加熱装置、プラズマ処理装置、および半導体素子の形成方法
【課題】被処理物の面方向における温度を簡便な方法によって均一にすることができる加熱装置を提供する。
【解決手段】加熱装置200は、表面2S上に被加熱物が配置される板状部材2と、表面2Sに沿うように配設され被加熱物を加熱する4つの発熱素子3A〜3Dと、4つの発熱素子3A〜3Dに接続された電力供給手段と、4つのうちいずれかまたは複数同士の発熱素子3A〜3Dの接続状態を直列接続および並列接続にそれぞれ変更する接続状態変更手段と、4つのうちいずれかまたは複数の発熱素子3A〜3Dの温度を検出する温度検出手段8と、を備え、接続状態変更手段は、温度検出手段8が検出した発熱素子3A〜3Dの温度に基づいて、被加熱物に対する加熱量が面方向において均一となるように、4つのうちいずれかまたは複数同士の発熱素子3A〜3Dの接続状態を直列接続および並列接続にそれぞれ変更する。
【解決手段】加熱装置200は、表面2S上に被加熱物が配置される板状部材2と、表面2Sに沿うように配設され被加熱物を加熱する4つの発熱素子3A〜3Dと、4つの発熱素子3A〜3Dに接続された電力供給手段と、4つのうちいずれかまたは複数同士の発熱素子3A〜3Dの接続状態を直列接続および並列接続にそれぞれ変更する接続状態変更手段と、4つのうちいずれかまたは複数の発熱素子3A〜3Dの温度を検出する温度検出手段8と、を備え、接続状態変更手段は、温度検出手段8が検出した発熱素子3A〜3Dの温度に基づいて、被加熱物に対する加熱量が面方向において均一となるように、4つのうちいずれかまたは複数同士の発熱素子3A〜3Dの接続状態を直列接続および並列接続にそれぞれ変更する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱装置、プラズマ処理装置、および半導体素子の形成方法に関し、特に、被処理物を加熱する加熱装置、その加熱装置を備えたプラズマ処理装置、およびそのプラズマ処理装置を使用する半導体素子の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
加熱装置は被加熱物を加熱する。加熱装置は、たとえばプラズマ処理装置内に設けられる。加熱装置がプラズマ処理装置内に設けられる場合、加熱装置は被処理物として半導体基板などの基板を加熱する。
【0003】
プラズマ処理装置は、ウエハまたは基板等にプラズマ処理を施す。プラズマ処理装置によって、TFT素子、半導体デバイス、または発光素子などの電子デバイスが製造される。これらの電子デバイスが組み立てられることによって、液晶パネルまたは太陽電池パネル等が製造される。
【0004】
プラズマ処理装置は、プラズマ放電により反応性ガスをプラズマ状態に変化させる。反応性ガスから、活性な励起分子、ラジカル、またはイオンが生成されることによって、基板上に所定のプラズマ処理が施される。プラズマ処理中またはプラズマ処理の前後において、基板は加熱装置によって室温〜約300℃に加熱される。
【0005】
近年、液晶パネル等の大きさに合わせて、プラズマ処理装置も大きくなる傾向にある。プラズマ処理装置によって製造される液晶パネル等の特性の向上および生産性の向上のためには、基板の温度が面方向において均一となるように基板が加熱される必要がある。下記の特許文献1,2は、プラズマ処理装置における加熱に関する技術を開示している。
【0006】
特開平8−316150号公報(特許文献1)は、プラズマ処理装置における堆積膜形成装置に関する技術を開示している。当該堆積膜形成装置においては、基板を所望の温度に設定する基板加熱手段の発熱量が、基板の長さ方向のいずれか一方の端部側または両方の端部側で多く、中央部で少なくなるように設定される。同公報は、当該堆積膜形成装置によれば、電子写真感光体の特性のばらつきを抑制し、膜剥がれ等に対する耐久性を向上できると述べている。
【0007】
特開平7−18447号公報(特許文献2)は、プラズマ処理装置における熱処理装置に関する技術を開示している。当該熱処理装置においては、同じ長さの線材からなる発熱抵抗体が、加熱ゾーン毎で縦方向に延ばされて上下で交互にU字状に折り返される。折返し部は加熱ゾーン間での境界位置を越えており、隣接する加熱ゾーン間での折返し部同士は噛み合っている。同公報は、当該熱処理装置によれば、組立手順および加工手順を共通化してコストを低減できると述べている。
【0008】
特開2005−258317号公報(特許文献3)は、プラズマ処理装置とは技術分野等が異なるが、画像形成装置における加熱に関する技術を開示している。当該画像形成装置は、少なくとも2本のヒータと、ヒータの接続状態を並列接続および直列接続に変更できるヒータ接続回路変更手段とを備える。ヒータ接続回路変更手段がOFF状態の時は、各ヒータ同士は直列接続となる。ヒータ接続回路変更手段のON状態の時は、各ヒータ同士は並列接続となる。各ヒータの必要電力あるいは熱量に応じて接続状態が変更される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平8−316150号公報
【特許文献2】特開平7−18447号公報
【特許文献3】特開2005−258317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、被処理物の面方向における温度を簡便な方法によって均一にすることができる加熱装置、その加熱装置を備えたプラズマ処理装置、およびそのプラズマ処理装置を使用する半導体素子の形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に基づく加熱装置は、表面上に被加熱物が配置される板状部材と、上記表面に沿うように配設され、上記表面上に配置された上記被加熱物を加熱する4つの発熱素子と、4つの上記発熱素子に接続された電力供給手段と、4つのうちいずれか同士または複数同士の上記発熱素子の接続状態を直列接続および並列接続にそれぞれ変更する接続状態変更手段と、4つのうちいずれかまたは複数の上記発熱素子の温度を検出する温度検出手段と、を備え、上記接続状態変更手段は、上記温度検出手段が検出した上記発熱素子の温度に基づいて、上記被加熱物に対する加熱量が面方向において均一となるように、4つのうちいずれか同士または複数同士の上記発熱素子の接続状態を直列接続および並列接続にそれぞれ変更する。
【0012】
好ましくは、上記4つの発熱素子は、2つの上記発熱素子を含む第1発熱部と、上記第1発熱部の外側に位置し他の2つの上記発熱素子を含む第2発熱部と、を有し、上記第1発熱部は、上記被加熱物の中央側の部分を加熱し、上記第2発熱部は、上記被加熱物の外周側の部分を加熱する。
【0013】
好ましくは、上記第1発熱部における接続状態は、上記被加熱物が所望の温度に到達するまで加熱される際には、上記接続状態変更手段によって並列接続に設定され、上記被加熱物が所望の温度に到達した後は、上記第1発熱部における接続状態は、上記被加熱物に対する加熱量が略一定となるように上記接続状態変更手段によって並列接続および直列接続が切り替えられる。
【0014】
好ましくは、上記第2発熱部における接続状態は、常時並列接続である。好ましくは、4つのうちいずれかまたは複数の上記発熱素子は、電気抵抗ヒータから構成される。好ましくは、4つの上記発熱素子における個々の消費電力は略同一である。
【0015】
好ましくは、4つの上記発熱素子の各々は、上記板状部材の上記表面に沿って延びる延在部を含み、4つの上記発熱素子の各々は、上記延在部が同一平面上において相互に等間隔かつ平行となるように配置されている。
【0016】
好ましくは、上記接続状態変更手段は、4つのうちいずれか同士または複数同士の上記発熱素子の接続状態を、スイッチまたはリレーによって直列接続および並列接続にそれぞれ変更する。
【0017】
本発明に基づくプラズマ処理装置は、本発明に基づく上記に記載の加熱装置と、内部を密封可能なチャンバーと、上記チャンバー内に反応性ガスを供給する反応性ガス供給手段と、上記反応性ガスをプラズマ放電させるカソード電極およびアノード電極と、を備え、上記加熱装置における上記板状部材は、上記カソード電極または上記アノード電極であり、上記被加熱物は、半導体基板である。
【0018】
本発明に基づく半導体素子の形成方法は、本発明に基づく上記のプラズマ処理装置を使用して、上記半導体基板の表面に半導体素子を形成する工程を備える。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、被処理物の面方向における温度を簡便な方法によって均一にすることができる加熱装置、その加熱装置を備えたプラズマ処理装置、およびそのプラズマ処理装置を使用する半導体素子の形成方法を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施の形態1におけるプラズマ処理装置を模式的に示す断面図である。
【図2】実施の形態1における加熱装置を模式的に示す斜視図である。
【図3】実施の形態1における加熱装置に含まれる発熱体、交流電源、およびエンジンコントローラの接続態様を示す電気回路図である。
【図4】実施の形態1における加熱装置(変形例)に含まれる発熱体、交流電源、およびエンジンコントローラの接続態様を示す電気回路図である。
【図5】実施の形態1におけるプラズマ処理装置および加熱装置を模式的に示す平面図である。
【図6】実施の形態1におけるプラズマ処理装置(加熱装置)の立ち上げ時の動作フローを示す図である。
【図7】実施の形態2における加熱装置を模式的に示す平面図である。
【図8】実施の形態2における加熱装置に含まれる発熱体、交流電源、およびエンジンコントローラの接続態様を示す電気回路図である。
【図9】実施例において測定した基板の各測定点(測定箇所)を示す図である。
【図10】実施例において測定した基板の温度の各測定点における経時的な変化を示す図である。
【図11】比較例における加熱装置に含まれる発熱体、交流電源、およびエンジンコントローラの接続態様を示す電気回路図である。
【図12】比較例において測定した基板の温度の各測定点における経時的な変化を示す図である。
【図13】他の実施例として、全並列接続状態および直列接続・並列接続混在状態でそれぞれプラズマ処理装置(加熱装置)を起動したときのアノード電極の温度の経時的な変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に基づいた各実施の形態について、以下、図面を参照しながら説明する。各実施の形態の説明において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本発明の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。各実施の形態の説明において、同一の部品、相当部品に対しては、同一の参照番号を付し、重複する説明は繰り返さない場合がある。
【0022】
[実施の形態1]
(プラズマ処理装置100)
図1は、本実施の形態におけるプラズマ処理装置100を模式的に示す断面図である。図2は、本実施の形態における加熱装置200を模式的に示す斜視図である。加熱装置200は、プラズマ処理装置100に備えられる。
【0023】
図1を参照して、プラズマ処理装置100は、チャンバー1、アノード電極2(板状部材)、発熱体3、エンジンコントローラ3T(接続状態変更手段)、交流電源3R(電力供給手段)、カソード電極4、インピーダンス整合器4T、プラズマ励起電源4R、内部構造体5、ガス導入部6(反応性ガス供給手段)、排気管7、圧力制御器7A、真空ポンプ7B、除害装置7C、および温度センサ8(温度検出手段)(図2参照)を備える。
【0024】
詳細は後述されるが、本実施の形態における加熱装置200は、アノード電極2、発熱体3、エンジンコントローラ3T、交流電源3R、および温度センサ8(図2参照)から構成される。発熱体3は、エンジンコントローラ3Tおよび交流電源3Rに順に接続されている。
【0025】
チャンバー1は中空状に形成され、その内部は密閉されることができる。チャンバー1は、真空容器として十分な強度を有する部材から構成される。チャンバー1を構成する部材は、熱伝導性および耐熱性を有することが好ましく、たとえばステンレス鋼またはアルミニウム合金である。チャンバー1の内部は、圧力制御器7Aおよび真空ポンプ7Bによって任意の真空度に制御される。
【0026】
チャンバー1を構成する各部材同士の嵌合部分は、Oリングなどの真空シール部材(図示せず)によって完全に密閉される。真空シール部材としては、デュポンエラストマー株式会社製のバイトン(登録商標)やカルレッツ(登録商標)などのフッ素系ゴムシール材が用いられるとよい。
【0027】
チャンバー1は接地される。チャンバー1の底面には、保持脚5Mが設けられる。保持脚5Mは、枠状の角材から構成される内部構造体5を固定支持する。保持脚5Mを構成する部材は、内部構造体5、アノード電極2、発熱体3、カソード電極4、および基板S等の重量を支え得る十分な強度を有する。
【0028】
