)の値とに基づいて下記式(9)により出力補正量efsfb(n)が算出される。
Msi(n)=Msi(n−1)+Ksi・VO(n) …(8)
efsfb(n)=Msp(n)+Msi(n) …(9)
【0062】
次いで、ステップ127では、サブフィードバック学習制御の実行条件が成立しているか否かが判定される。サブフィードバック学習制御の実行条件が成立している場合とは、例えば燃料カット制御が解除されてから所定時間以上経過している場合、サブフィードバック制御が前回サブフィードバック学習制御実行時から所定回数行われている場合等が上げられる。ステップ127においてサブフィードバック学習制御の実行条件が成立していると判定された場合には、ステップ128へと進み、上記式(5)及び(6)により、サブフィードバック学習制御が実行される。逆にサブフィードバック学習制御の実行条件が成立してないと判定された場合には、ルーチンを終了し、サブフィードバック学習制御は実行されない。
【0063】
なお、上記実施形態では、サブフィードバック制御としてPI制御が行われた場合を示しているが、PID制御等、他の制御が行われてもよい。
【0064】
次に、アルコール濃度補正学習制御について図9(A)から図9(C)を参照しながら説明する。まず、図9(A)に示される実線は、メインフィードバック制御によるフィードバック補正値FAFを示し、破線は、フィードバック補正値FAFに対して、例えばローパスフィルタ等によるなまし処理(平滑化処理)を施したフィードバック補正なまし値FAFSMを示す。図9(B)に示される実線はアルコール濃度補正学習値FALCを示す。
【0065】
ここで、フィードバック補正値FAFとは、以下の式(10)に基づいて算出される燃料噴射量Qftを算出する際に、基本燃料噴射量Qbをフィードバック補正するための係数である。また、FALCはアルコール濃度補正学習値であり、燃料中のアルコール濃度に応じて基本燃料噴射量Qbを補正するための学習値である。アルコール濃度補正学習値FALCはバックアップRAM36に保存される。
Qft=Qb・(1+FALC)+Qb・FAF …(10)
【0066】
上記式(10)と、上記式(1)と同様の以下の式(11)とは、燃料噴射量Qftを算出する同じ式を表し、第一項及び第二項はそれぞれの式で対応している。
Qft=Mc/AFT+DQf …(11)
【0067】
従って、フィードバック補正値FAFと燃料補正量DQfとの関係は、上記式(10)及び式(11)それぞれの第二項より、式(12)のように表される。以下、フィードバック補正値FAFを用いて本発明による実施形態を説明する。
FAF=DQf/Qb …(12)
【0068】
図9(A)及び図9(B)に示されるように、アルコール濃度補正学習制御は、一定間隔毎に実行され、実行時点におけるフィードバック補正なまし値FAFSMの値分だけ、フィードバック補正値FAFを減少させると共にアルコール濃度補正学習値FALCを増加させ、フィードバック補正なまし値FAFSMをゼロにリセットしている。
【0069】
アルコール濃度補正学習制御を繰り返すことによって、アルコール濃度補正学習値FALCが、排気空燃比を理論空燃比とするために、燃料中のアルコール濃度に適した補正値へと徐々に近づく。しかし、給油等によって燃料中のアルコール濃度の変化が非常に大きい場合、そのアルコール濃度に応じた最適な補正値及び学習値に収束するまでの間、燃料供給量に過不足が発生し、それによって、前述のように排気エミッションの悪化やドライバビリティの悪化が生じる問題がある。そこで、本発明では、通常のメインフィードバック制御による燃料供給量の補正に加え、以下に説明するようにアルコール濃度の変化に応じてサブフィードバック補正値efsfbを補正することで、最適な燃料供給量に対する過不足量を減少させ、上記問題を解決している。
【0070】
これに関し、例えば、給油等によって燃料中のアルコール濃度が増大した場合を用いて説明する。アルコール濃度が増大したということは、現在よりも多くの燃料を供給しなければ排気空燃比は理論空燃比とならない。そのために、サブフィードバック補正値efsfbについては増加させる必要があり、サブフィードバック補正値efsfbを増加させる方法として、まず、目標電圧を変更する方法について説明する。
