説明

切替え可能なレーザシステムを有するレーザ加工装置及びレーザ加工方法

【課題】品質の向上したレーザ加工装置及び工作物を機械加工する方法の提供。
【解決手段】切れ刃(62)及び逃げ面(64)を有する回転バイトが工作物(11)から製造される。レーザ加工装置(10)は2つの異なる操作モードで機能する。第1の操作モードで、第1のレーザヘッド(14)は、第1のレーザヘッド(14)に対して工作物(11)の速い前進速度にて工作物(11)を機械加工するのに使用される。その際、工作物(11)は所望の大まかな輪郭を示すようにレーザ溶融切削により切削される。第1の操作モードでは、レーザパルスの持続時間はナノ秒範囲である。その後、レーザ加工装置(10)は第2の操作モードで操作される。その際、レーザパルスはピコ秒範囲のパルス持続時間で生成され、上記のレーザパルスは第1の操作モードのレーザパルスより小さい平均電力を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザで工作物を機械加工するレーザ加工装置ならびにレーザ加工法に関する。工作物は、例えば、抜型、または、切れ刃、面、および逃げ面を有する回転バイトが製造される半製品である。
【背景技術】
【0002】
レーザにより工作物を機械加工する種々の装置及び方法それ自体は、周知である。例えば、独国特許出願公開第10020559号明細書では、超短レーザパルスを使用することにより材料を機械加工する装置が説明されている。この場合、レーザパルスは、300ピコ秒未満のパルス持続時間を有する。更にまた、当該装置は、材料又は工作物に第1のレーザパルスを照射し、その後この照射の結果を検出し、かつ、そこから工作物に関する情報を取得するように配置される試験装置を備える。
【0003】
米国再発行特許第39001号明細書では、セラミックウェーハを切削する方法が説明されている。レーザは、ウェーハにV字形溝を形成する。これを達成するために、互いに対して側方に偏位するいくつかの線形処理パスは、V字形を取得するために実行される。その後、ウェーハは、1つの平面上での1つ以上の工程パスによりV字形溝の中央部の所望の地点にて完全に分割される。
【0004】
更にまた、国際公開第99/03635号パンフレットでは、エンボス加工ダイ製造のための方法及び装置が開示されている。この場合、レーザビームは、刃物または溝ナイフに対応するために特に木から成る工作物内に溝を切削するために光学集光システムに案内される。または、レーザビームは、光学集光システムの前に配置される折り畳み可能な鏡を介してスキャナに偏向されて導かれる。工作物は、スキャナを介して型彫することができる。型彫の場合、レーザ電力を低減することができる。型彫は、ナイフを伴う工作物のその後の装着を簡素化するために溝が設けられた工作物上で書き込むことを目的としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】独国特許出願公開第10020559号明細書
【特許文献2】国際公開第99/03635号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、工作物、および、特に歯板または回転バイトの非常に経済的な製造であり、同時に、仕上げ縁および表面、特に製造されたバイトの切れ刃の品質を確保することにある。特に、本発明の装置及び方法は、工作物からの切削面および逃げ面を有するバイトの製造に適したものとすることができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、請求項1の種々の特長を示すレーザ加工装置により、ならびに、請求項10の種々の特長を示すレーザ機械加工法により達成される。
【0008】
本発明によるレーザ加工装置は、工作物を保持する保持手段を備える。更にまた、装置は、特に、切削ヘッドとして構成される第1のレーザヘッドと、好ましくは、スキャナヘッドとして実行される第2のレーザヘッドを有するレーザ構成を備える。レーザ構成は、レーザパルスを生成するレーザ光源も備える。レーザ構成は、第1の操作モードと第2の操作モードとの間で切り替えることができる。第1の操作モードでは第1のレーザヘッドが使用され、第2の操作モードでは第2のレーザヘッドが、レーザパルスを反射して工作物の上へ集光するのに使用される。いくつかの切込み軸は、2つのレーザヘッドに対して保持手段または工作物を移動または位置決めのうちの少なくとも1つを実施するように配置される。このようにすると、工作物の輪郭の空間的な、いわば3次元機械加工が、切れ刃および隣接逃げ面を生成するために可能である。切込み軸は、回転案内または線形案内の少なくとも1つを含んでもよい。5つ又は6つの切込み軸が設けられることが好ましい。
