説明

半導体装置、その製造方法及び層間絶縁膜の形成方法

【課題】金属配線同士の間の絶縁膜の実効的な比誘電率を低減すると共に、金属配線と有機絶縁膜との密着性を向上させる。
【解決手段】半導体基板100の上に金属配線パターン101を形成した後、C/CH/ビニルトリメトキシシランの混合ガスからなる第1の原料ガスを用いるプラズマCVD法により、半導体基板100の上にシロキサン含有フッ素化有機膜からなる第1の密着層102を堆積する。次にC/CHの混合ガスからなる第2の原料ガスを用いるプラズマCVD法により、第1の密着層102の上にフッ素化アモルファスカーボン膜からなる有機絶縁膜103を堆積する。次にC/CH/ビニルトリメトキシシランの混合ガスからなる第2の原料ガスを用いるプラズマCVD法により、有機絶縁膜103の上にシロキサン含有フッ素化有機膜からなる第2の密着層104を堆積する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、比誘電率及び密着性に優れた層間絶縁膜を有する半導体装置及びその製造方法、並びに比誘電率及び密着性に優れた層間絶縁膜の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路の高集積化の進展に伴い、金属配線同士の間の寄生容量である配線間容量の増加に起因する配線遅延時間の増大が半導体集積回路の高性能化の妨げとなっている。配線遅延時間は金属配線の抵抗と配線間容量との積に比例するいわゆるRC遅延といわれるものである。
【0003】
従って、配線遅延時間を低減するためには、金属配線の抵抗を小さくするか又は配線間容量を小さくすることが必要である。
【0004】
配線間容量を小さくする方法としては、金属配線同士の間に形成される層間絶縁膜の比誘電率を小さくすることが考えられ、層間絶縁膜として従来のシリコン酸化膜とは異なる材料を用いることが検討されている。
【0005】
0.25μmの最小加工寸法を有する半導体集積回路では、層間絶縁膜としてシリコン酸化膜にフッ素が添加されてなるフッ素添加シリコン酸化膜が用いられつつある。フッ素添加シリコン酸化膜の比誘電率は、3.3〜3.9程度であって、従来のシリコン酸化膜の4.2〜4.5に比べて小さいので、配線間容量の低減ひいては配線遅延時間の低減に効果的であると報告されている。
【0006】
ところが、半導体集積回路の微細化がさらに進展することは明らかであり、最小加工寸法が0.13μm以下の半導体集積回路では、比誘電率が2.50以下の層間絶縁膜を用いることが、実用的な処理速度を実現するためには必須であると考えられている。
【0007】
そこで、比誘電率がフッ素添加シリコン酸化膜よりも一層小さい層間絶縁膜として、低誘電率SOG(スピンオングラス)膜、有機膜及び多孔質膜の検討が行われている。
【0008】
現在知られている層間絶縁膜を材料物性の観点から検討すると、有機膜は比誘電率が小さく、その中でもパーフルオロカーボンポリマーは比誘電率が最も小さい材料である。パーフルオロカーボンポリマーの比誘電率は最小のもので1.9程度である。
【0009】
しかしながら、パーフルオロカーボンポリマーは、炭素−炭素の骨格を有していると共に、骨格形成に関与する結合以外はすべてフッ素で終端されているため、非常に密着性が悪い。その理由は、パーフルオロカーボンポリマーにおいては、炭素−フッ素結合の分極が小さいため、炭素−フッ素結合は、化学反応性が低くて他の材料との相互作用が小さいので、他の材料との接着が起こりにくいためである。
【0010】
パーフルオロカーボンポリマー膜を形成する代表的な方法としては、プラズマCVD法が報告されており、プラズマCVD法により形成されたパーフルオロカーボンポリマー膜は一般的にアモルファスフルオロカーボン(a−CF)膜と呼ばれることが多い。
【0011】
ところが、a−CF膜は絶縁膜又は金属膜との密着性が非常に悪いため、a−CF膜と絶縁膜又は金属膜との間に密着層を形成することが不可欠となっており、密着層としては、シリコンリッチ酸化膜とダイアモンドライクカーボン(DLC)膜との積層構造が提案されている。シリコンリッチ酸化膜は下地酸化膜及び金属膜との密着性を有していると共にDLC膜との密着性も有しており、また、DLC膜はa−CF膜との密着性を有している。
【0012】
以下、従来の配線構造及びその形成方法について図7を参照しながら説明する。まず、半導体基板10の上に金属配線パターン11を形成した後、金属配線パターン11の上を含む半導体基板10の上に全面に亘って、第1の密着層として、30nmの膜厚の第1のシリコンリッチ酸化膜12及び30nmの膜厚の第1のDLC膜13を順次堆積する。
【0013】
次に、第1のDLC膜13の上に200nmの膜厚を有するa−CF膜14を金属配線パターン11同士の間に充填されるように堆積した後、a−CF膜14の上に全面に亘って、第2の密着層として、30nmの膜厚の第2のシリコンリッチ酸化膜15及び30nmの膜厚の第2のDLC膜16を順次堆積する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、第1及び第2のシリコンリッチ酸化膜12、15の比誘電率は3.9以上であり、第1及び第2のDLC膜13、16の比誘電率は2.8以上であって、これらの比誘電率はa−CF膜14の比誘電率に比べてかなり高い。このため、金属配線パターン11同士の間に、比誘電率の高い第1のシリコンリッチ酸化膜12及び第1のDLC膜13からなる第1の密着層が介在するので、金属配線パターン11同士の間の絶縁膜の実効的な比誘電率が増大してしまうという問題がある。例えば、金属配線パターン11同士の間隔が250nmのときに、金属配線パターン11同士の間に、30nmの膜厚の第1のシリコンリッチ酸化膜12と30nmの膜厚の第1のDLC膜13とからなる第1の密着層が介在する場合には、金属配線パターン11同士の間に120nmの膜厚の比誘電率の高い密着層が介在することになるので、金属配線パターン11同士の間の絶縁膜の実効的な比誘電率の増大は大きな問題になる。
【0015】
また、反応系が大きく異なる、第1及び第2のシリコンリッチ酸化膜12、15、第1及び第2のDLC膜13、16並びにa−CF膜14をCVD装置の同一の処理室内で形成する場合には、処理室内の雰囲気が激変してしまうので、成膜のプロセスが安定しない。このため、第1及び第2のシリコンリッチ酸化膜12、15、第1及び第2のDLC膜13、16並びにa−CF膜14の各膜質が変化するので、密着性が安定しないという問題がある。
