説明

動力装置

【課題】本発明は、モータのフェイルに対応できる信頼性の高い動力装置の提供を課題とする。
【解決手段】上記課題は、複数のモータ21a,21bと、この複数のモータ21a,21bのそれぞれに対応して設けられ、対応するモータ21a,21bの回転動力を受けて圧力を発生する複数のポンプ22a,22bと、この複数のポンプ22a,22bのそれぞれに対応して設けられた複数の配管路62a,62b,65a,65bと、複数の配管路62a,62b,65a,65bを連通するための配管23と、配管23に設けられ、複数の配管路62a,62b,65a,65bの連通を制御するための制御弁25a〜25dとを有する動力装置において、複数のモータ21a,21bの一つに異常が生じた場合には、制御弁25a〜25dを制御し、複数の配管路62a,62b,65a,65b同士を連通させる、ことにより解決できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力装置に係る技術、代表的には信頼性を向上させるための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
動力装置に関する背景技術としては、例えば特許文献1に開示された技術が知られている。特許文献1には、動力装置として、電気自動車に搭載され、前輪或いは後輪の左右輪のそれぞれに独立して回転動力を与えるインホイールモータ方式の車両駆動装置が開示されている。特許文献1に開示された動力装置では、インホイールモータ自体の冷却や、インホイールモータと車軸との間を機械的に接続する動力伝達機構(減速機などのギア機構)の潤滑などが必要であることから、インホイールモータの回転動力によってオイルポンプを作動させ、インホイールモータ及び動力伝達機構などに油を循環するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−131027号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、地球環境に対する負荷の低減,省エネルギー化の推進など、社会的な要求に応える必要性から、システムの電動化の普及してきている。最近では、その普及に伴って、一つのシステムに対して複数のモータを搭載するものもある。モータは、環境性などに好ましい動力源であると共に、例えばエンジンなどの内燃機関に比べて動作要求に対する応答性、制御性が高いという特徴もある。一方、システムの電動化を図る上では、モータがフェイルした場合を考慮してシステムを構築し、その影響がシステムに及ばないように、或いはシステムに及ぶその影響を小さく抑えることができるようにすることが重要である。この点、背景技術には、モータのフェイルを観点とした開示はない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
代表的な本発明の一つは、モータのフェイルに対応できる信頼性の高い動力装置を提供する。
【0006】
ここに、代表的な本発明の一つは、複数のモータを備えた動力装置であって、複数のモータのそれぞれに対応して設けられた複数の媒体循環配管と、この複数の媒体循環配管のそれぞれに設けられ、複数の媒体循環配管のそれぞれに対応するモータから回転動力を受けて、対応する媒体循環配管に媒体循環用圧力を発生する複数のポンプと、複数の媒体循環配管間を連通させるための連通配管と、この連通配管に設けられ、複数の媒体循環配管間の連通を制御するための制御弁とを有することを特徴とする。
【0007】
代表的な本発明の一つでは、一つのモータにフェイルが生じた場合には、制御弁を制御して複数の媒体循環配管を連通させ、正常側の媒体循環配管から媒体を、フェイル側の媒体循環配管に送出してフェイル側の媒体循環配管を循環させ、フェイル側の媒体循環配管に設けられたポンプを作動させることができる。これにより、代表的な本発明の一つでは、フェイルが生じたモータに動力を伝達でき、フェイルが生じたモータを動力伝達機構として、フェイルが生じたモータによって駆動されていた被駆動体を駆動することができる。
【発明の効果】
【0008】
その結果、代表的な本発明の一つによれば、一つのモータにフェイルが生じた場合、その影響がシステムに及ばないように、或いはシステムに及ぶその影響を小さく抑えることができ、システムの安全性を向上させることができる。従って、代表的な本発明の一つによれば、モータのフェイルに対応できる信頼性の高い動力装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1実施例である車両駆動装置の構成を示すブロック図。
【図2】図1の車両駆動装置を構成するモータとポンプとの接続状態((a)参照)、モータと減速機とポンプとの接続状態((b)参照)を示すブロック図。
