説明

内視鏡システム

【課題】通常画像と特殊画像とを合成して合成画像を取得する内視鏡システムにおいて、大規模な拡大・縮小回路を用いることなく、装置の小型化および簡略化を図る。
【解決手段】特殊画像を撮像する第1の撮像系と、第1の撮像系とは異なる光学倍率を有し、通常画像を撮像する第2の撮像系とを備えた撮像装置と、蛍光画像と通常画像とが同じ大きさとなるように拡大処理または縮小処理を施すとともに、特殊画像と通常画像とに基づいて合成画像を生成する画像処理装置とを備えた内視鏡システムにおいて、第1の撮像系および第2の撮像系の少なくとも一方を、ピント調整機構を備えたものとするとともに、像側テレセントリック光学系を構成し、予め設定された一定の拡縮率で拡大処理または縮小処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通常光の被観察部への照射によって取得した通常画像と特殊光の被観察部への照射によって取得した特殊画像とを合成した合成画像を取得する内視鏡システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、体腔内の組織を観察する内視鏡システムが広く知られており、白色光の照射によって体腔内の被観察部を撮像して通常画像を得、この通常画像をモニタ画面上に表示する電子式内視鏡システムが広く実用化されている。
【0003】
また、上記のような内視鏡システムとして、たとえば、特許文献1においては、通常画像とともに、励起光の照射によって被観察部から発せられた自家蛍光像を撮像して自家蛍光画像を得、これらの画像をモニタ画面上に表示する蛍光内視鏡システムが提案されている。
【0004】
また、蛍光内視鏡システムとしては、たとえば、ICG(インドシアニングリーン)を予め体内に投入し、励起光を被観察部に照射して血管内のICGの蛍光を検出することによって血管の蛍光画像を取得するものも提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−84214号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、たとえば、上述したようなICGを用いた血管画像の観察を行う場合、蛍光画像上においては、通常画像上には現れない脂肪下の血管まで現れるため、この蛍光画像を通常画像に重ね合わせて表示したい場合がある。
【0007】
一方、蛍光像は通常像に比べて微弱であり、十分な感度を得るために蛍光像を撮像する撮像素子として、通常像を撮像する撮像素子よりも大きいものを使用する場合がある。すなわち、通常画像よりも蛍光画像の方が大きくなるように光学系の倍率を設定する場合がある。
【0008】
このような場合、蛍光画像と通常画像とをそのまま重ね合わせたのでは、互いの大きさが異なり適切な合成画像を取得することができないため、蛍光画像が通常画像と同じ大きさとなるように蛍光画像に対して縮小処理を施すことが考えられる。
【0009】
しかしながら、蛍光画像と通常画像を撮像する際には、それぞれを撮像する撮像系においてピント調整が行われ、このピント調整によって撮像系の光学倍率が変化する。
【0010】
したがって、ピント調整に応じて光学倍率が変化する度に、蛍光画像に対して施される拡大・縮小処理の拡縮率を光学倍率に応じて変化させる必要がある。
【0011】
しかしながら、このような種々の拡縮率に応じた拡大・縮小処理を行うためには、拡縮率を切り替えるための大規模で複雑な処理回路が必要となり、さらに、倍率変動を検出するためにピント調整量を検出する構成や、基準チャートなどを撮影して画像解析する構成も必要となり、装置が複雑化、大型化し、コストアップにもなる。
【0012】
なお、特許文献1には、イメージガイドの出射端の像を撮像素子に再結像する光学系を備えた内視鏡装置において、ピント調整により倍率が変化してしまうため、再結像光学系の入射側および出射側をともにテレセントリック光学系とすることが提案されているが、特許文献1に記載の内視鏡装置は、上述したような通常画像と蛍光画像とを撮像して合成画像を得るような装置ではなく、合成画像を生成する際の上記のような問題点についても一切考慮されていない。
