説明

半導体ウェーハ熱処理用ボートおよび半導体ウェーハの熱処理方法

【課題】熱処理用ボート下部に積載されたウェーハのウェーハ面内温度分布を小さくし、スリップ発生を抑制することを可能にする半導体ウェーハ熱処理用ボートおよびこれを用いた半導体ウェーハの熱処理方法を提供する。
【解決手段】上プレート102と、この上プレート102に対向する下プレート104と、上プレート102のみに固定される、ウェーハ110を載置する複数の積載ポール106と、これらの複数の積載ポール106の外側に配置され、上プレート102と下プレート104との間に固定された複数の支柱108とを有することを特徴とする半導体ウェーハ熱処理用ボート100ならびにこれを用いた熱処理方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェーハ熱処理用ボートおよび半導体ウェーハの熱処理方法に関し、特に半導体ウェーハを水平に保持し処理する縦型熱処理装置に使用される半導体ウェーハ熱処理用ボートおよびこの半導体ウェーハ熱処理用ボートを用いた半導体ウェーハの熱処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
LSI等の半導体デバイスがその表面に形成される半導体ウェーハ(以下、「ウェーハ」ともいう)の製造工程においては、ウェーハ表面に酸化膜を形成したり、ドーパントの拡散を行ったりするために、対象となるウェーハに対して高温下で熱処理を施すプロセスが行われている。このような熱処理にあたっては、外気巻き込みの少ない縦型炉処理が近年多く使用されている。
【0003】
この縦型熱処理炉は、一般に、垂直に配置された加熱用の管状炉の中に反応管を設けた構成になっている。そして、被処理体であるウェーハは、熱処理用ボートと呼ばれる搭載治具に水平状態で上下に間隔をおいて所定の枚数が搭載される。このウェーハが搭載された熱処理用ボートごとに、反応管内に挿入され、所定の熱処理が施されるようになっている。
【0004】
そして、従来の熱処理用ボートは、図6に示された構成を有している。同図に示された熱処理用ボート600は、上下にそれぞれ対向して配置された円形の上プレート602と下プレート604との間に、例えば炭化ケイ素(SiC)からなる3本の積載ポール606が設けられている。そして、これら各積載ポールには被処理体であるウェーハ110が挿入されてその周縁部を支持するように、当該ウェーハ110の厚さよりも若干大きい溝幅を有する溝部112が所定の等間隔で形成されている。
【0005】
しかしながら、今日ウェーハは大口径化傾向にあり、そのサイズは150mm(6インチ)から200mm(8インチ)、さらには300mm(12インチ)へと移行してきている。
このようにウェーハが大口径化してくると、高い温度で熱処理を行うと、スリップ(スリップ転位)と呼ばれる表面欠陥がウェーハに発生することがある。すなわち、熱処理時にウェーハ内に温度分布が生じ、この温度分布により応力が生じ、この応力がある一定の限界値を超えると、スリップが発生する。そして、熱処理時のウェーハ内の温度分布は大口径になるほど大きくなりやすく、かつ、大口径化によりウェーハも重くなる分ウェーハの自重による応力も大きくなるため、スリップ発生の恐れが高くなるという傾向がある。
そして、スリップ等の表面欠陥は、ウェーハ上に形成された半導体デバイスの酸化膜耐圧や接合リークの劣化等、デバイス特性を悪化させ、半導体デバイスの歩留まりを劣化させる要因となっていた。このため、このスリップの発生を防止する手段が必要となる。
【0006】
このスリップの発生を防止するため、例えば、特許文献1には、積載ポールのウェーハ支持部を軟質部材で構成してウェーハ支持部での応力を緩和する技術が開示されている。
【特許文献1】特開2003−257881号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
もっとも、上記特許文献1に挙げられるような従来技術をもってしても、特に熱処理用ボート下部に積載されるウェーハに生ずるスリップの発生を十分に抑制することは困難であった。
【0008】
そこで、発明者らは、図6に示す従来の熱処理用ボートを用いて、ウェーハの温度分布の熱処理用ボート位置依存性を調べた結果、熱処理用ボート下部(下プレート側)で温度が低く、かつ、ウェーハの温度分布が大きくなっていることを確認した。
