説明

加熱処理装置

【課題】自動搬送を行う場合、温度変化による凹凸形状の相対位置バラツキと機構停止精度等による相対位置バラツキの和が、嵌合部における隙間量を超えると搬送不能となるが、これに対し複雑な位置検出機構を用いなくても搬送不良を起こさない高温炉などの処理装置を提供する。
【解決手段】まず十分な隙間量を有する位置で浅い嵌合深さで挿入用穴部と前記挿入用突起部のみを嵌合し、次にそれらを平面方向に相対移動させて、前記挿入用穴部と前記挿入用突起部に加えて前記位置決め用穴部と前記位置決め用突起部も嵌合可能な位置で前記挿入用突起部と前記挿入用穴部との側面同士を接触させ、さらに深く挿入して前記位置決め用穴部と前記位置決め用突起部も嵌合させることで、搬送時の装置温度によらず位置決め後の突起部と穴部の相対位置を安定させることが可能で、より高精度な位置決めが可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被搬送物を所定の範囲内に位置決めして設置するための位置決め構造を搭載する加熱処理装置及び搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
気相反応炉などの処理装置における機構部品の位置決めでは、温度上昇に伴い生じる各部の熱膨張への対応が必須でありかつ重要である。
【0003】
特許文献1では、半導体ウエハが上に載置される支持領域を備えた上面を有する載置台と、支持領域を囲むようにして前記載置台の上面上に配置され、支持領域上に載置された半導体ウエハの前記上面に沿う移動を規定する、載置台よりも熱膨張率の低い材料で形成された位置決めリング部材とを有し、複数の突部が載置台の上面の周囲部分にリング部材に沿って互いに所定間隔を有して設けられている。また、複数のスロットが、それぞれ対応する突部を受けるように前記位置決めリングに形成されている。これらスロットは、中に挿入された突起の前記位置決めリング部材の径方向への相対的な移動を許容し、かつ中に挿入された突起のリング部材の回転方向の相対的移動を全体として規制する。
【0004】
特許文献2では、基板保持具に保持された基板を処理する処理室と、処理室の内部を加熱する加熱手段と、基板保持具の底部に設けられ、その底面に複数の位置決め溝が形成された第1の蓋体と、第1の蓋体よりも熱膨張率の大きい材質で形成され、第1の蓋体の底面と対向配置された第2の蓋体と、第2の蓋体に対して前記第1の蓋体を位置決めする。そのために前記第1の蓋体における複数の位置決め溝のそれぞれと相対する位置に設けられた複数の位置決め手段とを備えている。また該複数の位置決め溝は、第2の蓋体の熱変形によって複数の位置決め手段のそれぞれが対応する位置決め溝の壁面に所定値以上の応力を加えないように、第1の蓋体における底部の中心部から周縁方向に向けて漸次広がるように形成されていることを特徴としている。
【0005】
特許文献3では、上下ヒンジ機構と開閉体を有し、まず下部ヒンジにおいて充分に大きな穴に軸を入れて開閉体を仮に支えた状態とし、この状態で上部ヒンジの位置あわせを行った後、開閉体を回転させることで開閉体が位置決め位置に誘導され上下ヒンジを簡単に嵌合させることが出来る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2001−525997号公報
【特許文献2】特開2006−237287号公報
【特許文献3】特開2002−306784号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に示される位置決め構造では、複数の突起とスロットの組み合わせにより、リング部材を高精度に位置決め可能であるとともに温度変化が与えられたとしても常にリング部材の中心軸を基準として熱膨張・収縮し、かつこの際、突起とスロットの間に大きな負荷が生じることもない。しかし全てのスロットに全ての突起を同時に挿入してリング部材を載置する際に必要な精度は最終的な位置決め精度と同じであり、温度変化の大きい使用条件下で高い精度での位置決めを要求する際には、リング部材を搬送して設置する際に困難な場合である。
【0008】
特許文献2についても同様に、嵌合完了後の温度上昇については、位置決め溝の形状を工夫して位置決め手段との間に過大な応力が生じないよう考慮されているが、少なくとも常温でそれらを嵌合する際に必要な精度は常温での最終的な位置決め精度と同じであり、高い精度での位置決めを要求する際には設置する際に困難な場合がある。また、特許文献2の形状では温度上昇とともに位置決め構造としての位置決め精度が低下していくという問題がある。
【0009】
特許文献3では、簡単に嵌合状態を得ることが出来るが、位置決め状態を得るには取付け対象となる開閉体の回転が必要な構造となっている。また、テーパ形状によって滑らせることが前提となっている部分があるが、加熱処理装置内部の部材表面は完全脱脂された清浄表面となっている場合がほとんどで、また雰囲気ガスも酸素等を含まない不活性ガスで満たされている場合があり、これらの場合は一般的な雰囲気下に対して摩擦力が非常に大きいことから、テーパ形状で部材を自重により滑らせて落下させることに頼らない確実な搬送方法が求められる。
【0010】