内部構造体5を構成する部材は、アノード電極2、発熱体3、カソード電極4、および基板S等の重量を支え得る十分な強度を有し、たとえばステンレス鋼またはアルミニウム合金である。排気管7は、チャンバー1の内部と連通するように設けられる。排気管7は、圧力制御器7A、真空ポンプ7B、および除害装置7Cに順に接続される。
【0029】
(アノード電極2)
アノード電極2は、チャンバー1内に配置され、接地される。アノード電極2は、その4隅に配置されたアノード電極支持体2Mによって、内部構造体5に固定支持される。アノード電極2を構成する部材は、熱伝導性および耐熱性を有することが好ましく、たとえばステンレス鋼、アルミニウム合金、またはカーボンである。
【0030】
詳細は図2を参照して後述されるが、アノード電極2は、上部体2Aおよび下部体2Bが相互に接合されることによって板状に構成される。発熱体3および温度センサ8(図2参照)は、上部体2Aおよび下部体2Bに挟み込まれるようにして、アノード電極2の内部に設けられる。
【0031】
アノード電極2の表面2S上に基板Sが配置される。基板Sは、内部構造体5に固定された基板保持部材SMによって固定される。基板Sに所定のプラズマ処理が施されることによって半導体素子SEが基板Sの表面に形成される。半導体素子SEが形成された基板Sから、液晶パネル、太陽電池パネル、TFT素子、半導体デバイス、発光素子、または感光体などの電子デバイスが製造される。
【0032】
アノード電極2の大きさは、基板Sの大きさに合わせて設定される。基板Sの大きさが900〜1200mm×400mm×900mmの場合、アノード電極2の大きさは、たとえば1000〜1500mm×600mm〜1000mmに設定される。
【0033】
アノード電極2の下面と内部構造体5の底面との間には、アノード電極2からの熱輻射による内部構造体5の熱上昇を抑えるために、たとえば10mm〜30mmの間隔が設けられる。
【0034】
アノード電極支持体2Mによるアノード電極2の支持寸法は、アノード電極2が撓まないように設定され、たとえば30mm×50mmである。アノード電極支持体2Mを構成する部材は、熱伝導による内部構造体5の熱上昇を抑えるために小さな熱伝導率を有することが好ましく、たとえばジルコニア(酸化ジルコニウム)である。
【0035】
アノード電極支持体2Mと内部構造体5との接触面積を小さくするために、アノード電極支持体2Mには、アノード電極支持体2Mの強度を損なわない範囲で深さ1mm〜5mm程度の掘り込み(図示せず)が設けられるとよい。
【0036】
(カソード電極4)
カソード電極4は、チャンバー1内においてアノード電極2に対して平行に配置される。アノード電極2とカソード電極4との間において放電部が形成され、当該放電部においてプラズマ放電が発生する。カソード電極4は、その4隅に配置されたカソード電極支持体4Mによって、内部構造体5に固定支持される。カソード電極4を構成する部材は、熱伝導性および耐熱性を有することが好ましく、たとえばステンレス鋼、アルミニウム合金、またはカーボンである。カソード電極4に用いられる真空シール部材(図示せず)としては、フッ素系ゴムシール材が用いられるとよい。
【0037】
カソード電極4の大きさは、アノード電極2と同様に、基板Sの大きさに合わせて設定される。基板Sの大きさが900〜1200mm×400mm×900mmの場合、カソード電極4の大きさは、たとえば1000〜1500mm×600mm〜1000mmに設定される。
【0038】
カソード電極4は、表面4Sに多数の貫通穴(図示せず)が設けられる。当該貫通穴は穴あけ加工により形成される。各貫通穴は、たとえば直径が約0.1mm〜2mm、ピッチが数mm〜数cmである。各貫通孔は、カソード電極4の内部に設けられた空洞管(図示せず)に連通する。各貫通孔およびこの空洞管を通して、ガス導入部6から導入された反応性ガスが基板S上に供給される。
【0039】
カソード電極4とアノード電極2との間隔(距離)は、数mm〜数十mm程度に設定され、その寸法精度は数%以下であることが好ましい。本実施の形態においては、カソード電極4とアノード電極2との間隔(距離)は2mm〜30mmであり、その寸法精度は1%以下である。
【0040】
カソード電極支持体4Mによるカソード電極4の支持寸法は、カソード電極4が撓まないように範囲でできるだけ小さく設定され、たとえば100mm×50mmである。当該支持寸法が小さいと、カソード電極4から内部構造体5への熱の伝達が抑制される。カソード電極支持体4Mを構成する部材は、電気絶縁性に加えて、カソード電極4を十分に保持可能な強度を有することが好ましく、たとえばセラミックス、ジルコニア、アルミナ(酸化アルミニウム)、またはガラスである。
【0041】
カソード電極4は、インピーダンス整合器4Tを通してプラズマ励起電源4Rから電力が供給される。プラズマ励起電源4Rは、たとえば交流周波数が1.00〜108.48MHz、出力電力が10W〜100kWの性能を有する。本実施の形態においては、プラズマ励起電源4Rは、交流周波数が13.56〜81.42MHz、出力電力が10W〜20kWの性能を有する。
【0042】
ガス導入部6は、チャンバー1の外部から、カソード電極4に設けられた貫通孔を通してチャンバー1の内部に連通する。ガス導入部6を通して、基板S上に反応性ガスが供給される。基板S上に成膜処理が施される場合、反応性ガスは、たとえば、H2で希釈したSiH4(モノシラン)ガスに加えて、PH3(ホスフィン)ガス、B2H6(ジボラン)ガス、またはCO2ガスを含む。
【0043】
基板S上に反応性ガスが供給されている状態で、プラズマ励起電源4Rからカソード電極4に電力(高周波電力)が供給される。アノード電極2とカソード電極4との間の放電部においてプラズマ放電が発生する。プラズマ放電により反応性ガスがプラズマ状態に変化する。反応性ガスから、活性な励起分子、ラジカル、またはイオンが生成されることによって、基板S上に所定のプラズマ処理が施される。基板Sの表面に非晶質膜または結晶性膜などが成膜されることによって、半導体素子の形成方法として、基板Sの表面に半導体素子SEが形成される。
【0044】
放電部に供給する電力を大きくすると、より大きなプラズマ放電によって反応性ガスが励起される。反応性ガスの反応性が向上することによって、基板Sに対して高速なプラズマ処理を行うことができる。
【0045】
プラズマ処理中またはプラズマ処理の前において、圧力制御器7Aおよび真空ポンプ7Bはチャンバー1内の圧力を適切な値に調節する。プラズマ処理の前後において、圧力制御器7Aおよび真空ポンプ7Bはチャンバー1内の雰囲気を置換してもよい。詳細は後述されるが、プラズマ処理中またはプラズマ処理の前後において、基板Sの温度は加熱装置200によって適切な値に調節される。
【0046】
反応性ガスがプラズマ処理に使用された後、反応性ガスは排ガスとしてチャンバー1内に残留している。排ガス中に含まれる有害物質は、除害装置7Cによって除去される。以上のようにして、プラズマ処理装置100は基板Sに対してプラズマ処理を施す。
【0047】
(加熱装置200)
図2および図3を参照して、プラズマ処理装置100に備えられる加熱装置200について説明する。図2は、加熱装置200を示す斜視図である。図3は、加熱装置200に含まれる発熱体3(発熱素子3A〜3D)、交流電源3R、およびエンジンコントローラ3Tの接続態様を示す電気回路図である。
【0048】
図2に示すように、加熱装置200は、アノード電極2、発熱体3、エンジンコントローラ3T(図1および図3参照)、交流電源3R(図1および図3参照)、および温度センサ8を備える。アノード電極2の表面2S上に、被加熱物として基板S(図1参照)が配置される。
【0049】
アノード電極2は、上部体2Aおよび下部体2Bが相互に接合されることによって板状に構成される。発熱体3および温度センサ8は、上部体2Aおよび下部体2Bに挟み込まれるようにして、アノード電極2の内部に設けられる。アノード電極2に用いられる真空シール部材(図示せず)としては、フッ素系ゴムシール材が用いられるとよい。
【0050】
発熱体3は、4本の発熱素子3A〜3Dを含む。4本のうち2本の発熱素子3B,3Cによって第1発熱部31が構成される。4本のうち2本の発熱素子3A,3Dによって第2発熱部32が構成される。第1発熱部31(発熱素子3B,3C)は、第2発熱部32(発熱素子3A,3D)の外側に位置している。第1発熱部31は、表面2S上に配置された基板Sの中央側の部分を加熱することができる。第2発熱部32は、表面2S上に配置された基板Sの外周側の部分を加熱することができる。
【0051】
各発熱素子3A〜3Dは、平面視U字状に形成される。各発熱素子3A〜3Dは、密閉型の発熱体である。各発熱素子3A〜3Dは、たとえばシーズヒータのように、一本の線材が電気抵抗によって発熱される電気抵抗ヒータから構成されるとよい。シーズヒータは、管状に形成された金属性シーズの中に伝熱線としての発熱体(ニクロム線等)が挿入され、金属性シーズと発熱体との間に熱伝導性を有する高純度の無機絶縁物(MgO等)の粉末が充填されることによって構成される。
【0052】
各発熱素子3A〜3Dがシーズヒータから構成されている場合、電気エネルギーが100%の割合で熱に変換されるため、エネルギーの使用効率が高い。熱量が電力量と等しいため、後述する温度センサ8によって容易にその熱量が計測され、温度制御も正確且つ容易に行なわれることが可能となる。また、商用電源(AC50kHz/60kHz)から電力をそのまま供給されることも可能となる。低温から高温まで、広い温度範囲にて使用されることができる。各種の反応性ガスや真空の雰囲気下において使用されることも可能である。
【0053】
各発熱素子3A〜3Dにおける消費電力(定格容量)は、それぞれ略同一に構成されるとよい。当該構成によれば、発熱素子3A〜3Dとしての温度が上昇したとき、発熱素子3A〜3Dの発熱量が大きい場合であっても、設定温度に到達したときの面方向における温度がより均一となり(バラツキが小さい)、温度制御が容易に行なわれることが可能となる。各発熱素子3A〜3Dは、誘導加熱またはマイクロ波加熱によって加熱されるように構成されていてもよく、ヒートポンプなどから構成されていてもよい。
【0054】
発熱素子3Aは、アノード電極2の表面2Sに沿って延びる延在部3A1および延在部3A2を有している。延在部3A1および延在部3A2の先端同士はU字状に接続されている。同様に、発熱素子3B,3C,3Dは、アノード電極2の表面2Sに沿って延びる延在部3B1,3C1,3D1および延在部3B2,3C2,3D2をそれぞれ有している。延在部3B1,3C1,3D1および延在部3B2,3C2,3D2の先端同士はそれぞれU字状に接続されている。
【0055】
延在部3A1,3A2,3B1,3B2,3C1,3C2,3D1,3D2は、同一平面上において相互に等間隔かつ平行な位置関係にあり、アノード電極2の表面2Sに沿って延在している。当該構成によれば、発熱素子3A〜3Dとしての部品種類を低減することが可能になり、発熱素子3A〜3Dがアノード電極2に誤って組み付けられることもなくなる。
【0056】
上部体2Aおよび下部体2Bには、各発熱素子3A〜3Dの形状にそれぞれ対応するように、断面視半円形状の長溝が設けられている。当該長溝によって、上部体2Aと下部体2Bとの間に各発熱素子3A〜3Dが固定配置されている。
【0057】
温度センサ8は、密閉型の温度センサとして、たとえば熱電対またはサーミスタから構成される。温度センサ8は、アノード電極2の内部において、各発熱素子3A〜3Dの近傍に配設される。
【0058】
温度センサ8の数は、加熱制御される基板Sの面方向における温度分布の均一さの精度、または加熱制御される基板Sの使用用途等に応じて最適な値が選択される。コストの面からは、温度センサ8はアノード電極2の内部に1個だけ配設されていてもよい。この場合、温度センサ8はアノード電極2の表面2Sにおける中心付近の位置に設けられることが好ましい。
【0059】
図3を参照して、各発熱素子3A〜3D、交流電源3R、およびエンジンコントローラ3Tの接続態様を示す電気回路について説明する。
【0060】
図3に示すように、各発熱素子3A〜3Dは、抵抗値Rを有し、交流電源3Rに電気的に接続される。本実施の形態においては、第2発熱部32(図2参照)を構成する発熱素子3Aおよび発熱素子3Dの接続状態は、常時並列接続である。
【0061】
第1発熱部31(図2参照)を構成する発熱素子3Bおよび発熱素子3Cは、接続(ドロアー)コネクタ(図示せず)を通して主電流ON/OFFスイッチS5によって点灯/消灯制御される。主電流ON/OFFスイッチS5は、たとえばトライアックなどのスイッチング素子から構成される。
【0062】
主電流ON/OFFスイッチS5における端子C5,C6の接続状態/非接続状態は、エンジンコントローラ3T(図1も参照)によって切り替えられる。発熱素子3Aおよび発熱素子3Dは常時並列接続されており、接続(ドロアー)コネクタ(図示せず)には接続されていない。
【0063】