【0071】
ここで、図10(A)から図10(C)は時間と酸素センサ24の出力値VOとの関係を示している。図10(A)は、従来のサブフィードバック制御による酸素センサ24の出力値VOを示しており、リッチ空燃比時の出力値(例えば、0.8V)及びリーン空燃比時の出力値(例えば、0.2V)の略中間の理論空燃比おける出力値Vm(例えば、0.5V)(図3参照)を目標出力値VOTとしている。
【0072】
これに対し、図10(B)は、目標出力値VOTを理論空燃比出力値VMよりも高い値(例えば、0.7V)、即ちリッチ側に設定している。実線で図示される酸素センサ24の出力値VOの時間の経過に伴う出力傾向は変わらないので、一定時間におけるサブフィードバック補正値efsfbの平均値が増加し、結果として燃料供給量は増加する。即ち、目標出力値VOTを理論空燃比出力値VMよりも高い値に設定することによって、上述の図8のステップ123において説明したように、リッチ空燃比時のマイナスの出力偏差ΔVOよりリーン空燃比時のプラスの出力偏差ΔVOの方が多くなり、平均するとプラスの出力偏差ΔVOとなって燃料供給量を増加させることができる。
【0073】
上記は、アルコール濃度が増大した場合について説明したが、当然のことながらアルコール濃度が減少した場合は、酸素センサ24の目標出力値VOTを理論空燃比出力値VMよりも低い値に設定することで、燃料供給量を減少させることができる。
【0074】
図11及び図12は、アルコール濃度補正学習値を求め、アルコール濃度補正学習値の変化に応じて酸素センサ24の目標出力値を変更するアルコール濃度補正学習制御操作を示すフローチャートである。この操作はECU31によって予め定められた所定時間毎の割り込みによって実行されるルーチンとして行われる。
【0075】
図11を参照すると、まず、ステップ131では、フィードバック補正値FAFが読み込まれる。次いで、ステップ132では、ステップ131で読み込んだFAFに対してなまし処理を施し、フィードバック補正なまし値FAFSMを算出する。次いで、ステップ133では、時間カウンタCNTがインクリメントされる。次いで、ステップ134では、ステップ133でインクリメントされた時間カウンタCNTが、アルコール濃度補正学習制御実行間隔CNTsadg以上であるか否かが判定される。ここで、時間カウンタCNTが、アルコール濃度補正学習制御実行時間CNTsadg以上であるならば、アルコール濃度補正学習制御を行うべく、ステップ135へと進む。一方、ステップ134において、時間カウンタCNTがアルコール濃度補正学習制御実行時間CNTsadgよりも小さい場合、アルコール濃度補正学習制御及び目標出力値の変更を行うことなくルーチンを終了する。
【0076】
次いで、ステップ135では、後述するアルコール濃度補正学習値FALCの前回の値と今回学習後の差分を求めるために、前回のアルコール濃度補正学習値FALCを前回アルコール濃度補正学習値FALCpにセットし、ステップ136へと進む。
【0077】
次に、ステップ136及び137で行われるアルコール濃度補正学習制御について説明する。ステップ136において、アルコール濃度補正学習値FALCは、その前回値に対してフィードバック補正なまし値FAFSMを加算することで算出される。それと同時に、フィードバック補正値FAFは、その前回値に対してアルコール濃度補正学習値FALCに加算した分のフィードバック補正なまし値FAFSMを減算することで算出される。その後、ステップ137へと進む。ステップ137では、フィードバック補正なまし値FAFSMをゼロにリセットし、ステップ138へと進む。
【0078】
次いで、ステップ138では、ステップ136で求めた学習後のアルコール濃度補正学習値FALCから、ステップ135でセットした前回アルコール濃度補正学習値FALCpを減算し、アルコール濃度補正学習値偏差ΔFALCを算出し、次いでステップ141へと進む。
