加熱体、及び加熱装置
【課題】基板の長手方向において発熱抵抗体の発熱分布ムラを低減できるようにした加熱体、及びその加熱体を有する加熱装置の提供。
【解決手段】基板14と、前記基板の長手方向に沿って設けられている発熱抵抗体17と、を有し、サイズの異なる被加熱材を加熱する加熱装置に用いられる加熱体13において、前記基板の長手方向と直交する短手方向における一端側と他端側にそれぞれ前記基板の長手方向に沿って設けられた電極15・16を有し、前記基板の短手方向において前記電極間に前記発熱抵抗体を有し、前記発熱抵抗体を前記基板の短手方向における抵抗値が前記基板の長手方向において連続的に変化するように形成する。
【解決手段】基板14と、前記基板の長手方向に沿って設けられている発熱抵抗体17と、を有し、サイズの異なる被加熱材を加熱する加熱装置に用いられる加熱体13において、前記基板の長手方向と直交する短手方向における一端側と他端側にそれぞれ前記基板の長手方向に沿って設けられた電極15・16を有し、前記基板の短手方向において前記電極間に前記発熱抵抗体を有し、前記発熱抵抗体を前記基板の短手方向における抵抗値が前記基板の長手方向において連続的に変化するように形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加熱材を加熱する加熱体、及びその加熱体を用いる加熱装置に関するものであり、特に、電子写真複写機、電子写真プリンタなどの画像形成装置に搭載される加熱定着装置(定着器)に用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真式の複写機やプリンタに搭載する像加熱装置(定着器)として、セラミックス製の基板上に発熱抵抗体を有するヒータと、ヒータに接触しつつ移動する可撓性部材と、可撓性部材を介してヒータとニップ部を形成する加圧ローラと、を有するものがある。未定着トナー画像を担持する記録材は定着装置のニップ部で挟持搬送されつつ加熱され、これにより記録材上の画像は記録材に加熱定着される。この定着装置は、ヒータへの通電を開始し定着可能温度まで昇温するのに要する時間が短いというメリットを有する。従って、この定着装置を搭載するプリンタは、プリンタ指令の入力後、一枚目の画像を出力するまでの時間(FPOT:first printout time))))を短くできる。またこのタイプの定着装置は、プリント指令を待つ待機中の消費電力が少ないというメリットもある。
【0003】
ところで、可撓性部材を用いた定着装置を搭載するプリンタで小サイズの記録材を大サイズの記録材と同じプリント間隔で連続プリントすると、ヒータの記録材が通過しない領域(非通紙領域)が過度に昇温(いわゆる非通紙部昇温)することが知られている。ヒータの非通紙領域が過昇温すると、ヒータを保持するホルダや加圧ローラが熱により損傷する場合がある。
【0004】
そこで、上記定着装置を搭載するプリンタは、小サイズの記録材を連続プリントする場合、大サイズの記録材に連続プリントする場合よりもプリント間隔を広げる制御を行いヒータの非通紙領域の過昇温を抑えている。
【0005】
しかしながら、プリント間隔を広げる制御は単位時間当りの出力枚数いわゆるスループットを減らすものであり、単位時間当たりの出力枚数を大サイズの記録材の場合と同等或いは若干少ない程度に抑えることが望まれる。
【0006】
特許文献1、2には、非通紙領域において過昇温を抑制できるようにしたヒータが提案されている。そのヒータの一例を図17に示す。
【0007】
ヒータ313は、細長い基板314の長手方向と直交する短手方向(幅方向)の一端側と他端側にそれぞれ該基板314の長手方向に沿って設けられた電極315・316を有する。そしてその電極315・316間に正の抵抗温度係数(PTC:positive temperature coefficient)の発熱抵抗体317を基板314の長手方向に沿って設けている。電極315・316において、315bと316bはそれぞれ発熱抵抗体317に電気的に接続されている導電領域であり、315aと316aはそれぞれ対応する導電領域315b・316bの給電領域である。その給電領域315a・316aに給電コネクタ(不図示)を接続し、その給電コネクタから給電領域315a・316aを通じて導電領域315b・316bに通電することにより発熱抵抗体317が発熱する。
【0008】
上記ヒータにおいて、プリンタに用いられる大サイズの記録材が通過する領域(大サイズ通紙領域D)に小サイズの記録材を通過させた場合には、その小サイズの記録材が通過する領域(小サイズ通紙領域E)の外側に非通紙領域Fが生ずる。小サイズ通紙領域Eでは記録材に熱を奪われるので温度上昇しにくい。そのため小サイズ通紙領域Eの発熱抵抗体115の抵抗値は変動がなく該小サイズ通紙領域Eの発熱体115への通電量は維持される。逆に非通紙領域Fでは記録材に熱を奪われないので温度上昇する。そのため非通紙領域Fの発熱抵抗体115の抵抗値は上昇するので該非通紙領域Fの発熱抵抗体115への通電量は減少する。これにより、小サイズ通紙領域Eでは記録材に対し定着に必要な熱量を供給しつつ、非通紙領域Fでは過昇温が抑えられる。
【特許文献1】特開平5−19652号公報
【特許文献2】特開平7−160131号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところが、実際に上記ヒータを定着器に搭載して調べてみると、記録材を通紙していないにも拘わらず基板の長手方向において発熱抵抗体に発熱分布ムラが発生することが分かった。その理由を検証してみたところ電極の抵抗に原因があることが判明した。基板の長手方向に沿って設けた二本の電極は導電性は高いが抵抗値はゼロではない。従って電極にも自身の抵抗による電圧降下が生じる。そのため、記録材を通紙していない状態であるにも拘わらず、給電コネクタと接触する給電領域に近い側(図17の発熱体のうち左側)の発熱量が大きく、給電領域から遠い側(図17の発熱体のうち右側)の発熱量が小さくなってしまう。
【0010】
そこで、本発明の目的は、基板の長手方向において発熱抵抗体の発熱分布ムラを低減できるようにした加熱体、及びその加熱体を有する加熱装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するための構成は、基板と、前記基板の長手方向に沿って設けられている発熱抵抗体と、を有し、サイズの異なる被加熱材を加熱する加熱装置に用いられる加熱体において、
前記基板の長手方向と直交する短手方向における一端側と他端側にそれぞれ前記基板の長手方向に沿って設けられた電極を有し、前記基板の短手方向において前記電極間に前記発熱抵抗体を有し、前記発熱抵抗体は前記基板の短手方向における抵抗値が前記基板の長手方向において連続的に変化するように形成されていることを特徴とする。
【0012】
また、上記目的を達成するための構成は、基板と前記基板の長手方向に沿って設けられている発熱抵抗体とを有する加熱体と、前記加熱体と接触しつつ移動する可撓性部材と、前記可撓性部材を挟んで前記加熱体とニップ部を形成するバックアップ部材と、を有し、前記ニップ部でサイズの異なる被加熱材を挟持搬送しつつ加熱する加熱装置において、
前記加熱体は、前記基板の長手方向と直交する短手方向における一端側と他端側にそれぞれ前記基板の長手方向に沿って設けられた電極を有し、前記基板の短手方向において前記電極間に前記発熱抵抗体を有し、前記発熱抵抗体は前記基板の短手方向の抵抗値が前記基板の長手方向において連続的に変化するように形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、基板の長手方向において発熱抵抗体の発熱分布ムラを低減できるようにした加熱体、及びその加熱体を有する加熱装置の提供を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0015】
(1)画像形成装置例
図1は本発明に係る加熱装置を加熱定着装置として搭載できる画像形成装置の一例の構成模型図である。この画像形成装置は、転写式電子写真プロセス利用のレーザービームプリンタである。
【0016】
本実施例に示す画像形成装置は、使用可能な最大サイズの記録材はA3サイズ(297mm×420mm)であり、A3サイズの記録材の長辺(420mm)を搬送方向と平行にして搬送できる。また、記録材の搬送基準は後述する定着装置9の発熱抵抗体17の長手方向中央になっている。そして、装置全体を制御する制御手段としてのCPU100が所定の画像形成制御シーケンスを実行することによって画像を記録材に形成する。
【0017】
1は像担持体としての回転ドラム型の電子写真感光体(以下、感光ドラムと記す)である。感光ドラム1は外径約30mmであり、メインモータM1により矢印方向に所定の周速度をもって回転される。その回転過程で感光ドラム1の外周面(表面)が一次帯電手段としての帯電ローラ2により所定の極性・電位に一様に帯電処理される。その帯電処理された感光ドラム1表面に対して露光手段としてのレーザビーム走査露光装置3が目的の画像情報に対応して変調されたレーザー光Lを走査露光する。これにより感光ドラム1表面に画像情報に応じた静電潜像(静電像)が形成される。次いでその潜像が現像手段としての現像装置4によりトナー(現像剤)によってトナー像(現像像)として可視化される。現像装置4は、トナーを収納するトナー容器4aと、現像ローラ4bと、を有する。現像ローラ4bはその外周面(表面)にトナー容器4aから供給されるトナーを担持する。その現像ローラ4aに対し不図示の高圧電源から現像バイアスが印加されることによって現像ローラ4a表面のトナーを感光ドラム1表面に転移させる。そのトナーが静電的に潜像領域に付着して潜像が現像される。
【0018】
一方、感光ドラム1表面と転写手段としての転写ローラ5の外周面(表面)との間の転写ニップ部に不図示の給送機構から被加熱材としての記録材Pが所定の給送タイミングで給送される。その記録材Pは転写ニップ部で挟持搬送され、その搬送過程で高圧電源8から転写ローラ5に転写バイアスを印加することによって感光ドラム1表面のトナー像が記録材P面上に順次に転写されていく。
【0019】
転写ニップ部でトナー像の転写を受けた記録材Pは感光ドラム1表面から分離されて加熱定着装置9へ搬送される。そしてその記録材Pは定着装置9によってトナー像の加熱定着処理を受け、画像形成物(コピー、プリント)として出力される。
【0020】
現像ローラ4bや、転写ローラ5に印加されるバイアスの印加タイミングはセンサ7(以下TOPセンサと称す)のON・OFF信号に基づいて制御される。本実施例では、TOPセンサ7としてフォトインタラプターを使用した。記録材Pへのトナー像転写後の感光ドラム1表面は、クリーニング手段6により転写残りトナー等の残存付着物の除去処理を受け、繰り返して作像に供される。
【0021】
(2)定着装置
図2は定着装置9の一例の横断面模型図である。図3は定着装置9の縦断面模型図である。図4は定着装置9を記録材導入側から見た図である。
【0022】
以下の説明において、定着装置又はその定着装置を構成している部材に関し、長手方向とは記録材の面において記録材搬送方向と直交する方向をいう。短手方向とは記録材の面において記録材搬送方向と平行な方向をいう。厚み方向とは長手方向及び短手方向と直交する方向をいう。また、長さとは長手方向の寸法をいう。幅とは短手方向の寸法をいう。厚さとは厚み方向の寸法をいう。
【0023】
本実施例に示す定着装置9は、加熱体としてのセラミックヒータ13と、可撓性部材としての定着フィルム12と、ガイド部材としてのステー11と、バックアップ部材としての加圧ローラ21と、を有する。ステー11と、フィルム12と、ヒータ13と、加圧ローラ21は、何れも長手方向に細長い部材である。
【0024】
1)ステー
ステー11は、耐熱性及び剛性を有する所定の材料を用いて縦断面樋型形状に形成してある。ステー11の下面中央には長手方向に沿って凹字形状の溝11aが設けられ、その溝11aにヒータ13を保持させている。フィルム12は耐熱性フィルムによりエンドレス(円筒状)に形成してある。そしてそのフィルム12はステー11に外嵌されている。フィルム12の内周長とステー11の外周長はフィルム12の方を例えば3mm程度大きくしてある。従ってフィルム12は周長に余裕を持ってステー11に外嵌させてある。そしてステー11の両端部が不図示の装置側板対に保持されている。
【0025】
2)定着フィルム
フィルム12は、熱容量を小さくしてクイックスタート性を向上させるため、その膜厚は総厚約40〜100μm程度としている。フィルム12の材料として、耐熱性・離型性・強度・耐久性等のあるPI・PTFE・PFA・FEP等の単層フィルムを使用できる。またフィルム12の材料として、ポリイミド・ポリアミドイミド・PEEK・PES・PPS等の外周表面にPTFE・PFA・FEP等をコーティングした複合層フィルムを使用できる。本実施例のフィルム12は、ポリイミドフィルムの外周表面にPTFE・PFA等のフッ素樹脂に導電剤を添加したコート層を設けたものであるが、特にこれに限られず金属等で形成される素管等を用いても良い。
【0026】
3)加圧ローラ
加圧ローラ21は、アルミニウム・鉄・ステンレス等の芯軸22と、この芯軸22の外周に設けられたシリコーンゴム等の離型性のよい耐熱ゴム弾性体層(以下、弾性層と記す)23と、を有する。加圧ローラ21は外径が30mmであり、弾性層23の肉厚は4mmである。また、弾性層23の外周面には、記録材P、フィルム12の搬送性の向上、トナーによる汚れ防止の観点から、フッ素樹脂を分散させたコート層(不図示)が設けてある。フィルム12の下方においてフィルム12と並列に配置された加圧ローラ21は芯軸22の両端部が装置側板対に軸受25L・25Rを介して回転自在に保持されている。この加圧ローラ21に対しフィルム12がステー11を介して加圧バネ等の加圧手段(不図示)により加圧され、その加圧力を受けて加圧ローラ21の弾性層23が弾性変形する。これによって加圧ローラ21はヒータ13との間にフィルム12を挟んで所定幅のニップ部(定着ニップ部)Nを形成している。
【0027】
4)ヒータ
ヒータ13は、長手方向に細長い耐熱性・絶縁性・良熱伝導性の基板14の一面(ニップ部N側の面(以下、表面と記す))に、電極15・16と、発熱抵抗体17と、保護層18と、を有する全体に低熱容量の加熱体である。このヒータ13は、基板14表面において、短手方向における一端側と他端側にそれぞれ基板14の長手方向に沿って設けられた電極15・16を有する。そしてその電極15・16間にPTC(抵抗の正の抵抗温度係数)特性を有する抵抗体17を有する。基板14は、高熱伝導材であるアルミナ及び窒化アルミ等で作られている。電極15・16は、例えばAgやAg/Pd(銀パラジウム)等の電気抵抗材料のペーストを基板14にスクリーン印刷等により塗工したものである。抵抗体17は例えばAg/Pd等の電気抵抗材料のペーストを電極15・16間において基板14にスクリーン印刷等により塗工したものである。電極15・16、及び抵抗体17は保護層18により覆われて保護されている。保護層18としてガラスやフッ素樹脂等が電極15・16、及び抵抗体17上にコートされている。
【0028】
また、ヒータ13は、基板14の他面(ニップ部Nと反対側の面(以下、裏面と記す))に温度検知手段としてのサーミスタ19を有する。サーミスタ19は、安定した定着性を確保するために、ヒータ14裏面の記録材搬送基準部付近(本実施例では抵抗体17の長手方向の中心位置)の温度を検知している。
【0029】
(3)定着装置の加熱定着動作
加圧ローラ21の芯軸22の端部に設けられた駆動ギアG(図4)が定着モータM2により回転駆動されることによって、加圧ローラ21は矢印方向に回転する。加圧ローラ21が回転されるとニップ部Nにおいてフィルム12に加圧ローラ21との摩擦力で移動力が作用する。その移動力によってフィルム12は加圧ローラ21の周速と略同速度をもってフィルム12内面がヒータ13の保護層18表面に接触(摺動)しつつ矢印方向に従動回転される。フィルム12は非回転時においてはヒータ13と加圧ローラ21とのニップ部Nに挟まれている部分を除く残余の大部分の略全周長部分がテンションフリーである。回転時においてはニップ部Nの部分のみにおいてフィルム12にテンションが加わる。
【0030】
CPU100(図2)は、通電制御手段としてのトライアック101をオンする。これにより交流電源102からヒータ13の電極15・16を通じて抵抗体17に通電される。これにより抵抗体17が発熱し、基板14が加熱され、ヒータ13全体が急速昇温する。その昇温に応じて加熱される基板14の温度をサーミスタ19が検知する。CPU100は、サーミスタ19の出力(検知温度)をA/D変換して取り込む。そしてサーミスタ19からの出力に基づいて、トライアック101によりヒータ13に通電する電力を位相制御或いは波数制御等により制御して、ヒータ13の温度制御を行なう。即ち、CPU100は、記録材P上のトナー像tを加熱定着する工程中、サーミスタ19の検知温度が設定温度(目標温度)を維持するようにヒータ13への通電を制御する。つまり、サーミスタ19の検知温度が所定の設定温度より低い場合にはヒータ13が昇温するように、高い場合にはヒータ13が降温するように通電を制御することによって、ヒータ13を設定温度に温調している。加熱定着工程中の設定温度は、加圧ローラ21の温まり具合(連続プリント時のプリント枚数をカウントしたり、連続プリント時の時間をカウントしたりして推測できる)や記録材Pの種類(普通紙、厚紙、樹脂シート等)等に応じてCPU100により設定される。従って、本実施例のプリンタは、記録材Pの種類に応じた複数の設定温度を有するものである。
【0031】
而して、上記の加圧ローラ21及びフィルム12の回転とヒータ13への通電を行なわせた状態において、未定着トナー像tを担持した記録材Pがニップ部Nにトナー像担持面を上向きにして導入される。その記録材Pはフィルム12と一緒にニップ部Nで挟持搬送され、該ニップ部Nにおいてフィルム12内面に接しているヒータ13の熱エネルギーがフィルム12を介して記録材Pに付与され、ニップ部Nにおける加圧力によってトナー像tの熱圧定着がなされる。
【0032】
(4)ヒータの構成