【図3】図1のモータフェイル時の制御動作を示すフローチャート。
【図4】図1のモータフェイル時のシステム動作状態を示すブロック図。
【図5】図1のモータフェイル時の制御動作に基づく車両の挙動を説明するための説明図。
【図6】本発明の第2実施例である車両駆動装置の構成を示すブロック図。
【図7】図6のモータフェイル時の制御動作を示すフローチャート。
【図8】図6の車両動作状態に基づく制御動作を示すフローチャート。
【図9】本発明の第3実施例である車両駆動装置の構成を示すブロック図。
【図10】図9のモータフェイル時の制御動作を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施例を説明する。
【0011】
以下に説明する本発明の実施例では、本発明を、モータを車両の唯一の駆動源とする純電気自動車、特にインホイールモータ方式の車両駆動装置を搭載した純電気自動車に適用した場合を例に挙げて説明する。
【0012】
以下において説明する動力装置の構成は、他の車両、例えばインホイールモータ方式の車両駆動装置以外の車両駆動装置を搭載した純電気自動車,車両の駆動源としてエンジン及びモータを搭載したハイブリッド自動車,エンジンを車両の唯一の駆動源とする普通自動車,バス(乗合車両),トラック(貨物車両)など、普通自動車よりも重量が大きい大型自動車,ハイブリッド電車などの鉄道車両,荷物の積み下ろし作業に用いられるフォークリフトトラック、土木作業や建設作業に用いられる車両(機械)など、作業に必要な装置を搭載した特殊車両(機械)のうち、車両駆動用として、或いはその他の用途として、若しくは車両駆動用及びその他の用途として、回転動力を発生させるモータを二つ以上備えた車両に適用しても構わない。
【0013】
また、以下において説明する動力装置の構成は、車両以外に設けられた動力装置、例えば工場などの工業用設備に設けられた動力装置,船舶に搭載された動力装置などのうち、回転動力を発生させるモータを二つ以上備えた動力装置に適用しても構わない。
【0014】
インホイールモータ方式の車両駆動装置は、電気自動車の前輪或いは後輪のどちらかの2輪(左右輪)、若しくは4輪の全てにモータを搭載する動力装置である。モータはエンジンよりも要求動作に対する応答性、制御性が高い。このため、インホイールモータ方式の車両駆動装置を搭載した電気自動車では、その特性を活かし、ドライバの操作に合わせて、前輪或いは後輪のどちらかの2輪(左右輪)、若しくは4輪の全ての駆動力を適切に制御し、車両の直進走行時や旋回走行時などの走行時における車両安定性を図っている。
【0015】
しかしながら、インホイールモータ方式の車両駆動装置を搭載した電気自動車では、一つのモータがフェイルによって回転動力を発生できない状態に陥った場合、前輪或いは後輪のどちらかの2輪(左右輪)、若しくは4輪のモータの間において、回転数及び出力トルクに差が生じ、フェイルに陥ったモータに対応する車輪に転回するモーメントが発生すると考えられる、このため、車両挙動に乱れが生じ、この乱れによって車両の操作性が低下すると考えられる。このようなことから、インホイールモータ方式の車両駆動装置を搭載した電気自動車では、モータのフェイルによる影響が車両挙動に及ばないように或いはモータのフェイルによる車両挙動への影響を小さく抑えることができるように、それに対する対応を図っておくことが大変重要である。
【0016】
ところで、インホイールモータ方式の車両駆動装置では、モータ自体の冷却,モータと車軸との間を機械的に接続する動力伝達機構(例えば減速機などのギア機構)の潤滑などが必要である。このため、インホイールモータ方式の車両駆動装置では、冷媒及び潤滑材となる循環媒体(例えば油)をモータや動力伝達機構などに循環させるための循環システムを備えている。しかも、その循環システムは、各モータに対して独立に設けられている。これまで、その循環システムは、モータの冷却,動力伝達機構の潤滑などを行うためだけに使用されている。
【0017】
一方、モータのフェイルに対応する手段の一つとして、新たなバックアップシステムを導入することが考えられる。しかし、新たなバックアップシステムを導入は、インホイールモータ方式の車両駆動装置の大型化や大幅なコストアップを招くことになる。
【0018】
このようなことから、インホイールモータ方式の車両駆動装置では、小型及び低コストでモータのフェイルに対応できる手段の実現が望まれていた。
【0019】
