説明

半導体基板洗浄方法、半導体基板洗浄装置、及び液中気泡混合装置

【課題】半導体基板の表面に吸着している微小なパーティクルを効果的に除去することが可能な半導体基板洗浄方法を提供すること。
【解決手段】半導体基板洗浄方法は、ガスが飽和濃度まで溶解している酸性の溶液であって、界面活性剤を入れたことにより半導体基板及び吸着粒子のゼータポテンシャルをマイナスにする溶液、或いは、ガスが飽和濃度まで溶解しているアルカリ性の溶液であって、pHが9以上である溶液のいずれかの溶液に前記ガスの気泡を含ませた洗浄液を用いて半導体基板1を洗浄する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造工程における洗浄プロセスに係り、半導体基板洗浄方法、半導体基板洗浄装置、及びそれらで用いることが可能な液中気泡混合装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年では、ゲート長が65nmサイズの微細パターン形状を有する半導体デバイスが開発、商品化されている。更に微細化が進んだ次世代のデバイスでは、ゲート長が50nm以下のものが開発されている。
【0003】
現状の65nmデバイスにおいて、高い歩留まりで半導体デバイスを製造する為には非常に高精度に制御された洗浄プロセスが使われている。特に洗浄プロセスに一般的に用いられる物理洗浄法として、超音波(MHz)を用いた洗浄、或いは二流体ジェット(Jet)を用いる洗浄がある。これらは、デバイス製造プロセスで発生してウエハー上に付着したパーティクル(particle)の除去に有効であり、先端的なデバイス製造プロセスに多用されている。
【0004】
しかしながら、通常のMHz洗浄、或いは二流体洗浄はパーティクル除去率とデバイスパターン欠損発生率との間に強い相関があり、高パワーにするとパーティクル除去性能は向上するが、パターン欠損という欠陥を引き起こす問題がある。一方、パターン欠損を発生させない低パワー条件では、パーティクルの除去率が低下し、期待したほど歩留まりを上げることが出来ない。
【0005】
従って、50nmサイズのデバイスでは今以上に物理洗浄を用いることが出来ないため、高歩留まりにデバイスを製造することが非常に困難になること予想される。これらは、一般的な現象であり、除去したいパーティクルのサイズの方がパターンサイズよりも大きいため、その様な強い相互作用が出てしまう。この様な背景から、半導体製造プロセスの洗浄方法として一般的に用いられてきたMHz洗浄或いは二流体ジェット洗浄等の物理力に代わるパターン欠損を発生させない物理洗浄が必要になってきている。
【0006】
一方、0.1ミクロン(100nm)以下の微小パーティクルではその粒子サイズが小さくなるほど表面エネルギーが大きくなり、パターン表面に吸着した際に分子間力の影響を受けて、簡単には吸着表面から離れることが出来ないという現象がある。
【0007】
これに対して、上述のパターン欠損を発生させないような、物理力を用いない洗浄が必要となる。例えば、吸着した粒子を吸着した表面の膜ごとリフトオフ(Liftoff)させてパーティクルを除去する方法としてアルカリ洗浄(一般的にはアンモニア水と過酸化水素水の混合液:RCA洗浄_SC1)が報告されている。
【0008】
しかし、パーティクルが吸着した下地、例えば、トランジスター製造でのイオン注入工程におけるスルーオキサイド(Through oxide)などのエッチングが許されない工程では、このアルカリ洗浄を行うことが出来ないという問題がある(例えば、特許文献1参照。)。
【0009】
薬品を用いる洗浄方法の場合、上記のように使用するのが適さない製造工程があるため、下地のエッチングを抑制し、且つ、パターン欠陥を発生させないような、次世代の微細化プロセスに対応した新しい洗浄プロセスが必要となっている。
【0010】
他方、半導体以外の分野では、超純水や電解水、或いはイオン交換水等の水中において、超音波の付加や電気分解等の手法によりによりナノバブル及びマイクロバブルを生成し、それを利用した洗浄方法が既に報告されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0011】
特許文献2においては、超音波を付加した環境下で、或いは水の電気分解を用いて生成するナノバブルを用いて、ナノテクノロジー関連機器、工業製品、衣服等の各種の物体の洗浄を行う。これにより、液体中の汚れ成分の吸着機能、物体表面の高速洗浄機能、殺菌機能等を利用して高機能で、且つ石鹸等を使用しない低環境負荷によって洗浄を行うことができるようになると報告されている。さらに、水中に分離した汚れ成分を含んだ汚濁水を初め、広範の分野で発生している汚濁水を特に液体中の汚れ成分の吸着機能によって効果的に浄化することができるとも報告されている。また生体に対しては、殺菌、空気ジェットや石鹸効果による物体表面に付着している汚れ除去、空気ジェットによる指圧の各種効果を得ることができるとも報告されている。加えて、局所高圧場の生成により、また静電分極の実現により、更に化学反応表面の増大により化学反応に対しても有効に利用することが出来るようになる等と種々の効果が示されている。
