説明

凹部形成方法、凹凸製品の製造方法、発光素子の製造方法および光学素子の製造方法

【課題】ヒートモード型のフォトレジスト層に凹部を形成する際に発生する異物の影響を抑制することができる凹部形成方法と、この方法を用いた凹凸製品の製造方法、発光素子の製造方法および光学素子の製造方法を提供する。
【解決手段】ヒートモードの形状変化が可能なフォトレジスト層12に光源を含んで構成される光学系50から集光した光を照射することでフォトレジスト層12に複数の凹部15を形成する凹部形成方法であって、フォトレジスト層12の凹部形成面12Aを重力方向に向けて凹部15を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートモード型のフォトレジスト層に凹部を良好に形成するための凹部形成方法と、この方法を用いた凹凸製品の製造方法、発光素子の製造方法および光学素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光ディスクや、光ディスクを製造するための原盤や、発光面に凹凸が形成される発光素子などの所定の対象物に凹凸を形成する方法として、例えば、特許文献1に示すようなフォトレジスト材料を用いる方法が知られている。具体的に、この方法では、原盤にフォトレジストを塗付する塗付工程と、レーザ光によりフォトレジストを露光する露光工程と、露光部分を現像液により除去して所定の凹部を形成する現像工程と、反応性イオンエッチング(以下、「RIE」とも呼ぶ)により原盤をエッチングするエッチング工程と、残留するレジストを剥離する剥離工程を行うことで、原盤に凹凸を形成している。
【0003】
【特許文献1】特開平7−161080号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、本願発明者は、凹凸を形成する方法として、フォトレジストおよびRIEを利用した従来技術よりも好適な方法を案出している。具体的に、その方法は、集光したレーザ光の照射により穴が形成されるヒートモード型のフォトレジスト材料を、前述した現像を要するフォトレジスト材料の代わりに用いてエッチングを行う方法である。この方法によれば、レーザ光を照射するだけで、その照射部分に凹部が形成されるため、前記従来技術のような現像工程が不要となり、製造時間の短縮を図ることができる。
【0005】
しかしながら、ヒートモード型のフォトレジスト材料を用いた方法では、レーザ光を照射した部分が分解・昇華・気化・飛散などの化学または/および物理変化を起こすことによって穴が形成されるため、その変化時において異物が発生する。そのため、異物がヒートモード型のフォトレジスト材料に形成した穴の周囲に残っていると、その後良好にエッチングを行うことができず、良好な凹凸形状を形成することができないという問題があった。
【0006】
また、本願発明者は、前述のエッチングを行わずに、レーザ光の照射により凹部を形成したヒートモード型のフォトレジスト材料をそのまま残すことで、凹凸を形成することも考えている。そして、このような場合でも、前述のように異物が穴の周囲に残ると、良好な凹凸形状を形成することができないといった問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、ヒートモード型のフォトレジスト層に凹部を形成する際に発生する異物の影響を抑制することができる凹部形成方法と、この方法を用いた凹凸製品の製造方法、発光素子の製造方法および光学素子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、本発明の凹部形成方法は、ヒートモードの形状変化が可能なフォトレジスト層に光源を含んで構成される光学系から集光した光を照射することで前記フォトレジスト層に複数の凹部を形成する凹部形成方法であって、前記フォトレジスト層の凹部形成面を重力方向に向けて凹部を形成することを特徴とする。
ここで、本発明において重力方向とは、重力場の向かう方向、すなわち、物体が落ちる方向を示すものとする。
【0009】
このような凹部形成方法によれば、フォトレジスト層の凹部形成面を重力方向に向けた状態で凹部を形成するので、ヒートモードの形状変化が可能なフォトレジスト層に集光した光を照射して凹部を形成する際に生じる異物を落下させることができる。これにより、異物が穴(凹部)およびその周囲に残ることを抑制することができるので、良好な凹凸形状を形成することができる。
【0010】
また、本発明の凹部形成方法は、前記フォトレジスト層の凹部形成面にイオン風を当てながら凹部を形成することとしてもよい。
これによれば、凹部形成面(穴およびその周囲)と異物とを同一電荷に帯電させることができるので、静電的反発力によって、異物が凹部およびその周囲に付着することを積極的に抑制することができ、より良好な凹凸形状を形成することができる。
【0011】
また、本発明の凹部形成方法は、前記フォトレジスト層への凹部の形成中または形成後において、前記フォトレジスト層に設けられた基準面または前記フォトレジスト層とは別に設けられた基準面に前記光学系から検査光を照射する検査光照射工程と、前記基準面から反射または回折する検査光の光量を検出する検出工程と、検出した前記光量に基づいて当該光量が所定量となるように前記光源の出力を調整する出力調整工程と、を備えてもよい。
【0012】
本発明の凹部形成方法では、落下した異物が光学系の対物レンズに付着する可能性があるので、凹部の形成中または形成後において、基準面に検査光を照射し、反射または回折した検査光を検出して光源の出力を調整することで、常に所定量の光量で凹部を形成することができる。これにより、良好な凹凸形状を形成することができる。
【0013】
また、本発明の凹部形成方法は、前記フォトレジスト層への凹部の形成中または形成後において、前記フォトレジスト層に設けられた基準面または前記フォトレジスト層とは別に設けられた基準面に前記光学系から検査光を照射する検査光照射工程と、前記基準面から反射または回折する検査光の光量を検出する検出工程と、検出した前記光量が所定量より小さい場合、前記フォトレジスト層への凹部の形成後に前記光学系の対物レンズを清掃する清掃工程と、を備えてもよい。
【0014】
これによれば、凹部の形成後に対物レンズに付着した異物を清掃(除去)することができるので、次回の凹部の形成時には、対物レンズの表面に異物がない状態で光を照射することができるため、良好な凹凸形状を形成することができる。また、凹部の形成中または形成後において、基準面に検査光を照射し、反射または回折した検査光を検出して光量が所定量より小さい場合に清掃を行うので、対物レンズに傷などがつく可能性を減らすことができ、結果として良好な凹凸形状の形成に寄与している。
【0015】
なお、前述したような本発明に係る凹部形成方法は、半導体や光ディスクなどの凹凸製品の製造方法や発光素子の製造方法、光学素子の製造方法に利用することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ヒートモード型フォトレジスト層に凹部を形成する際に発生する異物の影響を抑制することができるので、良好な凹凸形状を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
[第1実施形態]
次に、本発明に係る発光素子の製造方法について、図面を参照しながら説明する。参照する図において、図1(a)は、LEDパッケージの図であり、(b)は、(a)の拡大図である。
【0018】
図1(a)に示すように、本実施形態に係る発光素子の一例としてのLEDパッケージ1は、発光体の一例であるLED素子10と、このLED素子10を固定、配線するためのケース20とを備えてなる。
LED素子10は、従来周知の素子であり、詳細は図示しないが、n型クラッド層、p型クラッド層および活性層などを有する。図1(a)においては、上側の面が、光が外部へ放出される発光面18である。
【0019】
ケース20には、LED素子10が固定されている。ケース20には、LED素子10に電力を供給する配線21,22等が形成されている。
【0020】
図1(b)に示すように、LED素子10は、発光するための本体部分である発光部11と、発光部11の上(発光面18)に形成されたフォトレジスト層12と、バリア層13とをこの順に備えてなる。
フォトレジスト層12は、強い光の照射により光が熱に変換されてこの熱により材料が形状変化して凹部を形成することが可能な層であり、いわゆるヒートモード型のフォトレジストの層である。このようなフォトレジストは、従来、光記録ディスクなどの記録層に多用されており、例えば、シアニン系、フタロシアニン系、キノン系、スクワリリウム系、アズレニウム系、チオール錯塩系、メロシアニン系などのフォトレジストを用いることができる。
【0021】
本発明におけるフォトレジスト層12は、色素を記録物質として含有する色素型とすることが好ましい。
従って、フォトレジスト層12に含有される記録物質としては、色素等の有機化合物が挙げられる。なお、フォトレジスト層12の材料としては、有機材料に限られず、無機材料、または無機材料と有機材料の複合材料を使用できる。ただし、有機材料であると、成膜をスピンコートにより容易にでき、転移温度が低い材料を得易いため、有機材料を採用するのが好ましい。また、有機材料の中でも、光吸収量が分子設計で制御可能な色素を採用するのが好ましい。
