説明

加熱調理器、電磁誘導調理器およびそのプログラム

【課題】調理性能を向上させるとともに、被加熱物から加熱手段へ滴下した油や受け皿に貯まった油の発火を抑える加熱調理器を提供することを目的とする。
【解決手段】載置台102上の被加熱物101を収容する調理室103と、被加熱物を加熱する加熱手段104と、被加熱物の油を受ける受け皿105と、調理室外に出した加熱手段の表面温度を検出する温度検出手段106と、温度検出手段が検出する温度を制御する電力制御手段107とを備え、電力制御手段107は、通電加熱開始からの経過時間に従って調理室外の加熱手段の表面温度を下げて調理室中の加熱手段の表面温度を一定に保つよう制御するものである。これによって、調理室中の加熱手段の表面温度を高精度で一定温度に制御することが可能となり、調理性能を向上させるとともに、被加熱物から加熱手段へ滴下した油や受け皿に貯まった油の発火を抑えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱手段の表面温度を高精度で制御することで、調理性能を向上させ、特に受け皿に水を入れないものにおいては被加熱物から滴下した油の発火を抑える加熱調理器、電磁誘導調理器およびそのプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、一般的にロースタは、被加熱物からの油を受ける受け皿を備えている(例えば、特許文献1参照)。そして、受け皿には水を入れて使用するものが多かったが、水の入った厚みの無い受け皿を調理室に入れる作業は手間がかかるため、近年では受け皿の冷却手段を備えたり、受け皿に熱反射率の高い表面処理を行ったりすることで、受け皿に水を入れること無く調理可能な加熱調理器が数多く現れている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特許第3236436号公報
【特許文献2】特開2003−208969号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記従来の構成では、加熱手段の表面温度を精度良く制御できないため、被加熱物から滴下した油が高温の加熱手段に当たり発火し、被加熱物が焦げるなどして調理性能が落ちるという課題があった。また、受け皿に水を入れない加熱調理器の場合、種々工夫されていても加熱手段の表面温度を精度良く制御できないと、受け皿に貯まった油が発火、引火し、被加熱物がこげるなどして調理性能が落ちるという課題があった。
【0004】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、加熱手段の表面温度を高精度で制御することで、調理性能を向上させるとともに、被加熱物から加熱手段へ滴下した油や受け皿に貯まった油の発火を抑える加熱調理器、電磁誘導調理器およびそのプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記従来の課題を解決するために、本発明の加熱調理器、電磁誘導調理器およびそのプログラムは、載置台上の被加熱物を収容する調理室と、前記被加熱物を加熱する加熱手段と、前記被加熱物の油を受ける受け皿と、前記調理室外に出した前記加熱手段の表面温度を検出する温度検出手段と、前記温度検出手段が検出する温度を制御する電力制御手段とを備え、前記電力制御手段は、通電加熱開始からの経過時間に従って調理室外の加熱手段の表面温度を下げて調理室中の加熱手段の表面温度を一定に保つよう制御するものである。
【0006】
これによって、調理室中の加熱手段の表面温度を高精度で一定温度に制御することが可能となり、調理性能を向上させるとともに、被加熱物から加熱手段へ滴下した油や受け皿に貯まった油の発火を抑えることができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の加熱調理器、電磁誘導調理器およびそのプログラムは、調理性能を向上させるとともに、被加熱物から加熱手段へ滴下した油や受け皿に貯まった油の発火を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