【0012】
また、従来の液体中気泡発生装置は、石英バブラーによる気泡発生方式などが提案させているが、数ナノメーターサイズの気泡を安定的に発生させることが困難である。その理由は、従来法では液体中のガスの気泡は表面エネルギーを下げる為に、気泡結合(合体)による巨大化が進むためである。更に、液体中に気泡を発生させる際には、液中での浮力によって気泡発生部位からの気泡脱離が行われる前までは、気泡の巨大化が進む為、ナノサイズの気泡は形成が困難であった。
【特許文献1】特開2006−80501号公報
【特許文献2】特開2004−121962号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、半導体基板の表面に吸着している微小なパーティクルを効果的に除去することが可能な半導体基板洗浄方法、半導体基板洗浄装置、及びそれらで用いることが可能な液中気泡混合装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この発明の第1の態様に係る半導体基板洗浄方法は、ガスが飽和濃度まで溶解している酸性の溶液であって、界面活性剤を入れたことにより半導体基板及び吸着粒子のゼータポテンシャルをマイナスにする溶液、或いは、ガスが飽和濃度まで溶解しているアルカリ性の溶液であって、pHが9以上である溶液のいずれかの溶液に前記ガスの気泡を含ませた洗浄液を用いて半導体基板を洗浄する。
【0015】
この発明の第2の態様に係る半導体基板洗浄方法は、液体と気体を混合することにより洗浄液の流れを形成し、前記洗浄液の流れを用いて半導体基板を洗浄する二流体洗浄において、前記液体に気泡が混入した液体を用いる。
【0016】
この発明の第3の態様に係る液中気泡混合装置は、液体を流入する液体流入部と、前記液体中に超音波を発生する超音波発生部と、前記液体中に気体を導入する気体導入部とを具備し、前記液体中の超音波印加領域に前記気体導入部から前記気体を注入することによって気泡を前記液体中に混合させる。
【0017】
この発明の第4の態様に係る半導体基板洗浄装置は、半導体基板を洗浄液を用いて洗浄するために処理槽と、ガスが飽和濃度まで溶解している酸性の溶液であって界面活性剤を入れたことにより前記半導体基板及び吸着粒子のゼータポテンシャルをマイナスにする溶液、或いは、ガスが飽和濃度まで溶解しているアルカリ性の溶液であってpHが9以上である溶液のいずれかの溶液に、前記ガスの気泡を混入することにより前記洗浄液を生成する洗浄液生成部とを具備する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、半導体基板の表面に吸着している微小なパーティクルを効果的に除去することが可能な半導体基板洗浄方法、半導体基板洗浄装置、及びそれらで用いることが可能な液中気泡混合装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。図面において、対応する部分には対応する符号を付し、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号で示している。
【0020】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る半導体基板洗浄方法を図1乃至図5を用いて説明する。
【0021】
本実施形態においては、ガスが飽和濃度まで溶解している薬液に超音波を用いて発生させた気泡(Bubble)で半導体基板を洗浄する。
【0022】
本実施形態に係る半導体基板洗浄方法を実行する半導体基板洗浄装置の例として、ワンバス(One Bath)タイプのバッチ(Batch)式洗浄装置100の一例を図1及び図2に示す。
【0023】
図1及び、その紙面垂直方向の断面である図2に示されるように、薬液供給石英管20は石英処理槽10へ薬液を供給するためのもので、石英処理槽10の両サイドの底部に設置されている。図1に示されるウエハー1は図2では省略しているが、一般には、複数のウエハーが図1の紙面垂直方向に並列して配置されている。ただし、ウエハー1の枚数は1枚でも構わない。
【0024】
薬液供給石英管20から供給される薬液、即ち、洗浄液はアルカリ性の溶液と酸性の溶液の二種類が考えられる。
【0025】