図5(a)は本実施例のヒータ13の一例を表わす図であって、ヒータ13を基板14表面側から見た図である。図5(a)では抵抗体15・16の配置がわかり易いように保護層18は省略してある。
【0033】
基板14はアルミナ製である。基板14のサイズは長さ380mm、幅10mm、厚み1mmである。
【0034】
電極15・16は、例えばAgやAg/Pt等の電気導電材料にガラス粉末を混ぜたペーストを基板14の短手方向における一端側と他端側にそれぞれ基板14の長手方向に沿ってスクリーン印刷したものである。電気導電材料とガラス粉末の配合を変えることで電極15・16の体積抵抗値は調整できる。本実施例の電極15・16の厚みは10μmであり、シート抵抗は10mΩ/□である。また電極15・16において、15bと16bはそれぞれ発熱抵抗体17に電気的に接続されている導電領域であり、15aと16aはそれぞれ対応する導電領域15b・16bの給電領域である。給電領域15aと16aはそれぞれ対応する導電領域15b・16bに給電するためのものである。給電領域15a・16aは基板14の長手方向の一端部側において不図示の給電用コネクタが繋がるように配置され、導電領域15b・16bは抵抗体17に電気的に繋がるように配置されている。導電領域15b・16bの幅は2mmと一定となっている。
【0035】
抵抗体17は、例えばAg/Pd(銀パラジウム)等の電気抵抗材料にガラス粉末等を混ぜたペーストを基板14にスクリーン印刷したものである。この抵抗体17も各材料の配合を変えることで体積抵抗値を調整できる。この抵抗体17は、電極15の導電領域15bと電極16の導電領域16bとを電気的に繋ぐように電極15・16の上から印刷されている。上記のように電極間に配置された抵抗体17の長さは312mmであり、その中心位置が記録材Pの搬送中心となっている。抵抗体17の厚みは10μmであり、シート抵抗は1000Ω/□である。
【0036】
図5(a)に示すように、記録材搬送方向は抵抗体17の長手方向と直交する方向であり、電極15・16から抵抗体17に通電される電流は記録材搬送方向と平行であるので、このようなタイプのヒータを通紙方向通電ヒータと呼ぶことにする。
【0037】
図5(c)は従来のヒータ223の一例を表わす図であって、ヒータ223を基板224表面側から見た図である。
【0038】
図5(c)に示すヒータ223は、発熱抵抗体227を基板224の長手方向に対し往復させる構成、即ち二つの電極225・226間に一つの抵抗体227を導電体228を介して直列に繋いだものである。このようなタイプのヒータ223では、小サイズの記録材が通過した際に、小サイズ通紙領域Eは記録材へ熱が奪われることにより比較的熱が下がるが、非通紙領域Fは熱が奪われないため温度が上昇していく。これは発熱抵抗体は一般的に正の抵抗温度形成(以下、PTC特性と記す)をもつため、温度が上昇するほど抵抗が上昇するためである。
【0039】
これに対して、通紙方向通電タイプのヒータでは、記録材搬送方向に電流の流れが形成されるため、同様なPTC特性をもつ発熱抵抗体を用いても、非通紙領域F等の温度が上昇した場合、抵抗が高い非通紙領域Fへは電流が流れにくくなる。そのため、小サイズ通紙領域Eにおける通電状態が確保されつつ非通紙領域Fにおける過昇温が抑えられるという特性が発生する。この特性はPTC特性が大きいほど大きい。
【0040】
しかしながら、後述の図5(b)に示すような一般的な通紙方向通電タイプのヒータ(図17のヒータ317と同じタイプ)213では、ニップ部Nに記録材Pが通過していない状態において、発熱抵抗体217の全面で均一な通電状態にならない。つまり、電極215・216がコネクタと繋がる側の抵抗体217への通電量が長手方向逆側の通電量より多くなり、発熱分布も電極215・216がコネクタと繋がる側が高く、電極215・216がコネクタと繋がる側と逆側が低くなる現象が発生する。その理由は、電極215・216が抵抗をもっているため電極215・216内の電圧降下が発生し、このことで同じ電極215・216内であっても電流入り口からの距離が遠い所ほど、抵抗体217へ流れ込む電流が減ってしまうからである。このような効果は電極215・216と抵抗体217の体積抵抗が近いほど、より顕著になる。このように抵抗体217の発熱分布にムラがると、定着ムラ、定着不良、ホットオフセット、ヒータ割れなどが発生することがある。
【0041】
そこで、本実施例では、図5(a)に示すように、抵抗体17の幅を基板14の長手方向において一端側から他端側(給電領域15a・16a側から該給電領域15a・16aと反対側)に向かって連続的に狭くなるようにした。つまり、抵抗体17は、基板14の短手方向における抵抗値が基板14の長手方向において連続的に変化する形状に形成してある。
【0042】
図6(a)に抵抗体17の長手方向における幅の分布を示す。横軸は搬送中心からの距離で、マイナス側は給電領域15a・16a側、プラス側はその給電領域15a・16aの反対側となっている。本実施例では、抵抗体17の幅は、給電領域15a・16a側の端部では3.76mmであり、そこから給電領域15a・16aの反対方向に行くに従って連続的に狭くなり、給電領域15a・16aの反対側の端部では2.72mmとなるように設定してある。抵抗体17の幅を上記のように設定したことによって、抵抗体17の基板14の短手方向における抵抗値は、基板14の長手方向において導電領域15b・16bが給電領域15a・16aに電気的に最も近い位置(一端部)で最大となる。
【0043】
1)比較実験例1
本実施例の通紙方向通電ヒータ13と、長手方向で発熱抵抗体幅が一定である従来例の通紙方向通電ヒータとで、長手方向の温度分布の比較を行った結果を説明する。
【0044】
従来例の通紙方向通電ヒータとして、図5(b)に示すヒータ213を用いた。従来例のヒータ213は、抵抗体217の幅が3mm(図6(a)に記載)と一定であることと、抵抗体217と電気的に繋がる導電領域215b・216bの長手形状がストレートであること以外は、本実施例のヒータ13と同じ構成、配置としてある。導電領域215b・216bの幅も本実施例と同じ2mmである。
【0045】
図6(b)に、それぞれのヒータ13・213単品を用いて、ヒータ13・213の温度が200℃になるように120Vで通電制御したときの、発熱ムラをサーモグラフィーで測定したときの結果を示す。ヒータ13・213への通電は、通紙領域のヒータ裏面中心にサーミスタを配し、このサーミスタの検知温度が200℃を維持するように制御した。この比較は記録材を通過させていない時のものである。
【0046】
図6(b)に示すように、本実施例の通紙方向通電ヒータ13では、長手方向全域に渡って温度分布が一定である。これに対して、従来例のヒータ213では、給電領域215a・216a側の端部で250℃、給電領域215a・216aと反対側の端部で183℃である。従って給電領域215a・216a側の端部と給電領域215a・216aと反対側の端部とで約67℃の温度ムラが発生した。
【0047】
このように本実施例の通紙方向通電ヒータ13は、基板14の長手方向で抵抗体17の幅を連続的に変化させることにより、該抵抗体17の基板14の短手方向における抵抗値が基板14の長手方向において連続的に変化する。つまり、抵抗体17の長手方向の抵抗分布が連続的に変化する。従って、この通紙方向通電ヒータ13を用いることにより、従来の通紙方向通電ヒータ213に発生する温度ムラを解消することが出来る。
【0048】
2)比較実験例2
本実施例の通紙方向通電ヒータ13が非通紙領域昇温に効果があることを確認するために、通紙方向通電ヒータではないタイプの従来例のヒータとの比較を行なった。
【0049】
従来例のヒータとして、図5(c)に示す発熱抵抗体往復パターンのヒータ223を用いた。このヒータ223の基板224は本実施例のヒータ13の基板14と同じものであり、電極225・226の材質及び厚さも本実施例のヒータ13の給電領域15a・16aと同じである。抵抗体227の厚みは10μmで、シート抵抗は40mΩ/□である。また抵抗体227はPTC特性を有する。電極225・226は基板224の長手方向一端部側に配されている。電極225・226と電気的に繋がる抵抗体227の幅は2mmである。抵抗体227の長さは312mmで基板224の長手方向に沿って往復に配されている。228は二本の抵抗体227を繋ぐ導電体であって、材料及び厚さも電極225・226と同じである。
【0050】
本実施例のヒータ13と従来例のヒータ223をそれぞれ同じ構成の定着器に組み込み、ニップ部に記録材を通過させた時の、ヒータ13・223の長手方向に対する非通紙領域と通紙領域との加圧ローラの表面温度を比較した。条件としては、室温23度、湿度50%の環境下において、幅が100mmのはがきを連続10枚通紙した後の温度を、熱電対で測定した。ヒータ13・223の制御としては、通紙領域のヒータ裏面中心にサーミスタを配し、このサーミスタの検知温度が200℃を維持するように120Vで通電制御した。
【0051】
結果としては、従来例のヒータ223では、通紙領域の加圧ローラ表面の温度は160℃、及び非通紙領域の加圧ローラ表面の温度は250℃であった。これに対し、本実施例のヒータ13では、通紙領域の加圧ローラ表面の温度が160℃、及び非通紙領域の加圧ローラ表面の温度は200℃であった。よって本実施例の通紙方向通電ヒータ13は、従来の通紙方向通電ヒータではないヒータ223に対して、非通紙領域の温度にして50℃のマージンアップが図られている。
【0052】
このように本実施例の通紙方向通電ヒータ13でも、従来の通紙方向通電ヒータと同様に非通紙領域昇温に対してメリットがあることが確認された。
【0053】
本実施例のヒータ13は、ニップ部Nに記録材Pが通過していない状態での抵抗体17の基板14の長手方向における温度分布ムラを解消することができるので、一つのプリンタで利用できる最大サイズの記録材Pを定着する際の定着ムラも抑えることができる。
また、サイズの異なる記録材Pとして例えばはがき等の小サイズの記録材Pをニップ部Nに通過させた際の小サイズ通紙領域Eと非通紙領域Fとの温度差を減少させることが可能となる。そのため、小サイズの記録材Pをプリントする際の単位時間あたりの出力枚数の低下を抑えることができる。
【実施例2】
【0054】
ヒータの他の例を説明する。
【0055】
実施例1では、ヒータの発熱抵抗体の長手方向の抵抗分布を連続的に変化させるために、発熱抵抗体の短手方向の幅を基板の長手方向において連続的に変化させた。
【0056】
これに対し本実施例では、ヒータの発熱抵抗体の長手方向の抵抗分布を連続的に変化させるために、発熱抵抗体の厚さを基板の長手方向において連続的に変化させるようにしたものである。
【0057】
図7は本実施例に係るヒータを表わす図であって、ヒータを基板表面側から見た図である。図7では発熱抵抗体の配置がわかり易いように保護層は省略してある。
【0058】
図7において、114は耐熱特性及び絶縁特性に優れたセラミック等の基板である。基板114は、実施例1のヒータと同様、アルミナ製の基板であり、サイズは長さ380mm、幅10mm、厚み1mmである。
【0059】
115及び116は基板114上に形成された電極であり、例えばAgやAg/Pt等の電気導電材料にガラス粉末を混ぜたペーストを基板114の短手方向における一端側と他端側にそれぞれ基板114の長手方向に沿ってスクリーン印刷したものである。電気導電材料とガラス粉末の配合を変えることで電極115・116の体積抵抗値は調整できる。電極115・116は、実施例1と同じ構成である。即ち、厚みは10μm、シート抵抗は10mΩ/□である。また電極115・116の給電領域115a及び116aには給電用コネクタが繋がれ、さらに導電領域115b及び116bは発熱抵抗体117に電気的に繋がるように配置されている。導電領域115b・116bの幅は2mmと一定となっている。
【0060】
117は基板114表面上に形成された発熱抵抗体であり、例えばAg/Pd(銀パラジウム)等の電気抵抗材料にガラス粉末等を混ぜたペーストを基板114にスクリーン印刷したものである。この抵抗体117も各材料の配合を変えることで体積抵抗値を調整できる。抵抗体117は、電極115の通電領域115bと電極116の通電領域116bとを電気的に繋ぐように電極115・116の上から印刷されている。サイズは幅が3mm、長さが312mmであり、その中心位置が記録材Pの搬送中心となっている。また、抵抗体117は、シート抵抗が1000Ω/□であり、PTC特性を有する。
【0061】
本実施例のヒータ113において、抵抗体117の厚さは、基板114の長手方向において電極115・116の給電領域115a・116a側から該給電領域115a・116aと反対側に向かって連続的に厚くなっている。
【0062】
図8(a)に抵抗体117の長手方向における厚さの分布を示す。横軸は搬送中心からの距離で、マイナス側は給電領域115a・116a側、プラス側はその給電領域115a・116aの反対側となっている。本実施例では、抵抗体117の厚さは、給電領域115a・116a側の端部では7.96μmである。そしてそこから給電領域115a・116aの反対方向に行くに従って連続的に厚くなり、給電領域115a・116aの反対側の端部では11.05μmとなるように設定している。抵抗体117の厚さを上記のように設定したことによって、抵抗体117の基板114の短手方向における抵抗値は、基板114の長手方向において導電領域115b・116bが給電領域115a・116aに電気的に最も近い位置(一端部)で最大となる。
【0063】
1)比較実験例1
本実施例の通紙方向通電ヒータ113と、長手方向で発熱抵抗体厚さが一定である従来例の通紙方向通電ヒータとで、長手方向の温度分布の比較を行った結果を説明する。
【0064】
従来例の通紙方向通電ヒータとして、図5(b)に示すヒータ213を用いた。そのヒータ213は発熱抵抗体217の厚さのみが10μm(図8(a)に記載)と一定である以外は、本実施例のヒータ113と同じ構成、配置としてある。
【0065】
図8(b)に、それぞれのヒータ113・213単品を用いて、ヒータ113・213の温度が200℃になるように120Vで通電制御したときの、発熱ムラをサーモグラフィーで測定したときの結果を示す。ヒータ113・213への通電は、通紙領域のヒータ裏面中心にサーミスタを配し、このサーミスタの検知温度が200℃を維持するように制御した。この比較は記録材を通過させていない時のものである。
【0066】
図8(b)に示すように、本実施例の通紙方向通電ヒータ113では、長手方向全域に渡って温度分布が一定である。これに対して、従来例のヒータ213では、給電領域215a・216a側の端部で250℃、給電領域215a・216aと反対側の端部で183℃である。従って給電領域215a・216a側の端部と給電領域215a・216aと反対側の端部とで約67℃の温度ムラが発生した。
【0067】
このように本実施例の通紙方向通電ヒータ113は、基板114の長手方向で抵抗体117の厚さが連続的に変化することにより、該抵抗体17の基板14の短手方向における抵抗値が基板14の長手方向において連続的に変化する。つまり、抵抗体17の長手方向の抵抗分布が連続的に変化する。従って、実施例1のヒータ13と同じ作用効果を得ることができる。
【0068】
2)比較実験例2
本実施例の通紙方向通電ヒータ113が非通紙領域昇温に効果があることを確認するために、通紙方向通電ヒータではないタイプの従来例のヒータとの比較を行った。
【0069】
従来例のヒータとして、発熱抵抗体往復パターンのヒータを用いた。その従来例のヒータの構成は、実施例1の比較実験例2におけるヒータ223と同じであるため、その説明を援用する。
【0070】
本実施例のヒータ113と従来例のヒータ223をそれぞれ同じ構成の定着器に組み込み、ニップ部に記録材を通過させた時の、ヒータ113・223の長手方向に対する非通紙領域と通紙領域との加圧ローラの表面温度を比較した。条件としては、室温23度、湿度50%の環境下において、幅が100mmのはがきを連続10枚通紙した後の温度を、熱電対で測定した。ヒータ113・223の制御としては、通紙領域のヒータ裏面中心にサーミスタを配し、このサーミスタの検知温度が200℃を維持するように120Vで通電制御した。
【0071】
結果としては、従来例のヒータ223では、通紙領域の加圧ローラ表面の温度は160℃、及び非通紙領域の加圧ローラ表面の温度は250℃であった。これに対し、本実施例のヒータ113では、通紙領域の加圧ローラ表面の温度が160℃、及び非通紙領域の加圧ローラ表面の温度は200℃であった。よって本実施例の通紙方向通電ヒータ113は、従来の通紙方向通電ヒータではないヒータ223に対して、非通紙領域の温度にして50℃のマージンアップが図られている。
【0072】
このように本実施例の通紙方向通電ヒータ113でも、従来の通紙方向通電ヒータと同様に非通紙領域昇温に対してメリットがあることが確認された。
【0073】
従って、本実施例のように、基板114の長手方向において抵抗体117の厚さが連続的に変化するヒータ113においても、実施例1のヒータ13と同様、一つのプリンタで利用できる最大サイズの記録材Pを定着する際の定着ムラを抑えることができる。また、小サイズ紙をプリントする際の単位時間あたりの出力枚数の低下を抑えることができる。
【実施例3】
【0074】
ヒータの他の例を説明する。
【0075】
実施例1では、ヒータの給電領域は基板の長手方向の一端部側にまとめられていた。
【0076】
これに対し本実施例では、ヒータの給電領域を基板の長手方向の両端部側に配置するようにしたものである。
【0077】
図9(a)は本実施例に係るヒータを表わす図であって、ヒータを基板表面側から見た図である。図9(a)では発熱抵抗体の配置がわかり易いように保護層は省略してある。
【0078】
図9(a)において、124は耐熱特性及び絶縁特性に優れたセラミック等の基板である。基板124は、実施例1のヒータと同様、アルミナ製の基板であり、サイズは長さ380mm、幅10mm、厚み1mmである。
【0079】
