説明

半導体基板表面を活性化するための溶液及びプロセス

【課題】半導体基板表面を活性化するための溶液及びプロセスの提供。
【解決手段】本発明は、その後の工程で無電解法により金属層を堆積させて被覆できるように、ポリマーから形成される少なくとも1つの領域を含む基板表面を活性化するための溶液及びプロセスに関する。また、本発明によれば、この組成物は、A)1以上のパラジウム錯体から形成される活性化剤と;B)少なくとも2つのグリシジル官能基及び少なくとも2つのイソシアネート官能基を含む各化合物から選択される1以上の有機化合物から形成される結合剤と;C)上記活性化剤及び上記結合剤を溶解可能な1以上の溶媒から形成される溶媒系とを含有する。用途:特に集積回路、とりわけ3次元集積回路、などの電子デバイスの製造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して電子デバイスの製造に関し、電子デバイスのなかでも特に集積回路、とりわけ3次元集積回路に関する。主題は、特に、その後の工程で無電解法により金属層を堆積させて被覆できるように、ポリマーから形成された少なくとも1つの領域を含む基板表面を活性化するための溶液及びプロセスである。
【0002】
本発明は、本質的に、マイクロエレクトロニクス分野における貫通ビア(「シリコン貫通ビア」又は「ウェハ貫通ビア」又は「ウェハ貫通配線」ともいう)の金属被覆(メタライゼーション)、特に銅を用いた金属被覆の分野において応用される。貫通ビアは、電子チップ(又は「ダイ」)の3次元(3D)集積又は垂直集積の要となるものである。本発明はまた、貫通ビアを含む基板を電気的に絶縁し、銅層で被覆する必要がある他のエレクトロニクス分野にも応用される。その例としては、プリント回路(「プリント回路板」又は「プリント配線板」ともいう)における配線素子の形成、及び、集積回路やマイクロシステム(「微小電気機械システム」ともいう)における受動素子(インダクタ等)や電気機械素子の形成等が挙げられる。
【背景技術】
【0003】
最近の電子システムは、複数の集積回路又は部品で構成されているものが大半であり、各集積回路は1以上の機能を実現する。例えば、コンピュータは少なくとも1つのマイクロプロセッサと複数のメモリ回路を有する。各集積回路は、通常、それ自体が封入されたパッケージ内の電子チップに相当する。各集積回路は、例えば、プリント回路板(PCB)内に鑞付け又はプラグ接続され、集積回路間は確実に接続される。
【0004】
電子システムの機能密度を高めて欲しいという要望は常にあり、その結果、チップを積層し、垂直配線により相互に接続することを特徴とする「3次元集積」又は「垂直集積」という概念が生まれた。そのようなことから、得られた積層体は、能動部品又はチップの層を複数有し、3次元の集積回路(3D集積回路又は「3D−IC」という)を含んでいる。
【0005】
例えば接合などにより積層した後で、各チップは接続配線によって個別にパッケージの端子に接続することができる。チップを相互に接続するためには、通常、ウェハ貫通ビアの使用が必要になる。
【0006】
3次元集積回路の製造に必要な基本技術には、特に、シリコンウェハの薄化、層間の位置合わせ、層の接着、各層におけるウェハ貫通ビアのエッチング及び金属被覆が含まれる。
【0007】
シリコンウェハの薄化は、ウェハ貫通ビアを形成する前に行ってもよい(例えば特許文献1及び2)。
【0008】
あるいは、シリコンウェハの薄化の前にビアのエッチング及び金属被覆を行ってもよい(例えば特許文献1及び3)。この場合、非貫通ビア又は「ブラインド」ビアをシリコン内でエッチングしてから、所望の深さまで金属被覆した後、シリコンウェハを薄化して、ウェハ貫通ビアを得る。
【0009】
銅は、導電性が良好で、エレクトロマイグレーションへの耐性が高い、すなわち、動作不良の主原因となりやすい電流密度の影響による銅原子の移動が少ないため、特にウェハ貫通ビアを金属被覆する材料として選ばれやすい。
【0010】
通常、3D集積回路のウェハ貫通ビアは、マイクロエレクトロニクス分野において集積回路の相互接続素子を形成するために採用される「ダマシンプロセス(Damascene process)」と同様に、以下の工程を順次行うことで形成される。
・シリコンウェハ内に、又は、シリコンウェハを貫通して、ビアをエッチングする;
・絶縁誘電体層を堆積する;
・銅の移動又は拡散を防ぐためのバリア層又は「ライナー」を堆積する;
・銅下地層(copper germination layer:銅シード層)を堆積する;
・銅を電着してビアに充填する;
・化学機械研磨により余分な銅を取り除く。
【0011】
絶縁誘電体層は、化学気相成長法(CVD)法などにより堆積させた無機層(通常、例えば、二酸化ケイ素(SiO)、窒化ケイ素(SiN)、又は、酸化アルミニウムなどで形成されたもの)であってもよいし、液体媒体中への浸漬、又は、SOG(スピンオンガラス)法により堆積させた有機層(例えば、パリレンC、N若しくはD、ポリイミド、ベンゾシクロブテン、又は、ポリベンゾオキサゾールなど)であってもよい。
【0012】
銅拡散バリア層は、通常、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、窒化タンタル(TaN)、窒化チタン(TiN)、チタン−タングステン合金(TiW)、炭窒化タングステン(WCN)、又は、これらの物質の組み合わせで形成されており、通常、気相法(PVD、CVD、又はALD)で堆積させる。
【0013】
上記バリア層は、特にニッケル系又はコバルト系合金などの他の金属で無電解法により形成することもできる。
【0014】
このように、特許文献4には、パラジウム含有化合物で表面改質した有機シラン系単分子膜で被覆されたシリカ系絶縁中間層を含む半導体デバイスを製造するプロセスが記載されており、このようにして改質された膜を、バリアを形成するコバルト系又はニッケル系の層で無電解法により被覆し、このバリア上に銅層を電着により堆積させることができる。
【0015】
実質的に同様なプロセスが、特許文献5に記載されており、半導体デバイスの各種層間の接着力を高めるために、ニッケル系化合物(NiB)に続いてコバルト系化合物(CoWP)で処理する2つの連続的な無電解処理を行うことが推奨されている。
【0016】
これらの先行特許出願に記載されたプロセスでは、無電解堆積のための活性化剤として機能するパラジウム化合物を中間絶縁面上に固定するために、異なる2つの溶液を使用し、異なる2つの処理を行うことが必要である。
【0017】
また、これらのプロセスは、無機物質である絶縁誘電体層上にエッチングされる相互接続システムを形成するために開発されたものである。
【0018】
銅下地層(copper germination layer)は、通常、気相を用いた物理堆積法又は化学堆積法により形成される。これらの方法による欠点を考慮して、鋭意検討を行った結果、銅下地層を電気化学的方法で形成するための新規組成物を得た。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】米国特許第7060624号明細書
【特許文献2】米国特許第7148565号明細書
【特許文献3】米国特許第7101792号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2005/0110149号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2008/0079154号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
以上を鑑みて、本発明は、現段階で好ましい適用例では、絶縁誘電体層が少なくとも部分的に有機ポリマーから形成されるものであり、無電解法により金属層で被覆する必要がある3次元集積回路のウェハ貫通ビアの形成に関する。本発明の目的は、その後の工程で無電解法により金属層を堆積させて被覆した後に銅下地層(copper germination layer)で被覆できるように、絶縁層を担持した半導体基板などの基板のポリマー表面を活性化するための全成分を単一の溶液の範囲内で組み合わせた組成物を提供するという技術的課題を解決することである。これによって、層間の接着力に優れた多層構造体が得られる。
【課題を解決するための手段】
【0021】
このように、第一の態様によれば、本発明の主題の一つは、その後の工程で無電解法により金属層を堆積させて被覆できるように基板表面を活性化するための溶液であって、上記表面は、ポリマーのみからなるか、又は、ポリマーから形成される少なくとも1つの領域と、酸化物、特に酸化ケイ素から形成される少なくとも1つの領域とを含むものであり、
