説明

出入管理システム

【課題】IDカードとIDカードホルダ等との対応関係の異常を衆人監視により検知できる出入管理システムを提供する。
【解決手段】利用者管理装置と、利用者に装着され利用者管理装置からの制御信号により表示を変更する表示装置と、出入口近傍の所定領域に表示装置が存在していることを検出し利用者管理装置に通知する所在検出装置とから構成され、利用者管理装置は、利用者と表示装置との対応関係を示す対応情報が保存されている記憶部と、各利用者に一意に付与された識別コードにより利用者を識別する利用者識別手段と、利用者識別手段により識別された利用者と同じ所定領域に利用者と対応関係を有する表示装置が検出されなければ、当該所定領域に存在する表示装置について対応警告状態と判定する判定手段と、判定手段により対応警告状態と判定された表示装置に非接触通信により対応警告状態を表示させる表示制御手段を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、利用者の建物への入退館や建物内での入退室などを管理する出入管理システムに関し、特に利用者どうしが互いに利用者資格を持っているか否かを確認できる出入管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、出入管理システムは、出入口付近に設置され、利用者資格を認証する認証装置と、認証装置の認証結果に応じて扉の施解錠を制御する出入制御装置にて構成され、利用者の建物内での入退室等の出入を管理していた。(特許文献1)
【0003】
近年では、更に、利用者がそれぞれ携行するIDカードに、利用者が所在する室における利用者資格の有無を表示できる機能を備えさせ、利用者がお互いにIDカードの表示を見て他の利用者の資格の有無を確認しあう衆人監視機能付きの出入管理システムが提案されている。(特許文献2)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平06−004536
【特許文献2】特開2009−99052
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1のような衆人監視機能を有さない出入管理システムを既に導入している企業によっては、既存の出入管理システムを刷新し、全ての場所/利用者において衆人監視機能を適用するのではなく、ある特定の場所/利用者にだけ衆人監視機能を適用したいといったニーズがあった。上記ニーズは、日常的にIDカードと併用されるIDカードホルダや入館バッジ等に対して、周囲の利用者どうしが互いに利用者資格を確認できる表示機能を設け、これを衆人監視機能が必要な場所等で利用することにより、満たすことができる。
【0006】
しかしながら、このような出入管理システムでは、IDカードホルダ等を所持しない人物は、不正利用者であると周囲の利用者から疑われることから、他の利用者のIDカードホルダ等を不正に入手し、自身の(又は不正に入手した)IDカードとを組み合わせて入室を試行する恐れがある。また、必要時にのみ管理者から貸与されることを想定とした当該IDカードホルダ等は、個人名等が明記され利用者ごとに貸与されるIDカードとは異なり、外見からは誰に貸与されたIDカードホルダ等であるのかを識別できない。そのため、管理者が誤って他の利用者に対応づけられたIDカードホルダ等を別の利用者に貸与する場合や、利用者が他の利用者に貸与されたIDカードホルダ等を誤用する場合も、運用上想定される。
【0007】
そこで、本発明は、IDカードとIDカードホルダ等との組合せが正しくないIDカードホルダ等の表示を変更し、当該利用者が対応の異なるIDカードホルダ等を利用している利用者であることを、本人または周囲の利用者によって検知できることを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる課題を解決するために、利用者管理装置と、利用者に装着され前記利用者管理装置からの制御信号により表示を変更する表示装置と、出入口近傍の所定領域に前記表示装置が存在していることを検出し前記利用者管理装置に通知する所在検出装置とから構成され、前記表示装置の表示を利用者が相互に確認する衆人監視機能付きの出入管理システムであって、前記利用者管理装置は、前記利用者と前記表示装置との対応関係を示す対応情報が保存されている記憶部と、各利用者に一意に付与された識別コードにより前記利用者を識別する利用者識別手段と、前記利用者識別手段により識別された前記利用者と同じ所定領域に前記利用者と前記対応関係を有する表示装置が検出されなければ、当該所定領域に存在する前記表示装置について対応警告状態と判定する判定手段と、前記判定手段により対応警告状態と判定された前記表示装置に非接触通信により対応警告状態を表示させる表示制御手段とを有することを特徴とした出入管理システムを提供する。
【0009】
上記構成により、予め登録されている対応関係と異なっているIDカードホルダ等を所持する利用者を検知すると、当該利用者のIDカードホルダ等を警告表示とすることができる。
【0010】
また、上記出入管理システムにおいて、前記判定手段は、前記所定領域に存在する全ての前記表示装置を対応警告状態と判定する。
上記判定手段により、予め登録されている対応関係と異なっているIDカードホルダ等を所持する利用者を検知すると、当該IDカードホルダ等の存在する所定領域内にいる全ての利用者のIDカードホルダ等を警告表示とすることができる。これにより、IDカードホルダ等との対応関係が異なっている不正利用者の近くにいる全ての利用者は、当該不正利用者が付近に存在することに気づくことが容易となるため、当該不正利用者による室内へ進入行為に対して注意を促すことができる。
【0011】
更に、上記出入管理システムにおいて、前記判定手段は、前記表示装置が対応警告状態となった後に、前記利用者識別手段により識別された前記利用者と当該利用者に対応する前記表示装置とが同じ前記所定領域に存在すると判定すると、当該表示装置の対応警告状態を解除する機能を有し、前記表示制御手段は、前記判定手段により対応警告を解除されると、前記表示装置の対応警告状態を解除させる機能を有する。
上記判定手段および表示制御手段により、警告表示となったIDカードホルダ等を装着した利用者は、IDカード操作によりIDカードとIDカードホルダ等との対応関係が、予め登録されている対応情報と一致が確認されることにより、当該警告表示を解除することができる。これにより、IDカードホルダ等との対応関係が適切な利用者は、管理者等による解除操作に頼らずとも、自ら解除操作を行えるため、本出入管理システムを運用する際の管理負荷を低減することができる。一方、IDカードホルダ等との対応関係が適切でない不正利用者は、カード操作を行ったとしても、自ら解除操作を行えず、管理者等による解除操作が必要とされる。したがって、不正利用者の周囲にいる利用者は、最終的に誰が不正利用者であるかについて、衆人監視により気づくことができると共に、当該不正利用者は、IDカードホルダを不正に利用しつづけることができない。