第1の発明は、載置台上の被加熱物を収容する調理室と、前記被加熱物を加熱する加熱手段と、前記被加熱物の油を受ける受け皿と、前記調理室外に出した前記加熱手段の表面温度を検出する温度検出手段と、前記温度検出手段が検出する温度を制御する電力制御手段とを備え、前記電力制御手段は、通電加熱開始からの経過時間に従って調理室外の加熱手段の表面温度を下げて調理室中の加熱手段の表面温度を一定に保つよう制御する加熱調理器とするものである。これによって、調理室中の加熱手段の表面温度を高精度で一定温度に制御することが可能となり、調理性能を向上させるとともに、被加熱物から加熱手段へ滴下した油や受け皿に貯まった油の発火を抑えることができる。
【0009】
第2の発明は、特に、第1の発明において、加熱手段は、被加熱物の上面を加熱する上面加熱手段と、被加熱物の下面を加熱する下面加熱手段とを有し、電力制御手段は、上面加熱手段と下面加熱手段のうち少なくとも下面加熱手段の表面温度を一定に保つよう制御することにより、被加熱物は上面加熱手段と下面加熱手段により上下より加熱され、第1の発明と同様、調理性能を向上させるとともに、被加熱物から加熱手段へ滴下した油や受け皿に貯まった油の発火を抑えることができる。
【0010】
第3の発明は、特に、第1または第2の発明において、加熱手段への通電開始からの経過時間を測定する計時手段と、所定の時間が経過するまでは温度検出手段が検出する温度によらず加熱手段へ所定の電力で通電する所定電力通電制御手段とを備えたことにより、加熱手段に適切な電力を通電させることができる。例えば、通電開始直後にいち早く加熱手段を所定の温度まで上昇させたい場合は、加熱手段に通電する所定の電力と、所定の電力で通電した時に所望する温度に上昇するまでの時間を予め所定電力通電制御手段に記憶させ制御することで適切な電力を通電させることができる。
【0011】
第4の発明は、第1または第2の発明において、加熱手段へ通電した積算電力を検出する積算電力検出手段と、所定の積算電力に達するまでは温度検出手段が検出する温度によらず加熱手段へ所定の電力で通電する所定電力通電制御手段とを備えたことにより、加熱手段に適切な電力を通電させることができる。例えば、通電開始直後にいち早く加熱手段を所定の温度まで上昇させたい場合は、加熱手段に通電する所定の電力と、所定の電力で通電した時に所望する温度に上昇するまでの積算電力を予め所定電力通電制御手段に記憶させ制御することで適切な電力を通電させることができる。
【0012】
第5の発明は、特に、第1〜第4のいずれか1つの発明において、載置台上の被加熱物の負荷量を検出する負荷量検出手段と、前記負荷量検出手段が所定以上の負荷量を検出した場合には電力制御手段が制御する温度を上昇させ、前記負荷量検出手段が所定以下の負荷量を検出した場合には電力制御手段が制御する温度を下降させる負荷量温度変更手段とを備えたことにより、被加熱物の負荷量によらず加熱手段の表面温度を所定温度に保つことができる。すなわち、調理室外の加熱手段の表面温度は被加熱物の影響を受けないのに対して、調理室中の加熱手段の表面温度は影響を受けるので、被加熱物の負荷量が高い場合と低い場合とでは、温度検出手段が同じ温度を検出しても、調理室中の加熱手段の表面温度は、被加熱物の負荷量が高い場合は低く、低い場合は高くなるが、本発明では被加熱物の負荷量によらず加熱手段の表面温度を所定温度に保つことができる。
【0013】
第6の発明は、特に、第1〜第5のいずれか1つの発明において、加熱手段に通電した電力を検出する電力検出手段と、前記電力検出手段が所定の電力より小さい電力を検出した場合には電力制御手段が制御する温度を上昇させ、前記電力検出手段が所定の電力より大きい電力を検出した場合には電力制御手段が制御する温度を下降させる電力温度変更手段とを備えたことにより、加熱手段の消費電力のばらつきおよび電源電圧のばらつきによらず加熱手段の表面温度を所定の温度に保つことができる。
【0014】
第7の発明は、特に、第1〜第6のいずれか1つの発明において、加熱手段の表面温度は被加熱物からの油が発火しない一定温度に制御することにより、調理性能を向上させるとともに、被加熱物から加熱手段へ滴下した油や受け皿に貯まった油の発火を抑えることができる。具体的には、加熱手段の表面温度を400℃〜500℃に制御することで、被加熱物から滴下した油が加熱手段に当たっても発火せず、また受け皿の温度も十分低くなるため、受け皿に貯まった油が発火、引火する危険性がなく、安全性を増すことができる。
