説明

半導体接着用熱硬化性樹脂組成物および半導体装置

【課題】接着強度に優れるとともに、応力緩和性に優れ、半導体装置における耐半田クラック性等を良好とすることのできる半導体接着用熱硬化性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】
(A)下記一般式(1)で表されるポリサルファイド変性エポキシ樹脂、(B)前記(A)成分のポリサルファイド変性エポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂、(C)硬化剤、および(D)充填材を必須成分とする半導体接着用熱硬化性樹脂組成物。
【化2】


(式中、Rはビスフェノール骨格を有する2価の有機基を表し、mは各繰り返し単位毎に独立に1〜3の整数を表し、nは1〜50の整数を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IC、LSI等の半導体素子をリードフレーム等の支持部材に接着するために用いられる半導体接着用熱硬化性樹脂組成物、およびこれを用いた半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、IC、LSI等の半導体素子をリードフレーム等の支持部材に接着するために、半導体接着用樹脂ペーストが用いられている。近年、電子機器の小型軽量化、高機能化の動向に対応して、半導体装置の耐湿性や吸湿後の耐半田クラック性の向上が強く求められている。これらの信頼性向上には、半導体素子と支持部材とが半導体接着用樹脂ペーストによって十分に接着されていることが必要となる。しかし、従来の半導体接着用樹脂ペーストについては、半導体素子と支持部材との接着強度、特に熱時接着強度が必ずしも十分でなく、半導体装置の信頼性が期待した程には向上しないという問題がある。
【0003】
半導体素子と支持部材との接着強度を向上させる方法として、例えば半導体接着用樹脂ペーストに使用するエポキシ樹脂の架橋密度を上げる方法があり、多官能エポキシ樹脂を使用することが検討されている。しかし、多官能エポキシ樹脂は粘度が高いために作業性が低下しやすく、また高架橋化によってリードフレーム等の支持部材に反りが発生し、半田リフロー時、特に吸湿後の半田リフロー時に半導体素子や支持部材を封止する封止材にクラックが発生しやすいという問題がある。
【0004】
このように、半導体接着用樹脂ペーストについては、接着強度に優れるとともに、応力緩和性に優れ、半導体装置における耐半田クラック性等を良好とし、信頼性を向上させることが求められている(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−177067号公報
【特許文献2】特開2009−65092号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、接着強度に優れるとともに、応力緩和性に優れ、半導体装置における耐半田クラック性等を良好とすることのできる半導体接着用熱硬化性樹脂組成物を提供することを目的としている。また、本発明は、このような半導体接着用熱硬化性樹脂組成物によって支持部材に半導体素子が接着された信頼性に優れる半導体装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の半導体接着用熱硬化性樹脂組成物は、(A)下記一般式(1)で表されるポリサルファイド変性エポキシ樹脂、(B)前記(A)成分のポリサルファイド変性エポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂、(C)硬化剤、および(D)充填材を必須成分とすることを特徴とする。
【化1】

(式中、Rはビスフェノール骨格を有する2価の有機基を表し、mは繰り返し単位毎に独立して1〜3の整数を表し、nは1〜50の整数を表す。)
【0008】
本発明の半導体装置は、支持部材上に半導体素子が接着されてなる半導体装置であって、前記接着が上記した本発明の半導体接着用熱硬化性樹脂組成物により行われていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、接着強度に優れるとともに、応力緩和性に優れ、半導体装置における耐半田クラック性等を良好とすることのできる半導体接着用熱硬化性樹脂組成物を提供することができる。また、本発明によれば、耐半田クラック性等が良好であり、信頼性に優れる半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の半導体装置の一例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の半導体接着用熱硬化性樹脂組成物(以下、接着剤組成物と記す)および半導体装置の実施形態について説明する。