125及び126は基板124上に形成された電極であり、例えばAgやAg/Pt等の電気導電材料にガラス粉末を混ぜたペーストを基板124の短手方向における一端側と他端側にそれぞれ基板124の長手方向に沿ってスクリーン印刷したものである。電気導電材料とガラス粉末の配合を変えることで電極125・126の体積抵抗値は調整できる。電極125・126は、実施例1と同じ構成である。即ち、厚みは10μm、シート抵抗は10mΩ/□である。また電極125・126の給電領域125a及び126aには給電用コネクタが繋がれ、さらに通電領域125b及び126bは発熱抵抗体127に電気的に繋がるように配置されている。通電領域125b・126bの幅は2mmと一定となっている。
【0080】
127は基板124表面上に形成された発熱抵抗体であり、例えばAg/Pd(銀パラジウム)等の電気抵抗材料にガラス粉末等を混ぜたペーストを基板124にスクリーン印刷したものである。この抵抗体127も各材料の配合を変えることで体積抵抗値を調整できる。抵抗体127は、電極125の通電領域125bと電極126の通電領域126bとを電気的に繋ぐように電極125・126の上から厚さが10μmになるように印刷されている。サイズは幅が3mm、長さが312mmであり、その中心位置が記録材Pの搬送中心となっている。また、抵抗体127は、シート抵抗が1000Ω/□であり、PTC特性を有する。
【0081】
本実施例のヒータ123において、抵抗体127の幅は、基板127の長手方向において給電領域125a・126a側から長手中心位置(搬送中心)に向かって連続的に狭くなっている。
【0082】
図10(a)に抵抗体127の長手方向における幅の分布を示す。横軸は搬送中心からの距離で、マイナス側は給電領域125a側、プラス側は給電領域126a側となっている。本実施例では、抵抗体127の幅は、給電領域125a・126a側の端部では3.16mmであり、そこから抵抗体127の中心方向に行くに従って連続的に狭くなり、中心位置では2.92mmとなるように設定している。抵抗体127の幅を上記のように設定したことによって、抵抗体127の基板124の短手方向における抵抗値は、基板124の長手方向において導電領域125b・126bが給電領域125a・126aに電気的に最も近い位置(両端部)で最大となる。
【0083】
1)比較実験例1
本実施例の通紙方向通電ヒータ123と、長手方向で発熱抵抗体の通紙方向幅が一定である従来例の通紙方向通電ヒータとで、長手方向の温度分布の比較を行った結果を説明する。
【0084】
従来例の通紙方向通電ヒータとして、図9(b)に示すヒータ233を用いた。そのヒータ233は発熱抵抗体237の幅のみが3mm(図10(a)に記載)と一定である以外は、本実施例のヒータ123と同じ構成、配置としてある。
【0085】
図10(b)に、それぞれのヒータ123・233単品を用いて、ヒータ123・233の温度が200℃になるように120Vで通電制御したときの、発熱ムラをサーモグラフィーで測定したときの結果を示す。ヒータ123・233への通電は、通紙領域のヒータ裏面中心にサーミスタを配し、このサーミスタの検知温度が200℃を維持するように制御した。この比較は記録材を通過させていない時のものである。
【0086】
図10(b)に示すように、本実施例の通紙方向通電ヒータ123では、長手方向全域に渡って温度分布が一定である。これに対して、従来例のヒータ233では、給電領域235a・236a側の端部で217℃、中心位置で200℃である。従って給電領域235a・236a側の端部は中心位置に対して約17℃の温度ムラが発生した。
【0087】
このように本実施例の通紙方向通電ヒータ123は、基板124の長手方向で抵抗体127の幅が連続的に変化することにより、該抵抗体127の基板124の短手方向における抵抗値が基板124の長手方向において連続的に変化する。つまり、抵抗体127の長手方向の抵抗分布が連続的に変化する。従って、実施例1のヒータ13と同じ作用効果を得ることができる。
【0088】
2)比較実験例2
本実施例の通紙方向通電ヒータ123が非通紙領域昇温に効果があることを確認するために、通紙方向通電ヒータではないタイプの従来例のヒータとの比較を行った。
【0089】
従来例のヒータとして、発熱抵抗体往復パターンのヒータを用いた。その従来例のヒータの構成は、実施例1の比較実験例2におけるヒータ223と同じであるため、その説明を援用する。
【0090】
本実施例のヒータ123と従来例のヒータ223をそれぞれ同じ構成の定着器に組み込み、ニップ部に記録材を通過させた時の、ヒータ123・223の長手方向に対する非通紙領域と通紙領域との加圧ローラの表面温度を比較した。条件としては、室温23度、湿度50%の環境下において、幅が100mmのはがきを連続10枚通紙した後の温度を、熱電対で測定した。ヒータ123・223の制御としては、通紙領域のヒータ裏面中心にサーミスタを配し、このサーミスタの検知温度が200℃を維持するように120Vで通電制御した。
【0091】
結果としては、従来例のヒータ223では、通紙領域の加圧ローラ表面の温度は160℃、及び非通紙領域の加圧ローラ表面の温度は250℃であった。これに対し、本実施例のヒータ123では、通紙領域の加圧ローラ表面の温度が160℃、及び非通紙領域の加圧ローラ表面の温度は200℃であった。よって本実施例の通紙方向通電ヒータ123は、従来の通紙方向通電ヒータではないヒータ233に対して、非通紙領域の温度にして50℃のマージンアップが図られている。
【0092】
このように本実施例の通紙方向通電ヒータ123でも、従来の通紙方向通電ヒータと同様に非通紙領域昇温に対してメリットがあることが確認された。
【0093】
従って、本実施例のように、基板124の長手方向において抵抗体127の幅が該抵抗体127の中心方向に向かって連続的に狭くなるように変化するヒータ123においても、実施例1のヒータ13と同じ作用効果を得ることができる。即ち、一つのプリンタで利用できる最大サイズの記録材Pを定着する際の定着ムラを抑えることができる。また、小サイズ紙をプリントする際の単位時間あたりの出力枚数の低下を抑えることができる。
【実施例4】
【0094】
ヒータの他の例を説明する。
【0095】
実施例3では、ヒータの発熱抵抗体の長手方向の抵抗分布を連続的に変化させるために、発熱抵抗体の幅を長手方向で連続的に変化させた。
【0096】
これに対し本実施例では、ヒータの給電領域を基板の長手方向の両端部側に配置するとともに、発熱抵抗体の長手方向の抵抗分布を連続的に変化させるために、発熱抵抗体の厚さを長手方向で連続的に変化させるようにしたものである。
【0097】
図11は本実施例に係るヒータを表わす図であって、ヒータを基板表面側から見た図である。図11では発熱抵抗体の配置がわかり易いように保護層は省略してある。
【0098】
図11において、134は耐熱特性及び絶縁特性に優れたセラミック等の基板である。基板134は、実施例1のヒータと同様、アルミナ製の基板であり、サイズは長さ380mm、幅10mm、厚み1mmである。
【0099】
135及び136は基板134表面上に形成された電極であり、例えばAgやAg/Pt等の電気導電材料にガラス粉末を混ぜたペーストを基板134の短手方向における一端側と他端側にそれぞれ基板134の長手方向に沿ってスクリーン印刷したものである。電気導電材料とガラス粉末の配合を変えることで電極135・136の体積抵抗値は調整できる。電極135・136は、実施例1と同様の構成である。即ち、厚みは10μm、シート抵抗は10mΩ/□である。また電極135・136の給電領域135a及び136aには給電用コネクタが繋がれ、さらに通電領域135b及び136bは抵抗体137に電気的に繋がるように配置されている。通電領域135b・136bの幅は2mmと一定となっている。
【0100】
137は基板134表面上に形成された発熱抵抗体であり、例えばAg/Pd(銀パラジウム)等の電気抵抗材料にガラス粉末等を混ぜたペーストを基板134にスクリーン印刷したものである。この抵抗体137も各材料の配合を変えることで体積抵抗値を調整できる。抵抗体137は、電極135の通電領域135aと電極136の通電領域136aとを電気的に繋ぐように電極135・136の上から印刷されている。サイズは幅が3mm、長さが312mmであり、その中心位置が記録材Pの搬送中心となっている。また、抵抗体137は、シート抵抗が1000Ω/□であり、PTC特性を有する。
【0101】
本実施例のヒータ133において、抵抗体137の厚さは、基板134の長手方向において給電領域135a・136a側から長手中心位置(搬送中心)に向かって連続的に厚くなっている。
【0102】
図12(a)に抵抗体137の長手方向における厚さの分布を示す。横軸は搬送中心からの距離で、マイナス側は給電領域135a側、プラス側は給電領域136a側となっている。本実施例では、抵抗体137の厚さは、給電領域135a・136a側の端部では9.48μmであり、そこから抵抗体137の中心方向に行くに従って連続的に厚くなり、中心位置では10.28μmとなるように設定している。抵抗体137の厚さを上記のように設定することによって、抵抗体137の基板134の短手方向における抵抗値は、基板134の長手方向において導電領域135b・136bが給電領域135a・136aに電気的に最も近い位置(両端部)で最大となる。
【0103】
1)比較実験例1
本実施例の通紙方向通電ヒータ133と、長手方向で発熱抵抗体厚さが一定である従来例の通紙方向通電ヒータとで、長手方向の温度分布の比較を行った結果を説明する。
【0104】
従来例の通紙方向通電ヒータとして、は図9(b)に示すヒータ233を用いた。そのヒータ233は発熱抵抗体237の厚さのみが10μm(図12(a)に記載)と一定である以外は、本実施例のヒータ137と同じ構成、配置としてある。
【0105】
図12(b)に、それぞれのヒータ133・233単品を用いて、ヒータ133・233の温度が200℃になるように120Vで通電制御したときの、発熱ムラをサーモグラフィーで測定したときの結果を以下に示す。ヒータ133・233への通電は、通紙領域のヒータ裏面中心にサーミスタを配し、このサーミスタの検知温度が200℃を維持するように制御した。この比較は記録材を通紙していない時のものである。
【0106】
図12(b)に示すように、本実施例の通紙方向通電ヒータ133では長手方向全域に渡って温度分布が一定である。これに対して、従来例のヒータ233では、給電領域235a・236a側の端部で217℃、中心位置で200℃である。従って給電領域235a・236a側の端部は中心位置に対して約17℃の温度ムラが発生した。
【0107】
このように本実施例の通紙方向通電ヒータ133は、基板134の長手方向で抵抗体137の厚さが連続的に変化することにより、該抵抗体137の基板134の短手方向における抵抗値が基板134の長手方向において連続的に変化する。つまり、抵抗体137の長手方向の抵抗分布が連続的に変化する。従って、実施例1のヒータ13と同じ作用効果を得ることができる。
【0108】
2)比較実験例2
本実施例の通紙方向通電ヒータ133が非通紙領域昇温に効果があることを確認するために、通紙方向通電ヒータではないタイプの従来例のヒータとの比較を行った。
【0109】
従来例のヒータとして、発熱抵抗体往復パターンのヒータ13を用いた。その従来例のヒータの構成は、実施例1の比較実験例2におけるヒータ223と同じであるため、その説明を援用する。
【0110】
本実施例のヒータ133と従来例のヒータ223をそれぞれ同じ構成の定着器に組み込み、ニップ部に記録材を通過させた時の、ヒータ133・223の長手方向に対する非通紙領域と通紙領域との加圧ローラの表面温度を比較した。条件としては、室温23度、湿度50%の環境下において、幅が100mmのはがきを連続10枚通紙した後の温度を、熱電対で測定した。ヒータ133・223の制御としては、通紙領域のヒータ裏面中心にサーミスタを配し、このサーミスタの検知温度が200℃を維持するように120Vで通電制御した。
【0111】
結果としては、従来例のヒータ223では、通紙領域の加圧ローラ表面の温度は160℃、及び非通紙領域の加圧ローラ表面の温度は250℃であった。これに対し、本実施例のヒータ133では、通紙領域の加圧ローラ表面の温度が160℃、及び非通紙領域の加圧ローラ表面の温度は200℃であった。よって本実施例の通紙方向通電ヒータ133は、従来の通紙方向通電ヒータではないヒータ223に対して、非通紙領域の温度にして50℃のマージンアップが図られている。
【0112】
このように本実施例の通紙方向通電ヒータ133でも、従来の通紙方向通電ヒータと同様に非通紙領域昇温に対してメリットがあることが確認された。
【0113】
従って、本実施例のように、基板134の長手方向において抵抗体137の厚さが該抵抗体127の中心方向に向かって連続的に厚くなるように変化するヒータ133においても、実施例1のヒータ13と同じ作用効果を得ることができる。即ち、一つのプリンタで利用できる最大サイズの記録材Pを定着する際の定着ムラを抑えることができる。また、小サイズ紙をプリントする際の単位時間あたりの出力枚数の低下を抑えることができる。
【実施例5】
【0114】
ヒータの他の例を説明する。
【0115】
実施例1乃至実施例4のヒータにおいて、発熱抵抗体と電気的に繋がる通電電極の長手領域のうち、給電領域に最も電位的に近い位置は、通電電極の片側端部または両端部であった。
【0116】
これに対し本実施例では、ヒータの発熱抵抗体と電気的に繋がる通電電極の長手領域のうち、給電領域に最も電位的に近い位置を、発熱抵抗体長手中心に配置するようにしたものである。
【0117】
図13(a)は本実施例に係るヒータを表わす図であって、(a−1)はヒータを基板表面側から見た図、(a−2)はヒータを基板裏面側から見た図である。図13(a)の(a−1)では発熱抵抗体の配置がわかり易いように保護層は省略してある。
【0118】
図13(a)において、144は耐熱特性及び絶縁特性に優れたセラミック等の基板である。基板144は、実施例1のヒータと同様、アルミナ製の基板であり、サイズは長さ380mm、幅10mm、厚み1mmである。基板144の長手方向中央には、基板144の表面と裏面を貫通する第1の孔145h1・146h1が設けられている。また、基板144の一端部内側には基板144の表面と裏面を貫通する第2の孔145h2・146h2が設けられている。この第1の孔145h1・146h1及び第2の孔145h2・146h2には下記の電極145・146と同じペーストが流し込まれている。
【0119】
145及び146は基板144の表面と裏面にそれぞれ形成された電極である。この電極145・146は、例えばAgやAg/Pt等の電気導電材料にガラス粉末を混ぜたペーストを基板144の短手方向における一端側と他端側にそれぞれ基板144の長手方向に沿ってスクリーン印刷したものである。電気導電材料とガラス粉末の配合を変えることで電極145・146の体積抵抗値は調整できる。電極145・146は、実施例1と同様の構成である。即ち、厚みは10μm、シート抵抗は10mΩ/□である。
【0120】
電極145・146において、基板144の表面に形成された給電領域145a・146aには給電用コネクタが繋がれ、通電領域145b・146bは発熱抵抗体147と電気的に繋がるように配置されている。給電領域145aと通電領域145bは、基板144の第1の孔145h1及び第2の孔145h2に流し込まれたペーストにより形成された貫通領域(不図示)と、基板144の裏面に形成された繋ぎ領域145cと、によって繋がっている。同様に、給電領域146aと通電領域146bは、基板144の第1の孔146h1及び第2の孔146h2に流し込まれたペーストにより形成された貫通領域(不図示)と、基板144の裏面に形成された繋ぎ領域146cと、によって繋がっている。そして通電領域145b・146bの幅は2mmと一定となっている。
【0121】
147は基板144上に形成された発熱抵抗体であり、例えばAg/Pd(銀パラジウム)等の電気抵抗材料にガラス粉末等を混ぜたペーストを基板144にスクリーン印刷したものである。この抵抗体147も各材料の配合を変えることで体積抵抗値を調整できる。抵抗体147は、電極145の通電領域145bと電極146の通電領域146bとを電気的に繋ぐように電極145・146の上から厚さが10μmになるように印刷されている。抵抗体147の長さは312mmで、その中心位置が記録材Pの搬送中心となっている。また、抵抗体147は、シート抵抗が1000Ω/□であり、PTC特性を有する。
【0122】
本実施例において、抵抗体147の幅は、通電領域145b・146bの長手領域のうち、給電領域145a・146aに最も電位的に近い通電領域145b・146bの長手中心から両端部に向かって連続的に狭くなっている。
【0123】
図14(a)に抵抗体147の長手方向における幅の分布を示す。横軸は搬送中心からの距離で、マイナス側は給電領域145a・146a側、プラス側はその給電領域145a・146aの反対側となっている。本実施例では、抵抗体147の幅は、長手中心位置で3.28mmであり、そこから端部方向に行くに従って連続的に狭くなり、両端部で3.06mmとなるように設定している。抵抗体147の幅を上記のように設定したことによって、抵抗体147の基板144の短手方向における抵抗値は、基板144の長手方向において導電領域145b・146bが給電領域145a・146aに電気的に最も近い位置(中央部)で最大となる。
【0124】
1)比較実験例1
本実施例の通紙方向通電ヒータ143と、長手方向で発熱抵抗体幅が一定である従来例の通紙方向通電ヒータとで、長手方向の温度分布の比較を行った結果を説明する。
【0125】
従来例の通紙方向通電ヒータとして、図13(b)に示すヒータ243を用いた。従来例のヒータ243は発熱抵抗体247の幅のみが3mm(図14(a)に記載)と一定である以外は、本実施例のヒータ143と同じ構成、配置をしている。
【0126】
即ち、ヒータ243において、244は耐熱特性及び絶縁特性に優れたセラミック等の基板である。基板244は、アルミナ製の基板であり、サイズは長さ380mm、幅10mm、厚み1mmである。基板244の長手方向中央には、基板244の表面と裏面を貫通する第1の孔245h1・246h1が設けられている。また、基板244の一端部内側には基板244の表面と裏面を貫通する第2の孔245h2・246h2が設けられている。この第1の孔245h1・246h1及び第2の孔245h2・246h2には下記の電極245・246と同じペーストが流し込まれている。