A)・式(I)のパラジウム錯体:
【0022】
【化1】

(式中、
・R1及びR2は同一で、H、CHCHNH、CHCHOHを表すか;又は
R1はHを表し、且つ、R2はCHCHNHを表すか;又は
R1はCHCHNHを表し、且つ、R2はCHCHNHCHCHNHを表すか;又は
R1はHを表し、且つ、R2はCHCHNHCHCHNHCHCHNHを表し、
・Xは、Cl;Br;I;HO,NO;CHSO;CFSO;CH−Ph−SO;CHCOOからなる群から選択される配位子を表す)、
・式IIa又はIIbのパラジウム錯体:
【0023】
【化2】

(式中、
・R1及びR2は上記と同義であり、
・Yは、
・2つのモノアニオン、好ましくは、Cl;PF;BF;NO;CHSO;CFSO;CH−C−SO;CHCOOからなる群から選択される2つのモノアニオンか、又は
・ジアニオン、好ましくはSO2−
から形成される2つの負電荷を含む対イオンを表す)
からなる群から選択される1以上のパラジウム錯体から形成される活性化剤と;
B)少なくとも2つのグリシジル官能基を含む化合物、及び、少なくとも2つのイソシアネート官能基を含む化合物からなる群から選択される1以上の有機化合物から形成される結合剤と;
C)上記活性化剤及び上記結合剤を溶解可能な1以上の溶媒から形成される溶媒系と
を含有することを特徴とする溶液である。
【0024】
以下、式(IIa)及び(IIb)の化合物をまとめて「式(II)の化合物」と称することもある。
【0025】
本発明の具体的な一特徴によれば、上記溶液は、
・上記活性化剤を10−6M〜10−2M、好ましくは10−5M〜10−3M、より好ましくは5×10−5M〜5×10−4Mの濃度で、
・上記結合剤を10−5M〜10−1M、好ましくは10−4M〜10−2M、より好ましくは5×10−4M〜5×10−3Mの濃度で含有する。
【0026】
全く新規なものとして、本発明に係る溶液の活性化剤は、上述の式(I)及び(II)に対応する1以上のパラジウム錯体から形成される。
【0027】
式(I)の錯体は、下記反応スキームに従って、式(III)のパラジウム塩を式(IV)の二座窒素配位子と反応させることにより調製することができる。
【0028】
【化3】

【0029】
式中、X、R1及びR2は上で定義したものと同義である。
【0030】
より具体的には、式(III)のパラジウム塩は、0.2M塩酸水溶液中に40℃〜80℃の温度、好ましくは約60℃の温度で10〜20分間、好ましくは約20分間、溶解させて、式:HPdClの可溶性錯体を得る。
【0031】
反応終了時に、反応媒体に式(IV)の二座窒素配位子を1当量添加し、40℃〜80℃の温度、好ましくは約60℃の温度で、1〜3時間、好ましくは約2時間保持し、式(I)の錯体を得る。配位子を添加することで反応媒体の色が変化する。
【0032】
次に、上記溶媒を留去し、固体残留物に対してエタノールなどの溶媒中で再結晶処理を施す。
【0033】
出発物質であるパラジウム化合物は、塩化パラジウム(PdCl)であることが好ましい。
【0034】
あるいは、式(III)のパラジウム塩は、式[PdX2−のパラジウム塩、例えば、KPdCl、LiPdCl、NaPdCl、又は、(NHPdClなどに置き換えることもできる。
【0035】
本発明において使用できる式(IV)のアミン誘導体の好ましい例として、特に以下の化合物が挙げられる。
・ジエチレントリアミン(R1が水素原子を表し、R2がCHCHNHを表す場合の(IV)の化合物);
・N,N’−ビス(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン(R1及びR2が同一で、CHCHOHを表す場合の(IV)の化合物)。
【0036】
本発明において特に好ましいアミン化合物は、ジエチレントリアミンである。
【0037】
式(II)の錯体は、下記反応スキームに従って、式(I)の錯体の調製と同様にして調製することができる。
【0038】
【化4】

【0039】
式中、X、R1及びR2は上で定義したものと同義である。
【0040】
より具体的には、式:HPdClの可溶性錯体は上で説明した方法と同じ方法により形成される。
【0041】
反応終了時に、反応媒体に式(IV)の二座窒素配位子を2当量添加し、60℃〜80℃の温度で8〜15時間、好ましくは約12時間保持し、式(IIa)及び(IIb)の錯体を得る。
【0042】
あるいは、式(II)の錯体は、式(I)の錯体に、適当な溶媒中に混ぜた二座窒素配位子を1当量添加し、60℃〜80℃の温度、好ましくは約70℃の温度で、8〜15時間、好ましくは約12時間、反応媒体を保持することによって、式(I)の錯体から調製することもできる。これら2つの場合において、反応媒体に銀塩を添加することで反応を促進することもできる。
【0043】
上記反応スキームには、反応によって2つのcis及びtrans錯体が得られることが示されているが、これらは、R1がHを表し、R2がCHCHNHを表す場合に限って形成される錯体である。当業者であれば、R1及びR2が共にCHCHNH基以上の分子量を有する基を表す場合に、統計学に基づいた複数の錯体の混合物が得られることを容易に理解するであろう。このような混合物は工業的規模で用いることができ、所望の結果を得る上で必ずしも精製する必要がないことは明らかである。
【0044】
本発明に係る溶液の必須成分の1つである結合剤は、少なくとも2つのグリシジル官能基を含む化合物、及び、少なくとも2つのイソシアネート官能基を含む化合物から選択される1以上の有機化合物から形成される。
【0045】
結合剤は、活性化対象のポリマー表面にパラジウムを付着しやすくするためのものである。
【0046】
本発明において使用できる少なくとも2つのグリシジル官能基を含む有機化合物の例としては、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、エチレングリコールグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、4,4’−ビスフェノールA−ジグリシジルエーテル、グリセリルトリグリシジルエーテル、及び、トリグリシジルイソシアヌレートからなる群から選択される化合物が挙げられる。
【0047】
本発明において特に好ましい化合物は、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル(ジグリシジルエーテルブタンともいう)である。
【0048】
2つのイソシアネート官能基を含む化合物は、1,2−フェニレンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、1,4−ジイソシアネートブタン、1,6−ジイソシアネートヘキサン、1,8−ジイソシアネートオクタン、2,4−トルエンジイソシアネート、2,5−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート,イソホロンジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート、trans−1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート、1,3−ビス(1−イソシアネート−1−メチルエチル)ベンゼン、4,4’−メチレンビス(フェニルイソシアネート)からなる群から選択できる。
【0049】
結合剤は、通常、10−5M〜10−1M、好ましくは10−4M〜10−2M、より好ましくは5×10−4M〜5×10−3Mの濃度で活性化溶液中に存在する。
【0050】
本発明に係る溶液用の溶媒系は、上述の活性化剤及び結合剤を溶解可能なものでなければならない。
【0051】
上記溶媒系は、N−メチルピロリジノン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アルコール類、エチレングリコールエーテル類、例えばモノエチルジエチレングリコール、プロピレングリコールエーテル類、ジオキサン、及び、トルエンからなる群から選択される1以上の溶媒から形成されるものであってもよい。
【0052】
通常、溶媒系は、パラジウム錯体を溶解可能な溶媒と、エチレングリコールエーテルやプロピレングリコールエーテルなどの溶媒を組み合わせた混合物から形成されるのが有利である。
【0053】
本発明において、とりわけ毒性が非常に低いことから、特に好ましい溶媒系は、N−メチルピロリジノン(NMP)とジエチレングリコールモノエチルエーテルの混合物から形成される。これらの化合物は、1:200〜1:5、好ましくは概ね1:10の体積比で使用してもよい。
