説明

半導体装置およびその製造方法

【課題】 有機樹脂膜を特に厚膜化しなくても、Cu電極層の上面コーナ部における有機樹脂膜のカバレッジを良好とすることができる半導体装置およびその製造方法を提供する。
【解決手段】 Cu電極層を以下のように形成する。素子を有する半導体基板上にTEOS膜53と、2ndAl膜54と、P−SiN膜55とが形成された半導体基板を用意する。P−SiN膜55のうち、2ndAl膜54の上方部分における開口部55aに厚いCu電極層72を形成する。このとき、Cu電極層72の側面は逆テーパ形状である。その後、Cu電極層72に対して、45°のエッチングレートが早い、いわゆる不活性ガス逆スパッタを施す。これにより、Cu電極層2の側面上部2aを順テーパ形状とする。その後、Cu電極層2上に有機樹脂膜74を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置およびその製造方法に関するものであって、特に、デバイス上に形成された厚いCu電極を備える半導体装置およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、リレー等の大きな駆動電流(例えば10アンペア以上)が要求される半導体デバイスや、LDMOS等のパワーデバイスと、これらのデバイス上に形成された厚いCu電極とを備える半導体装置(ICチップ)がある。
【0003】
この装置は、例えば、LDMOS等を構成する素子(半導体基板内の不純物領域等)と、半導体基板の表面上に形成され、素子と電気的に接続された配線層と、半導体基板の最上部に形成され、配線層と電気的に接続された厚いCu電極層と、Cu電極層を覆う有機樹脂膜と、Cu電極層と外部端子とを接続するボンディングワイヤと、これらを封止するモールド樹脂とを備えている。
【0004】
ここで、Cu電極層は、実装に絡む(ワイヤーボンディング、半田接続等が施される)金属電極層であって、Cuにより構成されている金属電極層のことである。Cuは、その比抵抗が1.5〜2.0μmΩcmと低いことから、電極の低on抵抗化のために、その電極材料等としてCuが使われる。
【0005】
このCu電極層の厚さ(高さ)は、通常、1μm以下であるが、従来では、よりon抵抗を低下させるために、このCu電極層の厚さを、例えば、3um以上と厚くしているものもある。
【0006】
次に、この半導体装置の製造方法(主に、厚さが3μm以上の厚いCu電極層の形成方法)について説明する。図5、6にCu電極層の形成工程を示す。
【0007】
〔図5(a)に示す工程〕
まず、上記した素子および上記した配線層が形成された半導体基板を用意する。この半導体基板の最上部には、例えば、図に示すように、層間絶縁膜としてのTEOS(Tetra Ethyl OrthoSilicate)膜53、配線層としてのAl配線54と、素子用保護膜としてのP−SiN膜(プラズマ窒化膜)55とが順に成膜されている。そして、P−SiN膜55は、外部端子と電気的に接続するために、Al配線54の上方に位置する部分に開口部55aが形成されている。
【0008】
〔図5(b)に示す工程〕
続いて、P−SiN膜55上および開口部55a内に至って、バリア・シード層(Tiなどのバリアメタル層およびCuシード層)61を成膜する。このシード層は、後に、めっき法によりCu電極層を形成するためのものである。
【0009】
〔図5(c)に示す工程〕
続いて、バリア・シード層61上に、厚いポジホトレジスト71を成膜する。このホトレジスト71の膜厚は、例えば10μmである。そして、ホトリソグラフィにより、ホトレジスト71のうち、Al配線54の上方部分に、Cu電極層の形成時において型枠となる開口部71aを形成する。
【0010】
〔図5(d)に示す工程〕
続いて、電気めっき法により、ホトレジスト71の開口部71aの内部に、Cuを成膜する。このとき、成膜するCuの高さを、ホトレジスト71の上面を超えない高さとする。これにより、例えば、3〜10μmの厚いCu電極層72が形成される。
【0011】
〔図5(e)に示す工程〕
続いて、ホトレジスト71を剥離液により除去する。その後、ウェットエッチングにより、Cu電極層72から露出しているバリア・シード層61を除去する。これにより、Cu電極層72の下方にのみバリア・シード層61を残す。
【0012】
〔図6(a)に示す工程〕
