説明

半導体チップ接合用接着材料、半導体チップ接合用接着フィルム、及び、半導体装置の製造方法

【課題】フィレット形状を、凸形状にならないように制御し、信頼性の高い半導体装置を製造することのできる半導体チップ接合用接着材料を提供する。
【解決手段】粘弾性測定装置で測定した25℃せん断弾性率Grが1×10Pa以上、レオメーターで測定したハンダ融点までの最低複素粘度η*minが5×10Pa・s以下であり、温度140℃、歪量1rad、周波数1Hzで測定した複素粘度η*(1Hz)が温度140℃、歪量1rad、周波数10Hzで測定した複素粘度η*(10Hz)の0.5〜4.5倍である半導体チップ接合用接着材料3。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィレット形状を、凸形状にならないように制御し、信頼性の高い半導体装置を製造することのできる半導体チップ接合用接着材料に関する。また、本発明は、該半導体チップ接合用接着材料からなる半導体チップ接合用接着フィルム、該半導体チップ接合用接着材料又は該半導体チップ接合用接着フィルムを用いた半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ますます進展する半導体装置の小型化、高集積化に対応するために、ハンダ等からなる接続端子(バンプ)を有する半導体チップを用いたフリップチップ実装が多用されている。
【0003】
フリップチップ実装においては、一般的に、複数のバンプを有する半導体チップを、バンプを介して他の半導体チップ又は基板に接続した後、アンダーフィルを充填する方法が用いられている。このようなアンダーフィルを充填する方法においては、アンダーフィルの硬化収縮時、又は、リフロー試験若しくは冷熱サイクル試験時、例えば半導体チップと基板との間の線膨張係数の差等に起因して、アンダーフィルの界面等に応力が集中し、クラックが発生することがある。
【0004】
そこで、クラックの発生を抑制するために、例えば、特許文献1には、半導体素子と、該半導体素子を搭載する基板と、前記半導体素子に形成された回路形成面を封止する封止樹脂と、を具備する半導体装置において、半導体素子の外周側面を覆う側面被覆部を設けることが記載されている。このような半導体素子の外周側面を覆う側面被覆部は、一般にフィレットと呼ばれている。
更に、特許文献1に記載の半導体装置においては、クラックの発生をより確実に抑制するために、側面被覆部の回路形成面からの高さを所定範囲とすることが提案されている。
【0005】
また、特許文献2には、回路基板と半導体チップとの間に封止樹脂が注入されると共に、半導体チップの外周側部に封止樹脂が付与されてフィレット部が形成されてなる特定のフリップチップ半導体パッケージが記載されている。特許文献2に記載のフリップチップ半導体パッケージにおいて、フィレット部は、表面が半導体チップの外周側部の上縁から基板に向けて外方に延びる傾斜面をなす構造を有している。
更に、特許文献2には、傾斜面と半導体チップの外周側部のなす傾斜角が半導体チップの外周側部の上縁近傍において50度以下であることにより、応力集中によるクラックの発生が抑制もしくは低減され半導体チップ破損が抑制されることが記載されている。
【0006】
しかしながら、従来の方法では、フィレットを形成する工程が煩雑であったり、フィレットの形成によってもクラックの発生が充分に抑制されなかったりすることが問題であった。
【0007】
一方、近年、半導体チップの小型化が進行するとともにバンプ間のピッチもますます狭くなっており、また、これらに伴って半導体チップ同士又は半導体チップと基板との間のギャップもますます狭くなっていることから、アンダーフィルが充填されないか、又は、充填に長時間を要したり、充填時に空気が巻き込まれやすく、ボイドが発生しやすかったりすることも問題である。
そこで、例えば、接着剤又は接着フィルムにより、複数のバンプを有するウエハ上のバンプが形成された面に接着剤層を形成した後、ウエハを接着剤層ごとダイシングして個々の半導体チップとし、これをバンプを介して他の半導体チップ又は基板にボンディングする先塗布型の実装方法が提案されており、このような先塗布型の実装方法にも適用することができ、かつ、クラックの発生を充分に抑制することのできる新たな接着剤又は接着フィルムが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−40775号公報
【特許文献2】国際公開第08/018557号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、フィレット形状を、凸形状にならないように制御し、信頼性の高い半導体装置を製造することのできる半導体チップ接合用接着材料を提供することを目的とする。また、本発明は、該半導体チップ接合用接着材料からなる半導体チップ接合用接着フィルム、該半導体チップ接合用接着材料又は該半導体チップ接合用接着フィルムを用いた半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、粘弾性測定装置で測定した25℃せん断弾性率Grが1×10Pa以上、レオメーターで測定したハンダ融点までの最低複素粘度η*minが5×10Pa・s以下であり、温度140℃、歪量1rad、周波数1Hzで測定した複素粘度η*(1Hz)が温度140℃、歪量1rad、周波数10Hzで測定した複素粘度η*(10Hz)の0.5〜4.5倍である半導体チップ接合用接着材料である。
以下、本発明を詳述する。
【0011】
通常、接着剤又は接着フィルムを用いて、予め接着剤層が形成された半導体チップを他の半導体チップ又は基板にボンディングする際、フィレットを形成しようとすると、該フィレットの断面図の形状は、図2に示すような凸形状になりやすい。そして、凸形状のフィレットにおいては、半導体チップの側壁とフィレットとが成す角度が70°以上になりやすい。本発明者らは、このような凸形状のフィレットにおいては、凸部に応力が集中して半導体チップの剥離又は割れが発生しやすく、一方、図1に示すような非凸形状のフィレットを形成することで、応力の集中を抑制して信頼性の高い半導体装置を製造できることを見出した。