【0012】
本発明の接着剤組成物は、
(A)下記一般式(1)で表されるポリサルファイド変性エポキシ樹脂、
(B)前記(A)成分のポリサルファイド変性エポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂、
(C)硬化剤、および
(D)充填材
を必須成分とすることを特徴とする。
【化2】

(式中、Rはビスフェノール骨格を有する2価の有機基を表し、mは繰り返し単位毎に独立して1〜3の整数を表し、nは1〜50の整数を表す。)
【0013】
本発明の接着剤組成物によれば、上記した(A)〜(D)成分、特に(A)成分のポリサルファイド変性エポキシ樹脂を必須成分として含有させることで、硬化物の接着強度を向上させるとともに、応力緩和性を向上させることができる。従って、半導体装置における支持部材への半導体素子の接着に用いることで、耐半田クラック性、特に吸湿後の耐半田クラック性等を良好とし、信頼性を向上させることができる。
【0014】
(A)成分のポリサルファイド変性エポキシ樹脂は、下記一般式(1)で表されるものであり、ポリサルファイド骨格を構造の少なくとも一部に有するとともに、エポキシ基を2つ、またはそれ以上有するエポキシ樹脂である。ここで、ポリサルファイドとは、−S−S−結合を含む有機化合物の総称であり、一般的には−R−(S)−(Rは2価の有機基であり、xは2以上の整数である)で表されるものである。
【化3】

(式中、Rはビスフェノール骨格を有する2価の有機基を表し、mは繰り返し単位毎に独立して1〜3の整数を表し、nは1〜50の整数を表す。)
【0015】
ビスフェノール骨格を含む2価の有機基Rとしては、例えばビスフェノールA型骨格、ビスフェノールAD型骨格、ビスフェノールS型骨格、ハロゲン化ビスフェノールA型骨格、ビスフェノールF型骨格、ハロゲン化ビスフェノールF型骨格等を含む2価の有機基を挙げることができる。
【0016】
mは、各繰り返し単位におけるSの含有量を表すものであり、繰り返し単位毎に独立して1〜3の整数を表すものである。各繰り返し単位におけるmが1未満の場合、サルファイドが含まれず、通常のビスフェノール骨格型エポキシ樹脂となり、接着性や応力緩和性の向上といった効果を得ることができない。各繰り返し単位におけるmは3程度まであれば接着性や応力緩和性の向上といった効果を十分に得ることができる。
【0017】
なお、本発明においては、1分子内に1つまたは2つ以上存在する繰り返し単位のうち少なくとも1つの繰り返し単位についてはmが2以上である必要がある。また、1分子内に繰り返し単位が2つ以上存在する場合(nが2以上の場合)、1分子内の各繰り返し単位におけるmの値を平均して得られる平均値は1.5〜2.5が好ましい。
【0018】
nが1未満の場合についても、サルファイド骨格が含まれず、通常のビスフェノール骨格型エポキシ樹脂となり、接着性や応力緩和性の向上といった効果を得ることができない。また、nが50を超える場合、接着剤組成物の粘度が高くなり、取り扱い性が低下する。mを1〜3の範囲としつつ、nを1〜50の範囲とすることにより、サルファイド骨格による接着性および応力緩和性の向上の効果を得ることができ、また取り扱いに適した粘度とすることができる。接着性、応力緩和性、および取り扱い性の観点から、nのより好ましい範囲は2〜30である。
【0019】
取り扱い性の観点から、ポリサルファイド変性エポキシ樹脂の粘度は、25℃において300Pa・s以下が好ましい。このようなポリサルファイド変性エポキシ樹脂としては、市販品を使用することができ、例えば東レ・ファインケミカル社製の商品名「フレップ−10」、「フレップ−50」、「フレップ−60」、「フレップ−80」等を使用することができる。
【0020】
(A)成分のポリサルファイド変性エポキシ樹脂の含有量は、(A)成分のポリサルファイド変性エポキシ樹脂と(B)成分のエポキシ樹脂((A)成分のポリサルファイド変性エポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂)との合計量100質量%中、5質量%以上であることが好ましい。5質量%以上とすることで、接着性や応力緩和性を効果的に向上させることができる。(A)成分のポリサルファイド変性エポキシ樹脂の含有量は、(A)成分のポリサルファイド変性エポキシ樹脂と(B)成分のエポキシ樹脂との合計量100質量%中、10〜90質量%がより好ましい。