発熱素子3Bは、端子C1および端子C3に接続されている。発熱素子3Cは、端子C2および端子C4に接続されている。発熱素子3Bおよび発熱素子3Cの接続状態は、切り替えスイッチS1,S3によって、直列接続および並列接続にそれぞれ変更される。切り替えスイッチS1,S3における各端子の接続状態/非接続状態も、エンジンコントローラ3Tによって切り替えられる。
【0064】
発熱素子3Bおよび発熱素子3Cの接続状態が直列接続に設定される場合(図3に示す状態)、切り替えスイッチS1は、端子C1および端子C2を非接続状態に設定する。切り替えスイッチS3は、端子C1および端子C4を接続状態に設定する。
【0065】
発熱素子3Bおよび発熱素子3Cの接続状態が並列接続に設定される場合(図示せず)、切り替えスイッチS1は、端子C1および端子C2を接続状態に設定する。切り替えスイッチS3は、端子C3および端子C4を接続状態に設定する。
【0066】
図4に示すように、主電流ON/OFFスイッチS5における端子C5,C6の接続状態/非接続状態は、リレーR1によって変更されてもよい。また、切り替えスイッチS1,S3における各端子の接続状態/非接続状態は、リレーR2によって変更されてもよい。この場合、リレーR1,R2は、エンジンコントローラ3Tによって駆動される。
【0067】
発熱素子3Bおよび発熱素子3Cの接続状態が直列接続に設定される場合(図4に示す状態)、リレーR2によって、切り替えスイッチS1は端子C1および端子C2を非接続状態に設定し、切り替えスイッチS3は端子C1および端子C4を接続状態に設定する。
【0068】
発熱素子3Bおよび発熱素子3Cの接続状態が並列接続に設定される場合(図示せず)、リレーR2によって、切り替えスイッチS1は端子C1および端子C2を接続状態に設定し、切り替えスイッチS3は端子C3および端子C4を接続状態に設定する。
【0069】
発熱素子3Bおよび発熱素子3Cの接続状態が変更されることによって、主電流ON/OFFスイッチS5がON状態の時において、発熱素子3B,3Cにおける消費電力および発熱量が変更される。
【0070】
発熱素子3Bおよび発熱素子3Cの各々が、たとえば1kWの消費電力(定格容量)を有するとする。発熱素子3Bおよび発熱素子3Cが直列接続された場合、オームの法則に基づき、発熱素子3Bおよび発熱素子3Cの全体としての消費電力は0.5kWとなる。発熱素子3Bおよび発熱素子3Cが並列接続された場合、オームの法則に基づき、発熱素子3Bおよび発熱素子3Cの全体としての消費電力は2.0kWとなる。並列接続の方が直列接続に比べて消費電力(発熱量)が大きくなる。
【0071】
図5を参照して、たとえばアノード電極2がチャンバー1の略中央に配置されているとする。図5紙面上下方向において、アノード電極2の端面2Yとチャンバー1の内壁1Yとの間には間隔LYが設けられている。図5紙面右方向において、アノード電極2の端面2Xとチャンバー1の内壁1Xとの間には間隔LXが設けられている。
【0072】
間隔LYは間隔LXよりも小さい(間隔LY<間隔LX)。アノード電極2が発熱体3によって加熱される際、チャンバー1によるアノード電極2の脱熱量は、アノード電極2の端面2Y側の部分の方がアノード電極2の中央付近の部分よりも大きくなる。アノード電極2においては、端面2Y側の部分の方が中央付近の部分よりもチャンバー1によって多くの熱を奪われる。
【0073】
本実施の形態においては、常時並列接続された発熱素子3A,3D(第2発熱部32)によって、アノード電極2の端面2Y側の部分が加熱される。一方で、並列接続/直列接続が変更可能な発熱素子3B,3C(第1発熱部31)によって、アノード電極2の中央側の部分が加熱される。
【0074】
発熱素子3B,3Cが並列接続されると、発熱素子3A〜3Dのすべてがアノード電極2を略均一に加熱する。この場合、チャンバー1の脱熱によって、アノード電極2の端面2Y側の部分の温度は、アノード電極2の中央側の部分(発熱素子3B,3Cが配設されている部分)に比べて低くなる。
【0075】
上記の温度差を無くすために、エンジンコントローラ3T(図1参照)は、温度センサ8が測定した発熱素子3A〜3Dの温度に基づいて、発熱素子3B,3Cの接続状態を直列接続/並列接続に変更したり、発熱素子3B,3CのON/OFF(点灯/消灯)を切り替えたりする。エンジンコントローラ3Tによる発熱素子3B,3Cの制御によって、アノード電極2の全体としての温度(つまり、基板Sに対する加熱量)は、面方向において均一となる。エンジンコントローラ3Tによる発熱素子3B,3Cの制御によって、アノード電極の温度は、面方向に均一に、室温〜300℃に設定されることが可能となる。
【0076】
エンジンコントローラ3Tによる発熱素子3B,3Cの制御は、基板Sに対するプラズマ処理中に行なわれてもよく、プラズマ処理の前後に行なわれてもよい。
【0077】
詳細は図6を参照して後述されるが、プラズマ処理装置100の起動時(加熱装置200の起動時)には、エンジンコントローラ3Tは発熱素子3A〜3Dの接続状態を全て並列接続にするとよい。発熱体3としての発熱量が最大になる。アノード電極2の温度は、所望の設定温度にまで短い時間で到達することが可能となる。
【0078】
アノード電極2の温度が所望の設定温度に到達した後は、エンジンコントローラ3Tは、発熱素子3B,3Cの接続状態を直列接続/並列接続に変更したり、発熱素子3B,3CのON/OFF(点灯/消灯)を切り替えたりするとよい。アノード電極2の温度は、所望の設定温度に維持されることが可能となる。
【0079】
基板Sを加熱する段階において、必要に応じて、エンジンコントローラ3Tは発熱素子3A〜3Dの接続状態を全て並列接続にしてもよい。発熱体3としての発熱量が最大になる。基板Sの温度は所望の設定温度にまで短い時間で到達することが可能となる。
【0080】
基板Sの温度が所望の設定温度に到達した後は、エンジンコントローラ3Tは、発熱素子3B,3Cの接続状態を直列接続/並列接続に変更したり(または変更の回数を低減したり)、発熱素子3B,3CのON/OFF(点灯/消灯)を切り替えたり(またはON/OFFの回数を低減したり)するとよい。基板Sの温度は、所望の設定温度に維持されることが可能となる。
【0081】
(加熱装置200の起動時の動作)
図6(および図3)を参照して、加熱装置200の立ち上げ時(プラズマ処理装置100の立ち上げ時)における加熱装置200の動作フローについて説明する。
【0082】
加熱装置200の立ち上げは、プラズマ処理装置100の電源ONによって開始される(ステップST1)。エンジンコントローラ3Tに電力が供給され、エンジンコントローラ3Tはウォームアップのための前多回転を開始する(ステップST2)。前多回転によって、加熱装置200における発熱体3(発熱素子3A〜3D)が駆動され、他の所定の周辺機器もプラズマ処理のための準備動作に入る。
【0083】
エンジンコントローラ3Tは、発熱体3を駆動した後、切り替えスイッチS1,S3および主電流ON/OFFスイッチS5を操作する。切り替えスイッチS1,S3の操作によって、発熱素子3A〜3Dの接続状態は並列接続に設定される。主電流ON/OFFスイッチS5の操作によって、発熱体3(発熱素子3A〜3D)は所定のDuty値(電力投入比率)で駆動される(ステップST3)。
【0084】
エンジンコントローラ3Tは、主電流ON/OFFスイッチS5を制御することによって、発熱素子3A〜3Dに対して電力投入する位相角または端数などを変化させ、Duty値を所定の値に制御する。発熱素子3A〜3Dは、交流電源3Rから主電流ON/OFFスイッチS5を通して供給された電力により加熱される。発熱素子3A〜3Dの温度は徐々に上昇する。
【0085】
発熱素子3A〜3Dの温度が上昇している際、エンジンコントローラ3Tは、発熱素子3A〜3Dの温度上昇カーブ(単位時間当たりの温度上昇率)を、熱電対またはサーミスタ等の温度センサ8(図2参照)によってモニタリングする。エンジンコントローラ3Tは、予めエンジンコントローラ3T内に記録保持されている所定の温度上昇率ΔT/Δt(基準温度上昇率)に対して、モニタリングしている発熱素子3A〜3Dの温度上昇率ΔT’/Δtを比較する(ステップST4)。上記の所定の温度上昇率ΔT/Δt(基準温度上昇率)は、基板Sに対する仕様、またはプラズマ処理中の環境などに応じて適宜設定される。
【0086】
エンジンコントローラ3Tは、発熱素子3A〜3Dの温度上昇率ΔT’/Δtが所定の温度上昇率ΔT/Δtよりも低い(温度上昇率ΔT/Δt>温度上昇率ΔT’/Δtを満足する)と判断したときは、発熱素子3B,3Cの並列接続を維持する。
【0087】
エンジンコントローラ3Tは、発熱素子3A〜3Dの温度上昇率ΔT’/Δtが所定の温度上昇率ΔT/Δtよりも高いと判断したときは、切り替えスイッチS1,S3を操作して、発熱素子3B,3Cの接続状態を直列接続に切り替える(ステップST5)。アノード電極2は、並列接続された発熱素子3A,3Dと、直列接続された発熱素子3B,3Cとによって加熱される。
【0088】
エンジンコントローラ3Tは、切り替えスイッチS1,S3および主電流ON/OFFスイッチS5を操作することによって、アノード電極2の温度が所望の値に到達するように制御する(ステップST6)。
【0089】
当該制御においては、切り替えスイッチS1,S3によって、発熱素子3A〜3Dの接続状態は直列接続/並列接続に適宜切り替えられ、主電流ON/OFFスイッチS5によって、電力投入する位相角または波数が変化され、発熱素子3A〜3Dは所定のDuty値に制御された電力によって駆動される。
【0090】
アノード電極2の温度が所望の値に到達した時点で、エンジンコントローラ3Tによる前多回転が終了する(ステップST7)。エンジンコントローラ3Tは、その後、スタンバイ状態に入る(ステップST8)。
【0091】
(作用・効果)
プラズマ処理装置100に備えられた加熱装置200においては、発熱素子3A,3Dが常時並列接続されるのに対し、発熱素子3B,3Cは直列接続/並列接続がそれぞれ切り替えられる。たとえばチャンバー1による脱熱(温度低下)に対し、発熱素子3B,3Cが直列接続/並列接続およびON/OFFに切り替えられることによって、アノード電極2の全体としての温度(つまり、基板Sに対する加熱量)は、面方向において均一となる。
【0092】
プラズマ処理装置100によれば、加熱装置200が基板Sを面方向において均一に加熱することによって、均一な厚さを有する堆積膜が基板S上に成膜されたり、所望の特性を有する半導体素子SE(図1参照)が基板S上に形成されたりすることが可能となる。
【0093】
[実施の形態1における他の構成]
上述の実施の形態1においては、加熱装置200が、外側に配設される2本の発熱素子3A,3D(第2発熱部32)と内側に配設される2本の発熱素子3B,3C(第1発熱部31)とを含むという態様に基づいて説明した。加熱装置200は、4本以上の発熱素子を有していてもよい。エンジンコントローラ3Tとしては、複数のうちいずれか同士または複数同士の発熱素子の接続状態を、直列接続および並列接続にそれぞれ変更すればよい。
【0094】
たとえば、内側に配設される第1発熱部31が3本の発熱素子を有する場合、3本のうち2本の発熱素子が直列接続され、他の1本の発熱素子が並列接続される。3本全ての発熱素子が直列接続されてもよい。3本のうち1本の発熱素子は、成膜プロセス時におけるアノード電極2の温度分布に従い、温度安定時には非通電としてもよい。これらは、成膜プロセス時における基板Sの温度分布に従い選択されてもよい。直列接続される発熱素子の数が4本以上の場合であっても、基板Sに対する加熱量が面方向において均一となるように、上記と同様に様々な接続方法から選択されるとよい。
【0095】
上述の実施の形態1においては、2本の発熱素子3A,3D(第2発熱部32)が外側に配設され、2本の発熱素子3B,3C(第1発熱部31)が内側に配設されるという態様に基づいて説明した。各発熱素子3A〜3Dの配置は、チャンバー1のような外部要因による脱熱等に応じて、基板Sに対する加熱量が均一となるように適宜最適化されるとよい。
【0096】
上述の実施の形態1においては、発熱体3(発熱素子3A〜3D)がアノード電極2に内蔵されている。発熱体3は、アノード電極2の裏面側に設置されてもよい。
【0097】
アノード電極2は、より均一で精密な温度制御を行うために、発熱体3と共に冷却用媒体配管を内蔵していてもよい。冷却用媒体配管は、アノード電極2内において、たとえば発熱素子3A〜3Dの周りを取り囲むように配設される。冷却用媒体配管を構成する部材は、熱伝導性および耐熱性を有していることが好ましく、たとえばアルミニウム、アルミニウム合金、銅、鉄、ニッケルまたはステンレス鋼である。
【0098】
冷却用媒体配管は、内部に冷却媒体が供給されることによって、アノード電極2を冷却する。冷却媒体としては、水およびフッ素系不活性液体(フロリナートなど)や、不活性オイルなどの熱媒、もしくはアルゴンガスや窒素ガスなどの不活性ガスなどが使用される。
【0099】
上述の実施の形態1においては、加熱装置200がプラズマ処理装置100にそなえられるという態様に基づいて説明した。加熱装置200としては、プラズマ処理装置100以外の他の装置(たとえば、画像形成装置またはCat(触媒)CVD装置など)にも搭載されることが可能である。
