説明

半導体リソグラフィー用共重合体、組成物及びチオール化合物

【課題】 半導体リソグラフィーにおいて、現像コントラストやDOF等のリソグラフィー特性の優れた共重合体と該共重合体を含む組成物及び該共重合体を与えるチオール化合物を提供する
【解決手段】 本発明の半導体リソグラフィー用共重合体は、少なくとも、酸解離性溶解抑制基でアルカリ可溶性基を保護した構造を有する繰り返し単位(A)と、式(F)
【化46】


(式中、X及びXはそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子又はハロゲン原子が置換しても良い炭素数1〜4の炭化水素基を表し、Y11〜Y14は水素原子、若しくは、Y11とY12の間又はY13とY14の間で形成したエーテル結合或いは炭素数1〜2の炭化水素結合を表し、Y21〜Y25はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜4の炭化水素基を表し、nは0又は1の整数を表す。)
で表される末端構造(F)を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体の製造に使用されるリソグラフィー用共重合体と、該共重合体を含む組成物及び該共重合体を与えるチオール化合物に関するものであり、更に詳しくは、遠紫外線、X線、電子線等の各種放射線を用いる微細加工に好適な半導体リソグラフィー用共重合体と、該共重合体を含む組成物及び該共重合体を与えるチオール化合物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体の製造のために用いられるリソグラフィーにおいては、集積度の増大に伴い、より微細なパターンの形成が求められている。パターンの微細化には露光光源の短波長化が不可欠であるが、現在ではフッ化クリプトン(KrF)エキシマレーザー光(波長248nm)によるリソグラフィーが量産の中心になり、フッ化アルゴン(ArF)エキシマレーザー光(波長193nm)によるリソグラフィーも量産工程で導入され始めている。更には、フッ素ダイマー(F)エキシマレーザー光(波長157nm)、極紫外線(EUV)、X線、電子線等によるリソグラフィーも研究段階にある。
【0003】
これらのリソグラフィー技術に用いられるレジスト用ポリマーは、アルカリ現像液に可溶な極性基(以下、アルカリ可溶性基ということがある。)を酸解離性かつ非極性であってアルカリ現像液に対する溶解性を抑制する置換基(以下、酸解離性溶解抑制基ということがある。)で保護した構造を有する繰り返し単位と、半導体基板等に対する密着性を高めるための極性基を有する繰り返し単位を必須成分とし、必要に応じてレジスト溶剤やアルカリ現像液への溶解性を調節するための極性若しくは非極性の置換基を有する繰り返し単位を含んで構成される。
【0004】
例えば、露光源としてKrFエキシマレーザーを用いるリソグラフィーにおいては、ヒドロキシスチレン由来の繰り返し単位と、ヒドロキシスチレン由来のフェノール水酸基を酸解離性溶解抑制基で保護した繰り返し単位、若しくは(メタ)アクリル酸由来のカルボキシル基を酸解離性溶解抑制基で保護した繰り返し単位等を有する共重合体(特許文献1〜4等参照)が知られている。又、ドライエッチング耐性や、露光部と未露光部の溶解コントラストを高めるために脂環式炭化水素基を酸解離性溶解抑制基とした繰り返し単位を有する共重合体(特許文献5〜6等参照)が知られている。
【0005】
露光源としてより短波長のArFエキシマレーザー等を用いるリソグラフィーにおいては、193nmの波長に対する吸光係数が高いヒドロキシスチレン由来の繰り返し単位を有さない共重合体が検討され、半導体基板等に対する密着性を高めるための極性基として、ラクトン構造を繰り返し単位に有する共重合体(特許文献7〜10等参照)や、極性基含有脂環式炭化水素基を繰り返し単位に有する共重合体(特許文献11等参照)が知られている。
【0006】
又、さらなる微細加工の要求に対応するために、繰り返し単位だけでなく、分子鎖の末端に、置換又は無置換である、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、カルバモイル基、ヒドロキシイミノ基等の極性基を有する共重合体が知られている(特許文献12〜14等参照)。更には、分子鎖の末端にラクトン構造を有する共重合体(特許文献15等参照)や、2−ヒドロキシ−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロピリデン基が飽和炭化水素基に置換した構造を有する共重合体(特許文献16等参照)等が知られている。
【0007】
しかしながら、いずれの例においても、半導体リソグラフィーにおける微細加工に要求される現像コントラスト(露光エネルギーに対するアルカリ現像液溶解速度曲線の傾きで、tanθ等のパラメータで表すことができる)や焦点深度(以下、DOF)等のリソグラフィー特性を満足するものが得られていなかった。
【0008】
【特許文献1】特開昭59−045439号公報
【特許文献2】特開平05−113667号公報
【特許文献3】特開平10−026828号公報
【特許文献4】特開昭62−115440号公報
【特許文献5】特開平09−073173号公報
【特許文献6】特開平10−161313号公報
【特許文献7】特開平09−090637号公報
【特許文献8】特開平10−207069号公報
【特許文献9】特開2000−026446号公報
【特許文献10】特開2001−242627号公報
【特許文献11】特開平11−109632号公報
【特許文献12】特開平10−055069号公報
【特許文献13】特開2000−019737号公報
【特許文献14】特開2002−020424号公報
【特許文献15】特開2004−250377号公報
【特許文献16】特開2004−292428号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は前記の背景技術に鑑みなされたものであり、その目的は、半導体リソグラフィーにおいて、現像コントラストやDOF等のリソグラフィー特性の優れた共重合体と該共重合体を含む組成物及び該共重合体を与えるチオール化合物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは上記課題を解決するため、鋭意検討した結果、少なくとも酸解離性溶解抑制基でアルカリ可溶性基を保護した構造を有する繰り返し単位(A)と、式(F)で表される末端構造(F)を有することを特徴とする半導体リソグラフィー用共重合体と、該共重合体を含む組成物及び該共重合体を与えるチオール化合物によって、前記背景技術の課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち、本発明の半導体リソグラフィー用共重合体は、少なくとも、酸解離性溶解抑制基でアルカリ可溶性基を保護した構造を有する繰り返し単位(A)と、式(F)
【化7】

