説明

半導体用液状樹脂組成物

【課題】 フリップチップ方式の半導体装置において半導体素子と基板との間を封止するために用いられる液状樹脂組成物において、無機充填材の配合量を増やすことなく、硬化物のさらなる低熱線膨張化を達成することができる半導体用液状樹脂組成物を提供する。
【解決手段】 (A)エポキシ樹脂、(B)エポキシ樹脂硬化剤、(C)無機充填材、を含有する半導体用液状樹脂組成物であって、前記(C)無機充填材が、平均比表面積が500m/g以上、1500m/g未満、平均細孔容積が0.3cm/g以上、1.2cm/g未満であることを特徴とする半導体用液状樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体用液状樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フリップチップ方式の半導体装置では半導体素子と基板とを半田バンプで電気的に接続している。このフリップチップ方式の半導体装置は、接続信頼性を向上させるために半導体素子と基板との間にアンダーフィル材と呼ばれる液状樹脂組成物を充填して、半田バンプの周辺を補強している。
このようなアンダーフィル充填型のフリップチップパッケージにおいては、近年のLow−Kチップの採用や半田バンプの鉛フリー化に伴い、熱応力によるLow−K層の破壊や半田バンプのクラックを防ぐために、アンダーフィル材にはより一層の低熱線膨張化が求められる。
アンダーフィル材を低熱線膨張化する方法として、無機充填材の高充填化が挙げられる(例えば、特許文献1、2参照。)。しかし、弾性率の増加に伴う内部応力の増加や、半導体素子と基板との間隙へのアンダーフィル材の充填性が低下するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−119929号公報
【特許文献2】特開2003−137529号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、フリップチップ方式の半導体装置において半導体素子と基板との間を封止するために用いられる液状樹脂組成物において、無機充填材の配合量を増やすことなく、硬化物のさらなる低熱線膨張化を達成することができる半導体用液状樹脂組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような目的は、下記[1]〜[5]に記載の本発明により達成される。
[1](A)エポキシ樹脂、(B)エポキシ樹脂硬化剤、(C)無機充填材、を含有する半導体用液状樹脂組成物であって、上記(C)無機充填材が、平均比表面積が500m/g以上、1500m/g未満、平均細孔容積が0.3cm/g以上、1.2cm/g未満であることを特徴とする半導体用液状樹脂組成物。
[2]上記半導体用液状樹脂組成物全体に対して、上記(C)無機充填材を30〜80重量%含有する上記[1]に記載の半導体用液状樹脂組成物。
[3]上記(C)無機充填材は、メソポーラス無機充填材である上記[1]又は[2]に記載の半導体用液状樹脂組成物。
[4]上記メソポーラス無機充填材は、メソポーラスシリカである上記[3]に記載の半導体用液状樹脂組成物。
[5]上記(B)エポキシ樹脂硬化剤が、アミン硬化剤または酸無水物硬化剤である上記[1]ないし[4]のいずれかに記載の半導体用液状樹脂組成物。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、フリップチップ方式の半導体装置において半導体素子と基板との間を封止するために用いられる液状樹脂組成物において、無機充填材の配合量を増やすことなく、硬化物のさらなる低熱線膨張化を達成することができる。本発明の半導体用液状樹脂
組成物は、半導体装置の信頼性向上に有用なものである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の半導体用液状樹脂組成物について説明する。
本発明の半導体用液状樹脂組成物(以下、単に「組成物」ということがある)は、
(A)エポキシ樹脂、(B)エポキシ樹脂硬化剤、(C)無機充填材、を含有する半導体用液状樹脂組成物であって、上記(C)無機充填材が、平均比表面積が500m/g以上、1500m/g未満、平均細孔容積が0.3cm/g以上、1.2cm/g未満であることを特徴とする。
【0008】
本発明の組成物で用いる(A)エポキシ樹脂は、一分子中にエポキシ基を2個以上有するものであれば特に分子量や構造は限定されるものではない。