【0100】
[実施の形態2]
図7および図8を参照して、本実施の形態におけるプラズマ処理装置および加熱装置について説明する。ここでは、上述の実施の形態1との相違点について説明する。
【0101】
図7は、本実施の形態におけるプラズマ処理装置に備えられる加熱装置201を示す平面図である。本実施の形態におけるプラズマ処理装置の全体的な構成は、上述の実施の形態1におけるプラズマ処理装置100(図1参照)と略同様に構成される。図8は、加熱装置201に含まれる発熱体3(発熱素子3A〜3H)、交流電源3R、およびエンジンコントローラ3Tの接続態様を示す電気回路図である。
【0102】
図7に示すように、加熱装置201は、アノード電極2、発熱体3、エンジンコントローラ3T(図8参照)、交流電源3R、および温度センサ8を備える。アノード電極2はアルミニウム合金から構成される。アノード電極2の表面2S上に、被加熱物として基板S(図1参照)が配置される。発熱体3および温度センサ8は、アノード電極2の内部に設けられる。熱電対などから構成される温度センサ8は、アノード電極2の略中央に位置している。
【0103】
発熱体3は、8本の発熱素子30A,30B,30C,30D,30E,30F,30G,30Hを含む。各発熱素子30A〜30Hは、シーズヒータから構成される。各発熱素子30A〜30Hにおける電力配分は750Wである。各発熱素子30A〜30HはU字状に形成され、同一平面上において等間隔で配置されている。
【0104】
8本のうち2本の発熱素子30A,30Hによって第2発熱部32が構成される。8本のうち残りの6本の発熱素子30B,30C,30D,30E,30F,30Gによって第1発熱部31が構成される。第2発熱部32は、第1発熱部31の外側に位置している。
【0105】
図8に示すように、各発熱素子30A〜30Hは、抵抗値Rを有し、交流電源3Rに電気的に接続される。本実施例においては、第2発熱部32(図7参照)を構成する発熱素子30Aおよび発熱素子30Hの接続状態は、常時並列接続である。
【0106】
各発熱素子30A〜30Hは、エンジンコントローラ3Tによる操作によって、たとえば次の直列接続・並列接続混在状態(図8に示される状態)および全並列接続状態(図示せず)に切り替えられることができる。
【0107】
(直列接続・並列接続混在状態)
図8を参照して、直列接続・並列接続混在状態においては、切り替えスイッチS11は端子C11および端子C12を開いている。切り替えスイッチS13は端子C13および端子C14を開いている。切り替えスイッチS15は端子C15および端子C16を開いている。切り替えスイッチS17は端子C15および端子C18を接続している。
【0108】
直列接続・並列接続混在状態においては、発熱素子30Bおよび発熱素子30Gは、交流電源3Rに電気的に接続されていない。発熱素子30Cおよび発熱素子30Dの接続状態は、並列接続となる。発熱素子30Eおよび発熱素子30Fの接続状態は、並列接続となる。これらの2つの並列接続同士は、切り替えスイッチS17によって直列に接続されている。直列接続・並列接続混在状態は、最大2250Wの発熱が可能となり、たとえば成膜プロセス時に使用されることができる。
【0109】
(全並列接続状態)
全並列接続状態(図示せず)においては、切り替えスイッチS11は端子C11および端子C12を接続する。切り替えスイッチS13は端子C13および端子C14を接続する。切り替えスイッチS15は端子C15および端子C16を接続する。切り替えスイッチS17は端子C17および端子C18を接続する。
【0110】
全並列接続状態においては、各発熱素子30A〜30H同士の接続状態はすべて並列接続となる。全並列接続状態は、最大6000Wの発熱が可能となり、たとえばプラズマ処理装置の立ち上げ時等に使用されることができる。
【0111】
(作用・効果)
本実施の形態における加熱装置201を備えたプラズマ処理装置においても、エンジンコントローラ3Tが、各発熱素子30A〜30Hの接続状態を直列接続・並列接続混在状態および全並列接続状態にそれぞれ変更する。当該変更によって、たとえばチャンバー1(図1参照)による脱熱(温度低下)に対し、発熱素子30B〜30Gが直列接続/並列接続およびON/OFFに切り替えられることによって、アノード電極2の全体としての温度(つまり、基板Sに対する加熱量)は、面方向において均一となる。
【0112】
加熱装置201が基板Sを面方向において均一に加熱することによって、均一な厚さを有する堆積膜が基板S上に成膜されたり、所望の特性を有する半導体素子SE(図1参照)が基板S上に形成されたりすることが可能となる。
【0113】
[実施例]
図9および図10を参照して、上述の実施の形態2における加熱装置201を備えたプラズマ処理装置を使用して行なった実施例について説明する。本実施例においては、プラズマ処理装置内において、1000mm×1400mmの基板Sをアノード電極2の表面2S上に配置した。
【0114】
加熱装置201を使用して基板Sを加熱しつつ、基板Sに対して成膜プロセスを実施した。なお、本実施例における成膜プロセス工程では、基板S上に接続した温度センサへの成膜を避けるために、SiH4などのガスを使用せずに、ArやHeなどの不活性ガスのみをプラズマ化することで、成膜せずに基板上の温度測定を行った。基板Sの温度が面方向において均一となるように、エンジンコントローラ3Tは直列接続・並列接続混在状態において、各発熱素子30A〜30Hの接続状態を直列状態/並列状態にそれぞれ変更した。
【0115】
図9に示すように、成膜プロセス時において、測定点(測定箇所)P1〜P5における基板Sの温度の経時的な変化を測定した。測定点P1は、基板Sの略中央部分に位置する。測定点P2は、基板Sの長辺側における端部中央付近に位置する。測定点P3は、基板Sの測定点P2とは反対側の長辺側における端部中央付近に位置する。測定点P4は、基板Sの短辺側における端部中央付近に位置する。測定点P5は、基板Sの角部付近に位置する。
【0116】
図10は、約3500秒の成膜プロセス時において、各測定点P1〜P5における基板Sの温度の経時的な変化を示す図である。各グラフ線(P1〜P5)から、各測定点P1〜P5における温度は、(次述する比較例に比べて)相互に略近似した状態で推移していることが読み取れる。エンジンコントローラ3Tが、成膜プロセス時において、各発熱素子30A〜30Hの接続状態を直列状態/並列状態にそれぞれ変更することによって、基板Sの端部と中央部との間の温度差がなくなり(または低減され)、温度分布が(次述する比較例に比べて)均一となっていることがわかる。
【0117】
[比較例]
図11および図12を参照して、上述の実施例に対する比較例について説明する。図11に示すように、当該比較例においては、発熱素子30A〜30Hのすべてが、常時接続状態となっている。当該構成は、上述の実施の形態2における全並列接続状態に相当する。
【0118】
図12は、上述の実施例と同様に、成膜プロセス時における基板S(各測定点P1〜P5)の温度の経時的な変化を示す図である。各グラフ線(P1〜P5)から、各測定点P1〜P5における温度は、上述の実施例(図10参照)と比較して図12上下方向にばらついた状態で推移していることが読み取れる。基板Sの端部と中央部との間に温度差が見られる。
【0119】
実施例および比較例の対比結果から、エンジンコントローラ3Tが、各発熱素子30A〜30Hの接続状態を直列接続・並列接続混在状態および全並列接続状態にそれぞれ変更することによって、アノード電極2の全体としての温度(つまり、基板Sに対する加熱量)は、面方向において均一となることがわかる。
【0120】
[他の実施例]
図13は、他の実施例として、上述の実施の形態2における全並列接続状態および直列接続・並列接続混在状態でそれぞれプラズマ処理装置100を立ち上げた時のアノード電極2の温度の経時的な変化を示している。
【0121】
図13に示すように、全並列接続状態(6000W)を示すグラフ線は、直列接続・並列接続混在状態(2250W)を示すグラフ線に比べて約1/3の時間で所望の設定温度に達していることがわかる。他の実施例における結果からも、プラズマ処理装置100の立ち上げ時には、エンジンコントローラ3Tは各発熱素子30A〜30Hを全並列接続状態に設定するとよいことがわかる。
【0122】
以上、本発明に基づいた各実施の形態および各実施例について説明したが、今回開示された各実施の形態および各実施例はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0123】
本発明における加熱装置は、どのようなプラズマ処理装置にも組み込まれることが可能である。本発明におけるプラズマ処理装置は、液晶パネル、太陽電池パネル、TFT素子、半導体デバイス、発光素子、または感光体などの電子デバイスの製造のために利用されることが可能である。本発明における半導体素子の形成方法は、液晶パネル、太陽電池パネル、TFT素子、半導体デバイス、発光素子、または感光体などの電子デバイスの製造に使用されることが可能である。
【符号の説明】
【0124】
1 チャンバー、1X,1Y 内壁、2 アノード電極、2A 上部体、2B 下部体、2M アノード電極支持体、2S 表面、2X,2Y 端面、3 発熱体、3A,3B,3C,3D,30A,30B,30C,30D,30E,30F,30G,30H 発熱素子(電気抵抗ヒータ)、3A1,3A2,3B1,3B2,3C1,3C2,3D1,3D2 延在部、3R 交流電源(電力供給手段)、3T エンジンコントローラ(接続状態変更手段)、4 カソード電極、4M カソード電極支持体、4R プラズマ励起電源、4S 表面、4T インピーダンス整合器、5M 保持脚、5 内部構造体、6 ガス導入部(反応性ガス供給手段)、7 排気管、7A 圧力制御器、7B 真空ポンプ、7C 除害装置、8 温度センサ(温度検出手段)、31 第1発熱部、32 第2発熱部、100 プラズマ処理装置、200,201 加熱装置、C1〜C6,C11〜C18 端子、LX,LY 間隔、P1〜P5 測定点、R 抵抗値、R1,R2 リレー、S 基板(被加熱物)、S1,S3,S11,S13,S15,S17 切り替えスイッチ、S5 主電流ON/OFFスイッチ、SE 半導体素子、SM 基板保持部材、ST1〜ST8 ステップ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱装置、プラズマ処理装置、および半導体素子の形成方法に関し、特に、被処理物を加熱する加熱装置、その加熱装置を備えたプラズマ処理装置、およびそのプラズマ処理装置を使用する半導体素子の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
加熱装置は被加熱物を加熱する。加熱装置は、たとえばプラズマ処理装置内に設けられる。加熱装置がプラズマ処理装置内に設けられる場合、加熱装置は被処理物として半導体基板などの基板を加熱する。
【0003】
プラズマ処理装置は、ウエハまたは基板等にプラズマ処理を施す。プラズマ処理装置によって、TFT素子、半導体デバイス、または発光素子などの電子デバイスが製造される。これらの電子デバイスが組み立てられることによって、液晶パネルまたは太陽電池パネル等が製造される。
【0004】
プラズマ処理装置は、プラズマ放電により反応性ガスをプラズマ状態に変化させる。反応性ガスから、活性な励起分子、ラジカル、またはイオンが生成されることによって、基板上に所定のプラズマ処理が施される。プラズマ処理中またはプラズマ処理の前後において、基板は加熱装置によって室温〜約300℃に加熱される。
【0005】
近年、液晶パネル等の大きさに合わせて、プラズマ処理装置も大きくなる傾向にある。プラズマ処理装置によって製造される液晶パネル等の特性の向上および生産性の向上のためには、基板の温度が面方向において均一となるように基板が加熱される必要がある。下記の特許文献1,2は、プラズマ処理装置における加熱に関する技術を開示している。
【0006】
特開平8−316150号公報(特許文献1)は、プラズマ処理装置における堆積膜形成装置に関する技術を開示している。当該堆積膜形成装置においては、基板を所望の温度に設定する基板加熱手段の発熱量が、基板の長さ方向のいずれか一方の端部側または両方の端部側で多く、中央部で少なくなるように設定される。同公報は、当該堆積膜形成装置によれば、電子写真感光体の特性のばらつきを抑制し、膜剥がれ等に対する耐久性を向上できると述べている。
【0007】
特開平7−18447号公報(特許文献2)は、プラズマ処理装置における熱処理装置に関する技術を開示している。当該熱処理装置においては、同じ長さの線材からなる発熱抵抗体が、加熱ゾーン毎で縦方向に延ばされて上下で交互にU字状に折り返される。折返し部は加熱ゾーン間での境界位置を越えており、隣接する加熱ゾーン間での折返し部同士は噛み合っている。同公報は、当該熱処理装置によれば、組立手順および加工手順を共通化してコストを低減できると述べている。