(式中、X及びXはそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子又はハロゲン原子が置換しても良い炭素数1〜4の炭化水素基を表し、Y11〜Y14は水素原子、若しくは、Y11とY12の間又はY13とY14の間で形成したエーテル結合或いは炭素数1〜2の炭化水素結合を表し、Y21〜Y25はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜4の炭化水素基を表し、nは0又は1の整数を表す。)
で表される末端構造(F)を有することを特徴とするものであり、本発明の半導体リソグラフィー用組成物は、本発明の半導体リソグラフィー用共重合体と、感放射線性酸発生剤とを含むことを特徴とするものである。
【0012】
又、本発明のチオール化合物は、式(f)
【化8】

(式中、X及びXはそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子又はハロゲン原子が置換しても良い炭素数1〜4の炭化水素基を表し、Y11〜Y14は水素原子、若しくは、Y11とY12の間又はY13とY14の間で形成したエーテル結合或いは炭素数1〜2の炭化水素結合を表し、Y21〜Y25はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜4の炭化水素基を表し、nは0又は1の整数を表す。)
で表されることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の半導体リソグラフィー用共重合体を用いることにより、現像コントラストやDOF等のリソグラフィー特性に優れた半導体リソグラフィー用組成物を提供でき、該組成物を用いることにより、半導体の製造に好適な、微細かつ良好なリソグラフィーパターンを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の半導体リソグラフィー用共重合体は、上記の通り、少なくとも酸解離性溶解抑制基でアルカリ可溶性基を保護した構造を有する繰り返し単位(A)と、式(F)で表される末端構造(F)を有することを特徴とするが、本発明の共重合体は、ラクトン構造を有する繰り返し単位(C)を含むことが好ましく、又、酸に対して安定な脂環式炭化水素基を有する繰り返し単位(D)を含むことがより好ましい。
【0015】
本発明の半導体リソグラフィー用共重合体における末端構造である式(F)
【化9】

において、X及びXはそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子又はハロゲン原子が置換しても良い炭素数1〜4の炭化水素基を表し、Y11〜Y14は水素原子、若しくは、Y11とY12の間又はY13とY14の間で形成したエーテル結合或いは炭素数1〜2の炭化水素結合を表し、Y21〜Y25はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜4の炭化水素基を表し、nは0又は1の整数を表している。
【0016】
上記末端構造(F)は、以下の式(f)
【化10】

で表される本発明のチオール化合物を連鎖移動剤として、少なくとも繰り返し単位(A)を与える単量体を有機溶媒中でラジカル重合する工程(以下、工程(P))により導入することができる。尚、式(f)におけるX等の置換基等は、式(F)におけるそれらと同一である。
【0017】
式(f)の具体的な例として、以下に示すチオール化合物を挙げることができ、これらは単独若しくは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【化11】

【化12】

【0018】
式(f)で表されるチオール化合物の中でも、製造が比較的容易であることから、例えば(f101)〜(f109)で表されるようなノルボルナン環やオキサノルボルナン環を有するチオール化合物が好ましく、(f101)〜(f108)で表されるノルボルナン環を有するチオール化合物がより好ましく、中でも(f101)や(f102)で表されるチオール化合物が特に好ましい。
【0019】
上記本発明のチオール化合物の合成方法は、特に限定されないが、例えば、式(fp1)で表される不飽和炭化水素に硫化水素を付加する方法;式(fp1)で表される不飽和炭化水素にチオ硫酸、チオプロピオン酸等のチオカルボン酸を付加した後、加水分解若しくは加アルコール分解する方法;塩素原子又は臭素原子を含有する化合物に式(fp2)で表される化合物にチオ尿素を作用させ、生成するチウロニウム塩をアルカリ条件下に加水分解する方法等によって合成することができる。尚、式(fp1)及び(fp2)におけるX等の置換基は、ハロゲン原子であるXを除き、式(F)におけるそれらと同一である。
【化13】

【0020】
本発明の半導体リソグラフィー用共重合体における、全繰り返し単位に対する末端構造(F)の組成比は、高いほど現像コントラストやDOF等のリソグラフィー特性が向上するが、高すぎると、共重合体の分子量が低くなりすぎ、塗膜を形成しにくくなるため好ましくない。従って、通常0.1〜20モル%、好ましくは0.5〜10モル%、特に好ましくは1〜8%の範囲から選ぶことができる。
【0021】
式(F)で表される末端構造の含有量を上記の範囲にするためには、上記チオール化合物を連鎖移動剤として使用する際の使用量を、原料モノマー100モルに対して通常0.1〜20モル、好ましくは0.5〜10モル、特に好ましくは1〜8モルとする。尚、連鎖移動剤の使用量が多いほど、共重合体中に含まれる前記の末端構造の含有量は大きくなるが、一方で、得られる共重合体の分子量は小さくなるので、所望の平均分子量が得られる範囲で選択する。
【0022】
本発明の半導体リソグラフィー用共重合体における、少なくとも酸解離性溶解抑制基でアルカリ可溶性基を保護した構造を有する繰り返し単位(A)を与える単量体は、式(a)
【化14】