アルカリ溶液の場合にはpHが9以上の環境下で洗浄を行う。この場合には半導体基板(ウエハー)1及びそれに吸着している吸着粒子(図示せず)は一般的には、図3に示すようにマイナスのゼータポテンシャル(Zeta Potential)となり、吸着粒子と半導体基板とが反撥力を有した状態になる。この場合にはゼータポテンシャルによる反撥力をさらに高める為に、図3に示されるように強アルカリ性での運用が好ましい。
【0026】
一方、酸性溶液の場合には、界面活性剤等を使用し、ウエハー1及び吸着粒子のゼータポテンシャルを共にマイナスへ変化させた状態下で洗浄を行う。この場合の界面活性剤(分散剤)としては、例えば、1分子中にスルホン酸基を少なくとも2以上有する化合物、フィチン酸化合物、及び縮合リン酸化合物のいずれか1つ又は2つ以上を用いる。
【0027】
これらの界面活性剤を用いることにより、アルカリ溶液を用いた場合と同等に、図4に示すように、酸性溶液でもウエハー1及び吸着粒子を強いマイナスのゼータポテンシャル状態に維持できる。ただし、ゼータポテンシャルをコントロールする為に、酸性溶液中、あるいはアルカリ性溶液中に添加する分散剤は、上記した例に限定されるわけではない。さらに、半導体基板に吸着した粒子と半導体基板との間に反撥力を形成することができる洗浄薬液を用いるのであれば、上記した例に限らず、気泡による洗浄の効果をさらに高める事が出来る。
【0028】
このような洗浄液に対して、以下に説明するように超音波を用いた際に効果的に気泡を発生させるために、本実施形態においては、薬液供給口30から導入される薬液には液中溶存ガス濃度が飽和濃度となるようにガスを溶解させたものを使用する。ここで溶解させるガスとしては、例えば窒素(N)を用いる。
【0029】
薬液供給管20の長手方向の両端のうち、一端は処理槽外からの薬液供給口30となっており、その対面端に超音波振動子40が設置された構造となっている。超音波振動子40を設置するための一つの方法としては、石英を介して振動板を貼り付ける方法がある。その場合、薬液供給石英管20の長手方向に振動エネルギーが照射されるため、処理槽10内のウエハー1には振動波は照射されない。
【0030】
処理槽10の底部の超音波振動子40は、その超音波振動の直進波が処理槽10内に設置されたウエハー1には直接照射せずに、供給薬液自体に照射する方向に設置されている。言い換えると、パターン欠損が生じないように超音波が印加される、即ち振動波を受ける環境下にウエハー1を設置しない。従って、超音波振動子40から生成される超音波の垂直成分波がウエハー1に直接照射されない。
【0031】
その結果、薬液供給管20内の薬液中に気泡とキャビティ(Cavity:減圧空洞)の両方が形成されるが、キャビティの寿命はμsec以下であり、ウエハー1へは到達しない。気泡はキャビティとは異なり、気体の泡であり、収縮崩壊することが無い為、処理槽10内部のウエハー1まで到達可能である。
【0032】
また一般には、キャビティは超音波振動子の周波数が数十〜数百KHzまでの周波数帯以下で形成すると言われており、MHz以上の周波数帯では形成されないことが知られている。従って、本実施形態においては、薬液供給管20に貼り付けた超音波振動子を1MHz以上の周波数で動作させる。これにより、キャビティを殆ど発生させずに、ガス飽和状態の液体からナノメーター或いはマイクロメーターサイズの液中溶存ガス、即ち窒素(N)の気泡を効果的に発生させることが可能となる。
【0033】
この気泡によってウエハー1を洗浄する。上述したように、共にマイナスのゼータポテンシャルを有して互いに反撥する力が働いている吸着粒子と半導体基板に、さらに気泡による洗浄効果が加わって、基板上の微細パターンに付着した吸着粒子を効果的に洗浄除去することが可能となる。なお、この場合、上記気泡のサイズが微細パターンのサイズと同程度になっていることが、洗浄効果を高める上で好ましい。
【0034】
このように、本実施形態においては、薬液供給口30から供給された薬液に超音波を用いて気泡を含ませ、これを用いてウエハー1を洗浄する。ウエハー1を洗浄して処理槽10から溢れた薬液は、最終的にはドレイン50から排出される。
【0035】
本実施形態においては、超音波振動子40の直進波方向にウエハー1が設置されておらず、上述の周波数の観点からも、またキャビティの寿命の観点からも、ウエハー1の近傍ではキャビテーション(Cavitations)が発生していないことは明らかである。
【0036】
さらに、より好ましくは、薬液供給口30側の部材とその形状が、超音波振動の反射によって形成する反射波がウエハー方面に向かわないように、図5に示すような傾きを持って処理槽10(ウエハー1)側へ反射しない形状にすることが好ましい。図5は図2と同一方向の断面図である。