続いて、Cu電極層72に対して、水素還元熱処理(以下では水素アニールと呼ぶ)を施す。これにより、製造工程中にCu電極層72の表面に形成された酸化膜73を除去する。Cu電極層72の表面に酸化膜73が存在している場合、後述の有機樹脂膜74との密着性が低下するためである。
【0013】
〔図6(b)に示す工程〕
続いて、Cu電極層72の表面上およびP―SiN膜55上に、Cu電極層間の絶縁性を確保するため、ポリイミド等の有機樹脂材料を塗布する。これにより、Cu電極層72の表面およびP―SiN膜55の上面を有機樹脂膜74で覆う。この有機樹脂膜74の膜厚73aは通常2〜3μmである。
【0014】
以上のようにして、厚いCu電極層72が半導体基板の最上部に形成される。その後、このCu電極層72に対して、外部端子とのワイヤーボンディングが施される。
【0015】
しかしながら、従来では以下の問題が発生するおそれがあった。すなわち、図5(c)に示す工程でのホトリソグラフィにおいて、レジスト71の露光特性限界から、開口部71aにおけるレジスト71の側面71bが順テーパー形状になる。したがって、レジスト71の開口部71aの内部に形成されたCu電極層72では、逆に、Cu電極層72の側面72aが逆テーパー形状となる。ここで、順テーパ形状とは、下(基板表面側)に向かうにつれて幅が徐々に広がる形状を意味し、逆テーパ形状とは、下に向かうにつれて幅が徐々に狭まる形状を意味する。
【0016】
このため、図6(b)に示す工程で、有機樹脂材料を塗布したとき、電極上面コーナー部近傍における有機樹脂膜74の膜厚74bが、他の部位の膜厚74aに比べて、薄い(カバレッジ不良)という問題が生じる。このような問題が生じるのは、有機樹脂材料の粘性が低いため、有機樹脂材料を塗布したときに、有機樹脂材料の表面ができるだけ低くなろうとするからである。
【0017】
この結果、この部分に生じる亀裂等により水分進入経路ができ、有機樹脂膜74の剥離や電極間短絡といった不具合が発生してしまう。このような問題は、Cu電極層72の膜厚(高さ)が大きいほど、顕著になる傾向である。
【0018】
そこで、従来では、このような問題を解決する方法として、図7に示すように、例えば、有機樹脂膜81の全体の膜厚81aを約5um以上と厚くする方法が採用されていた。図7に、従来の対策方法を示す。この方法は、有機樹脂膜81の全体の膜厚81aを厚くすることで、Cu電極上面コーナー部近傍における有機樹脂膜81の膜厚81bを厚くすることを図ったものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
しかし、この方法では、有機樹脂材料の粘度の関係から、有機樹脂膜の厚膜化に限界があり、有機樹脂膜を一定以上の厚さにできない。このため、Cu電極層の厚さ(高さ)によっては、上記した問題を解決できない場合がある。
【0020】
なお、有機樹脂材料の粘度を上げることで、有機樹脂膜の厚膜化を実現する方法も考えられる。しかし、この場合では、有機樹脂材料の粘度が高いことから、有機樹脂材料を塗布する工程において、微細パターンへの有機樹脂材料の埋め込みができず、空洞が生じるという問題が生じてしまうため、好ましくない。
【0021】
本発明は、上記点に鑑み、有機樹脂膜全体を特に厚膜化しなくても、Cu電極層の上面コーナ部における有機樹脂膜のカバレッジを良好とすることができる半導体装置およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、Cu電極層(2)の側面上部(2a)は、半導体基板の表面側に向かうにつれて、幅が大きくなる順テーパ形状となっていることを特徴としている。
【0023】
このように、Cu電極層の側面上部(上面コーナ部)を順テーパ形状とすることで、Cu電極層を覆う有機樹脂膜のうちのCu電極層上面コーナ部近傍での膜厚を、Cu電極層の側面が逆テーパ形状である場合と比較して、厚くすることができる。すなわち、本発明によれば、有機樹脂膜を特に厚膜化しなくても、Cu電極の上面コーナ部における有機樹脂膜のカバレッジを良好とすることができる。
【0024】
なお、ここでいう順テーパ形状とは、Cu電極層の断面形状において、側面上部に、約45°の直線状になっている部分が存在することをいい、側面上部がすべて直線状である場合だけでなく、その一部が丸みをおびている場合も含まれる。
する。
【0025】