即ち、本発明者らは、半導体チップ接合用接着材料の25℃せん断弾性率及び粘度特性を所定範囲とすることにより、非凸形状のフィレットを形成することができ、これにより、信頼性の高い半導体装置を製造できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
本明細書中、凸形状のフィレットとは、フィレットの断面を観察した場合に、端部に図2に示すような逆U字状のふくらみ部を有するフィレットを意味する。一方、非凸形状のフィレットとは、フィレットの断面を観察した場合に、端部に図2に示すような逆U字状のふくらみ部を有しないフィレットを意味する。
なお、図1及び図2は、半導体チップ接合用接着材料3を用いて、バンプ4を介して基板1上に半導体チップ2をボンディングした状態の一例を示す断面図である。図1は非凸形状のフィレットを形成した状態を示し、図2は凸形状のフィレットを形成した状態を示す。
【0013】
上記非凸形状は、図3に示すように、半導体チップの側壁とフィレットとが成す角度θが70°未満であることが好ましい。
【0014】
本発明の半導体チップ接合用接着材料は、粘弾性測定装置で測定した25℃せん断弾性率Grの下限が1×10Paである。上記粘弾性測定装置で測定した25℃せん断弾性率Grが1×10Pa未満であると、得られる半導体チップ接合用接着材料にはタックが生じやすく、例えば、ダイシング時に半導体チップ接合用接着材料に切削クズが付着する等の不具合が生じる。
上記粘弾性測定装置で測定した25℃せん断弾性率Grの好ましい下限は3×10Pa、より好ましい下限は5×10Paである。
【0015】
上記粘弾性測定装置で測定した25℃せん断弾性率Grの上限は特に限定されないが、好ましい上限は1×10Paである。上記粘弾性測定装置で測定した25℃せん断弾性率Grが1×10Paを超えると、ダイシング時に半導体チップ接合用接着材料の一部が剥がれ飛ぶことがある。
上記粘弾性測定装置で測定した25℃せん断弾性率Grのより好ましい上限は5×10Paである。
【0016】
本明細書中、粘弾性測定装置で測定した25℃せん断弾性率Grとは、本発明の半導体チップ接合用接着材料をフィルム状にして測定した値を意味する。上記粘弾性測定装置で25℃せん断弾性率Grを測定する方法は特に限定されず、例えば、動的粘弾性測定装置DVA−200(アイティー計測器社製)等の粘弾性測定装置を用いて、厚み600μm、幅6mm、長さ10mmのフィルムをせん断測定する方法等が挙げられる。
【0017】
本発明の半導体チップ接合用接着材料は、レオメーターで測定したハンダ融点までの最低複素粘度η*minの上限が5×10Pa・sである。上記レオメーターで測定したハンダ融点までの最低複素粘度η*minが5×10Pa・sを超えると、ボンディング時に半導体チップ接合用接着材料によりハンダが押し流されやすくなり、安定した導通が得られない。
上記レオメーターで測定したハンダ融点までの最低複素粘度η*minの好ましい上限は4.5×10Pa・s、より好ましい上限は4×10Pa・s、更に好ましい上限は3.0×10Pa・sである。
【0018】
上記レオメーターで測定したハンダ融点までの最低複素粘度η*minの下限は特に限定されないが、好ましい下限は5×10−1Pa・sである。上記レオメーターで測定したハンダ融点までの最低複素粘度η*minが5×10−1Pa・s未満であると、ボンディング時に噛みこんだボイドが接着剤層に残ることがある。
上記レオメーターで測定したハンダ融点までの最低複素粘度η*minのより好ましい下限は1Pa・sである。
【0019】
本明細書中、レオメーターで測定したハンダ融点までの最低複素粘度η*minとは、本発明の半導体チップ接合用接着材料をフィルム状にして測定した値を意味する。上記レオメーターでハンダ融点までの最低複素粘度η*minを測定する方法は特に限定されず、例えば、STRESSTECH(REOLOGICA社製)等の通常のレオメーターを用いて、サンプル厚み600μm、歪制御(1rad)、周波数10Hz、昇温速度20℃/min、測定温度範囲60℃から300℃まで測定を行う方法等が挙げられる。
なお、上記ハンダ融点は、例えば、230〜320℃の範囲の温度である。
【0020】
本発明の半導体チップ接合用接着材料は、温度140℃、歪量1rad、周波数1Hzで測定した複素粘度η*(1Hz)が温度140℃、歪量1rad、周波数10Hzで測定した複素粘度η*(10Hz)の0.5〜4.5倍である。このような複素粘度の比を有することにより、本発明の半導体チップ接合用接着材料は、ボンディング時の加熱により自重によって非凸形状のフィレットを形成することができ、得られる半導体装置の信頼性を高めることができ、また、ダイシング等の他の工程に適用されても不具合を生じさせることがない。
【0021】
上記複素粘度η*(1Hz)が上記複素粘度η*(10Hz)の0.5倍未満であると、ボンディング時に半導体チップ接合用接着材料の流動性が低くなり、例えば、バンプの接触が妨げられる等の不具合が生じる。上記複素粘度η*(1Hz)が上記複素粘度η*(10Hz)の4.5倍を超えると、非凸形状のフィレットを形成することができず、半導体チップの側壁とフィレットとが成す角度が70°以上になると、凸部に応力が集中して、得られる半導体装置の信頼性が低下する。
本発明の半導体チップ接合用接着材料は、上記複素粘度η*(1Hz)が上記複素粘度η*(10Hz)の0.7倍以上であることが好ましく、0.9倍以上であることがより好ましく、1.0倍以上であることが更に好ましく、また、4.3倍以下であることが好ましく、4.0倍以下であることがより好ましい。
【0022】
本明細書中、複素粘度η*(1Hz)及び上記複素粘度η*(10Hz)とは、本発明の半導体チップ接合用接着材料をフィルム状にして測定した値を意味する。上記複素粘度η*(1Hz)及び上記複素粘度η*(10Hz)を測定する方法は特に限定されず、例えば、STRESSTECH(REOLOGICA社製)等の通常の粘度測定装置を用いて、サンプル厚み600μm、歪制御(1rad)、周波数1Hz又は10Hz、温度140℃で測定を行う方法等が挙げられる。