【0022】
ここで、フォトレジスト層12の好適な例としては、メチン色素(シアニン色素、ヘミシアニン色素、スチリル色素、オキソノール色素、メロシアニン色素など)、大環状色素(フタロシアニン色素、ナフタロシアニン色素、ポルフィリン色素など)、アゾ色素(アゾ金属キレート色素を含む)、アリリデン色素、錯体色素、クマリン色素、アゾール誘導体、トリアジン誘導体、1−アミノブタジエン誘導体、桂皮酸誘導体、キノフタロン系色素などが挙げられる。
【0023】
中でも、レーザ光により一回限りの情報の記録が可能な、色素型のフォトレジスト層12であることが好ましい。有機物のフォトレジストは、溶剤に溶かしてスピンコートやスプレー塗布により膜を形成することができるので、生産性に優れるからである。かかる色素型のフォトレジスト層12は、記録波長領域に吸収を有する色素を含有していることが好ましい。特に、光の吸収量を示す消衰係数kの上限値は、加工精度向上の観点から、10以下が好ましく、5以下がより好ましく、3以下がさらに好ましく、1以下が最も好ましい。また、消衰係数kの下限値は、加工速度向上の観点から、0.0001以上が好ましく、0.001以上がより好ましく、0.1以上がさらに好ましい。
【0024】
なお、フォトレジスト層12は、前記したように記録波長において光吸収があることが必要であり、かような観点からレーザ光源の波長に応じて適宜色素を選択したり、構造を改変することができる。
例えば、レーザ光源の発振波長が780nm付近であった場合、ペンタメチンシアニン色素、ヘプタメチンオキソノール色素、ペンタメチンオキソノール色素、フタロシアニン色素、ナフタロシアニン色素などから選択することが有利である。
また、レーザ光源の発振波長が660nm付近であった場合は、トリメチンシアニン色素、ペンタメチンオキソノール色素、アゾ色素、アゾ金属錯体色素、ピロメテン錯体色素などから選択することが有利である。
さらに、レーザ光源の発振波長が405nm付近であった場合は、モノメチンシアニン色素、モノメチンオキソノール色素、ゼロメチンメロシアニン色素、フタロシアニン色素、アゾ色素、アゾ金属錯体色素、ポルフィリン色素、アリリデン色素、錯体色素、クマリン色素、アゾール誘導体、トリアジン誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体、1−アミノブタジエン誘導体、キノフタロン系色素などから選択することが有利である。
【0025】
以下、レーザ光源の発振波長が780nm付近であった場合、660nm付近であった場合、405nm付近であった場合に対し、フォトレジスト層12(記録層化合物)としてそれぞれ好ましい化合物の例を挙げる。ここで、以下の化学式1,2で示す化合物(I−1〜I−10)は、レーザ光源の発振波長が780nm付近であった場合の化合物である。また、化学式3,4で示す化合物(II−1〜II−8)は、660nm付近であった場合の化合物である。さらに、化学式5,6で示す化合物(III−1〜III−14)は、405nm付近であった場合の化合物である。なお、本発明はこれらを記録層化合物に用いた場合に限定されるものではない。
【0026】
<レーザ光源の発振波長が780nm付近である場合のフォトレジスト材料例>
【化1】

【0027】
<レーザ光源の発振波長が780nm付近である場合のフォトレジスト材料例>
【化2】

【0028】
<レーザ光源の発振波長が660nm付近である場合のフォトレジスト材料例>
【化3】

【0029】
<レーザ光源の発振波長が660nm付近である場合のフォトレジスト材料例>
【化4】

【0030】
<レーザ光源の発振波長が405nm付近である場合のフォトレジスト材料例>
【化5】

【0031】
<レーザ光源の発振波長が405nm付近である場合のフォトレジスト材料例>
【化6】

【0032】
また、特開平4−74690号公報、特開平8−127174号公報、同11−53758号公報、同11−334204号公報、同11−334205号公報、同11−334206号公報、同11−334207号公報、特開2000−43423号公報、同2000−108513号公報、および同2000−158818号公報等に記載されている色素も好適に用いられる。
【0033】
このような色素型のフォトレジスト層12は、色素を、結合剤等と共に適当な溶剤に溶解して塗布液を調製し、次いで、この塗布液を、基板上または後述する光反射層上に塗布して塗膜を形成した後、乾燥することにより形成できる。その際、塗布液を塗布する面の温度は、10〜40℃の範囲であることが好ましい。より好ましくは、下限値が、15℃以上であり、20℃以上であることがさらに好ましく、23℃以上であることが特に好ましい。また、上限値としては、35℃以下であることがより好ましく、30℃以下であることがさらに好ましく、27℃以下であることが特に好ましい。このように被塗布面温度が上記範囲にあると、塗布ムラや塗布故障の発生を防止し、塗膜の厚さを均一とすることができる。
なお、上記の上限値および下限値は、それぞれが任意で組み合わせることができる。
ここで、フォトレジスト層12は、単層でも重層でもよく、重層構造の場合、塗布工程を複数回行うことによって形成される。
塗布液中の色素の濃度は、一般に0.01〜15質量%の範囲であり、好ましくは0.1〜10質量%の範囲、より好ましくは0.5〜5質量%の範囲、最も好ましくは0.5〜3質量%の範囲である。
【0034】
塗布液の溶剤としては、酢酸ブチル、乳酸エチル、セロソルブアセテート等のエステル;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン等のケトン;ジクロルメタン、1,2−ジクロルエタン、クロロホルム等の塩素化炭化水素;ジメチルホルムアミド等のアミド;メチルシクロヘキサン等の炭化水素;テトラヒドロフラン、エチルエーテル、ジオキサン等のエーテル;エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノールジアセトンアルコール等のアルコール;2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール等のフッ素系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類;等を挙げることができる。
【0035】
好ましくは、酢酸ブチル、乳酸エチル;エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノールジアセトンアルコール;2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール等のフッ素系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類であり、n−ブタノールジアセトンアルコール、2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルがより好ましい。
【0036】
上記溶剤は使用する色素の溶解性を考慮して単独で、または二種以上を組み合わせて使用することができる。塗布液中には、更に、酸化防止剤、UV吸収剤、可塑剤、潤滑剤等、各種の添加剤を目的に応じて添加してもよい。
【0037】
塗布方法としては、スプレー法、スピンコート法、ディップ法、ロールコート法、ブレードコート法、ドクターロール法、ドクターブレード法、スクリーン印刷法等を挙げることができる。なお、生産性に優れ膜厚のコントロールが容易であるという点でスピンコート法を採用するのが好ましい。
フォトレジスト層12(記録層化合物)は、スピンコート法による形成に有利であるという点から、有機溶媒に対して0.3wt%以上30wt%以下で溶解することが好ましく、1wt%以上20wt%以下で溶解することがより好ましい。特にテトラフルオロプロパノールに1wt%以上20wt%以下で溶解することが好ましい。また、記録層化合物は、熱分解温度が150℃以上500℃以下であることが好ましく、200℃以上400℃以下であることがより好ましい。
塗布の際、塗布液の温度は、23〜50℃の範囲であることが好ましく、24〜40℃の範囲であることがより好ましく、中でも、25〜30℃の範囲であることが特に好ましい。
【0038】
塗布液が結合剤を含有する場合、結合剤の例としては、ゼラチン、セルロース誘導体、デキストラン、ロジン、ゴム等の天然有機高分子物質;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリイソブチレン等の炭化水素系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル・ポリ酢酸ビニル共重合体等のビニル系樹脂、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル等のアクリル樹脂、ポリビニルアルコール、塩素化ポリエチレン、エポキシ樹脂、ブチラール樹脂、ゴム誘導体、フェノール・ホルムアルデヒド樹脂等の熱硬化性樹脂の初期縮合物等の合成有機高分子;等を挙げることができる。フォトレジスト層12の材料として結合剤を併用する場合に、結合剤の使用量は、一般に色素に対して0.01倍量〜50倍量(質量比)の範囲にあり、好ましくは0.1倍量〜5倍量(質量比)の範囲にある。
【0039】