上記のように気相反応炉などの加熱処理装置において、特に自動搬送を行う場合、温度変化に伴う各部の熱膨張・収縮による被搬送物と載置台との相対位置ズレ量と、搬送機構の停止精度等による被搬送物と載置台との相対位置ズレ量などの和が、被搬送物と載置台との位置決め構造における嵌合隙間量を超えると被搬送物が載置台に乗り上げるなどして搬送不能となる場合がある。このため精度の高い嵌合を行うには、厳密な温度管理が要求されたり搬送機構に過大な高精度が要求されたり、あるいは別途被搬送物と載置台との相対位置のズレ量検出機構を用いて、検出された位置ズレ量に対して被搬送物の設置位置座標をアクティブに変える必要が出てくるなど装置が複雑かつ高価となる問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の加熱処理装置においては、被搬送物を載置するための載置台と、載置台及び被搬送物を加熱する加熱装置を有し、前記載置台及び前記被搬送物には、載置台上で被搬送物を位置決めするための位置決め構造を有し、前記位置決め構造は相互に嵌合する凹形状と凸形状からなり、前記被搬送物、及び被搬送物を載置するための載置台が、前記凹形状と前記凸形状のどちらか片方ずつをそれぞれ有し、前記凹形状は挿入用穴部と位置決め用穴部を有し、前記凸形状は挿入用突起部と位置決め用突起部を有し、前記凸形状は、前記凹形状に充分に嵌合可能な長さを有しており、嵌合深さが浅いと前記挿入用穴部と前記挿入用突起部が嵌合し、さらに深く嵌合すると前記位置決め用穴部と前記位置決め用突起部が嵌合する長さもしくは深さを各部が有し、前記凹形状の穴の深さ方向に対して垂直な面内において、前記位置決め用穴部に前記位置決め用突起部が嵌合したときにおける隙間量は、前記挿入用穴部に前記挿入用突起部が嵌合したときにおける隙間量より小さく、かつ前記面内の特定の位置において前記挿入用穴部と前記挿入用突起部が接触した状態で嵌合深さを深くすると、前記位置決め用穴部と前記位置決め用突起部が嵌合する形状を有することを特徴とする。
【0012】
この特徴によって、まず十分な隙間量を有する位置で浅い嵌合深さで挿入用穴部と前記挿入用突起部のみを嵌合し、次にそれらを平面方向に相対移動させて、前記挿入用穴部と前記挿入用突起部に加えて前記位置決め用穴部と前記位置決め用突起部も嵌合可能な位置で前記挿入用突起部と前記挿入用穴部との側面同士を接触させ、さらに深く挿入して前記位置決め用穴部と前記位置決め用突起部も嵌合させることで、搬送時の温度によらず位置決め後の突起部と穴部の相対位置を安定させることが可能で、より高精度な位置決めが可能になる。
【0013】
また本発明の加熱処理装置においては、前記位置決め構造における凸形状が、前記挿入用突起と前記位置決め用突起を兼ねる突起により形成されていることを特徴とする。
【0014】
この特徴によって、前記凸形状における前記挿入用突起部と位置決め用突起部との間の位置関係に加工誤差が生じる余地はなく、加工が比較的簡単でかつ形状精度が得られやすく、それらを用いて簡単に高精度の位置決めを実現できる効果が得られる。
【0015】
また本発明の加熱処理装置においては、被搬送物と載置台とは、位置決め構造を2箇所に有し、第1の位置決め構造と第2の位置決め構造は嵌合方向が同一で同時に嵌合可能であり、前記第1の位置決め構造及び第2の位置決め構造はそれぞれ請求項1〜2に記載の位置決め構造であり、前記第2の位置決め構造における位置決め用穴部と位置決め用突起部の嵌合形状は、前記第1の位置決め構造における位置決め用穴部と位置決め用突起部の嵌合形状に対して、嵌合方向への投影図における第1の位置決め構造と第2の位置決め構造を結ぶ軸方向の隙間量が大きいことを特徴とする。
【0016】
この特徴によって、挿入用突起部と挿入用穴部間の位置関係を平面方向に加えて回転方向も高精度に拘束することを簡単に実現できる。また第1の位置決め構造と第2の位置決め構造との間の距離に対して特に高い加工精度や温度管理を必要とせずに、被搬送物と載置台との間の位置関係を平面方向に加えて回転方向も高精度に拘束することを簡単に実現できる。
【0017】
また本発明の加熱処理装置においては、複数の被搬送物を載置可能な載置台と、前記載置台を回転させる回転機構を有し、前記位置決め構造により前記複数の被搬送物が前記回転機構の回転軸を中心に同心円状に載置されることを特徴とする。
【0018】
この特徴によって、特定のサイクル動作で1個の被搬送物を位置決めして載置するたびに回転機構を回転して載置台上の異なる載置部へ載置台を回転移動させることにより、同じサイクル動作の繰返しにより連続して次々と被搬送物を載置することを簡単に行うことができる。
【0019】
また本発明の加熱処理装置においては、前記凹形状の穴の深さ方向に対して垂直な面内において、前記挿入用穴部は前記回転機構の回転軸からの距離とともに拡大する部分を有し、前記挿入用穴部と前記挿入用突起部が接触した状態で嵌合深さを深くすると前記位置決め用穴部と前記位置決め用突起部が嵌合可能である前記特定の位置が、前記挿入用穴部のうち前記回転機構の回転軸に最も近い位置であることを特徴とする。
【0020】
この特徴によって、前記挿入用穴部と前記挿入用突起部とが嵌合したいずれの被搬送物も、中心軸へ向かって移動させることで前記位置決め用穴部と前記位置決め用突起部とが簡単に嵌合可能となる。また、中心軸へ向かって押すことに伴い回転機構に対して余計な回転トルクを与えることも防止できる。
【0021】
また本発明の加熱処理装置においては、前記複数の被搬送物は前記回転機構の回転軸を中心に等角度ピッチに載置され、前記挿入用穴部が前記回転機構の回転軸からの距離とともに拡大する部分が直線的に拡大し、前記直線的に拡大する部分の開き角が、360度を被搬送物の数で割った角度以下であることを特徴とする。
【0022】
この特徴によって、特に被搬送物が360度を被搬送物の数で割った角度以下の形状を有する場合には、前記挿入用穴部と前記挿入用突起部とが嵌合したいずれの被搬送物も、中心軸へ向かって移動させる際に、隣り合う被搬送物に余計な力を与えることなく、挿入用穴部が挿入用突起部をガイドすることで位置決め用穴部と位置決め用突起部を嵌合させることができる。
【0023】
また本発明の加熱処理装置においては、被搬送物を保持する保持機構と、前記保持機構を前記位置決め構造の嵌合方向に移動させる昇降機構と、前記嵌合方向とは異なる方向に移動させる移動機構とからなる搬送機構とを有する。
【0024】
