説明

分波器及び弾性表面波フィルタ

使用温度範囲において、十分な大きさの減衰量及び帯域幅を得ることを可能とする分波器を提供する。 通過帯域が相対的に低く、かつ第1の温度特性改善薄膜が設けられている第1のフィルタ11と、通過帯域が相対的に高く、第2の温度特性改善薄膜が設けられている第2のフィルタ12とを備え、第1のフィルタの周波数温度係数が第2のフィルタの周波数温度係数よりも大きくなるように第1,第2の温度特性改善薄膜の膜厚が異ならされている、分波器1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通過帯域が異なる第1,第2のフィルタを接続してなる分波器及び該分波器に用いられる弾性表面波フィルタに関し、より詳細には、温度特性が改善された構造を備える分波器及び該分波器に用いられる弾性表面波フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯電話機などの通信機において、通過帯域が異なる第1,第2のフィルタを接続してなる分波器が広く用いられている。例えば、下記の特許文献1には、図17に示す回路構成の分波器が開示されている。
【0003】
分波器101では、入力端子102に第1,第2のフィルタ103,104が接続されている。第1のフィルタ103は、直列腕共振子S01と、並列腕共振子P01とを有し、第2のフィルタ104は、直列腕共振子S02と、並列腕共振子P02とを有する。ここでは、直列腕共振子S01,S02及び並列腕共振子P01,P02は、いずれも弾性表面波共振子で構成されている。すなわち、2個の弾性表面波共振子を接続してなる弾性表面波フィルタにより、第1のフィルタ103及び第2のフィルタ104がそれぞれ構成されている。
【0004】
また、第1のフィルタ103の通過帯域は、第2のフィルタ104の通過帯域よりも低くされており、送信側フィルタとして用いられている。また、第2のフィルタ104は受信側フィルタとして用いられている。
【0005】
また、特許文献1に記載の分波器では、第1,第2のフィルタ103,104においてインダクタンス素子や容量素子(図示せず)が接続され、第1,第2のフィルタ103,104の整合が図られている。
【0006】
他方、下記の特許文献2には、圧電基板上に電極が形成されている弾性表面波装置において、圧電基板を構成する圧電単結晶と周波数温度特性の極性が逆であるSiO膜を形成することにより温度特性を改善した構成が開示されている。
【特許文献1】特開平5−167388号公報
【特許文献2】特開平2−37815号公報
【発明の開示】
【0007】
ところで、送信側フィルタの通過帯域と、受信側フィルタの通過帯域の間隔が極端に狭い通信装置に用いられる分波器に、特許文献1に記載の分波器101を用いた場合、第1,第2のフィルタ103,104の温度特性が十分でないため、使用温度範囲で規格特性を満足できないことがあった。ここで、規格特性とは、分波器の第1,第2のフィルタ103,104における帯域内損失や減衰量などの周波数特性をいうものとする。
【0008】
また、このような用途では、特許文献2に記載のように、圧電基板上に温度特性を改善するためにSiO膜を形成しただけでは、分波器の上記規格特性を十分に確保することが困難であった。
【0009】
具体的には、SiO膜の形成により周波数温度係数を小さくした分波器を用いたとしても、例えばPCS系通信システムの場合のように、送信側の通過帯域が1850〜1910MHz、受信側の通過帯域が1930〜1990MHzであり、かつ相手側の通過帯域における減衰量を42dB以上確保しなければならない用途に用いられると、規格特性を満たすことができないという問題があった。
【0010】
すなわち、周波数温度係数を小さくするために、SiO膜の厚みを厚くすると、周波数温度係数は0に近づくものの、SiO膜の膜厚の増大により電気機械結合係数が小さくなり、帯域幅が狭くならざるを得なかった。
【0011】
また、この種の分波器を構成するフィルタとしては、ラダー型フィルタがよく用いられている。ラダー型フィルタにおいて帯域幅を広げる方法として、ラダー型フィルタを構成している並列腕共振子に直列に付加されるインダクタンス素子のインダクタンス値を大きくし、帯域幅を低域側において広げる方法が知られている。この方法は、分波器の通過帯域の相対的に低い第1のフィルタ103において有効な帯域幅拡大方法である。しかしながら、相対的に通過帯域が高い第2のフィルタ104側においては通過帯域の低域側における減衰量、すなわち相手方のフィルタ103の通過帯域における減衰量が劣化するため、この方法を用いることはできなかった。また、分波器の相対的に通過帯域が高い第2のフィルタ104の通過帯域を高域側において広げる方法としては、ラダー型フィルタの直列腕共振子に並列にインダクタンス素子を付加することにより帯域幅を広げる方法が挙げられる。しかしながら、この方法では、ラダー型フィルタの高域側を広げるために付加された上記インダクタンス素子同士が相互誘導を引き起し、十分な減衰特性を確保することが困難であった。
【0012】