例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂などのノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂などのビスフェノール型エポキシ樹脂、N,N−ジグリシジルアニリン、N,N−ジグリシジルトルイジン、ジアミノジフェニルメタン型グリシジルアミン、アミノフェノール型グリシジルアミンなどの芳香族グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ハイドロキノン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、トリフェノールプロパン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、トリアジン核含有エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フェニレンおよび/またはビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂、フェニレンおよび/またはビフェニレン骨格を有するナフトールアラルキル型エポキシ樹脂などのアラルキル型エポキシ樹脂などのエポキシ樹脂、ビニルシクロヘキセンジオキシド、ジシクロペンタジエンオキシド、アリサイクリックジエポキシ−アジペイドなどの脂環式エポキシなどの脂肪族エポキシ樹脂が挙げられる。
これらは単独で使用、あるいは2種以上を混合して使用することもできる。
【0009】
本発明の組成物の場合、芳香族環にグリシジル構造またはグリシジルアミン構造が結合した構造を含むエポキシ樹脂が、硬化物の耐熱性、機械的特性、耐湿性が高くなる点からより好ましい。
一方で、脂肪族エポキシ樹脂または脂環式エポキシ樹脂は硬化物の信頼性、特に接着性が低くなる点から使用する量を制限するほうがさらに好ましい。
【0010】
本発明の組成物は、室温で液状であるので、(A)エポキシ樹脂としては、室温で液状形態であるものを用いる。すなわち、(A)エポキシ樹脂として、1種のエポキシ樹脂のみを含む場合は、その1種のエポキシ樹脂は、室温で液状であり、また、2種以上のエポキシ樹脂を含む場合は、それら2種以上のエポキシ樹脂の混合物が、室温で液状である。
そのため、(A)エポキシ樹脂が、2種以上のエポキシ樹脂の組合せである場合、(A)エポキシ樹脂は、全てが室温で液状のエポキシ樹脂の組合せであってもよく、あるいは、一部が室温で固形のエポキシ樹脂であっても、他の室温で液状のエポキシ樹脂と混合することにより、混合物が室温で液状となるのであれば、室温で液状のエポキシ樹脂と室温で固形のエポキシ樹脂との組合せであってもよい。すなわち、本発明で、(A)エポキシ樹脂が室温で液状であるとは、エポキシ樹脂成分として使用する全てのエポキシ樹脂を混合した場合に、その混合物が室温で液状になるということである。
本発明において、室温とは25℃を指し、液状であるとは組成物が流動性を有していることを指す。
なお、(A)エポキシ樹脂が、2種以上のエポキシ樹脂の組合せの場合、必ずしも、使用する全てのエポキシ樹脂を混合してから他の成分と混合して組成物を製造する必要はなく、使用するエポキシ樹脂を別々に混合して組成物を製造してもよい。
【0011】
本発明の組成物において、上記(A)エポキシ樹脂の含有量は特に限定されないが、組成物全体の5〜50重量%が好ましい。さらに好ましくは5〜40重量%である。エポキシ樹脂の含有量が上記範囲内であると、組成物の反応性や、硬化物の耐熱性、機械的強度に優れたものとすることができる。
【0012】
本発明に用いる(B)エポキシ樹脂硬化剤とは、エポキシ樹脂を硬化し得るものであれば特に構造は限定されない。(B)エポキシ樹脂硬化剤としては、アミン硬化剤または酸無水物硬化剤が好ましい。
上記アミン硬化剤としては、例えばジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタミン、m−キシレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン脂肪族ポリアミン、イソフォロンジアミン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ノルボルネンジアミン、1,2−ジアミノシクロヘキサンなどの脂環式ポリアミン、