そこで、以下に説明する実施例では、これまで、モータの冷却、動力伝達機構の潤滑などを行うためだけに使用されていた循環システムに着目し、モータにフェイルが生じた場合には、各モータに対して独立に設けられている循環システムを連結し、正常側のモータに対応する循環システムの媒体を、フェイル側のモータに対応する循環システムに循環させ、フェイル側のモータに対応するポンプを作動させる。これにより、フェイル側のモータに対応するポンプからフェイル側のモータに動力が伝達され、フェイル側のモータを動力伝達機構として、フェイル側のモータによって駆動されていた車輪に回転動力を伝達し、その車輪を駆動することができる。
【0020】
以上のことから、以下に説明する実施例では、モータのフェイルによる影響が車両挙動に及ばないように或いはモータのフェイルによる車両挙動への影響を小さく抑えることができるようにすることができる。従って、以下に説明する実施例では、インホイールモータ方式の車両駆動装置の安全性を向上させることができ、モータのフェイルに対応できる信頼性の高いインホイールモータ方式の車両駆動装置を提供することができる。
【0021】
以下、図面を用いて、本実施例を具体的に説明する。
【実施例1】
【0022】
本発明の第1実施例を図1乃至図5に基づいて説明する。
【0023】
まず、図1及び図2を用いて、車両10に搭載された駆動装置の構成について説明する。
【0024】
車両10は、図1に示すように、車輪11a〜11dと、制駆動用のモータ21a,21bと、ポンプ22a,22bと、ポンプ22a,22bなどを繋ぐ配管23と、ラジエータ24と、制御弁25a〜25dと、モータ21a,21bに駆動指令などを送信するモータコントローラ31と、制御弁25a〜25dに開閉指令などを送信する制御弁コントローラ32と、車速やモータ21a,21bや制御弁25a〜25dなどに異常が生じた場合に警告を表示するメータ33と、モータ21a,21bや制御弁25a〜25dへの信号が伝達される信号線34と、を備えている。
【0025】
車輪11aとモータ21a,車輪11bとモータ21bは、それぞれ直結もしくは減速機を介して接続されている。モータ21aとポンプ22a,モータ21bとポンプ22bは、図2(a)に示すように、それぞれシャフト61a,61bを介して機械的に接続、或いは図2(b)に示すように、減速機63aとシャフト64a、減速機63bとシャフト64bを介して機械的に接続されている。
【0026】
尚、モータや減速機、ポンプの接続方法はベルトであっても良い。
【0027】
モータ21aとポンプ22a,モータ21bとポンプ22bはそれぞれ、図2(a)に示す冷却配管62a,62bで接続される。冷却配管62a,62bにはポンプ22a,22bが加圧した油が流れ、その油によってモータ21a,21bが冷却される。
【0028】
また、図2(b)に示すように減速機63a,63bがある場合には、減速機63aとポンプ22a,減速機63bとポンプ22bはそれぞれ、潤滑配管65a,65bで接続される。潤滑配管65a,65bにはポンプ22a,22bが加圧した油が流れ、その油によって減速機の歯車の潤滑が行われる。
【0029】
尚、図2(b)では冷却配管62a,62bと、潤滑配管65a,65bがそれぞれ1つのポンプ22a,22bに接続されているが、異なる2つ以上のポンプに接続されていても良い。
【0030】
ポンプ22a,22bと、制御弁25a〜25dと、ラジエータ24は、配管23で接続され、配管23内にはポンプ22a,22bによって加圧された油が流れている。この油はラジエータ24の内部を流れ、ラジエータ24の放熱作用によって冷却される。
【0031】
尚、図1に示す制御弁の個数は、必要最低限の個数であるが、配管23の取り回しに応じて増減しても良い。
【0032】
また、減速機の歯車の潤滑が必要なく、モータの冷却のみで良い駆動システムの場合には、配管内の媒体は水或いは不凍液など、他の液状媒体であっても良い。
【0033】
さらに、ラジエータ24は、図1では左右で一体のものとしているが、左右独立のものでも良い。図1では、配管23の油の放熱装置としてラジエータ24を備えているが、このラジエータ24は蓄熱装置であっても良い。蓄熱装置として使用した場合、ヒータの熱源や低温時に性能が低下するバッテリの昇温に用いることができるため、エネルギー消費を少なくする効果が期待できる。
【0034】
本実施例では、ポンプ22に複数の配管が接続されることによって複数の配管同士が接続されるように図示したが、実際にはポンプの吐出側及び吸込側に分岐管が設けられ、その分岐間に複数の配管が接続されることにより、複数の配管同士が接続されている。
【0035】