この特徴によって、搬送装置もしくは処理装置の温度変化や動作精度によらず、安定した位置決め精度で運転が可能である効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の加熱処理装置は、被搬送物を載置するための載置台と、載置台及び被搬送物を加熱する加熱装置を有し、前記載置台及び前記被搬送物には、載置台上で被搬送物を位置決めするための位置決め構造を有し、前記位置決め構造は相互に嵌合する凹形状と凸形状からなり、前記被搬送物、及び被搬送物を載置するための載置台が、前記凹形状と前記凸形状のどちらか片方ずつをそれぞれ有し、前記凹形状は挿入用穴部と位置決め用穴部を有し、前記凸形状は挿入用突起部と位置決め用突起部を有し、前記凸形状は、前記凹形状に充分に嵌合可能な長さを有しており、嵌合深さが浅いと前記挿入用穴部と前記挿入用突起部が嵌合し、さらに深く嵌合すると前記位置決め用穴部と前記位置決め用突起部が嵌合する長さもしくは深さを各部が有し、前記凹形状の穴の深さ方向に対して垂直な面内において、前記位置決め用穴部に前記位置決め用突起部が嵌合したときにおける隙間量は、前記挿入用穴部に前記挿入用突起部が嵌合したときにおける隙間量より小さく、かつ前記面内の特定の位置において前記挿入用穴部と前記挿入用突起部が接触した状態で嵌合深さを深くすると、前記位置決め用穴部と前記位置決め用突起部が嵌合する形状を有する。
【0026】
被搬送物の載置台上での最終的な位置決め精度は、位置決め用穴と位置決め用突起が嵌合したときの隙間量である。搬送時の温度変化に伴う載置台や搬送機構の熱膨張・収縮により、たとえこの隙間量を上回る位置変化が生じても、挿入用穴と挿入用突起さえ嵌合すれば、被搬送物と載置台とを特定の方向へ相対移動させることによって位置決め用穴と位置決め用突起を嵌合させることができ、結果高精度な嵌合を実現できる効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1実施形態に係る上面図及び側面図である。
【図2】本発明の第1実施形態における基板トレイ2の上面図、及び側面図である。
【図3】本発明の第1実施形態における載置台3の上面図、及び側面図である。
【図4】本発明の第1実施形態における搬送動作を表す上面図及び側面図である。
【図5】本発明の第1実施形態における搬送動作を表す上面図及び側面図である。
【図6】本発明の第1実施形態における搬送動作を表す上面図及び側面図である。
【図7】本発明の第1実施形態における搬送動作を表す上面図及び側面図である。
【図8】本発明の第1実施形態における搬送動作を表す上面図及び側面図である。
【図9】本発明の第1実施形態に類似する位置決め構造を表す上面図及び側面図である。
【図10】本発明の第1実施形態に類似する位置決め構造を表す上面図及び側面図である。
【図11】本発明の第1実施形態に類似する位置決め構造を表す上面図及び側面図である。
【図12】本発明の第1実施形態に類似する位置決め構造を表す上面図及び側面図である。
【図13】本発明の第1実施形態に類似する位置決め構造を表す上面図及び側面図である。
【図14】本発明の第1実施形態に類似する位置決め構造を表す上面図及び側面図である。
【図15】本発明の第1実施形態に類似する位置決め構造を表す上面図及び側面図である。
【図16】本発明の第2実施形態に係る上面図及び側面図である。
【図17】本発明の第3実施形態における搬送前及び搬送後の状態を示す上面図及び側面図である。
【図18】本発明の第3実施形態における搬送動作を示す上面図及び側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照しながら本発明を実施するための形態を、複数の形態について説明する。以下の説明においては、各形態に先行する形態ですでに説明している事項に対応している部分には同一の参照符を付し、重複する説明を略する場合がある。構成の一部のみを説明している場合、構成の他の部分は、先行して説明している形態と同様とする。実施の各形態で具体的に説明している部分の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、実施の形態同士を部分的に組合せることも可能である。またそれぞれの実施形態は、本発明に係る技術を具体化するために例示するものであり、本発明の技術的範囲を限定するものではない。本発明に係る技術内容は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることが可能である。以下の説明は、搬送装置、及び処理装置についての説明をも含む。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係る位置決め構造を有した搬送装置の上面図を図1(a)に、側面図を図1(b)に示す。本発明の第1実施形態に係る搬送装置は、被搬送物を載置台上に搬送し載置した際に所定の範囲に被搬送物を拘束する。
【0029】
本発明の第1実施形態に係る気相成長装置は、被搬送物である基板トレイ2と、基板トレイ2を載置する載置台3とを含んで構成される。載置台3は基板トレイ2の平面中心で回転可能となるよう回転機構4上に取り付けられており、載置台3の裏面には載置台3越しに基板トレイ2上の窪み2aに収められた基板5を加熱するための加熱機構6が設けられている。上記構成要素は密閉されたステンレス製のチャンバ7内に収められており、同チャンバはガスの導入口8と排出口9および開閉可能な開口部10が設けられていて、成膜前後の基板を載置した基板トレイ2は搬送機構11により前記開口部10を介して出し入れされる。
【0030】
載置台3上に基板トレイ2を設置後、前記開口部10は閉じられ、窒素置換された後、加熱機構6により800〜1400℃程度の高温に加熱された基板5表面に各種プロセスガスを供給することにより基板表面近傍で気相反応を生じさせ、基板表面にプロセスガスに応じた任意の組成の結晶薄膜を成長させることができる。成膜後の基板トレイ2は前記搬送機構11により取り出されるが、装置のスループット向上のためにまだ数百度の高温のうちに取り出されることもある。