【0012】
また、本発明の好ましい態様では、前記利用者識別手段は、前記利用者に所持されて前記識別コードが記憶されたIDカードと、前記識別コードを読み取るカードリーダとからなる上記出入管理システムとする。
【発明の効果】
【0013】
上記のように、本発明の出入管理システムは、利用者どうしが互いに利用者資格を持っているか否かを確認できる表示部をIDカードからIDカードホルダ等へと分離することにより生じうる、IDカードとIDカードホルダ等との対応関係の異常を衆人監視により検知できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施例に係る出入管理システムの構成と運用イメージを模式的に示した図
【図2】出入制御装置の構成を示すブロック図
【図3】IDカードホルダの構成を示すブロック図
【図4】管理装置の構成を示すブロック図
【図5】ホルダ状態テーブルを示す図
【図6】監視領域テーブルを示す図
【図7】出入制御装置における処理を示すフローチャート
【図8】IDカードホルダを検知した管理装置における処理を示すフローチャート
【図9】認証結果を受信した管理装置における処理を示すフローチャート
【図10】通常状態のIDカードホルダにおける処理を示すフローチャート
【図11】対応警告状態のIDカードホルダにおける処理を示すフローチャート
【図12】入室許可状態または入室不許可状態となったIDカードホルダにおける処理を示すフローチャート
【図13】実施例に係るIDカードホルダの概観図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態として、複数の室を有する建物に本発明に係る出入管理システムを適用した場合の実施例について、図面を参照して説明する。
【0016】
図1は、本実施例に係る出入管理システムの構成と運用イメージを模式的に示した図である。図1において、建物は、各室の利用者が共通に利用する共用通路、特定の利用者に制限された室A、室Bに区画されている。室Aおよび室Bと共用通路の間には、それぞれ電気錠付き扉D1、D2が設けられており、共用通路から室A又は室Bへの入室を制限している。電気錠付き扉D1、D2は、利用者が携行するIDカード3からの情報をカードリーダCR1、CR2にて読み込んだ信号に基づいて、入室資格を有する利用者と認証できた場合にのみ電気錠を解錠するように、出入制御装置M1、M2により制御される。なお、電気錠付き扉D1、D2は、通常時は施錠状態に維持されている。
【0017】
IDカード3は、無表示、入室許可状態、入室不許可状態、対応警告状態の3種類の表示が可能な表示部34を有するIDカードホルダ30に収納されている。なお、IDカードホルダ30は、複数の状態を同時に表示できる。
【0018】
管理装置1は、例えば警備室や管理室などに設置され、通信網2を介して出入制御装置M1、M2および送受信装置R1、R2と接続されており、送受信装置R1、R2を介して無線通信により、IDカードホルダ30に対して表示部34の表示制御を行う。なお、送受信装置R1、R2は、出入口近傍の領域であるC1、C2のみをIDカードホルダ30との無線通信可能領域としている。
【0019】
次に、出入管理システムの概略動作を説明する。図1において、利用者Xは、室Aへの入室資格を有し、利用者Xに対応するIDカード3およびIDカードホルダ30を有する者である。利用者Yは、室Aへの入室資格を有しているが、室Bへの入室資格を有しない者であり、利用者Yに対応するIDカード3およびIDカードホルダ30を有する者である。利用者Zは、室Aへの入室資格を有し、利用者Zに対応するIDカード3を有しているが、利用者Zに対応するIDカードホルダ30を有していない者である。ここで、利用者Zは、利用者Aに対応するIDカードホルダ30を有している者であるとする。そして、利用者Wは、室Aへの入室資格を有し、利用者Wに対応するIDカード3およびIDカードホルダ30を有する者である。
【0020】
利用者Xが、共用通路から室Aに入室する場合について説明する。前提として、共用通路内に所在する利用者に特段の制限をしていないので、IDカードホルダ30の表示部34は基本的に無表示の状態である。このため、室Aへの入室前の利用者Xが所持しているIDカードホルダ30の表示部34は無表示の状態である。
【0021】
先ず、利用者Xが携行するIDカードホルダ30は、IDカードホルダ30ごとに付与されている自己のホルダIDを監視領域C1の内側に入ると、送受信装置R1へ送信する。ホルダIDを受信した送受信装置R1は、当該ホルダIDを通信網2経由で管理装置1に送信する。ホルダIDを受信した管理装置1は、利用者XのIDカードホルダ30が監視領域C1の内側に入ったことを検出する。
【0022】
利用者Xは、電気錠付き扉D1を解錠させるため、所持しているIDカード3を共用通路内の外部壁面に設けられているカードリーダCR1にかざして、IDカード3の入室資格の認証を要求する。IDカード3から認証要求されたカードリーダCR1は、接続されている出入制御装置M1に対し、利用者Xの所持するIDカード3から読取った識別コードを送信する。出入制御装置M1は、受信した識別コードが予め入室許可されている識別コードか否かを照合する。すなわち、予め記憶している入室許可を受けている識別コードと、カードリーダCR1から受信した識別コードとを照合し、合致していると入室資格があると認証する。ここでは、利用者Xは、室Aへの入室資格を有するので、接続されている電気錠付き扉D1に対して解錠信号を送信する。出入制御装置M1は、電気錠付き扉D1の解錠制御をするとともに、入室許可者である旨の認証結果を通信網2から管理装置1へ送信する。
【0023】
電気錠付き扉D1は出入制御装置M1から解錠信号を受けた場合に所定時間だけ電気錠を解錠する。
【0024】
一方、管理装置1は、出入制御装置M1から認証結果を受けると、利用者XのIDカードホルダ30が監視領域C1内に存在しているか否かを確認する。上記のように監視領域C1内における利用者XのIDカードホルダ30の存在を検知している管理装置1は、IDカード3の識別コードに対応するIDカードホルダ30に対して、入室許可の表示命令を送受信装置R1経由で送信し、IDカードホルダ30の表示部34に入室許可状態を一定時間だけ表示させる。なお、IDカード3の識別コードとIDカードホルダ30のホルダIDとの対応関係は、後述するように管理装置1に予め記憶されている。