モータコントローラ31は、図示しないが、アクセル開度センサや車輪速センサ,ヨーレートセンサなどの各種センサで検出したドライバのアクセル操作や車速やヨーレートなどの車両挙動に基づいて、モータ21a,21bへ送信する駆動指令を決定する。例えば車両挙動に乱れが生じている状態では、例えアクセル操作が全開であっても車両挙動の安定化を優先した駆動指令を出力する。また、モータコントローラ31は、例えばモータ21a,21bへ送信する駆動指令やモータ21a,21bに供給される電力に対する車輪速センサの検出値、また図示しないがモータ21a,21bに設けた温度センサの検出値に異常が生じた場合にはメータ33の警告灯を点灯させ、ドライバに駆動システムの異常を知らせる。
【0036】
制御弁コントローラ32は、モータ21a,21bなどの駆動システムの状態に応じて、左右それぞれでループしている配管上に設けた制御弁25a,25bと、左右の駆動システムを繋ぐ配管上に設けた制御弁25c,25dへ送信する開閉指令を決定する。
【0037】
次に、図3及び図4を用いて、モータがフェイルした場合における各コントローラ及び各アクチュエータの動作について説明する。
【0038】
ここで、各コントローラとは、モータコントローラ31,制御弁コントローラ32のことである。また、各アクチュエータとは、各コントローラと信号線34で接続されているモータ21a,21bと、制御弁25a〜25dのことである。
【0039】
各コントローラは、制御対象の各アクチュエータの状態判断に必要な値を、図示しないが、車輪11a〜11dに設けた車輪速センサや配管23に設けた圧力センサなどで検出する(S1)。ここで状態の判断方法としては、例えばモータ21a,21bの場合、モータ21a,21bに同じ駆動指令や電力供給が行われているにも関わらず、車輪速センサで検出した回転数にある一定以上の差が生じた場合には駆動指令や供給される電力に対して妥当でない値を出力している側のモータに異常が生じていると判断する。また、制御弁25a〜25dの場合には、圧力センサで検出した配管23内の液圧から制御弁の開閉状態を判断する。
【0040】
次に、ステップS1で検出した回転数などから、モータコントローラ31はモータ21a,21bの状態判断を行う(S2)。例えば上記のように車輪速センサで検出した回転数の差がある一定以上であった場合には、異常であると判断してステップS3へ、異常と判断されなかった場合はステップ7へ移行する。
【0041】
次に、ステップS2で異常と判断された場合、モータコントローラ31は、モータ21a,21bのどちらか片系統の異常であるか、両系統の異常であるか状態判定を行う(S3)。ここで、片系統の異常と判断された場合、モータコントローラ31は、メータ33に片系統のモータ異常を示す警告灯を点灯させ、その後ステップ6へ移行する(S4)。両系統ともに異常と判断された場合、モータコントローラ31は、メータ33に走行異常を示す警告灯を点灯させる(S5)。
【0042】
次に、ステップS3において片系統の異常が検出された場合、制御弁コントローラ32が制御弁25a〜25dに開閉指令を送信し、配管内の流路を調整する。片系統、例えばモータ21bに異常が検出された場合には、ポンプ22bを油圧モータとして動作させるために、制御弁25a,25bを閉じ、制御弁25c,25dを開ける(S6)。これにより、左右の駆動システムの流路が繋がるため、図4(a)に示すようにポンプ22aが吐出した油71aがポンプ22bへ送られ、ポンプ22bが吐出した油71bが再びポンプ22aへ戻ることで、モータ21bおよび車輪11bを回転させることができる。
【0043】
次に、ステップS2においてモータに異常が無いと判断された場合、左右の駆動システムの独立状態を維持するために、制御弁コントローラ32は制御弁25a,25bに開く、制御弁25c,25dに閉じる指令を送信する(S7)。この場合、図4(b)に示すようにポンプ22aが吐出した油71aはポンプ22aへ、ポンプ22bが吐出した油71bはポンプ22bへ戻るため、左右の駆動システムの独立状態を維持することができる。
【0044】
次に、図5を用いて、本実施例の作用効果について説明する。
【0045】
図3のフローチャートを実行した場合、例えば図5に示す車両挙動が発生する。図5は一定速度で直進中の車両81の右前輪モータが、地点82において異常により回転停止した際の車両挙動を示したものである。
【0046】
尚、図5における車両81の目標軌跡は直進状態を維持する軌跡85である。
【0047】
軌跡83および軌跡84は、配管などで左右が接続されていない一般的な左右独立の駆動システムを搭載した車両が走行した軌跡であり、軌跡83は未修正、軌跡84は車両の走行軌跡を軌跡85に戻すためにドライバもしくは自動的に操舵や4輪独立に制動を行った結果である。
【0048】
軌跡84を走行する車両81は、最終的には軌跡85上に戻るものの、一度は軌跡83と同様に軌跡85上から外れ、現実の道路では路肩や中央分離帯,対向車などに衝突する恐れがある。それに対して本実施例の駆動システムでは、地点82を通過したと同時に左前輪モータのトルクが右前輪のモータに伝達されるため、左右で均等な駆動トルクを維持することができ、目標の軌跡85上を走行することができる。