【0008】
特開2005−258317号公報(特許文献3)は、プラズマ処理装置とは技術分野等が異なるが、画像形成装置における加熱に関する技術を開示している。当該画像形成装置は、少なくとも2本のヒータと、ヒータの接続状態を並列接続および直列接続に変更できるヒータ接続回路変更手段とを備える。ヒータ接続回路変更手段がOFF状態の時は、各ヒータ同士は直列接続となる。ヒータ接続回路変更手段のON状態の時は、各ヒータ同士は並列接続となる。各ヒータの必要電力あるいは熱量に応じて接続状態が変更される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平8−316150号公報
【特許文献2】特開平7−18447号公報
【特許文献3】特開2005−258317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、被処理物の面方向における温度を簡便な方法によって均一にすることができる加熱装置、その加熱装置を備えたプラズマ処理装置、およびそのプラズマ処理装置を使用する半導体素子の形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に基づく加熱装置は、表面上に被加熱物が配置される板状部材と、上記表面に沿うように配設され、上記表面上に配置された上記被加熱物を加熱する4つの発熱素子と、4つの上記発熱素子に接続された電力供給手段と、4つのうちいずれか同士または複数同士の上記発熱素子の接続状態を直列接続および並列接続にそれぞれ変更する接続状態変更手段と、4つのうちいずれかまたは複数の上記発熱素子の温度を検出する温度検出手段と、を備え、上記接続状態変更手段は、上記温度検出手段が検出した上記発熱素子の温度に基づいて、上記被加熱物に対する加熱量が面方向において均一となるように、4つのうちいずれか同士または複数同士の上記発熱素子の接続状態を直列接続および並列接続にそれぞれ変更する。
【0012】
好ましくは、上記4つの発熱素子は、2つの上記発熱素子を含む第1発熱部と、上記第1発熱部の外側に位置し他の2つの上記発熱素子を含む第2発熱部と、を有し、上記第1発熱部は、上記被加熱物の中央側の部分を加熱し、上記第2発熱部は、上記被加熱物の外周側の部分を加熱する。
【0013】
好ましくは、上記第1発熱部における接続状態は、上記被加熱物が所望の温度に到達するまで加熱される際には、上記接続状態変更手段によって並列接続に設定され、上記被加熱物が所望の温度に到達した後は、上記第1発熱部における接続状態は、上記被加熱物に対する加熱量が略一定となるように上記接続状態変更手段によって並列接続および直列接続が切り替えられる。
【0014】
好ましくは、上記第2発熱部における接続状態は、常時並列接続である。好ましくは、4つのうちいずれかまたは複数の上記発熱素子は、電気抵抗ヒータから構成される。好ましくは、4つの上記発熱素子における個々の消費電力は略同一である。
【0015】
好ましくは、4つの上記発熱素子の各々は、上記板状部材の上記表面に沿って延びる延在部を含み、4つの上記発熱素子の各々は、上記延在部が同一平面上において相互に等間隔かつ平行となるように配置されている。
【0016】
好ましくは、上記接続状態変更手段は、4つのうちいずれか同士または複数同士の上記発熱素子の接続状態を、スイッチまたはリレーによって直列接続および並列接続にそれぞれ変更する。
【0017】
本発明に基づくプラズマ処理装置は、本発明に基づく上記に記載の加熱装置と、内部を密封可能なチャンバーと、上記チャンバー内に反応性ガスを供給する反応性ガス供給手段と、上記反応性ガスをプラズマ放電させるカソード電極およびアノード電極と、を備え、上記加熱装置における上記板状部材は、上記カソード電極または上記アノード電極であり、上記被加熱物は、半導体基板である。
【0018】
本発明に基づく半導体素子の形成方法は、本発明に基づく上記のプラズマ処理装置を使用して、上記半導体基板の表面に半導体素子を形成する工程を備える。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、被処理物の面方向における温度を簡便な方法によって均一にすることができる加熱装置、その加熱装置を備えたプラズマ処理装置、およびそのプラズマ処理装置を使用する半導体素子の形成方法を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施の形態1におけるプラズマ処理装置を模式的に示す断面図である。
【図2】実施の形態1における加熱装置を模式的に示す斜視図である。
【図3】実施の形態1における加熱装置に含まれる発熱体、交流電源、およびエンジンコントローラの接続態様を示す電気回路図である。
【図4】実施の形態1における加熱装置(変形例)に含まれる発熱体、交流電源、およびエンジンコントローラの接続態様を示す電気回路図である。
【図5】実施の形態1におけるプラズマ処理装置および加熱装置を模式的に示す平面図である。
【図6】実施の形態1におけるプラズマ処理装置(加熱装置)の立ち上げ時の動作フローを示す図である。
【図7】実施の形態2における加熱装置を模式的に示す平面図である。
【図8】実施の形態2における加熱装置に含まれる発熱体、交流電源、およびエンジンコントローラの接続態様を示す電気回路図である。
【図9】実施例において測定した基板の各測定点(測定箇所)を示す図である。
【図10】実施例において測定した基板の温度の各測定点における経時的な変化を示す図である。
【図11】比較例における加熱装置に含まれる発熱体、交流電源、およびエンジンコントローラの接続態様を示す電気回路図である。
【図12】比較例において測定した基板の温度の各測定点における経時的な変化を示す図である。
【図13】他の実施例として、全並列接続状態および直列接続・並列接続混在状態でそれぞれプラズマ処理装置(加熱装置)を起動したときのアノード電極の温度の経時的な変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に基づいた各実施の形態について、以下、図面を参照しながら説明する。各実施の形態の説明において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本発明の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。各実施の形態の説明において、同一の部品、相当部品に対しては、同一の参照番号を付し、重複する説明は繰り返さない場合がある。
【0022】
[実施の形態1]
(プラズマ処理装置100)
図1は、本実施の形態におけるプラズマ処理装置100を模式的に示す断面図である。図2は、本実施の形態における加熱装置200を模式的に示す斜視図である。加熱装置200は、プラズマ処理装置100に備えられる。
【0023】
図1を参照して、プラズマ処理装置100は、チャンバー1、アノード電極2(板状部材)、発熱体3、エンジンコントローラ3T(接続状態変更手段)、交流電源3R(電力供給手段)、カソード電極4、インピーダンス整合器4T、プラズマ励起電源4R、内部構造体5、ガス導入部6(反応性ガス供給手段)、排気管7、圧力制御器7A、真空ポンプ7B、除害装置7C、および温度センサ8(温度検出手段)(図2参照)を備える。
【0024】
詳細は後述されるが、本実施の形態における加熱装置200は、アノード電極2、発熱体3、エンジンコントローラ3T、交流電源3R、および温度センサ8(図2参照)から構成される。発熱体3は、エンジンコントローラ3Tおよび交流電源3Rに順に接続されている。
【0025】
チャンバー1は中空状に形成され、その内部は密閉されることができる。チャンバー1は、真空容器として十分な強度を有する部材から構成される。チャンバー1を構成する部材は、熱伝導性および耐熱性を有することが好ましく、たとえばステンレス鋼またはアルミニウム合金である。チャンバー1の内部は、圧力制御器7Aおよび真空ポンプ7Bによって任意の真空度に制御される。
【0026】
チャンバー1を構成する各部材同士の嵌合部分は、Oリングなどの真空シール部材(図示せず)によって完全に密閉される。真空シール部材としては、デュポンエラストマー株式会社製のバイトン(登録商標)やカルレッツ(登録商標)などのフッ素系ゴムシール材が用いられるとよい。
【0027】
チャンバー1は接地される。チャンバー1の底面には、保持脚5Mが設けられる。保持脚5Mは、枠状の角材から構成される内部構造体5を固定支持する。保持脚5Mを構成する部材は、内部構造体5、アノード電極2、発熱体3、カソード電極4、および基板S等の重量を支え得る十分な強度を有する。
【0028】
内部構造体5を構成する部材は、アノード電極2、発熱体3、カソード電極4、および基板S等の重量を支え得る十分な強度を有し、たとえばステンレス鋼またはアルミニウム合金である。排気管7は、チャンバー1の内部と連通するように設けられる。排気管7は、圧力制御器7A、真空ポンプ7B、および除害装置7Cに順に接続される。
【0029】
(アノード電極2)
アノード電極2は、チャンバー1内に配置され、接地される。アノード電極2は、その4隅に配置されたアノード電極支持体2Mによって、内部構造体5に固定支持される。アノード電極2を構成する部材は、熱伝導性および耐熱性を有することが好ましく、たとえばステンレス鋼、アルミニウム合金、またはカーボンである。
【0030】
詳細は図2を参照して後述されるが、アノード電極2は、上部体2Aおよび下部体2Bが相互に接合されることによって板状に構成される。発熱体3および温度センサ8(図2参照)は、上部体2Aおよび下部体2Bに挟み込まれるようにして、アノード電極2の内部に設けられる。
【0031】
アノード電極2の表面2S上に基板Sが配置される。基板Sは、内部構造体5に固定された基板保持部材SMによって固定される。基板Sに所定のプラズマ処理が施されることによって半導体素子SEが基板Sの表面に形成される。半導体素子SEが形成された基板Sから、液晶パネル、太陽電池パネル、TFT素子、半導体デバイス、発光素子、または感光体などの電子デバイスが製造される。
【0032】
アノード電極2の大きさは、基板Sの大きさに合わせて設定される。基板Sの大きさが900〜1200mm×400mm×900mmの場合、アノード電極2の大きさは、たとえば1000〜1500mm×600mm〜1000mmに設定される。
【0033】
アノード電極2の下面と内部構造体5の底面との間には、アノード電極2からの熱輻射による内部構造体5の熱上昇を抑えるために、たとえば10mm〜30mmの間隔が設けられる。
【0034】
アノード電極支持体2Mによるアノード電極2の支持寸法は、アノード電極2が撓まないように設定され、たとえば30mm×50mmである。アノード電極支持体2Mを構成する部材は、熱伝導による内部構造体5の熱上昇を抑えるために小さな熱伝導率を有することが好ましく、たとえばジルコニア(酸化ジルコニウム)である。
【0035】
アノード電極支持体2Mと内部構造体5との接触面積を小さくするために、アノード電極支持体2Mには、アノード電極支持体2Mの強度を損なわない範囲で深さ1mm〜5mm程度の掘り込み(図示せず)が設けられるとよい。
【0036】
(カソード電極4)
カソード電極4は、チャンバー1内においてアノード電極2に対して平行に配置される。アノード電極2とカソード電極4との間において放電部が形成され、当該放電部においてプラズマ放電が発生する。カソード電極4は、その4隅に配置されたカソード電極支持体4Mによって、内部構造体5に固定支持される。カソード電極4を構成する部材は、熱伝導性および耐熱性を有することが好ましく、たとえばステンレス鋼、アルミニウム合金、またはカーボンである。カソード電極4に用いられる真空シール部材(図示せず)としては、フッ素系ゴムシール材が用いられるとよい。
【0037】
カソード電極4の大きさは、アノード電極2と同様に、基板Sの大きさに合わせて設定される。基板Sの大きさが900〜1200mm×400mm×900mmの場合、カソード電極4の大きさは、たとえば1000〜1500mm×600mm〜1000mmに設定される。
【0038】
カソード電極4は、表面4Sに多数の貫通穴(図示せず)が設けられる。当該貫通穴は穴あけ加工により形成される。各貫通穴は、たとえば直径が約0.1mm〜2mm、ピッチが数mm〜数cmである。各貫通孔は、カソード電極4の内部に設けられた空洞管(図示せず)に連通する。各貫通孔およびこの空洞管を通して、ガス導入部6から導入された反応性ガスが基板S上に供給される。
【0039】
カソード電極4とアノード電極2との間隔(距離)は、数mm〜数十mm程度に設定され、その寸法精度は数%以下であることが好ましい。本実施の形態においては、カソード電極4とアノード電極2との間隔(距離)は2mm〜30mmであり、その寸法精度は1%以下である。
【0040】