上記のように十分な通過帯域及び減衰特性が要求される分波器では、単に周波数温度係数TCFを小さくするだけでは、必要な通過帯域幅と減衰量とを使用温度範囲で満足することは困難であった。
【0013】
本発明の目的は、上述した従来技術の現状に鑑み、2つの通過帯域間の間隔が狭い通信装置に用いられる分波器においても、使用温度範囲内において十分な大きさの帯域幅及び減衰量を確保することを可能とする分波器、並びに該分波器に用いるのに適した弾性表面波フィルタを提供することにある。
【0014】
本発明に係る分波器は、通過帯域が相対的に低く、かつ第1の温度特性改善薄膜を有する第1のフィルタと、通過帯域が相対的に高く、かつ第2の温度特性改善薄膜を有する第2のフィルタとを備え、第1のフィルタの周波数温度係数が第2のフィルタの周波数温度係数よりも大きくなるように、第1,第2の温度特性改善薄膜の膜厚が異ならされていることを特徴とする。
【0015】
本発明に係る分波器のある特定の局面では、前記第1,第2のフィルタが弾性表面波フィルタにより構成されている。
【0016】
また、本発明に係る分波器の他の特定の局面では、前記第1,第2のフィルタが、圧電薄膜共振子フィルタである。
【0017】
本発明に係る分波器のさらに別の特定の局面では、前記弾性表面波フィルタが、LiTaO基板もしくはLiNbO基板からなる圧電基板を用いて構成されており、前記第1,第2の温度特性改善薄膜が前記圧電基板上に形成されたSiO膜により構成されている。
【0018】
本発明に係る分波器のさらに他の特定の局面では、前記第1のフィルタに設けられているSiO膜の厚みが、前記第2のフィルタにおいて設けられているSiO膜の厚みより厚くされている。
【0019】
本発明に係る分波器さらに別の特定の局面では、第1のフィルタの波長をλ1としたとき、前記第1のフィルタのSiO膜の膜厚が、0.18λ1〜0.38λ1の範囲とされている。
【0020】
本発明に係る分波器のさらに他の特定の局面では、第2のフィルタの波長をλ2としたときに、前記第2のフィルタに設けられているSiO膜の膜厚が、0.08λ2〜0.28λ2の範囲とされている。
【0021】
本発明に係る分波器のさらに他の特定の局面では、前記第1,第2のフィルタが、直列腕共振子及び並列腕共振子を有するラダー型フィルタである。
本発明に係る分波器のさらに別の特定の局面によれば、前記第1のフィルタを構成しているラダー型フィルタの並列腕共振子に直列に接続されたインダクタンスがさらに備えられる。
【0022】
本発明に係る分波器のさらに別の特定の局面では、前記第2のフィルタを構成しているラダー型フィルタの直列腕共振子に並列に接続されたインダクタンスがさらに備えられる。
【0023】
本発明に係る分波器のさらに他の特定の局面では、前記第1,第2のフィルタが、それぞれ、異なる圧電基板上に構成されており、第1,第2のフィルタが、別のチップ部品として構成されている。
【0024】
本発明に係る分波器のさらに他の特定の局面では、前記第1,第2のフィルタが、同一圧電基板を用いて単一のチップ部品として構成されている。
本発明に係る弾性表面波フィルタは、分波器の送信側フィルタとして用いられる弾性表面波フィルタであって、該弾性表面波フィルタの周波数温度係数が、温度変化に対して正であるように構成されていることを特徴とする。
【0025】
本発明に係る弾性表面波フィルタのある特定の局面では、LiTaOもしくはLiNbO基板からなる圧電基板と、該圧電基板上に形成された電極と、前記圧電基板上の電極を覆うように形成されたSiO膜からなる温度特性改善薄膜とを備え、電極周期により決定される波長をλとしたときに、温度変化に対して正の周波数温度係数を有するように前記SiO膜の膜厚が0.3λ〜0.38λの範囲とされている。
【0026】
本発明に係る分波器では、通過帯域が相対的に低い第1のフィルタの周波数温度係数が第2のフィルタの周波数温度係数よりも大きくなるように、第1,第2のフィルタの温度特性改善薄膜の膜厚が異ならされている。そのため、第1,第2のフィルタの通過帯域の周波数間隔が狭い場合、通過帯域が相対的に低い第1のフィルタでは、通過帯域高域側における周波数ばらつきが大きくなり、第2のフィルタ側においては通過帯域の低域側における周波数ばらつきが大きくなり、製造上の歩留まりが悪化するおそれがあるのに対し、本発明によれば、第1のフィルタにおいては、通過帯域高域側における周波数温度特性の変動幅が小さくなり、第2のフィルタにおいては、通過帯域低域側における温度特性の変動幅を小さくすることができる。従って、使用温度範囲にわたり、十分な通過帯域幅及び減衰量を確保することが可能となる。
【0027】
よって、本発明によれば、受信側周波数と受信側周波数の周波数間隔が狭い用途に用いられる分波器においても、使用温度範囲にわたって、十分な規格特性を満足し得る分波器を提供することが可能となる。
【0028】
第1,第2のフィルタが弾性表面波フィルタにより構成されている場合には、本発明の分波器の小型化を進めることができる。
同様に、第1,2のフィルタが圧電薄膜共振子フィルタにより構成されている場合にも、分波器の小型化を進めることができる。
【0029】