請求項2に記載の発明では、素子(6)および素子(6)と電気的に接続された配線層(52、54)が形成された半導体基板を用意する工程と、半導体基板上であって、配線層(52、54)よりも上側に、配線層(52、54)と電気的に接続され、厚さが3μm以上であって、かつ、上面と側面を有する形状のCu電極層(2)を形成する工程と、Cu電極層(2)の側面の上部(2a)を、半導体基板の表面側に向かうにつれて幅が大きくなる順テーパ形状に加工する加工工程と、加工工程の後に、Cu電極層(2)の表面上に有機樹脂膜(74、3)を形成する工程とを有することを特徴としている。
【0026】
このように、Cu電極の側面上部(上面コーナ部)を順テーパ形状に加工することで、Cu電極層(2)の表面上に有機樹脂膜を形成したときに、Cu電極を覆う有機樹脂膜のうちのCu電極上面コーナ部近傍での膜厚を、Cu電極の側面が逆テーパ形状である場合と比較して、厚くすることができる。
【0027】
なわち、本発明によれば、有機樹脂膜を特に厚膜化しなくても、Cu電極の上面コーナ部における有機樹脂膜のカバレッジを良好とすることができる。なお、本発明により、請求項1に記載の半導体装置を製造することができる。
【0028】
また、請求項3に示すように、例えば、加工工程では、Cu電極層(2)の側面の上部(2a)に対してイオン化された不活性ガスを用いたエッチングを施すことにより、Cu電極層(2)の側面の上部(2a)を、順テーパ形状に加工することができる。この請求項3に記載されているエッチングは、例えば、いわゆる不活性ガス逆スパッタもしくはスパッタエッチングと呼ばれるものである。
【0029】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
(第1実施形態)
図1に、本発明の第1実施形態における半導体装置の断面図を示す。本実施形態では、素子としてのLDMOS、CMOS、バイポーラトランジスタを有する半導体装置を例として説明する。
【0031】
図1に示す半導体装置は、パワーデバイス1と、パワーデバイス1上の厚いCu電極層2と、Cu電極層2を覆う有機樹脂膜3と、ボンディング用ワイヤ4と、これらを封止するモールド樹脂5とを備えている。なお、図1では、Cu電極層2の形状を簡略化して示している。
【0032】
ここで、パワーデバイス1とは、本明細書では、半導体基板に形成されている素子構造部6と、半導体基板上に形成された配線構造部7の両方を含む構造部を意味する。この素子構造部6が本発明の素子に相当する。
【0033】
まず、素子構造部6について説明する。素子構造部6が形成されている半導体基板としては、SOI基板が用いられており、Si基板11と、埋め込み酸化膜12と、半導体層13とから構成されている。半導体層13はN型層14、N型層15を有している。半導体層13には、トレンチ酸化膜16が形成されている。埋め込み酸化膜12とトレンチ酸化膜16とにより、LDMOS、CMOS、バイポーラトランジスタという素子が分離されている。
【0034】
LDMOSは、半導体層13(N型層15)の表層にそれぞれ位置するN型ドレイン領域17、P型チャネル領域18、N型ソース領域19とから構成されている。N型ドレイン領域17の表層にはN型コンタクト層20が形成されており、P型チャネル領域18の表層にはP型コンタクト層21が形成されている。また、N型ドレイン領域17とP型チャネル領域18は、いわゆるLOCOS酸化膜22により、分離されている。また、P型チャネル領域18上には、ゲート絶縁膜23を介して、ゲート電極24が配置されている。
【0035】
CMOSは、半導体層13(N型層15)中のN型ウェル層31と、N型ウェル層31の表層のP型層32と、P型層32の表層のN型ソース領域33およびN型ドレイン領域34とから構成されている。また、P型層32のうち、N型ソース領域33とN型ドレイン領域34の間の領域上には、ゲート絶縁膜35を介して、ゲート電極36が配置されている。
【0036】
バイポーラトランジスタは、半導体層13に形成され、N型層14と接続されているN型コレクタ領域41と、半導体層13(N型層15)の表層のP型ベース領域42と、P型ベース領域42の表層のN型エミッタ層43およびP型コンタクト層44とから構成されている。
【0037】
次に、配線構造部7は、半導体層13上にそれぞれ順に形成されているBPSG膜51と、1stAl膜52と、TEOS膜53と、2ndAl膜54と、パッシベーション膜としてのP−SiN膜55とを有している。1stAl膜52、2ndAl膜54は、LDMOS、CMOS、バイポーラトランジスタ等の素子用の電源線やグラウンド線あるいは素子を電気的に接続する配線であり、本発明の配線層に相当する。