【0127】
245及び246は基板244の表面と裏面にそれぞれ形成された電極である。この電極245・246は、例えばAgやAg/Pt等の電気導電材料にガラス粉末を混ぜたペーストを基板244の短手方向における一端側と他端側にそれぞれ基板244の長手方向に沿ってスクリーン印刷したものである。電極245・246において、厚みは10μm、シート抵抗は10mΩ/□である。
【0128】
電極245・246において、基板244の表面に形成された給電領域245a・246aには給電用コネクタが繋がれ、通電領域245b・246bは発熱抵抗体247と電気的に繋がるように配置されている。給電領域245aと通電領域245bは、基板244の第1の孔245h1及び第2の孔245h2に流し込まれたペーストにより形成された貫通領域(不図示)と、基板244の裏面に形成された繋ぎ領域245cと、によって繋がっている。同様に、給電領域246aと通電領域246bは、基板244の第1の孔246h1及び第2の孔246h2に流し込まれたペーストにより形成された貫通領域(不図示)と、基板244の裏面に形成された繋ぎ領域246cと、によって繋がっている。そして通電領域245b・246bの幅は3mmと一定となっている。
【0129】
図14(a)に、それぞれのヒータ143・243単品を用いて、ヒータ143・243の温度が200℃になるように120Vで通電制御したときの、発熱ムラをサーモグラフィーで測定したときの結果を以下に示す。ヒータ143・243の通電は、通紙領域のヒータ裏面中心にサーミスタを配し、このサーミスタの検知温度が200℃を維持するように制御した。この比較は記録材を通過させていない時のものである。
【0130】
図14(b)に示すように、本実施例の通紙方向通電ヒータ143では、長手方向全域に渡って温度分布が一定である。これに対して、従来例のヒータ243では、抵抗体247の端部位置で186℃、中心位置で200℃である。従って抵抗体247の端部位置は中心位置に対して約14℃の温度ムラが発生した。
【0131】
このように本実施例の通紙方向通電ヒータ143は、抵抗体147の幅が、通電領域145b・146bの長手領域のうち、給電領域145a・146aに最も電位的に近い通電領域145b・146bの長手中心から両端部に向かって連続的に狭くなっている。これにより、抵抗体147の基板144の短手方向における抵抗値が基板144の長手方向において連続的に変化する。つまり、抵抗体147の長手方向の抵抗分布が連続的に変化する。従って、実施例1のヒータ13と同じ作用効果を得ることができる。
【0132】
2)比較実験例2
本実施例の通紙方向通電ヒータ143が非通紙領域昇温に効果があることを確認するために、通紙方向通電ヒータではないタイプの従来例のヒータとの比較を行った。
【0133】
従来例のヒータとして、発熱抵抗体往復パターンのヒータを用いた。その従来例のヒータの構成は、実施例1の比較実験例2におけるヒータ223と同じであるため、その説明を援用する。
【0134】
本実施例のヒータ143と従来例のヒータ223をそれぞれ同じ構成の定着器に組み込み、ニップ部に記録材を通過させた時の、ヒータ143・223の長手方向に対する非通紙領域と通紙領域との加圧ローラの表面温度を比較した。条件としては、室温23度、湿度50%の環境下において、幅が100mmのはがきを連続10枚通紙した後の温度を、熱電対で測定した。ヒータ143・223の制御としては、通紙領域のヒータ裏面中心にサーミスタを配し、このサーミスタの検知温度が200℃を維持するように120Vで通電制御した。
【0135】
結果としては、従来例のヒータ223では、通紙領域の加圧ローラ表面の温度は160℃、及び非通紙領域の加圧ローラ表面の温度は250℃であった。これに対し、本実施例のヒータ143では、通紙領域の加圧ローラ表面の温度が160℃、及び非通紙領域の加圧ローラ表面の温度は200℃であった。よって本実施例の通紙方向通電ヒータ143は、従来の通紙方向通電ヒータではないヒータ223に対して、非通紙領域の温度にして50℃のマージンアップが図られている。
【0136】
このように本実施例の通紙方向通電ヒータ143でも、従来の通紙方向通電ヒータと同様に非通紙領域昇温に対してメリットがあることが確認された。
【0137】
従って、本実施例のヒータ143においても、実施例1のヒータ13と同じ作用効果を得ることができる。即ち、一つのプリンタで利用できる最大サイズの記録材Pを定着する際の定着ムラを抑えることができる。また、小サイズ紙をプリントする際の単位時間あたりの出力枚数の低下を抑えることができる。
【実施例6】
【0138】
実施例5では、ヒータの発熱抵抗体の長手方向の抵抗分布を連続的に変化させるために、発熱抵抗体の幅を長手方向で連続的に変化させた。
【0139】
これに対し本実施例では、ヒータの発熱抵抗体の長手方向の抵抗分布を連続的に変化させるために、発熱抵抗体の厚さを長手方向で連続的に変化させるようにしたものである。
【0140】
図15は本実施例に係るヒータ153を表わす図であって、(a)はヒータを基板表面から見た図、(b)はヒータを基板裏面から見た図である。図15(a)では発熱抵抗体の配置がわかり易いように保護層は省略してある。
【0141】
図15において、154は耐熱特性及び絶縁特性に優れたセラミック等の基板である。基板154は、実施例1のヒータと同様、アルミナ製の基板であり、サイズは長さ380mm、幅10mm、厚み1mmである。基板154の長手方向中央には、基板154の表面と裏面を貫通する第1の孔155h1・156h1が設けられている。また、基板154の一端部内側には基板154の表面と裏面を貫通する第2の孔155h2・156h2が設けられている。この第1の孔155h1・156h1及び第2の孔155h2・156h2には下記の電極155・156と同じペーストが流し込まれている。
【0142】
155及び156は基板154の表面と裏面にそれぞれ形成された電極である。この電極155・156は、例えばAgやAg/Pt等の電気導電材料にガラス粉末を混ぜたペーストを基板154の短手方向における一端側と他端側にそれぞれ基板154の長手方向に沿ってスクリーン印刷したものである。電気導電材料とガラス粉末の配合を変えることで電極145・146の体積抵抗値は調整できる。電極145・146は、実施例1と同様の構成である。即ち、厚みは10μm、シート抵抗は10mΩ/□である。
【0143】
電極155・156において、基板154の表面に形成された給電領域155a・156aには給電用コネクタが繋がれ、通電領域155b・156bは発熱抵抗体157と電気的に繋がるように配置されている。給電領域155aと通電領域155bは、基板154の第1の孔155h1及び第2の孔155h2に流し込まれたペーストにより形成された貫通領域(不図示)と、基板154の裏面に形成された繋ぎ領域155cと、によって繋がっている。同様に、給電領域156aと通電領域156bは、基板154の第1の孔156h1及び第2の孔156h2に流し込まれたペーストにより形成された貫通領域(不図示)と、基板154の裏面に形成された繋ぎ領域156cと、によって繋がっている。そして通電領域155b・156bの幅は2mmと一定となっている。
【0144】
157は基板154上に形成された発熱抵抗体であり、例えばAg/Pd(銀パラジウム)等の電気抵抗材料にガラス粉末等を混ぜたペーストを基板154にスクリーン印刷したものである。この抵抗体157も各材料の配合を変えることで体積抵抗値を調整できる。抵抗体157は、電極155の通電領域155bと電極156の通電領域156bとを電気的に繋ぐように電極155・156の上から厚さが10μmになるように印刷されている。抵抗体157の長さは312mmで、その中心位置が記録材Pの搬送中心となっている。また、抵抗体157は、シート抵抗が1000Ω/□であり、PTC特性を有する。
【0145】
本実施例において、抵抗体157の厚さは、通電領域155b・156bの長手領域のうち、給電領域155a・156aに最も電位的に近い通電領域155b・156bの長手中心から両端部に向かって連続的に厚くなっている。
【0146】
図16(a)に抵抗体157の長手方向における厚さの分布を示す。横軸は搬送中心からの距離で、マイナス側は給電領域155a・156a側、プラス側はその給電領域155a・156aの反対側となっている。本実施例では、抵抗体157の厚さは、長手中心位置で9.13μmであり、そこから端部方向に行くに従って連続的に狭くなり、両端部で9.80μmとなるように設定している。抵抗体157の厚さを上記のように設定したことによって、抵抗体157の基板154の短手方向における抵抗値は、基板154の長手方向において導電領域155b・156bが給電領域155a・156aに電気的に最も近い位置(中央部)で最大となる。
【0147】
1)比較実験例1
本実施例の通紙方向通電ヒータ153と、長手方向で発熱抵抗体の厚さが一定である従来例の通紙方向通電ヒータとで、長手方向の温度分布の比較を行った結果を説明する。
【0148】
従来例の通紙方向通電ヒータとして、図13(b)に示すヒータ243を用いた。従来例のヒータ243は発熱抵抗体247の厚さのみが10μm(図16(a)に記載))と一定である以外は、本実施例のヒータ153と同じ構成、配置をしている。
【0149】
図16(a)に、それぞれのヒータ153・243単品を用いて、ヒータ153・243の温度が200℃になるように120Vで通電制御したときの、発熱ムラをサーモグラフィーで測定したときの結果を以下に示す。ヒータ153・243への通電は、通紙領域のヒータ裏面中心にサーミスタを配し、このサーミスタの検知温度が200℃を維持するように制御した。この比較は記録材を通過させていない時のものである。
【0150】
図16(b)に示すように、本実施例の通紙方向通電ヒータ153では、長手方向全域に渡って温度分布が一定である。これに対して、従来例のヒータ243では、抵抗体247の端部位置で186℃、中心位置で200℃である。従って抵抗体247の端部位置は中心位置に対して約14℃の温度ムラが発生した。
【0151】
このように本実施例の通紙方向通電ヒータ153は、抵抗体157の厚さが、通電領域155b・156bの長手領域のうち、給電領域155a・156aに最も電位的に近い通電領域155b・156bの長手中心から両端部に向かって連続的に厚くなっている。これにより、抵抗体157の基板154の短手方向における抵抗値が基板154の長手方向において連続的に変化する。つまり、抵抗体157の長手方向の抵抗分布が連続的に変化する。従って、実施例1のヒータ13と同じ作用効果を得ることができる。
【0152】
2)比較実験例2
本実施例の通紙方向通電ヒータ153が非通紙領域昇温に効果があることを確認するために、通紙方向通電ヒータではないタイプの従来例のヒータとの比較を行った。
【0153】
従来例のヒータとして、発熱抵抗体往復パターンのヒータを用いた。その従来例のヒータの構成は、実施例1の比較実験例2におけるヒータ223と同じであるため、その説明を援用する。
【0154】
本実施例のヒータ153と従来例のヒータ223をそれぞれ同じ構成の定着器に組み込み、ニップ部に記録材を通過させた時の、ヒータ153・223の長手方向に対する非通紙領域と通紙領域との加圧ローラの表面温度を比較した。条件としては、室温23度、湿度50%の環境下において、幅が100mmのはがきを連続10枚通紙した後の温度を、熱電対で測定した。ヒータ153・223の制御としては、通紙領域のヒータ裏面中心にサーミスタを配し、このサーミスタの検知温度が200℃を維持するように120Vで通電制御した。
【0155】
結果としては、従来例のヒータ223では、通紙領域の加圧ローラ表面の温度は160℃、及び非通紙領域の加圧ローラ表面の温度は250℃であった。これに対し、本実施例のヒータ153では、通紙領域の加圧ローラ表面の温度が160℃、及び非通紙領域の加圧ローラ表面の温度は200℃であった。よって本実施例の通紙方向通電ヒータ153は、従来の通紙方向通電ヒータではないヒータ223に対して、非通紙領域の温度にして50℃のマージンアップが図られている。
【0156】
このように本実施例の通紙方向通電ヒータ153でも、従来の通紙方向通電ヒータと同様に非通紙領域昇温に対してメリットがあることが確認された。
【0157】
従って、本実施例のヒータ153においても、実施例1のヒータ13と同じ作用効果を得ることができる。即ち、一つのプリンタで利用できる最大サイズの記録材Pを定着する際の定着ムラを抑えることができる。また、小サイズ紙をプリントする際の単位時間あたりの出力枚数の低下を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0158】
【図1】画像形成装置の一例の構成模型図
【図2】定着装置の一例の横断面模型図
【図3】定着装置の縦断面模型図
【図4】定着装置を記録材導入側から見た図
【図5】(a)は実施例1に係るヒータの一例を表わす図、(b)は実施例1に係るヒータと同じタイプの従来のヒータの一例を表わす図、(c)は実施例1に係るヒータと異なるタイプの従来のヒータの一例を表わす図
【図6】(a)は図5(a)に示すヒータ、及び図5(b)に示すヒータにおける発熱抵抗体の長手方向の幅の分布を比較したグラフ、(b)はそれらのヒータにおける長手方向の表面温度の分布を比較したグラフ
【図7】実施例2に係るヒータの一例を表わす図
【図8】(a)は実施例2に係るヒータ、及び実施例2に係るヒータと同じタイプの従来のヒータにおける発熱抵抗体の長手方向の厚さの分布を比較したグラフ、(b)はそれらのヒータにおける長手方向の表面温度の分布を比較したグラフ
【図9】(a)は実施例3に係るヒータの一例を表わす図、(b)は実施例3に係るヒータと同じタイプの従来のヒータの一例を表わす図
【図10】(a)は図9(a)に示すヒータ、及び図9(b)に示すヒータにおける発熱抵抗体の長手方向の幅の分布を比較したグラフ、(b)はそれらのヒータにおける長手方向の表面温度の分布を比較したグラフ
【図11】実施例4に係るヒータの一例を表わす図
【図12】(a)は実施例4に係るヒータ、及び実施例4に係るヒータと同じタイプの従来のヒータにおける発熱抵抗体の長手方向の厚さの分布を比較したグラフ、(b)はそれらのヒータにおける長手方向の表面温度の分布を比較したグラフ
【図13】(a)は実施例5に係るヒータの一例を表わす図、(b)は実施例5に係るヒータと同じタイプの従来のヒータの一例を表わす図
【図14】図13(a)に示すヒータ、及び図13(b)に示すヒータにおける発熱抵抗体の長手方向の幅の分布を比較したグラフ、(b)はそれらのヒータにおける長手方向の表面温度の分布を比較したグラフ
【図15】実施例6に係るヒータの一例を表わす図
【図16】(a)は実施例6に係るヒータ、及び実施例6に係るヒータと同じタイプの従来のヒータにおける発熱抵抗体の長手方向の厚さの分布を比較したグラフ、(b)はそれらのヒータにおける長手方向の表面温度の分布を比較したグラフ
【図17】従来のヒータの一例を表わす図
【符号の説明】
【0159】
13,113,123,133,143,153:ヒータ
14,114,124,134,144,154:基板
15・16,115・116,125・126,135・136,145・146,155・156:電極
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加熱材を加熱する加熱体、及びその加熱体を用いる加熱装置に関するものであり、特に、電子写真複写機、電子写真プリンタなどの画像形成装置に搭載される加熱定着装置(定着器)に用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真式の複写機やプリンタに搭載する像加熱装置(定着器)として、セラミックス製の基板上に発熱抵抗体を有するヒータと、ヒータに接触しつつ移動する可撓性部材と、可撓性部材を介してヒータとニップ部を形成する加圧ローラと、を有するものがある。未定着トナー画像を担持する記録材は定着装置のニップ部で挟持搬送されつつ加熱され、これにより記録材上の画像は記録材に加熱定着される。この定着装置は、ヒータへの通電を開始し定着可能温度まで昇温するのに要する時間が短いというメリットを有する。従って、この定着装置を搭載するプリンタは、プリンタ指令の入力後、一枚目の画像を出力するまでの時間(FPOT:first printout time))))を短くできる。またこのタイプの定着装置は、プリント指令を待つ待機中の消費電力が少ないというメリットもある。
【0003】
ところで、可撓性部材を用いた定着装置を搭載するプリンタで小サイズの記録材を大サイズの記録材と同じプリント間隔で連続プリントすると、ヒータの記録材が通過しない領域(非通紙領域)が過度に昇温(いわゆる非通紙部昇温)することが知られている。ヒータの非通紙領域が過昇温すると、ヒータを保持するホルダや加圧ローラが熱により損傷する場合がある。
【0004】
そこで、上記定着装置を搭載するプリンタは、小サイズの記録材を連続プリントする場合、大サイズの記録材に連続プリントする場合よりもプリント間隔を広げる制御を行いヒータの非通紙領域の過昇温を抑えている。
【0005】
しかしながら、プリント間隔を広げる制御は単位時間当りの出力枚数いわゆるスループットを減らすものであり、単位時間当たりの出力枚数を大サイズの記録材の場合と同等或いは若干少ない程度に抑えることが望まれる。
【0006】
特許文献1、2には、非通紙領域において過昇温を抑制できるようにしたヒータが提案されている。そのヒータの一例を図17に示す。
【0007】
ヒータ313は、細長い基板314の長手方向と直交する短手方向(幅方向)の一端側と他端側にそれぞれ該基板314の長手方向に沿って設けられた電極315・316を有する。そしてその電極315・316間に正の抵抗温度係数(PTC:positive temperature coefficient)の発熱抵抗体317を基板314の長手方向に沿って設けている。電極315・316において、315bと316bはそれぞれ発熱抵抗体317に電気的に接続されている導電領域であり、315aと316aはそれぞれ対応する導電領域315b・316bの給電領域である。その給電領域315a・316aに給電コネクタ(不図示)を接続し、その給電コネクタから給電領域315a・316aを通じて導電領域315b・316bに通電することにより発熱抵抗体317が発熱する。