【0016】
また、第1及び第2のシリコンリッチ酸化膜12、15、第1及び第2のDLC膜13、16並びにa−CF膜14を同一の処理室内で形成する場合には、有機物と酸化物との混合物が処理室の内壁に堆積し、堆積した混合物がシリコンリッチ酸化膜を堆積する際に用いられる酸素によって処理室の内壁から剥がされるので、パーティクルが発生するという問題がある。
【0017】
また、酸化膜と有機膜という性質が大きく異なる膜を薄い膜厚で積層する必要があるので、プロセスの制御が困難であるという問題がある。
【0018】
本発明は、前記の問題点を一挙に解決し、金属配線同士の間の絶縁膜の実効的な比誘電率を低減すると共に、金属配線と有機絶縁膜との密着性を向上させることを第1の目的とし、処理室内に発生するパーティクルを低減すると共にプロセスの制御を容易にすることを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
前記の第1の目的を達成するため、本発明に係る第1の半導体装置は、半導体基板上に形成された金属配線パターンと、金属配線パターンの上を含む半導体基板上に形成され、フッ素−炭素結合を含有する有機化合物及び有機シラン誘導体を主原料とするシロキサン含有フッ素化有機膜からなる第1の密着層と、第1の密着層の上に形成され、フッ素−炭素結合を含有する有機化合物を主原料とするフッ素化有機膜からなる有機絶縁膜と、有機絶縁膜の上に形成され、フッ素−炭素結合を含有する有機化合物及び有機シラン誘導体を主原料とするシロキサン含有フッ素化有機膜からなる第2の密着層と、第1の密着層の上に形成された無機化合物からなる無機絶縁膜とを備えている。
【0020】
前記の第1の目的を達成するため、本発明に係る第2の半導体装置は、半導体基板上に形成され、フッ素−炭素結合を含有する有機化合物及び有機シラン誘導体を主原料とするシロキサン含有フッ素化有機膜からなる第1の密着層と、第1の密着層の上に形成され、フッ素−炭素結合を含有する有機化合物を主原料とするフッ素化有機膜からなる有機絶縁膜と、有機絶縁膜に形成された配線溝と、配線溝の側壁に形成され、フッ素−炭素結合を含有する有機化合物及び有機シラン誘導体を主原料とするシロキサン含有フッ素化有機膜からなる第2の密着層と、配線溝の内部における第1の密着層及び第2の密着層で囲まれた部分に埋め込まれた金属配線とを備えている。
【0021】
前記の第1の目的を達成するため、本発明に係る第3の半導体装置は、半導体基板上に形成され、フッ素−炭素結合を含有する有機化合物及び有機シラン誘導体を主原料とするシロキサン含有フッ素化有機膜からなる第1の密着層と、第1の密着層の上に形成され、フッ素−炭素結合を含有する有機化合物を主原料とするフッ素化有機膜からなる有機絶縁膜と、第1の密着層及び有機絶縁膜に形成され、互いに連通している接続孔及び配線溝と、接続孔及び配線溝の側壁に形成され、フッ素−炭素結合を含有する有機化合物及び有機シラン誘導体を主原料とするシロキサン含有フッ素化有機膜からなる第2の密着層と、接続孔及び配線溝の内部における第2の密着層で囲まれた部分に埋め込まれた金属膜からなるコンタクト及び金属配線とを備えている。
【0022】
前記の第1の目的を達成するため、本発明に係る第4の半導体装置は、半導体基板上に形成され、フッ素−炭素結合を含有する有機化合物及び有機シラン誘導体を主原料とするシロキサン含有フッ素化有機膜からなる第1の密着層と、第1の密着層の上に形成された無機化合物からなる第1の無機絶縁膜と、第1の無機絶縁膜の上に形成され、フッ素−炭素結合を含有する有機化合物及び有機シラン誘導体を主原料とするシロキサン含有フッ素化有機膜からなる第2の密着層と、第2の密着層の上に形成され、フッ素−炭素結合を含有する有機化合物を主原料とするフッ素化有機膜からなる第1の有機絶縁膜と、第1の有機絶縁膜の上に形成され、フッ素−炭素結合を含有する有機化合物及び有機シラン誘導体を主原料とするシロキサン含有フッ素化有機膜からなる第3の密着層と、第3の密着層の上に形成された無機化合物からなる第2の無機絶縁膜と、第2の無機絶縁膜の上に形成され、フッ素−炭素結合を含有する有機化合物及び有機シラン誘導体を主原料とするシロキサン含有フッ素化有機膜からなる第4の密着層と、第4の密着層の上に形成され、フッ素−炭素結合を含有する有機化合物を主原料とするフッ素化有機膜からなる第2の有機絶縁膜と、第2の有機絶縁膜の上に形成され、フッ素−炭素結合を含有する有機化合物及び有機シラン誘導体を主原料とするシロキサン含有フッ素化有機膜からなる第5の密着層と、第5の密着層の上に形成された無機化合物からなる第3の無機絶縁膜と、第1の密着層、第1の無機絶縁膜、第2の密着層、第1の有機絶縁膜、第3の密着層、第2の無機絶縁膜、第4の密着層、第2の有機絶縁膜、第5の密着層及び第3の無機絶縁膜からなる層間絶縁膜に形成され、互いに連通している接続孔及び配線溝と、接続孔及び配線溝の側壁に形成され、フッ素−炭素結合を含有する有機化合物及び有機シラン誘導体を主原料とするシロキサン含有フッ素化有機膜からなる第6の密着層と、接続孔及び配線溝の内部における第6の密着層で囲まれた部分に埋め込まれた金属膜からなるコンタクト及び金属配線とを備えている。
【0023】
第1〜第4の半導体装置によると、フッ素−炭素結合を含有する有機化合物及び有機シラン誘導体を主原料とするシロキサン含有フッ素化有機膜からなる密着層の比誘電率は2.5以下であって、従来のシリコンリッチ酸化膜の比誘電率(3.9以上)又はDLC膜の比誘電率(2.8以上)に比べて小さい。
【0024】
フッ素−炭素結合を含有する有機化合物と有機シラン誘導体とは、任意の混合比で、酸化剤非存在下においてプラズマにより共重合してシロキサン含有フッ素化有機膜(有機・無機複合膜)となる。このシロキサン含有フッ素化有機膜においては、有機シラン誘導体のアルコキシ基からシロキサンが形成され、形成されたシロキサンの酸素と金属配線パターン(又は接続孔に埋め込まれたコンタクト又は配線溝に埋め込まれた金属配線)の金属とが強固に結合するため、密着層と金属配線パターン(又はコンタクト又は金属配線)との密着性が高くなる。また、形成されたシロキサンの酸素は無機絶縁膜の無機化合物とも強固に結合するため、密着層と無機絶縁膜との密着性も高くなる。
【0025】
密着層を構成する有機シラン誘導体の有機基と有機絶縁膜を構成するフッ素−炭素結合を含有する有機化合物の有機基とが共重合反応して、有機シラン誘導体の有機基が有機化合物の炭素骨格に共有結合するため、密着層と有機絶縁膜との密着性も高くなる。