【実施例2】
【0049】
本発明の第2実施例を図6乃至図8に基づいて説明する。
【0050】
本実施例は、第1実施例の改良例であり、圧力を蓄圧可能なアキュムレータ40と、アキュムレータ40と左右の駆動システムを繋ぐ配管の流路を開閉する制御弁26a〜26dとを新たに車両10に追加した例である。
【0051】
それ以外の構成は基本的に第1実施例と同じである。このようなことから、第1実施例と同じ構成には第1実施例と同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0052】
アキュムレータ40は、ポンプ22a,22bの回転によって生じた圧力の内、冷却や潤滑に必要が無い余剰圧力を蓄圧するものである。アキュムレータ40に蓄圧された圧力は、モータ21a,21bの駆動状態や車両挙動に応じて補助動力として使用される。例えば発進時や加速時など、通常よりモータトルクを必要とする時に使用することでモータの消費電力を抑え、航続距離の延長を図ることができる。
【0053】
制御弁26a〜26dは、アキュムレータ40に繋がる配管23の入出口を開閉するものであり、制御弁コントローラ32によって制御される。
【0054】
次に、図7を用いて、モータがフェイルした場合における各コントローラ及び各アクチュエータの動作について説明する。
【0055】
尚、図7は図3と同様、モータがフェイルした場合の制御フローである。また、図7のステップS1〜S7までは図3と同様であるため、その説明を省略する。
【0056】
ステップS3において片系統の異常が検出された場合、モータコントローラ31は、アキュムレータ40に蓄圧した圧力による補助が必要か否かを判断する(S8)。ここで、補助動力が必要と判断される条件とは、例えば正常に動作しているモータと、異常が検出されたモータの回転数差が大きく、正常に動作しているモータからの動力のみでは異常が検出されたモータの回転数を素早く上げることができない場合である。
【0057】
次に、ステップS8において補助動力が必要と判断された場合には、アキュムレータ40に蓄圧された圧力を使用するため、制御弁コントローラ32は制御弁26a,26cに開く、制御弁26b,26dには閉じる指令を送信する。
【0058】
次に、ステップS2においてモータに異常が無いと判断された場合、またはステップ8において補助動力が不要と判断された場合、アキュムレータ40の蓄圧状態を維持するために、制御弁コントローラ32は制御弁26b,26dに開く、制御弁26a,26cに閉じる指令を送信する(S10)。
【0059】
図7のフローチャートを実行した場合、基本的には第1実施例の図5と同様の車両挙動が発生する。しかしながら、正常に動作しているモータと、異常が検出されたモータの回転数差が大きく、正常に動作しているモータからの動力のみでは異常が検出されたモータの回転数を素早く上げることができない場合にはアキュムレータ40に蓄圧された圧力を使用することで第1実施例よりも素早く車両挙動の乱れを抑制することができる。
【0060】
次に、図8を用いて、車両の運転状態に基づく各コントローラ及び各アクチュエータの動作について説明する。
【0061】
尚、図8は図3と同様、モータがフェイルした場合の制御フローである。また、図8のステップS1は図2と同様であるため、その説明を省略する。
【0062】
制御弁コントローラ32は、車速やアクセル開度などから発進や加速などのドライバ要求を判断する(S11)。ステップS11において、ドライバから発進や加速の要求があると判断された場合、制御弁コントローラ32は制御弁26a,26cに開く、制御弁26b,26dには閉じる指令を送信する(S9)。逆にステップ11において、ドライバから発進や加速の要求がないと判断された場合には、制御弁コントローラ32は制御弁26b,26dに開く、制御弁26a,26cに閉じる指令を送信する(S10)。
【0063】
図8のフローチャートを実行した場合、発進時や加速時など、通常よりモータトルクを必要とする時にアキュムレータ40に蓄圧した圧力を補助動力として使用することでモータの消費電力を抑え、航続距離の延長を図ることができる。
【実施例3】
【0064】
本発明の第3実施例を図9及び図10に基づいて説明する。
【0065】
本実施例は、第1実施例の改良例であり、第1実施例のポンプ22a,22bを小型ポンプ27a,27bと大型ポンプ28a,28bとに分けると共に、小型ポンプ27a,27bと、大型ポンプ28a,28bとを接続するクラッチ51a,51bと、クラッチ51a,51bの締結/解除を制御するクラッチコントローラ34と、大型ポンプ27a,27bの入出口の流路を開閉する制御弁29a〜29dを追加した例である。