図7は、従来の熱処理用ボートを用いて、熱処理を行った場合の熱処理炉内全体(図7(a))および各ウェーハ(図7(b))の温度分布のシミュレーション結果である。図7から明らかなように、熱処理用ボート下部(下プレート側)で熱処理炉およびウェーハの温度が低くなっており、このため、熱処理用ボート下部(下プレート側)でウェーハの面内温度分布が大きくなりスリップ発生の恐れが高くなっている。なお、シミュレーションにおいてはウェーハの設定温度を約950℃としている。
【0009】
このように、熱処理用ボート下部(下プレート側)で温度が低下し、ウェーハの温度分布が大きくなるのは、以下の理由による。
すなわち、熱処理炉の下プレート側には、ボート搬送口(以下、「搬送口」ともいう)が存在する。搬送口には、熱処理炉内のプロセスガスと外気を遮断するためにOリングなどの耐熱性が低い材料(ただし、流体の遮断には有効)が使用されている。このため、搬送口には温度を下げるための断熱機構を有しており、その付近の温度は熱処理炉の他の領域よりも低くなっている。
ここで、構造上、熱処理用ボートの下プレートは、搬送口付近の低温部に接触しているため、熱伝導により必然的に温度が低下する。そして、従来の熱処理用ボートでは、ウェーハを載置した積載ポールが上プレートのみならず、下プレートにも固定されている。したがって、ウェーハから積載ポールを介した下プレートへの熱伝導により、ウェーハ温度が低下し、結果として特に熱処理用ボート下部に積載されたウェーハの面内温度分布が大きくなる。
【0010】
本発明は、上記事情を考慮してなされたもので、その目的とするところは、特に熱処理用ボート下部に積載されたウェーハ面内温度分布を小さくし、スリップ発生を抑制することを可能にする半導体ウェーハ熱処理用ボートおよびこれを用いた半導体ウェーハの熱処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様の半導体ウェーハ熱処理用ボートは、
上プレートと、該上プレートに対向する下プレートと、前記上プレートのみに固定される、ウェーハを載置する複数の積載ポールと、該複数の積載ポールの外側に配置され、前記上プレートと前記下プレートとの間に固定された複数の支柱とを有することを特徴とする。
【0012】
本発明の一態様の半導体ウェーハの熱処理方法は、
上プレートと、該上プレートに対向する下プレートと、前記上プレートのみに固定される、ウェーハを載置する複数の積載ポールと、該複数の積載ポールの外側に配置され、前記上プレートと前記下プレートとの間に固定された複数の支柱とを有することを特徴とする半導体ウェーハ熱処理用ボートを用いて半導体ウェーハの熱処理を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、特に熱処理用ボート下部に積載されたウェーハ面内温度分布を小さくし、スリップ発生を抑制することを可能にする半導体ウェーハ熱処理用ボートおよびこれを用いた半導体ウェーハの熱処理方法を提供することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明に係る半導体ウェーハ熱処理用ボートおよびこれを用いた半導体ウェーハの熱処理方法についての実施の形態につき、添付図面に基づき説明する。
【0015】
[実施の形態]
(縦型熱処理装置)
図3は、本実施の形態で使用される縦型熱処理装置の概観を示す斜視図である。被処理体であるSi単結晶の半導体ウェーハ(以下、「ウェーハ」ともいう)110は、縦型熱処理装置200の下方に配置される搭載治具である熱処理用ボート100に所定枚数搭載されている。そして、熱処理用ボート100は、縦型熱処理装置200の縦型炉204内の反応管内206にロードされて、例えば、ウェーハ110に所定のシリコン酸化膜形成処理が施されるごとく構成されている。
【0016】
図4は図3の縦型熱処理装置200の縦型炉の内部を模式的に示した縦断面説明図である。縦型炉204は、図4に示したように、その外形を構成するケーシング302がベースプレート304の上面に固着されて、鉛直方向に設置されている。このケーシング302は上面が閉口した略筒状の形態をなし、その内部表面は断熱材306で覆われている。さらに、この断熱材306の内周表面には、例えば抵抗発熱体によって構成されたヒーター308が設けられている。そして、適宜の温度制御装置(図示せず)によって、反応管206内を所定の温度、例えば、800℃〜1200℃の間の任意の温度に加熱、維持することが可能なように構成されている。
【0017】