【0026】
前記の第1及び第2の目的を達成するため、本発明に係る第1の半導体装置の製造方法は、半導体基板上に金属配線パターンを形成する工程と、金属配線パターンの上を含む半導体基板上に、プラズマCVD法により、フッ素−炭素結合を含有する有機化合物及び有機シラン誘導体を主原料とするシロキサン含有フッ素化有機膜からなる第1の密着層を形成する工程と、第1の密着層の上に、プラズマCVD法により、フッ素−炭素結合を含有する有機化合物を主原料とするフッ素化有機膜からなる有機絶縁膜を形成する工程と、有機絶縁膜の上に、プラズマCVD法により、フッ素−炭素結合を含有する有機化合物及び有機シラン誘導体を主原料とするシロキサン含有フッ素化有機膜からなる第2の密着層を形成する工程と、第1の密着層の上に無機化合物からなる無機絶縁膜を形成する工程とを備えている。
【0027】
第1の半導体装置の製造方法において、第1の密着層を構成するシロキサン含有フッ素化有機膜の原料となる有機化合物と、有機絶縁膜を構成するフッ素化有機膜の原料なる有機化合物と、第2の密着層を構成するシロキサン含有フッ素化有機膜の原料となる有機化合物とは、同種類の有機化合物であることが好ましい。
【0028】
第1の半導体装置の製造方法において、第1の密着層及び第2の密着層を構成するシロキサン含有フッ素化有機膜の原料となる有機シラン誘導体は、RSi(OR4−n(但し、nは1〜3の整数であり、Rはアルキル基又はアリール基であり、Rはアルキル基又はアリール基である。)の一般式で表される有機シラン誘導体であることが好ましい。
【0029】
前記の第1及び第2の目的を達成するため、本発明に係る第2の半導体装置の製造方法は、半導体基板上に、フッ素−炭素結合を含有する有機化合物及び有機シラン誘導体を主原料とするシロキサン含有フッ素化有機膜からなる第1の密着層を形成する工程と、第1の密着層の上に無機化合物からなる第1の無機絶縁膜を形成する工程と、第1の無機絶縁膜の上に、フッ素−炭素結合を含有する有機化合物及び有機シラン誘導体を主原料とするシロキサン含有フッ素化有機膜からなる第2の密着層を形成する工程と、第2の密着層の上に、フッ素−炭素結合を含有する有機化合物を主原料とするフッ素化有機膜からなる第1の有機絶縁膜を形成する工程と、第1の有機絶縁膜の上に、フッ素−炭素結合を含有する有機化合物及び有機シラン誘導体を主原料とするシロキサン含有フッ素化有機膜からなる第3の密着層を形成する工程と、第3の密着層の上に無機化合物からなる第2の無機絶縁膜を形成する工程と、第2の無機絶縁膜の上に、フッ素−炭素結合を含有する有機化合物及び有機シラン誘導体を主原料とするシロキサン含有フッ素化有機膜からなる第4の密着層を形成する工程と、第4の密着層の上にフッ素−炭素結合を含有する有機化合物を主原料とするフッ素化有機膜からなる第2の有機絶縁膜を形成する工程と、第2の有機絶縁膜の上に、フッ素−炭素結合を含有する有機化合物及び有機シラン誘導体を主原料とするシロキサン含有フッ素化有機膜からなる第5の密着層を形成する工程と、第5の密着層の上に無機化合物からなる第3の無機絶縁膜を形成する工程と、第1の密着層、第1の無機絶縁膜、第2の密着層、第1の有機絶縁膜、第3の密着層、第2の無機絶縁膜、第4の密着層、第2の有機絶縁膜、第5の密着層及び第3の無機絶縁膜からなる層間絶縁膜に、互いに連通する接続孔及び配線溝を形成する工程と、接続孔及び配線溝の側壁に、フッ素−炭素結合を含有する有機化合物及び有機シラン誘導体を主原料とするシロキサン含有フッ素化有機膜からなる第6の密着層を形成する工程と、接続孔及び配線溝の内部における第6の密着層で囲まれた部分に金属膜を埋め込んで、該金属膜からなるコンタクト及び金属配線を形成する工程と備えている。
【0030】
第1及び第2の半導体装置の製造方法によると、フッ素−炭素結合を含有する有機化合物と有機シラン誘導体とを主原料とするシロキサン含有フッ素化有機膜からなる密着層の比誘電率は2.5以下であって、従来のシリコンリッチ酸化膜の比誘電率(3.9以上)又はDLC膜の比誘電率(2.8以上)に比べて小さい。
【0031】
フッ素−炭素結合を含有する有機化合物と有機シラン誘導体とは、任意の混合比で、酸化剤非存在下においてプラズマにより共重合してシロキサン含有フッ素化有機膜(有機・無機複合膜)となる。このシロキサン含有フッ素化有機膜においては、有機シラン誘導体のアルコキシ基からシロキサンが形成され、形成されたシロキサンの酸素と金属配線パターン(又は接続孔に埋め込まれたコンタクト又は配線溝に埋め込まれた金属配線)の金属とが強固に結合するため、密着層と金属配線パターン(又はコンタクト又は金属配線)との密着性が高くなる。また、形成されたシロキサンの酸素は無機絶縁膜の無機化合物とも強固に結合するため、密着層と無機絶縁膜との密着性も高くなる。
【0032】
密着層を構成する有機シラン誘導体の有機基と有機絶縁膜を構成するフッ素−炭素結合を含有する有機化合物の有機基とが共重合反応して、有機シラン誘導体の有機基が有機化合物の炭素骨格に共有結合するため、密着層と有機絶縁膜との密着性も高くなる。
【0033】
また、フッ素−炭素結合を含有する有機化合物を主原料とするフッ素化有機膜からなる有機絶縁膜を形成する工程は、フッ素−炭素結合を含有する有機化合物及び有機シラン誘導体を主原料とするシロキサン含有フッ素化有機膜からなる密着層を形成する工程同士の間に行なわれると共に、有機絶縁膜の形成工程と密着層の形成工程とは同一の反応系プロセスであるため、有機絶縁膜の形成工程とその前後の密着層の形成工程とを連続して行なうことができると共に、反応系のプロセスの制御が容易である上に、処理室の雰囲気を一定に保つことができる。
【0034】
本発明に係る第1の層間絶縁膜の形成方法は、半導体基板上に順次堆積された、第1の密着層、有機絶縁膜及び第2の密着層からなる層間絶縁膜の形成方法を対象とし、半導体基板が保持されている処理室内に、フッ素−炭素結合を含有する有機化合物を含む第1の原料ガス及び有機シラン誘導体を含む第2の原料ガスを導入した後、第1の原料ガスの導入量をほぼ一定に保つ一方、第2の原料ガスの導入量を減少させながら、第1の原料ガス及び第2の原料ガスからなるプラズマにより、半導体基板上にシロキサン含有フッ素化有機膜からなる第1の密着層を形成する工程と、処理室内に第1の原料ガスをその導入量をほぼ一定に保ちながら導入する一方、第2の原料ガスの導入を停止して、第1の原料ガスからなるプラズマにより、第1の密着層の上にフッ素−炭素結合を含有する有機化合物からなる有機絶縁膜を形成する工程と、処理室内に、第1の原料ガスをその導入量をほぼ一定に保ちながら導入すると共に、第2の原料ガスを再び導入し且つ第2の原料ガスの導入量を増加させながら、第1の原料ガス及び第2の原料ガスからなるプラズマにより、有機絶縁膜の上にシロキサン含有フッ素化有機膜からなる第2の密着層を形成する工程とを備えている。