【0054】
活性化対象の表面が酸化物、例えばシリコン系半導体基板の場合にはSiOなど、から形成される少なくとも1つの領域も含む場合に特に有用である本発明の実施形態の一変形例によれば、本発明に係る溶液は、1以上の有機シラン化合物も含有する。
【0055】
具体的には、「混合型」構造を有する基板、すなわち、ポリマーから形成される少なくとも1つの領域と酸化物から形成される少なくとも1つの領域とを含む基板について、特に、その後の工程でその表面を、銅拡散バリアを形成する金属層、とりわけNiBの金属層で被覆し、該バリア自体を銅下地層で被覆する場合に、上記化合物が基板の連続層間の接着力を良好にするために必要であることが見出された。
【0056】
また、上記1以上の有機シラン化合物が本発明に係る活性化溶液中に存在すれば、基板表面のポリマーで被覆された領域の各層の接着性が損なわれないことが明らかとなった。
【0057】
本発明の具体的な一特徴によれば、上記有機シラン化合物は、
・一般式:{X−(L)}4−n−Si(OR) (Va)
(式中、
・Xは、チオール、ピリジル、エポキシ(オキサシクロプロパニル)、グリシジル、1級アミン、クロロからなる群から選択され、且つ、上記式Iのパラジウム化合物と反応することができる官能基を表し、
・Lは、CH、CHCH、CHCHCH−、CHCHCHCH−、CHCHNHCHCH、CHCHCHNHCHCH、CHCHCHNHCHCHNHCHCH、CHCHCHNHCHCHCHCHCHCH、Ph、Ph−CH、及び、CHCH−Ph−CH(Phはフェニル核)からなる群から選択されるスペーサーアームを表し、
・Rは、CH、CHCH、CHCHCH、及び、(CHCHからなる群から選択される基であり、
・nは、1、2又は3の整数である);又は
・一般式:(OR)Si−(L)−Si(OR) (Vb)
(式中、
・Lは、CHCHCHNHCHCHNHCHCHCH、及び、CHCHCH−S−S−CHCHCHからなる群から選択されるスペーサーアームを表し、
・Rは、CH、CHCH、CHCHCH、及び、(CHCHからなる群から選択される基である)
に相当する。
【0058】
式(Va)又は(Vb)の化合物は、例えば、下記化合物から選択される:(3−アミノプロピル)トリエトキシシラン、(3−アミノプロピル)トリメトキシシラン、m−アミノフェニルトリメトキシシラン、p−アミノフェニルトリメトキシシラン、p,m−アミノフェニルトリメトキシシラン、4−アミノブチルトリエトキシシラン、m,p−(アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、2−(4−ピリジルエチル)トリエトキシシラン、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)エチレンジアミン、(3−トリメトキシシリルプロピル)ジエチレントリアミン、N−(3−トリメトキシシリルエチル)エチレンジアミン、N−(6−アミノヘキシル)アミノプロピルトリメトキシシラン、(3−グリシドキシプロピル)トリメトキシシラン、(3−グリシドキシプロピル)トリエトキシシラン、5,6−エポキシヘキシルトリエトキシシラン、(3−メルカプトプロピル)トリメトキシシラン、(3−メルカプトプロピル)トリエトキシシラン、ビス[3−(トリエトキシシリル)プロピル]ジスルフィド、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、(p−クロロメチル)フェニルトリメトキシシラン、m,p−((クロロメチル)フェニルエチル)トリメトキシシラン。
【0059】
本発明において使用できる好ましい有機シラン化合物として、特に以下のものが挙げられる。
・式(Va)の化合物(式中、
XがNH基を表す場合に、
LがCHCHCH−を表し、且つ、RがCHを表す((3−アミノプロピル)トリメトキシシラン又はAPTMSとして知られる化合物)か、又は
LがCHCHCH−を表し、且つ、RがCHCHを表す((3−アミノプロピル)トリエトキシシラン又はAPTESとして知られる化合物)か、又は
LがCHCHNHCHCHを表し、且つ、RがCHを表す(N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン又はDATMS又はDAMOとして知られる化合物)か;又は
XがSHを表し、LがCHCHCH−を表し、且つ、RがCH−CHを表す((3−メルカプトプロピル)トリメトキシシラン又はMPTESとして知られる化合物)か;又は
XがCNを表し、LがCHCH−を表し、且つ、RがCH−CHを表す(2−(4−ピリジルエチル)トリエトキシシラン又はPETESとして知られる化合物)か;又は
XがCHCHOを表し、LがCHCHCHを表し、且つ、RがCHを表す((3−グリシドキシプロピル)トリメトキシシラン又はEPTMSとして知られる化合物)か;又は
XがClを表し、LがCHCHCHを表し、且つ、RがCHを表す(3−クロロプロピルトリメトキシシラン又はCPTMSとして知られる化合物))。
【0060】
本発明において特に好ましい有機シラン化合物は、(3−アミノプロピル)トリメトキシシラン(APTMS)である。
【0061】
上記有機シラン化合物の濃度は、通常10−5M〜10−1M、好ましくは10−4M〜10−2M、より好ましくは5×10−4M〜5×10−3Mであることが有利である。
【0062】
特に有利な一特徴によれば、活性化溶液は非常に少量の水を含有する。よって、水は、体積に基づいて1%未満、好ましくは0.5%未満、より好ましくは0.2%未満の濃度で存在していてもよい。
【0063】
本発明において特に好ましい活性化溶液は、
・5×10−5M〜5×10−4Mの濃度の下記錯体:
・式(I)の錯体(式中、
・R1はHを表し、R2はCHCHNHを表し、且つ、RはClを表す(この錯体は、(ジエチレントリアミン)(ジクロロ)パラデート(II)として知られている)か;又は
R1及びR2は同一で、CHCHOHを表し、且つ、XはClを表す(この錯体は、(N,N’−ビス(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン)(ジクロロ)パラデート(II)として知られている))、
・式(IIa)の錯体(式中、
・R1はHを表し、R2はCHCHNHを表し、且つ、Yは2つのClを表す(この錯体は、trans−ビス(ジエチレントリアミン)パラデート(II)として知られている))、
・式(IIb)の錯体(式中、
・R1はHを表し、R2はCHCHNHを表し、且つ、Yは2つのClを表す(この錯体は、cis−ビス(ジエチレントリアミン)パラデート(II)として知られている))
からなる群から選択される1以上のパラジウム錯体から形成される活性化剤と;
・それぞれ5×10−4M〜5×10−3Mの濃度の1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル及び4,4’−ビスフェノールA−ジグリシジルエーテルからなる群から選択される1以上の有機化合物から形成される結合剤と;
・10−3M〜10−2Mの濃度の下記化合物:式(Va)の化合物(式中、XがNH基を表す場合に、
・LがCHCHCH−を表し、且つ、RがCHを表す(この化合物は、(3−アミノプロピル)トリメトキシシラン又はAPTMSとして知られている)か;
・LがCHCHCH−を表し、且つ、RがCHを表す(この化合物は、(3−アミノプロピル)トリエトキシシラン又はAPTESとして知られている)か;
・LがCHCHNHCHCHを表し、且つ、RがCHを表す(この化合物は、[3−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピル]トリメトキシシラン又はDATMS又はDAMOとして知られている))
からなる群から選択される有機シラン化合物とを含有する。
【0064】
第二の態様によれば、本発明の主題は、その後の工程で無電解法により金属層を堆積させて被覆できるように基板表面を活性化するための上記溶液の使用であって、
上記表面は、ポリマーのみからなるか、又は、ポリマーから形成される少なくとも1つの領域と、酸化物から形成される少なくとも1つの領域とを含むことを特徴とする使用である。
【0065】
第一実施形態によれば、本発明を行うことで表面が活性化される基板は、高温などの過酷な条件に耐えることができる誘電特性を有するポリマーから形成されるフレキシブル基板(「フレックス」ともいう)であってもよい。この基板は特にマイクロエレクトロニクス分野で有用であり、より具体的には、フレキシブルプリント回路(FPC)の製造、あるいは、電話やラップトップの2部品間の電子接続の形成において有用である。