【0015】
第8の発明は、特に、第1〜第7のいずれか1つの発明において、受け皿の水の有無を検出する水検出手段と、前記水検出手段が水有りと検出した場合には、水無しの場合に比べて電力制御手段が制御する温度を上昇させる水有無温度変更手段とを備えたことにより、受け皿の水の有無によらず調理性能を確保することができる。すなわち、調理室外の加熱手段の表面温度は受け皿の水の有無による影響を受けないのに対して、調理室中の加熱手段の表面温度は影響を受ける。つまり、水が有る場合と無い場合とでは、温度検出手段が同じ温度を検出しても、調理室中の加熱手段の表面温度は、水有りの場合は低く、水無しの場合は高くなるが、本発明では、受け皿の水の有無によらず調理性能を確保することができる。
【0016】
第9の発明は、特に、第1〜第8のいずれか1つの発明において、温度検出手段は加熱手段の発熱部に備えたことにより、発熱部からの熱伝導により温度検出は反応遅れがなく、精度良く検出することができない。
【0017】
第10の発明は、特に、第1〜第9のいずれか1つの発明における加熱調理器を搭載した電磁誘導調理器とすることにより、フライパンや鍋などを加熱調理する電磁誘導調理器において焼き魚などのメニューが調理可能となり家庭内での調理の幅を広くすることができる。
【0018】
第11の発明は、特に、第1〜第10のいずれか1つの発明における加熱調理器または電磁誘導調理器の機能の少なくとも1部をコンピュータに実行させるためのプログラムとすることにより、プログラムであるので、電気・情報機器、コンピュータ、サーバなどのハードリソースを協働させて加熱調理器の少なくとも一部を容易に実現することができる。また記録媒体に記録したり通信回線を用いてプログラムを配信したりすることでプログラムの配布・更新やそのインストール作業が簡単にできる。
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0020】
(実施の形態1)
図1、図2は、本発明の実施の形態1における加熱調理器を示している。
【0021】
図1に示すように、本実施の形態における加熱調理器は、載置台102上の被加熱物101を収容する調理室103と、被加熱物101を下方から加熱する加熱手段104と、被加熱物101から滴下する油を受ける受け皿105と、調理室103外に出した加熱手段104の表面温度を検出する温度検出手段106と、温度検出手段106が検出する温度を制御する電力制御手段107とを備えている。
【0022】
そして、電力制御手段107は、通電加熱開始からの経過時間に従って調理室103外の加熱手段104の表面温度を下げて調理室103中の加熱手段104の表面温度を一定に保つよう制御するものである。
【0023】
また、加熱調理器は、前記各要素に加え、加熱手段104へ通電開始からの経過時間を測定する計時手段108と、所定の時間が経過するまでは温度検出手段106が検出する温度によらず加熱手段104へ所定の電力で通電する所定電力通電制御手段109と、載置台102上の被加熱物101の負荷量を検出する負荷量検出手段110とを備えている。さらに、負荷量検出手段110が所定以上の負荷量を検出した場合には電力制御手段107が制御する温度を上昇させ負荷量検出手段110が所定以下の負荷量を検出した場合には電力制御手段107が制御する温度を下降させる負荷量温度変更手段111と、加熱手段104に通電した電力を検出する電力検出手段112とを備えている。さらにまた、電力検出手段112が所定の電力より小さい電力を検出した場合には電力制御手段107が制御する温度を上昇させ、電力検出手段112が所定の電力より大きい電力を検出した場合には電力制御手段107が制御する温度を下降させる電力温度変更手段113と、加熱調理器を制御する加熱調理器制御手段114とを備えている。
【0024】
なお、載置台102には焼き網を、調理室103には金属製箱を、加熱手段104にはシーズヒータを、受け皿105には金属皿を、温度検出手段106、負荷量検出手段110にはサーミスタを、電力制御手段107、計時手段108、所定電力通電制御手段109、負荷量温度変更手段111、電力温度変更手段113、加熱調理器制御手段114にはマイクロコンピュータを、電力検出手段112には電力計を用いることでこの構成を容易に実現できる。