【0037】
尚、上記実施形態においては、洗浄液中の溶存ガスとして、窒素(N)を用いて説明したが、一般的に半導体製造プロセスに慣例的に用いられる酸素(O)、精製空気(Air)などを用いても構わない。即ち、ガスラインに混入したパーティクル(塵(Dust))を捕獲するためのガスフィルター(シービング(Sieving)径が30nm以下)を通したガスであれば、気泡として使用することが可能である。
【0038】
上記実施形態において説明したように、微細パターンと同等サイズ程度のナノメーター及びマイクロメーターサイズの気泡を有する洗浄液を用いて半導体基板を洗浄することにより、気泡を用いないで洗浄薬液のみで洗浄した場合に比べて吸着粒子の除去率が高い洗浄が可能となる。
【0039】
即ち、ナノメーター或いはマイクロメーターサイズの気泡を含んだ気泡/薬液混合洗浄液をウエハー洗浄に用いることで、ウエハー表面の吸着粒子の近傍で気泡同士の合体、及び吸着粒子と気泡との接触時に生じる液体中での気泡の体積変化を利用して微小粒子に対してナノサイズの物理力を与えることが可能となる。
【0040】
また、従来行われていた水の電気分解によるナノバブルの形成方法においては、液性がpH7近傍の中性であるため、この手法をそのまま半導体ウエハーの洗浄に用いた場合、ウエハーに吸着した粒子をウエハーから引き離すゼータポテンシャルによる反撥力を用いることができない。従って、微細粒子の洗浄効果が劣ってしまうと考えられる。
【0041】
しかし上記実施形態においては、アルカリ性の溶液と酸性の溶液の二種類洗浄液を、ウエハー及び吸着粒子のゼータポテンシャルが共にマイナスになるようにして用いているため洗浄効果の向上が期待できる。
【0042】
また、従来のMHz洗浄を、微細半導体デバイス製造プロセスにおけるウエハー洗浄プロセスにそのまま適用すると、超音波振動子の縦波がウエハーに直接照射され、ウエハー近傍で超音波によって誘発されたキャビティによって、パターン欠損を発生させてしまう。即ち、キャビティの収縮時に生じる強い衝撃波(キャビテーション)が生じるため、微細パターンを欠損させてしまう。
【0043】
上記実施形態においては、ウエハー近傍にキャビティを発生させずに、キャビティとは異なる気泡による洗浄が可能である。従って、ウエハー近傍でキャビティを発生させないのであれば、他の気泡生成方法を用いても構わない。
【0044】
また、超音波を用いてキャビティが気泡と同時に発生したとしても、上記実施形態のようにキャビティの崩壊による衝撃波、或いは超音波振動のエネルギー(縦波:振動方向)をウエハーに照射しない気泡生成方法であれば他の方法でもかまわない。
【0045】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係る半導体基板洗浄方法を図6及び図7を用いて説明する。
【0046】
本実施形態においては、ガスが飽和濃度まで溶解している薬液にバブラー(Bubbler:気泡発生器)を用いて発生させた気泡で半導体基板を洗浄する。
【0047】
本実施形態に係る半導体基板洗浄方法を実行する半導体基板洗浄装置の例として、循環タイプのバッチ式洗浄装置600の一例を図6に示す。薬液は循環配管64を循環しており、ポンプ61、ヒーター62、フィルター63を経て、バブラー60(洗浄液生成部)で窒素(N)ガスが混入されて、薬液供給石英管20を介して処理槽10に供給される。処理槽10においてウエハー1を洗浄した洗浄液は、処理槽10から溢れ出てドレイン50に排出された後、再び、ポンプ61、ヒーター62、フィルター63を経て、バブラー60で窒素(N)ガスが混入され、以上が繰り返される。
【0048】
本実施形態においても、一般には、複数のウエハーが図6の紙面垂直方向に並列して配置されている。ただし、ウエハー1の枚数は1枚でも構わない。
【0049】
図6においては、循環配管64に設置する粒子除去用のフィルター63の後段、且つ、処理槽10の前段に気泡発生装置であるバブラー60(洗浄液生成部)を設置しているが、処理槽10の内部に設置してもよい。本実施形態において、粒子除去フィルター63の後段(二次側)にバブラー60を設置する理由は、フィルター63の前段(一次側)ではフィルター63内部の一次側エアー抜きラインへ気泡が抜けてしまい、ウエハー1を設置している処理槽10へ効果的に気泡を供給することが出来ないからである。
【0050】
本実施形態においては、バブラー60としてイジェクター(Ejector:放出器)を採用した。イジェクター60において窒素(N)ガスが循環薬液中に吸引される。その際にナノメーター或いはマイクロメーターサイズの気泡が生成される。循環薬液の粘性の違いによって形成される気泡のサイズと密度は影響を受けるが、洗浄条件の最適化によって対応可能となる。また、イジェクター60を経た薬液には、窒素(N)ガスが飽和濃度まで溶解している。