弾性表面波フィルタが、LiTaO基板もしくはLiNbO基板からなる圧電基板を用いて構成されており、第1,第2の温度特性改善薄膜が上記圧電基板上に形成されたSiO膜である場合には、簡単な構成で温度特性を効果的に改善することができる。
【0030】
第1のフィルタに設けられているSiO膜の厚みが、第2のフィルタにおいて設けられているSiO膜の厚みより厚くされている場合には、SiO膜の厚みを変更するだけで、第1,2のフィルタの温度特性を容易に調整することができる。
【0031】
第1のフィルタのSiO膜の膜厚が、0.18λ1〜0.38λ1の範囲とされている場合には、第1のフィルタの周波数温度特性を効果的に改善することができる。
また、第2のフィルタに設けられているSiO膜の厚みが、0.08λ2〜0.28λ2の範囲とされている場合には、第2のフィルタの周波数温度係数を効果的に改善することができる。
【0032】
第1,第2のフィルタが、直列腕共振子及び並列腕共振子を有するラダー型フィルタにより構成されている場合には、この種の帯域フィルタとして凡用されているラダー型フィルタを用いて、本発明の分波器を構成することができる。
【0033】
第1のフィルタを構成しているラダー型フィルタの並列腕共振子に直列に接続されたインダクタンスをさらに備える場合には、第1のフィルタを第2のフィルタに整合させることができる。
【0034】
同様に、第2のフィルタを構成しているラダー型フィルタの直列腕共振子に並列にインダクタンスが接続されている場合には、第2のフィルタを容易に第1のフィルタに整合させることができる。
【0035】
第1,第2のフィルタが、それぞれ、異なる圧電基板上に構成されており、第1,第2のフィルタが、別のチップ部品として構成されている場合には、第1,第2のフィルタの構成を容易に最適化することができる。
また、第1,第2のフィルタが、同一圧電基板を用いて単一のチップ部品として構成されている場合には、本発明に係る分波器の小型化を図ることができる。
【0036】
本発明に係る弾性表面波フィルタは、分波器の送信側フィルタとして用いられるものであり、周波数温度係数が温度変化に対して正であるように構成されているため、通過帯域の高域側に電力が投入された場合であっても、挿入損失の劣化が生じ難い。従って、分波器の送信側フィルタとして最適な弾性表面波フィルタを提供することができる。
【0037】
特に、上記弾性表面波フィルタが、LiTaO基板もしくはLiNbO基板からなる圧電基板と、該圧電基板上に形成された電極と、圧電基板上の電極を覆うように形成されたSiO膜からなる温度特性改善薄膜とを備え、電極周期により決定される波長をλとしたときに、温度変化に対して正の周波数温度係数を有するようにSiO膜の膜厚が、0.3λ〜0.38λの範囲とされている場合には、弾性表面波フィルタの周波数温度係数TCFを正とすることができ、分波器全体の周波数温度係数の低減を進めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
[図1]図1は本発明の一実施形態に係る分波器の回路構成を示す回路図である。
[図2]図2は分波器の第2のフィルタにおける周波数特性の温度による変化を説明するための図である。
[図3]図3は分波器の第1,第2のフィルタの周波数特性を説明するための図である。
[図4]図4(a)及び(b)は、第1の実施形態の分波器で用いられている第1及び第2のフィルタの構造を略図的に示す各模式的正面断面図である。
[図5]図5はSiO膜の膜厚を変化させた場合の弾性表面波フィルタの+側の温度依存性の変化を示す図である。
[図6]図6は第1の実施形態で用いられている弾性表面波フィルタを構成している弾性表面波共振子の電極構造を示す平面図である。
[図7]図7は実施例1で抑制された第1のフィルタの周波数特性の温度による変化を示す図である。
[図8]図8は実施例1で抑制された第2のフィルタの周波数特性の温度による変化を示す図である。
[図9]図9は弾性表面波フィルタにおいてSiO膜の膜厚を変化させた場合の電気機械結合係数の変化を示す図である。
[図10]図10は実施例2で作製された第1のフィルタの周波数特性の温度変化による変化を示す図である。
[図11]図11は実施例2で作製された第2のフィルタの周波数特性の温度変化による変化を示す図である。
[図12]図12は本発明の実験例の弾性表面波分波器に用いられるラダー型フィルタを説明するための模式的平面図である。
[図13]図13は図12に示したラダー型フィルタの回路構成を示す図である。
[図14]図14は図12に示したラダー型フィルタの一部を構成している圧電薄膜共振子を説明するための表面断面図である。
[図15]図15は圧電薄膜共振子の他の例を示す模式的正面断面図である。
[図16]図16は圧電薄膜共振子のさらに他の例を説明するための模式的正面断面図である。
[図17]図17は従来の分波器の一例を説明するための回路図である。
【符号の説明】
【0039】
1…分波器
2…アンテナ端子
3…入力端子
11…第1のフィルタ
12…第2のフィルタ
12a…入力端子
S11〜S13…直列腕共振子
P11,P12…並列腕共振子
L11,L12…インダクタンス素子
C11…コンデンサ素子