【0009】
本発明によれば、第1の操作モードでは、工具はレーザパルスの熱作用により機械加工される。工作物はレーザ溶融切削により機械加工されることが好ましい。第1の操作モードでは、レーザパルスは第2の操作モードより平均電力が大きい。第1の操作モードの平均電力は、例えば、50ワットから400ワットの間であってもよく、一方、第2の操作モードの電力は、10ワットから100ワットの間であってもよい。第1の操作モードではレーザパルスはナノ秒の範囲のパルス持続時間で生成され、一方、第2の操作モードのレーザパルスはピコ秒の範囲のパルス持続時間を有することが好ましい。したがって、いわば工作物は、第1の操作モードで非常に速い切削速度にて荒削りすることができる。たとえば、第1の操作モードで、20〜30メートル/分の前進速度にて1〜2ミリメートルの厚さを有する多結晶質ダイヤモンド(PCD)の縁部を切削するためにレーザ溶融切削を用いることが可能である。
【0010】
実際、速い機械加工速度は、第1の操作モードで達成されるが、工作物上のレーザの熱作用のために、熱の影響を受けた領域が工作物上に生成され、この領域はたとえば生成すべきバイトの特性に悪影響を与える。したがって、第2の操作モードでは、レーザ構成はレーザアブレーション(レーザ爆蝕、レーザ焼灼術)により工作物を機械加工する。材料は超短レーザパルスによりプラズマ雲に変換され、その場合、レーザパルスの作用の持続時間は非常に極小なので、熱の影響を受けた領域は形成されない。この場合、工作物に対するレーザパルスの作用の持続時間は、これには適したものではない。この第2の操作モード中に、少なくとも1つの部分、および特に第1の操作モードで形成された熱の影響を受けた領域全体が再び除去されることが好ましい。熱の影響を受けた領域は、たとえば、バイトの切れ刃の領域においてなど、少なくとも高品質が必要とされる工作物の領域において除去される。両方の操作モードにおいて、工作物は所望の3次元形態を生成するために外側輪郭の同じ地点にて機械加工される。2段階の方法により、保持手段に取り付けられた工作物は非常に経済的に機械加工することができる。このようにすると、したがって特に効率的にバイトを製造することが可能である。更に、高品質の工作物機械加工が確保される。
【0011】
レーザ構成は、たとえば、ソリッドステートレーザおよび特にディスクレーザの形で切替え可能なレーザ光源を備えることが好ましい。ロッド、および特にディスクの形状を有するレーザのレーザ結晶は、それぞれ使用される光ポンプの光を増強する両方の操作モードで使用することができる。第1の操作モードで、光ポンプは、レーザパルスの所望のパルス持続時間に対応するナノ秒の範囲の光パルスを生成する。同様に、光ポンプは、第2の操作モードでピコ秒の範囲の光パルスを生成する。各操作モードに対して別個の光ポンプを設置することも可能である。1つ以上のレーザダイオードをたとえば光ポンプとして使用してもよい。レーザ光源は、1つ以上の共振鏡をそれぞれ有する2つの共振器構成を備えてもよく、その場合、操作モードによっては第1の又は第2の共振器構成が使用される。このようなレーザ光源は、独立型でかつ本発明の残りの特長から独立して実行して、かつ、他の用途に使用してもよい。
【0012】
第1のレーザヘッドにより出射されたレーザパルスを集光することができる第1の焦点領域が、第2のレーザヘッドにより出射されたレーザパルスを集光することができる第2の焦点領域との空間交差部を有しない場合は有利である。特に、第1のレーザヘッドの第1の焦点領域は、第1のレーザヘッドから第1の加工間隙にて光軸に沿って配設される。第2の焦点領域は、第2のレーザヘッドから第2の加工間隙に配置される。好適な実施形態においては、第2の加工間隙は、第1の加工間隙より大きい。これには、工作物が第2の操作モードで機械加工される間、第2のレーザヘッドに対する工作物の空間的な移動または位置決めが第1のレーザヘッドによる障害なく可能であるという利点がある。概して、第2の操作モードでの工作物の仕上げパスには、荒削り中の第1の操作モードの場合よりも、切込み軸を用いた第2のレーザヘッドに対するより複雑な工作物の位置合せおよび移動が必要である。第1の加工間隙を上回る第2の加工間隙が選択された場合、十分に大きい自由領域がバイト移動に利用可能である。
【0013】
レーザ加工装置の例示的な実施形態においては、2つのレーザヘッドは互いに対して動かないように配設され、それによって、光軸は互いと平行に配設されることが好ましい。
【0014】