【0008】
上記ヒータにおいて、プリンタに用いられる大サイズの記録材が通過する領域(大サイズ通紙領域D)に小サイズの記録材を通過させた場合には、その小サイズの記録材が通過する領域(小サイズ通紙領域E)の外側に非通紙領域Fが生ずる。小サイズ通紙領域Eでは記録材に熱を奪われるので温度上昇しにくい。そのため小サイズ通紙領域Eの発熱抵抗体115の抵抗値は変動がなく該小サイズ通紙領域Eの発熱体115への通電量は維持される。逆に非通紙領域Fでは記録材に熱を奪われないので温度上昇する。そのため非通紙領域Fの発熱抵抗体115の抵抗値は上昇するので該非通紙領域Fの発熱抵抗体115への通電量は減少する。これにより、小サイズ通紙領域Eでは記録材に対し定着に必要な熱量を供給しつつ、非通紙領域Fでは過昇温が抑えられる。
【特許文献1】特開平5−19652号公報
【特許文献2】特開平7−160131号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところが、実際に上記ヒータを定着器に搭載して調べてみると、記録材を通紙していないにも拘わらず基板の長手方向において発熱抵抗体に発熱分布ムラが発生することが分かった。その理由を検証してみたところ電極の抵抗に原因があることが判明した。基板の長手方向に沿って設けた二本の電極は導電性は高いが抵抗値はゼロではない。従って電極にも自身の抵抗による電圧降下が生じる。そのため、記録材を通紙していない状態であるにも拘わらず、給電コネクタと接触する給電領域に近い側(図17の発熱体のうち左側)の発熱量が大きく、給電領域から遠い側(図17の発熱体のうち右側)の発熱量が小さくなってしまう。
【0010】
そこで、本発明の目的は、基板の長手方向において発熱抵抗体の発熱分布ムラを低減できるようにした加熱体、及びその加熱体を有する加熱装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するための構成は、基板と、前記基板の長手方向に沿って設けられている発熱抵抗体と、を有し、サイズの異なる被加熱材を加熱する加熱装置に用いられる加熱体において、
前記基板の長手方向と直交する短手方向における一端側と他端側にそれぞれ前記基板の長手方向に沿って設けられた電極を有し、前記基板の短手方向において前記電極間に前記発熱抵抗体を有し、前記発熱抵抗体は前記基板の短手方向における抵抗値が前記基板の長手方向において連続的に変化するように形成されていることを特徴とする。
【0012】
また、上記目的を達成するための構成は、基板と前記基板の長手方向に沿って設けられている発熱抵抗体とを有する加熱体と、前記加熱体と接触しつつ移動する可撓性部材と、前記可撓性部材を挟んで前記加熱体とニップ部を形成するバックアップ部材と、を有し、前記ニップ部でサイズの異なる被加熱材を挟持搬送しつつ加熱する加熱装置において、
前記加熱体は、前記基板の長手方向と直交する短手方向における一端側と他端側にそれぞれ前記基板の長手方向に沿って設けられた電極を有し、前記基板の短手方向において前記電極間に前記発熱抵抗体を有し、前記発熱抵抗体は前記基板の短手方向の抵抗値が前記基板の長手方向において連続的に変化するように形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、基板の長手方向において発熱抵抗体の発熱分布ムラを低減できるようにした加熱体、及びその加熱体を有する加熱装置の提供を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0015】
(1)画像形成装置例
図1は本発明に係る加熱装置を加熱定着装置として搭載できる画像形成装置の一例の構成模型図である。この画像形成装置は、転写式電子写真プロセス利用のレーザービームプリンタである。
【0016】
本実施例に示す画像形成装置は、使用可能な最大サイズの記録材はA3サイズ(297mm×420mm)であり、A3サイズの記録材の長辺(420mm)を搬送方向と平行にして搬送できる。また、記録材の搬送基準は後述する定着装置9の発熱抵抗体17の長手方向中央になっている。そして、装置全体を制御する制御手段としてのCPU100が所定の画像形成制御シーケンスを実行することによって画像を記録材に形成する。
【0017】
1は像担持体としての回転ドラム型の電子写真感光体(以下、感光ドラムと記す)である。感光ドラム1は外径約30mmであり、メインモータM1により矢印方向に所定の周速度をもって回転される。その回転過程で感光ドラム1の外周面(表面)が一次帯電手段としての帯電ローラ2により所定の極性・電位に一様に帯電処理される。その帯電処理された感光ドラム1表面に対して露光手段としてのレーザビーム走査露光装置3が目的の画像情報に対応して変調されたレーザー光Lを走査露光する。これにより感光ドラム1表面に画像情報に応じた静電潜像(静電像)が形成される。次いでその潜像が現像手段としての現像装置4によりトナー(現像剤)によってトナー像(現像像)として可視化される。現像装置4は、トナーを収納するトナー容器4aと、現像ローラ4bと、を有する。現像ローラ4bはその外周面(表面)にトナー容器4aから供給されるトナーを担持する。その現像ローラ4aに対し不図示の高圧電源から現像バイアスが印加されることによって現像ローラ4a表面のトナーを感光ドラム1表面に転移させる。そのトナーが静電的に潜像領域に付着して潜像が現像される。
【0018】
一方、感光ドラム1表面と転写手段としての転写ローラ5の外周面(表面)との間の転写ニップ部に不図示の給送機構から被加熱材としての記録材Pが所定の給送タイミングで給送される。その記録材Pは転写ニップ部で挟持搬送され、その搬送過程で高圧電源8から転写ローラ5に転写バイアスを印加することによって感光ドラム1表面のトナー像が記録材P面上に順次に転写されていく。
【0019】
転写ニップ部でトナー像の転写を受けた記録材Pは感光ドラム1表面から分離されて加熱定着装置9へ搬送される。そしてその記録材Pは定着装置9によってトナー像の加熱定着処理を受け、画像形成物(コピー、プリント)として出力される。
【0020】
現像ローラ4bや、転写ローラ5に印加されるバイアスの印加タイミングはセンサ7(以下TOPセンサと称す)のON・OFF信号に基づいて制御される。本実施例では、TOPセンサ7としてフォトインタラプターを使用した。記録材Pへのトナー像転写後の感光ドラム1表面は、クリーニング手段6により転写残りトナー等の残存付着物の除去処理を受け、繰り返して作像に供される。
【0021】
(2)定着装置
図2は定着装置9の一例の横断面模型図である。図3は定着装置9の縦断面模型図である。図4は定着装置9を記録材導入側から見た図である。
【0022】
以下の説明において、定着装置又はその定着装置を構成している部材に関し、長手方向とは記録材の面において記録材搬送方向と直交する方向をいう。短手方向とは記録材の面において記録材搬送方向と平行な方向をいう。厚み方向とは長手方向及び短手方向と直交する方向をいう。また、長さとは長手方向の寸法をいう。幅とは短手方向の寸法をいう。厚さとは厚み方向の寸法をいう。
【0023】
本実施例に示す定着装置9は、加熱体としてのセラミックヒータ13と、可撓性部材としての定着フィルム12と、ガイド部材としてのステー11と、バックアップ部材としての加圧ローラ21と、を有する。ステー11と、フィルム12と、ヒータ13と、加圧ローラ21は、何れも長手方向に細長い部材である。
【0024】
1)ステー
ステー11は、耐熱性及び剛性を有する所定の材料を用いて縦断面樋型形状に形成してある。ステー11の下面中央には長手方向に沿って凹字形状の溝11aが設けられ、その溝11aにヒータ13を保持させている。フィルム12は耐熱性フィルムによりエンドレス(円筒状)に形成してある。そしてそのフィルム12はステー11に外嵌されている。フィルム12の内周長とステー11の外周長はフィルム12の方を例えば3mm程度大きくしてある。従ってフィルム12は周長に余裕を持ってステー11に外嵌させてある。そしてステー11の両端部が不図示の装置側板対に保持されている。
【0025】
2)定着フィルム
フィルム12は、熱容量を小さくしてクイックスタート性を向上させるため、その膜厚は総厚約40〜100μm程度としている。フィルム12の材料として、耐熱性・離型性・強度・耐久性等のあるPI・PTFE・PFA・FEP等の単層フィルムを使用できる。またフィルム12の材料として、ポリイミド・ポリアミドイミド・PEEK・PES・PPS等の外周表面にPTFE・PFA・FEP等をコーティングした複合層フィルムを使用できる。本実施例のフィルム12は、ポリイミドフィルムの外周表面にPTFE・PFA等のフッ素樹脂に導電剤を添加したコート層を設けたものであるが、特にこれに限られず金属等で形成される素管等を用いても良い。
【0026】
3)加圧ローラ
加圧ローラ21は、アルミニウム・鉄・ステンレス等の芯軸22と、この芯軸22の外周に設けられたシリコーンゴム等の離型性のよい耐熱ゴム弾性体層(以下、弾性層と記す)23と、を有する。加圧ローラ21は外径が30mmであり、弾性層23の肉厚は4mmである。また、弾性層23の外周面には、記録材P、フィルム12の搬送性の向上、トナーによる汚れ防止の観点から、フッ素樹脂を分散させたコート層(不図示)が設けてある。フィルム12の下方においてフィルム12と並列に配置された加圧ローラ21は芯軸22の両端部が装置側板対に軸受25L・25Rを介して回転自在に保持されている。この加圧ローラ21に対しフィルム12がステー11を介して加圧バネ等の加圧手段(不図示)により加圧され、その加圧力を受けて加圧ローラ21の弾性層23が弾性変形する。これによって加圧ローラ21はヒータ13との間にフィルム12を挟んで所定幅のニップ部(定着ニップ部)Nを形成している。
【0027】
4)ヒータ
ヒータ13は、長手方向に細長い耐熱性・絶縁性・良熱伝導性の基板14の一面(ニップ部N側の面(以下、表面と記す))に、電極15・16と、発熱抵抗体17と、保護層18と、を有する全体に低熱容量の加熱体である。このヒータ13は、基板14表面において、短手方向における一端側と他端側にそれぞれ基板14の長手方向に沿って設けられた電極15・16を有する。そしてその電極15・16間にPTC(抵抗の正の抵抗温度係数)特性を有する抵抗体17を有する。基板14は、高熱伝導材であるアルミナ及び窒化アルミ等で作られている。電極15・16は、例えばAgやAg/Pd(銀パラジウム)等の電気抵抗材料のペーストを基板14にスクリーン印刷等により塗工したものである。抵抗体17は例えばAg/Pd等の電気抵抗材料のペーストを電極15・16間において基板14にスクリーン印刷等により塗工したものである。電極15・16、及び抵抗体17は保護層18により覆われて保護されている。保護層18としてガラスやフッ素樹脂等が電極15・16、及び抵抗体17上にコートされている。
【0028】
また、ヒータ13は、基板14の他面(ニップ部Nと反対側の面(以下、裏面と記す))に温度検知手段としてのサーミスタ19を有する。サーミスタ19は、安定した定着性を確保するために、ヒータ14裏面の記録材搬送基準部付近(本実施例では抵抗体17の長手方向の中心位置)の温度を検知している。
【0029】
(3)定着装置の加熱定着動作
加圧ローラ21の芯軸22の端部に設けられた駆動ギアG(図4)が定着モータM2により回転駆動されることによって、加圧ローラ21は矢印方向に回転する。加圧ローラ21が回転されるとニップ部Nにおいてフィルム12に加圧ローラ21との摩擦力で移動力が作用する。その移動力によってフィルム12は加圧ローラ21の周速と略同速度をもってフィルム12内面がヒータ13の保護層18表面に接触(摺動)しつつ矢印方向に従動回転される。フィルム12は非回転時においてはヒータ13と加圧ローラ21とのニップ部Nに挟まれている部分を除く残余の大部分の略全周長部分がテンションフリーである。回転時においてはニップ部Nの部分のみにおいてフィルム12にテンションが加わる。
【0030】
CPU100(図2)は、通電制御手段としてのトライアック101をオンする。これにより交流電源102からヒータ13の電極15・16を通じて抵抗体17に通電される。これにより抵抗体17が発熱し、基板14が加熱され、ヒータ13全体が急速昇温する。その昇温に応じて加熱される基板14の温度をサーミスタ19が検知する。CPU100は、サーミスタ19の出力(検知温度)をA/D変換して取り込む。そしてサーミスタ19からの出力に基づいて、トライアック101によりヒータ13に通電する電力を位相制御或いは波数制御等により制御して、ヒータ13の温度制御を行なう。即ち、CPU100は、記録材P上のトナー像tを加熱定着する工程中、サーミスタ19の検知温度が設定温度(目標温度)を維持するようにヒータ13への通電を制御する。つまり、サーミスタ19の検知温度が所定の設定温度より低い場合にはヒータ13が昇温するように、高い場合にはヒータ13が降温するように通電を制御することによって、ヒータ13を設定温度に温調している。加熱定着工程中の設定温度は、加圧ローラ21の温まり具合(連続プリント時のプリント枚数をカウントしたり、連続プリント時の時間をカウントしたりして推測できる)や記録材Pの種類(普通紙、厚紙、樹脂シート等)等に応じてCPU100により設定される。従って、本実施例のプリンタは、記録材Pの種類に応じた複数の設定温度を有するものである。
【0031】
而して、上記の加圧ローラ21及びフィルム12の回転とヒータ13への通電を行なわせた状態において、未定着トナー像tを担持した記録材Pがニップ部Nにトナー像担持面を上向きにして導入される。その記録材Pはフィルム12と一緒にニップ部Nで挟持搬送され、該ニップ部Nにおいてフィルム12内面に接しているヒータ13の熱エネルギーがフィルム12を介して記録材Pに付与され、ニップ部Nにおける加圧力によってトナー像tの熱圧定着がなされる。
【0032】
(4)ヒータの構成
図5(a)は本実施例のヒータ13の一例を表わす図であって、ヒータ13を基板14表面側から見た図である。図5(a)では抵抗体15・16の配置がわかり易いように保護層18は省略してある。
【0033】
基板14はアルミナ製である。基板14のサイズは長さ380mm、幅10mm、厚み1mmである。
【0034】
電極15・16は、例えばAgやAg/Pt等の電気導電材料にガラス粉末を混ぜたペーストを基板14の短手方向における一端側と他端側にそれぞれ基板14の長手方向に沿ってスクリーン印刷したものである。電気導電材料とガラス粉末の配合を変えることで電極15・16の体積抵抗値は調整できる。本実施例の電極15・16の厚みは10μmであり、シート抵抗は10mΩ/□である。また電極15・16において、15bと16bはそれぞれ発熱抵抗体17に電気的に接続されている導電領域であり、15aと16aはそれぞれ対応する導電領域15b・16bの給電領域である。給電領域15aと16aはそれぞれ対応する導電領域15b・16bに給電するためのものである。給電領域15a・16aは基板14の長手方向の一端部側において不図示の給電用コネクタが繋がるように配置され、導電領域15b・16bは抵抗体17に電気的に繋がるように配置されている。導電領域15b・16bの幅は2mmと一定となっている。
【0035】
抵抗体17は、例えばAg/Pd(銀パラジウム)等の電気抵抗材料にガラス粉末等を混ぜたペーストを基板14にスクリーン印刷したものである。この抵抗体17も各材料の配合を変えることで体積抵抗値を調整できる。この抵抗体17は、電極15の導電領域15bと電極16の導電領域16bとを電気的に繋ぐように電極15・16の上から印刷されている。上記のように電極間に配置された抵抗体17の長さは312mmであり、その中心位置が記録材Pの搬送中心となっている。抵抗体17の厚みは10μmであり、シート抵抗は1000Ω/□である。
【0036】
図5(a)に示すように、記録材搬送方向は抵抗体17の長手方向と直交する方向であり、電極15・16から抵抗体17に通電される電流は記録材搬送方向と平行であるので、このようなタイプのヒータを通紙方向通電ヒータと呼ぶことにする。
【0037】
図5(c)は従来のヒータ223の一例を表わす図であって、ヒータ223を基板224表面側から見た図である。
【0038】
図5(c)に示すヒータ223は、発熱抵抗体227を基板224の長手方向に対し往復させる構成、即ち二つの電極225・226間に一つの抵抗体227を導電体228を介して直列に繋いだものである。このようなタイプのヒータ223では、小サイズの記録材が通過した際に、小サイズ通紙領域Eは記録材へ熱が奪われることにより比較的熱が下がるが、非通紙領域Fは熱が奪われないため温度が上昇していく。これは発熱抵抗体は一般的に正の抵抗温度形成(以下、PTC特性と記す)をもつため、温度が上昇するほど抵抗が上昇するためである。
【0039】
これに対して、通紙方向通電タイプのヒータでは、記録材搬送方向に電流の流れが形成されるため、同様なPTC特性をもつ発熱抵抗体を用いても、非通紙領域F等の温度が上昇した場合、抵抗が高い非通紙領域Fへは電流が流れにくくなる。そのため、小サイズ通紙領域Eにおける通電状態が確保されつつ非通紙領域Fにおける過昇温が抑えられるという特性が発生する。この特性はPTC特性が大きいほど大きい。
【0040】
しかしながら、後述の図5(b)に示すような一般的な通紙方向通電タイプのヒータ(図17のヒータ317と同じタイプ)213では、ニップ部Nに記録材Pが通過していない状態において、発熱抵抗体217の全面で均一な通電状態にならない。つまり、電極215・216がコネクタと繋がる側の抵抗体217への通電量が長手方向逆側の通電量より多くなり、発熱分布も電極215・216がコネクタと繋がる側が高く、電極215・216がコネクタと繋がる側と逆側が低くなる現象が発生する。その理由は、電極215・216が抵抗をもっているため電極215・216内の電圧降下が発生し、このことで同じ電極215・216内であっても電流入り口からの距離が遠い所ほど、抵抗体217へ流れ込む電流が減ってしまうからである。このような効果は電極215・216と抵抗体217の体積抵抗が近いほど、より顕著になる。このように抵抗体217の発熱分布にムラがると、定着ムラ、定着不良、ホットオフセット、ヒータ割れなどが発生することがある。