カソード電極支持体4Mによるカソード電極4の支持寸法は、カソード電極4が撓まないように範囲でできるだけ小さく設定され、たとえば100mm×50mmである。当該支持寸法が小さいと、カソード電極4から内部構造体5への熱の伝達が抑制される。カソード電極支持体4Mを構成する部材は、電気絶縁性に加えて、カソード電極4を十分に保持可能な強度を有することが好ましく、たとえばセラミックス、ジルコニア、アルミナ(酸化アルミニウム)、またはガラスである。
【0041】
カソード電極4は、インピーダンス整合器4Tを通してプラズマ励起電源4Rから電力が供給される。プラズマ励起電源4Rは、たとえば交流周波数が1.00〜108.48MHz、出力電力が10W〜100kWの性能を有する。本実施の形態においては、プラズマ励起電源4Rは、交流周波数が13.56〜81.42MHz、出力電力が10W〜20kWの性能を有する。
【0042】
ガス導入部6は、チャンバー1の外部から、カソード電極4に設けられた貫通孔を通してチャンバー1の内部に連通する。ガス導入部6を通して、基板S上に反応性ガスが供給される。基板S上に成膜処理が施される場合、反応性ガスは、たとえば、H2で希釈したSiH4(モノシラン)ガスに加えて、PH3(ホスフィン)ガス、B2H6(ジボラン)ガス、またはCO2ガスを含む。
【0043】
基板S上に反応性ガスが供給されている状態で、プラズマ励起電源4Rからカソード電極4に電力(高周波電力)が供給される。アノード電極2とカソード電極4との間の放電部においてプラズマ放電が発生する。プラズマ放電により反応性ガスがプラズマ状態に変化する。反応性ガスから、活性な励起分子、ラジカル、またはイオンが生成されることによって、基板S上に所定のプラズマ処理が施される。基板Sの表面に非晶質膜または結晶性膜などが成膜されることによって、半導体素子の形成方法として、基板Sの表面に半導体素子SEが形成される。
【0044】
放電部に供給する電力を大きくすると、より大きなプラズマ放電によって反応性ガスが励起される。反応性ガスの反応性が向上することによって、基板Sに対して高速なプラズマ処理を行うことができる。
【0045】
プラズマ処理中またはプラズマ処理の前において、圧力制御器7Aおよび真空ポンプ7Bはチャンバー1内の圧力を適切な値に調節する。プラズマ処理の前後において、圧力制御器7Aおよび真空ポンプ7Bはチャンバー1内の雰囲気を置換してもよい。詳細は後述されるが、プラズマ処理中またはプラズマ処理の前後において、基板Sの温度は加熱装置200によって適切な値に調節される。
【0046】
反応性ガスがプラズマ処理に使用された後、反応性ガスは排ガスとしてチャンバー1内に残留している。排ガス中に含まれる有害物質は、除害装置7Cによって除去される。以上のようにして、プラズマ処理装置100は基板Sに対してプラズマ処理を施す。
【0047】
(加熱装置200)
図2および図3を参照して、プラズマ処理装置100に備えられる加熱装置200について説明する。図2は、加熱装置200を示す斜視図である。図3は、加熱装置200に含まれる発熱体3(発熱素子3A〜3D)、交流電源3R、およびエンジンコントローラ3Tの接続態様を示す電気回路図である。
【0048】
図2に示すように、加熱装置200は、アノード電極2、発熱体3、エンジンコントローラ3T(図1および図3参照)、交流電源3R(図1および図3参照)、および温度センサ8を備える。アノード電極2の表面2S上に、被加熱物として基板S(図1参照)が配置される。
【0049】
アノード電極2は、上部体2Aおよび下部体2Bが相互に接合されることによって板状に構成される。発熱体3および温度センサ8は、上部体2Aおよび下部体2Bに挟み込まれるようにして、アノード電極2の内部に設けられる。アノード電極2に用いられる真空シール部材(図示せず)としては、フッ素系ゴムシール材が用いられるとよい。
【0050】
発熱体3は、4本の発熱素子3A〜3Dを含む。4本のうち2本の発熱素子3B,3Cによって第1発熱部31が構成される。4本のうち2本の発熱素子3A,3Dによって第2発熱部32が構成される。第1発熱部31(発熱素子3B,3C)は、第2発熱部32(発熱素子3A,3D)の外側に位置している。第1発熱部31は、表面2S上に配置された基板Sの中央側の部分を加熱することができる。第2発熱部32は、表面2S上に配置された基板Sの外周側の部分を加熱することができる。
【0051】
各発熱素子3A〜3Dは、平面視U字状に形成される。各発熱素子3A〜3Dは、密閉型の発熱体である。各発熱素子3A〜3Dは、たとえばシーズヒータのように、一本の線材が電気抵抗によって発熱される電気抵抗ヒータから構成されるとよい。シーズヒータは、管状に形成された金属性シーズの中に伝熱線としての発熱体(ニクロム線等)が挿入され、金属性シーズと発熱体との間に熱伝導性を有する高純度の無機絶縁物(MgO等)の粉末が充填されることによって構成される。
【0052】
各発熱素子3A〜3Dがシーズヒータから構成されている場合、電気エネルギーが100%の割合で熱に変換されるため、エネルギーの使用効率が高い。熱量が電力量と等しいため、後述する温度センサ8によって容易にその熱量が計測され、温度制御も正確且つ容易に行なわれることが可能となる。また、商用電源(AC50kHz/60kHz)から電力をそのまま供給されることも可能となる。低温から高温まで、広い温度範囲にて使用されることができる。各種の反応性ガスや真空の雰囲気下において使用されることも可能である。
【0053】
各発熱素子3A〜3Dにおける消費電力(定格容量)は、それぞれ略同一に構成されるとよい。当該構成によれば、発熱素子3A〜3Dとしての温度が上昇したとき、発熱素子3A〜3Dの発熱量が大きい場合であっても、設定温度に到達したときの面方向における温度がより均一となり(バラツキが小さい)、温度制御が容易に行なわれることが可能となる。各発熱素子3A〜3Dは、誘導加熱またはマイクロ波加熱によって加熱されるように構成されていてもよく、ヒートポンプなどから構成されていてもよい。
【0054】
発熱素子3Aは、アノード電極2の表面2Sに沿って延びる延在部3A1および延在部3A2を有している。延在部3A1および延在部3A2の先端同士はU字状に接続されている。同様に、発熱素子3B,3C,3Dは、アノード電極2の表面2Sに沿って延びる延在部3B1,3C1,3D1および延在部3B2,3C2,3D2をそれぞれ有している。延在部3B1,3C1,3D1および延在部3B2,3C2,3D2の先端同士はそれぞれU字状に接続されている。
【0055】
延在部3A1,3A2,3B1,3B2,3C1,3C2,3D1,3D2は、同一平面上において相互に等間隔かつ平行な位置関係にあり、アノード電極2の表面2Sに沿って延在している。当該構成によれば、発熱素子3A〜3Dとしての部品種類を低減することが可能になり、発熱素子3A〜3Dがアノード電極2に誤って組み付けられることもなくなる。
【0056】
上部体2Aおよび下部体2Bには、各発熱素子3A〜3Dの形状にそれぞれ対応するように、断面視半円形状の長溝が設けられている。当該長溝によって、上部体2Aと下部体2Bとの間に各発熱素子3A〜3Dが固定配置されている。
【0057】
温度センサ8は、密閉型の温度センサとして、たとえば熱電対またはサーミスタから構成される。温度センサ8は、アノード電極2の内部において、各発熱素子3A〜3Dの近傍に配設される。
【0058】
温度センサ8の数は、加熱制御される基板Sの面方向における温度分布の均一さの精度、または加熱制御される基板Sの使用用途等に応じて最適な値が選択される。コストの面からは、温度センサ8はアノード電極2の内部に1個だけ配設されていてもよい。この場合、温度センサ8はアノード電極2の表面2Sにおける中心付近の位置に設けられることが好ましい。
【0059】
図3を参照して、各発熱素子3A〜3D、交流電源3R、およびエンジンコントローラ3Tの接続態様を示す電気回路について説明する。
【0060】
図3に示すように、各発熱素子3A〜3Dは、抵抗値Rを有し、交流電源3Rに電気的に接続される。本実施の形態においては、第2発熱部32(図2参照)を構成する発熱素子3Aおよび発熱素子3Dの接続状態は、常時並列接続である。
【0061】
第1発熱部31(図2参照)を構成する発熱素子3Bおよび発熱素子3Cは、接続(ドロアー)コネクタ(図示せず)を通して主電流ON/OFFスイッチS5によって点灯/消灯制御される。主電流ON/OFFスイッチS5は、たとえばトライアックなどのスイッチング素子から構成される。
【0062】
主電流ON/OFFスイッチS5における端子C5,C6の接続状態/非接続状態は、エンジンコントローラ3T(図1も参照)によって切り替えられる。発熱素子3Aおよび発熱素子3Dは常時並列接続されており、接続(ドロアー)コネクタ(図示せず)には接続されていない。
【0063】
発熱素子3Bは、端子C1および端子C3に接続されている。発熱素子3Cは、端子C2および端子C4に接続されている。発熱素子3Bおよび発熱素子3Cの接続状態は、切り替えスイッチS1,S3によって、直列接続および並列接続にそれぞれ変更される。切り替えスイッチS1,S3における各端子の接続状態/非接続状態も、エンジンコントローラ3Tによって切り替えられる。
【0064】
発熱素子3Bおよび発熱素子3Cの接続状態が直列接続に設定される場合(図3に示す状態)、切り替えスイッチS1は、端子C1および端子C2を非接続状態に設定する。切り替えスイッチS3は、端子C1および端子C4を接続状態に設定する。
【0065】
発熱素子3Bおよび発熱素子3Cの接続状態が並列接続に設定される場合(図示せず)、切り替えスイッチS1は、端子C1および端子C2を接続状態に設定する。切り替えスイッチS3は、端子C3および端子C4を接続状態に設定する。
【0066】
図4に示すように、主電流ON/OFFスイッチS5における端子C5,C6の接続状態/非接続状態は、リレーR1によって変更されてもよい。また、切り替えスイッチS1,S3における各端子の接続状態/非接続状態は、リレーR2によって変更されてもよい。この場合、リレーR1,R2は、エンジンコントローラ3Tによって駆動される。
【0067】
発熱素子3Bおよび発熱素子3Cの接続状態が直列接続に設定される場合(図4に示す状態)、リレーR2によって、切り替えスイッチS1は端子C1および端子C2を非接続状態に設定し、切り替えスイッチS3は端子C1および端子C4を接続状態に設定する。
【0068】
発熱素子3Bおよび発熱素子3Cの接続状態が並列接続に設定される場合(図示せず)、リレーR2によって、切り替えスイッチS1は端子C1および端子C2を接続状態に設定し、切り替えスイッチS3は端子C3および端子C4を接続状態に設定する。
【0069】
発熱素子3Bおよび発熱素子3Cの接続状態が変更されることによって、主電流ON/OFFスイッチS5がON状態の時において、発熱素子3B,3Cにおける消費電力および発熱量が変更される。
【0070】
発熱素子3Bおよび発熱素子3Cの各々が、たとえば1kWの消費電力(定格容量)を有するとする。発熱素子3Bおよび発熱素子3Cが直列接続された場合、オームの法則に基づき、発熱素子3Bおよび発熱素子3Cの全体としての消費電力は0.5kWとなる。発熱素子3Bおよび発熱素子3Cが並列接続された場合、オームの法則に基づき、発熱素子3Bおよび発熱素子3Cの全体としての消費電力は2.0kWとなる。並列接続の方が直列接続に比べて消費電力(発熱量)が大きくなる。
【0071】
図5を参照して、たとえばアノード電極2がチャンバー1の略中央に配置されているとする。図5紙面上下方向において、アノード電極2の端面2Yとチャンバー1の内壁1Yとの間には間隔LYが設けられている。図5紙面右方向において、アノード電極2の端面2Xとチャンバー1の内壁1Xとの間には間隔LXが設けられている。
【0072】
間隔LYは間隔LXよりも小さい(間隔LY<間隔LX)。アノード電極2が発熱体3によって加熱される際、チャンバー1によるアノード電極2の脱熱量は、アノード電極2の端面2Y側の部分の方がアノード電極2の中央付近の部分よりも大きくなる。アノード電極2においては、端面2Y側の部分の方が中央付近の部分よりもチャンバー1によって多くの熱を奪われる。
【0073】
本実施の形態においては、常時並列接続された発熱素子3A,3D(第2発熱部32)によって、アノード電極2の端面2Y側の部分が加熱される。一方で、並列接続/直列接続が変更可能な発熱素子3B,3C(第1発熱部31)によって、アノード電極2の中央側の部分が加熱される。
【0074】
発熱素子3B,3Cが並列接続されると、発熱素子3A〜3Dのすべてがアノード電極2を略均一に加熱する。この場合、チャンバー1の脱熱によって、アノード電極2の端面2Y側の部分の温度は、アノード電極2の中央側の部分(発熱素子3B,3Cが配設されている部分)に比べて低くなる。
【0075】
上記の温度差を無くすために、エンジンコントローラ3T(図1参照)は、温度センサ8が測定した発熱素子3A〜3Dの温度に基づいて、発熱素子3B,3Cの接続状態を直列接続/並列接続に変更したり、発熱素子3B,3CのON/OFF(点灯/消灯)を切り替えたりする。エンジンコントローラ3Tによる発熱素子3B,3Cの制御によって、アノード電極2の全体としての温度(つまり、基板Sに対する加熱量)は、面方向において均一となる。エンジンコントローラ3Tによる発熱素子3B,3Cの制御によって、アノード電極の温度は、面方向に均一に、室温〜300℃に設定されることが可能となる。