処理領域を形成する反応管206は、上端が閉口している筒状の外管310と、この外管310の内周に位置する上端が開口した筒状の内管312とによって構成された二重構造を有している。そして、これら各外管310と内管312は、おのおの例えばステンレスからなる管状のマニホールド314によって気密に支持されている。また、このマニホールド314の下端部には、フランジ316が一体形成されている。そして、熱処理用ボート100を載せる保温筒210のフランジ部208が密着するフランジ316の下端には、反応管206内の雰囲気を外界と遮断するためのOリング(図示せず)が備えられている。
【0018】
マニホールド314上部側面には、外管310と内管312との間の空間からガスを排出して、反応管206内の処理領域を所定の雰囲気に設定・維持するための例えば真空ポンプ318に通ずる排気管320が気密に接続されている。
【0019】
また、マニホールド314の下部側面には、例えばシリコン酸化膜形成用処理ガスである例えば、O(酸素)ガス、N(窒素)ガスを、内管312内に導入するための第1ガス導入管322、第2ガス導入管324がそれぞれ気密に接続されている。そして、これら第1ガス導入管322、第2ガス導入管324のガスノズル322a、324aは、それぞれ内管312内に突出している。これら第1ガス導入管322、第2ガス導入管324は、それぞれ対応する所定のマスフロー・コントローラ326、328を介して、処理ガスの所定の供給源(図示せず)に接続されている。
【0020】
なお、ここでは、被処理体であるウェーハ110をSi単結晶のウェーハとしてシリコン酸化膜形成処理を行う構成について記載したが、半導体ウェーハに熱処理を施す縦型熱処理装置であれば、必ずしもシリコン酸化膜形成処理でなくとも、例えば窒化膜形成処理等のCVD処理や、不活性ガス等によるアニール処理を行う構成であっても構わない。また、被処理体であるウェーハ110も、半導体ウェーハであれば、Si単結晶のウェーハに限られることはなく、例えばGaAsウェーハ等の化合物半導体ウェーハであってもよい。
【0021】
そして、縦型熱処理装置200および縦型炉204についても、上述の構造は一例に過ぎず、熱処理用ボートの下プレート側に搬入口があり、温度および雰囲気をコントロールすることが可能であれば、いかなる構造であっても適用することが可能である。
【0022】
(熱処理用ボート)
図1は、本実施の形態で使用される熱処理用ボートを示す図である。熱処理用ボート100は、上下に対向して配置された円形の上プレート102と下プレート104とを有している。そして、上プレート102と下プレート104との間には、上プレート102のみに固定される複数、例えば3本の積載ポール106が設けられている。さらに、これらの積載ポールの外側には、上プレート102と下プレート104間に固定された複数、例えば2本の支柱108を有している。
ここで、積載ポール106および支柱108は、ウェーハ110と接近するため、耐熱性に優れるほか、ウェーハを汚染しないものとすることが好ましく、炭化ケイ素、窒化ケイ素、石英、または酸化アルミニウム等を用いることが出来る。
【0023】
そして、被処理体であるウェーハ110は搬送アーム(図示せず)によって、積載ポール106の間から図3に示すように積載ポール106に向けて直角に進入させられて、各積載ポール106に形成されている溝112によって支持されるよう構成されている。
【0024】
以上のように構成された熱処理用ボート100は、例えばステンレスからなるフランジ部208を備えた保温筒210の上に着脱自在に装着されている。この保温筒210は、ウェーハの熱処理中に低温の搬送部付近への熱伝導を抑制するために設けられている。さらにこの保温筒210は、昇降自在なボートエレベータ212の上に載置されている。そして、このボートエレベータ212の上昇によって、被処理体であるウェーハ110は熱処理用ボート100ごと、縦型炉204内の反応管206内にロードされるようになっている。
【0025】
(熱処理方法)
本実施の形態の熱処理装置200および熱処理用ボート100は以上のように構成されている。次にこれらの熱処理装置200および熱処理用ボート100を用いた半導体ウェーハの熱処理方法について説明する。
【0026】
まず、ヒーター308を発熱させて、反応管206内の温度を例えば750℃まで加熱して置く。そして、熱処理用ボート100に対して、上述のように、搬送アーム(図示せず)によって被処理体であるウェーハ110が、所定枚数搭載された時点で、ボートエレベータ212が上昇し、図4に示したように、保温筒210のフランジ部208が、マニホールド314下端部のフランジ316と密着する位置まで熱処理用ボート100を上昇させ、ウェーハ110を反応管206の内管312内にロードさせる。