で表すことができる。
【0023】
上記式中、Rは水素原子又は炭素数1〜4の炭化水素基を表し、
11は炭素数1〜4の炭化水素基を、R12及びR13はそれぞれ独立して炭素数1〜12の直鎖状、分岐状又は単環若しくは有橋環を有する脂環式炭化水素基、或いは、R12とR13がお互いに結合して形成した炭素数5〜12の単環又は有橋環を有する脂環式炭化水素基を表すか、或いは、
11及びR12は水素原子又は炭素数1〜4の炭化水素基を、R13は炭素数1〜12の直鎖状、分岐状又は単環若しくは有橋環を有する脂環式炭化水素基が置換したオキシ基を表し、
は炭素数7〜12の有橋環を有する脂環式炭化水素基を表し、mは0又は1の整数を表している。
【0024】
式(a)の具体的な例として、以下に示す(メタ)アクリレートを挙げることができ、これらは単独若しくは2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【化15】

【化16】

【化17】

【化18】

【化19】

【化20】

【化21】

【化22】

【化23】

【0025】
又、本発明の半導体リソグラフィー用共重合体には、半導体基板や下層膜との密着性及びレジスト溶媒への溶解性を高めるため、式(C)
【化24】

で表されるラクトン構造を有する繰り返し単位(C)を含むことが好ましい。
【0026】
上記式中、Rは水素原子又は炭素数1〜4の炭化水素基、Aは単結合又は炭素数5〜12の単環若しくは有橋環を有する脂環式炭化水素基を表し、Lは一般式(L)
【化25】

(式中、R31〜R36のいずれか1つ又は2つが一般式(C)のAとの連結基であり、残りは水素原子又は炭素数1〜4の炭化水素基若しくはアルコキシル基を表す。)
で表されるラクトン構造を表し、AとLは1乃至2の前記連結基で結合している。
【0027】
繰り返し単位(C)を与える単量体は、式(c)
【化26】

で表すことができる。尚、式(c)におけるR等の置換基等は、式(C)におけるそれらと同一である。
【0028】
式(c)で表される単量体の例としては、以下に示す(メタ)アクリレートを挙げることができ、これらは単独若しくは2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【化27】

【化28】

【化29】

【化30】

【化31】

【化32】

【0029】
更に、本発明の半導体リソグラフィー用共重合体には、レジスト溶剤やアルカリ現像液への溶解性を調節したり、プラズマエッチング耐性を向上させたりするために、一般式(D)
【化33】

で表される酸に安定な脂環式炭化水素基を有する繰り返し単位(D)を含むことが好ましい。
【0030】
上記式中、Rは水素原子又は炭素数1〜4の炭化水素基、Aはハロゲン原子が置換しても良い炭素数7〜12の有橋環を有する脂環式炭化水素基、kは0〜3の整数を表している。
【0031】
繰り返し単位(D)を与える単量体は、一般式(d)
【化34】

で表すことができる。尚、式(d)におけるR等の置換基等は、式(D)におけるそれらと同一である。
【化35】

【化36】

【化37】

【0032】
式(d)で表される単量体の中でも、良好なレジストパターン形状を得やすいことや、レジスト膜のプラズマエッチング耐性が高いことから、(d301)〜(d303)及び(d351)〜(d353)のヒドロキシアダマンチル(メタ)アクリレート類が好ましく、中でも(d301)及び(d351)は特に好ましい。
【0033】
更に又、本発明の半導体リソグラフィー用共重合体には、繰り返し単位(C)及び(D)と同様、半導体基板や下層膜への密着性、レジスト溶媒への溶解性、プラズマエッチング耐性等を向上させる目的で、式(DS)
【化38】

で表される酸に安定な芳香族炭化水素基を有する繰り返し単位(DS)を含めることができる。尚、式中、Rは水素原子若しくは炭素数1〜4の炭化水素基、iは0〜1の整数を表している。
【0034】
繰り返し単位(DS)を与える単量体は、式(ds)
【化39】

で表すことができる。尚、式(ds)におけるR等の置換基等は、式(DS)におけるそれらと同一である。
【0035】
式(ds)の具体的な例として、スチレン、p−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、p−ヒドロキシ−α−メチルスチレン、m−ヒドロキシ−α−メチルスチレン等のスチレン類を挙げることができ、これらは単独若しくは2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0036】
この他、本発明の半導体リソグラフィー用共重合体には、溶解性やレジスト膜中の酸の拡散速度を制御する目的で、一般式(E)
【化40】

で表される繰り返し単位(E)を含むことができる。尚、式中、Rは水素原子若しくは炭素数1〜4の炭化水素基、Aはハロゲン原子が置換しても良い炭素数7〜12の有橋環を有する脂環式炭化水素基、jは1〜2の整数を表している。
【0037】
繰り返し単位(E)を与える単量体は、一般式(e)
【化41】

で表すことができる。尚、式(e)におけるR等の置換基等は、式(E)におけるそれらと同一である。
【0038】
一般式(e)の具体的な例として、以下に示す(メタ)アクリレートを挙げることができ、これらは単独又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【化42】