【0076】
エンジンコントローラ3Tによる発熱素子3B,3Cの制御は、基板Sに対するプラズマ処理中に行なわれてもよく、プラズマ処理の前後に行なわれてもよい。
【0077】
詳細は図6を参照して後述されるが、プラズマ処理装置100の起動時(加熱装置200の起動時)には、エンジンコントローラ3Tは発熱素子3A〜3Dの接続状態を全て並列接続にするとよい。発熱体3としての発熱量が最大になる。アノード電極2の温度は、所望の設定温度にまで短い時間で到達することが可能となる。
【0078】
アノード電極2の温度が所望の設定温度に到達した後は、エンジンコントローラ3Tは、発熱素子3B,3Cの接続状態を直列接続/並列接続に変更したり、発熱素子3B,3CのON/OFF(点灯/消灯)を切り替えたりするとよい。アノード電極2の温度は、所望の設定温度に維持されることが可能となる。
【0079】
基板Sを加熱する段階において、必要に応じて、エンジンコントローラ3Tは発熱素子3A〜3Dの接続状態を全て並列接続にしてもよい。発熱体3としての発熱量が最大になる。基板Sの温度は所望の設定温度にまで短い時間で到達することが可能となる。
【0080】
基板Sの温度が所望の設定温度に到達した後は、エンジンコントローラ3Tは、発熱素子3B,3Cの接続状態を直列接続/並列接続に変更したり(または変更の回数を低減したり)、発熱素子3B,3CのON/OFF(点灯/消灯)を切り替えたり(またはON/OFFの回数を低減したり)するとよい。基板Sの温度は、所望の設定温度に維持されることが可能となる。
【0081】
(加熱装置200の起動時の動作)
図6(および図3)を参照して、加熱装置200の立ち上げ時(プラズマ処理装置100の立ち上げ時)における加熱装置200の動作フローについて説明する。
【0082】
加熱装置200の立ち上げは、プラズマ処理装置100の電源ONによって開始される(ステップST1)。エンジンコントローラ3Tに電力が供給され、エンジンコントローラ3Tはウォームアップのための前多回転を開始する(ステップST2)。前多回転によって、加熱装置200における発熱体3(発熱素子3A〜3D)が駆動され、他の所定の周辺機器もプラズマ処理のための準備動作に入る。
【0083】
エンジンコントローラ3Tは、発熱体3を駆動した後、切り替えスイッチS1,S3および主電流ON/OFFスイッチS5を操作する。切り替えスイッチS1,S3の操作によって、発熱素子3A〜3Dの接続状態は並列接続に設定される。主電流ON/OFFスイッチS5の操作によって、発熱体3(発熱素子3A〜3D)は所定のDuty値(電力投入比率)で駆動される(ステップST3)。
【0084】
エンジンコントローラ3Tは、主電流ON/OFFスイッチS5を制御することによって、発熱素子3A〜3Dに対して電力投入する位相角または端数などを変化させ、Duty値を所定の値に制御する。発熱素子3A〜3Dは、交流電源3Rから主電流ON/OFFスイッチS5を通して供給された電力により加熱される。発熱素子3A〜3Dの温度は徐々に上昇する。
【0085】
発熱素子3A〜3Dの温度が上昇している際、エンジンコントローラ3Tは、発熱素子3A〜3Dの温度上昇カーブ(単位時間当たりの温度上昇率)を、熱電対またはサーミスタ等の温度センサ8(図2参照)によってモニタリングする。エンジンコントローラ3Tは、予めエンジンコントローラ3T内に記録保持されている所定の温度上昇率ΔT/Δt(基準温度上昇率)に対して、モニタリングしている発熱素子3A〜3Dの温度上昇率ΔT’/Δtを比較する(ステップST4)。上記の所定の温度上昇率ΔT/Δt(基準温度上昇率)は、基板Sに対する仕様、またはプラズマ処理中の環境などに応じて適宜設定される。
【0086】
エンジンコントローラ3Tは、発熱素子3A〜3Dの温度上昇率ΔT’/Δtが所定の温度上昇率ΔT/Δtよりも低い(温度上昇率ΔT/Δt>温度上昇率ΔT’/Δtを満足する)と判断したときは、発熱素子3B,3Cの並列接続を維持する。
【0087】
エンジンコントローラ3Tは、発熱素子3A〜3Dの温度上昇率ΔT’/Δtが所定の温度上昇率ΔT/Δtよりも高いと判断したときは、切り替えスイッチS1,S3を操作して、発熱素子3B,3Cの接続状態を直列接続に切り替える(ステップST5)。アノード電極2は、並列接続された発熱素子3A,3Dと、直列接続された発熱素子3B,3Cとによって加熱される。
【0088】
エンジンコントローラ3Tは、切り替えスイッチS1,S3および主電流ON/OFFスイッチS5を操作することによって、アノード電極2の温度が所望の値に到達するように制御する(ステップST6)。
【0089】
当該制御においては、切り替えスイッチS1,S3によって、発熱素子3A〜3Dの接続状態は直列接続/並列接続に適宜切り替えられ、主電流ON/OFFスイッチS5によって、電力投入する位相角または波数が変化され、発熱素子3A〜3Dは所定のDuty値に制御された電力によって駆動される。
【0090】
アノード電極2の温度が所望の値に到達した時点で、エンジンコントローラ3Tによる前多回転が終了する(ステップST7)。エンジンコントローラ3Tは、その後、スタンバイ状態に入る(ステップST8)。
【0091】
(作用・効果)
プラズマ処理装置100に備えられた加熱装置200においては、発熱素子3A,3Dが常時並列接続されるのに対し、発熱素子3B,3Cは直列接続/並列接続がそれぞれ切り替えられる。たとえばチャンバー1による脱熱(温度低下)に対し、発熱素子3B,3Cが直列接続/並列接続およびON/OFFに切り替えられることによって、アノード電極2の全体としての温度(つまり、基板Sに対する加熱量)は、面方向において均一となる。
【0092】
プラズマ処理装置100によれば、加熱装置200が基板Sを面方向において均一に加熱することによって、均一な厚さを有する堆積膜が基板S上に成膜されたり、所望の特性を有する半導体素子SE(図1参照)が基板S上に形成されたりすることが可能となる。
【0093】
[実施の形態1における他の構成]
上述の実施の形態1においては、加熱装置200が、外側に配設される2本の発熱素子3A,3D(第2発熱部32)と内側に配設される2本の発熱素子3B,3C(第1発熱部31)とを含むという態様に基づいて説明した。加熱装置200は、4本以上の発熱素子を有していてもよい。エンジンコントローラ3Tとしては、複数のうちいずれか同士または複数同士の発熱素子の接続状態を、直列接続および並列接続にそれぞれ変更すればよい。
【0094】
たとえば、内側に配設される第1発熱部31が3本の発熱素子を有する場合、3本のうち2本の発熱素子が直列接続され、他の1本の発熱素子が並列接続される。3本全ての発熱素子が直列接続されてもよい。3本のうち1本の発熱素子は、成膜プロセス時におけるアノード電極2の温度分布に従い、温度安定時には非通電としてもよい。これらは、成膜プロセス時における基板Sの温度分布に従い選択されてもよい。直列接続される発熱素子の数が4本以上の場合であっても、基板Sに対する加熱量が面方向において均一となるように、上記と同様に様々な接続方法から選択されるとよい。
【0095】
上述の実施の形態1においては、2本の発熱素子3A,3D(第2発熱部32)が外側に配設され、2本の発熱素子3B,3C(第1発熱部31)が内側に配設されるという態様に基づいて説明した。各発熱素子3A〜3Dの配置は、チャンバー1のような外部要因による脱熱等に応じて、基板Sに対する加熱量が均一となるように適宜最適化されるとよい。
【0096】
上述の実施の形態1においては、発熱体3(発熱素子3A〜3D)がアノード電極2に内蔵されている。発熱体3は、アノード電極2の裏面側に設置されてもよい。
【0097】
アノード電極2は、より均一で精密な温度制御を行うために、発熱体3と共に冷却用媒体配管を内蔵していてもよい。冷却用媒体配管は、アノード電極2内において、たとえば発熱素子3A〜3Dの周りを取り囲むように配設される。冷却用媒体配管を構成する部材は、熱伝導性および耐熱性を有していることが好ましく、たとえばアルミニウム、アルミニウム合金、銅、鉄、ニッケルまたはステンレス鋼である。
【0098】
冷却用媒体配管は、内部に冷却媒体が供給されることによって、アノード電極2を冷却する。冷却媒体としては、水およびフッ素系不活性液体(フロリナートなど)や、不活性オイルなどの熱媒、もしくはアルゴンガスや窒素ガスなどの不活性ガスなどが使用される。
【0099】
上述の実施の形態1においては、加熱装置200がプラズマ処理装置100にそなえられるという態様に基づいて説明した。加熱装置200としては、プラズマ処理装置100以外の他の装置(たとえば、画像形成装置またはCat(触媒)CVD装置など)にも搭載されることが可能である。
【0100】
[実施の形態2]
図7および図8を参照して、本実施の形態におけるプラズマ処理装置および加熱装置について説明する。ここでは、上述の実施の形態1との相違点について説明する。
【0101】
図7は、本実施の形態におけるプラズマ処理装置に備えられる加熱装置201を示す平面図である。本実施の形態におけるプラズマ処理装置の全体的な構成は、上述の実施の形態1におけるプラズマ処理装置100(図1参照)と略同様に構成される。図8は、加熱装置201に含まれる発熱体3(発熱素子3A〜3H)、交流電源3R、およびエンジンコントローラ3Tの接続態様を示す電気回路図である。
【0102】
図7に示すように、加熱装置201は、アノード電極2、発熱体3、エンジンコントローラ3T(図8参照)、交流電源3R、および温度センサ8を備える。アノード電極2はアルミニウム合金から構成される。アノード電極2の表面2S上に、被加熱物として基板S(図1参照)が配置される。発熱体3および温度センサ8は、アノード電極2の内部に設けられる。熱電対などから構成される温度センサ8は、アノード電極2の略中央に位置している。
【0103】
発熱体3は、8本の発熱素子30A,30B,30C,30D,30E,30F,30G,30Hを含む。各発熱素子30A〜30Hは、シーズヒータから構成される。各発熱素子30A〜30Hにおける電力配分は750Wである。各発熱素子30A〜30HはU字状に形成され、同一平面上において等間隔で配置されている。
【0104】
8本のうち2本の発熱素子30A,30Hによって第2発熱部32が構成される。8本のうち残りの6本の発熱素子30B,30C,30D,30E,30F,30Gによって第1発熱部31が構成される。第2発熱部32は、第1発熱部31の外側に位置している。
【0105】
図8に示すように、各発熱素子30A〜30Hは、抵抗値Rを有し、交流電源3Rに電気的に接続される。本実施例においては、第2発熱部32(図7参照)を構成する発熱素子30Aおよび発熱素子30Hの接続状態は、常時並列接続である。
【0106】
各発熱素子30A〜30Hは、エンジンコントローラ3Tによる操作によって、たとえば次の直列接続・並列接続混在状態(図8に示される状態)および全並列接続状態(図示せず)に切り替えられることができる。
【0107】
(直列接続・並列接続混在状態)
図8を参照して、直列接続・並列接続混在状態においては、切り替えスイッチS11は端子C11および端子C12を開いている。切り替えスイッチS13は端子C13および端子C14を開いている。切り替えスイッチS15は端子C15および端子C16を開いている。切り替えスイッチS17は端子C15および端子C18を接続している。
【0108】
直列接続・並列接続混在状態においては、発熱素子30Bおよび発熱素子30Gは、交流電源3Rに電気的に接続されていない。発熱素子30Cおよび発熱素子30Dの接続状態は、並列接続となる。発熱素子30Eおよび発熱素子30Fの接続状態は、並列接続となる。これらの2つの並列接続同士は、切り替えスイッチS17によって直列に接続されている。直列接続・並列接続混在状態は、最大2250Wの発熱が可能となり、たとえば成膜プロセス時に使用されることができる。
【0109】
(全並列接続状態)
全並列接続状態(図示せず)においては、切り替えスイッチS11は端子C11および端子C12を接続する。切り替えスイッチS13は端子C13および端子C14を接続する。切り替えスイッチS15は端子C15および端子C16を接続する。切り替えスイッチS17は端子C17および端子C18を接続する。
【0110】
全並列接続状態においては、各発熱素子30A〜30H同士の接続状態はすべて並列接続となる。全並列接続状態は、最大6000Wの発熱が可能となり、たとえばプラズマ処理装置の立ち上げ時等に使用されることができる。
【0111】
(作用・効果)
本実施の形態における加熱装置201を備えたプラズマ処理装置においても、エンジンコントローラ3Tが、各発熱素子30A〜30Hの接続状態を直列接続・並列接続混在状態および全並列接続状態にそれぞれ変更する。当該変更によって、たとえばチャンバー1(図1参照)による脱熱(温度低下)に対し、発熱素子30B〜30Gが直列接続/並列接続およびON/OFFに切り替えられることによって、アノード電極2の全体としての温度(つまり、基板Sに対する加熱量)は、面方向において均一となる。