【0041】
そこで、本実施例では、図5(a)に示すように、抵抗体17の幅を基板14の長手方向において一端側から他端側(給電領域15a・16a側から該給電領域15a・16aと反対側)に向かって連続的に狭くなるようにした。つまり、抵抗体17は、基板14の短手方向における抵抗値が基板14の長手方向において連続的に変化する形状に形成してある。
【0042】
図6(a)に抵抗体17の長手方向における幅の分布を示す。横軸は搬送中心からの距離で、マイナス側は給電領域15a・16a側、プラス側はその給電領域15a・16aの反対側となっている。本実施例では、抵抗体17の幅は、給電領域15a・16a側の端部では3.76mmであり、そこから給電領域15a・16aの反対方向に行くに従って連続的に狭くなり、給電領域15a・16aの反対側の端部では2.72mmとなるように設定してある。抵抗体17の幅を上記のように設定したことによって、抵抗体17の基板14の短手方向における抵抗値は、基板14の長手方向において導電領域15b・16bが給電領域15a・16aに電気的に最も近い位置(一端部)で最大となる。
【0043】
1)比較実験例1
本実施例の通紙方向通電ヒータ13と、長手方向で発熱抵抗体幅が一定である従来例の通紙方向通電ヒータとで、長手方向の温度分布の比較を行った結果を説明する。
【0044】
従来例の通紙方向通電ヒータとして、図5(b)に示すヒータ213を用いた。従来例のヒータ213は、抵抗体217の幅が3mm(図6(a)に記載)と一定であることと、抵抗体217と電気的に繋がる導電領域215b・216bの長手形状がストレートであること以外は、本実施例のヒータ13と同じ構成、配置としてある。導電領域215b・216bの幅も本実施例と同じ2mmである。
【0045】
図6(b)に、それぞれのヒータ13・213単品を用いて、ヒータ13・213の温度が200℃になるように120Vで通電制御したときの、発熱ムラをサーモグラフィーで測定したときの結果を示す。ヒータ13・213への通電は、通紙領域のヒータ裏面中心にサーミスタを配し、このサーミスタの検知温度が200℃を維持するように制御した。この比較は記録材を通過させていない時のものである。
【0046】
図6(b)に示すように、本実施例の通紙方向通電ヒータ13では、長手方向全域に渡って温度分布が一定である。これに対して、従来例のヒータ213では、給電領域215a・216a側の端部で250℃、給電領域215a・216aと反対側の端部で183℃である。従って給電領域215a・216a側の端部と給電領域215a・216aと反対側の端部とで約67℃の温度ムラが発生した。
【0047】
このように本実施例の通紙方向通電ヒータ13は、基板14の長手方向で抵抗体17の幅を連続的に変化させることにより、該抵抗体17の基板14の短手方向における抵抗値が基板14の長手方向において連続的に変化する。つまり、抵抗体17の長手方向の抵抗分布が連続的に変化する。従って、この通紙方向通電ヒータ13を用いることにより、従来の通紙方向通電ヒータ213に発生する温度ムラを解消することが出来る。
【0048】
2)比較実験例2
本実施例の通紙方向通電ヒータ13が非通紙領域昇温に効果があることを確認するために、通紙方向通電ヒータではないタイプの従来例のヒータとの比較を行なった。
【0049】
従来例のヒータとして、図5(c)に示す発熱抵抗体往復パターンのヒータ223を用いた。このヒータ223の基板224は本実施例のヒータ13の基板14と同じものであり、電極225・226の材質及び厚さも本実施例のヒータ13の給電領域15a・16aと同じである。抵抗体227の厚みは10μmで、シート抵抗は40mΩ/□である。また抵抗体227はPTC特性を有する。電極225・226は基板224の長手方向一端部側に配されている。電極225・226と電気的に繋がる抵抗体227の幅は2mmである。抵抗体227の長さは312mmで基板224の長手方向に沿って往復に配されている。228は二本の抵抗体227を繋ぐ導電体であって、材料及び厚さも電極225・226と同じである。
【0050】
本実施例のヒータ13と従来例のヒータ223をそれぞれ同じ構成の定着器に組み込み、ニップ部に記録材を通過させた時の、ヒータ13・223の長手方向に対する非通紙領域と通紙領域との加圧ローラの表面温度を比較した。条件としては、室温23度、湿度50%の環境下において、幅が100mmのはがきを連続10枚通紙した後の温度を、熱電対で測定した。ヒータ13・223の制御としては、通紙領域のヒータ裏面中心にサーミスタを配し、このサーミスタの検知温度が200℃を維持するように120Vで通電制御した。
【0051】
結果としては、従来例のヒータ223では、通紙領域の加圧ローラ表面の温度は160℃、及び非通紙領域の加圧ローラ表面の温度は250℃であった。これに対し、本実施例のヒータ13では、通紙領域の加圧ローラ表面の温度が160℃、及び非通紙領域の加圧ローラ表面の温度は200℃であった。よって本実施例の通紙方向通電ヒータ13は、従来の通紙方向通電ヒータではないヒータ223に対して、非通紙領域の温度にして50℃のマージンアップが図られている。
【0052】
このように本実施例の通紙方向通電ヒータ13でも、従来の通紙方向通電ヒータと同様に非通紙領域昇温に対してメリットがあることが確認された。
【0053】
本実施例のヒータ13は、ニップ部Nに記録材Pが通過していない状態での抵抗体17の基板14の長手方向における温度分布ムラを解消することができるので、一つのプリンタで利用できる最大サイズの記録材Pを定着する際の定着ムラも抑えることができる。
また、サイズの異なる記録材Pとして例えばはがき等の小サイズの記録材Pをニップ部Nに通過させた際の小サイズ通紙領域Eと非通紙領域Fとの温度差を減少させることが可能となる。そのため、小サイズの記録材Pをプリントする際の単位時間あたりの出力枚数の低下を抑えることができる。
【実施例2】
【0054】
ヒータの他の例を説明する。
【0055】
実施例1では、ヒータの発熱抵抗体の長手方向の抵抗分布を連続的に変化させるために、発熱抵抗体の短手方向の幅を基板の長手方向において連続的に変化させた。
【0056】
これに対し本実施例では、ヒータの発熱抵抗体の長手方向の抵抗分布を連続的に変化させるために、発熱抵抗体の厚さを基板の長手方向において連続的に変化させるようにしたものである。
【0057】
図7は本実施例に係るヒータを表わす図であって、ヒータを基板表面側から見た図である。図7では発熱抵抗体の配置がわかり易いように保護層は省略してある。
【0058】
図7において、114は耐熱特性及び絶縁特性に優れたセラミック等の基板である。基板114は、実施例1のヒータと同様、アルミナ製の基板であり、サイズは長さ380mm、幅10mm、厚み1mmである。
【0059】
115及び116は基板114上に形成された電極であり、例えばAgやAg/Pt等の電気導電材料にガラス粉末を混ぜたペーストを基板114の短手方向における一端側と他端側にそれぞれ基板114の長手方向に沿ってスクリーン印刷したものである。電気導電材料とガラス粉末の配合を変えることで電極115・116の体積抵抗値は調整できる。電極115・116は、実施例1と同じ構成である。即ち、厚みは10μm、シート抵抗は10mΩ/□である。また電極115・116の給電領域115a及び116aには給電用コネクタが繋がれ、さらに導電領域115b及び116bは発熱抵抗体117に電気的に繋がるように配置されている。導電領域115b・116bの幅は2mmと一定となっている。
【0060】
117は基板114表面上に形成された発熱抵抗体であり、例えばAg/Pd(銀パラジウム)等の電気抵抗材料にガラス粉末等を混ぜたペーストを基板114にスクリーン印刷したものである。この抵抗体117も各材料の配合を変えることで体積抵抗値を調整できる。抵抗体117は、電極115の通電領域115bと電極116の通電領域116bとを電気的に繋ぐように電極115・116の上から印刷されている。サイズは幅が3mm、長さが312mmであり、その中心位置が記録材Pの搬送中心となっている。また、抵抗体117は、シート抵抗が1000Ω/□であり、PTC特性を有する。
【0061】
本実施例のヒータ113において、抵抗体117の厚さは、基板114の長手方向において電極115・116の給電領域115a・116a側から該給電領域115a・116aと反対側に向かって連続的に厚くなっている。
【0062】
図8(a)に抵抗体117の長手方向における厚さの分布を示す。横軸は搬送中心からの距離で、マイナス側は給電領域115a・116a側、プラス側はその給電領域115a・116aの反対側となっている。本実施例では、抵抗体117の厚さは、給電領域115a・116a側の端部では7.96μmである。そしてそこから給電領域115a・116aの反対方向に行くに従って連続的に厚くなり、給電領域115a・116aの反対側の端部では11.05μmとなるように設定している。抵抗体117の厚さを上記のように設定したことによって、抵抗体117の基板114の短手方向における抵抗値は、基板114の長手方向において導電領域115b・116bが給電領域115a・116aに電気的に最も近い位置(一端部)で最大となる。
【0063】
1)比較実験例1
本実施例の通紙方向通電ヒータ113と、長手方向で発熱抵抗体厚さが一定である従来例の通紙方向通電ヒータとで、長手方向の温度分布の比較を行った結果を説明する。
【0064】
従来例の通紙方向通電ヒータとして、図5(b)に示すヒータ213を用いた。そのヒータ213は発熱抵抗体217の厚さのみが10μm(図8(a)に記載)と一定である以外は、本実施例のヒータ113と同じ構成、配置としてある。
【0065】
図8(b)に、それぞれのヒータ113・213単品を用いて、ヒータ113・213の温度が200℃になるように120Vで通電制御したときの、発熱ムラをサーモグラフィーで測定したときの結果を示す。ヒータ113・213への通電は、通紙領域のヒータ裏面中心にサーミスタを配し、このサーミスタの検知温度が200℃を維持するように制御した。この比較は記録材を通過させていない時のものである。
【0066】
図8(b)に示すように、本実施例の通紙方向通電ヒータ113では、長手方向全域に渡って温度分布が一定である。これに対して、従来例のヒータ213では、給電領域215a・216a側の端部で250℃、給電領域215a・216aと反対側の端部で183℃である。従って給電領域215a・216a側の端部と給電領域215a・216aと反対側の端部とで約67℃の温度ムラが発生した。
【0067】
このように本実施例の通紙方向通電ヒータ113は、基板114の長手方向で抵抗体117の厚さが連続的に変化することにより、該抵抗体17の基板14の短手方向における抵抗値が基板14の長手方向において連続的に変化する。つまり、抵抗体17の長手方向の抵抗分布が連続的に変化する。従って、実施例1のヒータ13と同じ作用効果を得ることができる。
【0068】
2)比較実験例2
本実施例の通紙方向通電ヒータ113が非通紙領域昇温に効果があることを確認するために、通紙方向通電ヒータではないタイプの従来例のヒータとの比較を行った。
【0069】
従来例のヒータとして、発熱抵抗体往復パターンのヒータを用いた。その従来例のヒータの構成は、実施例1の比較実験例2におけるヒータ223と同じであるため、その説明を援用する。
【0070】
本実施例のヒータ113と従来例のヒータ223をそれぞれ同じ構成の定着器に組み込み、ニップ部に記録材を通過させた時の、ヒータ113・223の長手方向に対する非通紙領域と通紙領域との加圧ローラの表面温度を比較した。条件としては、室温23度、湿度50%の環境下において、幅が100mmのはがきを連続10枚通紙した後の温度を、熱電対で測定した。ヒータ113・223の制御としては、通紙領域のヒータ裏面中心にサーミスタを配し、このサーミスタの検知温度が200℃を維持するように120Vで通電制御した。
【0071】
結果としては、従来例のヒータ223では、通紙領域の加圧ローラ表面の温度は160℃、及び非通紙領域の加圧ローラ表面の温度は250℃であった。これに対し、本実施例のヒータ113では、通紙領域の加圧ローラ表面の温度が160℃、及び非通紙領域の加圧ローラ表面の温度は200℃であった。よって本実施例の通紙方向通電ヒータ113は、従来の通紙方向通電ヒータではないヒータ223に対して、非通紙領域の温度にして50℃のマージンアップが図られている。
【0072】
このように本実施例の通紙方向通電ヒータ113でも、従来の通紙方向通電ヒータと同様に非通紙領域昇温に対してメリットがあることが確認された。
【0073】
従って、本実施例のように、基板114の長手方向において抵抗体117の厚さが連続的に変化するヒータ113においても、実施例1のヒータ13と同様、一つのプリンタで利用できる最大サイズの記録材Pを定着する際の定着ムラを抑えることができる。また、小サイズ紙をプリントする際の単位時間あたりの出力枚数の低下を抑えることができる。
【実施例3】
【0074】
ヒータの他の例を説明する。
【0075】
実施例1では、ヒータの給電領域は基板の長手方向の一端部側にまとめられていた。
【0076】
これに対し本実施例では、ヒータの給電領域を基板の長手方向の両端部側に配置するようにしたものである。
【0077】
図9(a)は本実施例に係るヒータを表わす図であって、ヒータを基板表面側から見た図である。図9(a)では発熱抵抗体の配置がわかり易いように保護層は省略してある。
【0078】
図9(a)において、124は耐熱特性及び絶縁特性に優れたセラミック等の基板である。基板124は、実施例1のヒータと同様、アルミナ製の基板であり、サイズは長さ380mm、幅10mm、厚み1mmである。
【0079】
125及び126は基板124上に形成された電極であり、例えばAgやAg/Pt等の電気導電材料にガラス粉末を混ぜたペーストを基板124の短手方向における一端側と他端側にそれぞれ基板124の長手方向に沿ってスクリーン印刷したものである。電気導電材料とガラス粉末の配合を変えることで電極125・126の体積抵抗値は調整できる。電極125・126は、実施例1と同じ構成である。即ち、厚みは10μm、シート抵抗は10mΩ/□である。また電極125・126の給電領域125a及び126aには給電用コネクタが繋がれ、さらに通電領域125b及び126bは発熱抵抗体127に電気的に繋がるように配置されている。通電領域125b・126bの幅は2mmと一定となっている。
【0080】
127は基板124表面上に形成された発熱抵抗体であり、例えばAg/Pd(銀パラジウム)等の電気抵抗材料にガラス粉末等を混ぜたペーストを基板124にスクリーン印刷したものである。この抵抗体127も各材料の配合を変えることで体積抵抗値を調整できる。抵抗体127は、電極125の通電領域125bと電極126の通電領域126bとを電気的に繋ぐように電極125・126の上から厚さが10μmになるように印刷されている。サイズは幅が3mm、長さが312mmであり、その中心位置が記録材Pの搬送中心となっている。また、抵抗体127は、シート抵抗が1000Ω/□であり、PTC特性を有する。
【0081】
本実施例のヒータ123において、抵抗体127の幅は、基板127の長手方向において給電領域125a・126a側から長手中心位置(搬送中心)に向かって連続的に狭くなっている。
【0082】
図10(a)に抵抗体127の長手方向における幅の分布を示す。横軸は搬送中心からの距離で、マイナス側は給電領域125a側、プラス側は給電領域126a側となっている。本実施例では、抵抗体127の幅は、給電領域125a・126a側の端部では3.16mmであり、そこから抵抗体127の中心方向に行くに従って連続的に狭くなり、中心位置では2.92mmとなるように設定している。抵抗体127の幅を上記のように設定したことによって、抵抗体127の基板124の短手方向における抵抗値は、基板124の長手方向において導電領域125b・126bが給電領域125a・126aに電気的に最も近い位置(両端部)で最大となる。
【0083】
1)比較実験例1
本実施例の通紙方向通電ヒータ123と、長手方向で発熱抵抗体の通紙方向幅が一定である従来例の通紙方向通電ヒータとで、長手方向の温度分布の比較を行った結果を説明する。
【0084】
従来例の通紙方向通電ヒータとして、図9(b)に示すヒータ233を用いた。そのヒータ233は発熱抵抗体237の幅のみが3mm(図10(a)に記載)と一定である以外は、本実施例のヒータ123と同じ構成、配置としてある。
【0085】
図10(b)に、それぞれのヒータ123・233単品を用いて、ヒータ123・233の温度が200℃になるように120Vで通電制御したときの、発熱ムラをサーモグラフィーで測定したときの結果を示す。ヒータ123・233への通電は、通紙領域のヒータ裏面中心にサーミスタを配し、このサーミスタの検知温度が200℃を維持するように制御した。この比較は記録材を通過させていない時のものである。
【0086】
図10(b)に示すように、本実施例の通紙方向通電ヒータ123では、長手方向全域に渡って温度分布が一定である。これに対して、従来例のヒータ233では、給電領域235a・236a側の端部で217℃、中心位置で200℃である。従って給電領域235a・236a側の端部は中心位置に対して約17℃の温度ムラが発生した。
【0087】
このように本実施例の通紙方向通電ヒータ123は、基板124の長手方向で抵抗体127の幅が連続的に変化することにより、該抵抗体127の基板124の短手方向における抵抗値が基板124の長手方向において連続的に変化する。つまり、抵抗体127の長手方向の抵抗分布が連続的に変化する。従って、実施例1のヒータ13と同じ作用効果を得ることができる。
【0088】
2)比較実験例2
本実施例の通紙方向通電ヒータ123が非通紙領域昇温に効果があることを確認するために、通紙方向通電ヒータではないタイプの従来例のヒータとの比較を行った。