【0013】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、通常画像と特殊画像とを合成して合成画像を取得する内視鏡システムにおいて、種々の拡縮率に切り替え可能な大規模な拡大・縮小回路や、ピント調整による倍率変動を検出する機構などを必要とすることなく、装置の小型化および簡略化、コストの削減を図ることができる内視鏡システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の内視鏡システムは、体腔内に挿入される内視鏡挿入部を有し、特殊光の照射によって被観察部から発せられた発光光を受光して特殊画像を撮像する第1の撮像素子を有する第1の撮像系と、第1の撮像系とは異なる光学倍率を有し、通常光の照射によって被観察部から反射された反射光を受光して通常画像を撮像する第2の撮像素子を有する第2の撮像系とを備えた撮像装置と、第1の撮像系によって撮像された蛍光画像と第2の撮像系によって撮像された通常画像とが同じ大きさとなるように拡大処理または縮小処理を施すとともに、特殊画像と通常画像とに基づいて合成画像を生成する画像処理装置とを備えた内視鏡システムにおいて、第1の撮像系および第2の撮像系の少なくとも一方が、ピント調整機構を備えるとともに、像側テレセントリック光学系を構成するものであり、画像処理装置が、予め設定された一定の拡縮率で拡大処理または縮小処理を行うものであることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の内視鏡システムにおいては、第1および第2の撮像系を、内視鏡挿入部の先端から入射された反射光を直角方向に反射して第2の撮像素子の撮像面に結像するとともに発光光を透過する分光光学素子をともに用いるものとし、第1の撮像系を、さらに分光光学素子を透過した発光光を直角方向に反射して第1の撮像素子の撮像面に結像させる反射光学素子を備えたものとすることができる。
【0016】
また、第1および第2の撮像系を、内視鏡挿入部の先端から入射された発光光を直角方向に反射して第1の撮像素子の撮像面に結像するとともに反射光を透過する分光光学素子をともに用いるものとし、第2の撮像系を、さらに分光光学素子を透過した反射光を直角方向に反射して第2の撮像素子の撮像面に結像させる反射光学素子を備えたものとすることができる。
【0017】
また、第1の撮像素子の撮像面に結像される蛍光画像と第2の撮像素子の撮像面に結像される通常画像とを異なる大きさにすることができる。
【0018】
また、像側テレセントリック光学系を構成する撮像系において、撮像素子の撮像面に対して垂直な方向と撮像素子に入射する主光線とが成す角θが、θ<0.03radを満たすようにすることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の内視鏡システムによれば、第1の撮像系および第2の撮像系の少なくとも一方を、ピント調整機構を備えるとともに、像側テレセントリック光学系を構成するものとしたので、ピント調整を行ったとしても通常画像と蛍光画像との大きさの比を略一定に保つことができる。これによって、画像処理装置を、予め設定された一定の拡縮率で拡大処理または縮小処理を行うものとすることができるので、種々の拡縮率に切り替え可能な大規模な拡大・縮小回路や、ピント調整による倍率変動を検出する機構などを必要とすることなく、装置の小型化および簡略化、コストの削減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の内視鏡装置の一実施形態を用いた腹腔鏡システムの概略構成図
【図2】硬質挿入部の概略構成図
【図3】撮像ユニットの概略構成図
【図4】撮像素子の撮像面に垂直な方向と蛍光像および通常像の主光線とが成す角θを示す図
【図5】画像処理装置および光源装置の概略構成を示すブロック図
【図6】画像処理部の概略構成を示すブロック図
【図7】蛍光画像、通常画像および合成画像の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の内視鏡装置の一実施形態を用いた腹腔鏡システムについて詳細に説明する。図1は、本実施形態の腹腔鏡システム1の概略構成を示す外観図である。
【0022】