【0023】
本発明の半導体チップ接合用接着材料において、上述した範囲のせん断弾性率及び粘度特性を達成する方法は特に限定されないが、例えば、エポキシ化合物、該エポキシ化合物と反応可能な官能基を有する高分子化合物(以下、単に、反応可能な官能基を有する高分子化合物ともいう)、及び、必要に応じて他の添加成分を適宜配合することにより、せん断弾性率及び粘度特性を調整する方法が好ましい。
なかでも、エポキシ化合物の種類及び配合量、並びに、反応可能な官能基を有する高分子化合物の分子量及び配合量を制御することにより、半導体チップ接合用接着材料における各成分の相互作用又は分子鎖の絡み合いを極限にまで低減することが好ましい。また、無機充填材等の非溶解性成分を加える場合には、エポキシ化合物等に対する親和性を高くしたり、無機充填材の粒子径及び配合量を制御したりすることにより、半導体チップ接合用接着材料における凝集等のネットワーク構造の形成を抑制することが好ましい。
【0024】
上記エポキシ化合物は特に限定されず、例えば、軟化点が150℃以下のエポキシ樹脂、常温で液体又は結晶性固体のエポキシ樹脂等が挙げられる。これらのエポキシ化合物は、単独で用いられてもよく、二種以上が併用されてもよい。
上記軟化点が150℃以下のエポキシ樹脂として、例えば、フェノールノボラックエポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラックエポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニルフェノールノボラックエポキシ樹脂等が挙げられる。なかでも、ジシクロペンタジエンフェノールノボラック型エポキシ樹脂が好ましい。
【0025】
上記常温で液体又は結晶性固体のエポキシ樹脂として、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールAD型、ビスフェノールS型等のビスフェノール型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、レゾルシノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂等が挙げられる。なかでも、アントラセン型エポキシ樹脂が好ましい。
【0026】
上記反応可能な官能基を有する高分子化合物を含有することで、本発明の半導体チップ接合用接着材料の硬化物は靭性をもち、優れた耐衝撃性を発現することができる。
上記反応可能な官能基を有する高分子化合物は特に限定されず、例えば、アミノ基、ウレタン基、イミド基、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基等を有する高分子化合物等が挙げられる。なかでも、エポキシ基を有する高分子化合物が好ましい。
上記エポキシ基を有する高分子化合物を含有することで、得られる半導体チップ接合用接着材料の硬化物は優れた靭性を発現する。即ち、得られる半導体チップ接合用接着材料の硬化物は、上記エポキシ化合物に由来する優れた機械的強度、耐熱性及び耐湿性と、上記エポキシ基を有する高分子化合物に由来する優れた靭性とを兼備することにより、高い接合信頼性及び接続信頼性を発現することができる。
【0027】
上記エポキシ基を有する高分子化合物は、末端及び/又は側鎖(ペンダント位)にエポキシ基を有する高分子化合物であれば特に限定されず、例えば、エポキシ基含有アクリルゴム、エポキシ基含有ブタジエンゴム、ビスフェノール型高分子量エポキシ樹脂、エポキシ基含有フェノキシ樹脂、エポキシ基含有アクリル樹脂、エポキシ基含有ウレタン樹脂、エポキシ基含有ポリエステル樹脂等が挙げられる。なかでも、エポキシ基を多く含み、得られる半導体チップ接合用接着材料の硬化物が優れた機械的強度、耐熱性、靭性等を発現できることから、エポキシ基含有アクリル樹脂が好ましい。これらのエポキシ基を有する高分子化合物は、単独で用いられてもよく、二種以上が併用されてもよい。
【0028】
上記エポキシ基を有する高分子化合物、特にエポキシ基含有アクリル樹脂を用いる場合、該エポキシ基を有する高分子化合物の重量平均分子量の好ましい上限は20万、好ましい下限は1万である。上記重量平均分子量が1万未満であると、半導体チップ接合用接着材料を用いてフィルムを製造する際の造膜性が不充分となり、フィルムとして形状を保持することができないことがある。上記重量平均分子量が20万を超えると、得られる半導体チップ接合用接着材料において、上述した範囲のせん断弾性率及び複素粘度の比を達成することができないことがある。
また、上記重量平均分子量が1万未満であると、得られる半導体チップ接合用接着材料には低分子量化合物が多く存在するため、ボンディング時にボイドが発生しやすくなることがある。
上記エポキシ基を有する高分子化合物の重量平均分子量のより好ましい上限は15万、更に好ましい上限は10万、更により好ましい上限は5万、特に好ましい上限は2万である。
【0029】
上記エポキシ基を有する高分子化合物は、単独で用いられてもよく、異なる重量平均分子量を有する二種以上が併用されてもよい。例えば、重量平均分子量が5万以下の高分子化合物と、重量平均分子量が5万を超える高分子化合物とが併用されてもよい。このような場合、上記重量平均分子量が5万を超える高分子化合物の含有量は、上記エポキシ化合物と、上記反応可能な官能基を有する高分子化合物との合計100重量部に占める好ましい上限が20重量部である。上記重量平均分子量が5万を超える高分子化合物の含有量が20重量部を超えると、得られる半導体チップ接合用接着材料において、上述した最低複素粘度及び複素粘度の比が大きくなりすぎることがある。
【0030】
上記エポキシ基を有する高分子化合物、特にエポキシ基含有アクリル樹脂を用いる場合、該エポキシ基を有する高分子化合物のエポキシ当量の好ましい下限は200、好ましい上限は1000である。上記エポキシ当量が200未満であると、得られる半導体チップ接合用接着材料の硬化物が堅く、脆くなることがある。上記エポキシ当量が1000を超えると、得られる半導体チップ接合用接着材料の硬化物の機械的強度、耐熱性等が不充分となることがある。
【0031】