【0025】
次に、図2に基づき、本実施の形態における動作シーケンスについて説明する。
【0026】
ユーザは被加熱物101を載置台102の上に載置して調理室103の中に入れた後、調理開始手段(図は省略)を用いて調理開始操作を行う(S101)。
【0027】
調理開始直後は加熱手段104の表面温度が十分に上昇していないので、それまでは電力を制限すること無くフル通電したい場合には、フル通電時の電力(電力A)と、加熱手段104に電力Aで通電した時に所望する温度に上昇するまでの時間Aを予め所定電力通電制御手段109に記憶させておく。
【0028】
S101で調理開始操作を受け付けると加熱調理器制御手段114は所定電力通電制御手段109を動作させ、所定電力通電制御手段109は加熱手段104を電力Aで通電加熱を開始する(S102)。
【0029】
所定電力通電制御手段109は計時手段108によりS102からの経過時間を取得し、時間A経過の真偽を判断し、経過するまで待つ(S103)。
【0030】
時間Aを経過した場合、加熱調理器制御手段114は負荷量温度変更手段111を動作させ、負荷量検出手段110を用いて被加熱物101の負荷量を取得する(S104)。負荷量検出手段110をサーミスタとした場合は、負荷量検出手段110を用いて調理室103の雰囲気温度を取得し、所定時間の加熱での温度勾配により被加熱物101の負荷量を検出する。
【0031】
負荷量温度変更手段111はS104で取得した被加熱物101の負荷量より、温度Aを決定する(S105)。
【0032】
負荷量温度変更手段111には、予め被加熱物101の負荷量に対応する温度A、温度Bを(表1)に示すテーブルとして記憶させておく。
【0033】
【表1】

【0034】
調理室103中の加熱手段104の表面温度を精度良く一定に保つには、制御する調理室103外の加熱手段104の表面温度をS102からの経過時間に従って下げる必要がある。ここで時間Cを制御する調理室103外の加熱手段104の表面温度を下げるのに適切な時間(例えば、時間Bの1/2)とする。
【0035】
そして、温度Aは、時間C経過以前に調理室103外に出した加熱手段104の表面温度を温度Aに保った時に調理室103中の加熱手段104の表面温度を所望する温度に保つ温度であり、温度Bは、時間C経過以降に調理室103外に出した加熱手段104の表面温度を温度Aに保った時に調理室103中の加熱手段104の表面温度を所望する温度に保つ温度である。温度Bは温度Aより低い温度とする。
【0036】
その後、加熱調理器制御手段114は計時手段108によりS102からの経過時間を取得し、時間B経過の真偽を判断する(S106)。ここで時間Bは通電加熱終了時間であり、予め加熱調理器制御手段114に記憶させておく。また、負荷量検出手段110が検出する被加熱物101の負荷量により時間Bを決定するよう構成してもよい。
【0037】
S106で時間Bを経過していなかった場合は、加熱調理器制御手段114は電力制御手段107を動作させる。電力制御手段107は温度検出手段106から調理室103外に出した加熱手段104の表面温度を取得する(S107)。
【0038】
そして、加熱調理器制御手段114は計時手段108によりS102からの経過時間を取得し、時間C経過の真偽を判断する(S108)。
【0039】
時間Cを経過していない場合、加熱調理器制御手段114は電力制御手段107を動作させる。電力制御手段107はS107で取得した温度が、温度A以上か否かを判断する(S109)。
【0040】
温度A以上の場合は、電力制御手段107は加熱手段104を電力Bで通電し(S110)、温度A以下の場合は、電力Cで通電する(S111)。電力Bは温度検出手段106が検出する温度を温度Aで保つ電力で、電力Cは電力Bと比べて少し高い電力とする。電力B、電力Cは予め電力制御手段107に記憶させておく。加熱手段104へ通電する電力を変化させるには位相制御またはPWM(Pulse Width Modulation)制御を用いる。
【0041】