【0035】
第1の層間絶縁膜の形成方法によると、処理室内に導入した第1の原料ガスの導入量をほぼ一定に保つ一方、第2の原料ガスの導入量を減少させながら、半導体基板上に第1の密着層を形成した後、処理室内に導入している第1の原料ガスの導入量をほぼ一定に保つ一方、第2の原料ガスの導入を停止して、第1の密着層の上に有機絶縁膜を形成し、その後、処理室内に導入している第1の原料ガスの導入量をほぼ一定に保つ一方、再び導入した第2の原料ガスの導入量を増加させながら、有機絶縁膜の上に第2の密着層を形成するため、つまり、第1の原料ガスの導入量をほぼ一定に保った状態で、第2の原料ガスの導入量を減少、停止及び増加することにより、第1の密着層、有機絶縁膜及び第2の密着層を連続的に形成することができる。
【0036】
本発明に係る第2の層間絶縁膜の形成方法は、半導体基板上に順次堆積された、第1の密着層、有機絶縁膜及び第2の密着層からなる層間絶縁膜の形成方法を対象とし、半導体基板が保持されている処理室内に、フッ素−炭素結合を含有する有機化合物を含む第1の原料ガス及び有機シラン誘導体を含む第2の原料ガスを、それぞれの導入量をほぼ一定に保ちながら導入しながら、第1の原料ガス及び第2の原料ガスからなるプラズマにより、半導体基板上にシロキサン含有フッ素化有機膜からなる第1の密着層を形成する工程と、処理室内に第1の原料ガスをその導入量をほぼ一定に保ちながら導入する一方、第2の原料ガスの導入を停止して、第1の原料ガスからなるプラズマにより、第1の密着層の上にフッ素−炭素結合を含有する有機化合物からなる有機絶縁膜を形成する工程と、処理室内に、第1の原料ガスをその導入量をほぼ一定に保ちながら導入すると共に、第2の原料ガスを再び導入し且つ第2の原料ガスの導入量をほぼ一定に保ちながら、第1の原料ガス及び第2の原料ガスからなるプラズマにより、有機絶縁膜の上にシロキサン含有フッ素化有機膜からなる第2の密着層を形成する工程とを備えている。
【0037】
第2の層間絶縁膜の形成方法によると、処理室内に、第1の原料ガス及び第2の原料ガスをそれぞれの導入量をほぼ一定に保ちながら、第1の密着層を形成した後、処理室内に導入している第1の原料ガスの導入量をほぼ一定に保つ一方、第2の原料ガスの導入を停止して、第1の密着層の上に有機絶縁膜を形成し、その後、処理室内に導入している第1の原料ガスの導入量をほぼ一定に保つと共に第2の原料ガスを再び導入し且つ第2の原料ガスの導入量をほぼ一定に保ちながら、有機絶縁膜の上に第2の密着層を形成するため、つまり、第1の原料ガスの導入量をほぼ一定に保った状態で、第2の原料ガスの導入、停止及び導入を行なうことにより、第1の密着層、有機絶縁膜及び第2の密着層を連続的に形成することができる。
【発明の効果】
【0038】
第1〜第4の半導体装置によると、フッ素−炭素結合を含有する有機化合物及び有機シラン誘導体を主原料とするシロキサン含有フッ素化有機膜からなる密着層の比誘電率は、従来のシリコンリッチ酸化膜とDLC膜との積層膜からなる密着層の比誘電率に比べて小さい。
【0039】
密着層と金属配線パターン(又はコンタクト又は金属配線)との密着性、密着層と無機絶縁膜との密着性、及び密着層と有機絶縁膜との密着性はいずれも高いので、金属配線パターン(又はコンタクト又は金属配線)、無機絶縁膜及び有機絶縁膜の相互間の密着性の向上を単層の密着層により実現することができる。
【0040】
従って、第1〜第4の半導体装置によると、金属配線同士の間の絶縁膜の実効的な比誘電率を低減できると共に、金属配線と有機絶縁膜との間の密着性を向上させることができる。
【0041】
第1及び第2の半導体装置の製造方法によると、密着層の比誘電率を従来のシリコンリッチ酸化膜とDLC膜との積層膜に比べて小さくできると共に、金属配線パターン(又はコンタクト又は金属配線)、無機絶縁膜及び有機絶縁膜の相互間の密着性の向上を単層で且つ1種類の密着層により実現することができる。
【0042】
また、有機絶縁膜の形成工程とその前後の密着層の形成工程とを連続的に行なうことができると共に、反応系のプロセスの制御が容易である上に、処理室の雰囲気を一定に保つことができる。
【0043】
従って、第1及び第2の半導体装置の製造方法によると、金属配線同士の間の絶縁膜の実効的な比誘電率の低減及び金属配線と有機絶縁膜との間の密着性の向上を、処理室内にパーティクルを発生させることなく且つプロセスの制御性を容易に実現することができる。
【0044】
第1の半導体装置の製造方法において、第1の密着層の原料となる有機化合物、有機絶縁膜の原料なる有機化合物及び第2の密着層の原料となる有機化合物が同種類の有機化合物であると、プロセスの制御性が一層向上する。
【0045】
第1の半導体装置の製造方法において、第1の密着層及び第2の密着層の原料が、RSi(OR4−n(但し、nは1〜3の整数であり、Rはアルキル基又はアリール基であり、Rはアルキル基又はアリール基である。)の一般式で表される有機シラン誘導体であると、密着層の比誘電率を確実に小さくできると共に密着性を確実に向上することができる。
【0046】
第1の層間絶縁膜の形成方法によると、第1の原料ガスの導入量をほぼ一定に保った状態で、第2の原料ガスの導入量を減少、停止及び増加することにより、第1の密着層、有機絶縁膜及び第2の密着層を連続的に形成できるため、第1の密着層、有機絶縁膜及び第2の密着層の組成が連続的に変化するので、密着性が非常に高くなる。
【0047】
第2の層間絶縁膜の形成方法によると、第1の原料ガスの導入量をほぼ一定に保った状態で、第2の原料ガスの導入、停止及び導入を行なうことにより、第1の密着層、有機絶縁膜及び第2の密着層を連続的に形成できるため、第1及び第2の密着層の膜厚を薄くできるので、層間絶縁膜の実効的な比誘電率を極めて小さくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0048】
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置及びその製造方法について、図1(a)〜(c)及び図2(a)〜(c)を参照しながら説明する。
【0049】