【0027】
次いで真空ポンプ318によって反応管206内部を真空引きし、所定の減圧雰囲気まで減圧した後、反応管206内の温度を所定の温度、例えば1050℃まで加熱する。その後、例えば、第1ガス導入管322からO(酸素)ガスを、第2導入管324からN(窒素)ガスを内管312内に導入させるとシリコンウェーハであるウェーハ110表面にシリコン酸化膜が形成される。
【0028】
(作用・効果)
従来技術においては、上述のように、ウェーハの積載ポールが下プレートにも固定されているために、保温筒だけでは十分に低温部への熱伝導を抑制できず、熱伝導によってウェーハ温度が低下してウェーハの面内温度分布が大きくなり、特に、熱処理用ボート下部のウェーハにスリップ発生が生じやすいという問題があった。
【0029】
本実施の形態においては、ウェーハを支持する積載ポールは、上プレートのみによって固定されているため、ウェーハの熱が、下プレートを介して逃げることがない。したがって、熱処理用ボート下部のウェーハにおいても、ウェーハの面内温度分布を抑制することが可能となり、結果としてスリップ発生を有効に防止することが可能となる。
そして、上プレートと下プレートの接続は積載ポールではなく、新たに積載ポールの外側に設けられた複数の支柱によっている。
【0030】
ここで、従来の熱処理用ボートを用いたまま、保温筒210を長くして、炉内下部の低温領域と熱処理用ボート下部の距離を更に離し、熱処理用ボート下部のウェーハの面内温度分布を緩和する方法も考えられる。しかし、そのためには、反応管やヒーター等縦方向の部材をすべて長くせねばならないことによる縦型熱処理装置のコスト上昇、あるいは、装置設置容積の増大等が生じるため望ましくない。
【0031】
[実施の形態の変形例]
(熱処理用ボート)
本実施の形態の変形例においては、熱処理用ボート以外の縦型熱処理装置および熱処理方法については実施の形態と同様であるので説明を省略する。
【0032】
図2は、本変形例で使用される熱処理用ボートを示す図である。熱処理用ボート400は、上下に対向して配置された円形の上プレート102と下プレート104とを有している。そして、上プレート102と下プレート104との間には、実施の形態同様、上プレート102のみに固定される複数、例えば3本の積載ポール106が設けられている。さらに、これらの積載ポールの外側には、上プレート102と下プレート104間に固定された複数、例えば2本の支柱108を有している点においても実施の形態と同様の構成である。しかし、実施の形態と異なり、本変形例では、積載ポールを互いに連結する支持部材402を有することを特徴としている。
【0033】
ここで、支持部材402は、例えば、複数の積載ポール106を互いに固定するものであれば、プレートであっても良いし、棒状の部材であってもよい。
また、図2のように必ずしも、積載ポール下端になくとも、例えば、積載ポールの中間領域に存在しても構わない。
【0034】
そして、支持部材402の材料は、積載ポール106や支柱108同様、耐熱性に優れるほか、シリコンウェーハを汚染しないものとすることが好ましく、炭化ケイ素、窒化ケイ素、石英、または酸化アルミニウム等を用いることが可能である。
【0035】
(作用・効果)
実施の形態においては、積載ポールを上プレートのみによって固定しているため、例えば、熱処理用ボートの洗浄や、ウェーハ積載時にかかりうる横方向の応力に対する強度が低下する恐れがあった。本変形例では、積載ポールに支持部材を設けることにより、横方向の応力に対する強度を十分に保証することが可能となるという効果がある。
【0036】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。実施の形態の説明においては、縦型熱処理装置、熱処理用ボートおよび熱処理方法等で、本発明の説明に直接必要としない部分等については記載を省略したが、必要とされる縦型熱処理装置、熱処理用ボートおよび熱処理方法等に関わる要素を適宜選択して用いることができる。
【0037】
その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全ての縦型熱処理装置、熱処理用ボートおよび熱処理方法は、本発明の範囲に包含される。
【実施例】
【0038】
以下、本発明の実施例および比較例について、図面を参照しつつ説明するが、これらによって本発明が限定されるものではない。
【0039】
(実施例)