【0039】
これらの単量体は、繰り返し単位(A)、(C)及び(D)のそれぞれについて1種類若しくは2種類以上を混合して用いることができ、繰り返し単位(A)、(C)、(D)の組成比は、半導体リソグラフィーにおける基本性能を損なわない範囲で選択することができる。即ち、各繰り返し単位の組成は、繰り返し単位(A)が10〜60モル%、繰り返し単位(C)が0〜70モル%、繰り返し単位(D)が0〜40モル%の範囲から選ぶことができる。特に好ましくは、繰り返し単位(A)が20〜50モル%、繰り返し単位(C)が20〜60モル%、繰り返し単位(D)が5〜35モル%である。
【0040】
繰り返し単位(DS)は、波長248nmの透過率は比較的高いが、波長193nmの透過率は比較的低い。従って、繰り返し単位(DS)の組成は、リソグラフィーに用いる放射線の波長が248nmの場合は、通常0〜80モル%、好ましくは0〜70モル%、特に好ましくは0〜60モル%の範囲から選択できる。又、リソグラフィーに用いる放射線の波長が193nmの場合は、通常0〜30モル%、好ましくは0〜20モル%、特に好ましくは0〜10モル%の範囲から選択することができる。
【0041】
本発明の半導体リソグラフィー用共重合体の重量平均分子量(Mw)は、高すぎるとレジスト溶剤やアルカリ現像液への溶解性が低くなり、一方、低すぎるとレジストの塗膜性能が悪くなることから、2,000〜40,000の範囲内であることが好ましく、3,000〜30,000の範囲内であることがより好ましく、4,000〜25,000の範囲内であることが特に好ましい。分子量分布(Mw/Mn)は1.0〜5.0の範囲内であることが好ましく、1.0〜3.0の範囲内であることがより好ましく、1.2〜2.5の範囲内であることが特に好ましい。
【0042】
少なくとも繰り返し単位(A)を与える単量体を重合する工程(P)は、有機溶媒中のラジカル重合によって実施することができ、その方法は公知の方法から制限なく選択できる。このような方法として、例えば、(1)単量体を重合開始剤と共に溶媒に溶解し、そのまま加熱して重合させるいわゆる一括法、(2)単量体を重合開始剤と共に必要に応じて溶媒に溶解し、加熱した溶媒中に滴下して重合させるいわゆる滴下法、(3)単量体と重合開始剤と別々に必要に応じて溶媒に溶解し、加熱した溶媒中に別々に滴下して重合させるいわゆる独立滴下法、(4)単量体を溶媒に溶解して加熱し、別途溶媒に溶解した重合開始剤を滴下して重合させる開始剤滴下法等が挙げられる。ここで、(1)、(4)は重合系内において、(2)は重合系内に滴下する前の滴下液貯槽内において、未反応モノマーの濃度が高い状態で低濃度のラジカルと接触する機会があるため、ディフェクト発生原因のひとつである分子量10万以上の高分子量体(ハイポリマー)が生成しやすい。これに比べて、(3)の独立滴下法は、滴下液貯槽で重合開始剤と共存しないこと、重合系内に滴下した際も未反応モノマー濃度が低い状態を保つことからハイポリマーが生成しない。従って、本発明の重合方法としては(3)の独立滴下法が特に好ましい。尚、滴下法において、滴下時間と共に滴下する単量体の組成、単量体、重合開始剤及び連鎖移動剤の組成比等を変化させても良い。
【0043】
重合開始剤としては、一般にラジカル発生剤として用いられているものであれば特に制限されないが、例えば2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート、1,1'−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、4,4'−アゾビス(4−シアノ吉草酸)等のアゾ化合物;デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ビス(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキサイド、コハク酸パーオキサイド、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルへキサノエート、tert−ブチルパーオキシピバレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート等の有機過酸化物を単独若しくは混合して用いることができる。重合開始剤の使用量は、目的とするMw、単量体、重合開始剤、連鎖移動剤、溶媒の種類、組成、重合温度や滴下速度等の条件に応じて選択することができる。
【0044】
本発明においては、式(f)で表されるチオール化合物を連鎖移動剤として用いることが必須である。又、式(f)のチオール化合物と混合して、ドデカンチオール、メルカプトエタノール、メルカプトプロパノール、メルカプト酢酸、メルカプトプロピオン酸、式(t1)、(t2)
【化43】