上記反応可能な官能基を有する高分子化合物の含有量は特に限定されないが、上記エポキシ化合物100重量部に対する好ましい下限が1重量部、好ましい上限が500重量部である。上記反応可能な官能基を有する高分子化合物の含有量が1重量部未満であると、得られる半導体チップ接合用接着材料の硬化物は、熱によるひずみが発生する際、靭性が不充分となり、接合信頼性が劣ることがある。上記反応可能な官能基を有する高分子化合物の含有量が500重量部を超えると、得られる半導体チップ接合用接着材料において、上述した複素粘度の比が大きくなりすぎることがあり、また、硬化物の耐熱性が低下することがある。
上記反応可能な官能基を有する高分子化合物の含有量は、上述した範囲の複素粘度の比を達成する観点から、上記エポキシ化合物100重量部に対するより好ましい上限が400重量部である。
【0032】
本発明の半導体チップ接合用接着材料は、硬化剤を含有することが好ましい。
上記硬化剤は特に限定されず、例えば、アミン系硬化剤、酸無水物硬化剤、フェノール系硬化剤等が挙げられる。なかでも、酸無水物硬化剤が好ましい。
上記酸無水物硬化剤は特に限定されないが、2官能の酸無水物硬化剤が好ましい。上記2官能の酸無水物硬化剤は特に限定されず、例えば、フタル酸誘導体の無水物、無水マレイン酸等が挙げられる。
【0033】
また、上記硬化剤として、3官能以上の酸無水物硬化剤粒子を用いてもよい。上記3官能以上の酸無水物硬化剤粒子は特に限定されず、例えば、無水トリメリット酸等の3官能の酸無水物からなる粒子、無水ピロメリット酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸、メチルシクロヘキセンテトラカルボン酸無水物、ポリアゼライン酸無水物等の4官能以上の酸無水物からなる粒子等が挙げられる。
【0034】
上記3官能以上の酸無水物硬化剤粒子の平均粒子径は特に限定されないが、好ましい下限が0.1μm、好ましい上限が5μmである。上記3官能以上の酸無水物硬化剤粒子の平均粒子径が0.1μm未満であると、硬化剤粒子の凝集が生じ、半導体チップ接合用接着材料が増粘して、凸形状のフィレットを形成できないことがある。上記3官能以上の酸無水物硬化剤粒子の平均粒子径が5μmを超えると、得られる半導体チップ接合用接着材料において、硬化時に硬化剤粒子が充分に拡散することができず、硬化不良となることがある。
【0035】
本発明の半導体チップ接合用接着材料が上記硬化剤を含有する場合、上記硬化剤の含有量は特に限定されないが、上記エポキシ化合物と、上記反応可能な官能基を有する高分子化合物との合計100重量部に対する好ましい下限が5重量部、好ましい上限が150重量部である。上記硬化剤の含有量が5重量部未満であると、得られる半導体チップ接合用接着材料が充分に硬化しないことがある。上記硬化剤の含有量が150重量部を超えると、得られる半導体チップ接合用接着材料の接続信頼性が低下することがある。
上記硬化剤の含有量は、上記エポキシ化合物と、上記反応可能な官能基を有する高分子化合物との合計100重量部に対するより好ましい下限が10重量部、より好ましい上限が140重量部である。
【0036】
また、上記硬化剤が、上記2官能の酸無水物硬化剤と上記3官能以上の酸無水物硬化剤粒子とを含有する場合、これらの配合比は特に限定されないが、上記3官能以上の酸無水物硬化剤粒子の含有量(重量)を上記2官能の酸無水物硬化剤の含有量(重量)で除した値[=(3官能以上の酸無水物硬化剤粒子の含有量)/(2官能の酸無水物硬化剤の含有量)]の好ましい下限が0.1、好ましい上限が10である。上記値が0.1未満であると、上記3官能以上の酸無水物硬化剤粒子を添加する効果が充分に得られないことがある。上記値が10を超えると、得られる半導体チップ接合用接着材料の硬化物が脆くなり、充分な接着信頼性が得られないことがある。上記値のより好ましい下限は0.2、より好ましい上限は8である。
【0037】
本発明の半導体チップ接合用接着材料は、硬化促進剤を含有してもよい。
上記硬化促進剤は特に限定されないが、イミダゾール化合物が好ましい。上記イミダゾール化合物は上記エポキシ化合物との反応性が高いことから、上記イミダゾール化合物を含有することで、得られる半導体チップ接合用接着材料は速硬化性が向上する。
【0038】
上記イミダゾール化合物は特に限定されず、例えば、イミダゾールの1位をシアノエチル基で保護した1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、イソシアヌル酸で塩基性を保護したイミダゾール化合物(商品名「2MA−OK」、四国化成工業社製)、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン(商品名「2MZ−A」、四国化成工業社製)、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール(商品名「2P4MHZ」、四国化成工業社製)、フジキュア7000(富士化成工業)等が挙げられる。これらのイミダゾール化合物は、単独で用いられてもよく、二種以上が併用されてもよい。
【0039】
本発明の半導体チップ接合用接着材料が上記硬化促進剤を含有する場合、上記硬化促進剤の含有量は特に限定されないが、上記エポキシ化合物と、上記反応可能な官能基を有する高分子化合物との合計100重量部に対する好ましい下限が0.3重量部、好ましい上限が8重量部である。上記硬化促進剤の含有量が0.3重量部未満であると、得られる半導体チップ接合用接着材料が充分に硬化しないことがある。上記硬化促進剤の含有量が8重量部を超えると、得られる半導体チップ接合用接着材料において、未反応の硬化促進剤が接着界面に染み出すことにより、接合信頼性が低下することがある。
【0040】
本発明の半導体チップ接合用接着材料は、無機充填材を含有してもよい。
上記無機充填材を含有することで、得られる半導体チップ接合用接着材料の硬化物の線膨張率を低下させることができ、接合された半導体チップへの応力の発生及びハンダ等の導通部分のクラックの発生を良好に防止することができる。