本実施形態の腹腔鏡システム1は、図1に示すように、白色の通常光および特殊光を同時に射出する光源装置2と、光源装置2から射出された通常光および特殊光を導光して被観察部に照射するとともに、通常光の照射により被観察部から反射された反射光に基づく通常像および特殊光の照射により被観察部から発せられた蛍光に基づく蛍光像を撮像する硬性鏡撮像装置10と、硬性鏡撮像装置10によって撮像された画像信号に所定の処理を施す画像処理装置3と、画像処理装置3において生成された表示制御信号に基づいて被観察部の通常画像および蛍光画像を表示するモニタ4とを備えている。
【0023】
硬性鏡撮像装置10は、図1に示すように、腹腔内に挿入される硬質挿入部30と、硬質挿入部30によって導光された被観察部の通常像および蛍光像を撮像する撮像ユニット20とを備えている。
【0024】
また、硬性鏡撮像装置10は、図2に示すように、硬質挿入部30と撮像ユニット20とが着脱可能に接続されている。そして、硬質挿入部30は接続部材30a、挿入部材30b、ケーブル接続口30c、および照射窓30dを備えている。
【0025】
接続部材30aは、硬質挿入部30(挿入部材30b)の一端側30Xに設けられており、たとえば撮像ユニット20側に形成された開口20aに嵌め合わされることにより、撮像ユニット20と硬質挿入部30とが着脱可能に接続される。
【0026】
挿入部材30bは、腹腔内の撮影を行う際に腹腔内に挿入されるものであって、硬質な材料から形成され、たとえば、直径略5mmの円柱形状を有している。挿入部材30bの内部には、被観察部の像を結像するための対物レンズ群30e(図3参照)が収容されており、他端側30Yから入射された被観察部の通常像および蛍光像は対物レンズ群30eを介して一端側30Xの撮像ユニット20側に射出される。
【0027】
挿入部材30bの側面にはケーブル接続口30cが設けられており、このケーブル接続口30cに光ケーブルLCが機械的に接続される。これにより、光源装置2と挿入部材30bとが光ケーブルLCを介して光学的に接続されることになる。
【0028】
照射窓30dは、硬質挿入部30の他端側30Yに設けられており、光ケーブルLCによって導光された通常光および特殊光を被観察部に対し照射するものである。なお、挿入部材30b内にはケーブル接続口30cから照射窓30dまで通常光および特殊光を導光するライトガイドが収容されており(図示せず)、照射窓30dはライトガイドによって導光された通常光および特殊光を被観察部に照射するものである。
【0029】
図3は、撮像ユニット20および硬質挿入部30内の対物レンズ群30eの概略構成を示す図である。
【0030】
撮像ユニット20は、硬質挿入部30内の対物レンズ群30eにより結像された被観察部の蛍光像を撮像して被観察部の蛍光画像信号を生成する第1の撮像系と、硬質挿入部30内の対物レンズ群30eにより結像された被観察部の通常像を撮像して通常画像信号を生成する第2の撮像系とを備えている。これらの撮像系は、通常像を反射するとともに、蛍光像を透過する分光特性を有するダイクロイックプリズム21によって、互いに直交する2つの光軸に分けられている。
【0031】
第1の撮像系は、硬質挿入部30内の対物レンズ群30eにより結像された被観察部の蛍光像L4を透過するとともに、通常像L3を直角方向に反射するダイクロイックプリズム21と、ダイクロイックプリズム21を透過した蛍光像L4を拡大する拡大レンズ23と、拡大レンズ23によって拡大された蛍光像L4を直角方向に反射するプリズム24と、被観察部から反射された特殊光をカットする特殊光カットフィルタ25と、プリズム24によって反射され、特殊光カットフィルタ25を透過した蛍光像L4が結像され、その蛍光像L4を撮像する高感度撮像素子26とを備えている。なお、プリズム24は、ミラーでもよい。
【0032】
第1の撮像系におけるプリズム24は、図3の矢印方向に±0.2mm程度移動可能に構成されており、このプリズム24の移動によって蛍光像L4のピント調整が行われる。
【0033】
第2の撮像系は、硬質挿入部30内の対物レンズ群30eにより結像された被観察部の通常像L3を直角方向に反射するダイクロイックプリズム21と、ダイクロイックプリズム21を反射した通常像L3が結像され、その通常像L3を撮像する撮像素子22を備えている。
【0034】