また、フォトレジスト層12には、フォトレジスト層12の耐光性を向上させるために、種々の褪色防止剤を含有させることができる。
褪色防止剤としては、一般的に一重項酸素クエンチャーが用いられる。一重項酸素クエンチャーとしては、既に公知の特許明細書等の刊行物に記載のものを利用することができる。
その具体例としては、特開昭58−175693号公報、同59−81194号公報、同60−18387号公報、同60−19586号公報、同60−19587号公報、同60−35054号公報、同60−36190号公報、同60−36191号公報、同60−44554号公報、同60−44555号公報、同60−44389号公報、同60−44390号公報、同60−54892号公報、同60−47069号公報、同63−209995号公報、特開平4−25492号公報、特公平1−38680号公報、および同6−26028号公報等の各公報、ドイツ特許350399号明細書、そして日本化学会誌1992年10月号第1141頁等に記載のものを挙げることができる。前記一重項酸素クエンチャー等の褪色防止剤の使用量は、色素の量に対して、通常0.1〜50質量%の範囲であり、好ましくは、0.5〜45質量%の範囲、さらに好ましくは、3〜40質量%の範囲、特に好ましくは5〜25質量%の範囲である。
【0040】
以上、フォトレジスト層12が色素型記録層である場合の溶剤塗布法について述べたが、フォトレジスト層12は記録物質の物性に合わせ、蒸着、スパッタリング、CVD等の成膜法によって形成することもできる。
【0041】
なお、色素は、後述する凹部15の加工に用いるレーザ光の波長において、他の波長よりも光の吸収率が高いものが用いられる。特に、LED素子10などの発光素子の発光波長よりも、加工時のレーザ光の波長において光の吸収率が高いことが望ましい。
この色素の吸収ピークの波長は、必ずしも可視光の波長域内であるものに限定されず、紫外域や、赤外域にあるものであっても構わない。
【0042】
特に発光素子の発光面を構成する材料の屈折率が高い場合には、凹部15を構成するフォトレジスト層12およびバリア層13の屈折率が高いことが好ましい。
色素には、吸収波長のピーク波長の長波側に屈折率の高い波長域が存在するが、この波長域と発光素子の発光波長とを合わせることが好ましい。そのためには、色素吸収波長λaが発光素子の中心波長λcより短い(λa<λc)ことが好ましい。λaとλcの差の下限は、加工し易さの観点から、10nm以上が好ましく、25nm以上がより好ましく、50nm以上がさらに好ましい。また、λaとλcの差の上限は、加工し易さの観点から、500nm以下が好ましく、300nm以下がより好ましく、200nm以下がさらに好ましい。
【0043】
レーザで凹部15を記録する波長λwは、λa<λwの関係であることが好ましい。このような関係にあれば、色素の光吸収量が適切で記録効率が高まるし、きれいな凹凸形状が形成できるからである。また、λw<λcの関係であることが好ましい。λwは、色素が吸収する波長であるべきなので、このλwの波長よりも長波長側に発光素子の中心波長λcがあることで、発光素子の発する光が色素に吸収されず透過率が向上し、結果として発光効率が向上できるからである。
以上のような観点から、λa<λw<λcの関係にあることが最も好ましいといえる。
【0044】
なお、凹部15を形成するためのレーザ光の波長λwは、大きなレーザパワーが得られる波長であればよく、例えば、フォトレジスト層12に色素を用いる場合は、193nm、210nm、266nm、365nm、405nm、488nm、532nm、633nm、650nm、680nm、780nm、830nmなど、1000nm以下が好ましい。
【0045】
また、レーザ光の種類としては、ガスレーザ、固体レーザ、半導体レーザなど、どのようなレーザであってもよい。ただし、光学系を簡単にするために、固体レーザや半導体レーザを採用するのが好ましい。レーザ光は、連続光でもパルス光でもよいが、自在に発光間隔が変更可能なレーザ光を採用するのが好ましい。例えば、半導体レーザを採用するのが好ましい。レーザを直接オンオフ変調できない場合は、外部変調素子で変調するのが好ましい。
【0046】
また、レーザパワーは、加工速度を高めるためには高い方が好ましい。ただし、レーザパワーを高めるにつれ、スキャン速度(レーザ光でフォトレジスト層12を走査する速度;例えば、後述する光ディスクドライブの回転速度)を上げなければならない。そのため、レーザパワーの上限値は、スキャン速度の上限値を考慮して、100Wが好ましく、10Wがより好ましく、5Wがさらに好ましく、1Wが最も好ましい。また、レーザパワーの下限値は、0.1mWが好ましく、0.5mWがより好ましく、1mWがさらに好ましい。
【0047】
さらに、レーザ光は、発信波長幅およびコヒーレンシが優れていて、波長並みのスポットサイズに絞ることができるような光であることが好ましい。また、記録ストラテジ(凹部15を適正に形成するための光パルス照射条件)は、光ディスクで使われているようなストラテジを採用するのが好ましい。すなわち、光ディスクで使われているような、記録速度や照射するレーザ光の波高値、パルス幅などの条件を採用するのが好ましい。
【0048】
フォトレジスト層12の厚さは、後述する凹部15の深さに対応させるのがよい。
この厚みは、例えば、1〜10000nmの範囲で適宜設定することができ、厚さの下限は、凹部15による光学的な効果やフォトレジスト層12をエッチングマスクとして利用する場合においてエッチング効果を得るという観点から、10nm以上が好ましく、30nm以上がより好ましい。また、厚さの上限は、加工精度や加工速度の観点から、1000nm以下が好ましく、500nm以下がより好ましい。
【0049】
また、フォトレジスト層12の厚さtと、凹部15の直径dとは、以下の関係であることが好ましい。すなわち、フォトレジスト層12の厚さtの上限は、加工精度や加工速度の観点から、t<10dが好ましく、t<5dがより好ましく、t<3dがさらに好ましい。また、フォトレジスト層12の厚さtの下限は、凹部15による光学的な効果やフォトレジスト層12をエッチングマスクとして利用する場合においてエッチング効果を得るという観点から、t>d/100が好ましく、t>d/10がより好ましく、t>d/5がさらに好ましい。
【0050】
フォトレジスト層12を形成するときは、フォトレジストとなる物質を適当な溶剤に溶解または分散して塗布液を調製した後、この塗布液をスピンコート、ディップコート、エクストルージョンコートなどの塗布法により発光面18の表面に塗布することにより形成することができる。
【0051】
バリア層13は、フォトレジスト層12を衝撃などから防ぐために形成され、任意的に設けられる。バリア層13は、透明な材質であれば特に限定されないが、好ましくはポリカーボネート、三酢酸セルロース等であり、より好ましくは、23℃、50%RHでの吸湿率が5%以下の材料である。また、SiO2、ZnS、GaOなどの酸化物、硫化物を用いることもできる。
なお、「透明」とは、LED素子10が発する光に対して、当該光を透過する(透過率:90%以上)ほどに透明であることを意味する。
【0052】
バリア層13は、接着層を構成する光硬化性樹脂を適当な溶剤に溶解して塗布液を調製した後、この塗布液を所定温度でフォトレジスト層12上に塗布して塗布膜を形成し、該塗布膜上に、例えばプラスチックの押出加工で得られた三酢酸セルロースフィルム(TACフィルム)をラミネートし、ラミネートしたTACフィルムの上から光を照射して塗布膜を硬化させて形成される。前記TACフィルムとしては、紫外線吸収剤を含むものが好ましい。バリア層13の厚さは、0.01〜0.2mmの範囲であり、好ましくは0.03〜0.1mmの範囲、より好ましくは0.05〜0.095mmの範囲である。
【0053】
フォトレジスト層12およびバリア層13には、周期的に複数の凹部15が形成されている。凹部15は、フォトレジスト層12およびバリア層13に集光した光を照射することで、当該照射部分を変形(消失による変形を含む)させて形成されたものである。凹部15は、発光面18の光が放出される範囲に密に形成するのが望ましい。
【0054】
なお、凹部15が形成される原理は、以下の通りとなっている。
フォトレジスト層12(記録層化合物)に、材料の光吸収がある波長(材料で吸収される波長)のレーザ光を照射すると、フォトレジスト層12によってレーザ光が吸収され、この吸収された光が熱に変換され、光の照射部分の温度が上昇する。これにより、フォトレジスト層12が、軟化、液化、気化、昇華、分解などの化学または/および物理変化を起こす。そして、このような変化を起こした材料が移動または/および消失することで、凹部15が形成される。なお、バリア層13は非常に薄い層であるため、フォトレジスト層12の移動または/および消失に伴って、一緒に移動または/および消失する。そして、このような凹部15の形成時においては、化学または/および物理変化したフォトレジスト層12の一部が、異物となって凹部15の周囲に残る。
【0055】
なお、凹部15の形成方法としては、例えば、ライトワンス光ディスクや追記型光ディスクなどで採用されているピットの形成方法を適用することができる。具体的には、例えば、ピットサイズによって変化するレーザの反射光の強度を検出し、この反射光の強度が一定となるようにレーザの出力を補正することで、均一なピットを形成する方法を適用することができる。