上記無機充填材は特に限定されず、例えば、ヒュームドシリカ、コロイダルシリカ等のシリカ、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、ガラスパウダー、ガラスフリット等が挙げられる。
【0041】
上記無機充填材は、炭素数1〜10の炭化水素含有基を表面に有することが好ましい。
上記無機充填材が上記炭素数1〜10の炭化水素含有基を表面に有することにより、得られる半導体チップ接合用接着材料において、上記無機充填材の配合量が増えても最低複素粘度の上昇を低減することができる。また、上述した範囲の複素粘度の比を達成することも容易となる。更に、半導体チップ接合用接着材料に上記炭素数1〜10の炭化水素含有基を表面に有する無機充填材を配合することにより、得られる半導体装置の信頼性をより向上させることができる。
なお、上記炭素数1〜10の炭化水素含有基を表面に有さない無機充填材であっても、配合量を調整したり他の成分との配合比を調整したりすることにより上述した範囲の最低複素粘度及び複素粘度の比を達成できれば用いることができる。
【0042】
上記炭素数1〜10の炭化水素含有基は特に限定されないが、ヘキシル基、メチル基、フェニル基等が好ましい。上記炭素数1〜10の炭化水素含有基は、例えば、上記炭素数1〜10の炭化水素含有基を骨格中に有するシランカップリング剤等のカップリング剤を用いて、上記無機充填材に表面処理を施すことにより導入することができる。
【0043】
上記無機充填材として粒子状の無機充填材を用いる場合、平均粒子径の好ましい下限は1nm、好ましい上限は5μmである。上記粒子状の無機充填材の平均粒子径が1nm未満であると、得られる半導体チップ接合用接着材料において上記無機充填材の凝集が生じやすく、上述した範囲の複素粘度の比を達成できず、凸形状のフィレットを形成しやすい半導体チップ接合用接着材料が得られることがある。上記粒子状の無機充填材の平均粒子径が5μmを超えると、得られる半導体チップ接合用接着材料を用いて圧接合する際に、電極間で上記無機充填材を噛みこむことがある。
上記粒子状の無機充填材の平均粒子径のより好ましい下限は5nm、より好ましい上限は3μmであり、特に好ましい下限は10nm、特に好ましい上限は1μmである。
本明細書中、平均粒子径とは、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置で測定される%積算径が50%の粒子径を意味する。
【0044】
本発明の半導体チップ接合用接着材料が上記炭素数1〜10の炭化水素含有基を表面に有する無機充填材を含有する場合、上記無機充填材の含有量は特に限定されないが、上記エポキシ化合物と、上記反応可能な官能基を有する高分子化合物との合計100重量部に対する好ましい下限は5重量部、好ましい上限は500重量部である。上記無機充填材の含有量が5重量部未満であると、上記無機充填材を添加する効果をほとんど得ることができないことがある。上記無機充填材の含有量が500重量部を超えると、得られる半導体チップ接合用接着材料の硬化物の線膨張率は低下するものの、同時にせん断弾性率が上昇して非凸形状のフィレットを形成することができないことがある。これにより、接合された半導体チップへの応力及びハンダ等の導通部分のクラックが発生しやすくなることがある。
上記炭素数1〜10の炭化水素含有基を表面に有する無機充填材の含有量は、上記エポキシ化合物と、上記反応可能な官能基を有する高分子化合物との合計100重量部に対するより好ましい下限は10重量部、より好ましい上限は400重量部、更に好ましい下限は15重量部、更に好ましい上限は300重量部である。
【0045】
また、本発明の半導体チップ接合用接着材料が上記炭素数1〜10の炭化水素含有基を表面に有さない無機充填材を含有する場合、上記無機充填材の含有量は特に限定されないが、上記エポキシ化合物と、上記反応可能な官能基を有する高分子化合物との合計100重量部に対する好ましい下限は5重量部、好ましい上限は200重量部である。
また、本発明の半導体チップ接合用接着材料が上記平均粒子径が10nm以下の無機充填材を含有する場合、上記無機充填材の含有量は特に限定されないが、表面処理の有無にかかわらず、上記エポキシ化合物と、上記反応可能な官能基を有する高分子化合物との合計100重量部に対して50重量部以下であることが好ましい。
【0046】
本発明の半導体チップ接合用接着材料は、本発明の効果を阻害しない範囲内で希釈剤を含有してもよい。
上記希釈剤は特に限定されないが、半導体チップ接合用接着材料の加熱硬化時に硬化物に取り込まれる反応性希釈剤が好ましい。なかでも、得られる半導体チップ接合用接着材料の接着信頼性を悪化させないために、1分子中に2以上の官能基を有する反応性希釈剤がより好ましい。
上記1分子中に2以上の官能基を有する反応性希釈剤として、例えば、脂肪族型エポキシ、エチレンオキサイド変性エポキシ、プロピレンオキサイド変性エポキシ、シクロヘキサン型エポキシ、ジシクロペンタジエン型エポキシ、フェノール型エポキシ等が挙げられる。
【0047】
本発明の半導体チップ接合用接着材料が上記希釈剤を含有する場合、上記希釈剤の含有量は特に限定されないが、上記エポキシ化合物と、上記反応可能な官能基を有する高分子化合物との合計100重量部に対する好ましい下限は1重量部、好ましい上限は300重量部である。上記希釈剤の含有量が1重量部未満であると、上記希釈剤を添加する効果をほとんど得ることができないことがある。上記希釈剤の含有量が300重量部を超えると、得られる半導体チップ接合用接着材料の硬化物が硬く脆くなるため、接着信頼性が劣ることがある。
上記希釈剤の含有量は、上記エポキシ化合物と、上記反応可能な官能基を有する高分子化合物との合計100重量部に対するより好ましい下限が5重量部、より好ましい上限が200重量部である。
【0048】
本発明の半導体チップ接合用接着材料は、必要に応じて、無機イオン交換体を含有してもよい。上記無機イオン交換体のうち、市販品として、例えば、IXEシリーズ(東亞合成社製)等が挙げられる。本発明の半導体チップ接合用接着材料が上記無機イオン交換体を含有する場合、上記無機イオン交換体の含有量は特に限定されないが、本発明の半導体チップ接合用接着材料中の好ましい下限が1重量%、好ましい上限が10重量%である。