【0051】
本実施形態で使用する薬液(洗浄液)も、第1の実施形態と同様に、アルカリ性の溶液と酸性の溶液の二種類が考えられる。
【0052】
アルカリ溶液の場合にはpHが9以上の環境下で洗浄を行う。一方、酸性溶液の場合には、例えば、1分子中にスルホン酸基を少なくとも2以上有する化合物、フィチン酸化合物、及び縮合リン酸化合物のいずれか1つ又は2つ以上を界面活性剤として使用し、ウエハー1及び吸着粒子のゼータポテンシャルを共にマイナスへ変化させた状態下でウエハー1の洗浄を行う。
【0053】
また、このイジェクター方式では液体の流速で気体量が決まってしまう為、循環配管64の径、循環ポンプ61の能力などイジェクター以外の循環システムの構成部品との整合が必要である。本実施形態においては、例えば、配管64の径は1インチ(inch)、ポンプ61の能力は30(L/min)としたが、状況に応じて各種最適な実施形態を採用できることは言うまでもない。
【0054】
尚、本実施形態においても、洗浄液中の溶存ガスとして、一般的に半導体製造プロセスに慣例的に用いられる酸素(O)、精製空気(Air)などを用いても構わない。即ち、ガスラインに混入したパーティクル(塵(Dust))を捕獲するためのガスフィルター(シービング(Sieving)径が30nm以下)を通したガスであれば、気泡として使用することが可能である。
【0055】
またイジェクター60における洗浄液へのガスの混入後に、気泡と薬液との分離を極力抑える為には、イジェクター60から処理槽10までの配管距離は短い方が好ましい。具体的には、図6においては、イジェクターが1つの例を示してあるが、処理槽10の両サイドの薬液供給管20に直接イジェクターを繋ぐ方法も考えられる。その場合、薬液供給管の数だけイジェクターを取り付ける必要がある。
【0056】
また、バブラーとしてイジェクターを用いることにより、処理槽底部に設置した石英球バブラーを用いた従来の気泡生成方法に比べて、気泡のサイズを微小化できる。石英球バブラーを用いた場合、処理槽上面の液体面に大きな気泡が形成されるが、イジェクターで気泡を形成した場合には、処理槽上面の液体面に無数の微小気泡が形成されているのが実験により確認されている。
【0057】
一般に、気泡のサイズは、複数の気泡同士が合体するために時間共に大きくなることが知られているが、気泡の形成段階でナノメーター或いはマイクロメーターサイズの気泡となるようにすることで、処理槽上面の液体面に到達したとしても微小なサイズを保つことが出来る。
【0058】
気泡を含んだ薬液を用いた洗浄による、半導体ウエハーに吸着したパーティクルの除去効果は、液中の気泡の大きさと液中の気泡密度に強く依存する。従来の石英バブラーではミリメーターサイズの気泡が形成される為、半導体ウエハー上のナノメーター及びマイクロメーターサイズの微細パターンと同等サイズのパーティクルとの接触がなされない。従って、除去性能が得られないが、本実施形態ではそれが可能となる。
【0059】
洗浄効果は、液中の気泡密度に強い依存性があり、気泡密度が増すと洗浄効果が増す。気泡密度を測定した場合に、数百万ヶ/ml以上の気泡密度を有する状態が洗浄として好ましい。
【0060】
本実施形態においては、バブラーとしてイジェクターを用いたが、それ以外の方法として、ガスを過飽和状態まで溶解させた後に気体/液体分離フィルター(メンブレンフィルター)からガスを導入する方法などがある。導入するガスを一旦飽和状態まで溶解させ、引き続き、上記フィルターにてガスを導入することで、所望の気泡量を制御良く生成することが出来る。
【0061】
一旦飽和状態までガスを溶解させた液体を用いる理由は、飽和状態まで溶解していないと、上記フィルターにてガスを気泡として導入させる際に、ガスが液中に溶解及び脱泡する現象が同時に起こってしまい、制御良く気泡を生成することが出来ないことが分かっているからである。
【0062】
また以上においては、図6に示す循環タイプのバッチ式洗浄装置600を例にとって説明したが、図7に示すような、ワンバスタイプのバッチ式洗浄装置700にイジェクター60を備えて洗浄液中に気泡を発生させても、上記と同様の効果が得られる。
【0063】
図7では、薬液を導入する化学的混合バルブ70の後段、且つ処理槽10の前段(一次側)に気泡発生装置であるイジェクター60を設置しているが、この場合も、イジェクター60から処理槽10までの配管距離は短い方が好ましいので、処理槽10の内部或いは両サイドの薬液供給管20に直接イジェクターを繋ぐ方法も考えられる。
【0064】