のような、2−ヒドロキシ−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロピリデン基とメルカプト基が飽和炭化水素に置換したチオール化合物等、公知のチオール化合物を単独若しくは混合して用いることができる。但し、式(f)に対するこれら公知の連鎖移動剤の比率が高いと、式(f)の効果が小さくなるので、これら公知の連鎖移動剤の使用量はできるだけ少ない方が好ましく、式(f)を単独で用いることが特に好ましい。
【0045】
連鎖移動剤は、(1)の一括重合法においては、単量体、重合開始剤と共に溶媒に溶解して加熱することができる。(2)〜(4)の滴下重合法においては、単量体と混合して滴下しても良く、重合開始剤と混合して滴下しても良く、更には予め加熱する溶媒中に溶解しても良い。
【0046】
連鎖移動剤の使用量は、目的とするMw、単量体、重合開始剤、連鎖移動剤、溶媒の種類、組成、重合温度や滴下速度等の条件に応じて選択することができる。
【0047】
溶媒としては、溶剤として公知の化合物であって、単量体、重合開始剤、連鎖移動剤、更には重合して得られた共重合体を溶解させる化合物であれば特に制限されない。このような例として、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソアミルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、γ−ブチロラクトン等のエステル類;テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール等のエーテルアルコール類;前記エーテルアルコール類と酢酸等とのエステル化合物であるエーテルエステル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類;ジメチルスルホキシド、アセトニトリル等を挙げることができ、これらを単独又は2種以上を混合して用いることができる。
【0048】
重合温度は、溶媒、単量体、連鎖移動剤等の沸点、重合開始剤の半減期温度等によって適宜選択することができる。低温では重合が進みにくいため生産性に問題があり、又、必要以上に高温にすると、モノマー及びレジスト用ポリマーの安定性の点で問題がある。従って、好ましくは40〜120℃、特に好ましくは60〜100℃の範囲で選択する。
【0049】
滴下法における滴下時間は、短時間だと分子量分布が広くなりやすいこと、一度に大量の溶液が滴下されるため重合液の温度低下が起こることからため好ましくなく、長時間だと共重合体に必要以上の熱履歴がかかること、生産性が低下することから好ましくない。従って、通常30分から24時間、好ましくは1時間から12時間、特に好ましくは2時間から8時間の範囲から選択する。滴下法における滴下終了後及び一括法における重合温度に昇温後は、一定時間温度を維持するか、若しくは昇温して熟成を行い、残存する未反応モノマーを反応させることが好ましい。熟成時間は長すぎると時間当たりの生産効率が低下すること、共重合体に必要以上の熱履歴がかかることから好ましくない。従って、通常12時間以内、好ましくは6時間以内、特に好ましくは1〜4時間の範囲から選択する。
【0050】
工程(P)を経て得られた共重合体は、未反応単量体、オリゴマー等の低分子量成分、重合開始剤や連鎖移動剤及びその反応残査物等の不要物を含むため、溶媒により精製して(以下、工程(R)とする。)、これら不要物を除去することが好ましい。工程(R)の方法として、例えば、(R−1):貧溶媒を加えて共重合体を沈殿させた後、溶媒相を分離する方法、(R−1a):(R−1)に続いて貧溶媒を加え、共重合体を洗浄した後、溶媒相を分離する方法、(R−1b):(R−1)に続いて良溶媒を加え、共重合体を再溶解させ、更に貧溶媒を加えて共重合体を再沈殿させた後、溶媒相を分離する方法、(R−2):貧溶媒を加えて貧溶媒相と良溶媒相の二相を形成し、貧溶媒相を分離する方法、(R−2a):(R−2)に続いて貧溶媒を加え、良溶媒相を洗浄した後、貧溶媒相を分離する方法等が挙げられる。(R−1a)、(R−1b)、(R−2a)は繰り返しても良いし、それぞれ組み合わせても良い。
【0051】
貧溶媒は、共重合体が溶解しにくい溶媒であれば特に制限されないが、例えば、水やメタノール、イソプロパノール等のアルコール類、ヘキサン、ヘプタン等の飽和炭化水素類等を用いることができる。又良溶媒は、共重合体が溶解しやすい溶媒であれば特に制限されず、1種又は2種以上の混合溶媒として用いることができる。製造工程の管理上、重合溶媒と同じものが好ましい。良溶媒の例としては、工程(P)の反応溶媒として例示された溶媒と同じものを挙げることができる。
【0052】
精製後の共重合体は、精製時に用いた溶媒が含まれているため、減圧乾燥によって溶媒分を低減した乾燥固体の共重合体に仕上げるか、乾燥前若しくは乾燥後の共重合体を工程(P)の反応溶媒として例示された溶媒、若しくは後述するようなレジスト組成物を構成する有機溶媒(以下、レジスト溶媒)に溶解した後、必要に応じてレジスト溶媒を供給しながら、レジスト溶媒以外の低沸点化合物を留去してレジスト溶媒に溶解した共重合体溶液に仕上げることができる。
【0053】
減圧乾燥及び溶剤置換の温度は、共重合体が変質しない温度であれば特に制限されないが、通常100℃以下が好ましく、80℃以下がより好ましく、70℃以下が特に好ましい。又、溶剤置換に用いるレジスト溶媒の量は、少なすぎると低沸点化合物が十分に除去できず、多すぎると溶剤置換に時間がかかり、共重合体に必要以上に熱履歴を与えるため好ましくない。通常、仕上がり溶液中の溶媒量の1.05倍〜10倍、好ましくは1.1倍〜5倍、特に好ましくは1.2倍〜3倍の範囲から選択できる。
【0054】
こうして得られた乾燥固体の共重合体は1種又は2種以上のレジスト溶媒に溶解し、又レジスト溶媒に溶解した共重合体溶液は必要に応じてレジスト溶媒で希釈するか、又は他の種類のレジスト溶媒を混合すると共に、感放射線性酸発生剤(X)(以下、成分(X))、放射線に暴露されない部分への酸の拡散を防止するための含窒素有機化合物等の酸拡散抑制剤(Y)(以下、成分(Y))、必要に応じてその他添加剤(Z)(以下、成分(Z))を添加して、レジスト組成物に仕上げることができる。
【0055】
成分(X)は、これまで化学増幅型レジスト用の感放射線性酸発生剤として提案されているものから適宜選択して用いることができる。このような例として、ヨードニウム塩やスルホニウム塩等のオニウム塩、オキシムスルホネート類、ビスアルキル又はビスアリールスルホニルジアゾメタン類等のジアゾメタン類、ニトロベンジルスルホネート類、イミノスルホネート類、ジスルホン類等を挙げることができる。中でも、フッ素化アルキルスルホン酸イオンをアニオンとするオニウム塩が特に好ましい。これらは単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。共重合体100質量部に対して通常0.5〜30質量部、好ましくは1〜10質量部の範囲で用いられる。
【0056】
成分(Y)は、これまで化学増幅型レジスト用の酸拡散抑制剤として提案されているものから適宜選択することができる。このような例として、含窒素有機化合物を挙げることができ、第一級〜第三級のアルキルアミン若しくはヒドロキシアルキルアミンが好ましい。特に第三級アルキルアミン、第三級ヒドロキシアルキルアミンが好ましく、中でもトリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミンが特に好ましい。これらは単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。共重合体100重量部に対して通常0.01〜5.0質量部の範囲で用いられる。
【0057】
レジスト溶媒は、レジスト組成物を構成する各成分を溶解し、均一な溶液とすることができるものであれば良く、従来化学増幅型レジストの溶剤として公知のものの中から任意のものを1種又は2種以上の混合溶媒として用いることができる。通常、工程(P)反応溶媒、工程(R)の良溶媒として例示された溶媒の中から、共重合体以外の組成物の溶解性、粘度、沸点、リソグラフィーに用いられる放射線の吸収等を考慮して選択することができる。特に好ましいレジスト溶媒は、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、乳酸エチル(EL)、γ−ブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)であり、中でも、PGMEAと他の極性溶剤との混合溶剤は特に好ましい。更に混合する極性溶媒としてはELが特に好ましい。
【0058】
レジスト組成物中に含まれるレジスト溶媒の量は特に制限されないが、通常、基板等に塗布可能な濃度であり、塗布膜厚に応じて適当な粘度となるように適宜設定される。一般的にはレジスト組成物の固形分濃度が2〜20質量%、好ましくは5〜15質量%の範囲内となるように用いられる。
【0059】
その他添加剤(Z)としては、酸発生剤の感度劣化防止やレジストパターンの形状、引き置き安定性等の向上を目的とした有機カルボン酸類やリンのオキソ酸類、レジスト膜の性能を改良するための付加的樹脂、塗布性を向上させるための界面活性剤、溶解抑止剤、可塑剤、安定剤、着色剤、ハレーション防止剤、染料等、レジスト用添加剤として慣用されている化合物を必要に応じて適宜添加することができる。有機カルボン酸の例としては、マロン酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、安息香酸、サリチル酸等を挙げることができ、これらは単独若しくは2種以上を混合して用いることができる。有機カルボン酸は、共重合体100質量部に対して0.01〜5.0質量部の範囲で用いられる。
【0060】
本発明の半導体リソグラフィー用共重合体を用いることにより、現像コントラストやDOF等のリソグラフィー特性に優れたレジスト組成物を得ることができる。その理由は定かではないが、以下のように考えることができる。即ち、式(F)で表される末端構造が、公知の構造にはない適度な酸解離定数を有する置換基であるために、現像液に対する溶解性が最適に制御されること、及び、アミノ基やカルバモイル基のように塩基性を持たないため酸が適度に拡散できること等によりこの効果が生まれるものと推定される。
【実施例】
【0061】
次に、実施例を挙げて本発明を更に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。尚、下記の例においては使用される略号は以下の意味を有する。
モノマーG: γ−ブチロラクトン−2−イルメタクリレート…本文中の(c101)
モノマーGa:γ−ブチロラクトン−2−イルアクリレート…本文中の(c151)
モノマーM: 2−メチル−2アダマンチルメタクリレート…本文中の(a107)
モノマーO: 3−ヒドロキシ−1−アダマンチルメタクリレート…本文中の(d301)
モノマーOa:3−ヒドロキシ−1−アダマンチルアクリレート…本文中の(d351)
連鎖移動剤V:1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−(5or6−メルカプト−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−フルオロ−2−イル)プロパン−2−オール…本文中の(f101)
連鎖移動剤N:1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−(5or6−メルカプト−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イルメチル)プロパン−2−オール…本文中の(t2)
重合開始剤I:ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート
G: モノマーGから誘導される繰り返し単位
Ga:モノマーGaから誘導される繰り返し単位
M: モノマーMから誘導される繰り返し単位
O: モノマーOから誘導される繰り返し単位
Oa:モノマーOaから誘導される繰り返し単位
V: 連鎖移動剤Vから誘導される末端構造
N: 連鎖移動剤Nから誘導される末端構造
I: 重合開始剤Iから誘導される末端構造
【0062】
上記G〜Iの構造を以下に示す。
【化44】