第2の撮像系におけるダイクロイックプリズム21は、図3の矢印方向に±0.2mm程度移動可能に構成されており、このダイクロイックプリズム21の移動によって通常像L3のピント調整が行われる。
【0035】
また、本実施形態においては、第1の撮像系および第2の撮像系の両方が、像側テレセントリック光学系を構成しており、プリズム24またはダイクロイックプリズム21が移動してピント調整が行われたとしても、高感度撮像素子26の撮像面に結像される蛍光像L4の大きさと撮像素子22の撮像面に結像される通常像L3の大きさはほとんど変化しないものとする。
【0036】
そして、図4に示すように、高感度撮像素子26の撮像面に対して垂直方向(図4の点線)と高感度撮像素子26に入射する蛍光像L4の主光線とが成す角θと、撮像素子22の撮像面に対して垂直方向(図4の点線)と撮像素子22に入射する通常像L3の主光線とが成す角θとが、θ<0.03radを満たす値であることが望ましい。第1の撮像系と第2の撮像系においては、上述したようにプリズム24またはダイクロイックプリズム21が±0.2mm程度移動することによってピント調整が行われるが、このピント調整代に対して、θ<0.03radを満たす像側テレセントリック光学系を構成することによって撮像系全体としての倍率変化を1.5%以下とすることができる。撮像系全体の倍率変化は、通常画像の血管画像と蛍光画像の血管画像とを重ね合わせた際のずれを生じさせるが、たとえば、1mmから数mmの太さの血管を含む通常画像と蛍光画像とを重ね合わせる場合には、1.5%以下程度の倍率変化であれば許容レベルの範囲とすることができる。
【0037】
一方、たとえば、高感度撮像素子26の撮像面に対して垂直方向と高感度撮像素子26に入射する蛍光像L4の主光線とが成す角θと、撮像素子22の撮像面に対して垂直方向と撮像素子22に入射する通常像L3の主光線とが成す角θとが0.1radである場合には、ピント調整±0.2mmの調整代に対して、第1および第2の撮像系のそれぞれで±3%の倍率変化が生じ、全体としては、±6%の倍率変化を生じてしまい、適切な合成画像を取得することができない。
【0038】
高感度撮像素子26は、蛍光像の波長帯域の光を高感度に検出し、蛍光画像信号に変換して出力するものである。高感度撮像素子26はモノクロの撮像素子である。
【0039】
撮像素子22は、通常像の波長帯域の光を検出し、通常画像信号に変換して出力するものである。撮像素子22の撮像面には、3原色の赤(R)、緑(G)および青(B)、またはシアン(C)、マゼンダ(M)およびイエロー(Y)のカラーフィルタがベイヤー配列またはハニカム配列で設けられている。
【0040】
そして、本実施形態においては、蛍光像L4は通常像L3に比べて微弱なので、その感度を得るため、蛍光像撮像用の高感度撮像素子26は、通常像撮像用の撮像素子22に比べてほぼ3倍の大きさになっている。また、第1の撮像系の倍率もこれに対応した倍率に設定されている。なお、高感度撮像素子26と撮像素子22の画素数はほぼ等しくなるように設計されており、すなわち、高感度撮像素子26の画素の大きさが撮像素子の画素の大きさのほぼ3倍となるように設計されている。
【0041】
また、撮像ユニット20は、撮像制御ユニット27を備えている。撮像制御ユニット27は、高感度撮像素子26から出力された蛍光画像信号および撮像素子22から出力された通常画像信号に対し、CDS/AGC(相関二重サンプリング/自動利得制御)処理やA/D変換処理を施し、ケーブル5(図1参照)を介して画像処理装置3に出力するものである。
【0042】
画像処理装置3は、図5に示すように、通常画像入力コントローラ31、蛍光画像入力コントローラ32、画像処理部33、メモリ34、ビデオ出力部35、操作部36、TG(タイミングジェネレータ)37およびCPU38を備えている。
【0043】
通常画像入力コントローラ31および蛍光画像入力コントローラ32は、所定容量のラインバッファを備えており、撮像ユニット20の撮像制御ユニット27から出力された1フレーム分の通常画像信号および蛍光画像信号をそれぞれ一時的に記憶するものである。そして、通常画像入力コントローラ31に記憶された通常画像信号および蛍光画像入力コントローラ32に記憶された蛍光画像信号はバスを介してメモリ34に格納される。