【0025】
このようにして、利用者Xが、室Aに入室するときは、入室許可者であると認証され、電気錠が一定時間のみ解錠される。また、この際、利用者XのIDカードホルダ30は、入室許可状態を表すランプが点灯する。これにより、利用者Xは、室Aへの入室許可者であることを周囲の利用者に明示することができると共に、利用者X自身も室Aへ入室する権限を有していることを認識することができる。
【0026】
次に、室Bへの入室資格を有さない利用者Yが、室Bに入室を試みた場合の動作について説明する。
【0027】
先ず、利用者Yが携行するIDカードホルダ30は、IDカードホルダ30ごとに付与されている自己のホルダIDを監視領域C2の内側に入ると、送受信装置R2へ送信する。ホルダIDを受信した送受信装置R2は、当該ホルダIDを通信網2経由で管理装置1に送信する。ホルダIDを受信した管理装置1は、利用者YのIDカードホルダ30が監視領域C2の内側に入ったことを検出する。
【0028】
利用者Yは、自らが所持するIDカード3をカードリーダCR2にかざして、IDカード3の入室資格の認証を要求する。カードリーダCR2は、利用者Yの所持するIDカード3に記憶された識別コードを読み取り、出入制御装置M2へ送信する。出入制御装置M2は、カードリーダCR2にて読み取った利用者Yの識別コードを照合し、利用者Yが室Bへの入室資格を有しないため、電気錠は解錠されず、管理装置1に当該認証結果を通信網2経由で送信する。
【0029】
管理装置1は、出入制御装置M2から利用者Yが室Bへの入室不許可者である旨の認証結果を受けると、利用者YのIDカードホルダ30が監視領域C2内に存在しているか否かを確認する。上記のように監視領域C2内における利用者YのIDカードホルダ30の存在を検知している管理装置1は、IDカード3の識別コードに対応するIDカードホルダ30に対して、入室不許可の表示命令を送受信装置R2経由で送信し、IDカードホルダ30の表示部34に入室不許可状態を一定時間だけ表示させる。
【0030】
これにより、利用者Yが室Bへの入室許可を受けていない者であることを周囲の利用者に明示することができると共に、利用者Y自身も室Bへ入室する権限を有していないことを認識することができる。
【0031】
次に、室Aへの入室資格を有する利用者Z、利用者Wが、共用通路側の出入口近傍の所定領域である電気錠付き扉D1前の監視領域C1に存在している場合において、利用者Wのカード操作前に、利用者Zがカード操作して、室Aへの入室を試みた場合の動作について説明する。
【0032】
利用者Zが所持するIDカードホルダ30は、IDカードホルダ30ごとに付与されている自己のホルダIDを監視領域C1の内側に入ると、送受信装置R1へ送信する。ホルダIDを受信した送受信装置R1は、当該ホルダIDを通信網2経由で管理装置1に送信する。上記のように、利用者Zが所持するIDカードホルダ30は、他の利用者Aに対応するIDカードホルダ30である。そのため、ホルダIDを受信した管理装置1は、利用者AのIDカードホルダ30が監視領域C1の内側に入ったことを検知する。
【0033】
利用者Wが携行するIDカードホルダ30も、同様に、IDカードホルダ30ごとに付与されている自己のホルダIDを監視領域C1の内側に入ると、送受信装置R1へ送信する。ホルダIDを受信した送受信装置R1は、当該ホルダIDを通信網2経由で管理装置1に送信する。ホルダIDを受信した管理装置1は、利用者WのIDカードホルダ30が監視領域C1の内側に入ったことを検知する。
【0034】
利用者Zは、自らが所持するIDカード3をカードリーダCR1にかざして、IDカード3の入室資格の認証を要求する。カードリーダCR1は、利用者Zの所持するIDカード3に記憶された識別コードを読み取り、出入制御装置M1へ送信する。出入制御装置M1は、カードリーダCR1にて読み取った利用者Zの識別コードを照合し、利用者Zが室Aへの入室資格を有しているため、電気錠は解錠され、管理装置1に当該認証結果を通信網2経由で送信する。
【0035】
管理装置1は、出入制御装置M1から、利用者Zが室Aへの入室許可者である旨の認証結果を受けると、利用者ZのIDカードホルダ30が監視領域C1内に存在しているか否かを確認する。ここで、上記のように管理装置1は、監視領域C1内において、利用者Aと利用者Wに対応するIDカードホルダ30の存在しか検知していないため、利用者ZのIDカードホルダ30の存在を確認できない。そのため、管理装置1は、監視領域C1内に存在する全てのIDカードホルダ30に対して、通信網2および送受信装置R1経由で対応警告の表示命令を送信する。
【0036】
利用者Z、利用者Wの所持するIDカードホルダ30は、管理装置1から対応警告の表示命令を受信すると、表示部34に対応警告状態を表示する。これにより、利用者Z、利用者Wのいずれかが、他者のIDカードホルダ30を不正に利用している者であることを、利用者Z、利用者Wだけでなく、周囲の利用者も気づくことができる。したがって、利用者Zが、他者のIDカードホルダ30を不正に利用し続けることを制限することができる。
【0037】
次に、利用者Z、利用者WのIDカードホルダ30の表示部34が対応警告状態となった後、利用者WがカードリーダCR1にて、カード操作した場合の動作の概略について説明する。
【0038】
利用者Wは、自らが所持するIDカード3をカードリーダCR1にかざして、IDカード3の入室資格の認証を要求する。カードリーダCR1は、利用者Wの所持するIDカード3に記憶された識別コードを読み取り、出入制御装置M1へ送信する。出入制御装置M1は、カードリーダCR1にて読み取った利用者Wの識別コードを照合し、利用者Wが室Aへの入室資格を有しているため、電気錠は解錠され、管理装置1に当該認証結果を通信網2経由で送信する。
【0039】
管理装置1は、出入制御装置M1から、利用者Wが室Aへの入室許可者である旨の認証結果を受けると、利用者WのIDカードホルダ30が監視領域C1内に存在しているか否かを確認する。上記のように、監視領域C1内における利用者WのIDカードホルダ30の存在を検知している管理装置1は、利用者WのIDカードホルダ30に対して、入室許可の表示命令を送受信装置R1経由で送信し、IDカードホルダ30の表示部34に対応警告状態を消灯させ、入室許可状態を一定時間だけ表示させる。
【0040】
このように、利用者Wは、カード操作により、自ら対応警告状態を解除することができる。そのため、IDカードホルダ30の対応警告状態を解除するのに、管理者等による解除操作を必要としないため、本出入管理システムを運用する際の管理負荷を低減することができる。また、利用者Wの対応警告状態が解除されたことより、監視領域C1内において他者のIDカードホルダ30を不正に利用している者が利用者Zであることを、利用者Z、利用者Wだけでなく、周囲の利用者も気づくことができる。