【0031】
搬送機構11は、基板トレイ2の上面を真空吸着により保持する保持機構12と、保持機構12を上昇/下降させる昇降機構、および平面移動させる移動機構部を有する。保持機構12は無負荷あるいは低負荷状態では決められた位置に停止するが、閾値以上の負荷がかかると平面方向へスライドするスライド機構13を介して搬送アームに取り付けられている。本実施例ではスライド機構13は直動ガイドレール13aとバネ13bにより構成されており、通常はバネ13bにより常時片側のストッパに押し当てられているが、バネによる与圧以上の力を与えられるとスライドを開始する。
【0032】
図2(a)、図2(b)、図3(a)、図3(b)は、それぞれ基板トレイ2と載置台3の上面図、及び側面図を示している。基板トレイ2と載置台3とは互いに嵌合する突起部と穴部からなる位置決め構造を有し、本実施例では基板トレイ2に突起部として凸形状15が設けられており、載置台3に穴部として凹形状16が設けられている。載置台3は載置面3aが水平になるよう設置されており、基板トレイ2の設置面2bもそれに倣うよう搬送され、かつ設置される。図1で示されるように搬送機構11は保持し搬送してきた基板トレイ2を、凸形状15と凹形状16からなる位置決め構造に基づいて位置決めし、載置台3上の所定の位置に設置する。
【0033】
基板トレイ2に設けられた凸形状15は挿入用突起部15aと位置決め用突起部15bとを含んで構成される。基板トレイ2の下面である設置面2bから下向きに円柱状の挿入用突起15aが設けられている。また挿入用突起15a、位置決め用突起15bはともに円柱状であり、前記挿入用突起15aの下面である先端面からさらに下向きに位置決め用突起15bが設けられている。前記位置決め用突起15bの直径は前記挿入用突起15aの直径よりも小さく、かつ前記位置決め用突起15bの中心軸は前記挿入用突起15aの中心軸および基板トレイ2の中心軸と一致している。すなわち挿入用突起部15aの底部に位置決め用突起部15bを有し、凸形状15の円柱軸方向への投影図において挿入用突起部15aは位置決め用突起部15bを内包する構造となっている。
【0034】
また載置台3に設けられた凹形状16は挿入用穴部16aと位置決め用穴部16bとを含んで構成される。基板トレイ2を載置する載置面3aに下向きに、大小の円形、すなわち大穴部16cと小穴部16dを接線16eでつないだ形状の断面を有する挿入用穴16aが設けられており、前記挿入用穴16aの底面からさらに下向きに円形の断面を有する位置決め用穴16bが設けられている。前記位置決め用穴部16bの中心軸は前記挿入用穴部16aの断面を形成する大穴部と小穴部のうち小穴部の中心軸と一致している。すなわち挿入用穴部16aの底部に位置決め用穴部16bを有し、凹形状16の穴の深さ方向への投影図において、挿入用穴部16aは前記位置決め用穴部16bを内包する構造となっている。また小穴部の円の径は挿入用突起15aの径とほぼ同一であるが後述の位置決め用突起15bと位置決め用穴16bとの間の隙間量と同じだけ挿入用穴の小穴部のほうが挿入用突起の径よりも大きい。
【0035】
図4から図8は、図1の搬送装置にて基板トレイを載置台上へ位置決めして設置する手順を示すものである。各図の(a)は上面図を、(b)、(c)は側面図を示している。また図4から図8中では基板トレイと載置台、及び搬送機構以外の構成要素は図示することを省略している。さらに図6(a)、図7(a)では基板トレイの構成要素中、挿入用突起部以外を省略している。また図8(a)では、基板トレイの構成要素中、位置決め用突起部以外を省略している。おおまかには、『1次移動』→『1次下降』→『2次移動』→『2次下降』の順に動作が行われる。以下に図4から図8の内容を説明する。
【0036】
まず図4(a)(b)では、基板トレイ上面でかつ基板面でない外周部を搬送機構11の保持機構12により真空吸着された状態で、載置台の上方を『1次移動』してきた基板トレイは、図5(a)(b)で示す通り、挿入用穴の断面を形成する大穴部と小穴部のうち大穴部の中心軸と挿入用突起の中心軸が一致する位置を目標として載置台上空でいったん停止される。このとき基板トレイ搬送は常に室温下で行われるわけではなく、前述のように装置のスループット向上のため比較的高温下で行われることもあり、このような場合には搬送機構や載置台の各部の伸びにより相対位置のズレが生じる。加えて吸着時の位置のばらつきや、水平に移動/停止する移動機構の停止精度内の停止位置ばらつきなどにより目標位置からのズレがさらに生じる。
【0037】
しかし前記挿入用穴の大穴部の径は前記挿入用突起の径よりも充分に大きい。またその隙間量は温度変化に伴う各部の熱膨張・収縮による被搬送物と載置台との相対位置ズレ量と、搬送機構の停止精度等による被搬送物と載置台との相対位置ズレ量との和よりも大きくなるよう製作されている。そのため次のステップとして図6(a)(b)で示す通り、昇降機構により挿入用突起と挿入用穴のみが嵌合し、位置決め用穴と位置決め用突起はまだ嵌合しない高さまで基板トレイを『1次下降』させた際に、前記挿入用穴と前記挿入用突起とが乗り上げたり衝突したりすることはない。
【0038】