【0044】
画像処理部33は、メモリ34から読み出された1フレーム分の通常画像信号および蛍光画像信号が入力され、これらの画像信号に所定の画像処理を施し、バスに出力するものである。画像処理部33のより具体的な構成を図6に示す。
【0045】
画像処理部33は、図6に示すように、入力された通常画像信号に対し、通常画像に適した所定の画像処理を施して出力する通常画像処理部33aと、入力された蛍光画像信号に対し、縮小処理を施すとともに、蛍光画像に適した所定の画像処理を施して出力する蛍光画像処理部33bと、蛍光画像処理部33bにおいて画像処理の施された蛍光画像信号に対して、血管を表す画像信号を抽出する処理を施して蛍光血管画像信号を生成する血管抽出部33cと、血管抽出部33cにおいて生成された蛍光血管画像信号と通常画像処理部33aから出力された通常画像信号とを合成して合成画像信号を生成する画像合成部33dとを備えている。なお、画像処理部33の各部における処理については、後で詳述する。
【0046】
ビデオ出力部35は、画像処理部33から出力された通常画像信号、蛍光画像信号および合成画像信号がバスを介して入力され、所定の処理を施して表示制御信号を生成し、その表示制御信号をモニタ4に出力するものである。
【0047】
操作部36は、種々の操作指示や制御パラメータなどの操作者による入力を受け付けるものである。また、TG37は、撮像ユニット20の高感度撮像素子26、撮像素子22および後述する光源装置2のLDドライバ45を駆動するための駆動パルス信号を出力するものである。また、CPU36は装置全体を制御するものである。
【0048】
光源装置2は、図5に示すように、約400〜700nmの広帯域の波長からなる通常光(白色光)L1を射出する通常光源40と、通常光源40から射出された通常光L1を集光する集光レンズ42と、集光レンズ42によって集光された通常光L1を透過するとともに、後述する特殊光L2を反射し、通常光L1および特殊光L2とを光ケーブルLCの入射端に入射させるダイクロイックミラー43とを備えている。なお、通常光源40としては、たとえばキセノンランプが用いられる。また、通常光源40と集光レンズ42との間には、絞り41が設けられており、ALC(Automatic light control)からの制御信号に基づいてその絞り量が制御される。
【0049】
また、光源装置2は、700nm〜800nmの可視から近赤外帯域の光であり、たとえば蛍光色素としてICG(インドシアニングリーン)を用いた場合には750〜790nmの近赤外光を特殊光L2として射出するLD光源44と、LD光源44を駆動するLDドライバ45と、LD光源44から射出された特殊光L2を集光する集光レンズ46と、集光レンズ46によって集光された特殊光りL2をダイクロイックミラー43に向けて反射するミラー47とを備えている。
【0050】
なお、特殊光L2としては、広帯域の波長からなる通常光よりも狭帯域の波長が用いられる。そして、特殊光L2としては上記波長域の光に限定されず、蛍光色素の種類もしくは自家蛍光させる生体組織の種類によって適宜決定される。
【0051】
また、光源装置2は、光ケーブルLCを介して硬性鏡撮像装置10に光学的に接続されている。
【0052】
次に、本実施形態の腹腔鏡システムの作用について説明する。
【0053】
まず、光ケーブルLCが接続された硬質挿入部30およびケーブル5が撮像ユニット20に取り付けられた後、光源装置2および撮像ユニット20および画像処理装置3の電源が投入され、これらが駆動される。
【0054】
次に、操作者により硬質挿入部30が腹腔内に挿入され、硬質挿入部30の先端が被観察部の近傍に設置される。
【0055】
そして、光源装置2の通常光源40から射出された通常光L1が、集光レンズ42、ダイクロイックミラー43および光ケーブルLCを介して硬質挿入部30に入射され、硬質挿入部30の照射窓30dから被観察部に照射される。一方、光源装置2のLD光源44から射出された特殊光L2が、集光レンズ46、ミラー47、ダイクロイックミラー43および光ケーブルLCを介して硬質挿入部30に入射され、硬質挿入部30の照射窓30dから被観察部に通常光と同時に照射される。なお、同時に照射するとは、必ずしも照射期間が完全に一致している必要はなく、少なくとも一部の照射期間が重複していればよい。