【0066】
このフレキシブル基板は、ポリイミド類(Kapton(登録商標)やUpilex(登録商標))、ポリエステル類(Mylar(登録商標))、ポリアミド類(Nomex(登録商標))、及び、ポリエーテルイミド類(Ultem(登録商標))などのポリマーであってもよい。
【0067】
現段階で好ましい第二実施形態によれば、本発明を行うことで表面が活性化される基板は、シリコン系半導体基板、特に電子デバイス製造を目的としたもの、とりわけ、3次元集積回路用のウェハ貫通ビアの形成を目的としたものであってもよい。
【0068】
少なくとも部分的に基板表面を形成可能なポリマーは、1級アミン基、2級アミン基、エナミン基、アルコール基、チオール基、芳香族複素環(例えば、ピリジン、ピロール又はチオフェン)基、及び、非芳香族複素環基からなる群から選択される1以上の基を含むポリマーから選択することができる。
【0069】
本発明では、「複素環基」という用語は、1つ又は2つの環を有し、1環当たり3〜8つの炭素原子を含む飽和又は部分不飽和の炭化水素系基であって、その1以上の炭素原子(1以上の水素原子と結合していてもよい)が、1以上のヘテロ原子、特に、酸素、窒素、及び硫黄から選択される1以上のヘテロ原子で置換されているものを意味する。よって、そのような基は、芳香族であっても非芳香族であってもよく、単環式であっても二環式であってもよい。
【0070】
単環式芳香族複素環基の例としては、ピリジン基、ピロール基、チオフェン基、ピラゾール基、イミダゾール基、及び、オキサゾール基が挙げられる。
【0071】
二環式複素環基の例としては、ベンゾチアゾール基、ベンゾオキサゾール基、ベンゾオキサジアゾール基、及び、インドール基が挙げられる。
【0072】
非芳香族複素環基の例としては、テトラヒドロフラン基、ピペリジン基、モルホリン基、及び、チアモルホリン基が挙げられる。
【0073】
具体的な一特徴によれば、上記ポリマーは、エレクトログラフティングにより基板表面に堆積されるポリマーである。
【0074】
エレクトログラフティングは、被覆対象の表面で、電気活性なモノマーの重合を開始させ、連鎖成長反応を利用して電気誘起重合を行うという湿式堆積技術である。
【0075】
通常、エレクトログラフティングは以下を必要とする。
・まず、開始化合物及びモノマーを含有する溶液の使用。
・次に、被覆対象の基板表面にポリマー皮膜を形成するための電気化学的プロトコル。
【0076】
エレクトログラフティングにより有機皮膜を形成するプロセスは、例えば国際公開第2007/099137号などに記載されている。
【0077】
本発明において、ポリマー皮膜は、下記工程を含むプロセスによってシリコン基板などの導電性又は半導電性の基板表面に形成できる。
a)・プロトン性溶媒、好ましくは水、より好ましくは脱イオン水又は蒸留水と;
・少なくとも1つのジアゾニウム塩と;
・上記プロトン性溶媒に可溶な少なくとも1つの連鎖重合性モノマーと;
・上記溶液のpHを7未満、好ましくは2.5未満の値に調整して上記ジアゾニウム塩を安定化するのに充分な量の少なくとも1つの酸と
を含有する溶液と上記表面を接触させる工程、
b)少なくとも20ナノメートルの厚み、好ましくは100〜500ナノメートルの厚みの皮膜を形成させるのに充分な時間、上記表面を電圧パルスモード又は電流パルスモードで分極させる工程。
【0078】
通常、上記プロセスを行うために多くのジアゾニウム塩を使用することができ、特に国際公開第2007/099218号に記載のジアゾニウム塩が挙げられる。
【0079】
好ましい一実施形態によれば、上記ジアゾニウム塩は、フェニルジアゾニウムテトラフルオロボレート、4−ニトロフェニルジアゾニウムテトラフルオロボレート、4−ブロモフェニルジアゾニウムテトラフルオロボレート、2−メチル−4−クロロフェニルジアゾニウムクロリド、4−ベンゾイルベンゼンジアゾニウムテトラフルオロボレート、4−シアノフェニルジアゾニウムテトラフルオロボレート、4−カルボキシフェニルジアゾニウムテトラフルオロボレート、4−アセトアミドフェニルジアゾニウムテトラフルオロボレート、4−フェニル酢酸ジアゾニウムテトラフルオロボレート、2−メチル−4−[(2−メチルフェニル)ジアゼニル]ベンゼンジアゾニウムスルフェート、9,10−ジオキソ−9,10−ジヒドロ−1−アントラセンジアゾニウムクロリド、4−ニトロフタレンジアゾニウムテトラフルオロボレート、ナフタレンジアゾニウムテトラフルオロボレート、及び、4−アミノフェニルジアゾニウムクロリドから選択することができる。
【0080】
上記ジアゾニウム塩は、フェニルジアゾニウムテトラフルオロボレート、及び、4−ニトロフェニルジアゾニウムテトラフルオロボレートから選択されることが好ましい。
【0081】
上記ジアゾニウム塩は、通常、10−3M〜10−1M、好ましくは5×10−3M〜3×10−2Mの量でエレクトログラフティング溶液中に存在する。
【0082】
基板表面に皮膜を形成可能なモノマーは、下記一般式に相当する、プロトン性溶媒に可溶なビニルモノマー類から選択することができる。
【0083】
【化5】

【0084】
式中、R〜R基は同一でも異なっていてもよく、ハロゲン原子若しくは水素原子などの1価の非金属原子、又は、C〜Cアルキル基、アリール基、−COOR基(式中、Rは水素原子、又は、C〜Cアルキルを表す)、ニトリル基、カルボニル基、アミン基、又は、アミド基などの飽和若しくは不飽和の化学基を表す。
【0085】
水溶性モノマーを使用することが好ましい。このようなモノマーは、ピリジン基を含むエチレン性モノマー、例えば、4−ビニルピリジン若しくは2−ビニルピリジン、又は、カルボキシル基を含むエチレン性モノマー、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸若しくはフマル酸、及び、それらのナトリウム塩、カリウム塩、アンモニア塩若しくはアミン塩、これらのカルボン酸のアミド、特にアクリルアミド及びメタクリルアミド、さらに、それらのN−置換誘導体、それらのエステル、例えば、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸グリシジル、ジメチル若しくはジエチルアミノ(エチル若しくはプロピル)(メタ)アクリレート、及び、それらの塩、それらカチオン性エステルの4級化誘導体、例えば、アクリロキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)、ビニルスルホン酸、ビニルリン酸、ビニル酢酸、及び、それらの塩、アクリロニトリル、N−ビニルピロリドン、酢酸ビニル、N−ビニルイミダゾリン、及び、それらの誘導体、N−ビニルイミダゾール、及び、ジアリルアンモニウム型誘導体、例えば、ジメチルジアリルアンモニウムクロリド、ジメチルジアリルアンモニウムブロミド若しくはジエチルジアリルアンモニウムクロリドから選択することが有利であろう。
【0086】
本発明において特に好ましいモノマーは、4−ビニルピリジンである。
【0087】
エレクトログラフティング溶液の定量的組成は幅広い範囲内で変動してもよい。
【0088】
通常、上記溶液は、
・少なくとも0.3Mの重合性モノマーと、
・少なくとも5×10−3Mのジアゾニウム塩と
を、重合性モノマー及びジアゾニウム塩のモル比が10〜300となるように含有する。
【0089】
3次元集積回路の製造への本発明の好ましい適用例では、エレクトログラフティングプロトコルをパルスモードで用いて、工業的制約に対応できる成長速度で連続的で均一な皮膜を得ることが有利である。
【0090】
通常、皮膜で被覆される表面の重合はパルスモードで行われ、その各サイクルは以下の特徴を有する。
・合計時間Pは、0.010秒〜2秒、好ましくは約0.11秒;
・基板表面に電位差又は電流が印加される分極時間Tonは、0.01〜1秒、好ましくは約0.02秒;
・ゼロ電位又はゼロ電流での休止時間は、0.01〜1秒間、好ましくは約0.09秒間。
【0091】
第三の態様によれば、本発明の主題は、その後の工程で無電解法により金属層を堆積させて被覆できるように基板表面を活性化するためのプロセスであって、
上記表面は、ポリマーのみからなるか、又は、ポリマーから形成される少なくとも1つの領域と、酸化物、特に酸化ケイ素から形成される少なくとも1つの領域とを含み、
上記基板表面を上述の溶液と接触させることを特徴とするプロセスである。
【0092】
この活性化プロセスは、好ましくは50〜90℃の温度で1〜30分間、より好ましくは65〜70℃の温度で5〜15分間行う。
【0093】