【0089】
従来例のヒータとして、発熱抵抗体往復パターンのヒータを用いた。その従来例のヒータの構成は、実施例1の比較実験例2におけるヒータ223と同じであるため、その説明を援用する。
【0090】
本実施例のヒータ123と従来例のヒータ223をそれぞれ同じ構成の定着器に組み込み、ニップ部に記録材を通過させた時の、ヒータ123・223の長手方向に対する非通紙領域と通紙領域との加圧ローラの表面温度を比較した。条件としては、室温23度、湿度50%の環境下において、幅が100mmのはがきを連続10枚通紙した後の温度を、熱電対で測定した。ヒータ123・223の制御としては、通紙領域のヒータ裏面中心にサーミスタを配し、このサーミスタの検知温度が200℃を維持するように120Vで通電制御した。
【0091】
結果としては、従来例のヒータ223では、通紙領域の加圧ローラ表面の温度は160℃、及び非通紙領域の加圧ローラ表面の温度は250℃であった。これに対し、本実施例のヒータ123では、通紙領域の加圧ローラ表面の温度が160℃、及び非通紙領域の加圧ローラ表面の温度は200℃であった。よって本実施例の通紙方向通電ヒータ123は、従来の通紙方向通電ヒータではないヒータ233に対して、非通紙領域の温度にして50℃のマージンアップが図られている。
【0092】
このように本実施例の通紙方向通電ヒータ123でも、従来の通紙方向通電ヒータと同様に非通紙領域昇温に対してメリットがあることが確認された。
【0093】
従って、本実施例のように、基板124の長手方向において抵抗体127の幅が該抵抗体127の中心方向に向かって連続的に狭くなるように変化するヒータ123においても、実施例1のヒータ13と同じ作用効果を得ることができる。即ち、一つのプリンタで利用できる最大サイズの記録材Pを定着する際の定着ムラを抑えることができる。また、小サイズ紙をプリントする際の単位時間あたりの出力枚数の低下を抑えることができる。
【実施例4】
【0094】
ヒータの他の例を説明する。
【0095】
実施例3では、ヒータの発熱抵抗体の長手方向の抵抗分布を連続的に変化させるために、発熱抵抗体の幅を長手方向で連続的に変化させた。
【0096】
これに対し本実施例では、ヒータの給電領域を基板の長手方向の両端部側に配置するとともに、発熱抵抗体の長手方向の抵抗分布を連続的に変化させるために、発熱抵抗体の厚さを長手方向で連続的に変化させるようにしたものである。
【0097】
図11は本実施例に係るヒータを表わす図であって、ヒータを基板表面側から見た図である。図11では発熱抵抗体の配置がわかり易いように保護層は省略してある。
【0098】
図11において、134は耐熱特性及び絶縁特性に優れたセラミック等の基板である。基板134は、実施例1のヒータと同様、アルミナ製の基板であり、サイズは長さ380mm、幅10mm、厚み1mmである。
【0099】
135及び136は基板134表面上に形成された電極であり、例えばAgやAg/Pt等の電気導電材料にガラス粉末を混ぜたペーストを基板134の短手方向における一端側と他端側にそれぞれ基板134の長手方向に沿ってスクリーン印刷したものである。電気導電材料とガラス粉末の配合を変えることで電極135・136の体積抵抗値は調整できる。電極135・136は、実施例1と同様の構成である。即ち、厚みは10μm、シート抵抗は10mΩ/□である。また電極135・136の給電領域135a及び136aには給電用コネクタが繋がれ、さらに通電領域135b及び136bは抵抗体137に電気的に繋がるように配置されている。通電領域135b・136bの幅は2mmと一定となっている。
【0100】
137は基板134表面上に形成された発熱抵抗体であり、例えばAg/Pd(銀パラジウム)等の電気抵抗材料にガラス粉末等を混ぜたペーストを基板134にスクリーン印刷したものである。この抵抗体137も各材料の配合を変えることで体積抵抗値を調整できる。抵抗体137は、電極135の通電領域135aと電極136の通電領域136aとを電気的に繋ぐように電極135・136の上から印刷されている。サイズは幅が3mm、長さが312mmであり、その中心位置が記録材Pの搬送中心となっている。また、抵抗体137は、シート抵抗が1000Ω/□であり、PTC特性を有する。
【0101】
本実施例のヒータ133において、抵抗体137の厚さは、基板134の長手方向において給電領域135a・136a側から長手中心位置(搬送中心)に向かって連続的に厚くなっている。
【0102】
図12(a)に抵抗体137の長手方向における厚さの分布を示す。横軸は搬送中心からの距離で、マイナス側は給電領域135a側、プラス側は給電領域136a側となっている。本実施例では、抵抗体137の厚さは、給電領域135a・136a側の端部では9.48μmであり、そこから抵抗体137の中心方向に行くに従って連続的に厚くなり、中心位置では10.28μmとなるように設定している。抵抗体137の厚さを上記のように設定することによって、抵抗体137の基板134の短手方向における抵抗値は、基板134の長手方向において導電領域135b・136bが給電領域135a・136aに電気的に最も近い位置(両端部)で最大となる。
【0103】
1)比較実験例1
本実施例の通紙方向通電ヒータ133と、長手方向で発熱抵抗体厚さが一定である従来例の通紙方向通電ヒータとで、長手方向の温度分布の比較を行った結果を説明する。
【0104】
従来例の通紙方向通電ヒータとして、は図9(b)に示すヒータ233を用いた。そのヒータ233は発熱抵抗体237の厚さのみが10μm(図12(a)に記載)と一定である以外は、本実施例のヒータ137と同じ構成、配置としてある。
【0105】
図12(b)に、それぞれのヒータ133・233単品を用いて、ヒータ133・233の温度が200℃になるように120Vで通電制御したときの、発熱ムラをサーモグラフィーで測定したときの結果を以下に示す。ヒータ133・233への通電は、通紙領域のヒータ裏面中心にサーミスタを配し、このサーミスタの検知温度が200℃を維持するように制御した。この比較は記録材を通紙していない時のものである。
【0106】
図12(b)に示すように、本実施例の通紙方向通電ヒータ133では長手方向全域に渡って温度分布が一定である。これに対して、従来例のヒータ233では、給電領域235a・236a側の端部で217℃、中心位置で200℃である。従って給電領域235a・236a側の端部は中心位置に対して約17℃の温度ムラが発生した。
【0107】
このように本実施例の通紙方向通電ヒータ133は、基板134の長手方向で抵抗体137の厚さが連続的に変化することにより、該抵抗体137の基板134の短手方向における抵抗値が基板134の長手方向において連続的に変化する。つまり、抵抗体137の長手方向の抵抗分布が連続的に変化する。従って、実施例1のヒータ13と同じ作用効果を得ることができる。
【0108】
2)比較実験例2
本実施例の通紙方向通電ヒータ133が非通紙領域昇温に効果があることを確認するために、通紙方向通電ヒータではないタイプの従来例のヒータとの比較を行った。
【0109】
従来例のヒータとして、発熱抵抗体往復パターンのヒータ13を用いた。その従来例のヒータの構成は、実施例1の比較実験例2におけるヒータ223と同じであるため、その説明を援用する。
【0110】
本実施例のヒータ133と従来例のヒータ223をそれぞれ同じ構成の定着器に組み込み、ニップ部に記録材を通過させた時の、ヒータ133・223の長手方向に対する非通紙領域と通紙領域との加圧ローラの表面温度を比較した。条件としては、室温23度、湿度50%の環境下において、幅が100mmのはがきを連続10枚通紙した後の温度を、熱電対で測定した。ヒータ133・223の制御としては、通紙領域のヒータ裏面中心にサーミスタを配し、このサーミスタの検知温度が200℃を維持するように120Vで通電制御した。
【0111】
結果としては、従来例のヒータ223では、通紙領域の加圧ローラ表面の温度は160℃、及び非通紙領域の加圧ローラ表面の温度は250℃であった。これに対し、本実施例のヒータ133では、通紙領域の加圧ローラ表面の温度が160℃、及び非通紙領域の加圧ローラ表面の温度は200℃であった。よって本実施例の通紙方向通電ヒータ133は、従来の通紙方向通電ヒータではないヒータ223に対して、非通紙領域の温度にして50℃のマージンアップが図られている。
【0112】
このように本実施例の通紙方向通電ヒータ133でも、従来の通紙方向通電ヒータと同様に非通紙領域昇温に対してメリットがあることが確認された。
【0113】
従って、本実施例のように、基板134の長手方向において抵抗体137の厚さが該抵抗体127の中心方向に向かって連続的に厚くなるように変化するヒータ133においても、実施例1のヒータ13と同じ作用効果を得ることができる。即ち、一つのプリンタで利用できる最大サイズの記録材Pを定着する際の定着ムラを抑えることができる。また、小サイズ紙をプリントする際の単位時間あたりの出力枚数の低下を抑えることができる。
【実施例5】
【0114】
ヒータの他の例を説明する。
【0115】
実施例1乃至実施例4のヒータにおいて、発熱抵抗体と電気的に繋がる通電電極の長手領域のうち、給電領域に最も電位的に近い位置は、通電電極の片側端部または両端部であった。
【0116】
これに対し本実施例では、ヒータの発熱抵抗体と電気的に繋がる通電電極の長手領域のうち、給電領域に最も電位的に近い位置を、発熱抵抗体長手中心に配置するようにしたものである。
【0117】
図13(a)は本実施例に係るヒータを表わす図であって、(a−1)はヒータを基板表面側から見た図、(a−2)はヒータを基板裏面側から見た図である。図13(a)の(a−1)では発熱抵抗体の配置がわかり易いように保護層は省略してある。
【0118】
図13(a)において、144は耐熱特性及び絶縁特性に優れたセラミック等の基板である。基板144は、実施例1のヒータと同様、アルミナ製の基板であり、サイズは長さ380mm、幅10mm、厚み1mmである。基板144の長手方向中央には、基板144の表面と裏面を貫通する第1の孔145h1・146h1が設けられている。また、基板144の一端部内側には基板144の表面と裏面を貫通する第2の孔145h2・146h2が設けられている。この第1の孔145h1・146h1及び第2の孔145h2・146h2には下記の電極145・146と同じペーストが流し込まれている。
【0119】
145及び146は基板144の表面と裏面にそれぞれ形成された電極である。この電極145・146は、例えばAgやAg/Pt等の電気導電材料にガラス粉末を混ぜたペーストを基板144の短手方向における一端側と他端側にそれぞれ基板144の長手方向に沿ってスクリーン印刷したものである。電気導電材料とガラス粉末の配合を変えることで電極145・146の体積抵抗値は調整できる。電極145・146は、実施例1と同様の構成である。即ち、厚みは10μm、シート抵抗は10mΩ/□である。
【0120】
電極145・146において、基板144の表面に形成された給電領域145a・146aには給電用コネクタが繋がれ、通電領域145b・146bは発熱抵抗体147と電気的に繋がるように配置されている。給電領域145aと通電領域145bは、基板144の第1の孔145h1及び第2の孔145h2に流し込まれたペーストにより形成された貫通領域(不図示)と、基板144の裏面に形成された繋ぎ領域145cと、によって繋がっている。同様に、給電領域146aと通電領域146bは、基板144の第1の孔146h1及び第2の孔146h2に流し込まれたペーストにより形成された貫通領域(不図示)と、基板144の裏面に形成された繋ぎ領域146cと、によって繋がっている。そして通電領域145b・146bの幅は2mmと一定となっている。
【0121】
147は基板144上に形成された発熱抵抗体であり、例えばAg/Pd(銀パラジウム)等の電気抵抗材料にガラス粉末等を混ぜたペーストを基板144にスクリーン印刷したものである。この抵抗体147も各材料の配合を変えることで体積抵抗値を調整できる。抵抗体147は、電極145の通電領域145bと電極146の通電領域146bとを電気的に繋ぐように電極145・146の上から厚さが10μmになるように印刷されている。抵抗体147の長さは312mmで、その中心位置が記録材Pの搬送中心となっている。また、抵抗体147は、シート抵抗が1000Ω/□であり、PTC特性を有する。
【0122】
本実施例において、抵抗体147の幅は、通電領域145b・146bの長手領域のうち、給電領域145a・146aに最も電位的に近い通電領域145b・146bの長手中心から両端部に向かって連続的に狭くなっている。
【0123】
図14(a)に抵抗体147の長手方向における幅の分布を示す。横軸は搬送中心からの距離で、マイナス側は給電領域145a・146a側、プラス側はその給電領域145a・146aの反対側となっている。本実施例では、抵抗体147の幅は、長手中心位置で3.28mmであり、そこから端部方向に行くに従って連続的に狭くなり、両端部で3.06mmとなるように設定している。抵抗体147の幅を上記のように設定したことによって、抵抗体147の基板144の短手方向における抵抗値は、基板144の長手方向において導電領域145b・146bが給電領域145a・146aに電気的に最も近い位置(中央部)で最大となる。
【0124】
1)比較実験例1
本実施例の通紙方向通電ヒータ143と、長手方向で発熱抵抗体幅が一定である従来例の通紙方向通電ヒータとで、長手方向の温度分布の比較を行った結果を説明する。
【0125】
従来例の通紙方向通電ヒータとして、図13(b)に示すヒータ243を用いた。従来例のヒータ243は発熱抵抗体247の幅のみが3mm(図14(a)に記載)と一定である以外は、本実施例のヒータ143と同じ構成、配置をしている。
【0126】
即ち、ヒータ243において、244は耐熱特性及び絶縁特性に優れたセラミック等の基板である。基板244は、アルミナ製の基板であり、サイズは長さ380mm、幅10mm、厚み1mmである。基板244の長手方向中央には、基板244の表面と裏面を貫通する第1の孔245h1・246h1が設けられている。また、基板244の一端部内側には基板244の表面と裏面を貫通する第2の孔245h2・246h2が設けられている。この第1の孔245h1・246h1及び第2の孔245h2・246h2には下記の電極245・246と同じペーストが流し込まれている。
【0127】
245及び246は基板244の表面と裏面にそれぞれ形成された電極である。この電極245・246は、例えばAgやAg/Pt等の電気導電材料にガラス粉末を混ぜたペーストを基板244の短手方向における一端側と他端側にそれぞれ基板244の長手方向に沿ってスクリーン印刷したものである。電極245・246において、厚みは10μm、シート抵抗は10mΩ/□である。
【0128】
電極245・246において、基板244の表面に形成された給電領域245a・246aには給電用コネクタが繋がれ、通電領域245b・246bは発熱抵抗体247と電気的に繋がるように配置されている。給電領域245aと通電領域245bは、基板244の第1の孔245h1及び第2の孔245h2に流し込まれたペーストにより形成された貫通領域(不図示)と、基板244の裏面に形成された繋ぎ領域245cと、によって繋がっている。同様に、給電領域246aと通電領域246bは、基板244の第1の孔246h1及び第2の孔246h2に流し込まれたペーストにより形成された貫通領域(不図示)と、基板244の裏面に形成された繋ぎ領域246cと、によって繋がっている。そして通電領域245b・246bの幅は3mmと一定となっている。
【0129】
図14(a)に、それぞれのヒータ143・243単品を用いて、ヒータ143・243の温度が200℃になるように120Vで通電制御したときの、発熱ムラをサーモグラフィーで測定したときの結果を以下に示す。ヒータ143・243の通電は、通紙領域のヒータ裏面中心にサーミスタを配し、このサーミスタの検知温度が200℃を維持するように制御した。この比較は記録材を通過させていない時のものである。
【0130】
図14(b)に示すように、本実施例の通紙方向通電ヒータ143では、長手方向全域に渡って温度分布が一定である。これに対して、従来例のヒータ243では、抵抗体247の端部位置で186℃、中心位置で200℃である。従って抵抗体247の端部位置は中心位置に対して約14℃の温度ムラが発生した。
【0131】
このように本実施例の通紙方向通電ヒータ143は、抵抗体147の幅が、通電領域145b・146bの長手領域のうち、給電領域145a・146aに最も電位的に近い通電領域145b・146bの長手中心から両端部に向かって連続的に狭くなっている。これにより、抵抗体147の基板144の短手方向における抵抗値が基板144の長手方向において連続的に変化する。つまり、抵抗体147の長手方向の抵抗分布が連続的に変化する。従って、実施例1のヒータ13と同じ作用効果を得ることができる。
【0132】
2)比較実験例2
本実施例の通紙方向通電ヒータ143が非通紙領域昇温に効果があることを確認するために、通紙方向通電ヒータではないタイプの従来例のヒータとの比較を行った。
【0133】
従来例のヒータとして、発熱抵抗体往復パターンのヒータを用いた。その従来例のヒータの構成は、実施例1の比較実験例2におけるヒータ223と同じであるため、その説明を援用する。
【0134】
本実施例のヒータ143と従来例のヒータ223をそれぞれ同じ構成の定着器に組み込み、ニップ部に記録材を通過させた時の、ヒータ143・223の長手方向に対する非通紙領域と通紙領域との加圧ローラの表面温度を比較した。条件としては、室温23度、湿度50%の環境下において、幅が100mmのはがきを連続10枚通紙した後の温度を、熱電対で測定した。ヒータ143・223の制御としては、通紙領域のヒータ裏面中心にサーミスタを配し、このサーミスタの検知温度が200℃を維持するように120Vで通電制御した。
【0135】