レーザ加工装置は、可動及びたとえば線形に調整可能な偏光手段、たとえば偏光鏡も備えることが好ましい。偏光手段は、レーザパルスの光路に出し入れすることができる。偏光手段の位置によっては、レーザパルスは第1のレーザヘッドまたは第2のレーザヘッドに案内される。したがって、2つのレーザヘッドの1つだけが操作されることが非常に単純な方法で確保される。
【0015】
本発明の有利な実施形態は、従属請求項から、並びに本説明によって明らかとなる。本明細書においては、例示的な実施形態を参照して本発明を説明する。その際には、本明細書は、本発明の本質的な特長に制限される。図面は、補足的参照として使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】レーザ加工装置の例示的な実施形態のブロック回路図である。
【図2】図1のレーザ加工装置の概略側面図である。
【図3】レーザ加工装置用レーザ光源の、ブロック回路図と類似の概略図である。
【図4】第1の操作モードでの工作物の機械加工の概略図である。
【図5】第2の操作モードでの工作物の機械加工の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1および図2は、レーザパルスで工作物11を機械加工するレーザ加工装置10の例示的な実施形態を示す。レーザ加工装置10は、工作物11を保持または取り付ける保持手段12を備える。例示的な実施形態により、5つの切込み軸13を介して、レーザ構成16の第1のレーザヘッド14および第2のレーザヘッド15に対して保持手段12または工作物11を移動または位置決めの少なくとも1つを実施することが可能である。切込み軸13の数は、工作物11の所望の機械加工の関数として変わってもよい。最大6つまでの切込み軸13を設けてもよい。
【0018】
例示的な実施形態においては、切込み軸13は、線形ガイドとして実施されるものもあれば、円形ガイドとして実施されるものもある。第1の線形ガイド13xは、x方向において線形に移動させることができる切削台17を備え、上記の切削台は(例示的な実施形態においては)案内されるように、第1のレール18で頂部から支持され、上記のレール及びそれに平行した第2のレール19で支持される。
【0019】
第1の円形ガイド13bは切削台17上に配設され、L字形保持部分20の第1の周縁は第1の回転軸B周りに回転可能であるように第1の円形ガイド上で支持されている。保持部分20の他の周縁は、回転軸Bとほぼ平行に延在するし、そこから少し離れたところに延在する。第2の円形ガイド13cが保持部分20のこの周縁上に配設され、周縁上で、保持手段12は第2の回転軸C周りに回転可能であるように支持されている。第2の回転軸Cは、回転軸Bに対して直角に、すなわち例示的な実施形態においては垂直面上に延在する。
【0020】
2つのレール18、19は機械フレーム24に取り付けられる。例示的な実施形態においては、棒25は、切削台17より上方に機械フレーム24上に配設され、上記の棒は、y方向でレーザヘッド14、15を移動させる第2の線形ガイド13yを形成する。第3の線形ガイド13zによりZ方向に移動させることができる切削台26が、棒25上に配設され、上記の切削台は2つのレーザヘッド14、15を支える。2つのレーザヘッド14、15は、したがって、互いに対して直角にてある空間方向に、第2の線形ガイド13yおよび第3の線形ガイド13zを介して線形方向にずらすことができる。
【0021】
切込み軸13は、レーザ加工装置10の制御装置30により起動される。工作物が機械加工される間、工作物11は、レーザパルスが所定の角度にておよび工作物11上の所定の場所にて当たるように、第1のレーザヘッド14または第2のレーザヘッド15に対して位置決めおよび位置合わせされる。
【0022】
レーザ構成16は、第1の操作モードIで、ナノ秒の範囲のパルス持続時間でレーザパルスを生成し、レーザ構成16の第2の操作モードIIでピコ秒の範囲のパルス持続時間を有するレーザパルスを生成するレーザ光源31を備える。レーザパルスの平均電力は、第2の操作モードIIより第1の操作モードIのほうが大きい。レーザパルスを生成するために好適な例示的な実施形態の切替え可能なレーザ光源31は、図3に概略的に示されているようなディスクレーザ32を備える。ディスクレーザ32は、たとえば数百マイクロメートルの厚さを有してもよいディスク33の形でレーザの結晶を備える。冷却については、ディスク33が放熱板34上に平らに配設されている。ディスクレーザ32の光軸OLはディスク33に直角に延在する。上記のディスクは放熱板34に対向するその裏側の上でミラーコーティングが施され、同時に共振器鏡の役目を果たす。ディスク33から少し離れて、ディスク33により出射されたレーザ光を束ねるレーザ出力カプラ35が光軸OL上に設置されている。ディスク33として構成されたレーザの結晶は、光ポンプ36、37の光PLによって励起される。その際に、光ポンプ36、37の光はディスク33を数回通過する。これを確保するために、更なるレンズまたは共振鏡の少なくとも1つを設置してもよく、これらは、明瞭さを期すために図3には図示されていない。しかしながら、レンズまたは共振鏡の少なくとも1つを有する2つの共振器構成を設置することが可能であり、その場合、一方の共振器構成は第1の操作モードIで使用され、他方の共振器構成は第2の操作モードIIで使用される。両方の共振器構成は、上記のディスクの裏側でディスク33および共振鏡を使用する。