まず、図1(a)に示すように、半導体基板100の上に、例えば高さが800nmで配線スペースが250nmの金属配線パターン101を形成した後、金属配線パターン101の上を含む半導体基板100の上に全面に亘って、例えば20nmの膜厚を有するシロキサン含有フッ素化有機膜からなる第1の密着層102を堆積する。シロキサン含有フッ素化有機膜の堆積方法としては、フッ素−炭素結合を有する有機化合物及び有機シラン誘導体を主原料とする第1の原料ガス、例えばC/CH/ビニルトリメトキシシラン(vinyltrimethoxysilane)の混合ガスを用いるプラズマCVD法が挙げられ、堆積条件としては、例えばRFパワーは200W、プロセス圧力は200mmTorr、堆積時間は4秒間である。
【0050】
次に、図1(b)に示すように、第1の密着層102の上に全面に亘って、例えば200nmの膜厚を有するフッ素化アモルファスカーボン膜からなる有機絶縁膜103を金属配線パターン101同士の間のスペース部が完全に充填されるように堆積する。フッ素化アモルファスカーボン膜の堆積方法としては、フッ素−炭素結合を有する有機化合物を主原料とする第2の原料ガス、例えばC/CHの混合ガスを用いるプラズマCVD法が挙げられ、堆積条件としては、例えばRFパワーは200W、プロセス圧力は200mmTorr、堆積時間は60秒間である。
【0051】
次に、図1(c)に示すように、有機絶縁膜103の上に全面に亘って、例えば20nmの膜厚を有するシロキサン含有フッ素化有機膜からなる第2の密着層104を堆積する。シロキサン含有フッ素化有機膜の堆積方法としては、第1の密着層102の場合と同様、フッ素−炭素結合を有する有機化合物及び有機シラン誘導体を主原料とする第1の原料ガス、例えばC/CH/ビニルトリメトキシシランの混合ガスを用いるプラズマCVD法が挙げられ、堆積条件としては、例えばRFパワーは200W、プロセス圧力は200mmTorr、堆積時間は4秒間である。
【0052】
次に、図2(a)に示すように、第2の密着層104の上に全面に亘って例えば50nmの膜厚を有するシリコン酸化膜からなる無機絶縁膜105を堆積した後、該無機絶縁膜105の表面を例えばCMP法により平坦化する。シリコン酸化膜の堆積方法としてはSiHとNO との混合ガスを用いるプラズマCVD法が挙げられる。
【0053】
次に、図2(b)に示すように、第1の密着層102、有機絶縁膜103、第2の密着層104及び無機絶縁膜105に対して選択的にエッチングを行なって接続孔106を形成した後、該接続孔106に例えばタングステンからなる金属膜を埋め込んで金属プラグ107を形成する。尚、無機絶縁膜105としてのシリコン酸化膜105は、接続孔106をドライエッチングにより形成する際のエッチングストッパーとなる。
【0054】
第1の実施形態によると、シロキサン含有フッ素化有機膜からなる第1及び第2の密着層102、104の比誘電率は非常に低くて2.5以下であった。
【0055】
また、シロキサン含有フッ素化有機膜からなる第1及び第2の密着層102、104とフッ素化アモルファスカーボン膜からなる有機絶縁膜103との密着性は極めて優れており、フッ素化アモルファスカーボンからなる有機膜103の剥離は認められなかった。
【0056】
以下、第1の密着層102、有機絶縁膜103及び第2の密着層104を連続的に堆積する際の第1のプロセスシーケンスについて説明する。
【0057】
第1のプロセスシーケンスは、堆積条件を例えばRFパワーは200W、プロセス圧力は200mmTorrに保った状態で、フッ素−炭素結合を有する有機化合物及び有機シラン誘導体を主原料とする第1の原料ガスの導入量を一定に保った状態で、フッ素−炭素結合を有する有機化合物を主原料とする第2の原料ガスの導入量をパルス的に変化させる方法である。
【0058】
第1のプロセスシーケンスについて、図3(a)を参照しながら具体的に説明する。まず、プラズマCVD処理室にCガス、CHガス及びビニルトリメトキシシランガスを導入した直後にプラズマ発生用の高周波電力を印加すると共に、Cガス、CHガス及びビニルトリメトキシシランガスを各導入量を一定にして4秒間導入することにより、第1の密着層102を堆積する。次に、ビニルトリメトキシシランガスの導入を停止する一方、Cガス及びCHガスを各導入量を一定にして60秒間導入することにより、有機絶縁膜103を堆積する。次に、Cガス及びCHガスの各導入量を一定に保ったまま、ビニルトリメトキシシランガスを再び一定量4秒間導入することにより、第2の密着層104を堆積する。プラズマ発生用の高周波電力の印加方法としては、図3(a)においてNo.1で示すように、ビニルトリメトキシシランガスの導入及び停止の各直前及び各直後に僅かな時間だけ停止してもよいし、図3(a)においてNo.2で示すように、ビニルトリメトキシシランガスの導入及び停止とは無関係に継続しておき、Cガス、CHガス及びビニルトリメトキシシランガスの導入停止の直前に停止してもよい。
【0059】
第1のプロセスシーケンスによると、第1の密着層102及び第2の密着層104の堆積工程においては、ビニルトリメトキシシランガスを一定量づつ導入するため、第1及び第2の密着層102、104におけるシロキサンの含有率は密着層の膜厚方向でほぼ一定となる。
【0060】
また、第1のプロセスシーケンスによると、Cガス、CHガス及びビニルトリメトキシシランガスの導入量を経時的に変化させることなく、バルブの開閉という単純な操作でビニルトリメトキシシランガスの導入及び停止を行なうことができるため、第1及び第2の密着層102、104の膜厚を薄くすることが容易である。このため、金属配線パターン101同士の間の実効的な比誘電率を小さくできるので、容量の増加を抑制することができる。
【0061】
もっとも、第1のプロセスシーケンスは、第1又は第2の密着層102、104と有機絶縁膜103との界面において組成が急峻に変化するため、密着性が若干低下するという短所を有している。
【0062】
以下、第1の密着層102、有機絶縁膜103及び第2の密着層104を連続的に堆積する際の第2のプロセスシーケンスについて説明する。
【0063】
第2のプロセスシーケンスは、堆積条件を例えばRFパワーは200W、プロセス圧力は200mmTorrに保った状態で、フッ素−炭素結合を有する有機化合物及び有機シラン誘導体を主原料とする第1の原料ガスの導入量を一定に保つ一方、フッ素−炭素結合を有する有機化合物を主原料とする第2の原料ガスの導入量を連続的に変化させる方法である。
【0064】