【0079】
次いで、図12のステップ141において、ステップ138で算出したアルコール濃度補正学習値偏差ΔFALCの絶対値から目標出力変更量VOCを算出する。そのために、アルコール濃度補正学習値偏差ΔFALCの絶対値と、目標出力変更量VOCとの関係をマップ又は計算式を予め実験的に又は計算によって求め、このマップ又は計算式をROM34に保存する。
【0080】
図13に示すのは、このマップの一例である。これによると、アルコール濃度補正学習値偏差ΔFALCの絶対値が予め定められた値FALCdshよりも小さい場合、即ち、アルコール濃度補正学習値FALCの変化量が少ないとき、目標出力変更量VOCはゼロである。即ち、アルコール濃度補正学習値FALCの変化量が小さいときは、排気エミッションの悪化やドライバビリティの悪化といった問題が生じにくいと考えられるため、酸素センサ24の目標出力値を変更することなく、通常のサブフィードバック制御が行われる。
【0081】
一方、アルコール濃度補正学習値偏差ΔFALCの絶対値が予め定められた値FALCdshよりも大きい場合、即ち、アルコール濃度補正学習値FALCの変化量が大きいとき、目標出力変更量VOCはアルコール濃度補正学習値偏差ΔFALCの絶対値に応じて増大する。即ち、アルコール濃度補正学習値偏差ΔFALCの変化量が大きいときは、補正又は学習の過程において、排気エミッションの悪化やドライバビリティの悪化といった問題が生じやすいと考えられるため、酸素センサ24の目標出力値を変更し、燃料供給量を調整する。
【0082】
ステップ141において、目標出力変更量VOCを設定した後、ステップ142へと進む。次いで、ステップ142では、アルコール濃度補正学習値偏差ΔFALCが0以上か否かが判定される。アルコール濃度補正学習値偏差ΔFALCが0以上である場合には、ステップ143へと進む。ここで、アルコール濃度補正学習値偏差ΔFALCが0以上である場合とは、アルコール濃度が高くなる方向にアルコール濃度補正学習がなされている、即ち、給油等によって燃料中のアルコール濃度が高くなったことを意味する。従って、これは先ほど図10(B)を参照しながら説明した例と同様の場合であって、目標出力値VOTを理論空燃比出力値VMよりも高い値に変更する必要がある。従って、ステップ143では、目標出力値VOTにステップ141で算出された目標出力変更量VOCが加算され、次いで、ステップ145に進んで時間カウンタCNTをゼロにリセットしてルーチンを終了する。
【0083】
一方、ステップ142でアルコール濃度補正学習値偏差ΔFALCが0未満である場合には、ステップ144へと進む。ここで、アルコール濃度補正学習値偏差ΔFALCが0未満である場合とは、アルコール濃度が低くなる方向にアルコール濃度補正学習がなされている、即ち、給油等によって燃料中のアルコール濃度が低くなったことを意味する。従って、図10(B)を参照しながら説明した例とは反対に、目標出力値VOTを理論空燃比出力値VMよりも低い値に変更する必要がある。従って、ステップ144では、目標出力値VOTからステップ141で算出された目標出力変更値VOCが減算され、次いで、ステップ145に進んで時間カウンタCNTをゼロにリセットしてルーチンを終了する。
【0084】
上述の一番目の実施形態は、アルコール濃度の変化に応じてサブフィードバック補正値efsfbを補正する方法として、目標出力値VOTを変更することによって、サブフィードバック補正値efsfbを補正する方法を用いている。次に、二番目の実施形態として、サブフィードバック補正値efsfbの算出に関する上記式(4)及び(7)で使用される比例ゲインKspを変更する方法について説明する。
【0085】
図10(C)は、図10(B)と同様に、給油等によって燃料中のアルコール濃度が増大した場合において、比例ゲインKspを変更することによる酸素センサ24の出力値VOの変化を示している。
【0086】