ポリマーで被覆した基板を活性化溶液中に浸漬することによって、基板表面を本発明に係る活性化溶液と接触させることが有利である。
【0094】
また、第四の態様によれば、本発明の主題は、
a)ポリマーのみからなるか、又は、ポリマーから形成される少なくとも1つの領域と、酸化物、特に酸化ケイ素から形成される少なくとも1つの領域とを含む基板表面、特にシリコン系基板などの表面を上述の溶液と、好ましくは50〜90℃の温度で1〜30分間、より好ましくは65〜70℃の温度で5〜15分間、接触させることによって、上記表面を活性化する工程;及び
b)その活性化した表面を無電解法により金属層、特にニッケル系金属層を堆積させて被覆する工程
を含むことを特徴とする、電子デバイスを製造するためのプロセスである。
【0095】
このようなプロセスは、導電性又は半導電性の基板の表面が少なくとも部分的に、電気絶縁皮膜形成ポリマーでできた第一内層、銅拡散バリアを形成する金属中間層、及び、銅下地外層で連続して被覆される3次元集積回路用ウェハ貫通ビアの形成に特に有用である。
【0096】
本発明のこのような別の態様におけるプロセスでは、活性化された基板表面に無電解法により堆積可能な金属であればどのようなものを使用してもよい。
【0097】
本発明の好ましい用途では、貴金属及び遷移金属、及び、それらの合金から選択される金属を使用することが好ましい。これらの金属は、リンやホウ素などの元素、又は、それらの化合物の混合物と合金化してもよい。
【0098】
そのような物質、特にニッケル系物質又はコバルト系物質は、銅の移動又は拡散を防ぐために特に有利なバリア層を構成する。
【0099】
本発明においては、ホウ素と合金化したニッケルを使用した場合に優れた結果が得られた。
【0100】
無電解法による金属層の堆積は、当業者に周知のプロセスである。
【0101】
本発明においては、
・少なくとも1つの金属塩を好ましくは10−3M〜1Mの濃度、
・少なくとも1つ還元剤を好ましくは10−4M〜1Mの量、
・場合によっては、少なくとも1つの安定剤を好ましくは10−3M〜1Mの量、及び
・pHを6〜11の値、好ましくは8〜10の値に調整するための薬剤
を含有する溶液、好ましくは水溶液と、活性化した基板表面を、少なくとも30ナノメーターの厚み、好ましくは30ナノメーター〜100マイクロメーターの厚み、より好ましくは70ナノメーター〜200ナノメーターの厚みの金属皮膜を形成できる条件下で、接触させることによって、上記表面の被覆を行う。
【0102】
上記金属の金属塩は、上記金属の酢酸塩、アセチルアセトネート、ヘキサフルオロリン酸塩、硝酸塩、過塩素酸塩、硫酸塩又はテトラフルオロホウ酸塩からなる群から選択される水溶性塩であることが有利である。
【0103】
本発明において、好ましい金属塩は、硫酸ニッケル六水和物である。
【0104】
上記還元剤は、次亜リン酸及びその塩、ボラン誘導体、グルコース、ホルムアルデヒド、及び、ヒドラジンからなる群から選択することが有利である。
【0105】
本発明において、好ましい還元剤は、ボラン誘導体、特にジメチルアミノボラン(DMAB)などである。
【0106】
上記安定剤は、エチレンジアミン、クエン酸、酢酸、コハク酸、マロン酸、アミノ酢酸、リンゴ酸、又は、これらの化合物のアルカリ金属塩からなる群から選択することができる。
【0107】
本発明において、好ましい安定剤はクエン酸である。
【0108】
通常、上記金属層は、層の所望の厚みにより異なるが、40〜90℃、好ましくは70℃の温度で30秒〜20分間、上述の溶液中に浸漬することによって形成することができる。
【0109】
有利な一実施形態によれば、上記層に対して、不活性又は還元的雰囲気下、200〜400℃、好ましくは250℃の温度で1分〜30分間、好ましくは約10分間、アニールを行ってもよい。
【0110】
本発明の好ましい用途においては、上述のプロセスは、銅下地層をさらに形成するための工程を行って終了することとなる。
【0111】
銅下地層(copper germination layer:銅シード層)は、
a)・少なくとも1つの溶媒と、
・14〜120mM、好ましくは16〜64mMの濃度の銅イオンと、
・エチレンジアミンと
を含有し、
・エチレンジアミン及び銅のモル比が1.80〜2.03であり、
・上記組成物のpHが6.6〜7.5である
溶液と基板の金属表面を接触させる工程;
b)上記銅下地層を形成させるのに充分な時間、上記表面を分極させる工程
を含む湿式電着プロセスにより形成することが有利である。
【0112】
好ましい一実施形態によれば、上記溶液は、銅イオンを16〜64mMの濃度で、銅イオン及びエチレンジアミンのモル比が好ましくは1.96〜2.00になるように含有する。
【0113】
溶媒の性質は本質的に限定されない(但し、溶液の活性種を充分に溶解し、電着を妨げないものとする)が、水であることが好ましい。
【0114】
通常、銅イオン源は、銅塩、特に、硫酸銅、塩化銅、硝酸銅、酢酸銅、好ましくは硫酸銅、より好ましくは硫酸銅五水和物などである。
【0115】
好ましい一実施形態によれば、被覆対象の表面と上記液体との接触は、電着工程前に電気分極させることなく、すなわち、対電極、又は、上記表面上の参照電極に電流又は電位を印加することなく行う。
【0116】
皮膜形成後に銅下地層で被覆された基板を分離するための工程は本質的に限定されない。
【0117】
このプロセスでは、電着により皮膜を形成するための工程を、所望の皮膜を形成させるのに充分な時間行う。この時間は当業者であれば容易に設定でき、皮膜の成長度合いは、堆積時間内に回路に流れた電流の時間積分に等しい電荷に依存する(ファラデーの法則)。
【0118】
皮膜形成工程が行われる間、定電流(galvanostatic)モード(印加電流固定)、又は、定電圧(potentiostatic)モード((場合によっては参照電極に対して)印加電位固定)、又は、パルスモード(パルス電流又はパルス電圧)のいずれかで、被覆対象の表面を分極させてもよい。
【0119】
通常は、パルスモードで、好ましくは電流ギャップを印加するようにして、分極させれば、特に良好な皮膜が得られることが明らかとなった。
【0120】
通常、単位面積当たりの最大電流が0.6mA/cm〜10mA/cm、特に1mA/cm〜5mA/cmの範囲で、単位面積当たりの最小電流が0mA/cm〜5mA/cm、好ましくは0mA/cmの範囲に相当する電流ギャップを印加することで上記工程を行ってもよい。
【0121】
より具体的には、最大電流での分極時間は、2×10−3〜1.6秒、好ましくは0.1〜0.8秒、例えば約0.36秒であってもよく、一方、最小電流での分極時間は、2×10−3〜1.6秒、好ましくは0.1〜0.8秒、例えば約0.24秒であってもよい。
【0122】
この工程中に行うサイクル数は、皮膜の所望の厚みによって決まる。
【0123】
好適な条件下において堆積速度が約0.3nm/秒となることが明らかとなったことから、当業者であれば、通常、実行サイクル数を容易に設定できよう。
【0124】
このプロセスにより、「ウェハ貫通ビア」型構造の銅拡散バリアを形成する金属表面に50nm〜1μm、好ましくは200〜800nm、例えば約300nmなどの厚みを有する銅下地層を形成することができた。
【0125】
以下の添付図面を関連づけて示された下記実施例の説明を参照することにより本発明の理解がより深まるであろう。但し、下記実施例は本発明を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1】基板表面にポリマー皮膜を形成するために用いられるパルスモードのエレクトログラフティングプロトコルを概略的に表す。
【図2】銅下地層(copper germination layer:銅シード層)を形成するために用いられる定電流パルスモードのプロトコルを概略的に表す。
【図3】実施例1で得られたSi−P4VP−NiB−Cu積層体の走査電子顕微鏡法を示す。
【図4】実施例4で得られたSi−P4VP−NiB−Cu積層体の走査電子顕微鏡法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0127】
下記実施例は実験室規模で行ったものである。
【0128】
特に断りのない限り、下記実施例は、周囲空気中、標準的な温度及び圧力条件(約25℃、約1atm)で行い、使用試薬は、市販されているものを直接、それ以上精製せずに用いた。
【実施例】
【0129】
実施例1:無電解堆積のための、パラジウム錯体と2つのグリシジル官能基を含む化合物とを含有する本発明に係る溶液を使用した、ポリ−4−ビニルピリジン層で被覆された基板の活性化
【0130】