第2のプロセスシーケンスについて、図3(b)を参照しながら具体的に説明する。まず、プラズマCVD処理室にCガス、CHガス及びビニルトリメトキシシランガスを導入した直後に、プラズマ発生用の高周波電力を印加すると共に、Cガス及びCHガスの導入量を一定に保つ一方、ビニルトリメトキシシランガスの導入量を連続的に減少させていき、ビニルトリメトキシシランガスの導入を導入開始から4秒後に停止することにより、第1の密着層102を堆積する。次に、ビニルトリメトキシシランガスの導入を停止したまま、Cガス及びCHガスを各導入量を一体にして60秒間導入することにより、有機絶縁膜103を堆積する。次に、Cガス及びCHガスの各導入量を一定に保ったまま、ビニルトリメトキシシランガスを再び導入すると共にその導入量を連続的に増加させる状態を4秒間継続することにより、第2の密着層104を堆積する。プラズマ発生用の高周波電力の印加方法としては、図3(b)に示すように、Cガス、CHガス及びビニルトリメトキシシランガスの導入直後に開始すると共に、Cガス、CHガス及びビニルトリメトキシシランガスの導入停止直前に終了する。
【0065】
第2のプロセスシーケンスによると、ビニルトリメトキシシランガスの導入量を経時的に変化させる必要があるため、第1及び第2の密着層102、104の堆積時間の短縮がやや困難になる。このため、第1のプロセスシーケンスに比べて、第1及び第2の密着層102、104の膜厚が厚くなるので、金属配線パターン101同士の間の実効的な比誘電率が若干大きくなるが、第1及び第2の密着層102、104と有機絶縁膜103との組成変化が連続的であるため、密着性は非常に高くなる。
【0066】
尚、第1の実施形態においては、第1の密着層102を構成するシロキサン含有フッ素化有機膜の主原料となる有機化合物、有機絶縁膜103を構成するフッ素化アモルファスカーボン膜の主原料となる有機化合物、及び第2の密着層104を構成するシロキサン含有フッ素化有機膜の主原料となる有機化合物としては、Cを用いたが、これに代えて、C1018等のように、一般式:C(xは1〜15の整数、yは4〜32の整数)で表わされるフッ素−炭素結合を有する有機化合物を広く用いることができる。
【0067】
また、第1の実施形態においては、有機絶縁膜103を構成するフッ素化アモルファスカーボン膜の主原料となる有機シラン誘導体としては、ビニルトリメトキシシランを用いたが、これに代えて、RSi(OR4−n(但し、nは1〜3の整数であり、Rはアルキル基又はアリール基であり、Rはアルキル基又はアリール基である。)の一般式で表される有機シラン誘導体を広く用いることができる。
【0068】
(第2の実施形態)
以下、本発明の第2の実施形態に係る配線構造及びその形成方法について、図4(a)、(b)、図5(a)、(b)及び図6(a)、(b)を参照しながら説明する。
【0069】
まず、図4(a)に示すように、半導体基板200の上に形成されたフッ素化アモルファスカーボン膜からなり、配線溝201aを有する第1の有機絶縁膜201の上に全面に亘って例えば20nmの膜厚を有するシロキサン含有フッ素化有機膜からなる第1の密着層202を堆積した後、配線溝201aの内部に金属膜を埋め込んで金属配線203を形成し、その後、全面に亘って例えば50nmの膜厚を有するシリコン酸化膜からなる第1の無機絶縁膜204を堆積する。
【0070】
次に、図4(b)に示すように、第1の無機絶縁膜204の上に、例えば20nmの膜厚を有するシロキサン含有フッ素化有機膜からなる第2の密着層205、例えば800nmの膜厚を有するフッ素化アモルファスカーボン膜からなる第2の有機絶縁膜206、例えば20nmの膜厚を有するシロキサン含有フッ素化有機膜からなる第3の密着層207、例えば50nmの膜厚を有するシリコン酸化膜からなる第2の無機絶縁膜208、例えば20nmの膜厚を有するシロキサン含有フッ素化有機膜からなる第4の密着層209、例えば300nmの膜厚を有するフッ素化アモルファスカーボン膜からなる第3の有機絶縁膜210、例えば20nmの膜厚を有するシロキサン含有フッ素化有機膜からなる第5の密着層211、及び例えば50nmの膜厚を有するシリコン酸化膜からなる第3の無機絶縁膜212を順次堆積する。
【0071】
次に、図5(a)に示すように、第1の無機絶縁膜204、第2の密着層205、第2の有機絶縁膜206、第3の密着層207及び第2の無機絶縁膜208に接続孔213を形成すると共に、第4の密着層209、第3の有機絶縁膜210、第5の密着層211及び第3の無機絶縁膜212に配線溝214を形成した後、接続孔213及び配線溝214の内部を含む全面に亘って、例えば20nmの膜厚を有するシロキサン含有フッ素化有機膜からなる第6の密着層215を等方的に堆積する。
【0072】
次に、図5(b)に示すように、第6の密着層215に対してエッチバックを行なって、第6の密着層215における接続孔213及び配線溝214の底部に位置する部分を除去すると共に、第2及び第3の有機絶縁膜206、210における接続孔213及び配線溝214に露出している各側面(接続孔213及び配線溝214の各側壁)に第6の密着層215からなるサイドウォール216を形成する。
【0073】
次に、図6(a)に示すように、接続孔213及び配線溝214の内部を含む第3の無機絶縁膜212の上に全面に亘って、例えば5nmの膜厚を有する窒化チタン膜からなるバリア層217を堆積する。
【0074】
次に、図6(b)に示すように、接続孔213及び配線溝214の内部を含むバリア層217の上に全面に亘って例えば銅からなる金属膜218を堆積した後、金属膜218における第3の無機絶縁膜212の上に露出している部分を例えばCMP法により除去して、金属膜218からなるデュアルダマシン構造を形成する。
【0075】
第1、第2、第3、第4、第5及び第6の密着層202、205、207、209、211、215となるシロキサン含有フッ素化有機膜の堆積方法としては、第1の実施形態と同様、フッ素−炭素結合を有する有機化合物及び有機シラン誘導体を主原料とする第1の原料ガス、例えばC/CH/ビニルトリメトキシシランの混合ガスを用いるプラズマCVD法が挙げられ、堆積条件としては、例えばRFパワーは200W、プロセス圧力は200mmTorr、堆積時間は4秒である。
【0076】
第1、第2及び第3の有機絶縁膜201、206、210となるフッ素化アモルファスカーボン膜の堆積方法としては、フッ素−炭素結合を有する有機化合物を主原料とする第2の原料ガス、例えばC/CHの混合ガスを用いるプラズマCVD法が挙げられ、堆積条件としては、例えばRFパワーは200W、プロセス圧力は200mmTorrである。