N−アミノエチルピペラジン、1,4−ビス(2−アミノ−2−メチルプロピル)ピペラジンなどのピペラジン型のポリアミン、ジアミノジフェニルメタン、m−フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルスルホン、ジエチルトルエンジアミン、トリメチレンビス(4−アミノベンゾエート)、ポリテトラメチレンオキシド−ジ−P−アミノベンゾエートなどの芳香族ポリアミン、
などが挙げられる。
【0013】
酸無水物硬化剤としては、例えば、テトラヒドロ酸無水物、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルナジック酸無水物、水素化メチルナジック酸無水物、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルシクロヘキセンテトラカルボン酸2無水物、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸2無水物、エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、グリセリンビス(アンヒドロトリメリテート)モノアセテート、ドデセニル無水コハク酸などが挙げられる。
【0014】
これらのうち、硬化物の密着性、耐湿信頼性が高くなる点からアミン硬化剤が特に好ましい。
アミン硬化剤は、1種類を単独で用いても、2種以上の組合せで用いても良く、さらに半導体装置の封止用途であることを考慮すると、硬化物の耐熱性、電気的特性、機械的特性、密着性、耐湿性が高くなる点から、芳香族ポリアミン硬化剤が一層好ましく、室温(25℃)で液状を呈するものがより好ましい。
【0015】
上記(B)エポキシ樹脂硬化剤の含有量は、特に限定されないが、組成物全体の5〜50重量%が好ましい。含有量が上記範囲内であると、組成物の反応性や硬化物の機械的特性や耐熱性などに優れる。
上記(A)エポキシ樹脂のエポキシ当量に対する上記(B)エポキシ樹脂硬化剤の活性水素当量の比は0.6〜1.4が好ましく、特に0.7〜1.3が好ましい。上記(B)エポキシ樹脂硬化剤の活性水素当量が上記範囲内であると、組成物の反応性や硬化物の耐熱性が特に向上する。
【0016】
本発明の組成物は、(C)無機充填材を含有する。
本発明の組成物で用いられる(C)無機充填材は、平均比表面積が500m/g以上、1500m/g未満、平均細孔容積が0.3cm/g以上、1.2cm/g未満であることを特徴とする。
【0017】
上記(C)無機充填材としては、例えばタルク、焼成クレー、未焼成クレー、マイカ、
ガラスなどのケイ酸塩、酸化チタン、アルミナ、溶融シリカ(溶融球状シリカ、溶融破砕シリカ)、合成シリカ、結晶シリカなどのシリカ粉末などの酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ハイドロタルサイトなどの炭酸塩、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムなどの水酸化物、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウムなどの硫酸塩または亜硫酸塩、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸ナトリウムなどのホウ酸塩、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素などの窒化物などを用いることができる。
これらの(C)無機充填材は、1種単独で用いることもできるし、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0018】
本発明で用いられる上記(C)無機充填材としては、メソサイズ(2〜50nm)の細孔が多数形成されたメソポーラス無機充填材を好ましく適用することができる。
上記メソポーラス無機充填材は、主に界面活性剤のミセルを鋳型として無機物を合成することで製造することができるものである。
また、上記メソポーラス無機充填材としては、メソポーラスシリカを好ましく用いることができる。これにより、本発明の組成物の硬化物に機械的強度、耐熱性、耐湿性を付与することができる。
このようなメソポーラスシリカとしては、例えば、ゾルゲル法によって得られるMCM−41、SBA−15などが挙げられる。
【0019】