【0041】
次に、室Aへの入室資格を有する利用者Z、利用者Wが、共用通路側の出入口近傍の所定領域である電気錠付き扉D1前の監視領域C1に存在している場合において、利用者Wのカード操作後、利用者Zがカード操作した場合の動作について説明する。この際、利用者Wは、カード操作後も監視領域C1内に留まっている場合を想定する。
【0042】
上記の場合と同様に、利用者Z、利用者Wの所持するIDカードホルダ30が監視領域C1の内側に入ることにより、管理装置1は、利用者Aおよび利用者WのIDカードホルダ30が監視領域C1の内側に入ったことを検知する。
【0043】
利用者Wがカード操作すると、出入制御装置M1は、利用者Wの認証結果を通信網2経由で管理装置1に送信する。管理装置1は、出入制御装置M1から、認証結果を受けると、利用者ZのIDカードホルダ30が監視領域C1内に存在していることを確認し、認証結果に基づき、利用者WのIDカードホルダ30に対して、入室許可の表示命令を送信する。
【0044】
利用者Wのカード操作後、利用者Zがカード操作すると、出入制御装置M1は、利用者Wの認証結果を通信網2経由で管理装置1に送信する。管理装置1は、監視領域C1内には、利用者Aと利用者Wに対応するIDカードホルダ30の存在しか検知しておらず、利用者Zに対応するIDカードホルダ30の存在を確認できない。そのため、管理装置1は、監視領域C1内に存在する全てのIDカードホルダ30に対して、通信網2および送受信装置R1経由で対応警告の表示命令を送信する。
【0045】
利用者Zの所持するIDカードホルダ30は、管理装置1から対応警告の表示命令を受信すると、表示部34に対応警告状態を表示する。一方、先に入室許可状態となっている利用者Wの所持するIDカードホルダ30は、管理装置1から対応警告の表示命令を受信すると、表示部34に対応警告状態を一定時間だけ表示する。
【0046】
これにより、利用者Zが、他者のIDカードホルダ30を不正に利用している者であることを、利用者Z、利用者Wおよび周囲の利用者が気づくことができる。また、カード操作によって、自らのIDカードホルダ30を所持していることを既に認められている利用者Wは、再度のカード操作を行うことなく、一定時間の経過後、自動的に対応警告状態を解除できる。
【0047】
次に、本実施例の出入管理システムにおける各構成要素について、図2〜図6、図13を参照して詳細に説明する。
【0048】
以下の説明では、電気錠付き扉D1、D2を総称するときは電気錠付き扉Dといい、カードリーダCR1、CR2を総称するときはカードリーダCRといい、出入制御装置M1、M2を総称するときは、出入制御装置Mといい、送受信装置R1、R2を総称するときは送受信装置Rという。
【0049】
なお、図1の構成では、電気錠付き扉Dごとに出入制御装置Mが設けられている。しかし、1つの出入制御装置Mが、複数の電気錠付き扉Dを集中管理するように構成されてもよい。
【0050】
図4は、管理装置1の構成を示している。管理装置1は、コンピュータ機能を有しており、MPU等で構成される制御部40と、管理情報、処理プログラム、各種パラメータ、データ等を記憶する記憶部41と、通信網2に接続され各出入制御装置Mや送受信装置Rと通信を行うLAN通信I/F42とを備えている。
【0051】
記憶部41には、管理情報として、ホルダ状態テーブル46、監視領域テーブル47が記憶されている。
【0052】
ホルダ状態テーブル46は、図5に示されるように、各IDカードホルダ30を個別に識別できるホルダIDと、各IDカードホルダ30が貸与された利用者の識別コードと、各IDカードホルダ30のホルダ状態と、各IDカードホルダ30が検知された監視領域の識別名とを対応づけるテーブルである。各IDカードホルダ30と利用者の識別コードとの対応については、IDカードホルダ30を利用者に貸与する際に管理者によって登録される。
【0053】
ホルダ状態は、「通常状態」「入室許可状態」「入室不許可状態」「対応警告状態」がある。「通常状態」は、正常に入室した利用者の所持するIDカードホルダ30に対して付与される状態である。「入室許可状態」は、カード操作により認証OKと判定され、入室が許可された利用者の所持するIDカードホルダ30に対して付与される状態であり、一定時間経過すると通常状態に戻る。「入室不許可状態」は、カード操作により認証NGと判定され、入室が許可されない利用者の所持するIDカードホルダ30に対して付与される状態であり、一定時間経過すると通常状態に戻る。「対応警告状態」は、IDカード3とIDカードホルダ30との対応関係が、予め登録された対応関係と異なっている疑いのあるIDカードホルダ30に対して付与される状態である。
【0054】
なお、ホルダ状態テーブル46のホルダ状態フィールドへは、複数のホルダ状態を登録することができる。例えば、図5に示すように、ホルダIDが“H101”のIDカードホルダ30のホルダ状態は、「入室許可状態」と「対応警告状態」の2つの状態が登録されている。
【0055】
監視領域テーブル47は、図6に示されるように、各送受信装置Rのアドレスコードと、各送受信装置Rの監視する監視領域Cの識別名と、各監視領域の手前の電気錠付き扉Dを解錠するためのカードリーダCRのアドレスコードとを対応づけるテーブルである。
【0056】
制御部40は、出入制御装置Mおよび送受信装置Rからの情報から記憶部41のホルダ状態テーブル46および監視領域テーブル47を更新する判定手段43と、IDカードホルダ30に対して送受信装置R経由でホルダ状態の表示制御をする表示制御手段44とを有している。
【0057】
判定手段43は、LAN通信I/F42経由で出入制御装置Mから受信する認証結果及び、対応するIDカードホルダ30が検知された監視領域Cに基づいて、ホルダ状態テーブル46のホルダ状態を更新する。すなわち、出入制御装置Mから受信した認証結果が認証OKとなった利用者の識別コードであり、対応するIDカードホルダ30が同一の監視領域Cに所在していれば、ホルダ状態テーブル46の該当する利用者の識別コードに対応するホルダ状態を入室許可状態に更新する。他方、出入制御装置Mから受信した認証結果が認証NGとなった利用者の識別コードであれば、ホルダ状態テーブル46の該当する利用者識別コードに対応するホルダ状態を入室不許可状態に更新する。
【0058】
なお、判定手段43は、LAN通信I/F42経由でIDカードホルダ30が監視領域Cに入った又は出たことを送受信装置Rが検出した情報を受信し、ホルダ状態テーブル46に検知された監視領域の識別名を登録している。
【0059】