上記実施形態において説明したように、気泡を有する洗浄液を用いて半導体基板を洗浄することにより、気泡を用いないで洗浄薬液のみで洗浄した場合に比べて吸着粒子の除去率が高い洗浄が可能となる。
【0065】
本実施形態においては、微細パターンと同等サイズ以上のナノメーター及びマイクロメーターサイズの気泡を含んだ気泡/薬液混合洗浄液をウエハー洗浄に用いる。これにより、ウエハー表面の吸着粒子の近傍で気泡同士の合体、及び吸着粒子と気泡との接触時に生じる液体中での気泡の体積変化を利用して微小粒子に対してナノサイズの物理力を与えることが可能となる。
【0066】
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態に係る半導体基板洗浄方法を図8を用いて説明する。
【0067】
本実施形態においては、従来、液体と気体の二流体を用いて行われていた二流体洗浄において、液体として気泡が混入した液体を用いて半導体基板を洗浄する。
【0068】
回転乾燥式の枚葉洗浄装置では回転するウエハーに対して洗浄液をウエハー中央に突出供給する方法、或いはスキャンノズル(Scan nozzle)にて供給する方法があり、両方法とも従来技術の枚葉装置で一般に用いられている。
【0069】
本実施形態においては、その薬液供給方法に工夫がある。図8(a)及び(b)に示す薬液突出ノズルであるジェットノズル(Jet nozzle)800に薬液流(又は純水流)81、82、83を供給する側(図の上側)には気泡発生装置が備えられている(図示せず)。
【0070】
その結果、ジェットノズル800をナノメーター或いはマイクロメーターサイズの気泡が混入した薬液流(又は純水流)81、82、83が流れることになる。薬液流(又は純水流)81、82、83は、例えば窒素(N)等からなる気体流85、86、87によってせん断されるように気体流85、86、87と混合して洗浄液が形成される。この洗浄液が回転乾燥式の枚葉洗浄装置801で回転するウエハー1を(二流体ジェット)洗浄する。
【0071】
二流体洗浄法である二流体ジェットの方式は、内部混合方式、或いは外部混合方式など従来多種報告されている。しかし、本実施形態においては、液体として微細パターンと同等サイズ以上のナノメーター或いはマイクロメーターサイズの気泡を伴った薬液(又は純水)を用いる。これにより、最終的にジェットノズル800から放出される液体には、液玉と気泡が混在した状態となる。
【0072】
従来、液体として気泡が混入していない純水(脱イオン水)を用いた二流体洗浄法においては、気体(Nナイフ)によって液体がせん断されるだけだったので単に純水の液玉が形成されるだけであった。しかし、本実施形態においては、気泡が混入した液体を用いるため、従来手法に比べて細かい液玉が形成される。
【0073】
さらに、本実施形態においては、上記細かくなった液玉に気泡が混入しており、気泡のサイズも小さくなり、好ましくは最小粒径が50μm以下となる。
【0074】
即ち、本実施形態において、従来の液玉による洗浄効果に加えて、気泡の表面エネルギーを利用して、除去すべき塵(Dust)をウエハー1の径外へ再吸着させずに排出できる。
【0075】
本実施形態においては、薬液流81、82、83において薬液を用いないで純水を用いたとしても上述した効果が得られる。しかし薬液を使用する場合には、第1及び第2の実施形態と同様に、第1の実施形態において詳細に説明したアルカリ性の溶液と酸性の溶液の二種類のいずれかを用いることにより洗浄効果を高めることができる。
【0076】
また、第1及び第2の実施形態と同様に、液中溶存ガス濃度が飽和濃度となるように、窒素(N)、酸素(O)、精製空気(Air)などのガスを溶解させた薬液を使用して、それらと同一のガスの気泡が溶解しないで存在するようにするのが好ましい。
【0077】
このような枚葉洗浄装置にて、図9に示したような洗浄手順で洗浄した場合の、気泡の有無、薬液処理の有無(NH液か脱イオン水か)によるパーティクルの除去率を評価した結果を図10に示す。図10における(1)と(2)はそれぞれ別の試行結果である。
【0078】
図10からわかるように、気泡無しの洗浄方法では20%以下の除去率となるが、気泡有りの条件(Bubble水)ではパーティクル除去率が向上する。除去率は、パーティクルの吸着状態、薬液処理条件、処理時間等にて変動する。従って、各デバイスプロセスの工程毎に条件出しを行う必要がある。
【0079】
(第4の実施形態)
本発明の第4の実施形態に係る液中気泡混合装置を図11を用いて説明する。
【0080】
本実施形態に係る液中気泡混合装置は、基板上の微細パターンと同等サイズ程度のナノメーター及びマイクロメーターサイズの気泡を安定的に発生させることが可能であり以下の特徴を有する。まず、気泡発生部位において気泡に対して、浮力以外の力を加えること、或いは、液流によるせん断力以上の力を加える。更に、液中内に気泡発生後は気泡の自己崩壊(液中への溶解)を抑える為に、気泡に用いるガスを事前に過飽和まで液中に溶解させておく。