【0056】
そして、通常光L1の照射によって被観察部から反射された反射光に基づく通常像が撮像されるとともに、特殊光L2の照射によって被観察部から発せられた蛍光に基づく蛍光像が通常像と同時に撮像される。なお、同時に撮像するとは、必ずしも高感度撮像素子26と撮像素子22の撮像タイミングが完全に一致している必要はなく、少なくとも一部の撮像タイミングが重複していればよい。また、被観察部には、予めICGが投与されており、このICGから発せられる蛍光を撮像するものとする。
【0057】
より具体的には、通常像の撮像の際には、通常光L1の照射によって被観察部から反射された反射光に基づく通常像L3が挿入部材30bの先端30Yから入射し、挿入部材30b内の対物レンズ群33eにより導光されて撮像ユニット20に向けて射出される。
【0058】
撮像ユニット20に入射された通常像L3は、ダイクロイックプリズム21により撮像素子22に向けて直角方向に反射され、撮像素子22の撮像面上に結像され、撮像素子22によって撮像される。
【0059】
撮像素子22から出力された通常画像信号は、撮像制御ユニット27においてCDS/AGC(相関二重サンプリング/自動利得制御)処理やA/D変換処理が施された後、ケーブル5を介して画像処理装置3に出力される。
【0060】
一方、蛍光像の撮像の際には、特殊光の照射によって被観察部から発せられた蛍光に基づく蛍光像L4が挿入部材30bの先端30Yから入射し、挿入部材30b内の対物レンズ群33eにより導光されて撮像ユニット20に向けて射出される。
【0061】
撮像ユニット20に入射された蛍光像L4は、ダイクロイックプリズム21を通過した後、拡大レンズ23に入射され、拡大レンズ23において所定の倍率で拡大される。そして、拡大レンズ23において拡大された蛍光像L4は、プリズム24により高感度撮像素子26に向けて直角方向に反射され、高感度撮像素子26の撮像面上に結像され、高感度撮像素子26によって撮像される。
【0062】
そして、高感度撮像素子26から出力された蛍光画像信号は、撮像制御ユニット27においてCDS/AGC(相関二重サンプリング/自動利得制御)処理やA/D変換処理が施された後、ケーブル5を介して画像処理装置3に出力される。
【0063】
次に、上記のようにして撮像ユニット20において撮像された通常画像信号および蛍光画像信号に基づいて通常画像、蛍光画像および合成画像を表示する作用について、図5から図7を参照しながら説明する。
【0064】
まず、通常画像および蛍光画像を表示する作用について説明する。画像処理装置3に入力された通常画像信号は、通常画像入力コントローラ31において一時的に記憶された後、メモリ34に格納される。そして、メモリ34から読み出された1フレーム分の通常画像信号は、画像処理部33の通常画像処理部33aにおいて階調補正処理およびシャープネス補正処理が施された後、ビデオ出力部35に出力される。
【0065】
そして、ビデオ出力部35は、入力された通常画像信号に所定の処理を施して表示制御信号を生成し、その表示制御信号をモニタ4に出力する。そして、モニタ4は、入力された表示制御信号に基づいて通常画像を表示する。図7左上に、通常画像信号に基づいて表示された通常画像の一例を示す。
【0066】
また、画像処理装置3に入力された蛍光画像信号は、蛍光画像入力コントローラ32において一時的に記憶された後、メモリ34に格納される。そして、メモリ34から読み出された1フレーム分の蛍光画像信号は、画像処理部33の蛍光画像処理部33bにおいて縮小処理が施される。本実施形態においては、上述したように、蛍光画像が通常画像の3倍の大きさとなっているので、蛍光画像信号に対して、3分の1の縮小処理が施される。そして、その他の所定の画像処理が施された後、ビデオ出力部35に出力される。
【0067】
そして、ビデオ出力部35は、入力された縮小処理済みの蛍光画像信号に所定の処理を施して表示制御信号を生成し、その表示制御信号をモニタ4に出力する。そして、モニタ4は、入力された表示制御信号に基づいて蛍光画像を表示する。図7右上に、蛍光画像信号に基づいて表示された蛍光画像の一例を示す。
【0068】