【0056】
また、前記したようなフォトレジスト層12(記録層化合物)の気化、昇華または分解は、その変化の割合が大きく、急峻であることが好ましい。具体的には、記録層化合物の気化、昇華または分解時の示差熱天秤(TG−DTA)による重量減少率が5%以上であることが好ましく、より好ましくは10%以上、さらに好ましくは20%以上である。また記録層化合物の気化、昇華または分解時の示差熱天秤(TG−DTA)による重量減少の傾き(昇温1℃あたりの重量減少率)が0.1%/℃以上であることが好ましく、より好ましくは0.2%/℃以上、さらに好ましくは0.4%/℃以上である。
【0057】
また、軟化、液化、気化、昇華、分解などの化学または/および物理変化の転移温度は、その上限値が、加工速度向上の観点から、2000℃以下が好ましく、1000℃以下がより好ましく、500℃以下がさらに好ましい。温度が高すぎると、レーザパワーが不足して加工できなくなる可能性がある。また、転移温度の下限値は、加工精度の観点から、50℃以上が好ましく、100℃以上がより好ましく、150℃以上がさらに好ましい。
【0058】
図2(a)は、発光面を平面的に見た一例の図であり、(b)は、他の例の図であり、図3(a)は、凹部の直径とピッチとの関係を説明する図であり、(b)は、レーザ光の発光時間と周期との関係を説明する図である。
図2(a)に示すように、凹部15は、ドット状に形成され、このドットが格子状に配列されたものを採用することができる。また、図2(b)に示すように、凹部15は、細長い溝状に形成され、これが断続的につながったものでもよい。さらに、図示は省略するが、連続した溝形状として形成することもできる。
【0059】
隣接する凹部15同士のピッチPは、発光体であるLED素子10が発光する光の中心波長λcの0.01〜100倍である。
【0060】
凹部15のピッチPは、好ましくは、中心波長λcの0.05〜20倍であり、より好ましくは0.1〜5倍であり、最も好ましくは0.2〜2倍である。具体的には、ピッチPの下限値は、中心波長λcの0.01倍以上が好ましく、0.05倍以上がより好ましく、0.1倍以上がさらに好ましく、0.2倍以上が最も好ましい。また、ピッチPの上限値は、中心波長λcの100倍以下が好ましく、20倍以下がより好ましく、5倍以下がさらに好ましく、2倍以下が最も好ましい。
【0061】
凹部15の直径または溝の幅は、中心波長λcの0.005〜25倍であり、好ましくは0.025〜10倍、より好ましくは0.05〜2.5倍、最も好ましくは0.25〜2倍である。
なお、ここでいう直径または溝の幅は、凹部15の半分の深さにおける大きさ、いわゆる半値幅である。
【0062】
凹部15の直径または溝の幅は、上記の範囲で適宜設定することができるが、発光面18から離れるにつれ、巨視的に徐々に屈折率が小さくなるように、ピッチPの大きさに応じて調整するのが望ましい。すなわち、ピッチPが大きい場合には、凹部15の直径または溝の幅も大きくし、ピッチPが小さい場合には、凹部15の直径または溝の幅も小さくするのが好ましい。この観点から、直径または溝の幅は、ピッチPに対して2分の1程度の大きさであるのが好ましく、例えば、ピッチPの20〜80%であり、より好ましくは30〜70%、さらに好ましくは40〜60%である。
【0063】
凹部15の深さは、好ましくは中心波長λcの0.01〜20倍であり、より好ましくは0.05〜10倍、さらに好ましくは0.1〜5倍であり、最も好ましくは0.2〜2倍である。
【0064】
以上のような構成のLEDパッケージ1の製造方法について説明する。図4(a)〜(c)は、LEDパッケージの製造工程を示す図である。
図4(a)に示すように、まず、従来公知の方法で製造されたLED素子10の本体である発光部11(基板100)を用意する。ここで、基板100は、LED素子10が複数形成された半導体発光素子基板を、円盤状または矩形状に形成したものである。
【0065】
そして、図4(b)に示すように、発光部11上にフォトレジスト層12とバリア層13をこの順に形成する。
【0066】
次に、凹部15を形成するが、凹部15を形成する装置は、図5に示すような光ディスクドライブDDを用いることができる。具体的に、この光ディスクドライブDDは、基板100を保持する保持器30と、保持器30を回転させることで基板100(LED素子10の本体)を回転させるモータ40と、フォトレジスト層12およびバリア層13に集光した光を照射する光学系50と、制御装置CAと、フォトレジスト層12およびバリア層13にイオン風を当てるイオン風発生装置60とを主に備えている。
【0067】
保持器30は、本体部31および複数のアーム32を主に備えている。
本体部31は、円盤状に形成され、下側が基板100の取付部(装着部)となっている。この本体部31の外周部には、複数のアーム32が互いに等間隔で設けられている。
【0068】
アーム32は、一端部が本体部31に固定された可撓性の部材であり、鉤状に折り曲げられた他端部が、図5に示す基板100に近接する位置で基板100の外周を保持する。このような保持器30により、光ディスクドライブDDは、中心に穴が形成されていない基板100を保持し、凹部を形成することができる。
【0069】
なお、基板100は、フォトレジスト層12およびバリア層13が形成された面、すなわち、凹部15が形成される面(以下、凹部形成面12Aと呼ぶ)を下向きにして保持器30に保持される。このとき、凹部形成面12Aが水平方向に対してなす角度は、±90度以内である(凹部形成面12Aが水平方向よりも下方を向いている)ことが好ましく、±5度以内であることがより好ましく、0度である(凹部形成面12Aが重力方向を向いている)ことがさらに好ましい。
【0070】
モータ40は、保持器30の上方、すなわち、基板100の上方となる位置に配置され、本体部31の中心部に回転軸の端部が固定されている。
ここで、本実施形態の光ディスクドライブDDは、モータ40が基板100の上方に配置されるので、モータ40から発生した塵埃が基板100に落下する可能性がある。そこで、図示はしないが、モータ40の筐体に排気口を設け、ポンプなどにより筐体内を減圧したり、筐体内の空気を吸引したりすることで、モータ40から発生した塵埃を外部に排気することが好ましい。
【0071】
光学系50は、基板100の下方となる位置に配置され、光源の一例としてのレーザ光源51、第1レンズ52、第2レンズ53、ハーフミラー54、対物レンズの一例としての第3レンズ55、第4レンズ56およびディテクタ57を主に備えている。この光学系50は、公知の機構により基板100の半径方向(図5の左右方向)に移動可能に構成されている。
【0072】
レーザ光源51は、レーザ光を出射するものであり、制御装置CAによってその出力が調整される。
【0073】
第1レンズ52は、レーザ光源51から出射されたレーザ光のビーム径を拡大するものであり、レーザ光源51の下流側(レーザ光の進行方向における下流側)に配置されている。
【0074】
第2レンズ53は、第1レンズ52で拡径されたレーザ光を平行な光束に変換するものであり、第1レンズ52の下流側に配置されている。
【0075】
ハーフミラー54は、第2レンズ53の下流側に配置されており、レーザ光源51から出射されてくるレーザ光を透過させるとともに、その反対側から戻ってくるレーザ光を所定の方向(レーザ光の光軸方向に対して略直交する方向)へ反射させている。
【0076】
第3レンズ55は、ハーフミラー54を透過してきたレーザ光を集光するためのものであり、ハーフミラー54の下流側、かつ、基板100の下方で基板100と対向するように配置されている。
【0077】
第4レンズ56は、ハーフミラー54で反射されたレーザ光を集光するものであり、ハーフミラー54によって反射されるレーザ光の光路上に配置されている。
【0078】
ディテクタ57は、第4レンズ56の下流側に配置され、第4レンズ56で集光したレーザ光の光量を検出する機能を有している。そして、このディテクタ57で検出した光量は、制御装置CAに出力されるようになっている。なお、ディテクタ57としては、例えば、フォトダイオード、分割フォトダイオードなどを採用することができる。
【0079】
制御装置CAは、CPU、ROM、RAM、通信機器などの公知のハードウェア(図示せず)を備えており、本実施形態においては特に、ディテクタ57で検出した光量に基づいて、当該光量が所定量となるようにレーザ光源51の出力を調整する制御を行っている。ここで、所定量とは、1つの値であってもよいし、所定の幅のある値(上限値から下限値までの所定範囲)であってもよい。
【0080】
ここで、制御装置CAによるレーザ光源51の出力調整方法について説明する。
まず、光ディスクドライブDDによる基板100の凹部形成面12A(フォトレジスト層12)への凹部15の形成中または形成後の所定のタイミングにおいて、光ディスクドライブDD(保持器30)に基板100の代わりに、少なくとも一部に反射率が既知の領域(基準面)を有する標準板(シリコン基板など)をセットする。
【0081】
次に、制御装置CAは、基準面に対し、光学系50からレーザ光(検査光)を照射する(検査光照射工程)。検査光は、レーザ光源51から出射され、第1レンズ52、第2レンズ53、ハーフミラー54および第3レンズ55を通過して、対物レンズである第3レンズ55から基準面に照射される。