本発明の組成物において、上記(C)無機充填材として、平均比表面積が500m/g以上、1500m/g未満であり、平均細孔容積が0.3cm/g以上、1.2cm/g未満であるものを用いることにより、組成物の硬化物に低熱線膨張性という特性を付与することができる。そして、通常の無機充填材と同じ含有量であっても、熱線膨張係数をより小さくすることができ、半導体装置の信頼性を大きく向上させることができる。
このメカニズムは明確ではないが、以下のように考えられる。すなわち、平均比表面積が上記範囲内であることにより、エポキシ樹脂やエポキシ樹脂硬化剤と無機充填材表面との接触面積が増加する。また、平均細孔容積が上記範囲内であることにより、エポキシ樹脂等が細孔内に拘束され、分子レベルでエポキシ樹脂等が無機充填材細孔壁表面から特異的な相互作用を受けることで、通常状態における樹脂の分子運動挙動とは異なった挙動を示すと考えられる。
【0020】
本発明で用いられる上記(C)無機充填材は、平均比表面積が500m/g未満、もしくは、平均細孔容積が0.3cm/g未満であると、組成物に低熱線膨張性を付与する効果が充分ではない可能性がある。一方、平均比表面積が1500m/g以上、もしくは、平均細孔容積が1.2cm/g以上であると、無機充填材としての機械的強度が低下し、その結果、組成物の硬化物が変形を起こしやすくなり、熱時寸法安定性が損なわれる可能性がある。
【0021】
上記(C)無機充填材の形状は、特に限定されない。また、上記(C)無機充填材の最大粒子径および平均粒子径は特に限定されないが、最大粒子径は20μm、平均粒子径は0.5〜5.0μmであることが好ましい。これにより、半導体用液状樹脂組成物として好適に用いることができる。
【0022】
本発明の組成物において、上記(C)無機充填材の含有量としては特に限定されず、要求される特性に応じて任意の含有量とすることができるが、組成物全体に対して30〜80重量%であることが好ましい。
(C)無機充填材の含有量が上記下限値以上であることにより、半導体装置に使用した場合の信頼性が向上し、また、上記上限値以下であることにより、半導体装置の信頼性と、
充填性などの性能とのバランスに優れたものとすることができる。
【0023】
なお、本発明の組成物において、上記(C)無機充填材の平均比表面積は、自動比表面積/細孔分布測定装置(日本ベル社製)を用い、BET法により測定したものである。
また、平均細孔容積は、上記と同じ装置を用い、DH法により測定したものである。
【0024】
本発明の組成物には、上記(A)エポキシ樹脂、(B)エポキシ樹脂硬化剤、(C)無機充填材などの上述した各成分以外に、必要に応じて希釈剤、顔料、難燃剤、レベリング剤、消泡剤などの添加剤を用いることができる。
【0025】
本発明の組成物は、上述した各成分、添加剤などをプラネタリーミキサー、三本ロール、二本熱ロール、ライカイ機などの装置を用いて分散混練したのち、真空下で脱泡処理して製造することができる。
【実施例】
【0026】
以下、本発明を実施例および比較例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0027】
(実施例1)
組成物全体に対して、(A)エポキシ樹脂として、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(DIC社製「EXA−830LVP」)35.0重量%と、(B)エポキシ樹脂硬化剤として、芳香族アミン硬化剤(日本化薬社製「カヤハードAA」)15.0重量%と、(C)無機充填材としてメソポーラスシリカ(「SBA−15」、平均比表面積946m/g、平均細孔容積0.79cm/g)50重量%とを3本ロールにて混練分散した後、真空脱泡して液状樹脂組成物を得た。
なお、本実施例に用いたメソポーラスシリカは、以下の方法によって作製したものである。
Pluronic P123((EO)20(PO)70(EO)20、BASF社製)、ケイ酸ナトリウム溶液(SiO 23.5重量%、NaO 7.60重量%)、20重量%塩酸、およびイオン交換水をそれぞれモル比で、P123:SiO:HCl:HO=0.021:1:5.90:202の割合になるように混合し、酸性条件下でスターラーを用いて6時間攪拌して混合溶液を得た後、これを200℃の加熱乾燥装置で2時間焼成して得た。
【0028】
(実施例2)
組成物全体に対して、(A)エポキシ樹脂として、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(DIC社製「EXA−830LVP」)35.0重量%と、(B)エポキシ樹脂硬化剤として、芳香族アミン硬化剤(日本化薬社製「カヤハードAA」)15.0重量%と、(C)無機充填材としてメソポーラスシリカ(「SBA−15」、平均比表面積692m/g、平均細孔容積0.59cm/g)50重量%とを3本ロールにて混練分散した後、真空脱泡して液状樹脂組成物を得た。