【0038】
図2に、図1中の領域Aの拡大図を示す。なお、図2では、図1中に示されているCu電極層2上のAl系膜62とボンディング用ワイヤ4とを省略している。
【0039】
Cu電極層2は、半導体チップの最上部に配置されている。具体的には、図1、2に示すように、Cu電極層2は、P−SiN膜55のうち、2ndAl膜54の上方に形成された開口部55a内に配置されている。Cu電極層2は、バリア・シード層(バリアメタル層およびシード層)61を介して、2ndAl膜54と電気的に接続されている。バリアメタル層は例えばTiで構成され、シード層はCuで構成されている。
【0040】
Cu電極層2は、図2に示すように、上面と側面を有し、側面のうち、側面上部(上面コーナ部)2aが順テーパ形状であり、側面下部2bが逆テーパ形状である。ここでいう側面上部2aが順テーパ形状とは、図2に示すように、Cu電極層2の断面を見たときに、Cu電極層2の図中左右方向の幅が、下側に向かうにつれて、徐々に大きくなっている形状をいう。すなわち、側面上部2aは、半導体基板表面に向けて末広がる形状となっている。
【0041】
また、Cu電極層2の側面上部2aは、図2に示すように、Cu電極層2の断面を見たときに、約45°の直線状になっている(側面上部2aは平面である)。なお、Cu電極層2の側面上部2aがすべて直線でなく、その両端が丸みをおびている場合もある。
【0042】
Cu電極層2は、厚さが、例えば、3〜10μmである。Cu電極層2の厚さを10μm以上とすることもできる。
【0043】
なお、Cu電極層2は、後述するようにAl系膜62を介してボンディング用ワイヤ4と直接接続されている部分2eと、直接接続されていない部分(例えば、図1中の中央のCMOS上部分)2fとを有している。
【0044】
有機樹脂膜3は、図1に示すように、Cu電極層2およびCu電極層2から露出しているP−SiN膜55の表面上に至って、Cu電極層2を直接覆うように、配置されている。有機樹脂膜3は、少なくともCu電極層2の上面コーナ部(側面上部)2aおよび側面下部2bを覆っている。
【0045】
有機樹脂膜3は、隣接するCu電極層2の間の絶縁性を確保したり、Cu電極層2を保護したり、モールド樹脂5とP−SiN膜55との間の応力を緩和したりするためのものである。有機樹脂膜3としては、例えば、ポリイミド膜が用いられる。有機樹脂膜3のP−SiN膜55上での膜厚3aは、例えば、2〜3μmであり、Cu電極層2の側面上部2a上での膜厚3bは、例えば、1〜2μmである。
【0046】
そして、図1、2に示すように、有機樹脂膜3のうち、一部のCu電極層2の上方に位置する部分が開口されている。その開口部3c内には、図1に示すように、Al膜やAl合金膜等のAl系膜62が配置されている。Al系膜62は、Cu電極層2と電気的に接続されている。
【0047】
ボンディング用ワイヤ4は、図1に示すように、Al系膜62と図示しない外部端子とを電気的に接続しており、Auで構成されている。モールド樹脂5は、図1に示すように、有機樹脂膜3の上面および有機樹脂膜3の開口部3c内に配置されている。
【0048】
次に、このような構成の半導体装置の製造方法について説明する。図3(a)、(b)に本実施形態における半導体装置の製造工程の一部を示す。本実施形態の製造方法は、上記した従来の図5(a)〜(e)、図6(a)、(b)に示す工程に対して、図6(a)に示す工程を、図3(a)に示す工程に変更したものである。
【0049】
すなわち、図5(a)に示す工程で、上記した素子構造部6と、上記した配線構造部7が形成された半導体基板を用意する。この半導体基板はウエハ状態である。具体的には、この半導体基板の最上部には、図に示すように、配線構造部7中のTEOS膜53と、配線層としての2ndAl膜54と、P−SiN膜55とが形成されている。P−SiN膜55には、2ndAl膜54の上方部分に開口部55aが形成されている。
【0050】
続いて、図5(b)、(c)、(d)、(e)に示す工程で、半導体基板上であって、配線構造部7の上側に、厚いCu電極層72を形成する。Cu電極層72の厚さは例えば、3〜10μmとする。このCu電極層72は、P−SiN膜55の開口部55aに形成されており、バリア・シード層61を介して、2ndAl膜54と電気的に接続されている。また、この段階では、Cu電極層72の側面は、上記した従来技術と同様に、逆テーパ形状となっている。そして、図3(a)、(b)に示す工程を順に行う。