S21〜S23…直列腕共振子
P21〜P24…並列腕共振子
L21…インダクタンス素子
L22…インダクタンス素子
C21,C22…コンデンサ素子
31…圧電基板
32…電極
33…第1の温度特性改善薄膜
41…圧電基板
42…電極
43…第2の温度特性改善薄膜
51…圧電薄膜共振子
52…基板
52a…凹部
53…絶縁膜
54…下部電極
55…圧電薄膜
56…上部電極
61…ラダー型フィルタ
62…ダイヤフラム
63,65…並列腕共振子
64,66…直列腕共振子
67…上部電極
68…下部電極
69…上部電極
70…上部電極
71…圧電薄膜共振子
72…基板
72a…貫通孔
81…共通電極
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る分波器の回路構成を示す図である。
本実施形態の分波器1は、アンテナ2に属される入力端子3を有する。入力端子3に、第1のフィルタ11と、第2のフィルタ12とが接続されている。第1のフィルタ11は、通過帯域が相対的に低く、第2のフィルタ12の通過帯域が相対的に高くされている。すなわち、分波器1では、第1のフィルタ11が送信側帯域フィルタを、第2のフィルタ12が受信側帯域フィルタを構成している。
【0041】
そして、本実施形態では、第1のフィルタ11は、直列腕共振子S11〜S13と、並列腕共振子P11,P12とを有するラダー型フィルタにより構成されている。さらに、並列腕共振子P11,P12とアース電位との間に、それぞれ、インダクタンス素子L11,L12が接続されている。
【0042】
なお、入力端子3と直列腕共振子S11との間には、コンデンサC11が接続されている。
第2のフィルタ12は、第1のフィルタ11と同様にラダー型回路構成を有する。すなわち、第2のフィルタ12は、複数の直列腕共振子S21〜S23と、並列腕共振子P21〜P24とを有する。また、直列腕共振子S23に並列にインダクタンス素子L22が接続されている。
【0043】
入力端子3と、第2のフィルタ12の入力端子12aとの間に、インダクタンス素子L21が接続されている。入力端子3と、インダクタンス素子L21との間の接続点とアース電位との間にコンデンサ素子C21が接続されている。インダクタンス素子L21と入力端子12aとの間の接続点とアース電位との間にコンデンサ素子C22が接続されている。
【0044】
なお、第1のフィルタ11に接続されているコンデンサ素子C11は、整合素子である。また、上記インダクタンス素子L21及びコンデンサ素子C21及びC22は、第2のフィルタ12を第1のフィルタ11に対し整合させるために設けられている。すなわち、インダクタンス素子L21及びコンデンサ素子C21,C22は、整合回路を構成している。
【0045】
本実施形態の分波器1の特徴は、第1,第2のフィルタ11,12が、それぞれ、第1,第2の温度特性改善薄膜を有し、第1のフィルタ11の周波数温度係数TCFが第2のフィルタ12の周波数温度係数TCFよりも大きくなるように、第1,第2の温度特性改善薄膜の膜厚が異ならされていることにある。そして、このような構成により、使用温度範囲における規格特性が十分な大きさとされ得る。これを、以下において具体的に説明する。
【0046】
弾性表面波フィルタや圧電薄膜共振子フィルタでは、微細な電極や非常に薄い電極膜が形成されるので、電気抵抗が比較的大きい。従って、環境温度が上昇すると、抵抗率が変化し、フィルタの損失が大きくなるという問題がある。このようなフィルタにおける温度変化における特性の変化を、図2を参照して説明する。
【0047】
図2は、一般的なこの種のフィルタの周波数特性を示す。図2の実線Aは、周波数特性を、実線A1〜A3は、それぞれ、周波数特性Aが温度変化が生じた場合に変動する状態を縦軸の挿入損失のスケールを拡大して示す図である。実線A1は−30℃、実線A2は25℃、実線A3は+85℃の場合の通過帯域の特性を拡大して示している。
【0048】
温度変化にともなう中心周波数のシフトが全く存在しないとすると、温度上昇による損失の劣化は、図2に矢印B1で示されているように、通過帯域の低域側では、周波数が高域側にシフトするのと等価な変動であり、通過帯域の高域側では、周波数が矢印B2で示すように低域側にシフトするのと等価な変動である。
【0049】
さらに、通過帯域の相対的に低い第1のフィルタと、通過帯域が相対的に高い第2のフィルタとを組み合わせてなる分波器において、お互いの周波数間隔が極端に狭い場合には、図3に分波器の特性を示すように、第1のフィルタの通過帯域高域側(矢印Cで示す部分)の周波数温度依存性を小さくし、第2のフィルタにとっては、通過帯域低域側(矢印Dで示す部分)の周波数温度依存性を小さくすればよい。このように構成することにより、分波器全体として見た場合の周波数の製造によるばらつきを小さくすることができる。
【0050】
ところで、本発明では、通過帯域が相対的に低い第1のフィルタに対し、通過帯域が相対的に高い第2のフィルタの中心周波数における温度変化による周波数変動量を小さくすることにより、分波器全体としての周波数ばらつきの低減が図られている。
【0051】