【0023】
少なくとも1つの光ポンプ36、37は光パルスを生成する。第1の操作モードIで、光パルスはナノ秒の範囲の持続時間を有し、一方、第2の操作モードIIの光パルスはピコ秒の範囲の持続時間を有する。たとえば、レーザダイオードは光ポンプ36、37として使用してもよい。第1の操作モードIには第1の光ポンプ36を、および第2の操作モードIIには第2の光ポンプ37を設置することも可能である。両方の操作モードI、IIにおいて、同じレーザの結晶がポンプ光PLの増幅器として使用される。例示的な実施形態においては、これはディスク33である。
【0024】
レーザ光源制御39は、第1の操作モードIから第2の操作モードIIに、および、第2の操作モードIIから第1の操作モードIにレーザ光源31を切り替えるのに設置され、上記のレーザ光源制御は制御装置30により起動される。レーザ光源制御39は、レーザパルスのパルス持続時間の設定値およびレーザパルスの平均電力の設定値を設定する。
【0025】
両方の操作モードI、IIにおいて、レーザパルスは、レーザ光源出口40に切替え可能なレーザ光源32により出力されて光路41に沿って2つのレーザヘッド14、15に案内される。これを達成するために、いくつかの鏡42または他の偏光装置を光路41内に配設してもよい。
【0026】
例示的な実施形態においては、第1のレーザヘッド14は切削ヘッドとして構成されている。切削ヘッドは切削ノズル45を備え、該切削ノズル45を介して、ガス供給部46からのガスが、第1のレーザヘッド14の第1の焦点領域F1近傍で、第1の操作モードで機械加工すべき工作物11上へ供給管路47を介して分配される。ガスの量を制御する弁48が供給管路内に配設され、当該弁48は切削ヘッド制御装置49を介して作動される。
【0027】
第1の焦点領域F1は、第1のレーザヘッド14の光軸O1上の地点または距離を表す。第1のレーザヘッド14のレーザパルスの焦点は、第1のレーザヘッド14から不変の距離にあってもよい。あるいは、レーザパルスの焦点は、所定の限界内で光軸O1の第1の焦点領域F1の内側の第1のレーザヘッド14のレンズシステムを介して調節することもできる。
【0028】
切削ヘッド制御装置49も、図1に破線で示されている第1の位置と第2の位置との間に移動可能で、かつ、この例では転移可能な偏光鏡50を移動させるように機能する。第2の位置においては、偏光鏡50は光路41内に配置されてレーザ光源41により出射されたレーザパルスを第1のレーザヘッド14に偏向させる。偏光鏡50が光路41の外側に配置される場合、レーザパルスは、光路41に沿って第2のレーザヘッド15に偏向する。切削ヘッド制御装置49は、制御装置30により起動される。
【0029】
更に、制御装置30は、第2のレーザヘッド15を制御するスキャナ制御55を起動させ、上記のレーザヘッドには、光学スキャナシステム56が装備されている。光学スキャナシステムは、たとえば、2つ又は3つの枢動可能な鏡を備え、光学集光システム57を介して第2のレーザヘッド15により出射されたレーザパルスが1つの区域において工作物11の表面に導くことができるようになっている。したがって、スキャナヘッドとして構成されている第2のレーザヘッド15は、第2の焦点領域F2において工作物面上へレーザパルスを導く。第2の焦点領域F2は、直角にて配向するかまたは第2のレーザヘッド15の光軸に対して傾斜させてもよい工作物11上の区域である。
【0030】
第1の焦点領域F1は、第1のレーザヘッド14から、および、この例では、切削ノズル45の自由端から第1の加工間隙A1にある。工作物面上の第2の焦点領域F2内での集光レーザパルスの衝突点は、第2のレーザヘッド15からまたは光学集光システム57から第2の加工間隙A2にある。第2の加工間隙A2は、第1の加工間隙A1より最小値M分大きい。第1の加工間隙A1は、1ミリメートルの数十分の一から最高でおよそ2または3ミリメートルである。第2の加工間隙A2は、5センチメートルより大きく20センチメートルまでであることが好ましい。