その後に、加熱調理器制御手段114は電力温度変更手段113を動作させる。電力温度変更手段113は電力検出手段112からS110/S111で通電した電力を取得する(S112)。S112で取得した電力は実際に通電した電力であり、電力B/電力Cは出力しようとした電力である。
【0042】
電力温度変更手段113は取得した電力が電力B/電力Cと差が無いか判定し、差が大きい場合は、加熱調理器制御手段114は調理室103外に出した加熱手段104の表面温度を変更し電力B/電力Cと差が無くなるよう調整する(S113)。
【0043】
S108で時間Cを経過した場合には、S114〜S118においてS109〜S113と同様の処理を行う。
【0044】
S106で時間Bを経過したら加熱調理器制御手段114は加熱手段104への通電を停止し(S119)、調理を終了する(S120)。
【0045】
以上のように、本実施の形態では、温度検出手段106が調理室103外に出した加熱手段104の表面温度を検出するようにしているため、調理室103内の加熱手段104の表面温度を精度良く一定温度に制御することが可能となる。すなわち、調理室103中の加熱手段104は、調理室103で覆われているのに対し、調理室外の加熱手段104は覆われていないような場合、あるいは調理室103内に加熱手段104の他に発熱物がある構成の場合、調理室103外に出した加熱手段104の表面温度を一定に保つと、調理室103中の加熱手段104の表面温度は、通電加熱開始からの経過時間に伴って上がってしまう。これは調理室103内の保温効果が大きいのに対し、調理室103外は保温効果が小さいからである。そこで、温度検出手段106は調理室103外に出した加熱手段104の表面温度を検出することで、調理室103内の加熱手段104の表面温度を精度良く一定温度に制御することが可能となる。これにより、被加熱物101の油が滴下しても発火しない温度になるよう制御することによって発火を防ぎ、発火によって被加熱物101が焦げることがなくなり調理性能を向上させることができる。
【0046】
また、受け皿105は、加熱手段104の熱を受けて温度上昇するが、加熱手段104の表面温度を、受け皿105に貯まった油が発火、引火しない温度(例えば250℃)になるよう制御することで、受け皿105に貯まった油が発火、引火する危険性がなく、安全性を増すことができる。
【0047】
具体的には、電力制御手段107/所定電力通電制御手段109/負荷量温度変更手段111/電力温度変更手段113を用いて加熱手段104の表面温度を、被加熱物101からの油が発火しない一定温度、すなわち、400℃〜500℃に制御するよう構成することにより、被加熱物101から滴下した油は発火せず、また受け皿105の温度も十分低くなるため、受け皿105に貯まった油が発火、引火する危険性をなくすことができる。
【0048】
また、本実施の形態では、温度Aから温度Bへ2段階に温度を下げているが、2段階以上に温度を下げるよう構成してもよい。これによって、調理室103内の加熱手段104の表面温度をより精度良く一定温度に制御することが可能となる。
【0049】
また、温度検出手段106は調理室103外に出した加熱手段104の発熱部に精度良く温度を検出するように備えている。これは、例えば、加熱手段104をシーズヒータとした場合、加熱手段104の両端は非発熱部であり、加熱手段104の端に温度検出手段106を備えるよう構成すると、発熱部からの熱伝導により温度検出は可能ではあるが、反応が遅れるため、精度良く温度を検出することができない。しかしながら、本実施の形態では、温度検出手段106を調理室103外に出した加熱手段104の発熱部に直接接触させて設けるか、あるいは銅板などを介して間接的に接触させて設けるようにして、検出精度の向上をはかっている。
【0050】
(実施の形態2)
図3、図4は、本発明の実施の形態2における加熱調理器を示している。実施の形態1と同一要素については同一符号を付してその説明を省略する。
【0051】
図3に示すように、本実施の形態における加熱調理器の加熱手段は、被加熱物101の上面を加熱する上面加熱手段201と、被加熱物101の下面を加熱する下面加熱手段202とを有し、電力制御手段107は、下面加熱手段202の表面温度を一定に保つよう制御するようにしたものである。なお、上面加熱手段201は、ここでは、最初にオン、最後にオフするような単純な制御にしているが、これに限らず、電力制御手段107により下面加熱手段202と同様な制御をするようにしてもよいし、その他の制御をするようにしてもよい。