【0077】
第2の実施形態によると、第2の有機絶縁膜206及び第3の有機絶縁膜210における接続孔213及び配線溝214に露出している側面に第6の密着層215からなるサイドウォール216を形成した後、窒化チタン膜からなるバリア層217を堆積したので、第2及び第3の有機絶縁膜206、210とバリア層217との密着性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】(a)〜(c)は本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法及び層間絶縁膜の形成方法の各工程を示す断面図である。
【図2】(a)〜(c)は本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法及び層間絶縁膜の形成方法の各工程を示す断面図である。
【図3】(a)、(b)は本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法及び層間絶縁膜の形成方法における原料ガスの導入方法のシーケンスを示す図である。
【図4】(a)、(b)は本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法及び層間絶縁膜の形成方法の各工程を示す断面図である。
【図5】(a)、(b)は本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法及び層間絶縁膜の形成方法の各工程を示す断面図である。
【図6】(a)、(b)は本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法及び層間絶縁膜の形成方法の各工程を示す断面図である。
【図7】従来の半導体装置の断面図である。
【符号の説明】
【0079】
100 半導体基板
101 金属配線パターン
102 第1の密着層
103 有機絶縁膜
104 第2の密着層
105 無機絶縁膜
106 接続孔
107 金属プラグ
200 半導体基板
201 第1の有機絶縁膜
201a 配線溝
202 第1の密着層
203 金属配線
204 第1の無機絶縁膜
205 第2の密着層
206 第2の有機絶縁膜
207 第3の密着層
208 第2の無機絶縁膜
209 第4の密着層
210 第3の有機絶縁膜
211 第5の密着層
212 第3の無機絶縁膜
213 接続孔
214 配線溝
215 第6の密着層
216 サイドウォール
217 バリア層
218 金属膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板上に形成された金属配線パターンと、
前記金属配線パターンの上を含む前記半導体基板上に形成され、炭素を含有する有機化合物及び有機シラン誘導体を主原料とするシロキサン含有有機膜からなる第1の密着層と、
前記第1の密着層の上に形成され、炭素を含有する有機化合物を主原料とする有機膜からなる有機絶縁膜と、
前記有機絶縁膜の上に形成され、炭素を含有する有機化合物及び有機シラン誘導体を主原料とするシロキサン含有有機膜からなる第2の密着層と、
前記第2の密着層の上に形成された無機化合物からなる無機絶縁膜とを備えていることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
半導体基板上に形成され、炭素を含有する有機化合物及び有機シラン誘導体を主原料とするシロキサン含有有機膜からなる第1の密着層と、
前記第1の密着層の上に形成され、炭素を含有する有機化合物を主原料とする有機膜からなる有機絶縁膜と、
前記第1の密着層及び有機絶縁膜に形成され、互いに連通している接続孔又は配線溝と、
前記接続孔又は配線溝の側壁に形成され、炭素を含有する有機化合物及び有機シラン誘導体を主原料とするシロキサン含有有機膜からなる第2の密着層と、
前記接続孔又は配線溝の内部における前記第2の密着層で囲まれた部分に埋め込まれた金属膜からなるコンタクト及び金属配線とを備えていることを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
半導体基板上に形成され、炭素を含有する有機化合物及び有機シラン誘導体を主原料とするシロキサン含有有機膜からなる第1の密着層と、
前記第1の密着層の上に形成された無機化合物からなる第1の無機絶縁膜と、
前記第1の無機絶縁膜の上に形成され、炭素を含有する有機化合物及び有機シラン誘導体を主原料とするシロキサン含有有機膜からなる第2の密着層と、
前記第2の密着層の上に形成され、炭素を含有する有機化合物を主原料とする有機膜からなる第1の有機絶縁膜と、
前記第1の有機絶縁膜の上に形成され、炭素を含有する有機化合物及び有機シラン誘導体を主原料とするシロキサン含有有機膜からなる第3の密着層と、
前記第3の密着層の上に形成された無機化合物からなる第2の無機絶縁膜と、
前記第2の無機絶縁膜の上に形成され、炭素を含有する有機化合物及び有機シラン誘導体を主原料とするシロキサン含有有機膜からなる第4の密着層と、
前記第4の密着層の上に形成され、炭素を含有する有機化合物を主原料とする有機膜からなる第2の有機絶縁膜と、
前記第2の有機絶縁膜の上に形成され、炭素を含有する有機化合物及び有機シラン誘導体を主原料とするシロキサン含有有機膜からなる第5の密着層と、
前記第5の密着層の上に形成された無機化合物からなる第3の無機絶縁膜と、
前記第1の密着層、前記第1の無機絶縁膜、前記第2の密着層、前記第1の有機絶縁膜、前記第3の密着層、前記第2の無機絶縁膜、前記第4の密着層、前記第2の有機絶縁膜、前記第5の密着層及び前記第3の無機絶縁膜からなる層間絶縁膜に形成された接続孔又は配線溝と、
前記接続孔又は配線溝の側壁に形成され、フッ素−炭素結合を含有する有機化合物及び有機シラン誘導体を主原料とするシロキサン含有フッ素化有機膜からなる第6の密着層からなるサイドウォールと、
前記接続孔又は配線溝の内部における前記サイドウォールで囲まれた部分に埋め込まれた金属膜からなるコンタクト又は金属配線とを備えていることを特徴とする半導体装置。
【請求項4】
半導体基板上に金属配線パターンを形成する工程と、
前記金属配線パターンの上を含む前記半導体基板上に、プラズマCVD法により、炭素を含有する有機化合物及び有機シラン誘導体を主原料とするシロキサン含有有機膜からなる第1の密着層を形成する工程と、