また、判定手段43は、出入制御装置Mから受信した認証結果に含まれる利用者の識別コードに対応するIDカードホルダ30が、当該識別コードを読み込んだカードリーダCRに対応する監視領域C内に存在しているか否かを判定する。当該識別コードに該当するIDカードホルダ30が、監視領域C内に存在しなければ、当該監視領域C内に存在する全てのIDカードホルダ30について、ホルダ状態テーブル46のホルダ状態を対応警告状態に更新する。なお、この際、当該IDカードホルダ30のホルダ状態が、入室許可状態または入室不許可状態であったならば、判定手段43は、一定時間だけ対応警告状態とする。
【0060】
表示制御手段44は、ホルダ状態テーブル46を常時参照し、ホルダ状態が変化するとLAN通信I/Fおよび送受信装置R経由で状態変化をしたIDカードホルダ30の表示部34の制御をする。例えば、ホルダ状態が通常状態から入室許可状態に変化すると、当該IDカードホルダ30に対して、入室許可表示の指令を送信する。あるいは、通常状態から対応警告状態に変化すると、当該IDカードホルダ30に対して、警告表示の指令を送信する。
【0061】
次に、送受信装置Rは、管理装置1とは有線接続されており、IDカードホルダ30の通信I/F33と無線通信するインターフェースをもっており、管理装置1からの表示指令やIDカードホルダ30からのホルダIDなどの信号を中継する。また、送受信装置Rは、出入口付近の監視領域C内にIDカードホルダ30が入ると無線通信を開始し、IDカードホルダ30と無線通信できたことをもってIDカードホルダ30が監視領域Cに入ったと判断し、無線通信不能になったことをもってIDカードホルダ30が監視領域Cから出たと判断し、管理装置1へIDカードホルダ30の検知信号を送信する。
【0062】
図2は、出入制御装置Mの構成を示している。出入制御装置Mは、コンピュータ機能を有しており、MPU等で構成され出入制御装置M全体を各種プログラムに基づいて制御する制御部20と、各出入制御装置Mを識別するアドレスコード、管理情報、処理プログラム、各種パラメータ、データ等を記憶する記憶部21と、管理対象のカードリーダCRに接続され通信を行う認証装置I/F25と、通信網2に接続され他の出入制御装置Mや管理装置1と通信を行うLAN通信I/F22と、電気錠付き扉Dと接続される電気錠I/F27を備えている。
【0063】
記憶部21には、管理情報として、IDテーブル26を記憶している。IDテーブル26は、出入制御装置Mが管理している室への入室資格を有する利用者が携帯するIDカードの識別コードを全て記憶したテーブルである。IDテーブル26は、カードリーダCRで読み取られた識別コードの照合に利用される。
【0064】
制御部20は、カードリーダCRから受信したIDカード3の識別コードとIDテーブル26に記憶されている識別コードとを照合し、識別コードが合致しているか否かにより利用者の通行可否を判定する判定手段23を有する。なお、判定手段23は、当該判定の結果である認証結果を、LAN通信I/F22を介して管理装置1に送信する。また、制御部20は、判定手段23にて利用者の通行を許可したときに、電気錠I/F27を介して電気錠付き扉Dを解錠させる電気錠制御手段24を備えている。
【0065】
図13は、IDカードホルダ30の概観図を示している。IDカード3は、IDカードホルダ30の横部から挿入され、IDカードホルダ30内部に設けられたカード収納スペース38内に収納される。IDカードホルダ30は、IDカードホルダ30の上部に取り付けられたクリップ39により、他の利用者が表示部34を視認できるように利用者の衣服等に装着される。
【0066】
図3は、IDカードホルダ30の構成を示している。IDカードホルダ30はコンピュータの機能を有しており、MPU等から構成されIDカードホルダ30の全体を制御する制御部31と、各IDカードホルダ30を識別するホルダID、処理プログラム、各種パラメータなどを記憶する記憶部32と、送受信装置Rと無線通信するための通信I/F33と、LED等で構成される表示部34とを備えている。
【0067】
IDカード3は、携行する利用者を識別可能な識別コードを記憶している非接触ICカードである。なお、利用者を識別可能なカードであれば、磁気カード、無線タグ等のいかなるカードを用いても良い。システムの利便性の観点からは、本実施例では非接触式のICカードを用いている。
【0068】
次に、図7〜図10のフローチャートを参照して、出入管理システムの処理を説明する。
【0069】
まず、出入管理装置Mで行われる処理について図7のフローチャートを参照して説明する。図7に示すように、出入制御装置Mの制御部20は、カードリーダCRより認証要求を受信したか否かを判定する(S10)。認証要求を受信していなければ(S10−No)、ステップS10を繰り返す。利用者がカード操作を行うと、カードリーダCRが識別コードを読み取って制御装置Mに送信し、これによりステップS10の判定がYesになる。そして、判定手段23が、認証要求に含まれる識別コードを照合する(S12)。ここで、判定手段23は、記憶部21のIDテーブル26を参照し、受信した識別コードが登録されているか否かを照合する。
【0070】
受信された識別コードと一致する識別コードがIDテーブル26に登録されている場合(ステップS14−Yes)、認証結果がOKとなり、解錠許可の処理が行われる(S16)。解錠許可の処理では、出入制御装置Mは解錠制御を行う。解錠制御では、電気錠制御手段24が機能し、電気錠付き扉Dに解錠信号が送られる。電気錠付き扉Dでは、解錠信号に従い電気錠が解錠される。また、制御部20は、LAN通信I/F22を介して管理装置1に認証結果を送る。S16にて解錠許可の処理が行われたときは、ENDに進み、出入制御装置Mの処理を終了する。
【0071】
ステップS12で、受信された識別コードがIDテーブル26中の識別コードと一致しない場合、認証結果がNGとなり(S14−No)、解錠不許可の処理が行われる(S18)。解錠不許可の処理では、電気錠は解錠されず、制御部20によりLAN通信I/F22を介して管理装置1に認証結果が送信される。S18にて解錠不許可の処理が行われたときは、ENDに進み、出入制御装置Mの処理を終了する。
【0072】
次に、管理装置1で行われる処理について、図8、図9のフローチャートを参照して説明する。図8は、監視領域CにおいてIDカードホルダ30を検知した管理装置1における処理を示すフローチャートである。
【0073】