なお、本明細書において、周波数温度係数が小さい方向とは、例えば−10ppmに対して、−20ppmが小さい方向であり、+5ppmに対して、−5ppmが小さい方向である。すなわち、周波数温度係数TCFの絶対値ではなく、−方向に数値が向かうにつれて、周波数温度係数が小さいと表現していることを指摘しておく。従って、周波数温度係数がより大きいとは、周波数温度係数TCFがより+側にあることを意味している。
【0052】
図4(a)及び(b)は、上記実施形態の分波器1で用いられる第1のフィルタ11及び第2のフィルタ12の模式的正面断面図である。
図4(a)に示す第1のフィルタ11は、通過帯域が相対的に低い側のフィルタであり、本実施形態では、弾性表面波フィルタにより構成されている。ここでは、第1のフィルタ11は、圧電基板31上にIDT電極などの電極32を形成した構造を有する。そして、電極32を覆うように第1の温度特性改善薄膜33が形成されている。
【0053】
なお、本実施形態では、圧電基板31は、LiTaO基板により構成されている。また、電極32は、Cuを主成分とする電極により構成されており、第1の温度特性改善薄膜33は、SiOにより構成されている。
【0054】
図4(b)に示す第2のフィルタ12は、第2の圧電基板41上に、IDT電極などからなる電極42を形成した構造を有する。電極42を覆うように第2の温度特性改善薄膜43が形成されている。第2のフィルタ12においても、圧電基板41は、LiTaOからなり、電極42は、Cuを主成分とし、第2の温度特性改善薄膜43はSiOにより構成されている。
【0055】
本実施形態では、周波数温度係数が−であるLiTaOに対し、温度特性を改善する温度特性改善薄膜33,43は、周波数温度係数が+であるSiOにより構成されている。そして、本実施形態では、図4(a)及び(b)から明らかなように、通過帯域が相対的に低い第1のフィルタに向けられる第1の温度特性改善薄膜33の厚みが、通過帯域が相対的に高いフィルタ12において設けられる第2の温度特性改善薄膜43の厚みよりも厚くされている。
【0056】
図5は、SiO膜を弾性表面波フィルタにおいて電極を覆うように形成した場合のSiO膜の膜厚と、周波数温度係数TCFとの関係を示す図である。
図5から明らかなように、SiO膜の厚みが厚くなるほど、周波数温度係数TCFは+側にシフトする。すなわち、周波数温度係数が大きくなる。
【0057】
図4(a)及び(b)に示したように、本実施形態では、通過帯域が相対的に低い第1のフィルタ11の第1の温度特性改善薄膜33の厚みが相対的に厚くなっており、通過帯域が相対的に高い第2のフィルタ12における第2の温度特性改善薄膜43を構成しているSiO膜の厚みが相対的に薄くされている。従って、第1のフィルタ11における周波数温度係数が大きくされ、第2のフィルタ12の通過帯域における周波数温度係数が小さくされている。従って、分波器全体として見た場合の周波数温度依存性が抑制され、周波数ばらつきを低減することができる。言い換えれば、使用温度範囲における規格特性を十分に確保することができる。これを、具体的な実験例につき説明する。
【実施例1】
【0058】
図1に示した実施形態の分波器1を以下の要領で作製した。なお、第1のフィルタ11が送信側フィルタ、第2のフィルタ12が受信側フィルタである。送信側のフィルタ帯域は1850〜1910MHzであり、受信側フィルタの通過帯域は1930〜1990MZzであるシステムに用いられるものである。
【0059】
上記システムでは、送信側帯域フィルタの通過帯域と、受信側帯域フィルタの通過帯域の周波数間隔は20MHzと非常に狭い。従って、第1のフィルタ11及び第2のフィルタ12のいずれにおいても急峻なフィルタ特性が要求されるとともに、良好な周波数温度依存性が必要である。
【0060】
特に、送信側フィルタとなる第1のフィルタ11は、受信側のフィルタ12の通過帯域を減衰域とする必要があるため、第1のフィルタ11の通過帯域の高域側における急峻性を高め、かつ通過帯域の高域側の温度依存性を改善することが強く求められる。
【0061】
他方、受信側フィルタである第2のフィルタ12については、第1のフィルタ11の通過帯域を減衰期とする必要があるので、第2のフィルタ12の通過帯域の低域側における急峻性を高めるとともに、通過帯域の低域側の温度依存性を改善することが求められる。なお、第1,第2のフィルタ11,12を構成している直列腕共振子及び並列腕共振子としては、図6に示す電極構造を有する弾性表面波共振子を用いた。図6に示す電極構造51は、IDT電極52と、IDT電極52の両側に配置された反射器53,54とを有する。圧電基板上にこの電極構造51が形成され、1つの弾性表面波共振子が構成される。図1に示したように、第1のフィルタ11は、直列腕共振子S11〜S13及び並列腕共振子P11,P12を、第2のフィルタ12は、直列腕共振子S21〜S23及び並列腕共振子P21〜P24を有する。これらの直列腕共振子S11〜S13,S21〜S23及び並列腕共振子P11,P12,P21〜P24が、上記弾性表面波共振子によりそれぞれ構成されている。
【0062】