【0082】
基準面に照射された検査光は、基準面で反射されて再び第3レンズ55を通過し、ハーフミラー54で所定の方向に反射された後、第4レンズ56で集光され、ディテクタ57に導かれる。ディテクタ57は、公知の光ディスクドライブと同様のフォーカシング技術、例えば、非点収差法やナイフエッジ法などを用いることにより、フォーカシング用のサーボ信号を生成して、制御装置CAに出力する。
【0083】
サーボ信号を受けた制御装置CAは、光学系50を制御して、フォーカシングを実行した状態で、所定時間基準面に検査光を照射し続け、ディテクタ57に導かれる検査光の総量を検出して、基準面で反射される検査光の光量(以下、戻り光量とも呼ぶ)を検出する(検出工程)。
【0084】
一般的に、このような戻り光量は、レーザ光源51から出射される検査光の光量(レーザ光源51の出力)や、基準面の反射率などから、制御装置CAにおいて推定することができる。しかし、本実施形態では、光学系50が基板100の下方に配置されるため、凹部15の形成により発生した異物が、対物レンズである第3レンズ55上に付着することがある。そのため、ディテクタ57で検出した戻り光量は、制御装置CAで推定可能な光量よりも小さくなることがある。
【0085】
そこで、制御装置CAは、検出した戻り光量が、レーザ光源51から出射されるレーザ光の光量やフォトレジスト層12の材質などから予め設定した所定量となるように、レーザ光源51の出力を調整する(出力調整工程)。詳細には、検出した戻り光量が、所定量と比較して不足している場合にレーザ光源51の出力を高くする。
【0086】
イオン風発生装置60は、凹部形成時において、空気中の分子をマイナスの電荷に帯電させることでイオン風を発生させ、送出口61から凹部形成面12Aの加工部分(光の照射により凹部15が形成されている部分)に向けて送出するように構成されている。イオン風の発生方法としては、例えば、電圧印加による方法、水を破砕する方法、放射線や紫外線を使う方法などを用いることができる。中でも、電圧印加による方法が好ましい。電圧印加による方法では、コロナ放電式と電子放射式があるが、特に、電子放射式がイオン風を安定して発生させることができ、飛散物を付着させないという効果も安定させることができるので好ましい。このイオン風発生装置60は、光学系50とともに移動可能に構成されている。
【0087】
なお、基板100のイオン風が当てられる部分は、加工部分に限定されず、例えば、加工部分とその周囲を含む凹部形成面12Aの一部であってもよいし、凹部形成面12Aの全面であってもよい。また、イオン風発生装置を光ディスクドライブDDの外部に設け、供給管などを介して凹部形成面12Aにイオン風が当てられる構成としてもよい。
【0088】
以上に説明したような光ディスクドライブDDに基板100を、凹部形成面12Aを下向きにした状態(図5では凹部形成面12Aを重力方向に向けた状態)で装填する。そして、フォトレジスト層12の材質に応じ、これを変形させるのに適当な出力を初期値としてレーザ光をフォトレジスト層12に照射する。さらに、この照射のパターンが、図2(a)や(b)に例示したドットまたは溝などの形成すべき凹部15のパターンに合うように、レーザ光源51にパルス信号または連続信号を入力する。
【0089】
なお、図3(b)に示すように、所定の周期Tで発光されるレーザ光のデューティ比(発光時間τ/周期T)は、実際に形成する凹部15のデューティ比(レーザ光の走査方向における凹部15の長さd/ピッチP;図3(a)参照)より低くするのが好ましい。ここで、図3(a)に円状に示すレーザ光は、発光時間τの間において所定の速度で移動することで、楕円状の凹部15の形成に寄与している。
【0090】
レーザ光のデューティ比としては、例えば、凹部15のピッチPを100としたときの凹部15の長さdが50である場合には、50%よりも低いデューティ比でレーザ光を照射すればよい。また、この場合、レーザ光のデューティ比の上限値は、50%未満が好ましく、40%未満がより好ましく、35%未満がさらに好ましい。さらに、下限値は、1%以上が好ましく、5%以上がより好ましく、10%以上がさらに好ましい。以上のように、デューティ比を設定することで、規定のピッチの凹部15を正確に形成することができる。
【0091】
また、公知の光ディスクドライブと同様のフォーカシング技術、例えば、非点収差法などを用いることにより、発光部11にうねりや反りがあったとしても、発光面18の表面に容易に集光することが可能である。
【0092】
このようにして、図4(c)に示すように、凹部形成面12A(発光面18)側(下方)から光ディスクドライブDDの光学系50でレーザ光を集光して照射する。そして、光記録ディスクに情報を記録する場合と同様に、発光部11を回転させながら、光学系50を半径方向に移動させることで、発光面18の全体に凹部15を形成する。このとき、凹部形成面12Aには、イオン風発生装置60からイオン風が当てられる。
【0093】
また、凹部15の形成中または形成後において、光ディスクドライブDDに標準板を装填し、標準板の基準面に光学系50からレーザ光(検査光)を照射して、基準面で反射する検査光の戻り光量をディテクタ57で検出する。その後、光ディスクドライブDDに基板100を装填し、戻り光量が所定量である場合には、制御装置CAはレーザ光源51に出力を維持したレーザ光を出射させて凹部15を形成する。一方、戻り光量が所定量に満たない場合には、制御装置CAはレーザ光源51に出力を高くしたレーザ光を出射させて凹部15を形成する。
【0094】
なお、凹部15を形成する時の加工条件は以下の通りである。
光学系50の開口数NAの下限は、加工精度の観点から、0.4以上が好ましく、0.5以上がより好ましく、0.6以上がさらに好ましい。また、開口数NAの上限は、角度変動に対する許容度の観点から、2以下が好ましく、1以下がより好ましく、0.9以下がさらに好ましい。
【0095】
光学系50の波長は、例えば405±30nm、532±30nm、650±30nm、780±30nmである。これらは、大きな出力が得やすい波長だからである。なお、波長は短い程、細かい加工ができるので好ましい。
【0096】
光学系50の出力の下限は、加工時間の観点から、0.1mW以上であり、好ましくは1mW以上、より好ましくは5mW以上、さらに好ましくは20mW以上である。また、光学系50の出力の上限は、部材の耐久性の観点から、1000mW以下であり、好ましくは500mW以下、より好ましくは200mW以下である。
【0097】
光学系50をフォトレジスト層12に対し相対的に移動させる線速は、下限が、加工時間や加工精度の観点から、0.1m/s以上であり、好ましくは1m/s以上、より好ましくは5m/s以上、さらに好ましくは20m/s以上である。また、線速の上限は、加工精度の観点から、500m/s以下であり、好ましくは200m/s以下、より好ましくは100m/s以下、さらに好ましくは50m/s以下である。
【0098】
光学系50を含む具体的な光ディスクドライブDDの一例としては、例えば、パルステック工業株式会社製DDU1000を用いることができる。
【0099】
以上のようにして光ディスクドライブDDにより凹部15を形成した後は、図示しないが、基板100を切断することで個々のLED素子10を製造でき、このLED素子10をケース20に固定して、必要な配線をすることで図1に示したLEDパッケージ1が製造できる。
【0100】
以上のように凹部形成面12A(フォトレジスト層12およびバリア層13)に凹部15を形成した後は清掃工程を行う。具体的には、検出工程にて検出された戻り光量が、所定量より小さい場合において、凹部15の形成後に光学系50の対物レンズである第3レンズ55を清掃する。第3レンズ55の清掃は、気体を勢いよく送出して異物を吹き飛ばす方法や、柔らかな刷毛で異物を除去する方法、アルコールなどの洗浄剤で異物を除去する方法など、第3レンズ55の形状や材質などに応じて、レンズを傷つけない方法で行う。
【0101】
検査光を照射し、戻り光量を検出する方法は、前記した制御装置CAによるレーザ光源51の出力調整方法と同様の方法によって行うことができる。なお、清掃工程を行うか否かの基準となる戻り光量の所定量と、出力調整工程でレーザ光の出力を調整するか否かの基準となる戻り光量の所定量とは、同じ値(または範囲)であってもよいし、異なる値(または範囲)であってもよい。また、清掃は、機械で行ってもよいし、手動で行ってもよい。
【0102】
さらに、第3レンズ55の清掃は、戻り光量の検出の有無に関わらず、定期的に行うこととしてもよい。清掃の頻度は、フォトレジスト層12からの異物の発生量や、光ディスクドライブDDの設置環境などに応じて適宜設定することができる。例えば、1000枚ごと、100枚ごと、10枚ごと、1枚ごとなどのように基板100の加工枚数で設定してもよいし、1カ月ごと、1週間ごと、1日ごと、1時間ごとなどのように光ディスクドライブDDの稼動時間で設定してもよい。
【0103】
以上によれば、本実施形態において以下のような効果を得ることができる。
凹部形成面12Aを重力方向に向けた状態で凹部15を形成するので、フォトレジスト層12に集光した光を照射して凹部15を形成する際に生じる異物を落下させることができる。これにより、異物が凹部15およびその周囲に残ることを抑制することができるので、良好な凹凸形状を形成することができる。