【0051】
〔図3(a)に示す工程〕
この工程では、Cu電極層72の側面上部を、半導体基板の表面(図中下方向)に向かうにつれて、幅が大きくなる順テーパ形状に加工する。具体的には、Cu電極層72に対して、いわゆる不活性ガス逆スパッタ(もしくはスパッタエッチング)を行う。
【0052】
ここで、図4にいわゆる逆スパッタの原理を示す。いわゆる逆スパッタとは、通常のスパッタリング法におけるターゲット側の電極91と基板92側の電極93とに印加する電圧の大きさを逆にして、スパッタリングを行うことをいう。これにより、高電圧印加でイオン化された不活性ガスを、ターゲットに衝突させるのではなく、直接、基板92に衝突させる。
【0053】
不活性ガスとしては、例えば、Ar(アルゴン)ガスを用いることができる。また、他の条件は、例えば、温度;200〜300℃、Arガス圧;7sccm、Power;0.5〜1.5kwとする。
【0054】
このような高電圧化でイオン化されたArガスによるエッチングでは、45°方向のエッチングレートが早いという性質がある(45°方向の指向性がある)。したがって、Cu電極層72に対して、いわゆる逆スパッタを行うことにより、Cu電極層72の上端部を選択的にエッチングすることができる。
【0055】
これにより、側面下部2bは逆テーパ形状であるが、側面上部2aが順テーパ形状であるCu電極層2が形成される。また、Cu電極層の表面全域も、側面上部ほどではないが、エッチングされるので、Cu電極層の表面上の酸化膜73が除去される。
【0056】
〔図3(b)に示す工程〕
この工程では、図6(b)に示す工程と同様に、有機樹脂材料をCu電極層2の表面上からCu電極層2から露出しているP−SiN膜53上に至って塗布する。有機樹脂材料としては、ポリイミドの原料を用いる。これにより、有機樹脂膜74を形成する。このとき、有機樹脂膜74の膜厚74aを従来と同様に、2〜3μmとする。これにより、Cu電極層2の側面上部2a上での膜厚3bが、例えば、1〜2μm程度となる。なお、この有機樹脂膜74は、この段階では、ポリイミドではなく、後述するキュア処理により、ポリイミド膜3となる。
【0057】
その後、図示しないが、有機樹脂膜74の表面上にホトレジストを成膜し、ホトリソグラフィおよびエッチングにより、有機樹脂膜74をパターニングする。これにより、図1に示すように、有機樹脂膜74(3)のうち、Cu電極層2の上方に開口部3cを形成する。
【0058】
続いて、図1に示すように、その開口部3cにボンディングパッドとしてのAl系膜62を形成する。続いて、有機樹脂膜74に対して350℃程度のキュア処理を施す。これにより、有機樹脂膜74がイミド化して、ポリイミド膜3が形成される。
【0059】
その後、ダイシング工程、Auによるワイヤーボンディング工程、モールド樹脂による封止工程を経ることで、図1に示す半導体装置が製造される。
【0060】
次に、本実施形態の特徴を説明する。
【0061】
(1)本実施形態では、図3(a)に示す工程において、Cu電極層72に対していわゆる逆スパッタを施している。いわゆる逆スパッタは、45°のエッチングレートが早いという指向性がある。本実施形態では、この指向性を活かして、Cu電極層の上端部の面取りを行っている。この結果、Cu電極層2の側面上部2aは、順テーパ形状となる。
【0062】
これにより、図3(b)に示す工程において、Cu電極層2上に有機樹脂膜74を形成したときに、Cu電極層2を覆う有機樹脂膜74、3のうちのCu電極層2の上面コーナ部(側面上部)2a近傍での膜厚74b、3bを、上記背景技術で説明したCu電極の側面全体が逆テーパ形状である場合と比較して、厚くすることができる。すなわち、本実施形態によれば、有機樹脂膜74、3を特に厚膜化しなくても、Cu電極層2の上面コーナ部における有機樹脂膜74、3のカバレッジを良好とすることができる。
【0063】
(2)上記した背景技術の欄で説明したように、従来では、図6(a)に示す水素アニール工程を施すことで、酸化膜73を除去していた。したがって、単に、Cu電極層の上端部の面取りを施した後、水素アニールを施す方法も考えられる。
【0064】