具体的には、図10(C)において、酸素センサ24の出力値VOが理論空燃比出力値VMよりもリッチ側にある場合とリーン側にある場合とで、比例ゲインKspにそれぞれ異なる値を設定している。即ち、酸素センサ24の出力値VOが理論空燃比出力値VMよりもリッチ側にある場合における、比例ゲインをリッチ時比例ゲインKsprとし、酸素センサ24の出力値VOが理論空燃比出力値VMよりもリーン側にある場合における、比例ゲインをリーン時比例ゲインKsplとすると、図10(C)においては、リッチ時比例ゲインKsprよりもリーン時比例ゲインKsplの方が大きく設定されている。
【0087】
酸素センサ24の出力値VOがリッチ時とリーン時において、目標出力値VOT、即ち理論空燃比出力値VMとの出力偏差ΔVOは略等しいため、結果として、比例ゲインの大きいリーン時の方がリッチ時よりもサブフィードバック補正値efsfbが大きくなる。従って、最終的に、燃料供給量を増加させることができる。
【0088】
上記は、アルコール濃度が増大した場合について説明したが、当然のことながらアルコール濃度が減少した場合は、リッチ時比例ゲインKsprとリーン時比例ゲインKsplの大小関係を逆転させることで、燃料供給量を減少させることができる。
【0089】
図14は、比例ゲインKspを排気空燃比によって切り替えるための、図8に示すフローチャートと類似する本実施形態によるサブフィードバック制御及びサブフィードバック学習制御の操作を示すフローチャートである。図8に示すフローチャートとは、図8のステップ123に相当するステップ153の後にステップ154からステップ156が加わった点において異なる。
【0090】
図8に示すフローチャートと異なる点についてのみ説明すると、ステップ153で酸素センサ24の出力偏差ΔVO(n)を算出した後、ステップ154へと進む。ステップ154では、ΔVO(n)が0以上か否か、即ち、排気空燃比がリーンか否かが判定される。ステップ154において、ΔVO(n)が0以上、即ち、排気空燃比がリーンであると判定された場合、ステップ155へと進み、比例ゲインKspにリーン時比例ゲインKsplをセットしてステップ157へと進む。一方、ステップ154において、ΔVO(n)が0未満、即ち、排気空燃比がリッチであると判定された場合、ステップ156へと進み、比例ゲインKspにリッチ時比例ゲインKsprをセットしてステップ157へと進む。ステップ157以降の処理は、図8のステップ124以降の処理と同じである。
【0091】
図15は、図14に示すステップ155又は156で比例ゲインKspにセットするリーン時比例ゲインKspl及びリッチ時比例ゲインKsprを決定するための、アルコール濃度補正学習制御操作の後半部分を示すフローチャートである。アルコール濃度補正学習制御操作の前半部分は図11と同じである。
【0092】
従って、図11のステップ138でアルコール濃度補正学習値偏差ΔFALCを算出した後、次いで、図15のステップ171へと進む。ステップ171では、ステップ138で算出したアルコール濃度補正学習値偏差ΔFALCの絶対値からゲイン補正係数GKを算出する。そのために、アルコール濃度補正学習値偏差ΔFALCの絶対値と、ゲイン補正係数GKとの関係をマップ又は計算式を予め実験的に又は計算によって求め、このマップ又は計算式をROM34に保存する。
【0093】
図16に示すのは、このマップの一例である。これによると、アルコール濃度補正学習値偏差ΔFALCの絶対値が予め定められた値FALCdshよりも小さい場合、即ち、アルコール濃度補正学習値FALCの変化量が少ないとき、ゲイン補正係数GKは1.0である。即ち、アルコール濃度補正学習値FALCの変化量が小さいときは、排気エミッションの悪化やドライバビリティの悪化といった問題が生じにくいと考えられるため、比例ゲインKspを変更することなく、通常のサブフィードバック制御が行われる。
【0094】