【0112】
加熱装置201が基板Sを面方向において均一に加熱することによって、均一な厚さを有する堆積膜が基板S上に成膜されたり、所望の特性を有する半導体素子SE(図1参照)が基板S上に形成されたりすることが可能となる。
【0113】
[実施例]
図9および図10を参照して、上述の実施の形態2における加熱装置201を備えたプラズマ処理装置を使用して行なった実施例について説明する。本実施例においては、プラズマ処理装置内において、1000mm×1400mmの基板Sをアノード電極2の表面2S上に配置した。
【0114】
加熱装置201を使用して基板Sを加熱しつつ、基板Sに対して成膜プロセスを実施した。なお、本実施例における成膜プロセス工程では、基板S上に接続した温度センサへの成膜を避けるために、SiH4などのガスを使用せずに、ArやHeなどの不活性ガスのみをプラズマ化することで、成膜せずに基板上の温度測定を行った。基板Sの温度が面方向において均一となるように、エンジンコントローラ3Tは直列接続・並列接続混在状態において、各発熱素子30A〜30Hの接続状態を直列状態/並列状態にそれぞれ変更した。
【0115】
図9に示すように、成膜プロセス時において、測定点(測定箇所)P1〜P5における基板Sの温度の経時的な変化を測定した。測定点P1は、基板Sの略中央部分に位置する。測定点P2は、基板Sの長辺側における端部中央付近に位置する。測定点P3は、基板Sの測定点P2とは反対側の長辺側における端部中央付近に位置する。測定点P4は、基板Sの短辺側における端部中央付近に位置する。測定点P5は、基板Sの角部付近に位置する。
【0116】
図10は、約3500秒の成膜プロセス時において、各測定点P1〜P5における基板Sの温度の経時的な変化を示す図である。各グラフ線(P1〜P5)から、各測定点P1〜P5における温度は、(次述する比較例に比べて)相互に略近似した状態で推移していることが読み取れる。エンジンコントローラ3Tが、成膜プロセス時において、各発熱素子30A〜30Hの接続状態を直列状態/並列状態にそれぞれ変更することによって、基板Sの端部と中央部との間の温度差がなくなり(または低減され)、温度分布が(次述する比較例に比べて)均一となっていることがわかる。
【0117】
[比較例]
図11および図12を参照して、上述の実施例に対する比較例について説明する。図11に示すように、当該比較例においては、発熱素子30A〜30Hのすべてが、常時接続状態となっている。当該構成は、上述の実施の形態2における全並列接続状態に相当する。
【0118】
図12は、上述の実施例と同様に、成膜プロセス時における基板S(各測定点P1〜P5)の温度の経時的な変化を示す図である。各グラフ線(P1〜P5)から、各測定点P1〜P5における温度は、上述の実施例(図10参照)と比較して図12上下方向にばらついた状態で推移していることが読み取れる。基板Sの端部と中央部との間に温度差が見られる。
【0119】
実施例および比較例の対比結果から、エンジンコントローラ3Tが、各発熱素子30A〜30Hの接続状態を直列接続・並列接続混在状態および全並列接続状態にそれぞれ変更することによって、アノード電極2の全体としての温度(つまり、基板Sに対する加熱量)は、面方向において均一となることがわかる。
【0120】
[他の実施例]
図13は、他の実施例として、上述の実施の形態2における全並列接続状態および直列接続・並列接続混在状態でそれぞれプラズマ処理装置100を立ち上げた時のアノード電極2の温度の経時的な変化を示している。
【0121】
図13に示すように、全並列接続状態(6000W)を示すグラフ線は、直列接続・並列接続混在状態(2250W)を示すグラフ線に比べて約1/3の時間で所望の設定温度に達していることがわかる。他の実施例における結果からも、プラズマ処理装置100の立ち上げ時には、エンジンコントローラ3Tは各発熱素子30A〜30Hを全並列接続状態に設定するとよいことがわかる。
【0122】
以上、本発明に基づいた各実施の形態および各実施例について説明したが、今回開示された各実施の形態および各実施例はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0123】
本発明における加熱装置は、どのようなプラズマ処理装置にも組み込まれることが可能である。本発明におけるプラズマ処理装置は、液晶パネル、太陽電池パネル、TFT素子、半導体デバイス、発光素子、または感光体などの電子デバイスの製造のために利用されることが可能である。本発明における半導体素子の形成方法は、液晶パネル、太陽電池パネル、TFT素子、半導体デバイス、発光素子、または感光体などの電子デバイスの製造に使用されることが可能である。
【符号の説明】
【0124】
1 チャンバー、1X,1Y 内壁、2 アノード電極、2A 上部体、2B 下部体、2M アノード電極支持体、2S 表面、2X,2Y 端面、3 発熱体、3A,3B,3C,3D,30A,30B,30C,30D,30E,30F,30G,30H 発熱素子(電気抵抗ヒータ)、3A1,3A2,3B1,3B2,3C1,3C2,3D1,3D2 延在部、3R 交流電源(電力供給手段)、3T エンジンコントローラ(接続状態変更手段)、4 カソード電極、4M カソード電極支持体、4R プラズマ励起電源、4S 表面、4T インピーダンス整合器、5M 保持脚、5 内部構造体、6 ガス導入部(反応性ガス供給手段)、7 排気管、7A 圧力制御器、7B 真空ポンプ、7C 除害装置、8 温度センサ(温度検出手段)、31 第1発熱部、32 第2発熱部、100 プラズマ処理装置、200,201 加熱装置、C1〜C6,C11〜C18 端子、LX,LY 間隔、P1〜P5 測定点、R 抵抗値、R1,R2 リレー、S 基板(被加熱物)、S1,S3,S11,S13,S15,S17 切り替えスイッチ、S5 主電流ON/OFFスイッチ、SE 半導体素子、SM 基板保持部材、ST1〜ST8 ステップ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面上に被加熱物が配置される板状部材と、
前記表面に沿うように配設され、前記表面上に配置された前記被加熱物を加熱する4つの発熱素子と、
4つの前記発熱素子に接続された電力供給手段と、
4つのうちいずれか同士または複数同士の前記発熱素子の接続状態を直列接続および並列接続にそれぞれ変更する接続状態変更手段と、
4つのうちいずれかまたは複数の前記発熱素子の温度を検出する温度検出手段と、を備え、
前記接続状態変更手段は、前記温度検出手段が検出した前記発熱素子の温度に基づいて、前記被加熱物に対する加熱量が面方向において均一となるように、4つのうちいずれか同士または複数同士の前記発熱素子の接続状態を直列接続および並列接続にそれぞれ変更する、
加熱装置。
【請求項2】
4つの前記発熱素子は、2つの前記発熱素子を含む第1発熱部と、前記第1発熱部の外側に位置し他の2つの前記発熱素子を含む第2発熱部と、を有し、
前記第1発熱部は、前記被加熱物の中央側の部分を加熱し、
前記第2発熱部は、前記被加熱物の外周側の部分を加熱する、
請求項1に記載の加熱装置。
【請求項3】
前記第1発熱部における接続状態は、前記被加熱物が所望の温度に到達するまで加熱される際には、前記接続状態変更手段によって並列接続に設定され、
前記被加熱物が所望の温度に到達した後は、前記第1発熱部における接続状態は、前記被加熱物に対する加熱量が略一定となるように前記接続状態変更手段によって並列接続および直列接続が切り替えられる、
請求項2に記載の加熱装置。
【請求項4】
前記第2発熱部における接続状態は、常時並列接続である、
請求項2または3に記載の加熱装置。
【請求項5】
4つのうちいずれかまたは複数の前記発熱素子は、電気抵抗ヒータから構成される、
請求項1から4のいずれかに記載の加熱装置。
【請求項6】
4つの前記発熱素子における個々の消費電力は略同一である、
請求項1から5のいずれかに記載の加熱装置。
【請求項7】
4つの前記発熱素子の各々は、前記板状部材の前記表面に沿って延びる延在部を含み、
4つの前記発熱素子の各々は、前記延在部が同一平面上において相互に等間隔かつ平行となるように配置されている、
請求項1から6のいずれかに記載の加熱装置。
【請求項8】
前記接続状態変更手段は、4つのうちいずれか同士または複数同士の前記発熱素子の接続状態を、スイッチまたはリレーによって直列接続および並列接続にそれぞれ変更する、
請求項1から7のいずれかに記載の加熱装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載の加熱装置と、
内部を密封可能なチャンバーと、
前記チャンバー内に反応性ガスを供給する反応性ガス供給手段と、
前記反応性ガスをプラズマ放電させるカソード電極およびアノード電極と、を備え、
前記加熱装置における前記板状部材は、前記カソード電極または前記アノード電極であり、
前記被加熱物は、半導体基板である、
プラズマ処理装置。
【請求項10】
請求項9に記載のプラズマ処理装置を使用して、前記半導体基板の表面に半導体素子を形成する工程を備える、
半導体素子の形成方法。
【請求項1】
表面上に被加熱物が配置される板状部材と、
前記表面に沿うように配設され、前記表面上に配置された前記被加熱物を加熱する4つの発熱素子と、
4つの前記発熱素子に接続された電力供給手段と、
4つのうちいずれか同士または複数同士の前記発熱素子の接続状態を直列接続および並列接続にそれぞれ変更する接続状態変更手段と、
4つのうちいずれかまたは複数の前記発熱素子の温度を検出する温度検出手段と、を備え、
前記接続状態変更手段は、前記温度検出手段が検出した前記発熱素子の温度に基づいて、前記被加熱物に対する加熱量が面方向において均一となるように、4つのうちいずれか同士または複数同士の前記発熱素子の接続状態を直列接続および並列接続にそれぞれ変更する、
加熱装置。
【請求項2】
4つの前記発熱素子は、2つの前記発熱素子を含む第1発熱部と、前記第1発熱部の外側に位置し他の2つの前記発熱素子を含む第2発熱部と、を有し、
前記第1発熱部は、前記被加熱物の中央側の部分を加熱し、
前記第2発熱部は、前記被加熱物の外周側の部分を加熱する、
請求項1に記載の加熱装置。
【請求項3】
前記第1発熱部における接続状態は、前記被加熱物が所望の温度に到達するまで加熱される際には、前記接続状態変更手段によって並列接続に設定され、
前記被加熱物が所望の温度に到達した後は、前記第1発熱部における接続状態は、前記被加熱物に対する加熱量が略一定となるように前記接続状態変更手段によって並列接続および直列接続が切り替えられる、
請求項2に記載の加熱装置。
【請求項4】
前記第2発熱部における接続状態は、常時並列接続である、
請求項2または3に記載の加熱装置。
【請求項5】
4つのうちいずれかまたは複数の前記発熱素子は、電気抵抗ヒータから構成される、
請求項1から4のいずれかに記載の加熱装置。
【請求項6】
4つの前記発熱素子における個々の消費電力は略同一である、
請求項1から5のいずれかに記載の加熱装置。
【請求項7】
4つの前記発熱素子の各々は、前記板状部材の前記表面に沿って延びる延在部を含み、
4つの前記発熱素子の各々は、前記延在部が同一平面上において相互に等間隔かつ平行となるように配置されている、
請求項1から6のいずれかに記載の加熱装置。
【請求項8】
前記接続状態変更手段は、4つのうちいずれか同士または複数同士の前記発熱素子の接続状態を、スイッチまたはリレーによって直列接続および並列接続にそれぞれ変更する、
請求項1から7のいずれかに記載の加熱装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載の加熱装置と、
内部を密封可能なチャンバーと、
前記チャンバー内に反応性ガスを供給する反応性ガス供給手段と、
前記反応性ガスをプラズマ放電させるカソード電極およびアノード電極と、を備え、
前記加熱装置における前記板状部材は、前記カソード電極または前記アノード電極であり、
前記被加熱物は、半導体基板である、
プラズマ処理装置。
【請求項10】
請求項9に記載のプラズマ処理装置を使用して、前記半導体基板の表面に半導体素子を形成する工程を備える、
半導体素子の形成方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−89653(P2012−89653A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−234565(P2010−234565)
【出願日】平成22年10月19日(2010.10.19)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月19日(2010.10.19)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
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