説明

半導体装置の保管方法

【課題】 余分に材料を使用することなくコストを抑え、工程を増やさず、環境にも影響の少ない状態で、更にアルミ電極の腐食や変色をさせることなく長期保管することができる半導体装置の保管方法を提供する。
【解決手段】 半導体装置10に形成されたアルミ電極側の面に、紫外線を照射することで硬化する保護テープ14を貼り付ける貼付工程と、半導体装置10の裏面を研磨する研磨工程と、半導体装置10に保護テープ14を貼り付けた状態で保管する保管工程と、保護テープ14を剥離する紫外線照射工程とを行う。これにより、保管中の、アルミ電極と半導体装置10の周囲に滞留する大気中の湿気および有害ガスとの接触を防ぐことができ、アルミ電極の腐食や変色を抑制することが可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の保管方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の半導体装置であるウエハは、配線や電極などの製造工程を終了したあと、すぐに出荷する見込みがなく長期間保管するとき、ウエハを保管容器に入れて保管していた。保管容器に入れる理由は、ウエハ上に形成された、例えばアルミ電極と大気中の湿気および有害ガスとが反応して、アルミ電極に腐蝕が発生するのを防止するためである。ウエハの保管方法は、まず、ウエハを保管容器に収納し、次に、保管容器全体をガスバリア性の高い柔軟な防湿袋の中に入れ、次に、防湿袋の中に脱水材を入れたり、防湿袋の中を脱気したりしてアルミ電極が腐蝕するのを防いでいた。
【0003】
しかしながら、防湿袋の中を脱気しても保管容器の中の湿気および有害ガスが十分に取りきれず、ウエハに形成されたアルミ電極と湿気および有害ガスとが反応して腐食や変色する可能性があった。そこで、電極が腐食や変色することを解決するため、アルミ電極が形成されたウエハの表面に、スピンコート法によって保護膜を形成し、アルミ電極と大気中の湿気および有害ガスとが触れないようにする方法が開示されている(特許文献1)。
【0004】
【特許文献1】特開昭59−121940号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のウエハの保管方法では、スピンコート法によって保護膜を形成するので、専用の装置を用意する必要があり、更に、保護膜を形成する工程、保護膜を剥離する工程が必要になり、費用や時間がかかってしまうという問題があった。また、スピンコート法は、塗布する材料の利用効率が低くムダにしてしまう割合が多い、更に、スピンコート時に保護膜として利用されなかった材料が廃棄されると、環境に好ましくないなどの問題もあった。
【0006】
本発明は、このような従来の技術の有する未解決な課題に着目してなされたものであって、余分に材料を使用せずにコストを抑え、工程を増やさず、環境にも影響の少ない状態で、更にアルミ電極の腐食や変色をさせることなく長期保管することができる半導体装置の保管方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題を解決するために、本発明に係る半導体装置の保管方法は、アルミ電極が形成された半導体装置の表面に保護テープを貼り付ける貼付工程と、前記半導体装置の裏面を研磨する研磨工程と、前記半導体装置に前記保護テープを貼った状態で出荷するまで保管する保管工程とを有する。
【0008】
この構成によれば、裏面研磨のときに半導体装置の表面に貼った保護テープを、裏面研磨後も剥がさずに保管容器に保管するので、半導体装置に形成されたアルミ電極と大気中の湿気および有害ガスとを触れないようにすることができる。よって、アルミ電極の腐食や変色を防止することが可能になる。また、製造工程を増やさないのでコストを抑えて保管することが可能になる。
【0009】
本発明に係る半導体装置の保管方法では、前記保管工程のあとであって出荷する前に、前記半導体装置に貼った前記保護テープを紫外線(UV)照射によって取り除く紫外線照射工程を有することが望ましい。
【0010】
この構成によれば、UV照射によって半導体装置に貼った保護テープを取り除くので、保護テープの粘着層が硬化し、半導体装置上に粘着層を残さないようにすることができる。よって、ゴミの付着を防止することが可能になる。