そして、上記のようにして通常画像および蛍光画像がモニタ4に表示された後、操作者によって手動で、もしくは自動的に通常画像および蛍光画像のピント調整が行われる。ピント調整は、上述したように、第1の撮像系のプリズム24と第2の撮像系のダイクロイックプリズム21とを移動させることによって行われるが、第1の撮像系と第2の撮像系とは像側テレセントリック光学系によって構成されているので、このピント調整によって蛍光画像と通常画像の大きさはほとんど変化しない。
【0069】
次に、通常画像信号および蛍光画像信号に基づいて、合成画像を表示する作用について説明する。
【0070】
まず、上記のようにして縮小処理の施された蛍光画像信号が、画像処理部33の血管抽出部33cに入力される。そして、血管抽出部33cにおいて血管抽出処理が施される。
【0071】
血管抽出処理は、たとえば、エッジ検出を用いた線分抽出処理を行うことによって行われる。エッジ検出方法としては、たとえば、1次微分を用いたキャニー法や、ノイズを減らすためのガウシアンフィルタ処理と2次微分処理とを行ってエッジを抽出するラプラシアンフィルタを組み合わせたLOG(Laplace of Gaussian)フィルタを用いた方法などがある。
【0072】
そして、蛍光画像信号に対して血管抽出処理を施すことによって蛍光血管画像信号が生成され、この蛍光血管画像信号は画像合成部33dに出力される。そして、画像合成部33dには、通常画像処理部33aから出力された通常画像信号も入力され、この通常画像信号と蛍光血管画像信号とが合成されて合成画像信号が生成される。
【0073】
そして、画像合成部33dにおいて生成された合成画像信号は、ビデオ出力部35に出力される。
【0074】
ビデオ出力部35は、入力された合成画像信号に所定の処理を施して表示制御信号を生成し、その表示制御信号をモニタ4に出力する。そして、モニタ4は、入力された表示制御信号に基づいて合成画像を表示する。図7に、合成画像信号に基づいて表示された合成画像の一例を示す。
【0075】
また、上記実施形態においては、蛍光画像と通常画像との大きさを同じにするために、蛍光画像に対して縮小処理を施すようにしたが、通常画像に対して一定の拡大率で拡大処理を施すようにしてもよい。
【0076】
また、上記実施形態においては、第1の撮像系と第2の撮像系の両方にピント調整機構を設け、像側テレセントリック光学系を構成するようにしたが、これに限らず、いずれか一方のみにピント調整機構を設け、そのピント調整機構を設けた撮像系のみを像側テレセントリック光学系を構成するようにしてもよい。
【0077】
また、上記実施形態においては、ダイクロイックプリズム21として蛍光像L4を透過するとともに、通常像L3を直角方向に反射するものを使用し、プリズム24として蛍光像L4を直角方向に反射するものを使用するようにしたが、これに限らず、ダイクロイックプリズム21として通常像L3を透過するとともに、蛍光像L4を直角方向に反射するものを使用し、プリズム24として通常像L3を直角方向に反射するものを使用するようにし、ダイクロイックプリズム21を反射した蛍光像を高感度撮像素子により撮像し、プリズム24を反射した通常像を撮像素子により撮像するようにしてもよい。
【0078】
また、上記実施形態においては、通常光源としてキセノンランプを用いるようにしたがこれに限らず、GaN系半導体レーザーを用いた高輝度白色光源(商品名:マイクロホワイト、日亜化学工業(株)製)を用いるようにしてもよい。この高輝度白色光源は、波長445nmの半導体レーザーから出射する光を,光学レンズを用いて光ファイバーに導光し,蛍光体材料を塗布した光ファイバーのもう一方の端面から,全光束が501nmの白色光を放出させるものである。
【0079】
また、上記実施形態においては、特殊光源としてLD光源を用いるようにしたが、これに限らず、キセノンランプに励起フィルタを付加し、通常光と特殊光とを時系列に照射するようにしてもよい。
【0080】
また、上記実施形態においては、第1の撮像系により蛍光画像を撮像するようにしたが、これに限らず、被観察部への特殊光の照射による被観察部の吸光特性に基づく画像を撮像するようにしてもよい。
【0081】
また、上記実施形態においては、血管画像を抽出するようにしたが、これに限らず、たとえば、リンパ管などのその他の管部分を表す画像を抽出するようにしてもよい。