【0063】
共重合体のMw、Mw/Mn、繰り返し単位組成及び末端組成、現像コントラスト(tanθ)、焦点深度幅(DOF)、最適露光量(Eop)、露光量許容幅(EL)を以下の方法によって求めた。
(1)共重合体のMw、Mw/Mnの測定(GPC)
GPCにより測定した。分析条件は以下の通りである。
装 置: 東ソー製GPC8220
検出器: 示差屈折率(RI)検出器
カラム: 昭和電工製KF−804L(×3本)
試 料: 共重合体の粉体約0.1gをテトラヒドロフラン約1mlに溶解して測定用試料を調製した。GPCへの注入量は15μlとした。
(2)共重合体の繰り返し単位組成及び末端組成の測定(13C−NMR)
装 置: Bruker製AV400
試 料: 共重合体の粉体約1gとCr(acac) 0.1gをMEK1g、重アセトン1gに溶解した。
測 定: 内径10mmガラス製チューブ、温度40℃、スキャン回数10000回
(3)tanθの測定
レジスト組成物を4インチシリコンウエハー上に回転塗布し、ホットプレート上で100℃、90秒間プレベーク(PAB)することにより、厚さ350nmのレジスト膜を形成した。ArFエキシマレーザー露光装置(リソテックジャパン製VUVES−4500)を用い、露光量を変えて10mm×10mm□の18ショットを露光した。次いで120℃、90秒間ポストベーク(PEB)した後、レジスト現像アナライザー(リソテックジャパン製RDA−800)を用い、23℃にて2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液で現像し、各露光量における現像中のレジスト膜厚の経時変化を測定した。
得られたデータを基にディスクリミネーションカーブ(各露光量におけるアルカリ溶解速度)を作成し、その立ち上がり角度からtanθを求めた。
(4)DOF、Eop、ELのシミュレーション
上記(3)で得られたデータを基に、現像シミュレーションソフト(KLAテンコール製Prolith V9)を用いて、波長=193nm、NA=0.68、2/3輪帯照明で露光し、130nmラインアンドスペースパターンを形成した場合の焦点深度幅(DOF)、最適露光量(Eop)、露光量許容幅(EL)を求めた。
【0064】
実施例1
連鎖移動剤V(上記f101)の合成:
攪拌子、温度計、コンデンサー及び滴下ロートを備えた3ツ口丸底フラスコに、チオ酢酸12.04g(158mmol)を投入して80℃に加温した。内温が80℃に到達した時点で、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート0.331g(1.44mmol)及び2−(ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2−フルオロ−2−イル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン−2−オール40g(144mmol)の混合液を滴下ロートから2時間かけて滴下し、更に80℃で2時間攪拌を続けた。その後、反応液にメタノール19g及びパラトルエンスルホン酸一水和物4.10g(21.6mmol)を投入して、還流下2時間攪拌した。次いで反応液を室温に戻し、7%炭酸水素ナトリウム水溶液及び水でそれぞれ2回づつ洗浄を行った。得られた有機相を減圧蒸留し、低沸点物を留去して固形物29.1gを得た。得られた固形物を、GC−MS、H−NMR、13C−NMRで解析し、下記式(f101)で示される少なくとも5種類の異性体混合物であることを確認した。GC−FIDでの純度(5種合計)は98面積%であった。
【化45】