a)4−ビニルピリジンポリマーから形成される表面を有するシリコン系基板の調製:
【0131】
a1)基板:
【0132】
この実施例では、辺長4cm(4×4cm)、厚み750μm、抵抗率20Ω・cmのPドープシリコンクーポンを基板として使用した。この基板の表面は比較的薄い自然酸化層(4nm未満)を有していた。
【0133】
基板をフッ化水素酸(2.5%v/v)で10〜20秒間浄化した。
【0134】
a2)エレクトログラフティングによる基板表面へのポリ−4−ビニルピリジン(P4VP)層の堆積:
エレクトログラフティング溶液:
この実施例で使用したエレクトログラフティング溶液は、5mlの4−ビニルピリジン(4−VP;4.5×10−2mol)を95mlの1M HClに投入した後、この得られた混合物に236mgの4−ニトロベンゼンジアゾニウムテトラフルオロボレート(DNO;1×10−3mol)を添加して調製した水溶液であった。
【0135】
プロトコル:
【0136】
シリコン基板にエレクトログラフティングを行うために、以下から構成される装置を使用した。
・所定速度で回転する手段を備え、基板を支持するよう構成されたサンプルホルダーであって、このように組み立てられたものが作用電極として機能するようになっているサンプルホルダー;
・対電極として機能するようになっている炭素又は白金シート;
・安定電源、及び、電気的に接触させるためのデバイス;
・基板の正面に配置され、基板表面の光度が2000〜6000ルクス(本実施例では4000ルクス)となるフィルタを備える光源(ハロゲンランプ、150W)。このような光度にするため、ランプはサンプルの表面から約10cmのところに配置した。実験中ずっと、基板に光を照射し続けた。
【0137】
シリコン基板の表面へのP4VPのエレクトログラフティングは、あらかじめ10〜200rpm(本実施例では50rpm)の速度で回転する状態とした基板に「定電圧パルスモード」の電気化学的プロトコルを約4〜30分(本実施例では10分間)の所定時間、印加することにより行った。
【0138】
図1は、以下の条件で用いた電気化学的プロトコルを表す。
・合計時間Pが0.11秒;
・分極時間Tonが0.02秒、この間に印加されるカソード電位差が−15V;
・ゼロ電位での休止時間(「Toff」と表す)が0.09秒間。
【0139】
理解されるであろうが、エレクトログラフティング工程の継続時間は、絶縁ポリマー層の所望の厚みによって決まる。この継続時間は、当業者であれば容易に設定でき、層の成長度合いは、印加された電位差、光度、並びに、Ton値及びToff値によって決まる。
【0140】
上記条件下で、200ナノメーターの厚みのポリマー(P4VP)層を得た。
【0141】
エレクトログラフティングが終了したら、ポリマーで被覆された基板を数回水洗し、続いてジメチルホルムアミド(DMF)で洗浄した後、窒素気流下で乾燥させた。
【0142】
b)基板表面の活性化:
b1)パラジウム錯体の調製:
【0143】
塩化パラジウム(PdCl)802mg(4.52mmol)、脱イオン水50ml、及び、濃塩酸(37%、d=1.17、すなわち酸濃度0.2M)1mlを250ml容1首丸底フラスコに入れた。混合物を60℃で20分間加熱し、塩化パラジウムを溶解させて、HPdClの赤茶色溶液を得た。
【0144】
このようにして得た溶液にジエチレントリアミン0.500ml(4.58mmol)を添加した。この添加により、溶液の色が赤茶色から橙黄色に変化した。
【0145】
反応媒体をさらに2時間、60℃に保持した。
【0146】
ロータリーエバポレータで溶媒を留去した。固体残留物を熱エタノールから再結晶し、1.268gの式:C13PdClのパラジウム錯体を黄色がかった針状結晶体として得た(収率=88%)。H NMR(DO):2.62(ddd,2H);2.82−2.94(m,4H);3.02(td,2H).
【0147】
b2)本発明に係る活性化溶液の調製:
【0148】
工程b1)で得た錯体8mgをN−メチルピロリジノン(NMP)10ml中に溶解させた。
【0149】
ジエチレングリコールモノエチルエーテル50ml、上記パラジウム錯体を含有するNMP溶液10ml、及び、ジグリシジルエーテルブタン0.345mlを清浄な、乾燥したフラスコ中に投入した。全体を撹拌混合した。
【0150】
b3)基板表面の処理:
【0151】
工程b2)で得た混合物を約65℃にし、上記工程a)で調製した基板をその中に約10分間浸漬した。次に、このように処理した基板を脱イオン水で充分に水洗し、窒素気流下で乾燥させた。
【0152】
c)無電解法によるNiB金属層の堆積:
c1)無電解溶液の用時調製:
【0153】
1l容器中に硫酸ニッケル六水和物31.11g(0.118mol)、クエン酸44.67g(0.232mol)、及び、N−メチルエタノールアミン58g(0.772mol)を連続して入れた。塩基で最終pHを9に調整し、蒸留水で全容積を1lに調整した。チオジグリコール酸0.111g(0.739mmol)で溶液を安定化させた。
【0154】
溶液の9体積部に対して、次の工程で使用する直前に、28g/lのジメチルアミノボラン(DMAB;0.475mol)を含有する還元溶液1体積部を添加した。
【0155】
c2)拡散バリアを形成するためのNiB金属層の形成:
【0156】
上述の通り調製した無電解溶液中に浸漬することによって、工程b)後に得た「活性化した」基板表面にNiB金属層を形成し、所望の厚みに応じて30秒〜20分間、70℃に加熱した。この実施例では、浸漬時間を4分とすることで、70nmの厚みの金属層を得た。
【0157】
このように得た金属層を、還元的雰囲気(N+H混合物(5%H))下、250℃で10分間アニールした。
【0158】
d)銅下地層の形成:
溶液:
【0159】
工程c)後の被覆された基板への銅下地層の堆積を、2.1ml/l(32mM)のエチレンジアミンと4g/l(16mM)のCuSO(HO)とを含有する電着水溶液を使用して行った。
【0160】
プロトコル:
【0161】
この実施例で用いた電着プロセスは銅成長工程を含み、この工程の間、工程c)後に得た処理基板に対して定電流パルスモードでカソード分極を行い、同時に40回転/分の速度で回転させた。
【0162】
図2は用いた定電流パルスモードのプロトコルを詳しく説明するものであり、その合計時間Pが0.6秒;分極時間Tonが0.36秒、この間に印加された単位面積当たりの電流が2.77mA/cm;分極なしの休止時間Toffが0.24秒間であった。理解されるであろうが、この工程の継続時間は銅下地層の所望の厚みによって決まる。皮膜成長は回路に流れた電荷に依存するため、上記継続時間は当業者であれば容易に設定できる。回路に流れた電荷1クーロン当たり約1.5nmの堆積速度となる上記条件下では、約15分間の電着工程によって300nmの厚みの皮膜を得ることができた。
【0163】
このように銅で被覆した基板を回転速度を0にして約2秒以内で電着溶液から取り出した後、脱イオン水で水洗し、窒素気流下で乾燥させた。
【0164】
e)処理基板の特性決定:
【0165】
上述の工程d)後に得た被覆された基板について、走査電子顕微鏡法(SEM)により特性決定を行った。
【0166】
図3は、実施例1において得られたSi/P4VP/NiB/Cu積層体の断面図である。
【0167】
接着力測定:
【0168】
synergy 100MTS引張試験機(Cofrac)を用いて接着力の値をJ/m単位で測定した。引張試験機は、クロスバーに対して垂直に動く力センサーに連結している。測定範囲は1〜20J/mである。
【0169】
結果:
【0170】
この試験において測定された接着力は20J/mよりも高く、引張試験後の各層の層間剥離は全く見られなかった。
【0171】
比較例2:ニッケルの無電解堆積のための、酸性媒体(HCl)に溶解したパラジウム塩PdClを含有する溶液を使用した、ポリ−4−ビニルピリジン層で被覆された基板の活性化
【0172】
比較目的で、ジグリシジルエーテルブタンを添加せずに市販のパラジウム塩から得た活性化溶液を使用して実施例1を繰り返した。
【0173】
より具体的には、PdCl17.3mg(10−4mol)を10−2M塩酸溶液1l中に溶解させて活性化溶液を調製した。このようにして10−4MのHPdCl溶液を得た。実施例1の工程b)と同様にして調製した基板をこの溶液中に室温で2分間浸漬した。その後、脱イオン水で充分に水洗し、窒素気流下で乾燥させた。
【0174】
この比較例において得た被覆された基板(Si/P4VP/NiB/Cu)について、実施例1に記載の接着力測定試験により特性決定を行った。
【0175】