一方、アルコール濃度補正学習値偏差ΔFALCの絶対値が予め定められた値FALCdshよりも大きい場合、即ち、アルコール濃度補正学習値FALCの変化量が大きいとき、ゲイン補正係数GKはアルコール濃度補正学習値偏差ΔFALCの絶対値に応じて減少する。即ち、アルコール濃度補正学習値偏差ΔFALCの変化量が大きいときは、補正又は学習の過程において、排気エミッションの悪化やドライバビリティの悪化といった問題が生じやすいと考えられるため、比例ゲインKspに1.0以下のゲイン補正係数GKを掛け、燃料供給量を調整する。
【0095】
ステップ171において、ゲイン補正係数GKを設定した後、ステップ172へと進む。次いで、ステップ172では、アルコール濃度補正学習値偏差ΔFALCが0以上か否かが判定される。アルコール濃度補正学習値偏差ΔFALCが0以上である場合には、ステップ173へと進む。ここで、アルコール濃度補正学習値偏差ΔFALCが0以上である場合とは、アルコール濃度が高くなる方向にアルコール濃度補正学習がなされている、即ち、給油等によって燃料中のアルコール濃度が高くなったことを意味する。従って、これは先ほど図10(C)を参照しながら説明した例と同様の場合であって、リッチ時比例ゲインKsprよりもリーン時比例ゲインKsplの方を大きく設定する必要がある。従って、ステップ173では、リッチ時比例ゲインKsprには通常の比例ゲインKspにゲイン補正係数GKを掛けた値を、リーン時比例ゲインKsplには通常の比例ゲインをセットし、次いで、ステップ175に進んで時間カウンタCNTをゼロにリセットしてルーチンを終了する。
【0096】
一方、ステップ172でアルコール濃度補正学習値偏差ΔFALCが0未満である場合には、ステップ174へと進む。ここで、アルコール濃度補正学習値偏差ΔFALCが0未満である場合とは、アルコール濃度が低くなる方向にアルコール濃度補正学習がなされている、即ち、給油等によって燃料中のアルコール濃度が低くなったことを意味する。従って、図10(C)を参照しながら説明した例とは反対に、リーン時比例ゲインKsplよりもリッチ時比例ゲインKsprの方を大きく設定する必要がある必要がある。従って、ステップ174では、リッチ時比例ゲインKsprには通常の比例ゲインKspを、リーン時比例ゲインKsplには通常の比例ゲインにゲイン補正係数GKを掛けた値をセットし、次いで、ステップ175に進んで時間カウンタCNTをゼロにリセットしてルーチンを終了する。
【0097】
ところで、給油等によってアルコール濃度が大きく変化した場合、アルコール濃度補正学習制御と共に、サブフィードバック制御及びサブフィードバック学習制御も同時に行われる。これは即ち、アルコール濃度補正学習制御によって学習され補正されるべきアルコール濃度のずれが、アルコール濃度補正学習値FALC、サブフィードバック補正値efsfb及びサブフィードバック学習値efsfbgに分散してしまい、アルコール濃度補正学習制御による学習の精度の悪化という問題を引き起こす。
【0098】
そこで、本発明では、アルコール濃度の変化が大きい場合、サブフィードバック制御及びサブフィードバック学習制御による補正及び学習を制限することで、アルコール濃度補正学習制御がより正確に行えるようになる。
【0099】
図17は、サブフィードバック補正値efsfb及びサブフィードバック学習値efsfbgの補正及び学習を制限するための、図8に示すフローチャートと類似する本実施形態によるサブフィードバック制御及びサブフィードバック学習制御の操作を示すフローチャートである。図8に示すフローチャートとは、図8のステップ126に相当するステップ186における処理のみが異なる。
【0100】
具体的には、ステップ186において、サブフィードバック補正値efsfbを算出する際、全体にサブフィードバック補正値補正係数COF(0≦COF≦1)を掛けている。これによって、サブフィードバック制御による補正を制限することが可能となり、それと同時にステップ189において算出されるサブフィードバック学習制御による学習も制限される。
【0101】
図18は、図17に示すステップ186で用いるサブフィードバック補正値補正係数COFを決定するための、アルコール濃度補正学習制御操作の後半部分を示すフローチャートである。アルコール濃度補正学習制御操作の前半部分は図11と同じである。