【0065】
マススペクトル(GC−MS)
m/z:312 (M)
図1に示す。
H−NMR(DMSO−d溶媒)
図2に示す。
13C−NMR(C溶媒)
図3に示す。
【0066】
実施例2
窒素雰囲気に保った容器にメチルエチルケトン(MEK)98.8g、(A)モノマーM 37.44g、(C)モノマーG 26.52g、(D)モノマーOa 18.65g、(F)連鎖移動剤V 4.12g、重合開始剤I 0.28gを溶解させ、均一な「フィード液」を調製した。撹拌器と冷却器を備え付けた反応槽にMEK62gを仕込んで窒素雰囲気とした後、温度80℃に加熱した。室温(約25℃)に保ったフィード液を、定量ポンプを用い、一定速度で4時間かけて79〜81℃に保った反応槽中に滴下した。滴下終了後、更に80〜81℃に保ったまま2時間熟成させたのち、室温まで冷却して重合液を取り出した。
2Lの容器にn−ヘキサン995gを入れ、撹拌しながら15℃まで冷却し、その状態を維持した。ここに、重合液248gを滴下して共重合体を析出させ、更に30分間撹拌した後、ウエットケーキをろ別した。このウエットケーキを容器に戻し、15℃に保ったn−ヘキサンとMEKの混合溶媒995gを加え、30分間撹拌して洗浄した後、ろ別した。このウエットケーキの洗浄をもう一度繰り返した。得られたウェットケーキを60℃以下で8時間減圧乾燥し、白色の共重合体粉末を得た。得られた共重合体のMw、Mw/Mn、繰り返し単位組成及び末端組成の測定結果を表1に示した。
【0067】
得られた共重合体100重量部に対して、以下に示す組成で添加物及び溶剤を混合し、レジスト組成物を調製した。
(1)(成分(X))4−メチルフェニルジフェニルスルホニウムノナフルオロブタンスルホネート3.5重量部
(2)(成分(Y))トリエタノールアミン0.2重量部
(3)(成分(Z))サーフロンS−381(セイミケミカル製)0.1重量部
(4)プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート450質量部と、乳酸エチル300質量部との混合溶剤
得られたレジスト組成物のtanθの測定結果及びDOF、Eop、ELのシミュレーション結果を表2に示した。
【0068】
実施例3
「フィード液」を、MEK 98.8g、(A)モノマーM 33.58g、(C)モノマーGa 21.84g、(D)モノマーO 15.69g、(F)連鎖移動剤V 3.60g、重合開始剤I 0.72gの混合液とした以外は実施例2と同様にして行った。得られた共重合体のMw、Mw/Mn、繰り返し単位組成及び末端組成の測定結果を表1に、レジスト組成物のtanθの測定結果及びDOF、Eop、ELのシミュレーション結果を表2に示した。
【0069】
比較例1
重合開始剤Iを4.62gとし、連鎖移動剤Vを使用しなかった以外は実施例2と同様にして行った。得られた共重合体のMw、Mw/Mn、繰り返し単位組成及び末端組成の測定結果を表1に、レジスト組成物のtanθの測定結果及びDOF、Eop、ELのシミュレーション結果を表2に示した。
【0070】
比較例2
重合開始剤Iを0.28gとし、連鎖移動剤Vの代わりに特開2004−292428号公報の実施例4に従って合成した連鎖移動剤N 4.28gを使用した以外は実施例2と同様にして行った。得られた共重合体のMw、Mw/Mn、繰り返し単位組成及び末端組成の測定結果を表1に、レジスト組成物のtanθの測定結果及びDOF、Eop、ELのシミュレーション結果を表2に示した。
【0071】
【表1】