前記第1の密着層の上に、プラズマCVD法により、炭素を含有する有機化合物を主原料とする有機膜からなる有機絶縁膜を形成する工程と、
前記有機絶縁膜の上に、プラズマCVD法により、炭素を含有する有機化合物及び有機シラン誘導体を主原料とするシロキサン含有有機膜からなる第2の密着層を形成する工程と、
前記第1の密着層の上に無機化合物からなる無機絶縁膜を形成する工程とを備えていることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記第1の密着層を構成するシロキサン含有有機膜の原料となる有機化合物と、前記有機絶縁膜を構成する有機膜の原料なる有機化合物と、前記第2の密着層を構成するシロキサン含有有機膜の原料となる有機化合物とは、同種類の有機化合物であることを特徴とする請求項5に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記第1の密着層及び第2の密着層を構成するシロキサン含有フッ素化有機膜の原料となる有機シラン誘導体は、R1nSi(OR24-n(但し、nは1〜3の整数であり、R1 はアルキル基又はアリール基であり、R2 はアルキル基又はアリール基である。)の一般式で表される有機シラン誘導体であることを特徴とする請求項5に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
半導体基板上に、炭素を含有する有機化合物及び有機シラン誘導体を主原料とするシロキサン含有有機膜からなる第1の密着層を形成する工程と、
前記第1の密着層の上に無機化合物からなる第1の無機絶縁膜を形成する工程と、
前記第1の無機絶縁膜の上に、炭素を含有する有機化合物及び有機シラン誘導体を主原料とするシロキサン含有有機膜からなる第2の密着層を形成する工程と、
前記第2の密着層の上に、炭素を含有する有機化合物を主原料とする有機膜からなる第1の有機絶縁膜を形成する工程と、
前記第1の有機絶縁膜の上に、炭素を含有する有機化合物及び有機シラン誘導体を主原料とするシロキサン含有有機膜からなる第3の密着層を形成する工程と、
前記第3の密着層の上に無機化合物からなる第2の無機絶縁膜を形成する工程と、
前記第2の無機絶縁膜の上に、炭素を含有する有機化合物及び有機シラン誘導体を主原料とするシロキサン含有有機膜からなる第4の密着層を形成する工程と、
前記第4の密着層の上に炭素を含有する有機化合物を主原料とする有機膜からなる第2の有機絶縁膜を形成する工程と、
前記第2の有機絶縁膜の上に、炭素を含有する有機化合物及び有機シラン誘導体を主原料とするシロキサン含有有機膜からなる第5の密着層を形成する工程と、
前記第5の密着層の上に無機化合物からなる第3の無機絶縁膜を形成する工程と、
前記第1の密着層、前記第1の無機絶縁膜、前記第2の密着層、前記第1の有機絶縁膜、前記第3の密着層、前記第2の無機絶縁膜、前記第4の密着層、前記第2の有機絶縁膜、前記第5の密着層及び前記第3の無機絶縁膜からなる層間絶縁膜に形成された接続孔又は配線溝を形成する工程と、
前記接続孔又は配線溝の側壁に、炭素を含有する有機化合物及び有機シラン誘導体を主原料とするシロキサン含有有機膜からなる第6の密着層からなるサイドウォールを形成する工程と、
前記接続孔又は配線溝の内部における前記サイドウォールで囲まれた部分に金属膜を埋め込んで、該金属膜からなるコンタクト又は金属配線を形成する工程と備えていることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項8】
半導体基板上に順次堆積された、第1の密着層、有機絶縁膜及び第2の密着層からなる層間絶縁膜の形成方法であって、
半導体基板が保持されている処理室内に、炭素を含有する有機化合物を含む第1の原料ガス及び有機シラン誘導体を含む第2の原料ガスを導入した後、前記第1の原料ガスの導入量をほぼ一定に保つ一方、前記第2の原料ガスの導入量を減少させながら、前記第1の原料ガス及び第2の原料ガスからなるプラズマにより、前記半導体基板上にシロキサン含有有機膜からなる前記第1の密着層を形成する工程と、
前記処理室内に前記第1の原料ガスをその導入量をほぼ一定に保ちながら導入する一方、前記第2の原料ガスの導入を停止して、前記第1の原料ガスからなるプラズマにより、前記第1の密着層の上に炭素を含有する有機化合物からなる有機絶縁膜を形成する工程と、
前記処理室内に、前記第1の原料ガスをその導入量をほぼ一定に保ちながら導入すると共に、前記第2の原料ガスを再び導入し且つ前記第2の原料ガスの導入量を増加させながら、前記第1の原料ガス及び第2の原料ガスからなるプラズマにより、前記有機絶縁膜の上にシロキサン含有有機膜からなる前記第2の密着層を形成する工程とを備えていることを特徴とする層間絶縁膜の形成方法。
【請求項9】
半導体基板上に順次堆積された、第1の密着層、有機絶縁膜及び第2の密着層からなる層間絶縁膜の形成方法であって、
半導体基板が保持されている処理室内に、炭素を含有する有機化合物を含む第1の原料ガス及び有機シラン誘導体を含む第2の原料ガスを、それぞれの導入量をほぼ一定に保ちながら導入しながら、前記第1の原料ガス及び第2の原料ガスからなるプラズマにより、前記半導体基板上にシロキサン含有有機膜からなる前記第1の密着層を形成する工程と、
前記処理室内に前記第1の原料ガスをその導入量をほぼ一定に保ちながら導入する一方、前記第2の原料ガスの導入を停止して、前記第1の原料ガスからなるプラズマにより、前記第1の密着層の上に炭素を含有する有機化合物からなる有機絶縁膜を形成する工程と、
前記処理室内に、前記第1の原料ガスをその導入量をほぼ一定に保ちながら導入すると共に、前記第2の原料ガスを再び導入し且つ前記第2の原料ガスの導入量をほぼ一定に保ちながら、前記第1の原料ガス及び第2の原料ガスからなるプラズマにより、前記有機絶縁膜の上にシロキサン含有有機膜からなる前記第2の密着層を形成する工程とを備えていることを特徴とする層間絶縁膜の形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−88506(P2007−88506A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−337910(P2006−337910)
【出願日】平成18年12月15日(2006.12.15)
【分割の表示】特願平10−220175の分割
【原出願日】平成10年8月4日(1998.8.4)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】