【0081】
図11に示す本実施形態に係る液中気泡混合装置110においては、毛細管壁111(気体導入部)には毛細管からガスが供給されている。液中気泡混合装置110の中央の紙面上方の液体流入部113から下方に向けて薬液の液体流が流れており、その液体流方向と垂直な振動面を有する超音波振動子112(超音波発生部)を備えることで、毛細管壁111と液体との界面領域にMHz直進波による振動エネルギーが供給される。
【0082】
そのため、液流に対して平行、且つ、毛細管壁111からの気泡発生方向に対して垂直な方向に超音波を印加できる。言い換えると、液体中の超音波印加領域に毛細管壁111から気体を注入することになる。
【0083】
その結果、毛細管壁111から発生した気泡に対して液流によるせん断力以上に強いせん断力を与えることが出来るので、巨大化する前のナノメーターサイズの気泡のままの解離(毛細管からの脱離)が容易に起こる。即ち、図11の右の拡大図のPhase1領域で気泡は毛細管壁111から離れることが出来る。これにより、ナノメーターサイズの気泡を液中に混合させることが出来る。液中気泡混合装置110で得られる気泡のサイズは数十〜数百nmの粒径分布を示した。
【0084】
また、超音波を用いた際に効果的に気泡を発生させるために、導入する液体としては液中溶存ガス濃度が飽和濃度までガスを溶解させた薬液或いは純水を選択する。例えば、窒素(N)溶解純水をベースとした薬液を用いてもよい。
【0085】
飽和濃度までガスを溶解させた液体を用いることにより、毛細管壁111から脱離した気泡は液体中に溶解することなく安定に気泡構造を保つことが出来る。このため、液中気泡混合装置110に毛細管壁111から導入する気体を、液体流入部113から流入させる液体中に飽和溶解度近傍まで溶解させる溶存ガス装置を液体流入部113の前、例えば、液中気泡混合装置110の図11における上段に設置してもよい。
【0086】
ここで用いたガスは、例えば、窒素(N)であるが、一般的に半導体製造プロセスに慣例的に用いられる酸素(O)、精製空気(Air)などを用いても構わない。即ち、ガスラインに混入したパーティクル(塵(Dust))を捕獲するためのガスフィルター(シービング(Sieving)径が30nm以下)を通したガスであれば、気泡として使用することが可能である。
【0087】
また、液体として薬液を使用した場合の薬液としては、第1乃至第3の実施形態と同様に、第1の実施形態において詳細に説明したアルカリ性の溶液と酸性の溶液の二種類が考えられる。
【0088】
本実施形態に係る液中気泡混合装置110に対して、図12に示すような従来の気泡発生装置120では、気泡に対する浮力よりも気泡の毛細管壁111への付着力が強い場合には、気泡が毛細管壁111から離脱することなく、巨大化が進む。即ち、液体の毛細管壁111に近い領域(図12の右の拡大図のPhase1領域)では、液体の流れが殆ど無く、毛細管壁111には拡散による液体の供給がなされているだけである。この界面領域では液体流によるせん断エネルギーが供給されない為、小さな気泡として脱離できず気泡の自然膨張がなされる。
【0089】
その後、毛細管先端の気泡同士が結合して大きなサイズの気泡になって(図12の右の拡大図のPhase2領域に達して)初めて、液体流から受ける抵抗から気泡がある程度以上のせん断力(せん断エネルギー)を得た時に、気泡の毛細管壁111からの離脱が起こる。このように、従来の方法で気泡を発生させた場合は凡そ数百μmの気泡サイズになってしまう。
【0090】
それに対して、本実施形態に係る液中気泡混合装置は、液体中の超音波印加領域に気体導入部から気体を注入することによって該気体からなる気泡を液体中に効率的に混合させることが可能となる。即ち、基板上の微細パターンと同等サイズ程度のナノメーター及びマイクロメーターサイズの気泡を安定的に発生させることが可能となる。
【0091】
従って、本実施形態に係る液中気泡混合装置を、第2の実施形態で説明した図6及び図7において用いたバブラー(イジェクター)の代わりに洗浄液生成部として使用したり、第3の実施形態で説明した図8のジェットノズル800に薬液流(又は純水流)81、82、83を供給する気泡発生装置として使用することが可能である。これにより、第2及び第3の実施形態において、基板上の微細パターンと同等サイズ程度のナノメーター及びマイクロメーターサイズの気泡をより安定的に発生させることが可能となる。
【0092】