これに対して、本実施形態では、図3(a)に示す工程において、いわゆる逆スパッタにより、Cu電極層72の表面上にある酸化膜73を除去することもできる。したがって、本実施形態によれば、図3(a)に示す工程で、Cu電極層2の上面コーナ部2aの面取りと、Cu電極層表面の酸化膜73の除去とを同時に行うことができる。
【0065】
これにより、場合をCu電極層2の面取りとは、別に、Cu電極層表面の酸化膜73を除去する工程を施す場合と比較して、製造工程数を減少させることができる。この結果、工程コストを低くすることができる。
【0066】
(他の実施形態)
第1実施形態では、LDMOS、CMOS、バイポーラトランジスタを有する半導体装置を例として説明したが、これに限らず、他の大きな駆動電流(例えば10アンペア以上)が要求される半導体デバイスや、他のパワーデバイスを備える半導体装置においても、本発明を適用することができる。
【0067】
また、第1実施形態では、素子として、LDMOS、CMOS、バイポーラトランジスタ等の半導体基板中に形成された素子を用いる場合を例として説明したが、素子は半導体基板中に形成されたものに限らず、素子として、受動素子等の半導体基板表面上に形成された素子を用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の第1実施形態における半導体装置の断面図である。
【図2】図1中の領域Aの拡大図である。
【図3】第1実施形態における半導体装置の製造工程の一部を示す断面図である。
【図4】図3(a)の製造工程で実行するエッチングの原理を説明するための図である。
【図5】従来および第1実施形態で実行する半導体装置の製造工程の一部を示す断面図である。
【図6】従来における図5に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図7】従来における課題の対策方法を説明するための断面図である。
【符号の説明】
【0069】
1…パワーデバイス、2、72…Cu電極層、
2a…側面上部(上面コーナ部)、2b…側面底部、
3、74、81…有機樹脂膜、4…ボンディング用ワイヤ、5…モールド樹脂、
6…素子構造部、7…配線構造部、
53…TEOS膜、54…2ndAl膜、55…P−SiN膜、
61…バリア・シード層、73…酸化膜。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板に形成された素子(6)と、
前記半導体基板の主表面上に形成され、前記素子(6)と電気的に接続された配線層(52、54)と、
前記配線層(52、54)よりも上側に形成され、前記配線層(52、54)と電気的に接続された厚さが3μm以上であるCu電極層(2)と、
前記Cu電極層(2)を覆う有機樹脂膜(3)とを有する半導体装置において、
前記Cu電極層(2)の側面上部(2a)は、前記半導体基板の表面側に向かうにつれて、幅が大きくなる順テーパ形状となっていることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
素子(6)および前記素子(6)と電気的に接続された配線層(52、54)が形成された半導体基板を用意する工程と、
前記半導体基板上であって、前記配線層(52、54)よりも上側に、前記配線層(52、54)と電気的に接続され、厚さが3μm以上であって、かつ、上面と側面を有する形状のCu電極層(2)を形成する工程と、
前記Cu電極層(2)の前記側面の上部(2a)を、前記半導体基板の表面側に向かうにつれて幅が大きくなる順テーパ形状に加工する加工工程と、
前記加工工程の後に、前記Cu電極層(2)の表面上に有機樹脂膜(74、3)を形成する工程とを有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記加工工程では、前記Cu電極層(2)の側面の上部(2a)に対してイオン化された不活性ガスを用いたエッチングを施すことにより、前記Cu電極層(2)の側面の上部(2a)を、前記順テーパ形状に加工することを特徴とする請求項2に記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−108235(P2006−108235A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−290134(P2004−290134)
【出願日】平成16年10月1日(2004.10.1)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】