続いて図7(a)(b)で示す通り、前記のように挿入用突起のみが嵌合する高さを維持したまま、移動機構によりさらに水平方向へ基板トレイを『2次移動』させる。このときの移動方向は、前記挿入用穴の断面を形成する大穴部と小穴部のうち大穴部の中心から小穴部の中心へ向かう方向に設定される。『2次移動』中には、挿入用穴部の断面を形成する大穴部と小穴部を結ぶ軸上に挿入用突起の中心軸が位置していなくても、挿入用穴部の断面を形成する大穴部と小穴部を結ぶ接線部分に相当する壁面が挿入用突起の側面に接触しながらガイドし、挿入用突起は徐々に挿入用穴部の小穴部と中心軸が一致する位置へと移動する。移動量は、挿入用突起が挿入用穴の大穴部のどの位置に挿入されても、平行移動により挿入用突起が挿入用穴部の小穴部に一致し突起の側面と穴の壁面が移動方向の前方で接触する状態、すなわち挿入用穴部の小穴部で挿入用突起の側面と穴の壁面が接触する状態が得られるよう充分な全移動量が与えられる。移動開始から突起の側面と穴の壁面が移動方向前方で接触する状態となるまでの移動量は上記全移動量よりも小さいので、移動中のある時点で必ず前記接触状態が得られることとなり、前記接触状態となって以降は、挿入用穴の壁面から挿入用突起の側面に与えられた反力が保持機構を支持するスライド機構に与えられてスライドすることで、『2次移動』停止まで前記接触状態が維持される。このときスライド機構は『2次移動』方向にスライド可能なように取付けられている。
【0039】
前述のように、本発明の第一実施形態では位置決め用突起の中心軸は前記挿入用突起の中心軸と一致しており、位置決め用穴の中心軸は前記挿入用穴の断面を形成する大穴部と小穴部のうち小穴部の中心軸と一致しており、かつ小穴部の径は挿入用突起の径とほぼ同一であり、かつ位置決め用穴は位置決め用突起と嵌合した際には位置決め用突起を所定の範囲内に拘束するための隙間量を有するよう製作されている。このことから、前記接触状態を維持して『2次移動』を停止した後に昇降機構により基板トレイをさらに位置決め用突起と位置決め用穴が嵌合する高さまで『2次下降』させた際に、前記位置決め用穴と前記位置決め用突起とが乗り上げたり衝突したりすることはない。ただし本第一実施形態では位置決め用穴の中心軸は前記挿入用穴の断面を形成する大穴部と小穴部のうち小穴部の中心軸と一致している例を示したが、これは必須ではない。位置決め用突起の中心軸と前記挿入用突起の中心軸の相対位置が、位置決め用穴の中心軸と前記挿入用穴の断面を形成する大穴部と小穴部のうち小穴部の中心軸との相対位置と同じであれば、同様の効果を得ることができる。その後図8(a)(b)に示す通り、そのまま昇降機構による『2次下降』を継続し、基板トレイの下面である設置面と載置台の上面である載置面が接触する高さで昇降機構を停止させることで、基板トレイの載置台への載置が完了する。
【0040】
上記載置完了状態では、位置決め用突起と位置決め用穴が所定の隙間量をもって嵌合しており、基板トレイに何らかの平面方向の外力が加えられた場合にも前記位置決め用突起と位置決め用穴の嵌合部に設けられた所定の隙間量以上に移動することはない。前記位置決め時の隙間量は充分に小さく設定することができ高精度な位置決めが容易に実現できる。
【0041】
ここで上記例では、基板トレイと載置台とは互いに嵌合する凹凸形状を有し、基板トレイに凸形状が設けられており、載置台に凹形状が設けられているとしたが、逆に基板トレイに凹形状が設けられており、載置台に凸形状が設けられていてもよい。図9(a)(b)には、凹形状が設けられた基板トレイの一例の上面図、及び側面図をそれぞれ示す。また図10(a)(b)には、凸形状が設けられた載置台の一例の上面図、及び側面図をそれぞれ示す。
【0042】
また上記例では、挿入用突起および位置決め用突起の形状を円柱としたが、任意の形状でもよい。また、挿入用穴は大小の円を接線で結んだ断面形状とし、位置決め用穴は円形の断面形状としたが、前記任意の形状の突起を所定の隙間量で拘束するような任意の形状の穴であってよい。
【0043】
また上記例では、位置決め用突起の直径は挿入用突起の直径よりも小さいとしたが、位置決め用突起と挿入用突起が同一断面形状のまま連続した形状であってもよい。図11(a)(b)には、位置決め用突起と挿入用突起が同一断面形状のまま連続した形状を有した基板トレイの上面図、及び側面図を、また図12(a)(b)にはそれに用いる載置台の上面図と側面図を示す。この場合、位置決め用突起部が挿入用突起部を兼ねることになるが、詳細は別途、第2実施形態において述べる。
【0044】
また上記例では、位置決め用突起の直径は挿入用突起の直径よりも小さいとしたが、位置決め用突起の先端に挿入用突起を設け、かつ挿入用突起の直径が位置決め用突起の直径より小さくしてもよい。さらにこのとき、被搬送物の外形が位置決め用突起を兼ねてもよい。
【0045】
また上記例では、『2次移動』中も真空吸着による基板トレイの保持を継続し、『2次移動』中でかつ基板トレイが位置決め完了位置に到達した後に受ける反力はスライド機構が吸収するとしたが、『2次移動』の移動量が小さければ、特にスライド機構を設けず単に吸着パッド等のたわみや吸着パッドと基板トレイとの接触面間のすべりが反力を吸収するとしてもよい。
【0046】
また上記例では、『2次移動』中も真空吸着による基板トレイの保持を継続し、『2次移動』中でかつ基板トレイが位置決め完了位置に到達した後に受ける反力はスライド機構が吸収するとしたが、『1次下降』完了後に真空吸着による基板トレイの保持を解除し、挿入用突起を挿入用穴の底面に載置した状態で、『2次移動』方向における基板トレイの後端をバネ等で直接押しながら『2次移動』を行ってもよい。
【0047】
また上記例では、被搬送物を基板トレイとしたが、基板トレイに限らず、その他の炉内部材のいずれであってもよい。
【0048】
また上記例では、被搬送物の保持を真空吸着により行っているが、これに限らず、下面を受けるなど他の保持方法であってもよい。
【0049】
また上記例では、単枚の被搬送物を処理する装置について述べたが、2枚以上の多枚の被搬送物を処理する装置に用いてもよい。
【0050】
また上記例では、基板トレイと載置台との間に回転拘束は存在しないが、基板トレイは円形対称の形状であり、その中心軸と位置決め用突起の中心軸とは一致しているため、基板トレイが回転しても装置の運転に影響しない。あるいは、少なくとも位置決め用突起と位置決め用穴の形状を円形でない形状にすることで回転拘束することも可能である。
【0051】