【0021】
(B)成分のエポキシ樹脂は、上記した(A)成分のポリサルファイド変性エポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂であれば特に限定されるものではなく、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するものが好適に用いられ、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、特殊多官能型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂等の汎用物が挙げられる。例えば、エポキシ変性ポリブタジエンのような柔軟な骨格を有するものを併用することで、応力緩和性をより向上させることができる。これらのエポキシ樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0022】
エポキシ樹脂は分子量によって各種のものがあるが、分子量が小さく、常温で液状のものが配合するときの作業性および配合後の粘度の点から好ましい。上記したエポキシ樹脂の中でも、25℃で液状のビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、または脂環式エポキシ樹脂が、相溶性に優れ、低粘度であり、接着強度に優れる点で好ましい。
【0023】
(B)成分のエポキシ樹脂は、本発明の重要な効果の1つである応力緩和性を損なわない限度において含有させることが重要であり、(A)成分のポリサルファイド変性エポキシ樹脂と(B)成分のエポキシ樹脂との合計量100質量%中、95質量%以下とすることが好ましい。95質量%以下とすることで、接着性を良好としつつ、応力緩和性も良好とすることができる。(B)成分のエポキシ樹脂の含有量は、(A)成分のポリサルファイド変性エポキシ樹脂と(B)成分のエポキシ樹脂との合計量100質量%中、90〜10質量%がより好ましい。
【0024】
(A)成分のポリサルファイド変性エポキシ樹脂もしくは(B)成分のエポキシ樹脂が固形状や半固形状である場合、または液状でも粘度が高い場合、エポキシ基を有する反応性希釈剤を併用することが好ましい。反応性希釈剤としては、例えばn−ブチルグリシジルエーテル、バーサティック酸グリシジルエステル、スチレンオキサイド、エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、クレジルグリシジルエーテル、ブチルフェニルグリシジルエーテル等が挙げられ、これらは1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0025】
反応性希釈剤を併用する場合、接着剤組成物の25℃における粘度が300Pa・s以下となるようにすることが好ましい。通常、反応性希釈剤の含有量は、(A)成分のポリサルファイド変性エポキシ樹脂および(B)成分のエポキシ樹脂の合計量100質量部に対して、30質量部以下とすることが好ましい。
【0026】
(C)成分の硬化剤としては、エポキシ樹脂の硬化剤として一般に用いられるものを使用することができ、例えばフェノール樹脂、ジシアンジアミド、ジカルボン酸ジヒドラジド化合物、イミダゾール化合物、脂肪族アミン、芳香族アミン、スルホニウム塩等のカチオン重合触媒等が挙げられ、これらは1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0027】
フェノール樹脂としては、エポキシ基と反応して架橋にあずかる活性水素基を1分子当たり2個以上有するものが好ましい。このようなフェノール樹脂としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、テトラメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、テトラメチルビスフェノールS、ジヒドロキシジフェニルエーテル、ジヒドロキシベンゾフェノン、o−ヒドロキシフェノール、m−ヒドロキシフェノール、p−ヒドロキシフェノール、ビフェノール、テトラメチルビフェノール、エチリデンビスフェノール、メチルエチリデンビス(メチルフェノール)、シクロヘキシリデンビスフェノール、またはフェノール、クレゾール、キシレノール等の1価フェノール類とホルムアルデヒドとを稀薄水溶液中強酸性下で反応させることによって得られるフェノールノボラック樹脂、1価フェノール類とアクロレイン、グリオキザール等の多官能アルデヒド類との酸性下の初期縮合物や、レゾルシン、カテコール、ハイドロキノン等の多価フェノール類とホルムアルデヒドとの酸性下の初期縮合物等が挙げられ、これらは1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。