【0104】
凹部形成面12Aにイオン風を当てながら凹部15を形成するので、フォトレジスト層12を帯電させることができる。これによって、凹部15およびその周囲と異物とが同一電荷に帯電することになるので、静電的反発力によって、異物が凹部15およびその周囲に付着することを積極的に抑制することができる。
【0105】
凹部15の形成中または形成後において、基準面に光学系50から検査光を照射し、基準面から反射する検査光の光量(戻り光量)を検出して、当該光量が所定量となるようにレーザ光源51の出力を調整するので、第3レンズ55に異物が付着しても常に所定量の光量で凹部15を形成することができる。
【0106】
凹部15の形成後に光学系50の対物レンズである第3レンズ55を清掃するので、次回の凹部15の形成時には、第3レンズ55上に異物がない状態でレーザ光を照射することができるため、良好な凹凸形状を形成することができる。また、戻り光量が所定量より小さい場合または定期的に清掃を行うので、対物レンズに傷などがつく可能性を減らすことができる。
【0107】
前述のようにして形成されたLEDパッケージ1は、発光面18に形成された微細な凹凸形状により、発光面18の近傍において巨視的に屈折率が徐々に変化し、発光面18から放出された光が発光面18の内面で反射することが抑制される。これにより、LEDパッケージ1の発光効率が向上する。
【0108】
また、ヒートモード形状変化が可能なフォトレジスト層12を用いることで集光したレーザ光を照射するだけで凹部15を形成することができるとともに、フォトレジスト層12の形成は塗布などにより大量に一斉に行うことができるので、凹部15の形成を早く、安価に行うことができる。また、公知のフォーカシング技術を利用することで、素材にうねりがあっても凹部15を簡単に製造することができる。
【0109】
このような工程は、従来のように、例えば、現像工程を必要とするフォトレジスト材料を用いた方法や、材料を塗布してベーキング、露光、ベーキング、エッチングといった複雑な工程を利用する方法などと比較すると極めて簡単である。したがって、簡易に発光素子の発光面に微細な凹凸形状を形成して発光効率を向上することが可能である。
【0110】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態に係る光学素子の製造方法について説明する。参照する図において、図6は、第2実施形態に係る光学素子の図である。
光学素子10Aは、光の透過性が高い部材で、発光素子の発光面に密着または接着されて用いられる。例えば、第1実施形態に例示したLEDパッケージ1の発光面18の表面や、蛍光管の表面などに貼り付けて用いられる。
【0111】
図6に示すように、光学素子10Aは、透明な支持体11Aの上に、第1実施形態と同様のフォトレジスト層12およびバリア層13が形成され、さらに凹部15が形成される。
支持体11Aは、発光素子が発する光に対して十分な透過性(例えば透過率80%程度以上)を有していればよく、例えば、ポリカーボネートなどの樹脂やガラス材料が用いられる。
【0112】
凹部15を形成する場合には、フォトレジスト層12を下方に向けて支持体11Aを移動させつつ、第1実施形態と同様にしてレーザ光を集光してパルス状に照射することにより形成できる。この際、図6に示すようにレーザ光を支持体11A側(フォトレジスト層12とは反対側)から照射しても構わない。このように、レーザ光をフォトレジスト層12とは反対側から照射した場合には、凹部15を形成する際に発生する異物が光学系50Aの対物レンズに落下することがないといった効果を奏する。
【0113】
このようにして構成された光学素子10Aは、LEDパッケージ1の発光面18の表面や、蛍光管の表面などに貼り付けることで、これらの発光素子の発光効率を向上することができる。
【0114】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態に係る発光素子の製造方法について説明する。参照する図において、図7(a)〜(c)は、第3実施形態に係るLED素子の製造工程を示す図である。
【0115】
第3実施形態に係るLED素子10の製造方法では、まず、第1実施形態と同様の工程(図4参照)を経ることで、図7(a)に示すように、フォトレジスト層12およびバリア層13に凹部15を形成する。その後は、凹部15が形成されたフォトレジスト層12およびバリア層13をマスクとして、エッチングを行うことで、図7(b)に示すように、発光面18に凹部15に対応した穴部16を形成する。そして、図7(c)に示すように、所定の剥離液などによってフォトレジスト層12およびバリア層13を除去することで、凹凸形状に形成された発光面18が露出することとなる。
【0116】
ここで、エッチングとしては、ウェットエッチングやドライエッチングなど、種々のエッチング方法を採用できるが、エッチングガスの直進性が高く細かなパターニングが可能なRIEを採用するのが好ましい。また、フォトレジスト層12およびバリア層13の除去方法としては、乾式の方法や湿式の方法など種々の方法を採用できる。
【0117】
なお、エッチング方法や除去方法の具体例としては、例えば、発光部11の発光面18を含む層の材料が、ガラスであり、フォトレジスト層12の材料が色素であり、バリア層13の材料が無機材料層である場合には、エッチングガスとしてSF6を用いたRIEを採用するとともに、剥離液としてエタノールを用いた湿式の除去方法を採用することができる。ここで、発光面を含む層というのは、LED素子10の製造終了後において、空気のような気体、水のような液体等の外部環境との間で界面を形成する層であれば、どのような層でも構わない。
【0118】
以上、第3実施形態に係る製造方法によれば、LED素子10の表面(発光面18)自体に凹凸が形成されるので、LED素子10とフォトレジスト層12との屈折率差を気にすることなく、簡単に凹凸形状を設計することができる。なお、本実施形態では、予めLED素子10の表面に形成したフォトレジスト層12に、フォーカシング技術等により複数の凹部15を形成することで、LED素子10の表面上に密着して正確にマスクがセットされたこととなる。そのため、本実施形態では、従来のようにLED素子10の表面が反ることによりマスクを密着できないといった問題は生じず、簡単に凹凸形状を形成することができる。
【0119】
以上に本発明の実施形態について説明したが、本発明は、前記実施形態に限定されることなく適宜変更して実施することが可能である。
前記実施形態では、発光素子の例としてLED素子10を示したが、発光素子は、LED素子に限定されず、例えば、プラズマディスプレイ素子、レーザ、SED素子、蛍光管、EL素子など、発光する器具であれば特に限定されない。
【0120】
前記各実施形態では、発光素子や光学素子の製造方法に本発明に係る凹部形成方法を適用したが、本発明はこれに限定されず、凹凸製品の製造方法に本発明を適用してもよい。すなわち、図8(a)および(b)に示すように、無機物からなる基板(基体)210上に穴部16を情報として形成し、この基板210の穴部16側に保護層220を設けることで、凹凸製品の一例としての光学読取用の情報記録媒体(光ディスク200)を製造する方法にも本発明を適用することができる。
【0121】
具体的には、図4に示す方法と同じ方法で、基板210上にフォトレジスト層12およびバリア層13を形成し、このフォトレジスト層12等が形成された面を下向きにし、集光した光を照射して凹部15を形成する。その後、図7に示す方法と同じ方法で、フォトレジスト層12等をマスクとして基板210に凹部15に対応した穴部16を形成する。以上によれば、基板210に穴部16を良好に形成することができる。
【0122】
なお、基板210の材料としては、Si、Alを有する材料が好ましく、例えば、SiやSiO2、Al23などが好ましい。また、保護層220の材料としては、SiO2などの無機酸化物、Si34などの無機窒素化物のような無機系のものや、UV硬化樹脂などのような有機系のものを、単独あるいは組み合わせて使用できる。ただし、光ディスク200の長寿命化の観点から、保護層220も無機系の材料で形成するのが好ましい。
また、凹凸製品としては、光ディスクに限定されず、例えば、半導体、EL(エレクトロルミネセンス)、液晶、SED(表面電界ディスプレイ)、金型などであってもよい。
【0123】
前記実施形態では、発光素子または光学素子の発光面や光ディスク200を構成する基板210の表面に直接フォトレジスト層12を設けたが、発光面または表面との間に他の材料を介してフォトレジスト層12を設けてもよい。また、半導体からなるLED素子の表面に、保護層やレンズが設けられている場合には、それらの保護層やレンズの表面(空気との界面)が発光面になるので、それらの表面にフォトレジスト層12および凹部15を設ければよい。
【0124】
前記実施形態では、凹部15を形成するのにレーザ光を用いたが、必要な大きさに集光できれば、レーザ光のような単色光でなくても構わない。
【0125】
なお、最小加工形状を得るために微小時間のレーザ光の照射で形成される凹形状の直径は、レーザ光の波長よりも短くするのが望ましい。すなわち、前記した関係となるように、レーザ光のスポット径を小さく絞るのが好ましい。