上記基板の接着力は11J/mであり、この接着力は、本発明に係る溶液(実施例1)で得られたものより顕著に低い値であった。
【0176】
比較例3:ニッケルの無電解堆積のための、パラジウム錯体を含有するが、少なくとも2つのグリシジル官能基を含む化合物は含有しない溶液を使用した、ポリ−4−ビニルピリジン層で被覆された基板の活性化
【0177】
本発明に係る活性化溶液において、少なくとも2つのグリシジル官能基を含む化合物が重要であることを示すため、2つのグリシジル官能基を含む化合物を含有しないことを除けば同一の活性化溶液(実施例1b2)を使用して実施例1を繰り返した。
【0178】
この比較例において得た被覆された基板(Si/P4VP/NiB/Cu)について、実施例1eに記載の接着力測定試験により特性決定を行った。
【0179】
上記基板の接着力は15J/mであり、これは、本発明に係る溶液(実施例1)で得られた接着力より低い値であった。
【0180】
実施例4:ニッケルの無電解堆積のための、パラジウム錯体と少なくとも2つのグリシジル官能基を含む化合物と有機シランとを含有する本発明に係る溶液を使用した、酸化物(SiO)層で被覆された基板の活性化
【0181】
「混合型」基板、すなわち、表面が、ポリマーから形成される少なくとも1つの領域と、酸化ケイ素などの酸化物から形成される少なくとも1つの領域とを含む基板に関連する用途のために、実施例1b2に記載の活性化溶液に有機シラン化合物を添加することによって該活性化溶液を改変した。
【0182】
このような有機シラン化合物の添加が、パラジウム錯体と少なくとも2つのグリシジル官能基を含む化合物とを含有する本発明に係る組成物の使用に適合することを確認するため、この新規活性化溶液を用いたSiO表面に対して接着力試験を行った。
【0183】
このため、同一の活性化溶液にアミノプロピルトリメトキシシラン(APTMS)0.6mlを添加して実施例1b2を繰り返した。
【0184】
この実施例で使用した基板は、辺長4cm(4×4cm)、厚み750μmのPドープシリコンクーポンを200nmの厚みの酸化ケイ素層で被覆したものであった。出発時の基板を70℃のH/HSO混合液(2:5v/v)で45分間、続いて70℃の脱イオン水で45分間浄化した後、脱イオン水で充分に水洗し、窒素下で乾燥させたものを使用した。
【0185】
この実施例において得た被覆された基板(SiO/P4VP/NiB/Cu)について、実施例1に記載の接着力測定試験により特性決定を行った。
【0186】
上記基板は接着力が20J/mよりも高く、これは、実施例1eで測定された接着力に匹敵する値である。
【0187】
得られた積層体について、走査電子顕微鏡法(SEM)による特性決定も行った。
【0188】
よって、この積層体の断面図を図4に再現する。
【0189】
比較例5:ニッケルの無電解堆積のための、パラジウム錯体と少なくとも2つのグリシジル官能基を含む化合物とを含有する溶液を使用した、SiO表面の活性化
【0190】
SiOなどの酸化物から部分的に形成される表面を無電解法により被覆するための活性化溶液において有機シラン化合物が重要であることを示すため、実施例1に記載の活性化溶液を使用して別の実験を行った。
【0191】
このため、同一の活性化溶液を使用して実施例1b2を繰り返した。
【0192】
この比較例で使用した基板は、辺長4cm(4×4cm)、厚み750μmのPドープシリコンクーポンを200nmの厚みの酸化ケイ素層で被覆したものであった。出発時の基板を70℃のH/HSO混合液(2:5v/v)で45分間、続いて70℃の脱イオン水で45分間浄化した後、蒸留水で充分に水洗し、窒素下で乾燥させたものを使用した。
【0193】
この比較例において得た被覆された基板(SiO/P4VP/NiB/Cu)について、実施例1eに記載の接着力測定試験により特性決定を行った。
【0194】
上記基板は接着力が1J/mであり、この接着力は、本発明に係る溶液(実施例4)で得られたものより顕著に低い値であった。
【0195】
実施例6:ニッケルの無電解堆積のための、パラジウム錯体と少なくとも2つのグリシジル官能基を含む化合物と有機シランとを含有する溶液を使用した、ポリマー(P4VP)層で被覆された基板の活性化
【0196】
有機シラン化合物の添加が、パラジウム錯体と少なくとも2つのグリシジル官能基を含む化合物とを含有する本発明に係る組成物の使用に適合することを確認するため、エレクトログラフティングしたP4VPポリマーなどのポリマーから形成される表面に対しても接着力試験を行った。
【0197】
このため、有機シラン化合物を含有する実施例4で調製した活性化溶液を使用して実施例1を繰り返した。
【0198】
この実施例において得た被覆された基板(Si/P4VP/NiB/Cu)について、実施例1eに記載の接着力測定試験により特性決定を行った。
【0199】
上記基板は接着力が20J/mよりも高く、実施例1で測定された接着力に匹敵する値であった。
【0200】
このように、活性化溶液中に有機シラン化合物が存在しても金属層のポリマーに対する接着性は低下しない。
【0201】
下記表1に、例1〜6を行って被覆した各基板の接着力測定結果をまとめる。
【0202】
【表1】

【0203】
実施例7:無電解堆積のための、パラジウム錯体と少なくとも2つのグリシジル官能基を含む化合物とアミノシラン系化合物とを含有する本発明に係る溶液を使用した、ポリイミド系(Kapton(登録商標))フレキシブル基板の活性化
【0204】
a)表面の浄化:
この実施例では、ポリイミド系フレキシブル基板を事前に浄化せずに直接使用する。
【0205】
b)基板表面の活性化:
活性化溶液は実施例6で使用したものと同一であった。
【0206】
c)無電解法によるNiB金属層の堆積:
実施例1と同様にしてNiB層の堆積を行った。
【0207】
d)銅下地層の形成:
実施例1と同様にして銅下地層の堆積を行った。
【0208】
結果:
この実施例において測定された接着力は20J/mよりも高く、引張試験後の各層の層間剥離は全く見られなかった。活性化溶液中に沈殿は見られなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
その後の工程で無電解法により金属層を堆積させて被覆できるように基板表面を活性化するための溶液であって、前記表面は、ポリマーのみからなるか、又は、ポリマーから形成される少なくとも1つの領域と、酸化物、特に酸化ケイ素から形成される少なくとも1つの領域とを含むものであり、
A)・式(I)のパラジウム錯体:
【化1】

(式中、
・R1及びR2は同一で、H、CHCHNH、CHCHOHを表すか;又は
R1はHを表し、且つ、R2はCHCHNHを表すか;又は
R1はCHCHNHを表し、且つ、R2はCHCHNHCHCHNHを表すか;又は
R1はHを表し、且つ、R2はCHCHNHCHCHNHCHCHNHを表し、
・Xは、Cl;Br;I;HO,NO;CHSO;CFSO;CH−Ph−SO;CHCOOからなる群から選択される配位子を表す)、
・式IIa又はIIbのパラジウム錯体:
【化2】

(式中、
・R1及びR2は前記と同義であり、
・Yは、
・2つのモノアニオン、好ましくは、Cl;PF;BF;NO;CHSO;CFSO;CHSO;CHCOOからなる群から選択される2つのモノアニオンか、又は
・ジアニオン、好ましくはSO2−
から形成される2つの負電荷を含む対イオンを表す)
からなる群から選択される1以上のパラジウム錯体から形成される活性化剤と;
B)少なくとも2つのグリシジル官能基を含む化合物、及び、少なくとも2つのイソシアネート官能基を含む化合物からなる群から選択される1以上の有機化合物から形成される結合剤と;
C)前記活性化剤及び前記結合剤を溶解可能な1以上の溶媒から形成される溶媒系と
を含有することを特徴とする溶液。
【請求項2】
・前記活性化剤を10−6M〜10−2M、好ましくは10−5M〜10−3M、より好ましくは5×10−5M〜5×10−4Mの濃度で、
・前記結合剤を10−5M〜10−1M、好ましくは10−4M〜10−2M、より好ましくは5×10−4M〜5×10−3Mの濃度で
含有することを特徴とする、請求項1に記載の溶液。
【請求項3】
前記結合剤は、
・1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、4,4’−ビスフェノールA−ジグリシジルエーテル、グリセリルトリグリシジルエーテル、及び、トリグリシジルイソシアヌレートからなる群から選択される、少なくとも2つのグリシジル官能基を含む化合物;