【0052】
また、本実施の形態における加熱調理器は、下面加熱手段202へ通電開始からの下面加熱手段202に通電した積算電力を検出する積算電力検出手段203と、所定の積算電力に達するまでは温度検出手段106が検出する温度によらず下面加熱手段202へ所定の電力で通電する所定電力通電制御手段204と、受け皿105の水の有無を検出する水検出手段205と、水検出手段205が水有りと検出した場合には、水無しの場合に比べて電力制御手段107が制御する温度を上昇させる水有無温度変更手段206とを備えている。他の手段については実施の形態1と同じである。
【0053】
なお、上面加熱手段201、下面加熱手段202にはシーズヒータを、積算電力検出手段203には電力計を、電力制御手段107、所定電力通電制御手段204、水有無温度変更手段206にはマイクロコンピュータを、温度検出手段106、水検出手段205にはサーミスタを用いることでこの構成を容易に実現できる。
【0054】
次に、図4に基づき、本実施の形態における動作シーケンスについて説明する。
【0055】
ユーザは被加熱物101を載置台102の上に載置して調理室103の中に入れた後、調理開始手段(図は省略)を用いて調理開始操作を行う(S201)。
【0056】
調理開始直後は下面加熱手段202の表面温度が十分に上昇していないので、それまでは電力を制限すること無くフル通電したい場合には、フル通電時の電力(電力A)と、下面加熱手段202に電力Aで通電した時に所望する温度に上昇するまでの積算電力Aを予め所定電力通電制御手段204に記憶させておく。
【0057】
S101で調理開始操作を受け付けると、加熱調理器制御手段114は上面加熱手段201の通電加熱を開始し(S202)、同時に加熱調理器制御手段114は所定電力通電制御手段204を動作させ、所定電力通電制御手段204は下面加熱手段202を電力Aで通電加熱する(S203)。
【0058】
その後、所定電力通電制御手段204は積算電力検出手段203によりS101からの積算電力を取得し、積算電力A超過の真偽を判断し、経過するまで待つ(S204)。
【0059】
積算電力Aを超過した場合、加熱調理器制御手段114は水有無温度変更手段206を動作させ、水検出手段205を用いて受け皿105の水の有無を検出する(S205)。水検出手段205をサーミスタとした場合は、受け皿105に水を入れずに所定積算電力/所定時間加熱した場合に水検出手段205が検出する温度を判断温度として予め水有無温度変更手段206に記憶させておく。そして、S205で検出した温度が前記判断温度以上であれば水無しの判断をし、前記判断温度未満であれば水有りの判断をする。
【0060】
水有無温度変更手段206はS205で検出した受け皿105の水の有無により、温度A、温度Bを決定する(S206)。水有無温度変更手段206には受け皿105の水の有無に対応する温度A、温度Bを(表2)に示すテーブルとして記憶させておく。
【0061】
【表2】

【0062】
調理室103中の下面加熱手段202の表面温度を精度良く一定に保つには、制御する調理室103外の下面加熱手段202の表面温度をS203からの経過時間に従って下げる必要がある。ここで積算電力Cを制御する調理室103外の加熱手段104の表面温度を下げるのに適切な時間を経過する時の積算電力とする。
【0063】
そして温度Aは、積算電力C経過以前に調理室103の外に出した下面加熱手段202の表面温度を温度Aに保った時に調理室103中の下面加熱手段202の表面温度を所望する温度に保つ温度であり、温度Bは、積算電力C経過以降に調理室103外に出した下面加熱手段202の表面温度を温度Aに保った時に調理室103中の下面加熱手段202の表面温度を所望する温度に保つ温度である。温度Bは温度Aより低い温度とする。
【0064】
その後、加熱調理器制御手段114は積算電力検出手段203によりS201からの積算電力を取得し、積算電力B超過の真偽を判断する(S207)。ここで積算電力Bは通電加熱終了時の積算電力であり、予め加熱調理器制御手段114に記憶させておく。また、水検出手段205が検出する受け皿105の水の有無により積算電力Bを決定するよう構成してもよい。