また上記例では、凹凸形状をいわゆる『穴』と『突起』と表記したが、前記『穴』や『突起』の形状のうち『2次移動』で接触する可能性のない部分を除去した形状同士の勘合であってももちろんよい。
【0052】
また上記例における『穴』や『突起』は貫通していても貫通していなくてもよい。例えば図14(a)(b)には位置決め用穴が載置台を貫通しておらず、挿入用穴と一体に形成された載置台の上面図、及び側面図を示している。また図13(a)(b)には図14で示す載置台に最適な基板トレイの上面図と側面図を示している。
【0053】
また上記を含めた被搬送物形状のバリエーションとして、例えば基板トレイの上面図、側面図はそれぞれ図15(a)(b)に示すようなものがある。
(第2実施形態)
図16(a)(b)は、それぞれ本発明の第2実施形態に係る気相成長装置のA−A‘での上面断面図及び側面図である。本発明の第2実施形態に係る搬送装置は、被搬送物を載置台に搬送し載置した際に所定の範囲に被搬送物を拘束する。
【0054】
本発明の第2実施形態に係る気相成長装置は、被搬送物であるフローチャネル21と、フローチャネル21を載置するフローチャネル載置台31とを含んで構成される。ここで述べる相違点以外で第1実施形態と共通の内容については説明を省略する。
【0055】
フローチャネル21は基板表面に効率よくプロセスガスを供給するために用いられる。フローチャネル21には底面に穴21aが設けられており、この穴21aに基板トレイ上の基板を露出させ、加熱機構により裏面から基板トレイ越しに基板を加熱しながら基板表面に各種プロセスガスを供給することにより基板表面近傍で気相反応を生じさせ、基板表面にプロセスガスに応じた任意の組成の結晶薄膜を成長させることができる。
【0056】
フローチャネル21とフローチャネル載置台31との間には、互いに嵌合する凹凸形状からなる位置決め構造が2箇所に設けられている。第1の位置決め構造17と第2の位置決め構造18はそれぞれ第1実施形態における位置決め構造とほぼ同じ形状を有するが、第1の位置決め構造17は挿入用突起と位置決め用突起を同一径とし第一の挿入用兼位置決め用突起17aが挿入用突起と位置決め用突起の機能を兼ねる点が異なる。また第2の位置決め構造18は、第1の位置決め構造17と同様に挿入用突起と位置決め用突起を同一径とし第2の挿入用兼位置決め用突起18aが挿入用突起と位置決め用突起の機能を兼ねるとともに、第1の位置決め構造17と第2の位置決め構造18を結ぶ軸方向に位置決め用穴18bとそれに対応する挿入用穴18cが長穴形状となっている点が異なる。前記長穴形状は、第2の位置決め構造18の第2の挿入用兼位置決め用突起18aを、幅方向には第1の位置決め構造17と同様に所定の隙間量で拘束するが、第1の位置決め構造17と第2の位置決め構造18を結ぶ軸方向に充分な隙間量を有するよう構成されている。
【0057】
フローチャネルとフローチャネル載置台を位置決め完了状態に嵌合させると、第1の位置決め構造では挿入用兼位置決め用突起と位置決め用穴との間の隙間量以内に相対移動が拘束され、かつ第1の位置決め構造を中心とした回転移動も第2の位置決め構造により拘束される。このため上記2箇所の位置決め構造の組合せにより、特に高い加工精度や温度管理を必要とせずに容易にフローチャネル載置台にフローチャネルを載置することができ、かつフローチャネル載置台に対するフローチャネルの面内位置および角度を精度良く位置決めして拘束することができる。
【0058】
また前記長穴は、温度変化等により第1の挿入用兼位置決め用突起と第2の挿入用兼位置決め用突起の間の距離と第1の位置決め用穴と第2の位置決め用穴間の距離とが相対的に変化しても、第2の位置決め構造側では長穴の直線部のみで第2の位置決め用突起を拘束し、長穴の端部には接触しないよう、充分な長さをもって製作される。
【0059】
上記例では、単枚の被搬送物を処理する装置について述べたが、2枚以上の多枚の被搬送物を処理する装置に用いてももちろんよい。ガス供給口を中心として同心円上に配列されたトレイや放射状に分割されたフローチャネルもしくはカバー等の炉内部材のそれぞれに前記位置決め構造が設けられていてもよいが、詳細は別途、第3実施形態において示す。
【0060】
その他のバリエーションについても、第1実施形態と同様に可能であることは言うまでもない。
(第3実施形態)
図17(a)(b)(c)は、それぞれ本発明の第3実施形態に係る気相成長装置のA−A‘での上面断面図及び側面図である。うち、図17(a)は全ての被搬送物が載置された状態を示し、図17(c)は全ての被搬送物が取り除かれた状態を示す。本発明の第3実施形態に係る搬送装置は、被搬送物を載置台に搬送し載置した際に所定の範囲に被搬送物を拘束する。
【0061】
本発明の第3実施形態に係る気相成長装置は、被搬送物である流路カバー22と、流路カバー22を載置するサセプター32とを含んで構成される。ここで述べる相違点以外で第1実施形態もしくは第2実施形態と共通の内容については説明を省略する。
【0062】
サセプター32は、それぞれ基板41を載置された複数枚の基板トレイ42を上面に載置し、それらを公転機構43によりサセプターの中心を回転軸として公転運動させるために用いられる。本実施形態では基板トレイ1枚につき基板1枚が載置され、8枚の基板トレイがサセプター上に載置されている。それぞれの基板トレイは自転プレート44と自転機構45を介してサセプター上に載置されており、サセプターの公転に合わせて各基板トレイを個々に自転させることができる。サセプターの回転中心軸近傍にはガス供給口46があり、ここから放射状に供給されたプロセスガスは、基板表面及び基板表面と対向する位置に設けられたガスガイドプレート47との間を通過し、外周部に設けられた排出口から排気・回収される。加熱機構48によって下面からサセプターと基板トレイ越しに基板を加熱し、かつ基板トレイを自公転させながら、基板表面に各種プロセスガスを供給することにより基板表面近傍で気相反応を生じさせ、基板表面にプロセスガスに応じた任意の組成の結晶薄膜を成長させることができる。