結果としては、従来例のヒータ223では、通紙領域の加圧ローラ表面の温度は160℃、及び非通紙領域の加圧ローラ表面の温度は250℃であった。これに対し、本実施例のヒータ143では、通紙領域の加圧ローラ表面の温度が160℃、及び非通紙領域の加圧ローラ表面の温度は200℃であった。よって本実施例の通紙方向通電ヒータ143は、従来の通紙方向通電ヒータではないヒータ223に対して、非通紙領域の温度にして50℃のマージンアップが図られている。
【0136】
このように本実施例の通紙方向通電ヒータ143でも、従来の通紙方向通電ヒータと同様に非通紙領域昇温に対してメリットがあることが確認された。
【0137】
従って、本実施例のヒータ143においても、実施例1のヒータ13と同じ作用効果を得ることができる。即ち、一つのプリンタで利用できる最大サイズの記録材Pを定着する際の定着ムラを抑えることができる。また、小サイズ紙をプリントする際の単位時間あたりの出力枚数の低下を抑えることができる。
【実施例6】
【0138】
実施例5では、ヒータの発熱抵抗体の長手方向の抵抗分布を連続的に変化させるために、発熱抵抗体の幅を長手方向で連続的に変化させた。
【0139】
これに対し本実施例では、ヒータの発熱抵抗体の長手方向の抵抗分布を連続的に変化させるために、発熱抵抗体の厚さを長手方向で連続的に変化させるようにしたものである。
【0140】
図15は本実施例に係るヒータ153を表わす図であって、(a)はヒータを基板表面から見た図、(b)はヒータを基板裏面から見た図である。図15(a)では発熱抵抗体の配置がわかり易いように保護層は省略してある。
【0141】
図15において、154は耐熱特性及び絶縁特性に優れたセラミック等の基板である。基板154は、実施例1のヒータと同様、アルミナ製の基板であり、サイズは長さ380mm、幅10mm、厚み1mmである。基板154の長手方向中央には、基板154の表面と裏面を貫通する第1の孔155h1・156h1が設けられている。また、基板154の一端部内側には基板154の表面と裏面を貫通する第2の孔155h2・156h2が設けられている。この第1の孔155h1・156h1及び第2の孔155h2・156h2には下記の電極155・156と同じペーストが流し込まれている。
【0142】
155及び156は基板154の表面と裏面にそれぞれ形成された電極である。この電極155・156は、例えばAgやAg/Pt等の電気導電材料にガラス粉末を混ぜたペーストを基板154の短手方向における一端側と他端側にそれぞれ基板154の長手方向に沿ってスクリーン印刷したものである。電気導電材料とガラス粉末の配合を変えることで電極145・146の体積抵抗値は調整できる。電極145・146は、実施例1と同様の構成である。即ち、厚みは10μm、シート抵抗は10mΩ/□である。
【0143】
電極155・156において、基板154の表面に形成された給電領域155a・156aには給電用コネクタが繋がれ、通電領域155b・156bは発熱抵抗体157と電気的に繋がるように配置されている。給電領域155aと通電領域155bは、基板154の第1の孔155h1及び第2の孔155h2に流し込まれたペーストにより形成された貫通領域(不図示)と、基板154の裏面に形成された繋ぎ領域155cと、によって繋がっている。同様に、給電領域156aと通電領域156bは、基板154の第1の孔156h1及び第2の孔156h2に流し込まれたペーストにより形成された貫通領域(不図示)と、基板154の裏面に形成された繋ぎ領域156cと、によって繋がっている。そして通電領域155b・156bの幅は2mmと一定となっている。
【0144】
157は基板154上に形成された発熱抵抗体であり、例えばAg/Pd(銀パラジウム)等の電気抵抗材料にガラス粉末等を混ぜたペーストを基板154にスクリーン印刷したものである。この抵抗体157も各材料の配合を変えることで体積抵抗値を調整できる。抵抗体157は、電極155の通電領域155bと電極156の通電領域156bとを電気的に繋ぐように電極155・156の上から厚さが10μmになるように印刷されている。抵抗体157の長さは312mmで、その中心位置が記録材Pの搬送中心となっている。また、抵抗体157は、シート抵抗が1000Ω/□であり、PTC特性を有する。
【0145】
本実施例において、抵抗体157の厚さは、通電領域155b・156bの長手領域のうち、給電領域155a・156aに最も電位的に近い通電領域155b・156bの長手中心から両端部に向かって連続的に厚くなっている。
【0146】
図16(a)に抵抗体157の長手方向における厚さの分布を示す。横軸は搬送中心からの距離で、マイナス側は給電領域155a・156a側、プラス側はその給電領域155a・156aの反対側となっている。本実施例では、抵抗体157の厚さは、長手中心位置で9.13μmであり、そこから端部方向に行くに従って連続的に狭くなり、両端部で9.80μmとなるように設定している。抵抗体157の厚さを上記のように設定したことによって、抵抗体157の基板154の短手方向における抵抗値は、基板154の長手方向において導電領域155b・156bが給電領域155a・156aに電気的に最も近い位置(中央部)で最大となる。
【0147】
1)比較実験例1
本実施例の通紙方向通電ヒータ153と、長手方向で発熱抵抗体の厚さが一定である従来例の通紙方向通電ヒータとで、長手方向の温度分布の比較を行った結果を説明する。
【0148】
従来例の通紙方向通電ヒータとして、図13(b)に示すヒータ243を用いた。従来例のヒータ243は発熱抵抗体247の厚さのみが10μm(図16(a)に記載))と一定である以外は、本実施例のヒータ153と同じ構成、配置をしている。
【0149】
図16(a)に、それぞれのヒータ153・243単品を用いて、ヒータ153・243の温度が200℃になるように120Vで通電制御したときの、発熱ムラをサーモグラフィーで測定したときの結果を以下に示す。ヒータ153・243への通電は、通紙領域のヒータ裏面中心にサーミスタを配し、このサーミスタの検知温度が200℃を維持するように制御した。この比較は記録材を通過させていない時のものである。
【0150】
図16(b)に示すように、本実施例の通紙方向通電ヒータ153では、長手方向全域に渡って温度分布が一定である。これに対して、従来例のヒータ243では、抵抗体247の端部位置で186℃、中心位置で200℃である。従って抵抗体247の端部位置は中心位置に対して約14℃の温度ムラが発生した。
【0151】
このように本実施例の通紙方向通電ヒータ153は、抵抗体157の厚さが、通電領域155b・156bの長手領域のうち、給電領域155a・156aに最も電位的に近い通電領域155b・156bの長手中心から両端部に向かって連続的に厚くなっている。これにより、抵抗体157の基板154の短手方向における抵抗値が基板154の長手方向において連続的に変化する。つまり、抵抗体157の長手方向の抵抗分布が連続的に変化する。従って、実施例1のヒータ13と同じ作用効果を得ることができる。
【0152】
2)比較実験例2
本実施例の通紙方向通電ヒータ153が非通紙領域昇温に効果があることを確認するために、通紙方向通電ヒータではないタイプの従来例のヒータとの比較を行った。
【0153】
従来例のヒータとして、発熱抵抗体往復パターンのヒータを用いた。その従来例のヒータの構成は、実施例1の比較実験例2におけるヒータ223と同じであるため、その説明を援用する。
【0154】
本実施例のヒータ153と従来例のヒータ223をそれぞれ同じ構成の定着器に組み込み、ニップ部に記録材を通過させた時の、ヒータ153・223の長手方向に対する非通紙領域と通紙領域との加圧ローラの表面温度を比較した。条件としては、室温23度、湿度50%の環境下において、幅が100mmのはがきを連続10枚通紙した後の温度を、熱電対で測定した。ヒータ153・223の制御としては、通紙領域のヒータ裏面中心にサーミスタを配し、このサーミスタの検知温度が200℃を維持するように120Vで通電制御した。
【0155】
結果としては、従来例のヒータ223では、通紙領域の加圧ローラ表面の温度は160℃、及び非通紙領域の加圧ローラ表面の温度は250℃であった。これに対し、本実施例のヒータ153では、通紙領域の加圧ローラ表面の温度が160℃、及び非通紙領域の加圧ローラ表面の温度は200℃であった。よって本実施例の通紙方向通電ヒータ153は、従来の通紙方向通電ヒータではないヒータ223に対して、非通紙領域の温度にして50℃のマージンアップが図られている。
【0156】
このように本実施例の通紙方向通電ヒータ153でも、従来の通紙方向通電ヒータと同様に非通紙領域昇温に対してメリットがあることが確認された。
【0157】
従って、本実施例のヒータ153においても、実施例1のヒータ13と同じ作用効果を得ることができる。即ち、一つのプリンタで利用できる最大サイズの記録材Pを定着する際の定着ムラを抑えることができる。また、小サイズ紙をプリントする際の単位時間あたりの出力枚数の低下を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0158】
【図1】画像形成装置の一例の構成模型図
【図2】定着装置の一例の横断面模型図
【図3】定着装置の縦断面模型図
【図4】定着装置を記録材導入側から見た図
【図5】(a)は実施例1に係るヒータの一例を表わす図、(b)は実施例1に係るヒータと同じタイプの従来のヒータの一例を表わす図、(c)は実施例1に係るヒータと異なるタイプの従来のヒータの一例を表わす図
【図6】(a)は図5(a)に示すヒータ、及び図5(b)に示すヒータにおける発熱抵抗体の長手方向の幅の分布を比較したグラフ、(b)はそれらのヒータにおける長手方向の表面温度の分布を比較したグラフ
【図7】実施例2に係るヒータの一例を表わす図
【図8】(a)は実施例2に係るヒータ、及び実施例2に係るヒータと同じタイプの従来のヒータにおける発熱抵抗体の長手方向の厚さの分布を比較したグラフ、(b)はそれらのヒータにおける長手方向の表面温度の分布を比較したグラフ
【図9】(a)は実施例3に係るヒータの一例を表わす図、(b)は実施例3に係るヒータと同じタイプの従来のヒータの一例を表わす図
【図10】(a)は図9(a)に示すヒータ、及び図9(b)に示すヒータにおける発熱抵抗体の長手方向の幅の分布を比較したグラフ、(b)はそれらのヒータにおける長手方向の表面温度の分布を比較したグラフ
【図11】実施例4に係るヒータの一例を表わす図
【図12】(a)は実施例4に係るヒータ、及び実施例4に係るヒータと同じタイプの従来のヒータにおける発熱抵抗体の長手方向の厚さの分布を比較したグラフ、(b)はそれらのヒータにおける長手方向の表面温度の分布を比較したグラフ
【図13】(a)は実施例5に係るヒータの一例を表わす図、(b)は実施例5に係るヒータと同じタイプの従来のヒータの一例を表わす図
【図14】図13(a)に示すヒータ、及び図13(b)に示すヒータにおける発熱抵抗体の長手方向の幅の分布を比較したグラフ、(b)はそれらのヒータにおける長手方向の表面温度の分布を比較したグラフ
【図15】実施例6に係るヒータの一例を表わす図
【図16】(a)は実施例6に係るヒータ、及び実施例6に係るヒータと同じタイプの従来のヒータにおける発熱抵抗体の長手方向の厚さの分布を比較したグラフ、(b)はそれらのヒータにおける長手方向の表面温度の分布を比較したグラフ
【図17】従来のヒータの一例を表わす図
【符号の説明】
【0159】
13,113,123,133,143,153:ヒータ
14,114,124,134,144,154:基板
15・16,115・116,125・126,135・136,145・146,155・156:電極
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、前記基板の長手方向に沿って設けられている発熱抵抗体と、を有し、サイズの異なる被加熱材を加熱する加熱装置に用いられる加熱体において、
前記基板の長手方向と直交する短手方向における一端側と他端側にそれぞれ前記基板の長手方向に沿って設けられた電極を有し、前記基板の短手方向において前記電極間に前記発熱抵抗体を有し、前記発熱抵抗体は前記基板の短手方向における抵抗値が前記基板の長手方向において連続的に変化するように形成されていることを特徴とする加熱体。
【請求項2】
前記電極は、それぞれ、前記発熱抵抗体と電気的に接続された導電領域と、前記導電領域に給電するための給電領域と、を有し、前記発熱抵抗体の前記短手方向の抵抗値は、前記基板の長手方向において前記給電領域に電気的に最も近い位置で最大となることを特徴とする請求項1に記載の加熱体。
【請求項3】
前記発熱抵抗体は、前記基板の短手方向における幅が前記基板の長手方向において変化する形状に形成されていることを特徴する請求項1に記載の加熱体。
【請求項4】
前記発熱抵抗体は、前記基板の長手方向及び短手方向と直交する厚み方向における厚さが前記基板の長手方向において変化する形状に形成されていることを特徴する請求項1に記載の加熱体。
【請求項5】
前記発熱抵抗体は、正の抵抗温度係数を有することを特徴する請求項1から請求項4の何れかに記載の加熱体。
【請求項6】
基板と前記基板の長手方向に沿って設けられている発熱抵抗体とを有する加熱体と、前記加熱体と接触しつつ移動する可撓性部材と、前記可撓性部材を挟んで前記加熱体とニップ部を形成するバックアップ部材と、を有し、前記ニップ部でサイズの異なる被加熱材を挟持搬送しつつ加熱する加熱装置において、
前記加熱体は、前記基板の長手方向と直交する短手方向における一端側と他端側にそれぞれ前記基板の長手方向に沿って設けられた電極を有し、前記基板の短手方向において前記電極間に前記発熱抵抗体を有し、前記発熱抵抗体は前記基板の短手方向の抵抗値が前記基板の長手方向において連続的に変化するように形成されていることを特徴とする加熱装置。
【請求項7】
前記電極は、それぞれ、前記発熱抵抗体と電気的に接続された導電領域と、前記導電領域に給電するための給電領域と、を有し、前記発熱抵抗体の前記短手方向の抵抗値は、前記基板の長手方向において前記給電領域に電気的に最も近い位置で最大となることを特徴とする請求項6に記載の加熱装置。
【請求項8】
前記発熱抵抗体は、前記基板の短手方向における幅が前記基板の長手方向において変化する形状に形成されていることを特徴する請求項6に記載の加熱装置。
【請求項9】
前記発熱抵抗体は、前記基板の長手方向及び短手方向と直交する厚み方向における厚さが前記基板の長手方向において変化する形状に形成されていることを特徴する請求項6に記載の加熱装置。
【請求項10】
前記発熱抵抗体は、正の抵抗温度係数を有することを特徴する請求項6から請求項9の何れかに記載の加熱装置。
【請求項1】
基板と、前記基板の長手方向に沿って設けられている発熱抵抗体と、を有し、サイズの異なる被加熱材を加熱する加熱装置に用いられる加熱体において、
前記基板の長手方向と直交する短手方向における一端側と他端側にそれぞれ前記基板の長手方向に沿って設けられた電極を有し、前記基板の短手方向において前記電極間に前記発熱抵抗体を有し、前記発熱抵抗体は前記基板の短手方向における抵抗値が前記基板の長手方向において連続的に変化するように形成されていることを特徴とする加熱体。
【請求項2】
前記電極は、それぞれ、前記発熱抵抗体と電気的に接続された導電領域と、前記導電領域に給電するための給電領域と、を有し、前記発熱抵抗体の前記短手方向の抵抗値は、前記基板の長手方向において前記給電領域に電気的に最も近い位置で最大となることを特徴とする請求項1に記載の加熱体。
【請求項3】
前記発熱抵抗体は、前記基板の短手方向における幅が前記基板の長手方向において変化する形状に形成されていることを特徴する請求項1に記載の加熱体。
【請求項4】
前記発熱抵抗体は、前記基板の長手方向及び短手方向と直交する厚み方向における厚さが前記基板の長手方向において変化する形状に形成されていることを特徴する請求項1に記載の加熱体。
【請求項5】
前記発熱抵抗体は、正の抵抗温度係数を有することを特徴する請求項1から請求項4の何れかに記載の加熱体。
【請求項6】
基板と前記基板の長手方向に沿って設けられている発熱抵抗体とを有する加熱体と、前記加熱体と接触しつつ移動する可撓性部材と、前記可撓性部材を挟んで前記加熱体とニップ部を形成するバックアップ部材と、を有し、前記ニップ部でサイズの異なる被加熱材を挟持搬送しつつ加熱する加熱装置において、
前記加熱体は、前記基板の長手方向と直交する短手方向における一端側と他端側にそれぞれ前記基板の長手方向に沿って設けられた電極を有し、前記基板の短手方向において前記電極間に前記発熱抵抗体を有し、前記発熱抵抗体は前記基板の短手方向の抵抗値が前記基板の長手方向において連続的に変化するように形成されていることを特徴とする加熱装置。
【請求項7】
前記電極は、それぞれ、前記発熱抵抗体と電気的に接続された導電領域と、前記導電領域に給電するための給電領域と、を有し、前記発熱抵抗体の前記短手方向の抵抗値は、前記基板の長手方向において前記給電領域に電気的に最も近い位置で最大となることを特徴とする請求項6に記載の加熱装置。
【請求項8】
前記発熱抵抗体は、前記基板の短手方向における幅が前記基板の長手方向において変化する形状に形成されていることを特徴する請求項6に記載の加熱装置。
【請求項9】
前記発熱抵抗体は、前記基板の長手方向及び短手方向と直交する厚み方向における厚さが前記基板の長手方向において変化する形状に形成されていることを特徴する請求項6に記載の加熱装置。
【請求項10】
前記発熱抵抗体は、正の抵抗温度係数を有することを特徴する請求項6から請求項9の何れかに記載の加熱装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2009−103881(P2009−103881A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−274945(P2007−274945)
【出願日】平成19年10月23日(2007.10.23)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年10月23日(2007.10.23)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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