硬化剤としてのフェノール樹脂の含有量は、例えば(A)成分のポリサルファイド変性エポキシ樹脂および(B)成分のエポキシ樹脂が有するエポキシ基数1.0に対し、フェノール性水酸基数が0.5〜1.5となる範囲とすることが好ましい。
【0028】
ジカルボン酸ジヒドラジド化合物としては、例えば、アジピン酸ジヒドラジド、ドデカン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、p−オキシ安息香酸ジヒドラジド等のカルボン酸ジヒドラジド等が挙げられ、これらは1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0029】
イミダゾール化合物としては、例えば、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−C1123−イミダゾール等の一般的なイミダゾールやトリアジンやイソシアヌル酸を付加し、保存安定性を付与した2,4−ジアミノ−6−{2−メチルイミダゾール−(1)}−エチル−S−トリアジン、またはそのイソシアネート付加物等が挙げられ、これらは1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0030】
フェノール樹脂以外の硬化剤の合計した含有量は、(A)成分のポリサルファイド変性エポキシ樹脂および(B)成分のエポキシ樹脂の合計量100質量部に対して、0.1〜10質量部の範囲が好ましい。0.1質量部以上とすることで、接着強度を効果的に向上させることができる。また、10質量部以下とすることで、応力緩和性の過度な低下も抑制することができる。
【0031】
(D)成分の充填材としては、無機充填材や有機充填材を用いることができる。無機充填材としては、例えば、金、銀、銅、アルミニウム等の金属粉末や、溶融シリカ、結晶シリカ、窒化珪素、アルミナ、窒化アルミニウム、タルク等の酸化物や窒化物等の無機粉末が挙げられる。これらのうち、金属粉末は、主として導電性や熱伝導性を付与するために用いられる。有機充填材としては、例えば、シリコーン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、ベンゾグアナミンやメラミンとホルムアルデヒドとの架橋物等からなる粉末が挙げられる。
【0032】
これらの中でも導電用途の接着剤組成物には、特に入手が容易なこと、形状や粒径の種類が多く、導電性も良好であり、加熱しても導電性が変化しにくい点で銀粉末が好ましく、絶縁用途の接着剤組成物には、入手の容易さと種類の豊富さの点でシリカ粉末が好ましい。充填材は、ハロゲンイオン、アルカリ金属イオン等のイオン性不純物の含有量が10ppm以下であることが好ましい。また、充填材の形状としては、フレーク状、鱗片状、樹脂状、球状等のいずれであってもよい。
【0033】
充填材の粒径は、接着剤組成物に要求される粘度等によっても異なるが、例えば金属粉末では、平均粒径1〜15μmが好ましく、平均粒径1〜10μmがより好ましく、金属粉末以外の無機粉末では、平均粒径1〜25μmが好ましく、1〜10μmがより好ましい。充填材の平均粒径を上記範囲内とすることで、接着剤組成物に適度な粘度を付与することができ、また塗付時もしくは硬化時における樹脂成分のブリードを抑制することができる。
【0034】
なお、充填材の最大粒径が50μmを大幅に超えると、ディスペンサにより接着剤組成物を塗付する際に、ニードルの出口を閉塞して長時間の使用ができなくなることから、充填材の最大粒径は50μm以下が好ましい。充填材としては、平均粒径の大きいものと小さいものとを混合して用いてもよい。充填材の粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置により測定することができる。
【0035】