なお、本願発明は上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、上記実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組み合わせにより種々の発明が抽出されうる。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題が解決でき、発明の効果の欄で述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出されうる。更に、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る半導体基板洗浄装置の構成を示す図。
【図2】図1の紙面垂直方向の断面図。
【図3】アルカリ溶液の薬液の場合の、pHとゼータポテンシャルの関係を示す図。
【図4】酸性溶液の薬液の場合の、pHとゼータポテンシャルの関係を示す図。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る半導体基板洗浄装置の別の構成を示す断面図。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る半導体基板洗浄装置の構成を示す図。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る半導体基板洗浄装置の別の構成を示す図。
【図8】本発明の第3の実施形態に係る半導体基板洗浄装置の構成を示す図。
【図9】枚葉洗浄装置における半導体基板の洗浄手順を示す図。
【図10】気泡の有無、薬液処理の有無によるパーティクルの除去率の評価結果。
【図11】本発明の第4の実施形態に係る液中気泡混合装置の構成を示す図。
【図12】従来の気泡発生装置の構成を示す図。
【符号の説明】
【0094】
1…ウエハー、10…処理槽、20…薬液供給管、30…薬液供給口、
40…超音波振動子、50…ドレイン、60…バブラー(イジェクター)、61…ポンプ、
62…ヒーター、63…フィルター、64…循環配管、70…化学的混合バルブ、
81、82、83…薬液流、85、86、87…気体流、100…バッチ式洗浄装置、
110…液中気泡混合装置、111…毛細管壁、112…超音波振動子、
113…液体流入部、120…気泡発生装置、600、700…バッチ式洗浄装置、
800…ジェットノズル、801…枚葉洗浄装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスが飽和濃度まで溶解している酸性の溶液であって、界面活性剤を入れたことにより半導体基板及び吸着粒子のゼータポテンシャルをマイナスにする溶液、
或いは、
ガスが飽和濃度まで溶解しているアルカリ性の溶液であって、pHが9以上である溶液
のいずれかの溶液に前記ガスの気泡を含ませた洗浄液を用いて半導体基板を洗浄する
ことを特徴とする半導体基板洗浄方法。
【請求項2】
前記溶液として酸性の溶液を用いて、
前記界面活性剤として、1分子中にスルホン酸基を少なくとも2以上有する化合物、フィチン酸化合物、及び縮合リン酸化合物のいずれか1つ又は2つ以上を用いる
ことを特徴とする請求項1に記載の半導体基板洗浄方法。
【請求項3】
液体と気体を混合することにより洗浄液の流れを形成し、前記洗浄液の流れを用いて半導体基板を洗浄する二流体洗浄において、
前記液体に気泡が混入した液体を用いる
ことを特徴とする半導体基板洗浄方法。
【請求項4】
液体を流入する液体流入部と、
前記液体中に超音波を発生する超音波発生部と、
前記液体中に気体を導入する気体導入部と
を具備し、
前記液体中の超音波印加領域に前記気体導入部から前記気体を注入することによって気泡を前記液体中に混合させる
ことを特徴とする液中気泡混合装置。
【請求項5】
半導体基板を洗浄液を用いて洗浄するために処理槽と、
ガスが飽和濃度まで溶解している酸性の溶液であって界面活性剤を入れたことにより前記半導体基板及び吸着粒子のゼータポテンシャルをマイナスにする溶液、或いは、ガスが飽和濃度まで溶解しているアルカリ性の溶液であってpHが9以上である溶液のいずれかの溶液に、前記ガスの気泡を混入することにより前記洗浄液を生成する洗浄液生成部と
を具備したことを特徴とする半導体基板洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−300429(P2008−300429A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−142199(P2007−142199)
【出願日】平成19年5月29日(2007.5.29)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】