なお、本実施例に用いたメソポーラスシリカは、以下の方法によって作製したものである。
Pluronic P123((EO)20(PO)70(EO)20、BASF社製)、ケイ酸ナトリウム溶液(SiO 23.5重量%、NaO 7.60重量%)、20重量%塩酸、およびイオン交換水をそれぞれモル比で、P123:SiO:HCl:HO=0.017:1:7.32:203の割合になるように混合し、酸性条件下でスターラーを用いて6時間攪拌して混合溶液を得た後、これを200℃の加熱乾燥装置で2時間焼成して得た。
【0029】
(比較例1)
組成物全体に対して、エポキシ樹脂としてビスフェノールF型エポキシ樹脂(DIC社製「EXA−830LVP」)35.0重量%と、エポキシ樹脂硬化剤として、芳香族アミン硬化剤(日本化薬社製「カヤハードAA」)15.0重量%と、無機充填材として球状シリカ(アドマテックス社製「アドマファインSO−E3」)50重量%とを3本ロールにて混練分散した後、真空脱泡して液状樹脂組成物を得た。
【0030】
実施例1、2及び比較例1で用いた無機充填材ならびに、得られた組成物について、以下の評価を行った。得られた結果を表1に示す。
【0031】
【表1】

【0032】
[評価項目]
1.無機充填材
(1)平均比表面積
実施例で用いたメソポーラスシリカ及び比較例で用いた球状シリカについて自動比表面積/細孔分布測定装置(日本ベル社製)を用い、BET法により測定した
(2)平均細孔容積
実施例で用いたメソポーラスシリカ及び比較例で用いた球状シリカについて、自動比表面積/細孔分布測定装置(日本ベル社製)を用い、DH法により測定した
2.組成物
(1)熱線膨張係数
実施例1、2及び比較例1で得られた液状樹脂組成物を混練したものを150℃で2時間加熱処理し、硬化物を得た後、短冊形状に切り出し、これを試料片として用いた。測定条件は、初期荷重5gで昇温速度を2℃・min−1に設定し、常温から100℃の範囲で測定した。
装置は、熱機械測定装置(島津製作所社製「TMA−50」)を用いた。
【0033】
実施例1、2は、(A)エポキシ樹脂、(B)エポキシ樹脂硬化剤、平均比表面積が500m/g以上、1500m/g未満、平均細孔容積が0.3cm/g以上、1.2cm/g未満である(C)無機充填材を含有する本発明の半導体用液状樹脂組成物であり、比較例1の組成物と無機充填材の含有量は同じで、硬化物はより低い熱線膨張係数を達成することができた。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、フリップチップ方式の半導体装置において半導体素子と基板との間を封止するために用いる液状樹脂組成物であり、無機充填材の配合量を増やすことなく、硬化物のさらなる低熱線膨張化を達成することができる。本発明の液状樹脂組成物を用いることにより、半導体装置の信頼性を向上させることができるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エポキシ樹脂、(B)エポキシ樹脂硬化剤、(C)無機充填材、を含有する半導体用液状樹脂組成物であって、前記(C)無機充填材が、平均比表面積が500m/g以上、1500m/g未満、平均細孔容積が0.3cm/g以上、1.2cm/g未満であることを特徴とする半導体用液状樹脂組成物。
【請求項2】
前記半導体用液状樹脂組成物全体に対して、前記(C)無機充填材を30〜80重量%含有する請求項1に記載の半導体用液状樹脂組成物。
【請求項3】
前記(C)無機充填材は、メソポーラス無機充填材である請求項1又は2に記載の半導体用液状樹脂組成物。
【請求項4】
前記メソポーラス無機充填材は、メソポーラスシリカである請求項3に記載の半導体用液状樹脂組成物。
【請求項5】
前記(B)エポキシ樹脂硬化剤が、アミン硬化剤または酸無水物硬化剤である請求項1ないし4のいずれかに記載の半導体用液状樹脂組成物。

【公開番号】特開2011−144249(P2011−144249A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−5426(P2010−5426)
【出願日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】