【0031】
動作モードおよび好適なレーザ機械加工法を図4および図5を参照して以下で説明する。
【0032】
初めに、工作物11を保持手段12によって取り付ける。工作物11は、歯板および回転バイトが製造される半製部品である。工作物11は、切削層61が施された硬質金属の本体60を備える。例示的な実施形態においては、切削層61は、多結晶質ダイヤモンドから成る。完全に機械加工された工作物11においては、切れ刃62は、この切削層61上に施されている。
【0033】
生成すべき自由角度に対応して、第1のレーザヘッド14の光軸O1に対して傾斜するように工作物11を位置合わせする。ナノ秒の範囲のレーザパルスを生成するように切替え可能なレーザ光源31を調節する。その際に、レーザパルスの平均電力は、40ワットから400ワットの間である。レーザ光源31により生成されたレーザパルスが第1のレーザヘッド14に偏向されるように偏光鏡50を光路41内に移動する。レーザ加工装置10は、図4に概略的に示すように第1の操作モードIで作動する。その際に、工作物11は、レーザビームパルスの熱作用のためにレーザ溶融切削により機械加工される。工作物11が切削される間、工作物を第1の操作モードIで20〜30メートル/分の高速にて前進させることができる。このようにすると、工作物の大まかな輪郭を生成することができる。速い前進速度のために、機械加工は第1の操作モードIでは超高速である。第1の操作モードIで、いわば荒加工作業が実行される。
【0034】
しかしながら、その際に、図4において平行線模様の区域により概略的に示されているように、熱の影響を受けた領域Wが切削面の近傍に形成される。レーザ溶融切削により生成された切削面66は、したがって第1の操作モードIでは最終所望の輪郭63に対して少し距離を有して配置され、この距離は、切削面66から工作物11に延在する熱の影響を受けた領域Wの深さより大きい。所望の輪郭63を表す図4内の自由域は、破線で示されている。
【0035】
その後、レーザ加工装置10のレーザ構成16は、第2の操作モードIIに切り替える。この第2の操作モードIIでは、第2のレーザヘッド15を使用する。その結果として、偏光鏡50は光路41から移動してはずれる。切替え可能なレーザ光源31を逆転させると、切替え可能なレーザ光源31は第1の操作モードIより短いパルス持続時間でレーザパルスを送出し、このパルス持続時間は、たとえばピコ秒の範囲である。これらのレーザパルスは、偏光鏡42によりレーザ源出力40により光路41内に供給されて第2のレーザヘッド15に偏向される。そこで、レーザパルスは、図5により示されているように、光学スキャナシステム56および光学集光システム57を介して工作物面の上へ導かれる。レーザパルスの平均電力は第1の操作モードIより小さく、たとえば10ワットから最大で100ワットである。
【0036】
この第2の操作モードIIで、材料は、熱作用により工作物11から分離されず、レーザアブレーションによりプラズマに変換される。レーザパルスの衝突点での工作物のこの急速な加熱および結果として生じるプラズマ形成には、熱エネルギーが工作物11内で広がることができないという効果がある。したがって、第2の操作モードIIでは、熱の影響を受けた領域は工作物11上に形成されない。熱の影響を受けた領域Wは、切れ刃62を有するバイトが工作物11から生成された場合、特に製造すべきバイトの品質を考えると種々の短所を有する。第1の操作モードIで形成された熱の影響を受けた領域Wは、例示的な実施形態の場合と同様に、第2の操作モードIIで工作物を機械加工している間に完全に除去される。しかしながら、切れ刃62の領域内の少なくとも熱の影響を受けた領域Wは、生成されたバイトの適当な保存寿命を達成するために除去しなければならない。
【0037】
材料アブレーション(爆蝕)は、レーザパルスが2次元パルス区域65上へ所定のシーケンスで導かれるように、第2のレーザヘッド15により第2の操作モードIIで行われる。これを達成するために、パルス区域65は第2のレーザヘッド15の光軸O2に対して傾斜するように配向される。レーザパルスが複数の衝突点にてパルス区域65の内側で第2のレーザヘッド15のスキャナレンズシステム56を介して導かれる間、1つ以上の切込み軸13が、同時に第2のレーザヘッド15に対して工作物11の相対運動を行う。この相対運動は、レーザパルスがパルス区域65内の衝突点に沿って光学スキャナシステム56を介して移動する速度より桁違いに遅い。その結果として、材料アブレーションは、パルス区域65の領域において達成され、上記の材料アブレーションは、切込み軸13を介した相対運動のために工作物11に沿ってゆっくり進行する。この第2の操作モードIIでは、工作物11上の所望の最終輪郭63は、第2のレーザヘッド15を使用してレーザアブレーションにより生成される。例示的な実施形態を参照すると、切れ刃62および隣接する逃げ面64は、これの結果として形成されている。第2の操作モードIIでのこの第2の機械加工ステップ中に、熱の影響を受けた領域Wは、完全に除去される。