【0102】
従って、図11のステップ138でアルコール濃度補正学習値偏差ΔFALCを算出した後、次いで、図18のステップ191へと進む。ステップ191では、ステップ138で算出したアルコール濃度補正学習値偏差ΔFALCの絶対値からサブフィードバック補正値補正係数COFを算出する。そのために、アルコール濃度補正学習値偏差ΔFALCの絶対値と、サブフィードバック補正値補正係数COFとの関係をマップ又は計算式を予め実験的に又は計算によって求め、このマップ又は計算式をROM34に保存する。
【0103】
図19に示すのは、このマップの一例である。これによると、アルコール濃度補正学習値偏差ΔFALCの絶対値が予め定められた値FALCdshよりも小さい場合、即ち、アルコール濃度補正学習値FALCの変化量が少ないとき、サブフィードバック補正値補正係数COFは1.0である。即ち、アルコール濃度補正学習値FALCの変化量が小さいときは、サブフィードバック制御及びサブフィードバック学習制御によるアルコール濃度補正学習制御の学習精度への影響が少ないと考えられるため、サブフィードバック制御及びサブフィードバック学習制御による補正及び学習を制限することなく、通常のサブフィードバック制御及びサブフィードバック学習制御が行われる。
【0104】
一方、アルコール濃度補正学習値偏差ΔFALCの絶対値が予め定められた値FALCdshよりも大きい場合、即ち、アルコール濃度補正学習値FALCの変化量が大きいとき、サブフィードバック補正値補正係数COFはアルコール濃度補正学習値偏差ΔFALCの絶対値に応じて減少する。即ち、アルコール濃度補正学習値偏差ΔFALCの変化量が大きいときは、サブフィードバック制御及びサブフィードバック学習制御によるアルコール濃度補正学習制御の学習精度への影響が大きいと考えられるため、サブフィードバック補正値efsfbに1.0以下のサブフィードバック補正値補正係数COFを掛け、サブフィードバック制御及びサブフィードバック学習制御による補正及び学習を制限する。
【0105】
ステップ191において、サブフィードバック補正値補正係数COFを算出した後、次いで、ステップ192に進んで時間カウンタCNTをゼロにリセットしてルーチンを終了する。
【0106】
なお、本実施形態におけるアルコール濃度の変化に応じたサブフィードバック制御及びサブフィードバック学習制御による補正及び学習の制限は、前述の一番目の実施形態における目標出力値VOTの変更による燃料供給量の調整及び二番目の実施形態における比例ゲインKspの変更による燃料供給量の調整と併せて実施してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】本発明の空燃比制御装置が用いられる内燃機関全体の図である。
【図2】排気空燃比と空燃比センサの出力値との関係を示した図である。
【図3】排気空燃比と酸素センサの出力電圧との関係を示した図である。
【図4】アルコール濃度補正学習値と理論空燃比との関係を示した図である。
【図5】目標燃料供給量算出制御操作を示すフローチャートである。
【図6】メインフィードバック制御操作を示すフローチャートである。
【図7】排気空燃比、酸素センサの出力値、サブフィードバック補正値及びサブフィードバック学習値のタイムチャートである。
【図8】サブフィードバック制御操作及びサブフィードバック学習制御操作を示すフローチャートである。
【図9】アルコール濃度補正学習制御操作のタイムチャートである。
【図10】時間と酸素センサの出力電圧との関係を示した図である。
【図11】アルコール濃度補正学習制御操作のフローチャートの一部である。
【図12】図11から続くアルコール濃度補正学習制御操作のフローチャートの一部である。
【図13】アルコール濃度補正学習値偏差と目標出力変更量との関係を示した図である。
【図14】サブフィードバック制御操作及びサブフィードバック学習制御操作の別の実施形態を示すフローチャートである。
【図15】図11から続くアルコール濃度補正学習制御操作のフローチャートの別の実施形態の一部である。