酸素濃度が1.3×1018atoms/cmである直径200mm(8インチ)の、CZ(チョコラルスキー)法によって引き上げられたシリコンウェーハを用意した。このシリコンウェーハを縦型処理装置において、図1に示した本発明の熱処理用ボートに積載し、熱処理を行った。シリコンウェーハは、熱処理用ボートのTop(上プレート側),Middle、Bottom(下プレート側)にそれぞれ33枚ずつ積載した。熱処理条件は1200℃、1時間、100%Ar雰囲気で行った。
【0040】
熱処理後のウェーハについて、Top(上プレート側),Middle、Bottom(下プレート側)からそれぞれ1枚ずつ抜き取り、発生した最大スリップ長をXRT(X−ray Topography,ラング法)により評価した。
評価結果を図5に示す。
【0041】
(比較例)
実施例と同様、酸素濃度が1.3×1018atoms/cmである直径200mm(8インチ)の、CZ(チョコラルスキー)法によって引き上げられたシリコンウェーハを用意した。このシリコンウェーハを縦型処理装置において、図6に示した従来の熱処理用ボートに積載し、実施例と同様の熱処理を行った。そして、実施例と同様に発生した最大スリップ長を評価した。
評価結果を図5に示す。
【0042】
(結果)
図5に実施例および比較例の炉内位置ごとの、最大スリップ長を示す。横軸が、Top(上プレート側),Middle、Bottom(下プレート側)で表される処理ウェーハの炉内位置、縦軸が処理ウェーハの最大スリップ長である。
従来の熱処理用ボートの場合には、炉内位置の依存性がみられ、Bottom(下プレート側)で最大スリップ長が顕著に増大する。これは、積載ポールから下プレートを介した熱伝導により、特にBottom部(下プレート側)でウェーハの面内温度分布が大きくなるからと考えられる。
【0043】
これに対して実施例の本発明の熱処理用ボートの場合には、炉内位置の依存性が見られず、したがって、Bottom側(下プレート側)においてもスリップ長の増大はない。これは、積載ポールを下プレートに固定しないことにより、Bottom側(下プレート側)ウェーハに面内温度分布が生ずることを抑制できたためと考えられる。
このように、実施例において、本発明によりBootom側(下プレート側)ウェーハの面内温度分布を小さくし、スリップ発生を効果的に抑制できることが判明した。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】実施の形態で使用される熱処理用ボートを示す図である。
【図2】実施の形態の変形例で使用される熱処理用ボートを示す図である。
【図3】実施の形態で使用される縦型熱処理装置の概観を示す斜視図である。
【図4】図2の縦型熱処理装置の縦型炉の内部を模式的に示した縦断面説明図である。
【図5】実施例および比較例の最大スリップ長の炉内位置依存性を示す図である。
【図6】従来の熱処理用ボートを示す図である。
【図7】従来の熱処理用ボートを用いて、熱処理を行った場合の熱処理炉内全体および各ウェーハの温度分布のシミュレーション結果である。
【符号の説明】
【0045】
100 熱処理用ボート
102 上プレート
104 下プレート
106 積載ポール
108 支柱
200 縦型熱処理装置
204 縦型炉
206 反応管
208 フランジ部
210 保温筒
212 ボートエレベータ
308 ヒーター
402 支持部材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
上プレートと、該上プレートに対向する下プレートと、前記上プレートのみに固定される、ウェーハを載置する複数の積載ポールと、該複数の積載ポールの外側に配置され、前記上プレートと前記下プレートとの間に固定された複数の支柱とを有することを特徴とする半導体ウェーハ熱処理用ボート。
【請求項2】
前記複数の積載ポールを互いに連結する支持部材を有することを特徴とする請求項1記載の半導体ウェーハ熱処理用ボート。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の半導体ウェーハ熱処理用ボートを用いて半導体ウェーハに熱処理を行う半導体ウェーハの熱処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−266259(P2007−266259A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−88577(P2006−88577)
【出願日】平成18年3月28日(2006.3.28)
【出願人】(507182807)コバレントマテリアル株式会社 (506)
【Fターム(参考)】