・1,2−フェニレンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、1,4−ジイソシアネートブタン、1,6−ジイソシアネートヘキサン、1,8−ジイソシアネートオクタン、2,4−トルエンジイソシアネート、2,5−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート、trans−1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート、1,3−ビス(1−イソシアネート−1−メチルエチル)ベンゼン、4,4’−メチレンビス(フェニルイソシアネート)からなる群から選択される、2つのイソシアネート官能基を含む化合物
からなる群から選択される1以上の有機化合物から形成されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の溶液。
【請求項4】
前記溶媒系は、N−メチルピロリジノン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アルコール類、エチレングリコールエーテル類、例えばモノエチルジエチレングリコール、プロピレングリコールエーテル類、ジオキサン、及び、トルエンからなる群から選択される1以上の溶媒から形成されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の溶液。
【請求項5】
活性化される前記表面が、特に、酸化物から形成される少なくとも1つの領域を含む場合に、前記溶液が、
D)1以上の有機シラン化合物
も含有することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の溶液。
【請求項6】
前記有機シラン化合物は、
・一般式:{X−(L)}4−n−Si(OR) (Va)
(式中、
・Xは、チオール、ピリジル、エポキシ(オキサシクロプロパニル)、グリシジル、1級アミン、クロロからなる群から選択され、且つ、前記式Iのパラジウム化合物と反応することができる官能基を表し、
・Lは、CH、CHCH、CHCHCH−、CHCHCHCH−、CHCHNHCHCH、CHCHCHNHCHCH、CHCHCHNHCHCHNHCHCH、CHCHCHNHCHCHCHCHCHCH、Ph、Ph−CH、及び、CHCH−Ph−CH(Phはフェニル核)からなる群から選択されるスペーサーアームを表し、
・Rは、CH、CHCH、CHCHCH、及び、(CHCHからなる群から選択される基であり、
・nは、1、2又は3の整数である);又は
・一般式:(OR)Si−(L)−Si(OR) (Vb)
(式中、
・Lは、CHCHCHNHCHCHNHCHCHCH、及び、CHCHCH−S−S−CHCHCHからなる群から選択されるスペーサーアームを表し、
・Rは、CH、CHCH、CHCHCH、及び、(CHCHからなる群から選択される基である)
に相当することを特徴とする、請求項5に記載の溶液。
【請求項7】
前記有機シラン化合物の濃度は、10−5M〜10−1M、好ましくは10−4M〜10−2M、より好ましくは10×10−3M〜10×10−2Mであることを特徴とする、請求項5又は6に記載の溶液。
【請求項8】
前記有機シラン化合物は、下記化合物:
・前記式(Va)の化合物(式中、
XがNH基を表す場合に、
LがCHCHCH−を表し、且つ、RがCHを表す((3−アミノプロピル)トリメトキシシラン又はAPTMSとして知られる化合物)か、又は
LがCHCHCH−を表し、且つ、RがCHCHを表す((3−アミノプロピル)トリエトキシシラン又はAPTESとして知られる化合物)か、又は
LがCHCHNHCHCHを表し、且つ、RがCHを表す(N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン又はDATMS又はDAMOとして知られる化合物)か;又は
XがSHを表し、LがCHCHCH−を表し、且つ、RがCH−CHを表す(MPTES)か;又は
XがCNを表し、LがCHCH−を表し、且つ、RがCH−CHを表す(PETES)か;又は
XがCHCHOを表し、LがCHCHCHを表し、且つ、RがCHを表す(EPTMS)か;又は
XがClを表し、LがCHCHCHを表し、且つ、RがCHを表す(CPTMS))
から選択されることを特徴とする、請求項5又は6に記載の溶液。
【請求項9】
水を体積に基づいて1%未満、好ましくは0.5%未満、より好ましくは0.2%未満の濃度で含有することを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の溶液。
【請求項10】
その後の工程で無電解法により金属層を堆積させて被覆できるように基板表面を活性化するための、請求項1〜9のいずれか一項に記載の溶液の使用であって、
前記表面は、ポリマーのみからなるか、又は、ポリマーから形成される少なくとも1つの領域と、酸化物、特に酸化ケイ素から形成される少なくとも1つの領域とを含み、
前記ポリマーは、1級アミン基、2級アミン基、エナミン基、アルコール基、チオール基、芳香族複素環(特に、ピリジン、ピロール又はチオフェン)基、及び、非芳香族複素環基からなる群から選択される1以上の基を含むことを特徴とする使用。
【請求項11】
前記ポリマーは、エレクトログラフティングにより前記基板表面に堆積することを特徴とする、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
前記ポリマーはポリ−4−ビニルピリジンであることを特徴とする、請求項10又は11に記載の使用。
【請求項13】
前記基板は、電子デバイス製造用の導電性又は半導電性の基板であることを特徴とする、請求項10〜12のいずれか一項に記載の使用。
【請求項14】
その後の工程で無電解法により金属層を堆積させて被覆できるように基板表面を活性化するための、請求項1〜9のいずれか一項に記載の溶液の使用であって、
前記基板は、ポリマー、特に、ポリイミド類、ポリエステル類、ポリアミド類、及び、ポリエーテルアミド類から選択されるポリマーから形成されるフレキシブル基板であることを特徴とする使用。
【請求項15】
その後の工程で無電解法により金属層を堆積させて被覆できるように基板表面を活性化するためのプロセスであって、
前記表面は、ポリマーのみからなるか、又は、ポリマーから形成される少なくとも1つの領域と、酸化物、特に酸化ケイ素から形成される少なくとも1つの領域とを含むものであり、
前記基板表面を請求項1〜9のいずれか一項に記載の溶液と、好ましくは50〜90℃の温度で1〜30分間、より好ましくは65〜70℃の温度で5〜15分間、接触させることを特徴とするプロセス。
【請求項16】
a)ポリマーのみからなるか、又は、ポリマーから形成される少なくとも1つの領域と、酸化物、特に酸化ケイ素から形成される少なくとも1つの領域とを含む基板表面、特にシリコン系基板などの表面を請求項1〜9のいずれか一項に記載の溶液と、好ましくは50〜90℃の温度で1〜30分間、より好ましくは65〜70℃の温度で5〜15分間、接触させることによって前記表面を活性化する工程;及び
b)その活性化した表面を無電解法により金属層、特にニッケル系金属層を堆積させて被覆する工程
を含むことを特徴とする、電子デバイスを製造するためのプロセス。
【請求項17】
・少なくとも1つの金属塩を好ましくは10−3M〜1Mの濃度、
・少なくとも1つ還元剤を好ましくは10−4M〜1Mの量、
・場合によっては、少なくとも1つの安定剤を好ましくは10−3M〜1Mの量、及び
・pHを6〜11の値、好ましくは8〜10の値に調整するための薬剤
を含有する溶液、好ましくは水溶液と前記活性化した表面を、少なくとも30ナノメーターの厚み、好ましくは30ナノメーター〜100マイクロメーターの厚み、より好ましくは70ナノメーター〜200ナノメーターの厚みの金属皮膜を形成できる条件下で、接触させることによって、前記工程b)を行うことを特徴とする、請求項16に記載のプロセス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2013−504689(P2013−504689A)
【公表日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−528355(P2012−528355)
【出願日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際出願番号】PCT/EP2010/063210
【国際公開番号】WO2011/029860
【国際公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(508084928)
【Fターム(参考)】