【図16】アルコール濃度補正学習値偏差とゲイン補正係数GKとの関係を示した図である。
【図17】サブフィードバック制御操作及びサブフィードバック学習制御操作の更に別の実施形態を示すフローチャートである。
【図18】図11から続くアルコール濃度補正学習制御操作のフローチャートの更に別の実施形態の一部である。
【図19】アルコール濃度補正学習値偏差とサブフィードバック補正値補正係数COFとの関係を示した図である。
【符号の説明】
【0108】
1 機関本体
3 ピストン
5 燃焼室
6 吸気弁
8 排気弁
10 点火栓
11 燃料噴射弁
31 ECU
23 空燃比センサ
24 酸素センサ
42 負荷センサ
43 クランク角センサ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料としてアルコールとガソリンとをそれぞれ単独で又は混合して使用可能な内燃機関の空燃比制御装置であって、機関排気通路内に設けられた排気浄化触媒の上流排気通路内及び下流排気通路内にそれぞれ配置され且つ排気ガスの空燃比を検出する上流側空燃比センサ及び下流側空燃比センサと、前記上流側空燃比センサの出力値が目標空燃比に対応する値となるようにフィードバック補正値に基づいて燃料供給量を補正するメインフィードバック制御手段と、前記上流側空燃比センサの出力値に基づく排気空燃比と実際の排気空燃比とのずれを補償すべく前記下流側空燃比センサの出力値に基づいて排気空燃比が目標空燃比となるように燃料供給量を補正するサブフィードバック制御手段と、前記フィードバック補正値に基づいて算出されたアルコール濃度補正学習値を学習すると共にそれに基づいて前記燃料供給量を補正するアルコール濃度補正学習制御手段と、前記サブフィードバック制御手段における補正値に基づいて算出された学習値を学習すると共にそれに基づいて前記燃料供給量を補正するサブフィードバック学習制御手段とを具備する内燃機関の空燃比制御装置において、前記アルコール濃度補正学習値が増加する学習をしているときは、排気空燃比が前記目標空燃比よりもリッチになるように前記サブフィードバック制御手段における補正値を補正し、前記アルコール濃度補正学習値が減少する学習をしているときは、排気空燃比が前記目標空燃比よりもリーンになるように前記サブフィードバック制御手段における補正値を補正する内燃機関の空燃比制御装置。
【請求項2】
前記アルコール濃度補正学習値の増加量に応じて前記サブフィードバック制御手段における補正値の増加量を変化させ、前記アルコール濃度補正学習値の減少量に応じて前記サブフィードバック制御手段における補正値の減少量を変化させる請求項1に記載の内燃機関の空燃比制御装置。
【請求項3】
燃料としてアルコールとガソリンとをそれぞれ単独で又は混合して使用可能な内燃機関の空燃比制御装置であって、機関排気通路内に設けられた排気浄化触媒の上流排気通路内及び下流排気通路内にそれぞれ配置され且つ排気ガスの空燃比を検出する上流側空燃比センサ及び下流側空燃比センサと、前記上流側空燃比センサの出力値が目標空燃比に対応する値となるようにフィードバック補正値に基づいて燃料供給量を補正するメインフィードバック制御手段と、前記上流側空燃比センサの出力値に基づく排気空燃比と実際の排気空燃比とのずれを補償すべく前記下流側空燃比センサの出力値に基づいて排気空燃比が目標空燃比となるように燃料供給量を補正するサブフィードバック制御手段と、前記フィードバック補正値に基づいて算出されたアルコール濃度補正学習値を学習すると共にそれに基づいて前記燃料供給量を補正するアルコール濃度補正学習制御手段と、前記サブフィードバック制御手段における補正値に基づいて算出された学習値を学習すると共にそれに基づいて前記燃料供給量を補正するサブフィードバック学習制御手段とを具備する内燃機関の空燃比制御装置において、前記アルコール濃度補正学習値を学習しているときは、前記サブフィードバック制御手段における補正を制限する内燃機関の空燃比制御装置。
【請求項1】