なお、管理装置1は、判定手段43において以下のようなIDカードホルダ30の検出処理を行う。IDカードホルダ30が送受信装置Rとの通信可能な範囲である監視領域Cに入った場合、IDカードホルダ30は、送受信装置Rに自らのホルダIDを送信する。ホルダIDを受信した送受信装置Rは、当該ホルダIDと送受信装置R自身のアドレスコードとを検出信号として管理装置1に送信する。管理装置1は、検出信号を受信すると、判定手段43にて、記憶部41に記憶されている監視領域テーブル47を参照し、検出信号に含まれる送受信装置Rのアドレスコードに対応する監視領域Cにて、検出信号に含まれるホルダIDに対応するIDカードホルダ30を検出したと判定する。
【0074】
監視領域CにおいてIDカードホルダ30を検知した場合、進入処理が行われる(S20)。進入処理では、判定手段43は、ホルダ状態テーブル46を参照し、検知されたホルダIDにおける検知された監視領域フィールドに、当該検知された監視領域Cの識別名を書き込む。
【0075】
ステップS22にて進入処理を実施した場合、判定手段43は、IDカードホルダ30が、検知された監視領域C外へ移動したか否かを判定し続ける(S22)。すなわち、判定手段43は、送受信装置RとIDカードホルダ30との通信状態を監視し、両者における通信が遮断した場合、IDカードホルダ30が監視領域Cの外側へ移動したと判定する。具体的には、判定手段43は、送受信装置Rを介してIDカードホルダ30に定期的にポーリングし、IDカードホルダ30からのレスポンスを得られなかった場合に、IDカードホルダ30が監視領域Cの外へ移動したと判定する。または、送受信装置RがIDカードホルダ30に定期的にポーリングし、IDカードホルダ30からのレスポンスを得られなかった場合に、当該結果を管理装置1に対して送信することによって、判定手段43はIDカードホルダ30が監視領域Cの外側へ移動したと判定してもよい。
【0076】
IDカードホルダ30が、検知された監視領域C外へ移動したと判定した場合(S22−Yes)、退出処理が行われる(S24)。退出処理では、判定手段43は、ホルダ状態テーブル46を参照し、当該IDカードホルダ30のホルダIDにおける検知された監視領域フィールドを、クリアする。
【0077】
S24にて退出処理が行われたときは、ENDに進み、処理を終了する。
【0078】
図9は、出入制御装置Mから認証結果を受信した管理装置1における処理を示すフローチャートである。
【0079】
出入制御装置Mから認証結果を受信すると、判定手段43は、認証結果に含まれる利用者の識別コードに対応するIDカードホルダ30が、認証結果に含まれるカードリーダCR近傍の監視領域C内に存在しているか否かを判定する(S30)。すなわち、判定手段43は、認証結果からカードリーダCRのアドレスコードを読み出し、監視領域テーブル47を参照することにより、当該アドレスコードに対応する監視領域Cの識別名を読み出す。そして、判定手段43は、ホルダ状態テーブル46を参照し、当該監視領域C内に認証結果から読み出した識別コードに対応するホルダIDが存在するか否かを判定する。
【0080】
認証結果に含まれる識別コードに対応するIDカードホルダ30が、認証結果に含まれるカードリーダCR近傍の監視領域C内に存在していない判定された場合、(S30−No)、対応警告状態への移行処理が行われる(S32)。対応警告状態への移行処理では、判定手段34は、ホルダ状態テーブル46を参照し、当該監視領域C内に存在している全てのIDカードホルダ30のホルダ状態フィールドを、「対応警告状態」と更新する。また、表示制御手段44は、ホルダ状態テーブル46を常時参照しており、当該ホルダIDに対応するレコードの検知された監視領域の識別名を読み出す。次に、表示制御手段44は、監視領域テーブル47を参照し、読み出した監視領域の識別名に対応する送受信装置Rのアドレスコードを読み出し、LAN通信I/F42を介して、読み出したアドレスコードの送受信装置Rに対して、当該ホルダIDのIDカードホルダ30宛の「対応警告の表示命令」を送信する。管理装置1から対応警告の表示命令を受信した送受信装置Rは、宛先となるホルダIDを確認し、当該ホルダIDのIDカードホルダ30に対して、「対応警告の表示命令」を送信する。
【0081】
ステップS30にて、認証結果に含まれる識別コードに対応するIDカードホルダ30が、認証結果に含まれるカードリーダCR近傍の監視領域C内に存在していると判定された場合、(S30−Yes)、出入制御装置Mから受信した認証結果が認証OKであるか否かを判定する(S34)。認証結果が認証OKであると判定された場合(S34−Yes)、入室許可状態への移行処理が行われる(S36)。入室許可状態への移行処理では、判定手段43は、ホルダ状態テーブル46を参照し、ステップS34で認証OKと判定された利用者の識別コードに対応するレコードのホルダ状態フィールドを「入室許可状態」へと更新する。そして、表示制御手段44は、LAN通信I/F42を介して、当該識別コードに対応するホルダIDのIDカードホルダ30宛に「入室許可の表示命令」を送信する。
【0082】
ここでは、表示制御手段44により、具体的に次のような処理がなされる。まず、表示制御手段44は、ステップS34で認証OKと判定された利用者の識別コードに対応するホルダIDおよび検知された監視領域Cの識別名を読み出す。次に、表示制御手段44は、監視領域テーブル47を参照し、読み出した監視領域Cの識別名に対応する送受信装置Rのアドレスコードを読み出す。最後に、表示制御手段44は、LAN通信I/F42を介して、当該アドレスコードの送受信装置Rに対し、当該ホルダIDのIDカードホルダ30宛の「入室許可の表示命令」を送信する。なお、管理装置1から入室許可の表示命令を受信した送受信装置Rは、宛先となるホルダIDを確認し、当該ホルダIDのIDカードホルダ30に対して、「入室許可の表示命令」を送信する。
【0083】
ステップS34にて、認証結果が認証NGであると判定された場合(S34−No)、入室不許可状態への移行処理が行われる(S38)。入室不許可状態への移行処理では、判定手段43は、ホルダ状態テーブル46を参照し、ステップS34で認証NGと判定された利用者の識別コードに対応するレコードのホルダ状態フィールドを「入室不許可状態」へと更新する。そして、表示制御手段44は、LAN通信I/F42を介して、当該識別コードに対応するホルダIDのIDカードホルダ30宛に「入室不許可の表示命令」を送信する。なお、管理装置1から入室不許可の表示命令を受信した送受信装置Rは、宛先となるホルダIDを確認し、当該ホルダIDのIDカードホルダ30に対して、「入室不許可の表示命令」を送信する。
【0084】
ステップS32にて対応警告状態への移行処理を実施した場合、ステップS36にて入室許可状態への移行処理を実施した場合、またはステップS38にて入室不許可状態への移行処理を実施した場合、ENDに進み、処理を終了する。
【0085】
次に、通常状態のIDカードホルダ30で行われる処理について図10のフローチャートを参照して説明する。