【0072】
【表2】

【0073】
上記実施例及び比較例の結果が示すように、本発明の共重合体をベースポリマーとするレジスト組成物は、tanθ及びDOFの値が従来技術と比較して明らかに向上した。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明の半導体リソグラフィー用共重合体、組成物によれば、現像コントラストやDOF等のリソグラフィー特性の優れたリソグラフィーパターンが形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】実施例1で得られた連鎖移動剤Vのマススペクトル(GC−MS)を示すチャートであり、最上段のガスクロマトグラフのチャートの下に、ガスクロマトグラフにおける各ピークのマススペクトルのチャートを示した。 m/z:312 (M)
【図2】実施例1で得られた連鎖移動剤VのH−NMRのチャートである。
【図3】実施例1で得られた連鎖移動剤Vの13C−NMRのチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、酸解離性溶解抑制基でアルカリ可溶性基を保護した構造を有する繰り返し単位(A)と、式(F)
【化1】

(式中、X及びXはそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子又はハロゲン原子が置換しても良い炭素数1〜4の炭化水素基を表し、Y11〜Y14は水素原子、若しくは、Y11とY12の間又はY13とY14の間で形成したエーテル結合或いは炭素数1〜2の炭化水素結合を表し、Y21〜Y25はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜4の炭化水素基を表し、nは0又は1の整数を表す。)
で表される末端構造(F)を有することを特徴とする半導体リソグラフィー用共重合体。
【請求項2】
ラクトン構造を有する繰り返し単位(C)を含む請求項1に記載の半導体リソグラフィー用共重合体。
【請求項3】
酸に対して安定な脂環式炭化水素基を有する繰り返し単位(D)を含む請求項1又は2に記載の半導体リソグラフィー用共重合体。
【請求項4】
酸解離性溶解抑制基でアルカリ可溶性基を保護した構造を有する繰り返し単位(A)が式(A)
【化2】

(式中、Rは水素原子又は炭素数1〜4の炭化水素基を表し、
11は炭素数1〜4の炭化水素基を、R12及びR13はそれぞれ独立して炭素数1〜12の直鎖状、分岐状又は単環若しくは有橋環を有する脂環式炭化水素基、或いは、R12とR13がお互いに結合して形成した炭素数5〜12の単環又は有橋環を有する脂環式炭化水素基を表すか、或いは、
11及びR12は水素原子又は炭素数1〜4の炭化水素基を、R13は炭素数1〜12の直鎖状、分岐状又は単環若しくは有橋環を有する脂環式炭化水素基が置換したオキシ基を表し、
は炭素数7〜12の有橋環を有する脂環式炭化水素基を表し、mは0又は1の整数を表す。)
で表される請求項1〜3のいずれかに記載の半導体リソグラフィー用共重合体。
【請求項5】
繰り返し単位(C)が式(C)
【化3】

{式中、Rは水素原子又は炭素数1〜4の炭化水素基、Aは単結合又は炭素数5〜12の単環若しくは有橋環を有する脂環式炭化水素基を表し、Lは一般式(L)
【化4】

(式中、R31〜R36のいずれか1つ又は2つが一般式(C)のAとの連結基であり、残りは水素原子又は炭素数1〜4の炭化水素基若しくはアルコキシル基を表す。)
で表されるラクトン構造を表し、AとLは1乃至2の前記連結基で結合している。}
で表される請求項1〜4のいずれかに記載の半導体リソグラフィー用共重合体。
【請求項6】
繰り返し単位(D)が式(D)
【化5】

(式中、Rは水素原子又は炭素数1〜4の炭化水素基、Aはハロゲン原子が置換しても良い炭素数7〜12の有橋環を有する脂環式炭化水素基、kは0〜3の整数を表す。)
で表される請求項1〜5のいずれかに記載の半導体リソグラフィー用共重合体。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の共重合体と、感放射線性酸発生剤とを含むことを特徴とする半導体リソグラフィー用組成物。
【請求項8】
式(f)
【化6】

(式中、X及びXはそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子又はハロゲン原子が置換しても良い炭素数1〜4の炭化水素基を表し、Y11〜Y14は水素原子、若しくは、Y11とY12の間又はY13とY14の間で形成したエーテル結合或いは炭素数1〜2の炭化水素結合を表し、Y21〜Y25はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜4の炭化水素基を表し、nは0又は1の整数を表す。)
で表されることを特徴とするチオール化合物。
【請求項9】
請求項8の記載の式(f)で表されるチオール化合物を連鎖移動剤としてラジカル重合することを特徴とする請求項1に記載の半導体リソグラフィー用共重合体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−335932(P2006−335932A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−163775(P2005−163775)
【出願日】平成17年6月3日(2005.6.3)
【出願人】(000157603)丸善石油化学株式会社 (84)
【Fターム(参考)】