【0126】
また、凹部15が最小加工形状(以下、「レーザスポット」という)よりも大きい場合には、レーザスポットを繋げることによって、凹部15を形成すればよい。ここで、ヒートモード型のフォトレジスト層12にレーザ光を照射すると、照射された部分のうち温度が転移温度になった部分のみが変化する。すなわち、レーザ光は中心付近で光強度が最も強く、外側に向かうにつれて徐々に弱くなっているため、レーザ光のスポット径よりも小さな径の微細な穴(レーザスポット)をフォトレジスト層12に形成することが可能となっている。そして、このような微細な穴を連続させて凹部15を形成する場合には、凹部15の形状精度を高めることができる。ちなみに、現像を要する材料であると、レーザ光が照射された部分全てで反応が起こるため、1回のレーザ光で形成される穴(レーザスポット)が大きく、その形状精度はヒートモード型の材料に比べ悪くなる。したがって、本発明のようにヒートモード型の材料を使うのが好ましい。
【0127】
前記実施形態では、フォトレジスト層12の上にバリア層13を形成したが、本発明はこれに限定されず、バリア層13はなくてもよい。特に、第3実施形態や図8に示した形態のようにフォトレジスト層12をエッチングマスクとして利用する場合には、バリア層13はない方が好ましい。
【0128】
前記第1実施形態では、保持器30の複数のアーム32により、中心に穴が形成されていない基板100を保持する例を示したが、中心に穴が形成されていない基板100を保持する方法はこれに限定されるものではない。例えば、真空吸着や静電吸着などによって保持してもよい。また、中心に穴が形成されている基板の場合には、従来公知の光ディスクドライブに装填される光ディスクと同様に、基板の穴を下からモータの回転軸(スピンドル)などによって保持してもよい。
【0129】
前記第1実施形態では、モータ40を基板100の上方となる位置に配置したが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、従来公知の光ディスクドライブのように、モータを基板の下方となる位置に配置してもよい。
【0130】
前記実施形態では、基準面の一例として、光ディスクドライブDDにセットされるフォトレジスト層12とは別に設けられた標準板を採用した例を示したが、本発明の基準面はこれに限定されるものではない。例えば、フォトレジスト層とは別に設けられた基準面の他の例として、光ディスクドライブDD内に設けた反射率が既知の領域(面)や標準板などを採用してもよい。また、本発明の基準面は、基板100のフォトレジスト層12(凹部形成面12A)に設けられた基準面であってもよい。例えば、凹部形成面12Aのうち、凹部15の形成前、形成中および形成後において反射率が既知または一定である領域(凹部を形成しない領域など)を基準面とすることができる。これらによれば、前記実施形態のように、基板100と基準面(標準板)とを入れ替える必要がないので、凹部形成面に凹部を形成しながら、所定のタイミングで基準面に検査光を照射し、戻り光量を検出して、光源の出力を調整することができる。そのため、常に最適な光量で凹部の形成を行うことができるので、より良好な凹凸形状を形成することができる。
【0131】
前記第1実施形態では、戻り光量を検出するのに光学系50のディテクタ57を用いる構成を例示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、光学系50とは別に設けられた外部センサ(公知の反射率測定器など)で戻り光量を検出し、制御装置CAに出力する構成としてもよい。
【0132】
前記第1実施形態では、基準面から反射する検査光の光量を検出したが、本発明はこれに限定されず、例えば、基準面から回折する検査光の光量を検出し、この光量が所定量となるよう光源の出力を調整してもよい。
【0133】
前記第1実施形態では、基準面から反射する検査光をディテクタ57に導くためにハーフミラー54を採用した例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、偏光ビームスプリッタを採用してもよい。なお、この場合は、公知の波長板などの光学部品を適宜設けることができる。
【0134】
前記第3実施形態では、LED素子10の表面に穴部16を形成したが、本発明はこれに限定されず、第2実施形態のような光学素子10Aの表面(支持体11Aの表面)に、フォトレジスト層12等をエッチングマスクとして穴部を形成してもよい。
【0135】
前記第3実施形態や図8に示した形態では、穴部16を形成する面(発光面18または基板210の表面)上に直接フォトレジスト層12等をエッチングマスクとして形成したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、エッチングガスによってフォトレジスト層12等が容易に削られてしまう場合には、図9(a)に示すように、フォトレジスト層12等に影響をほとんど与えないエッチングガスによってエッチング可能なマスク層17を、発光面18とフォトレジスト層12との間に設けてもよい。なお、図9では、発光面18に穴部16を形成する形態を示すが、基板210の表面に穴部16を形成する場合も同様にマスク層17を設けることができる。
【0136】
これによれば、まず、第1実施形態と同様に、レーザ光でフォトレジスト層12およびバリア層13に凹部15を形成する。次に、図9(b)に示すように、第1のエッチングガスによって、マスク層17をエッチングすることで、マスク層17に凹部15に対応した貫通孔17aを形成する。ここで、第1のエッチングガスとして、フォトレジスト層12およびバリア層13を削らないような種類のガスが選択されているので、フォトレジスト層12およびバリア層13がマスクとなってマスク層17がエッチングされる。
【0137】
その後、図9(c)に示すように、第2のエッチングガスによって、発光面18を含む層をエッチングすることで、発光面18上に凹部15に対応した穴部16が形成される。このとき、第2のエッチングガスによってフォトレジスト層12およびバリア層13はエッチングされて直ぐに消滅するが、マスク層17がマスクとなって発光面18が良好にエッチングされる。そして、その後は、図9(d)に示すように、所定の剥離液などによってマスク層17を除去することで、凹凸形状に形成された発光面18が露出することとなる。
【0138】
ここで、図9に示す形態の具体例としては、例えば、発光部11の発光面18を含む層の材料が、サファイアであり、フォトレジスト層12の材料が色素であり、バリア層13の材料が無機層である場合には、マスク層17として東京応化工業株式会社製のSi含有Bi−Layerフォトレジストを採用し、第1のエッチングガスとしてSF6を採用し、第2のエッチングガスとしてCl2を採用すればよい。
【実施例】
【0139】
次に、本発明の効果を確認した一実施例について説明する。
[実施例1]
円盤状の基板に100nm厚の色素層(フォトレジスト層)を形成した。基板および色素層の詳細は以下の通りである。
【0140】
・基板
材質 シリコン
厚さ 0.5mm
外径 101.6mm(4インチ)
内径 15mm
【0141】
・色素層(フォトレジスト層)
下記化学式の色素材料2gをTFP(テトラフルオロプロパノール)溶剤100mlに溶解し、スピンコートした。スピンコートの際には、塗布開始回転数500rpm、塗布終了回転数1000rpmとして塗布液を基板の内周部にディスペンスし、徐々に2200rpmまで回転を上げた。なお、色素材料の屈折率nは1.986であり、消衰係数kは0.0418である。
【0142】
【化7】

【0143】
このような基板の色素層側の面に対して、以下に示す条件で、半径30〜31mmの範囲にレーザ光を照射して、微細な凹部を径方向に10μmピッチ、周方向に0.3μmピッチで形成した。
凹部の形成条件は下記の通りである。
レーザ出力の初期値 2.5mW
線速 5m/s
記録信号 5MHzの矩形波
【0144】
実施例Aでは、基板を、フォトレジスト層側の面を重力方向に向けてパルステック工業株式会社製DDU1000(波長405nm、NA0.85。ヘッド部には0.1mm厚の収差補正板を設置)にセットし、イオン風を当てながら、下方からレーザ光を照射して微細な凹部を形成した。
【0145】
実施例Bでは、基板を、実施例Aと同様にしてDDU1000にセットし、イオン風を当てないで、下方からレーザ光を照射して微細な凹部を形成した。
【0146】
比較例として、基板を、フォトレジスト層側の面を上方に向けてパルステック工業株式会社製NEO1000(波長405nm、NA0.85)にセットし、イオン風を当てながら、上方からレーザ光を照射して微細な凹部を形成した。
【0147】
以上のように凹部を形成した基板の表面をSEM(走査型電子顕微鏡)によって観察した。この結果を表1に示す。ここで、表1の「基板の表面状態」において、「◎」とはSEMの視野面積に占める固形物の割合が1%未満であることを示し、「○」とはSEMの視野面積に占める固形物の割合が5%未満であることを示し、「×」とはSEMの視野面積に占める固形物の割合が5%以上であることを示す。
【0148】
【表1】

【0149】