燃料としてアルコールとガソリンとをそれぞれ単独で又は混合して使用可能な内燃機関の空燃比制御装置であって、機関排気通路内に設けられた排気浄化触媒の上流排気通路内及び下流排気通路内にそれぞれ配置され且つ排気ガスの空燃比を検出する上流側空燃比センサ及び下流側空燃比センサと、前記上流側空燃比センサの出力値が目標空燃比に対応する値となるようにフィードバック補正値に基づいて燃料供給量を補正するメインフィードバック制御手段と、前記上流側空燃比センサの出力値に基づく排気空燃比と実際の排気空燃比とのずれを補償すべく前記下流側空燃比センサの出力値に基づいて排気空燃比が目標空燃比となるように燃料供給量を補正するサブフィードバック制御手段と、前記フィードバック補正値に基づいて算出されたアルコール濃度補正学習値を学習すると共にそれに基づいて前記燃料供給量を補正するアルコール濃度補正学習制御手段と、前記サブフィードバック制御手段における補正値に基づいて算出された学習値を学習すると共にそれに基づいて前記燃料供給量を補正するサブフィードバック学習制御手段とを具備する内燃機関の空燃比制御装置において、前記アルコール濃度補正学習値が増加する学習をしているときは、排気空燃比が前記目標空燃比よりもリッチになるように前記サブフィードバック制御手段における補正値を補正し、前記アルコール濃度補正学習値が減少する学習をしているときは、排気空燃比が前記目標空燃比よりもリーンになるように前記サブフィードバック制御手段における補正値を補正する内燃機関の空燃比制御装置。
【請求項2】
前記アルコール濃度補正学習値の増加量に応じて前記サブフィードバック制御手段における補正値の増加量を変化させ、前記アルコール濃度補正学習値の減少量に応じて前記サブフィードバック制御手段における補正値の減少量を変化させる請求項1に記載の内燃機関の空燃比制御装置。
【請求項3】
燃料としてアルコールとガソリンとをそれぞれ単独で又は混合して使用可能な内燃機関の空燃比制御装置であって、機関排気通路内に設けられた排気浄化触媒の上流排気通路内及び下流排気通路内にそれぞれ配置され且つ排気ガスの空燃比を検出する上流側空燃比センサ及び下流側空燃比センサと、前記上流側空燃比センサの出力値が目標空燃比に対応する値となるようにフィードバック補正値に基づいて燃料供給量を補正するメインフィードバック制御手段と、前記上流側空燃比センサの出力値に基づく排気空燃比と実際の排気空燃比とのずれを補償すべく前記下流側空燃比センサの出力値に基づいて排気空燃比が目標空燃比となるように燃料供給量を補正するサブフィードバック制御手段と、前記フィードバック補正値に基づいて算出されたアルコール濃度補正学習値を学習すると共にそれに基づいて前記燃料供給量を補正するアルコール濃度補正学習制御手段と、前記サブフィードバック制御手段における補正値に基づいて算出された学習値を学習すると共にそれに基づいて前記燃料供給量を補正するサブフィードバック学習制御手段とを具備する内燃機関の空燃比制御装置において、前記アルコール濃度補正学習値を学習しているときは、前記サブフィードバック制御手段における補正を制限する内燃機関の空燃比制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2009−150264(P2009−150264A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−327387(P2007−327387)
【出願日】平成19年12月19日(2007.12.19)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000237592)富士通テン株式会社 (3,383)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月19日(2007.12.19)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000237592)富士通テン株式会社 (3,383)
【Fターム(参考)】
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