また、第1のフィルタ11及び第2のフィルタ12は、図1に示した回路構成を有する。ここで、第1,第2のフィルタにおける各共振子の電極パラメーターを下記の表1及び表2に示す。
【0063】

【0064】


【0065】
なお、第1のフィルタ11におけるコンデンサ素子C11の静電容量は5pFとした。さらに、インダクタンスL11,L12のインダクタンス値は、それぞれ、3nH及び3nHとした。さらに、第2のフィルタ12におけるインダクタンスL21の大きさは3nH、インダクタンスL22の大きさは3nH、コンデンサC21の容量は2pF、コンデンサC22の容量は2.5pFとした。
【0066】
なお、本実施例において、第1,第2のフィルタ11,12は、同一の36度X伝搬のLiTaO基板を用いて、単一のチップ部品として構成されている。すなわち、1つのLiTaO基板上に、第1の回路構成が設けられている。従って、単一のチップ部品として構成されているため、分波器1の小型化を図ることが可能とされている。
【0067】
なお、各電極はCuを主成分とする電極で形成されており、かつ前述したように、第1のフィルタ11では、SiOからなる第1の温度特性改善薄膜33が、第2のフィルタ12においては、SiOからなる第2の温度特性改善薄膜43が形成されている(図4(a),(b)参照)。SiO膜の形成は、スパッタリングにより行った。また、第1のフィルタ11における第1の温度特性改善薄膜33としてのSiO膜の膜厚は、第1のフィルタの平均波長をλ1としたときに、0.35λ1、すなわち715nmとした。なお、平均波長とは、並列腕共振子の波長と直列腕共振子の波長の平均値である。
【0068】
他方、第2のフィルタ12においては、第2の温度特性改善薄膜43としてのSiO膜の膜厚は、平均波長をλ2としたときに、0.25λ2、すなわち483nmとした。
【0069】
上記のようにして作製された分波器1における第1のフィルタ11及び第2のフィルタ12の各周波数温度特性を、図7及び図8に示す。
なお、図7及び図8において、下方に示す特性は、上方に示されている特性の要部を縦軸のスケールを拡大して示す特性である。また、図7及び図8においては、温度が−30℃、25℃及び85℃のときの各周波数特性が示されている。
【0070】
第2のフィルタ12は受信側フィルタであるため、通過帯域の低域側にある第1のフィルタ11の通過帯域における減衰量を確保しなければならない。従って、図8に示されている第2のフィルタ12の周波数特性においては、通過帯域低域側の周波数温度依存性を良好とする必要がある。
【0071】
他方、温度上昇にともなう損失の増大分は、通過帯域低域側では周波数が高域側にシフトするのと等価な変動である(図2参照)。従って、第2のフィルタ12の中心周波数の温度係数TCFを−7ppm/℃程度とすれば、第2のフィルタ12の低域側における温度変化にともなう周波数シフト量をほぼ0とすることができる。
【0072】
他方、図7に示すように、第1のフィルタ11は送信側フィルタであり、その通過帯域高域側における受信側フィルタの通過帯域において減衰量を十分な大きさとしなければならず、特に、周波数高域側の周波数温度依存性を良好とする必要がある。図2に示したように、温度上昇にともなう損失の増大分は、通過帯域の高域側では、周波数が低域側にシフトするのと等価な変動となる。従って、第1のフィルタ11においては、中心周波数の温度依存性を+7ppm/℃程度と選択すれば、高域側における周波数シフト量をほぼ0とすることができる。
【0073】
他方、図9は、SiO膜の膜厚を変化させた場合のこの種の弾性表面波フィルタにおける電気機械結合係数の変化を示す。SiO膜の膜厚が、厚くなると、質量付加により電気機械結合係数が小さくなる。従って、フィルタの帯域幅を十分な大きさとすることが困難となる。そのため、本実施例では、第1のフィルタ11の並列腕共振子P11,P12に直列にインダクタンス素子L1,L12が接続され、それによって帯域幅の拡大が図られている。
【0074】
他方、第2のフィルタ12の直列腕共振子S23に並列にインダクタンス素子L22が接続されており、それによって受信側フィルタ12の帯域幅も拡大されている。
【0075】
よって、本実施例の分波器1では、上記のように、分波器全体としての周波数温度係数がほぼ0とされており、使用温度範囲における周波数特性のばらつきが生じ難く、しかも、各フィルタ11,12における帯域幅も十分な大きさとされる。従って、使用温度域において規格特性を十分に満たすことができる。
【0076】
なお、本実施例では、圧電基板として、36度LiTaO基板が用いられたが、例えば、42度LiTaO基板などの他のカット角のLiTaO基板が用いられてもよい。さらに、LiTaO基板と同様の効果が得られるとして知られているLiNbO基板などが用いられてもよい。
【0077】
さらに、電極材料としてCuを主成分とするものに限定されず、Alなどの他の金属材料を主成分とするものが用いられてもよい。
加えて、第1,第2の温度特性改善薄膜として、SiO膜が用いられているが、温度特性改善薄膜は他の材料により構成されてもよい。さらに、第1の温度特性改善薄膜と、第2の温度特性改善薄膜とは異なる材料で構成されていてもよい。