表1に示すように、実施例Aにおいては、SEMの視野面積に占める固形物の割合が1%未満であり、基板上に固形物の付着がほとんど確認されなかった(◎)。また、実施例Bにおいては、SEMの視野面積に占める固形物の割合が1%以上5%未満であり、基板上に固形物の付着が実施例Aと比較してわずかに確認された(○)。一方、比較例においては、SEMの視野面積に占める固形物の割合が5%以上であり、基板上に固形部の付着が確認された(×)。
【0150】
以上より、フォトレジスト層側の面を下方に向けて凹部を形成することで、基板への固形物の付着が抑制され、基板上に良好な凹凸形状が形成されることが確認された。また、凹部形成中にイオン風を当てることで、基板への固形物の付着がさらに抑制され、基板上により良好な凹凸形状が形成されることが確認された。
【0151】
[実施例2]
何も塗布していない基板(シリコン基板)を標準板として用意した。そして、この標準板を、パルステック工業株式会社製DDU1000(波長405nm、NA0.85。ヘッド部には0.1mm厚の収差補正板を設置)にセットし、自動焦点サーボをかけながら戻り光量を測定した。
【0152】
次に、実施例1と同様の基板50枚に対して凹部の形成を実行した。具体的には、基板を1枚ずつフォトレジスト層側の面を重力方向に向けてDDU1000にセットし、基板の半径30〜31mmの範囲に下方からレーザ光を照射して、径方向に10μmピッチ、周方向に0.3μmピッチで、直径150nmの凹部の形成を実行した。なお、レーザ出力の初期値、線速、記録信号は実施例1と同様である。このとき、DDU1000は、クリーンルームではない部屋に設置し、凹部の形成中に蓋を開放しておいた。
【0153】
基板50枚に対して凹部の形成を実行した後、標準板を再びDDU1000にセットし、自動焦点サーボをかけながら戻り光量を測定した。
その後、以下に示す条件で、実施例1と同様の基板に対して凹部の形成を実行した。なお、その他の条件は、基板50枚に対して凹部の形成を実行したときと同様である。
【0154】
実施例Cでは、実施例1と同様の基板を、フォトレジスト層側の面を重力方向に向けてDDU1000にセットし、レーザ光の出力を10%高くして凹部の形成を実行した。
【0155】
実施例Dでは、まず、対物レンズをエアブローおよび刷毛にて清掃した後に、標準板をセットして自動焦点サーボをかけながら戻り光量を測定した。その後、実施例1と同様の基板を、フォトレジスト層側の面を重力方向に向けてDDU1000にセットし、レーザ光の出力を変化させないで凹部の形成を実行した。なお、「レーザ光の出力を変化させない」とは、基板50枚に対して凹部の形成を実行したときと同じ出力で凹部を形成したことを意味する。
【0156】
比較例として、対物レンズの清掃を行わず、実施例1と同様の基板を、フォトレジスト層側の面を重力方向に向けてDDU1000にセットし、レーザ光の出力を変化させないで凹部の形成を実行した。
【0157】
そして、各基板に形成された凹部の直径を公知の方法により測定した。この結果を表2に示す。なお、戻り光量は、凹部の形成前に測定した戻り光量を「10」とすると、基板50枚に対して凹部の形成を実行した後に測定した戻り光量は「9」、対物レンズの清掃後に測定した戻り光量は「10」であった。
【0158】
【表2】

【0159】
表2に示すように、実施例C,Dにおいては、凹部の直径が150nmであった。一方、比較例においては、凹部の直径が130nmと小さくなっていた。すなわち、比較例の凹部形成方法では、所望の凹部寸法を得ることができなかった。
【0160】
以上より、基準面に検査光を照射し、基準面から反射する検査光の光量を検出した後、光源(レーザ光)の出力を調整(高く)する、または、対物レンズを清掃することで、基板上により良好な凹凸形状が形成されることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0161】
【図1】(a)は、LEDパッケージの図であり、(b)は、(a)の拡大図である。
【図2】(a)は、発光面を平面的に見た一例の図であり、(b)は、他の例の図である。
【図3】(a)は、凹部の直径とピッチとの関係を説明する図であり、(b)は、レーザ光の発光時間と周期との関係を説明する図である。
【図4】(a)〜(c)は、LEDパッケージの製造工程を示す図である。
【図5】フォトレジスト層等に凹部を形成する光ディスクドライブを示す図である。
【図6】第2実施形態に係る光学素子の図である。
【図7】(a)〜(c)は、第3実施形態に係るLED素子の製造工程を示す図である。
【図8】本発明の凹部形成方法を含む製造方法により製造された光ディスクを示す斜視図(a)と断面図(b)である。
【図9】(a)〜(d)は、第3実施形態に係るLED素子の製造工程を一部変更した形態を示す図である。
【符号の説明】
【0162】
1 LEDパッケージ
10 LED素子
10A 光学素子
11 発光部
11A 支持体
12 フォトレジスト層
12A 凹部形成面
15 凹部
16 穴部
18 発光面
30 保持器
40 モータ
50 光学系
51 レーザ光源
55 第3レンズ
57 ディテクタ
60 イオン風発生装置
200 光ディスク
210 基板
CA 制御装置
DD 光ディスクドライブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒートモードの形状変化が可能なフォトレジスト層に光源を含んで構成される光学系から集光した光を照射することで前記フォトレジスト層に複数の凹部を形成する凹部形成方法であって、
前記フォトレジスト層の凹部形成面を重力方向に向けて凹部を形成することを特徴とする凹部形成方法。
【請求項2】
前記フォトレジスト層の凹部形成面にイオン風を当てながら凹部を形成することを特徴とする請求項1に記載の凹部形成方法。
【請求項3】
前記フォトレジスト層への凹部の形成中または形成後において、
前記フォトレジスト層に設けられた基準面または前記フォトレジスト層とは別に設けられた基準面に前記光学系から検査光を照射する検査光照射工程と、
前記基準面から反射または回折する検査光の光量を検出する検出工程と、
検出した前記光量に基づいて当該光量が所定量となるように前記光源の出力を調整する出力調整工程と、を備えたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の凹部形成方法。
【請求項4】
前記フォトレジスト層への凹部の形成中または形成後において、
前記フォトレジスト層に設けられた基準面または前記フォトレジスト層とは別に設けられた基準面に前記光学系から検査光を照射する検査光照射工程と、
前記基準面から反射または回折する検査光の光量を検出する検出工程と、
検出した前記光量が所定量より小さい場合、前記フォトレジスト層への凹部の形成後に前記光学系の対物レンズを清掃する清掃工程と、を備えたことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の凹部形成方法。
【請求項5】
基体の表面上に凹凸を有する凹凸製品の製造方法であって、
前記基体の表面上にヒートモードの形状変化が可能なフォトレジスト層を形成する工程と、
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の凹部形成方法により、前記フォトレジスト層に複数の凹部を形成する工程と、
複数の凹部が形成されたフォトレジスト層をマスクとして、エッチングを行うことで、前記基体の表面上に前記凹部に対応した穴部を形成する工程と、を備えたことを特徴とする凹凸製品の製造方法。
【請求項6】
発光体を有する発光素子の製造方法であって、
前記発光体の発光面にヒートモードの形状変化が可能なフォトレジスト層を形成する工程と、
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の凹部形成方法により、前記フォトレジスト層に複数の凹部を形成する工程と、を備えたことを特徴とする発光素子の製造方法。
【請求項7】
複数の凹部が形成された前記フォトレジスト層をマスクとして、エッチングを行うことで、前記発光面に前記凹部に対応した穴部を形成することを特徴とする請求項6に記載の発光素子の製造方法。
【請求項8】
発光素子の発光面に取り付けられることで、前記発光素子の発光効率を向上させる光学素子の製造方法であって、
前記発光素子が発する光を透過可能な支持体の表面に、ヒートモードの形状変化が可能なフォトレジスト層を形成する工程と、
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の凹部形成方法により、前記フォトレジスト層に複数の凹部を形成する工程と、を備えたことを特徴とする光学素子の製造方法。
【請求項9】
複数の凹部が形成された前記フォトレジスト層をマスクとして、エッチングを行うことで、前記支持体の表面に前記凹部に対応した穴部を形成することを特徴とする請求項8に記載の光学素子の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2009−271289(P2009−271289A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−121057(P2008−121057)
【出願日】平成20年5月7日(2008.5.7)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】