【0011】
本発明に係る半導体装置の保管方法では、前記保管工程は、前記半導体装置を収納した保管容器を、防湿性を有する袋に入れて脱気処理していることが望ましい。
【0012】
この構成によれば、保護テープに加えて、防湿性を有する袋に入れて脱気処理をしているので、半導体装置に形成されたアルミ電極と空気中の湿気および有害ガスとの接触を更に防止することが可能になる。
【0013】
本発明に係る半導体装置の保管方法では、前記保管工程は、前記研磨工程終了後から出荷までの期間が、所定期間以内であれば前記保護テープを取り除き、前記所定期間以上であれば前記保護テープを貼ったまま保管することが望ましい。
【0014】
この構成によれば、出荷までの期間によって保護テープを取り除いたり残したりするので、所定期間経過したものであっても、半導体装置に形成されたアルミ電極と空気中の湿気および有害ガスとの接触を防止することができ、腐食や変色を抑制することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明に係る半導体装置の保管方法の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本実施形態の半導体装置を模式的に示す斜視図である。以下、本実施形態の半導体装置について、図1を参照しながら説明する。
【0016】
図1に示すように、半導体装置10は、例えば、シリコン基板11上に複数の製品チップ12が並んで形成されている。製品チップ12は、シリコン基板11の有効チップ領域(図示せず)に形成されている。この有効チップ領域は、良品の製品チップ12が取れる範囲である。製品チップ12には、製品チップ12内部に構成される半導体素子(図示せず)と外部とを電気的に接続するために、複数の電極(パッド)13が形成されている。電極13は、例えば、アルミで構成されている。以下、電極をアルミ電極13という。
【0017】
図2、図3は、半導体装置を保管する保管方法を工程別に示す模式断面図である。以下、半導体装置を保管する工程を、図2、図3を参照しながら説明する。
図2(a)は、製造プロセスを終了した半導体装置(図1参照)を示している。半導体装置10は、上述したように、複数の製品チップ12を有し、それぞれに複数のアルミ電極13(図1参照)が形成されている。アルミ電極13の形成方法は、まず、公知の方法により、シリコン基板11上に、層間絶縁膜(図示せず)を堆積し、この層間絶縁膜上にスパッタ法によりアルミ合金膜(図示せず)を堆積する。次に、このアルミ合金膜をパターニングすることにより、層間絶縁膜上には、アルミ電極13が形成される。次に、アルミ電極13上にパッシベーション膜(図示せず)を堆積し、このパッシベーション膜をエッチングする。これにより、パッシベーション膜にアルミ電極13の上に位置する開口部が形成され、この開口部によりアルミ電極13と外部とが電気的に接続可能になっている。
【0018】
図2(b)は、半導体装置の表面に保護テープを貼っている状態を示している。本実施形態では、半導体装置10に形成されたアルミ電極13が露出している側の面を表面10aとし、対向する面を裏面10bとする。保護テープ14は、次工程で行う半導体装置10の裏面10bを研磨するとき、半導体装置10の表面10aに形成されたアルミ電極13や回路(図示せず)等を保護するために貼られている。
保護テープ14は、例えば、紫外線(UV(Ultra Violet))照射硬化型テープであり、基材フィルム(図示せず)と、粘着層(図示せず)とから構成されている。基材フィルムの材質は、例えば、ポリオレフィンで構成されており、アルミ電極13を湿気および有害ガスから保護できる湿気非透過性を有する。基材フィルムの厚みは、例えば、100μmで構成されている。粘着層は、例えば、アクリルであり、半導体装置10とアルミ電極13との段差が包み込める吸収性を有する。粘着層の厚みは、例えば20μmである。この粘着層により、半導体装置10とアルミ電極13とを、隙間なく密着できるようになっている。
【0019】