【実施例2】
【0078】
実施例1と同様にして分波器を構成した。但し、実施例2では、第1のフィルタ11における第1の温度特性改善薄膜33としてのSiO膜の膜厚を、0.25λ1、すなわち515nmとし、第2のフィルタ12に設けられているSiO膜の膜厚を、0.15λ2、すなわち290nmとした。その他の構成については実施例1と同様にした。
【0079】
図10は、実施例2における第1のフィルタ11の周波数特性の温度による変化を示す図であり、図11は、第2のフィルタ12の周波数特性の温度による変化を示す図である。
【0080】
第1のフィルタ11の中心周波数は−7ppm/℃程度変化し、第2のフィルタ12の中心周波数は−20ppm/℃程度変化することがわかる。
通過帯域の高域側は、温度上昇にともなう損失変動分が−方向に作用するため、第1のフィルタ11の通過帯域高域側では−14ppm/℃程度の周波数温度依存性を示すことがわかる。
【0081】
逆に、通過帯域低域側では、温度上昇にともなう変動分は周波数が高い側にシフトすることと等価であるため、周波数特性の温度依存性は小さくなり、第1のフィルタ11の場合と同様に、−14ppm/℃となる。
【0082】
従って、SiO膜の膜厚を、第1のフィルタ11側において相対的に厚くすることにより、第1のフィルタの通過帯域の高域側、第2のフィルタの通過帯域低域側における温度依存性をほぼ同レベルとし得ることがわかる。実施例2では、実施例1に比べて、周波数温度係数はやや大きくなるものの、第1のフィルタ11及び第2のフィルタ12のいずれにおいても同レベルに抑制された温度依存性を得ることができる。従って、製造に際して、同レベルの温度依存性を有する送信側フィルタ及び受信側フィルタを容易に組み合わせて所望とする分波器を提供することができる。
【0083】
また、周波数温度係数を小さくするために、SiO膜の膜厚を厚くし過ぎると、図9に示したように電気機械結合係数が小さくなるという問題が生じる。実施例2では、適度な温度特性改善効果と電気機械結合係数が得られるため、常温での周波数特性がより一層良好な分波器を提供することができる。特に、実施例2において第2のフィルタ側の第2の温度特性改善薄膜としてのSiO膜の膜厚を、0.08λ2〜0.28λ2の範囲とすることにより、第2のフィルタの低域側の周波数温度依存性を良好とすることができる。また、第1のフィルタ側における第1の温度特性改善薄膜としてのSiO膜の膜厚を0.18λ1〜0.38λ1の範囲に選択することにより、送信側フィルタである第1のフィルタの通過帯域高域側の周波数温度依存性を良好とすることかできる。
【0084】
なお、上述した実施形態では、第1,第2のフィルタ11,12は、それぞれ弾性表面波フィルタで構成されていたが、本発明における第1,第2のフィルタは、弾性表面波フィルタに限定されず、他のフィルタにより構成されてもよい。すなわち、温度特性改善薄膜が形成される適宜のフィルタを第1,第2のフィルタとして用いることができる。このような他のフィルタとしては、例えば、圧電薄膜共振子フィルタが挙げられる。
【0085】
図12は、圧電薄膜共振子フィルタを複数用いて構成されたラダー型フィルタを示す模式的平面図であり、このラダー型フィルタの回路構成を図13に示す。
また、図14は、ラダー型フィルタを構成している1つの圧電薄膜共振子を示す正面断面図である。
【0086】
図14に示すように、圧電薄膜共振子51は、上面に開いた凹部52aを有する基板52を用いて構成されている。この凹部52aを覆うように、絶縁膜53が積層されている。
そして、絶縁膜53上に、下部電極54、圧電薄膜55及び上部電極56が積層され、ダイヤフラムを構成している。圧電薄膜55は、チタン酸ジルコン酸鉛系セラミックス、ZnO、AlNなどの適宜の圧電材料により構成されている。電極54,56は、Al、Agなどの適宜の金属もしくは合金により構成される。圧電薄膜55は、厚み方向に分極軸が揃っている。従って、電極54,56から電圧を印加することにより、圧電薄膜55を振動させることができる。ここで、基板52の凹部52a上に上記積層構造が配置されているため、圧電薄膜55による振動が妨げられず、高周波数域で利用し得る共振特性を得ることができる。なお、基板52は、Si基板などの適宜の絶縁体もしくは半導体を用いて構成することができる。また、絶縁膜53についても、Al、SiOまたはAlNなどの絶縁材料により構成することができる。
【0087】
図12は、上記圧電薄膜共振子を複数用いて構成された2段構成のラダー型フィルタの模式的平面図である。なお、図12では、圧電薄膜は省略されている。ラダー型フィルタ61では、破線で囲まれた部分がダイヤフラム62を構成している。すなわち、ダイヤフラム62は、圧電薄膜共振子51の凹部52aの上方部分、すなわち振動部分をいう。このダイヤフラム62において、2個の並列腕共振子63,65と、2個の直列腕共振子64,66が構成されている。より具体的には、ラダー型フィルタ61では、下部電極68がグラウンド電位に接続されるように構成されている。また、上部電極67は入力端子に接続される。そして、上部電極69がグラウンド電位に接続される。また上部電極70が出力端子に接続される。従って、図13に示す2段構成のラダー型フィルタが構成される。