【0063】
基板トレイ41は自公転に適した形状として自転軸を中心とした軸対称な円盤形状であり、サセプター表面のうち前記円盤状の基板トレイで覆われた部分以外、すなわち公転のみしかしない部分は流路カバー22で覆われている。前記基板トレイと前記流路カバーによりサセプター表面はほぼ前面にわたって結晶薄膜や副生成物が直接付着しないよう保護されている。流路カバー22は基板トレイの枚数に合わせて8分割されており、各カバーはほぼ同一寸法である。
【0064】
流路カバー22とサセプター32との間には、互いに嵌合する凹凸形状からなる位置決め構造がそれぞれ2箇所に設けられている。第1の位置決め構造17と第2の位置決め構造18はそれぞれ第2実施形態における位置決め構造と同じ形状を有する。第1の位置決め構造17と第2の位置決め構造18を結ぶ軸が公転機構の中心軸を通過し、第1の位置決め機構17が公転機構の中心軸に近い側に配置されている。
【0065】
また、各位置決め構造の挿入用穴部は、公転機構の中心軸寄りに配置された小穴部と径方向に遠い側に配置された大穴部を接線でつなぐ形状となっており、公転機構の中心軸と前記小穴部の中心軸と前記大穴部の中心軸は一直線上に並んでいる。また前記のとおり挿入用穴部は外周側に向かって幅が直線的に拡大しており、その拡大部分の開き角49はサセプターの1周360度を流路カバーの枚数である8で分割した45度となっている。
【0066】
以下に基板トレイと流路カバーの交換工程を示す。
【0067】
図18(a)(b)は、それぞれ本実施形態での気相成長装置の流路カバー載置動作中の状態を示すA−A‘での上面断面図及び側面図である。
【0068】
800〜1400℃程度の高温での加熱成膜処理完了後、まず加熱機構を停止し、被搬送物である基板及び基板トレイと流路カバーの温度があらかじめ設定された搬送可能温度以下に低下するまで待機する。このとき成膜を伴わない不活性ガスの流れにより被搬送物が冷却されていてもよい。本実施形態では搬送可能温度をサセプター温度が400℃以下である状態とする。別途用意された温度検出手段にて前記搬送可能温度以下となったことを確認した後、チャンバの開口部を開き、ガスガイドプレート47を上昇させ、搬送機構にて8枚の基板トレイ及び8枚の流路カバーを回収する。搬送機構は第1実施形態における搬送機構と同様の構造を有する。本実施形態での回収の順序は、まず基板トレイ8枚を1枚ずつ全て回収した後、流路カバー8枚が1枚ずつ順に回収されるというものであるが、この順序は逆でもよいし、あるいは基板トレイと流路カバーを交互に回収するなどしてもよい。搬送機構がサセプター上の被搬送物を吸着する位置は、公転機構からみて定められた角度位置であり、公転機構がサセプター上の吸着対象となる被搬送物を前記角度位置へ回転移動させた後停止させることにより、搬送機構は同じ回収位置で順番に次の被搬送物を吸着搬送することができる。
【0069】
成膜処理完了済みの被搬送物の回収に続いて、未処理の被搬送物の投入が開始される。処理済みの被搬送物の回収中もサセプター温度は自然冷却を続けており、また未処理の被搬送物の投入中もさらに継続して自然冷却される。本実施形態での投入の順序は、まず流路カバー8枚を1枚ずつ全て投入した後、基板トレイ8枚が1枚ずつ順に投入されるというものであるが、この順序は逆でもよいし、あるいは流路カバーと基板トレイを交互に投入するなどしてもよい。本実施形態では、通常の動作において8枚の流路カバーのうち最初の1枚目が投入される際のサセプター温度はおよそ300℃程度であり、その後も継続して自然冷却がなされ、投入される流路カバー毎に投入時のサセプター温度は異なり、最後の8枚目の流路カバーが投入される際には例えば200℃程度となる。装置のアウトガス作業後にすぐに投入動作を行う場合などには最初の1枚目の流路カバーの投入動作がサセプター温度約400℃で投入される場合もあり、逆に動作中のトラブルもしくはその他の都合による装置の一時停止等で各流路カバーの投入時のサセプター温度が300〜200℃よりもさらに低下している場合もある。また充分に長時間装置が停止していた後に投入動作を行う場合などは、サセプター温度は最初の1枚目から最後の8枚目まで常に室温であるところの約25℃程度のままである。すなわちサセプター温度が25℃から400℃の範囲内のいずれの温度の状態でも流路カバーの位置決め搬送が可能である必要がある。サセプターの材質としては、加熱機構からの熱を基板へ均一に伝える目的で熱伝導率の高いカーボンで製作されている。カーボンの熱膨張係数は4.8×10−6/℃であり、サセプターが公転中心軸で固定されているとすれば、25℃と400℃の間での温度変化に伴う熱膨張・収縮による半径方向の位置変動量は例えば半径200mmの位置で約360μmにもなる。
【0070】
この他に、特に温度変化が搬送精度に影響を与える要因として、搬送機構のアーム部ほかの熱膨張・収縮も考慮に入れる必要がある。また、温度変化によらない一般的な精度低下要因として、サセプター公転の回転停止精度や、搬送機構の停止精度、サセプター上の位置決め構造の加工位置ばらつきなどが考えられる。
【0071】
投入動作は具体的には第1実施形態と同様に『1次移動』→『1次下降』→『2次移動』→『2次下降』の順に動作が行われる。前記第1の位置決め構造17と第2の位置決め構造18の、挿入用穴における大穴部の直径と挿入用兼位置決め用突起との間の各隙間量は、前記サセプターの温度変化による半径方向の位置変動量やその他の起こりうる精度低下要因の和よりも充分大きく製作されているので、搬送可能温度以下の状態においてはサセプター温度によらず『1次下降』の際に各挿入用突起が各挿入用穴に乗り上げることはない。続けて搬送機構によりサセプターの公転中心に向かって『2次移動』を行い、その後『2次下降』により位置決め用穴と挿入用兼位置決め用突起とを嵌合させれば、特に高い加工精度や温度管理を必要とせずに容易にサセプター上に各流路カバーを載置することができ、かつサセプターに対する流路カバーの面内位置および角度を精度良く位置決めして拘束することができる。