【0038】
本発明は、レーザ加工装置10ならびに工作物11を機械加工する方法に関する。切れ刃62および逃げ面64を有する回転バイトは工作物(11)から製造される。レーザ加工装置10は、2つの異なる操作モードI、IIで機能する。第1の操作モードIで、第1のレーザヘッド14は、第1のレーザヘッド14に対して工作物11の速い前進速度にて工作物11を機械加工するのに使用される。その際に、工作物11は、所望の大まかな輪郭を示すようにレーザ溶融切削により切削される。第1の操作モードIでは、レーザパルスの持続時間はナノ秒範囲である。その後、レーザ加工装置10は、第2の操作モードIIで操作される。その際に、レーザパルスはピコ秒範囲のパルス持続時間で生成され、このレーザパルスは第1の操作モードIのレーザパルスより小さい平均電力を示す。第2の操作モードIIでは、スキャナヘッドの形の第2のレーザヘッド15が光学スキャナシステム56によって起動される。この光学スキャナシステムは、工作物11の表面上の2次元パルス区域65上へレーザパルスを導く。第1の操作モードIと異なって、材料除去は、第2の操作モードIIではレーザアブレーションにより達成される。工作物11上のレーザパルスの熱作用による第1の操作モードIで形成された熱の影響を受けた領域Wは、その後の機械加工ステップ中にレーザアブレーションにより再び少なくとも部分的に除去され、その結果、機械加工された工作物11の高品質が達成される。
【符号の説明】
【0039】
10 レーザ加工装置
11 工作物
12 保持手段
13 切込み軸
13x 第1の線形ガイド
13y 第2の線形ガイド
13z 第3の線形ガイド
13b 第1の円形ガイド
13c 第2の円形ガイド
14 第1のレーザヘッド
15 第2のレーザヘッド
16 レーザ構成
17 切削台
18 第1のレール
19 第2のレール
20 保持部分
24 機械フレーム
25 棒
26 切削台
30 制御装置
31 レーザ光源
32 ディスクレーザ
33 ディスク
34 放熱板
35 出力カプラ
39 レーザ光源制御装置
40 レーザ光源出口
41 光路
42 鏡
45 切削ノズル
46 ガス供給部
47 供給管路
48 弁
49 切削ヘッド制御装置
50 偏光鏡
55 スキャナ制御
56 光学スキャナシステム
57 光学集光システム
60 本体
61 切削層
62 切れ刃
63 所望の輪郭
64 逃げ面
65 パルス区域
66 切削面
A1 第1の加工間隙
A2 第2の加工間隙
B 第1の回転軸
C 第2の回転軸
F1 第1の焦点
F2 第2の焦点領域
M 最小値
OL ディスクレーザの光軸
O1 第1のレーザヘッドの光軸
O2 第2のレーザヘッドの光軸
W 熱の影響を受けた領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作物(11)を保持する保持手段(12)と、
第1の操作モード(I)と第2の操作モードの2つの操作モード(II)の間で切り替えることができ、前記第1の操作モード(I)で使用することができる第1のレーザヘッド(14)と前記第2の操作モード(II)で使用することができる第2のレーザヘッド(15)とを備える、レーザ構成(16)と、
を備え、
前記レーザ構成(16)が、前記第1の操作モード(I)で熱作用により工作物を機械加工し、第2の操作モード(II)でレーザアブレーションにより工作物を機械加工するように配置され、
また、前記第1および前記第2のレーザヘッド(14、15)に対して前記保持手段(12)を移動または位置決めの少なくとも1つを実施する切込み軸(13)とを備える、レーザ加工装置(10)。
【請求項2】
前記レーザ構成(16)が、前記第1の操作モード(I)で前記ナノ秒の範囲のレーザパルスを生成し、前記第2の操作モード(II)でピコ秒の範囲のレーザパルスを生成するレーザ光源(31)を備えることを特徴とする、請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項3】
前記レーザ光源(31)が、ソリッドステートレーザと、ディスクレーザ(32)とを備えることを特徴とする、請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項4】