【0049】
本発明の半導体チップ接合用接着材料は、その他必要に応じて、ブリード防止剤、シランカップリング剤、イミダゾールシランカップリング剤等の接着性付与剤、増粘剤等の添加剤を含有してもよい。
【0050】
本発明の半導体チップ接合用接着材料を製造する方法は特に限定されず、例えば、上記エポキシ化合物、上記反応可能な官能基を有する高分子化合物、上記硬化剤、上記無機充填材等を所定量配合して混合する方法等が挙げられる。
上記混合する方法は特に限定されず、例えば、ホモディスパー、万能ミキサー、バンバリーミキサー、ニーダー等を用いて混合する方法等が挙げられる。
【0051】
本発明の半導体チップ接合用接着材料の用途は特に限定されず、例えば、ウエハ又は半導体チップを、他のウエハ、他の半導体チップ又は基板に実装する際に用いられる。なかでも、本発明の半導体チップ接合用接着材料はフリップチップ実装に用いられることが好ましく、電極接合後にアンダーフィルを充填するフリップチップ実装よりも、ウエハ、半導体チップ又は基板に接着剤層を予め搭載するフリップチップ実装に用いられることがより好ましい。
【0052】
本発明の半導体チップ接合用接着材料は、フィレット形状を、凸形状にならないように制御することができることから、本発明の半導体チップ接合用接着材料を用いることで、信頼性の高い半導体装置を製造することができる。
本発明の半導体チップ接合用接着材料を用いた半導体装置の製造方法は特に限定されず、例えば、本発明の半導体チップ接合用接着材料に溶剤を添加して調製した接着剤溶液をウエハに塗布し、前記溶剤を乾燥してフィルム化する方法等が挙げられる。このような半導体装置の製造方法もまた、本発明の1つである。
【0053】
上記溶剤として、例えば、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート等の120〜250℃程度の沸点を有する中沸点溶剤又は高沸点溶剤等が挙げられる。本発明の半導体チップ接合用接着材料に溶剤を添加して調製した接着剤溶液をウエハに塗布する方法は特に限定されず、例えば、スピンコート、スクリーン印刷等が挙げられる。
【0054】
また、本発明の半導体チップ接合用接着材料を用いた半導体装置の製造方法として、本発明の半導体チップ接合用接着材料が溶剤を含有しない場合には、例えば、本発明の半導体チップ接合用接着材料をウエハに塗布し、Bステージ化剤又は露光によってフィルム化する方法等も挙げられる。
【0055】
本発明の半導体チップ接合用接着材料からなる半導体チップ接合用接着フィルムもまた、本発明の1つである。
本発明の半導体チップ接合用接着フィルムの厚みは特に限定されないが、好ましい下限は2μm、好ましい上限は500μmである。上記厚みが2μm未満であると、異物の混入によって平滑なフィルムが得られないことがある。上記厚みが500μmを超えると、得られる半導体チップ接合用接着フィルム中に溶剤が残留しやすく、圧接合時及び硬化時に気泡が発生することがある。
【0056】
本発明の半導体チップ接合用接着フィルムを製造する方法は特に限定されず、例えば、上記エポキシ化合物、上記反応可能な官能基を有する高分子化合物、上記硬化剤、上記無機充填材、溶剤等を所定量配合して混合し、接着剤溶液を調製した後、フィルム化する方法等が挙げられる。
上記混合する方法は特に限定されず、例えば、ホモディスパー、万能ミキサー、バンバリーミキサー、ニーダー等を用いて混合する方法等が挙げられる。上記フィルム化する方法は特に限定されず、例えば、溶剤としてメチルエチルケトン等の低沸点溶剤を用いて、ダイコーター、バーコーター、グラビアコーター、スリットコーター等を使用して上記接着剤溶液をセパレーター上に塗工した後、加熱等により溶剤を乾燥する方法等が挙げられる。
【0057】
本発明の半導体チップ接合用接着フィルムの用途は特に限定されず、例えば、ウエハ又は半導体チップを、他のウエハ、他の半導体チップ又は基板に実装する際に用いられる。なかでも、本発明の半導体チップ接合用接着フィルムはフリップチップ実装に用いられることが好ましく、電極接合後にアンダーフィルを充填するフリップチップ実装よりも、ウエハ、半導体チップ又は基板に接着剤層を予め搭載するフリップチップ実装に用いられることがより好ましい。
【0058】
本発明の半導体チップ接合用接着フィルムは、フィレット形状を、凸形状にならないように制御することができることから、本発明の半導体チップ接合用接着フィルムを用いることで、信頼性の高い半導体装置を製造することができる。
本発明の半導体チップ接合用接着フィルムを用いた半導体装置の製造方法は特に限定されず、例えば、本発明の半導体チップ接合用接着フィルムをラミネートによってウエハ又は半導体チップに供給する方法、本発明の半導体チップ接合用接着フィルムを半導体チップのチップサイズに合わせて裁断し、他の半導体チップ又は基板に供給する方法等が挙げられる。このような半導体装置の製造方法もまた、本発明の1つである。
【0059】
本発明の半導体装置の製造方法により得られる半導体装置であって、半導体チップと、他の半導体チップ又は基板とが接着剤層を介してボンディングされており、前記半導体チップの側壁に這い上がるフィレットが形成されており、前記半導体チップの側壁と前記フィレットとが成す角度が70°未満である半導体装置もまた、本発明の1つである。
上記半導体チップの側壁と上記フィレットとが成す角度が70°以上であると、凸部に応力が集中して、半導体装置の信頼性が低下する。
【発明の効果】
【0060】
本発明によれば、フィレット形状を、凸形状にならないように制御し、信頼性の高い半導体装置を製造することのできる半導体チップ接合用接着材料を提供することができる。また、本発明によれば、該半導体チップ接合用接着材料からなる半導体チップ接合用接着フィルム、該半導体チップ接合用接着材料又は該半導体チップ接合用接着フィルムを用いた半導体装置の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の半導体チップ接合用接着材料を用いて基板上に半導体チップをボンディングし、非凸形状のフィレットを形成した状態の一例を示す断面図である。