【0082】
また、上記実施形態は、本発明の内視鏡装置を腹腔鏡システムに適用したものであるが、これに限らず、たとえば、軟性内視鏡装置を有するシステムに適用してもよい。そして、軟性内視鏡装置を有するシステムに適用する場合には、第1および第2の撮像系を内視鏡挿入部の先端部分に設けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0083】
1 腹腔鏡システム
2 光源装置
3 画像処理装置
4 モニタ
10 硬性鏡撮像装置
20 撮像ユニット
21 ダイクロイックプリズム
22 撮像素子
23 拡大レンズ
24 プリズム
25 特殊光カットフィルタ
26 高感度撮像素子
27 撮像制御ユニット
30 硬質挿入部
31 通常画像入力コントローラ
32 蛍光画像入力コントローラ
33 画像処理部
33a 通常画像処理部
33b 蛍光画像処理部
33c 血管抽出部
33d 画像合成部
33e 対物レンズ群
40 通常光源
44 LD光源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
体腔内に挿入される内視鏡挿入部を有し、特殊光の照射によって被観察部から発せられた発光光を受光して特殊画像を撮像する第1の撮像素子を有する第1の撮像系と、該第1の撮像系とは異なる光学倍率を有し、通常光の照射によって被観察部から反射された反射光を受光して通常画像を撮像する第2の撮像素子を有する第2の撮像系とを備えた撮像装置と、
前記第1の撮像系によって撮像された蛍光画像と前記第2の撮像系によって撮像された通常画像とが同じ大きさとなるように拡大処理または縮小処理を施すとともに、前記特殊画像と前記通常画像とに基づいて合成画像を生成する画像処理装置とを備えた内視鏡システムにおいて、
前記第1の撮像系および前記第2の撮像系の少なくとも一方が、ピント調整機構を備えるとともに、像側テレセントリック光学系を構成するものであり、
前記画像処理装置が、予め設定された一定の拡縮率で拡大処理または縮小処理を行うものであることを特徴とする内視鏡システム。
【請求項2】
前記第1および第2の撮像系が、前記内視鏡挿入部の先端から入射された前記反射光を直角方向に反射して前記第2の撮像素子の撮像面に結像するとともに前記発光光を透過する分光光学素子をともに用いるものであり、
前記第1の撮像系が、さらに前記分光光学素子を透過した前記発光光を直角方向に反射して前記第1の撮像素子の撮像面に結像させる反射光学素子を備えたものであることを特徴とする請求項1記載の内視鏡システム。
【請求項3】
前記第1および第2の撮像系が、前記内視鏡挿入部の先端から入射された前記発光光を直角方向に反射して前記第1の撮像素子の撮像面に結像するとともに前記反射光を透過する分光光学素子をともに用いるものであり、
前記第2の撮像系が、さらに前記分光光学素子を透過した前記反射光を直角方向に反射して前記第2の撮像素子の撮像面に結像させる反射光学素子を備えたものであることを特徴とする請求項1記載の内視鏡システム。
【請求項4】
前記第1の撮像素子の撮像面に結像される前記蛍光画像と前記第2の撮像素子の撮像面に結像される前記通常画像とが異なる大きさであることを特徴とする請求項1から3いずれか1項記載の内視鏡システム。
【請求項5】
前記像側テレセントリック光学系を構成する前記撮像系において、前記撮像素子の撮像面に対して垂直な方向と前記撮像素子に入射する主光線とが成す角θが、
θ<0.03rad
を満たす値であることを特徴とする請求項1から4いずれか1項記載の内視鏡システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−62378(P2011−62378A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−216385(P2009−216385)
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【復代理人】
【識別番号】100128451
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 隆一
【Fターム(参考)】