【0072】
『2次移動』中には、挿入用穴部の断面を形成する大穴部と小穴部を結ぶ軸上に挿入用突起の中心軸が位置していなくても、挿入用穴部の断面を形成する大穴部と小穴部を結ぶ接線部分に相当する壁面が挿入用突起の側面に接触しながらガイドし、挿入用突起は徐々に挿入用穴部の小穴部と中心軸が一致する位置へと移動する。前記のとおり、挿入用穴部のうち直線的に幅が増大している部分の開き角は45度で形成されているので、載置する流路カバーの片側もしくは両側の隣に既に流路カバーが載置されている場合でも、前記接線部分に相当する壁面が流路カバーの『2次移動』に伴う幅方向の移動をガイドするので、隣接する流路カバーと必要以上に摩擦することはない。また、隣接する流路カバーとの接触を特に避けたい場合には前記開き角49を45度以下である例えば40度程度としておけばよい。
【0073】
その他のバリエーションについても、第1実施形態及び第2実施形態と同様に可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0074】
2 基板トレイ
3 載置台
4 回転機構
5 基板
6 加熱機構
7 チャンバ
8 導入口
9 排出口
10 開口部
11 搬送機構
12 保持機構
13 スライド機構
15 凸形状
16 凹形状
17 第1の位置決め構造
18 第2の位置決め構造
21 フローチャネル
22 流路カバー
31 フローチャネル載置台
32 サセプター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被搬送物を加熱処理するための加熱処理装置であって、
被搬送物を載置するための載置台と、
載置台及び被搬送物を加熱する加熱装置を有し、
前記載置台及び前記被搬送物には、載置台上で被搬送物を位置決めするための位置決め構造を有し、
前記位置決め構造は相互に嵌合する凹形状と凸形状からなり、
前記被搬送物、及び被搬送物を載置するための載置台が、前記凹形状と前記凸形状のどちらか片方ずつをそれぞれ有し、
前記凹形状は挿入用穴部と位置決め用穴部を有し、
前記凸形状は挿入用突起部と位置決め用突起部を有し、
前記凸形状は、前記凹形状に充分に嵌合可能な長さを有しており、嵌合深さが浅いと前記挿入用穴部と前記挿入用突起部が嵌合し、さらに深く嵌合すると前記位置決め用穴部と前記位置決め用突起部が嵌合する長さもしくは深さを各部が有し、
前記凹形状の穴の深さ方向に対して垂直な面内において、前記位置決め用穴部に前記位置決め用突起部が嵌合したときにおける隙間量は、前記挿入用穴部に前記挿入用突起部が嵌合したときにおける隙間量より小さく、
かつ前記面内の特定の位置において前記挿入用穴部と前記挿入用突起部が接触した状態で嵌合深さを深くすると、前記位置決め用穴部と前記位置決め用突起部が嵌合する形状を有する
ことを特徴とする加熱処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の位置決め構造における凸形状が、前記挿入用突起と前記位置決め用突起を兼ねる突起により形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の加熱処理装置。
【請求項3】
被搬送物と載置台とは、位置決め構造を2箇所に有し、
第1の位置決め構造と第2の位置決め構造は嵌合方向が同一で同時に嵌合可能であり、
前記第1の位置決め構造及び第2の位置決め構造はそれぞれ請求項1〜2に記載の位置決め構造であり、
前記第2の位置決め構造における位置決め用穴部と位置決め用突起部の嵌合形状は、前記第1の位置決め構造における位置決め用穴部と位置決め用突起部の嵌合形状に対して、嵌合方向への投影図における第1の位置決め構造と第2の位置決め構造を結ぶ軸方向の隙間量が大きい
ことを特徴とする請求項1から2に記載の加熱処理装置。
【請求項4】
複数の被搬送物を載置可能な載置台と、
前記載置台を回転させる回転機構を有し、
前記位置決め構造により前記複数の被搬送物が前記回転機構の回転軸を中心に同心円状に載置される
ことを特徴とする請求項1から3に記載の加熱処理装置。
【請求項5】
前記凹形状の穴の深さ方向に対して垂直な面内において、前記挿入用穴部は前記回転機構の回転軸からの距離とともに拡大する部分を有し、
前記挿入用穴部と前記挿入用突起部が接触した状態で嵌合深さを深くすると前記位置決め用穴部と前記位置決め用突起部が嵌合可能である前記特定の位置が、
前記挿入用穴部のうち前記回転機構の回転軸に最も近い位置である
ことを特徴とする請求項4に記載の加熱処理装置。
【請求項6】
前記複数の被搬送物は前記回転機構の回転軸を中心に等角度ピッチに載置され、
前記挿入用穴部が前記回転機構の回転軸からの距離とともに拡大する部分が直線的に拡大し、
前記直線的に拡大する部分の開き角が、360度を被搬送物の数で割った角度以下である
ことを特徴とする加熱処理装置。
【請求項7】
被搬送物を保持する保持機構と、
前記保持機構を前記位置決め構造の嵌合方向に移動させる昇降機構と、
前記嵌合方向とは異なる方向に移動させる移動機構とからなる搬送機構とを有する
ことを特徴とする請求項1から6に記載の加熱処理装置

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate


【公開番号】特開2011−23681(P2011−23681A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−169794(P2009−169794)
【出願日】平成21年7月21日(2009.7.21)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】