図10に示すように、IDカードホルダ30の制御部31は、IDカードホルダ30が監視領域Cの内側に移動したか否かを判定する(S60)。すなわち、制御部31は、送受信装置Rとの間における通信の状態を監視し、送受信装置Rとの通信が開始された場合、IDカードホルダ30が監視領域Cの内側に移動したと判定する。
【0086】
IDカードホルダ30が監視領域Cの内側に移動したと判定された場合(S60−Yes)、進入処理が行われる(S62)。進入処理では、制御部31は、記憶部32に保存されているホルダIDを送受信装置Rに送信し、また、記憶部32に保存されている監視領域内フラグをONとする。なお、IDカードホルダ30が監視領域Cの内側に移動しない場合(S60−No)、ステップS60の処理を繰り返す。
【0087】
制御部31は、監視領域内フラグがONとなったことを受けて、送受信装置Rからホルダ状態の表示命令を受信したか否かを判定する(S64)。送受信装置Rからホルダ状態の表示命令を受信せずに(S64−No)、当該監視領域Cの外側への移動を判定されない(S66−No)間、ステップS64とステップS66の処理を繰り返す。
【0088】
一方、送受信装置Rからホルダ状態の表示命令を受信せずに(S64−No)、当該監視領域Cの外側への移動を判定した場合(S66−Yes)、退出処理が行われる(S68)。退出処理では、制御部31は、記憶部32に保存されている監視領域内フラグをOFFとする。退出処理が行われると、ステップS60に戻る。
【0089】
ステップ64にて、ホルダ状態の表示命令を受信したと判定した場合(S64−Yes)、制御部31は、当該表示命令が「入室許可の表示命令」であるか否かを判定する(S70)。当該変更情報が、「入室許可の表示命令」である場合(S70−Yes)、記憶部32に保存されている入室許可状態を示すフラグをONとし、表示部34に対して「入室許可状態」を表すランプを点灯させる(S72)。
【0090】
ステップ64にて受信したホルダ状態の表示命令が「入室不許可の表示命令」である場合(S70−No、S74−Yes)、制御部31は、記憶部32に保存されている入室不許可状態を示すフラグをONとし、表示部34に対して「入室不許可状態」を表すランプを点灯させる(S76)。
【0091】
ステップ64にて受信したホルダ状態の表示命令が「対応警告の表示命令」である場合(S70−No、S74−No)、制御部35は、記憶部32に保存されている対応警告状態を示すフラグをONとし、表示部34に対して「対応警告状態」を表すランプを点灯させる(S78)。
【0092】
ステップS72、ステップS76、ステップS78にて、それぞれの状態を表すランプが点灯されると処理を終了する。
【0093】
次に、現在のホルダ状態が「対応警告状態」である場合におけるIDカードホルダ30で行われる処理について図11のフローチャートを参照して説明する。
【0094】
図11に示すように、IDカードホルダ30の制御部31は、管理装置1から送受信装置Rを介して、「入室許可の表示命令」または「入室不許可の表示命令」を受信したか否かを判定し続ける(S80)。
【0095】
制御部31は、「入室許可の表示命令」または「入室不許可の表示命令」を受信したと判定すると(S80−Yes)、解除処理を行う(S82)。解除処理では、制御部31は、記憶部32に保存されている対応警告状態を示すフラグをOFFとし、表示部34に対して「対応警告状態」を表すランプを消灯させる。また、ステップS80にて受信した表示命令が、「入室許可の表示命令」である場合、入室許可状態を示すフラグをONとし、表示部34に対して「入室許可状態」を表すランプを点灯させる。一方、ステップS80にて受信した表示命令が、「入室不許可の表示命令」である場合、入室不許可状態を示すフラグをONとし、表示部34に対して「入室不許可状態」を表すランプを点灯させる。
【0096】
ステップS82にて、解除処理が行われると、ENDに進み処理を終了する。
【0097】
次に、現在のホルダ状態が「入室許可状態」または「入室不許可状態」となった場合におけるIDカードホルダ30で行われる処理について図12のフローチャートを参照して説明する。
【0098】
図12に示すように、IDカードホルダ30の制御部31は、「入室許可状態」または「入室不許可状態」となった場合、タイマをスタートさせ、当該タイマがIDカードホルダ30の記憶部32に記憶されているランプ点灯時間を超過したか否かを判定する(S90)。
【0099】
タイマがランプ点灯時間を超過したしたと判定した場合(S90−Yes)、制御部31は通常状態への移行処理を行う(S92)。通常状態への移行処理では、制御部31は、記憶部32に保存されている入室許可状態または入室不許可状態を示すフラグをOFFとし、表示部34に対して「入室許可状態」または「入室不許可状態」を表すランプを消灯させる。
【0100】
ステップS90にて、タイマがランプ点灯時間を超過していないと判定されている間(S90−No)、制御部31は、管理装置1から送受信装置Rを介して、「対応警告の表示命令」を受信したか否かを判定する(S94)。
【0101】
制御部31は、「対応警告の表示命令」を受信しないと判定すると(S94−No)、ステップS90に戻る。制御部31は、「対応警告の表示命令」を受信したと判定すると(S94−Yes)、対応警告状態への移行処理を行う(S96)。対応警告状態への移行処理では、制御部31は、記憶部32に保存されている対応警告状態を示すフラグを一定時間ONとし、表示部34に対して「対応警告状態」を表すランプを一定時間点灯させる。
【0102】
ステップS92にて、通常状態への移行処理が行われると、ENDに進み処理を終了する。
【0103】
以上に本発明の実施の形態について説明した。
本実施の形態では、管理装置1、出入制御装置M、カードリーダCRおよび送受信装置Rが、本発明の利用者管理装置として機能している。また、IDカードホルダ30が、本発明の表示装置として機能している。また、送受信装置Rが、本発明の所在検出装置として機能している。また、管理装置1の記憶部41が、本発明の記憶部として機能している。また、IDカード3およびカードリーダCRが、本発明の利用者識別手段として機能している。また、管理装置1の判定手段43が、本発明の判定手段として機能している。また、管理装置1の表示制御手段44が、本発明の表示制御手段として機能している。
【0104】
本発明は、上記の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した技術的思想の範囲内で、更に種々の異なる実施例で実施されてもよいものである。また、実施例に記載した効果は、これに限定されるものではない。
【0105】