充填材としては、必要とされる特性を付与するために、上記以外の充填材を用いてもよい。例えば、粒径が1〜100nm程度のナノスケール充填材や、シリカとアクリルとの複合充填材、有機フィラー表面に金属コーティングを施した充填材等の有機化合物と無機化合物とからなる複合充填材等が挙げられる。なお、充填材は、予め表面をアルコキシシラン、アシロキシシラン、シラザン、オルガノアミノシラン等のシランカップリング材等で処理したものを用いてもよい。
【0036】
(D)成分の充填材の配合量は、(A)成分のポリサルファイド変性エポキシ樹脂と(B)成分のエポキシ樹脂との合計量100質量部に対して、100〜5000質量部が好ましく、100〜4000質量部がより好ましい。配合量を100質量部以上とすることで、硬化物の膨張係数が過度に大きくなることを抑制し、接着の信頼性を良好にすることができる。また、5000質量部以下とすることで、粘度が過度に大きくなることを抑制し、作業性を良好にすることができる。
【0037】
本発明の接着剤組成物は、上記した(A)〜(D)成分を必須成分として含有するが、これらの成分以外にも必要に応じて、かつ本発明の趣旨に反しない限度において、硬化促進剤、ゴムやシリコーン等の低応力化剤、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、顔料、染料、消泡剤、界面活性剤、溶剤等の添加剤を適宜配合することができる。
【0038】
本発明の接着剤組成物は、例えば、上記した(A)〜(D)成分、必要に応じてその他の添加剤等を予備混合し、ロール等を用いて混練した後、真空下脱泡する等の方法によって製造することができる。
【0039】
本発明の接着剤組成物は、支持部材上に半導体素子を接着するために用いられる。この接着のための接着剤組成物の硬化は、例えば150〜200℃で30〜120分程度の熱処理により行うことが好ましい。本発明の接着剤組成物によれば、上記した(A)〜(D)成分を必須成分として含有することで、支持部材と半導体素子とを良好に接着することができるとともに、これらの間の応力も良好に緩和することができる。結果として、半導体装置の耐半田クラック性、特に吸湿後の耐半田クラック性等を良好とすることができ、信頼性を向上させることができる。
【0040】
本発明の半導体装置は、上記した本発明の接着剤組成物によって支持部材上に半導体素子が接着されていることを特徴とする。図1は、本発明の半導体装置の一例を示す断面図である。
【0041】
半導体装置1は、支持部材である銅フレーム等のリードフレーム2と、半導体素子3とを有し、これらの間に接着剤組成物の硬化物からなる接着剤層4が形成されている。接着剤層4の厚さは、通常、10〜30μm程度である。半導体素子3の電極31とリードフレーム2のリード部21とはボンディングワイヤ5により電気的に接続されており、これらが封止用樹脂6によって封止されている。
【0042】
このような半導体装置1は、接着剤組成物として本発明の接着剤組成物を用いることを除き、公知の製造方法により製造することができる。例えば、リードフレーム2上に接着剤組成物を介して半導体素子3をマウントした後、この接着剤組成物を加熱硬化させて接着剤層4とするとともに、リードフレーム2と半導体素子3とを接着する。
【0043】
その後、リードフレーム2のリード部21と半導体素子3の電極31とを常温で超音波によるワイヤボンディングにより接続し、これらを封止用樹脂6によって封止する。ボンディングワイヤとしては、例えば銅、金、アルミニウム、金合金、アルミニウム−シリコン等からなるものが挙げられるが、コストおよびボンディング性の観点からはアルミニウムからなるものが好ましい。また、ボンディング時の超音波の出力、荷重等の条件は、特に限定されるものではなく、常法の範囲で適宜選択することができる。
【0044】
本発明の半導体装置1によれば、本発明の接着剤組成物を用いることで、支持部材と半導体素子とを良好に接着することができるとともに、これらの間の応力も良好に緩和することができる。結果として、耐半田クラック性、特に吸湿後の耐半田クラック性等を良好とすることができ、信頼性を向上させることができる。
【実施例】
【0045】
以下、実施例を参照して具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0046】
(実施例1〜5、比較例1〜3)
表1に示す配合割合となるように各成分を配合し、混合した後、ロールで混練することにより実施例および比較例の接着剤組成物を製造した。なお、接着剤組成物の製造に用いた材料の詳細を以下に示す。
【0047】