【0065】
S207で積算電力Bを超過していなかった場合は、加熱調理器制御手段114は電力制御手段107を動作させる。電力制御手段107は温度検出手段106から調理室103外に出した下面加熱手段202の表面温度を取得する(S208)。
【0066】
そして、加熱調理器制御手段114は積算電力検出手段203によりS201からの積算電力を取得し、積算電力C超過の真偽を判断する(S209)。
【0067】
積算電力Cを超過していない場合、加熱調理器制御手段114は電力制御手段107を動作させる。電力制御手段107はS208で取得した温度が、温度A以上か否かを判断する(S210)。
【0068】
温度A以上の場合は、電力制御手段107は下面加熱手段202を電力Bで通電し(S211)、温度A以下の場合は、電力Cで通電する(S212)。電力Bは温度検出手段106が検出する温度を温度Aで保つ電力で、電力Cは電力Bと比べて少し高い電力とする。電力B、電力Cは予め電力制御手段107に記憶させておく。下面加熱手段202へ通電する電力を変化させるには位相制御またはPWM制御を用いる。
【0069】
S209で積算電力Cを超過した場合には、S213〜S215において、S210〜S112と同様の処理を行う。
【0070】
S207で積算電力Bを超過したら加熱調理器制御手段114は上面加熱手段201と下面加熱手段202への通電を停止し(S216、S217)、調理を終了する(S218)。
【0071】
以上のように、本実施の形態では、実施の形態1と同様、温度検出手段106が調理室103外に出した下面加熱手段202の表面温度を検出するようにしているため、調理室103内の下面加熱手段202の表面温度を精度良く一定温度に制御することが可能となる。
【0072】
また、電力制御手段107/所定電力通電制御手段204を用いて下面加熱手段202の表面温度を400℃〜500℃で制御するよう構成することにより、被加熱物101から下面加熱手段202に滴下した油は発火せず、また受け皿105の温度も十分低くなるため(例えば250℃)、受け皿105に貯まった油が発火、引火する危険性をなくすことができる。
【0073】
また、本実施の形態では、温度Aから温度Bへ2段階に温度を下げているが、2段階以上に温度を下げるよう構成してもよい。これによって、調理室103内の加熱手段104の表面温度をより精度良く一定温度に制御することが可能となる。
【0074】
また、実施の形態1と同様、温度検出手段106は、調理室103外に出した下面加熱手段202の発熱部に精度良く温度を検出するように備えている。
【0075】
上記した各実施の形態1、2における加熱調理器を搭載した電磁誘導調理器とすることにより、フライパンや鍋などを加熱調理する電磁誘導調理器において焼き魚などのメニューが調理可能となり家庭内での調理の幅を広くすることができる。
【0076】
また、各実施の形態1、2で説明した手段は、CPU(またはマイクロコンピュータ)、RAM、ROM、記憶・記録装置、I/Oなどを備えた電気・情報機器、コンピュータ、サーバなどのハードリソースを協働させるプログラムの形態で実施してもよい。プログラムの形態であれば、磁気メディアや光メディアなどの記録媒体に記録したりインターネットなどの通信回線を用いて配信したりすることで新しい機能の配布・更新やそのインストール作業が簡単にできる。
【0077】
また、各実施の形態1、2の構成は、必要に応じて適宜組み合わせることができるものであり、実施の形態そのものに限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0078】
以上のように、本発明にかかる加熱調理器、電磁誘導調理器およびそのプログラムは、調理性能を向上させるとともに、被加熱物から加熱手段へ滴下した油や受け皿に貯まった油の発火を抑えることができるので、ロースタ、グリル、電子レンジ、オーブンなどの加熱調理器にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の実施の形態1における加熱調理器を概略的に示す構成図