前記ディスクレーザ(32)のディスク(33)が、光ポンプ(36、37)の光を増強するために、第1及び第2の操作モード(I、II)の両方で使用されることを特徴とする、請求項3に記載のレーザ加工装置。
【請求項5】
前記第1のレーザヘッド(14)が、レーザ溶融切削用切削ヘッドとして構成されていることを特徴とする、請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項6】
前記第2のレーザヘッド(15)が、光学スキャナシステム(56)を有するスキャナヘッドとして構成されていることを特徴とする、請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項7】
前記第1のレーザヘッド(14)により出射されたレーザパルスを集光することができる第1の焦点領域(F1)が、前記第2のレーザヘッド(15)により出射されたレーザパルスを集光することができる第2の焦点領域(F2)に対して重ならずに配設されていることを特徴とする、請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項8】
前記第2のレーザヘッド(15)により出射されたレーザパルスを集光することができる前記第2の焦点領域(F2)が、前記第1のレーザヘッド(14)または前記第2のレーザヘッド(15)の少なくとも1つから、前記第1のレーザヘッド(14)により出射されたレーザパルスを集光することができる前記第1の焦点領域(F1)より大きい加工間隙(A2)にあることを特徴とする、請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項9】
前記レーザ構成(16)が、前記第1のレーザヘッド(14)または前記第2のレーザヘッド(15)にレーザパルスを偏向させるためにレーザパルスの光路(41)に出入りすることができる可動光学偏光手段(50)を備えることを特徴とする、請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項10】
工作物(11)を機械加工する方法であって、
第1のレーザヘッド(14)に対して前記工作物(11)を位置決めまたは移動の少なくとも1つを実施するステップと、
前記第1のレーザヘッド(14)により前記工作物が熱作用により機械加工される第1の操作モード(I)で、切替え可能なレーザ構成(16)を操作するステップと、
第2のレーザヘッド(15)に対して前記工作物(11)を位置決めまたは移動の少なくとも1つを実施するステップと、
前記第2のレーザヘッド(15)により前記工作物がレーザアブレーションにより機械加工される第2の操作モード(II)で、前記切替え可能なレーザ構成(16)を操作するステップと
を備えることを特徴とする、方法。
【請求項11】
前記レーザ構成(16)の前記第1の操作モード(I)において、レーザパルスが前記ナノ秒の範囲において生成され、前記工作物(11)がレーザ溶融切削により機械加工されることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記レーザ構成(16)の前記第2の操作モード(II)において、ピコ秒の範囲のレーザパルスが生成され、前記工作物(11)がレーザアブレーションにより機械加工されることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記レーザ構成(16)の前記第2の操作モード(II)において、前記工作物(11)が前記第1の操作モード(I)で機械加工されている間に形成される熱の影響を受けた領域(W)が、少なくとも部分的に除去されることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記第2の操作モード(II)において、前記工作物(11)が、切れ刃(62)を生成するために精密機械加工または仕上げ、またはチップ案内ステップ、または表面の構造化の内の少なくとも1つを受けることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記第1の操作モード(I)におけるレーザパルスの平均電力が、前記第2の操作モード(II)におけるよりも大きいことを特徴とする、請求項10に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−166267(P2012−166267A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−28168(P2012−28168)
【出願日】平成24年2月13日(2012.2.13)
【出願人】(510280372)エワーグ アーゲー (3)
【Fターム(参考)】