【図2】従来の半導体チップ接合用接着材料を用いて基板上に半導体チップをボンディングし、凸形状のフィレットを形成した状態の一例を示す断面図である。
【図3】本発明の半導体チップ接合用接着材料を用いて基板上に半導体チップをボンディングし、半導体チップの側壁とフィレットとが成す角度θが70°未満のフィレットを形成した状態の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0062】
以下に実施例を掲げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0063】
(実施例1〜31及び比較例1〜18)
表1〜5の組成に従って、ホモディスパーを用いて下記に示す各材料を攪拌混合し、接着剤溶液を調製した。アプリケーターによって接着剤溶液を離型処理されたペットフィルム上に塗工し、溶剤を乾燥して100μm厚の半導体チップ接合用接着フィルムを得た。
【0064】
(1)エポキシ化合物
・ビフェニル型エポキシ樹脂(商品名「YX−4000」、ジャパンエポキシレジン社製)
・ビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名「1004AF」、ジャパンエポキシレジン社製)
・ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(商品名「HP−7200HH」DIC)
・ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(商品名「EP−4088S」アデカ)
【0065】
(2)反応可能な官能基を有する高分子化合物
・グリシジル基含有アクリル樹脂(重量平均分子量20万、商品名「G−2050M」、日油社製)、
・グリシジル基含有アクリル樹脂(重量平均分子量2万、商品名「G−0250SP」、日油社製)
・グリシジル基含有アクリル樹脂(重量平均分子量8千、商品名「G−0130S」、日油社製)
・グリシジル基含有アクリル化合物(重量平均分子量10万、商品名「G−1010S」、日油社製)
【0066】
(3)硬化剤
・トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸(商品名「YH−306」、JER社製)
【0067】
(4)硬化促進剤
・2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン イソシアヌル酸付加塩(商品名「2MA−OK」、四国化成工業社製)
【0068】
(5)無機充填材
・表面フェニル処理無機フィラー(シリカ)(商品名「SE−1050−SPT」、アドマテックス社製、平均粒子径300nm)
・表面フェニル処理無機フィラー(シリカ)(商品名「SE−2050−SPJ」、アドマテックス社製、平均粒子径500nm)
・表面フェニル処理無機フィラー(シリカ)(商品名「SS−01」、トクヤマ社製、平均粒子径100nm)
・表面フェニル処理無機フィラー(シリカ)(商品名「YA050−MJF」、アドマテックス社製、平均粒子径50nm)
・表面無処理無機フィラー(シリカ)(商品名「SE−1050」、アドマテックス社製、平均粒子径300nm)
・表面無処理無機フィラー(シリカ)(商品名「SE−2050」、アドマテックス社製、平均粒子径500nm)
・表面無処理無機フィラー(シリカ)(商品名「QS−40」、トクヤマ社製、平均粒子径7nm)
・表面にCH−Si−O−基を有するシリカ粒子(商品名「MT−10」、トクヤマ社製、平均粒子径15nm)
・表面にCH−Si−O−基を有するシリカ粒子(商品名「SE−2050−STJ」、 アドマテックス社製、平均粒子径500nm)
表面にCH−Si−O−基を有するシリカ粒子(商品名「SE−1050−STT」、 アドマテックス社製、平均粒子径300nm)
・表面ヘキサメチルジシラザン処理無機フィラー(シリカ)(商品名「HM−20L」、トクヤマ社製、平均粒子径12nm)
・表面シリコーンオイル処理無機フィラー(シリカ)(商品名「PM−20L」、トクヤマ社製、平均粒子径12nm)
・表面エポキシシラン処理無機フィラー(シリカ)(商品名「SE−1050−SET」、 アドマテックス社製、平均粒子径300nm)
・表面メタクリル処理無機フィラー(シリカ)(商品名「SE−1050−SMT」、 アドマテックス社製、平均粒子径300nm)
【0069】
(6)その他
シランカップリング剤(商品名「KBM−573」、信越化学工業社製)
溶剤 メチルエチルケトン(MEK、和光純薬工業社製)
【0070】
<評価>
実施例及び比較例で得られた半導体チップ接合用接着フィルムについて、以下の評価を行った。結果を表1〜5に示す。
【0071】
(1)25℃せん断弾性率Grの測定
得られた半導体チップ接合用接着フィルムについて、動的粘弾性測定装置(DVA−200、アイティー計測器社製)を用いて、厚み600μm、幅6mm、長さ10mmの半導体チップ接合用接着剤フィルムについて、−20℃から80℃までせん断測定することにより、25℃せん断弾性率Gr(MPa)を求めた。
【0072】
(2)ハンダ融点までの最低複素粘度η*minの測定
得られた半導体チップ接合用接着フィルムについて、レオメーター(STRESSTECH、REOLOGICA社製)を用いて、サンプル厚み600μm、歪制御(1rad)、周波数10Hz、昇温速度20℃/min、測定温度範囲60℃から300℃まで測定を行い、測定中に最も複素粘度が低下した値をハンダ融点までの最低複素粘度η*min(Pa・s)とした。
【0073】
(3){複素粘度η*(1Hz)}/{複素粘度η*(10Hz)}の測定
得られた半導体チップ接合用接着フィルムについて、STRESSTECH(REOLOGICA社製)を用いて、サンプル厚み600μm、歪制御(1rad)、周波数1Hz又は10Hz、温度140℃で測定を行うことにより、{複素粘度η*(1Hz)}/{複素粘度η*(10Hz)}の値を求めた。
【0074】
(4)フィレットの断面形状