【0088】
図14に示した圧電薄膜共振子51では、基板52において、上部に開いた凹部52aを設けたが、図15に示すように、下方にいくに連れて径が拡がる貫通孔72aを有する基板72を用いた圧電薄膜共振子71を用いてもよい。ここでは、貫通孔72aの上方開口部分を覆うように絶縁膜53が積層されている。そして、絶縁膜53上に、下部電極54、圧電薄膜54及び上部電極56が積層されて、ダイヤフラムが構成されている。
【0089】
さらに、図16に示すように、絶縁膜53の下方に共通電極81を形成し、共通電極81が絶縁膜53を介して一対の下部電極54,54と対抗するように配置されていてもよい。この場合には、上記電極56に、一対の下部電極54,54が対抗されて、一対の共振子部分が構成さている。また、共通電極81と下部電極54,54との間でそれぞれコンデンサを構成することができる。このように、共通電極81及び一対の下部電極54,54により構成されるコンデンサが内蔵された圧電薄膜共振子を、上記ラダー型フィルタを構成するのに用いてもよい。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】

【図16】

【図17】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
通過帯域が相対的に低く、かつ第1の温度特性改善薄膜を有する第1のフィルタと、
通過帯域が相対的に高く、かつ第2の温度特性改善薄膜を有する第2のフィルタとを備え、
第1のフィルタの周波数温度係数が第2のフィルタの周波数温度係数よりも大きくなるように、第1,第2の温度特性改善薄膜の膜厚が異ならされていることを特徴とする、分波器。
【請求項2】
前記第1,第2のフィルタが弾性表面波フィルタにより構成されている、請求項1に記載の分波器。
【請求項3】
前記第1,第2のフィルタが、圧電薄膜共振子フィルタである、請求項1に記載の分波器。
【請求項4】
前記弾性表面波フィルタが、LiTaO基板もしくはLiNbO基板からなる圧電基板を用いて構成されており、前記第1,第2の温度特性改善薄膜が前記圧電基板上に形成されたSiO膜である、請求項2に記載の分波器。
【請求項5】
前記第1のフィルタに設けられているSiO膜の厚みが、前記第2のフィルタにおいて設けられているSiO膜の厚みより厚くされている、請求項4に記載の分波器。
【請求項6】
前記第1のフィルタの波長をλ1としたとき、第1のフィルタのSiO膜の膜厚が、0.18λ1〜0.38λ1の範囲とされていることを特徴とする、請求項5に記載の分波器。
【請求項7】
前記第2のフィルタの波長をλ2としたときに、前記第2のフィルタに設けられているSiO膜の膜厚が、0.08λ2〜0.28λ2の範囲とされていることを特徴とする、請求項5または6に記載の分波器。
【請求項8】
前記第1,第2のフィルタが、複数の直列腕共振子及び並列腕共振子を有するラダー型フィルタである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の分波器。
【請求項9】
前記第1のフィルタを構成しているラダー型フィルタの並列腕共振子に直列に接続されたインダクタンスをさらに備える、請求項8に記載の分波器。
【請求項10】
前記第2のフィルタを構成しているラダー型フィルタの直列腕共振子に並列に接続されたインダクタンスをさらに備える、請求項8に記載の分波器。
【請求項11】
前記第1,第2のフィルタが、それぞれ、異なる圧電基板上に構成されており、第1,第2のフィルタが、別のチップ部品として構成されている、請求項1〜10のいずれか1項に記載の分波器。
【請求項12】
前記第1,第2のフィルタが、同一圧電基板を用いて単一のチップ部品として構成されている、請求項1〜10のいずれか1項に記載の分波器。
【請求項13】
分波器の送信側フィルタとして用いられる弾性表面波フィルタであって、該弾性表面波フィルタの周波数温度係数が、温度変化に対して正であるように構成されていることを特徴とする、弾性表面波フィルタ。
【請求項14】
LiTaOもしくはLiNbO基板からなる圧電基板と、該圧電基板上に形成された電極と、前記圧電基板上の電極を覆うように形成されたSiO膜からなる温度特性改善薄膜とを備え、
電極周期により決定される波長をλとしたときに、温度変化に対して正の周波数温度係数を有するように前記SiO膜の膜厚が0.3λ〜0.38λの範囲とされていることを特徴とする、請求項13に記載の弾性表面波フィルタ。

【国際公開番号】WO2005/088835
【国際公開日】平成17年9月22日(2005.9.22)
【発行日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−515311(P2006−515311)
【国際出願番号】PCT/JP2005/002896
【国際出願日】平成17年2月23日(2005.2.23)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】