上記実施例では、認証結果に基づいて、IDカードホルダ30の表示部34に入室許可状態または入室不許可状態を示すランプを一定時間だけ点灯させているが、これに限定されるものではない。例えば、室A、室Bの室内にも送受信装置Rを更に設置し、管理装置1およびIDカードホルダ30は、利用者が入室したか否かを検知する。そして、当該室内では、当該利用者のIDカードホルダ30の表示部34に対して、入室許可状態または入室不許可状態を示すランプを点灯させたままにしてもよい。これにより、室内にいる周囲の利用者に対して、当該利用者が入室許可者であることを常に明示することができる。
【0106】
上記実施例では、IDカードホルダ30は、ステップS78にて対応警告状態を示すランプのみを点灯させているが、これに限定されず、更にブザー等を鳴動させてもよい。この場合、IDカードホルダ30には、表示部34と共にブザー部が設けられ、制御部31と接続される。これにより、他の利用者のIDカードホルダの不正所持する利用者が、当該IDカードホルダ30を身体に装着していない場合も、周囲の利用者は警告音によって検知することができる。
【0107】
上記実施例では、利用者が所持するIDカードホルダ30の表示部34により、入室許可状態、入室不許可状態、対応警告状態を表示させているが、これに限定されるものではない。例えば、入館バッジや社員バッジ等に表示部を設けることにより、入室許可状態等を表示させてもよい。
【0108】
上記実施例では、監視領域Cを送受信装置RがIDカードホルダ30との通信できる範囲の領域としているが、これに限定されるものではない。例えば、監視領域Cを、送受信装置Rによって検出されるIDカードホルダ30の電波強度が、所定閾値以上である範囲の領域としてもよい。これにより、当該閾値を調整することで、監視領域Cの範囲を、本発明を実施する建物環境等に応じて適切な範囲へと調整することができる。
【0109】
上記実施例では、IDカード3からカードリーダCRにより利用者の識別コードを取得したが、これに限定されず、IDカード以外の対象から識別コードを取得してもよい。例えば、個人の指紋、掌紋、声紋、虹彩等の利用者自身の生体情報を取得し、これを個人を識別する識別コードとしてもよい。このとき、生体情報が適当な識別コードに変換されてよいことはもちろんである。この他にも例えば、カメラ等により利用者の画像を取得し、取得した画像から利用者の顔画像を抽出し、当該顔画像と予め識別コードと対応付けて登録されている利用者の顔画像とを照合することにより、利用者の識別コードを取得しても良い。
【0110】
また、上記のIDカードや生体情報等から、利用者を識別するための識別コードを複数取得し、これらを併用してもよい。例えば、IDカード3の識別コードと、識別コードとしての生体情報とが併用されてもよい。この場合、カードリーダCRと共に指紋読取装置等が設けられる。
【0111】
上記実施例では、送受信装置Rによって監視領域Cの内側に存在するIDカードホルダ30を検出し、更にIDカードホルダ30と非接触通信を行っているが、これに限定されるものではない。例えば、管理装置1に接続され、監視領域Cを含む領域を撮影している監視カメラによって、監視領域Cの内側に存在するIDカードホルダ30を検出してもよい。そして、送受信装置Rとは異なる非接触通信装置によってIDカードホルダ30との非接触通信を行ってもよい。
【符号の説明】
【0112】
X、Y、Z、W・・・利用者
D・・・電気錠付き扉
CR・・・カードリーダ
M・・・出入制御装置
R・・・送受信装置
C・・・監視領域
1・・・管理装置
2・・・通信網
3・・・IDカード
20・・・制御部
21・・・記憶部
22・・・LAN通信I/F
23・・・判定手段
24・・・電気錠制御手段
25・・・認証装置I/F
26・・・IDテーブル
27・・・電気錠I/F
30・・・IDカードホルダ
31・・・制御部
32・・・記憶部
33・・・通信I/F
34・・・表示部
35・・・表示制御手段
40・・・制御部
41・・・記憶部
42・・・LAN通信I/F
43・・・判定手段
44・・・表示制御手段
46・・・ホルダ状態テーブル
47・・・監視領域テーブル


【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者管理装置と、利用者に装着され前記利用者管理装置からの制御信号により表示を変更する表示装置と、出入口近傍の所定領域に前記表示装置が存在していることを検出し前記利用者管理装置に通知する所在検出装置とから構成され、前記表示装置の表示を利用者が相互に確認する衆人監視機能付きの出入管理システムであって、
前記利用者管理装置は、
前記利用者と前記表示装置との対応関係を示す対応情報が保存されている記憶部と、
各利用者に一意に付与された識別コードにより前記利用者を識別する利用者識別手段と、
前記利用者識別手段により識別された前記利用者と同じ所定領域に前記利用者と前記対応関係を有する表示装置が検出されなければ、当該所定領域に存在する前記表示装置について対応警告状態と判定する判定手段と、
前記判定手段により対応警告状態と判定された前記表示装置に非接触通信により対応警告状態を表示させる表示制御手段とを有することを特徴とした出入管理システム。
【請求項2】
前記判定手段は、前記所定領域に存在する全ての前記表示装置を対応警告状態と判定する請求項1に記載の出入管理システム。
【請求項3】
前記判定手段は、前記表示装置が対応警告状態となった後に、前記利用者識別手段により識別された前記利用者と当該利用者に対応する前記表示装置とが同じ前記所定領域に存在すると判定すると、当該表示装置の対応警告状態を解除する機能を有し、
前記表示制御手段は、前記判定手段により対応警告を解除されると、前記表示装置の対応警告状態を解除させる機能を有する請求項2に記載の出入管理システム。
【請求項4】
前記利用者識別手段は、前記利用者に所持されて前記識別コードが記憶されたIDカードと、前記識別コードを読み取るカードリーダとからなる請求項1から請求項3の何れか1項に記載の出入管理システム。


【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図1】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2011−210217(P2011−210217A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−80076(P2010−80076)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000108085)セコム株式会社 (596)
【Fターム(参考)】