得られた半導体チップ接合用接着フィルムを、ハンダボール(高さ85μm)が150μm間隔でチップ全面に3136個形成されたフルアレイのTEGチップ(10mm×10mm×厚み725μm)にラミネートした後、チップサイズに合わせて半導体チップ接合用接着フィルムを裁断し、樹脂付TEGチップを得た。次いで、得られた樹脂付TEGチップのハンダとデイジーチェーンとなるように配線されたハンダプリコート付ガラスエポキシTEG基板に、ステージ温度120℃、ヘッド温度140℃20秒、280℃5秒、ヘッド圧100Nで樹脂付TEGチップをフリップチップボンディングした。その後、190℃30分でポストキュア(後硬化)を行い、積層体を得た。
得られた積層体を冷間樹脂で埋め込んだ後、チップ辺の中央付近の部分まで断面研磨を行い、TEGチップの側壁とフィレットとが成す角度(フィレット角度)を測定した。
【0075】
(5)リフロー試験
上記(4)にて得られた積層体について、あらかじめ導通抵抗値(以下、初期抵抗とする)を測定しておき、60℃、60%RHで40時間吸湿させ、ピーク温度260℃のリフローオーブンに3回通してリフロー試験を行った後、再び導通抵抗値を測定した。リフロー試験後の導通抵抗値が初期抵抗値から10%以上変化した場合を不良とし、8つの積層体を作製して不良個数を評価した。
【0076】
(6)冷熱サイクル試験1
上記(5)にてリフロー試験を行った積層体について、−55〜125℃(30分/1サイクル)、1000サイクルの冷熱サイクル試験を行った後、導通抵抗値を測定した。冷熱サイクル試験後の導通抵抗値が初期抵抗値から10%以上変化した場合を不良とし、8つの積層体を作製して不良個数を評価した。
不良個数が0個であった場合を○、1個であった場合を△、2個以上であった場合を×とした。
【0077】
(7)冷熱サイクル試験2
上記(5)にてリフロー試験を行った積層体について、−55〜125℃(30分/1サイクル)、3000サイクルの冷熱サイクル試験を行った後、導通抵抗値を測定した。冷熱サイクル試験後の導通抵抗値が初期抵抗値から10%以上変化した場合を不良とし、8つの積層体を作製して不良個数を評価した。
不良個数が2個以下であった場合を◎、3〜4個であった場合を○、5〜6個であった場合を△、7個以上であった場合を×とした。
【0078】
【表1】

【0079】
【表2】

【0080】
【表3】

【0081】
【表4】

【0082】
【表5】

【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明によれば、フィレット形状を、凸形状にならないように制御し、信頼性の高い半導体装置を製造することのできる半導体チップ接合用接着材料を提供することができる。また、本発明によれば、該半導体チップ接合用接着材料からなる半導体チップ接合用接着フィルム、該半導体チップ接合用接着材料又は該半導体チップ接合用接着フィルムを用いた半導体装置の製造方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0084】
1 基板
2 半導体チップ
3 半導体チップ接合用接着材料
4 バンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘弾性測定装置で測定した25℃せん断弾性率Grが1×10Pa以上、レオメーターで測定したハンダ融点までの最低複素粘度η*minが5×10Pa・s以下であり、温度140℃、歪量1rad、周波数1Hzで測定した複素粘度η*(1Hz)が温度140℃、歪量1rad、周波数10Hzで測定した複素粘度η*(10Hz)の0.5〜4.5倍であることを特徴とする半導体チップ接合用接着材料。
【請求項2】
エポキシ化合物、及び、前記エポキシ化合物と反応可能な官能基を有する高分子化合物を含有し、前記エポキシ化合物と反応可能な官能基を有する高分子化合物の重量平均分子量が5万以下であることを特徴とする請求項1記載の半導体チップ接合用接着材料。
【請求項3】
ウエハ、半導体チップ又は基板に接着剤層を予め搭載するフリップチップ実装に用いられることを特徴とする請求項1又は2記載の半導体チップ接合用接着材料。
【請求項4】
請求項1、2又は3記載の半導体チップ接合用接着材料を用いた半導体装置の製造方法であって、
請求項1、2又は3記載の半導体チップ接合用接着材料に溶剤を添加して調製した接着剤溶液をウエハに塗布し、前記溶剤を乾燥してフィルム化する
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項5】
請求項1、2又は3記載の半導体チップ接合用接着材料に溶剤を添加して調製した接着剤溶液をスピンコート又はスクリーン印刷によってウエハに塗布することを特徴とする請求項4記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
請求項1、2又は3記載の半導体チップ接合用接着材料からなることを特徴とする半導体チップ接合用接着フィルム。
【請求項7】
請求項6記載の半導体チップ接合用接着フィルムを用いた半導体装置の製造方法であって、
請求項6記載の半導体チップ接合用接着フィルムをラミネートによってウエハ又は半導体チップに供給する
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項8】
請求項6記載の半導体チップ接合用接着フィルムを用いた半導体装置の製造方法であって、
請求項6記載の半導体チップ接合用接着フィルムを半導体チップのチップサイズに合わせて裁断し、他の半導体チップ又は基板に供給する
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2012−89877(P2012−89877A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−281787(P2011−281787)
【出願日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【分割の表示】特願2011−522345(P2011−522345)の分割
【原出願日】平成23年4月8日(2011.4.8)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】