【0066】
それ以外の構成は基本的に第1実施例と同じである。このようなことから、第1実施例と同じ構成には第1実施例と同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0067】
小型ポンプ27a,27bは、冷却や潤滑を行うために必要な最低限のサイズのポンプである。
【0068】
大型ポンプ28a,28bはモータ21a,21bの動力を伝達するためのポンプであり、そのサイズは伝達するトルクによって決定される。
【0069】
クラッチ51a,51bは、小型ポンプ27a,27bと、大型ポンプ28a,28bとを接続する装置であり、通常は解除されているが、モータコントローラ31によって大型ポンプ28a,28bが必要と判断された場合に締結される。
【0070】
クラッチコントローラ34は、モータコントローラ31の指令に応じてクラッチ51a,51bの締結/解除を制御する。
【0071】
次に、図10を用いて、モータがフェイルした場合における各コントローラ及び各アクチュエータの動作について説明する。
【0072】
尚、図10のステップS1〜S7までは図3,図7と同様であるため、その説明を省略する。
【0073】
ステップS3において片系統の異常が検出された場合、制御弁コントローラ32は制御弁29a〜29dに開く指令を送信する(S12)。
【0074】
次に、大型ポンプ28a,28bを回転させるため、クラッチコントローラ34はクラッチ51a,51bに締結指令を送信する(S13)。
【0075】
ステップS2においてモータに異常が無いと判断された場合、またはステップS8において補助動力が不要と判断された場合、小型ポンプ27a,27bのみの駆動を維持するために、制御弁コントローラ32は制御弁29a〜29dに閉じる指令を送信し(S14)、大型ポンプ28a,28bを回転させないようにするため、クラッチコントローラ34はクラッチ51a,51bに解除指令を送信する(S15)。
【0076】
図10のフローチャートを実行した場合、基本的には第1実施例の図5と同様の車両挙動が発生する。しかし、左右のモータが正常な状態では第1実施例より小型の必要最低限のポンプしか動作しないので、第1実施例よりもエネルギー消費が少なく、航続距離の延長が期待できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のモータと、
前記複数のモータのそれぞれに対応して設けられ、対応するモータの回転動力を受けて圧力を発生する複数のポンプと、
前記複数のポンプのそれぞれに対応して設けられた複数の配管路と、
前記複数の配管路間を連通するための配管と、
前記配管に設けられ、前記複数の配管路の連通を制御するための制御弁と、を有する、
ことを特徴とする動力装置。
【請求項2】
請求項1に記載の動力装置において、
前記複数のモータのそれぞれに対して前記ポンプを複数設け、
前記複数のモータのそれぞれにおいて、前記複数のポンプの回転軸間に、それらの間の機械的な接続を制御するためのクラッチを設けた、
ことを特徴とする動力装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の動力装置において、
前記ポンプで発生した圧力を蓄圧可能なアキュムレータを設けた、
ことを特徴とする動力装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の動力装置において、
前記制御弁は前記配管内の流量を調整できる機能を備える、
ことを特徴とする動力装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の動力装置において、
前記複数のモータが正常に動作している場合には前記制御弁を閉状態とし、
前記複数のモータの一つに異常が生じた場合には前記制御弁を開状態とする、
ことを特徴とする動力装置。
【請求項6】
請求項3に記載の動力装置において、
前記アキュムレータを前記モータの補助動力源として、前記蓄圧された圧力により前記ポンプを回転させる、
ことを特徴とする動力装置。
【請求項7】
請求項1から6に記載の動力装置を駆動装置として搭載したことを特徴とする車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−254203(P2010−254203A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−108654(P2009−108654)
【出願日】平成21年4月28日(2009.4.28)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】