〔(A)成分のポリサルファイド変性エポキシ樹脂〕
・ポリサルファイド変性エポキシ樹脂
(東レ・ファインケミカル社製、商品名:FLEP−50、エポキシ当量320)
〔(B)成分のエポキシ樹脂〕
・ビスフェノールF型グリシジルエーテル
(ジャパンエポキシレジン社製、商品名:YL983U、エポキシ当量170)
・変性ビスフェノールA型グリシジルエーテル
(旭電化工業社製、商品名:EP−4005、エポキシ当量510)
〔(C)成分の硬化剤〕
・フェノールノボラック樹脂
(DIC社製、商品名:TD−2131、水酸基当量104)
・ジシアンジアミド(日本カーバイド社製)
・2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール
(四国化成工業社製、商品名:2P4MHZ)
〔(D)成分の充填材〕
・銀粉末(平均粒径3μm、粒径0.1〜30μm、フレーク状)
・シリカ粉末(平均粒径3μm、最大粒径20μm、球状)
〔その他〕
・反応性希釈剤(t−ブチルフェニルグリシジルエーテル、日本化薬社製)
【0048】
次に、実施例および比較例の接着剤組成物について、以下の方法により評価を行った。結果を表1に示す。
【0049】
(粘度)
E型粘度計(3°コーン)を用いて、25℃、2.5rpmでの値を測定した。
(ポットライフ)
25℃の恒温槽内に接着剤組成物を放置し、粘度が初期粘度の1.5倍以上となるまでの日数を測定した。
(接着強度)
5mm×5mmのシリコンチップを接着剤組成物により銅フレームにマウントし、オーブンを用いて、200℃、60分間の条件で硬化させた。硬化後、マウント強度測定装置を用いて、260℃での熱時ダイシェア強度を測定した。
(耐パッケージクラック性)
接着剤組成物を介して銅フレームに6×6mmのシリコンチップをマウントし、オーブン中、175℃、30分間の条件で硬化させた。これを封止材(京セラケミカル社製、商品名:KE−G1200)によって封止してパッケージを作製した。なお、パッケージおよびその製造条件の詳細を以下に示す。
パッケージ:80pQFP(14×20×2mm厚さ)
チップサイズ:6×6mm(表面アルミ配線のみ)
リードフレーム:銅
封止材の成形:175℃、2分間
ポストモールドキュアー:175℃、8時間
このパッケージに対して吸湿処理(85℃、相対湿度85%、168時間)を行った後、IRリフロー処理(260℃、10秒)を行った。その後、IRリフロー処理が行われたパッケージについて、外部クラックの発生数を顕微鏡(倍率:15倍)により、また内部クラックの発生数を超音波顕微鏡により観察した。結果は、5個のパッケージに対してクラックが発生したパッケージの個数の割合で示した。
【0050】
【表1】

【0051】
表1から明らかなように、(A)〜(D)成分を含有する実施例1〜5の接着剤組成物によれば、硬化物の熱時接着強度が良好となるとともに、応力緩和性が良好であることから吸湿処理後の耐半田クラック性(耐半田リフロー性)も良好となり、結果として信頼性に優れる半導体装置を得られることがわかる。
【符号の説明】
【0052】
1…半導体装置
2…リードフレーム
3…半導体素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記一般式(1)で表されるポリサルファイド変性エポキシ樹脂、
(B)前記(A)成分のポリサルファイド変性エポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂、
(C)硬化剤、および
(D)充填材
を必須成分とすることを特徴とする半導体接着用熱硬化性樹脂組成物。
【化1】

(式中、Rはビスフェノール骨格を有する2価の有機基を表し、mは繰り返し単位毎に独立して1〜3の整数を表し、nは1〜50の整数を表す。)
【請求項2】
支持部材上に半導体素子が接着されてなる半導体装置であって、
前記接着が請求項1記載の半導体接着用熱硬化性樹脂組成物により行われていることを特徴とする半導体装置。

【図1】
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【公開番号】特開2012−188598(P2012−188598A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−54780(P2011−54780)
【出願日】平成23年3月11日(2011.3.11)
【出願人】(390022415)京セラケミカル株式会社 (424)
【Fターム(参考)】