【図2】同加熱調理器の動作シーケンスを示す図
【図3】本発明の実施の形態2における加熱調理器を概略的に示す構成図
【図4】同加熱調理器の動作シーケンスを示す図
【符号の説明】
【0080】
101 被加熱物
102 載置台
103 調理室
104 加熱手段
105 受け皿
106 温度検出手段
107 電力制御手段
108 計時手段
109、204 所定電力通電制御手段
110 負荷量検出手段
111 負荷量温度変更手段
112 電力検出手段
113 電力温度変更手段
201 上面加熱手段
202 下面加熱手段
203 積算電力検出手段
205 水検出手段
206 水有無温度変更手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
載置台上の被加熱物を収容する調理室と、前記被加熱物を加熱する加熱手段と、前記被加熱物の油を受ける受け皿と、前記調理室外に出した前記加熱手段の表面温度を検出する温度検出手段と、前記温度検出手段が検出する温度を制御する電力制御手段とを備え、前記電力制御手段は、通電加熱開始からの経過時間に従って調理室外の加熱手段の表面温度を下げて調理室中の加熱手段の表面温度を一定に保つよう制御する加熱調理器。
【請求項2】
加熱手段は、被加熱物の上面を加熱する上面加熱手段と、被加熱物の下面を加熱する下面加熱手段とを有し、電力制御手段は、上面加熱手段と下面加熱手段のうち少なくとも下面加熱手段の表面温度を一定に保つよう制御する請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項3】
加熱手段への通電開始からの経過時間を測定する計時手段と、所定の時間が経過するまでは温度検出手段が検出する温度によらず加熱手段へ所定の電力で通電する所定電力通電制御手段とを備えた請求項1または2に記載の加熱調理器。
【請求項4】
加熱手段へ通電した積算電力を検出する積算電力検出手段と、所定の積算電力に達するまでは温度検出手段が検出する温度によらず加熱手段へ所定の電力で通電する所定電力通電制御手段とを備えた請求項1または2に記載の加熱調理器。
【請求項5】
載置台上の被加熱物の負荷量を検出する負荷量検出手段と、前記負荷量検出手段が所定以上の負荷量を検出した場合には電力制御手段が制御する温度を上昇させ、前記負荷量検出手段が所定以下の負荷量を検出した場合には電力制御手段が制御する温度を下降させる負荷量温度変更手段とを備えた請求項1〜4のいずれか1項に記載の加熱調理器。
【請求項6】
加熱手段に通電した電力を検出する電力検出手段と、前記電力検出手段が所定の電力より小さい電力を検出した場合には電力制御手段が制御する温度を上昇させ、前記電力検出手段が所定の電力より大きい電力を検出した場合には電力制御手段が制御する温度を下降させる電力温度変更手段とを備えた請求項1〜5のいずれか1項に記載の加熱調理器。
【請求項7】
加熱手段の表面温度は被加熱物からの油が発火しない一定温度に制御する請求項1〜6のいずれか1項に記載の加熱調理器。
【請求項8】
受け皿の水の有無を検出する水検出手段と、前記水検出手段が水有りと検出した場合には、水無しと検出した場合に比べて電力制御手段が制御する温度を上昇させる水有無温度変更手段とを備えた請求項1〜7のいずれか1項に記載の加熱調理器。
【請求項9】
温度検出手段は加熱手段の発熱部に備えた請求項1〜8のいずれか1項に記載の加熱調理器。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の加熱調理器を搭載した電磁誘導調理器。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の加熱調理器または電磁誘導調理器の機能の少なくとも1部をコンピュータに実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−206736(P2008−206736A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−46482(P2007−46482)
【出願日】平成19年2月27日(2007.2.27)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】