図2(c)は、半導体装置の裏面を研磨している状態を示している。半導体装置10は、例えば、機械研磨装置(以下、グラインダ15という)によって研磨される。グラインダ15は、半導体装置10(図2(c)において、保護テープ14側)を真空によって吸着する真空吸着盤16と、半導体装置10を研磨するスピンドル17とを有する。真空吸着盤16には、真空吸着によって半導体装置10を保持する保持機構(図示せず)と、研磨するときに半導体装置10を回転させる回転機構(図示せず)とが備えられている。スピンドル17は、研磨する砥石が備えられており、この砥石が回転機構によって回転するようになっている。つまり、スピンドル17の回転と、半導体装置10の回転とが合わさることによって、半導体装置10の裏面10bを研磨するようになっている。
【0020】
また、グラインダ15は、半導体装置10の裏面10bを研磨する際に生じる研削熱の除去、および、発生するシリコン屑の洗い流しのため、純水を半導体装置10とスピンドル17にかけながら研磨処理を行っている。半導体装置10の表面10aに保護テープ14を貼ったことにより、これらの水からアルミ電極13等を保護することが可能になっている。
【0021】
図2(d)は、半導体装置を洗浄している状態を示している。半導体装置10の洗浄は、ノズル18からかけられた純水19によって行われる。半導体装置10は、洗浄のあと乾燥が行われる。
【0022】
図3(e)は、半導体装置を保管容器に収納した状態を示している。保管容器21は、本体22と蓋23とを有し、例えばポリプロピレンで構成されている。本体22には、基板ガイド部24が形成されており、基板ガイド部24の溝24aに沿って半導体装置10が立てかけられて収納されている。収納された半導体装置10には、保護テープ14が貼られたままの状態になっている。蓋23は、本体22に半導体装置10が収納し終わったあとに本体22に被せされる。
【0023】
図3(f)は、半導体装置が収納された保管容器を防湿性を有する防湿袋に入れた状態を示している。防湿袋25は、防湿性に優れた例えばアルミラミネートで構成されている。半導体装置10を収納した保管容器21を防湿袋25に入れ、防湿袋25内の脱気26を行っている。防湿袋25内の脱気は、例えば、ガス置換式の包装機(図示せず)が用いられる。また、防湿袋25内を不活性ガスとしての窒素(N2)ガスに置換したあと、防湿袋25の開口を加熱溶着などで密封する方法が知られている。
【0024】
図3(g)は、半導体装置に貼り付けた保護テープに紫外線(UV)を照射している状態を示している。紫外線27の照射は、例えば、紫外線照射装置(図示せず)を用いて行われる。
【0025】
図3(h)は、半導体装置から保護テープを剥離した状態を示している。保護テープ14は、紫外線27が照射されて粘着層が硬化することにより、半導体装置10から保護テープ14が剥離しやすくなっている。
【0026】
図4は、半導体装置の保管方法を工程順に示す工程図である。以下、半導体装置の保管方法を、図4及び図2,3を参照しながら説明する。図4に示すように、工程P1では、半導体装置10にアルミ電極13等を形成し、製造プロセスを終了する(図2(a)参照)。製造プロセス終了後、例えば、電気特性試験を行い、製品チップ12の品質評価を行っている。
【0027】
工程P2では、半導体装置10の表面に保護テープを貼り付ける(図2(b)参照)。このとき、保護テープ14のうち半導体装置10の端面10c(図2(b)参照)からはみ出た部分は、カッターなどを用いて切断してもよい。保護テープ14を貼ることにより、半導体装置10に形成されたアルミ電極13や回路を保護することが可能になる。
【0028】
工程P3では、半導体装置10の裏面10bを研磨する(図2(c)参照)。まず、半導体装置10の保護テープ14側(半導体装置10の表面10a側)の面を、グラインダ15に備えられた真空吸着盤16の吸着面に真空吸着することによって半導体装置10を保持する。次に、半導体装置10とスピンドル17とを回転し、スピンドル17を半導体装置10の裏面10bに押圧しながら研磨を行う。そして、所定時間研磨を行い、半導体装置10を任意の厚みに形成する。
【0029】
工程P4では、半導体装置10を洗浄する(図2(d)参照)。半導体装置10を純水19で洗浄することにより、半導体装置10の裏面10bを研磨したときに付着した研磨屑を除去することが可能になる。
【0030】
工程P5では、半導体装置10を乾燥する。前述した工程P4で洗浄した半導体装置10を、例えば、スピン運動させて純水19を弾き飛ばし、乾燥を行う。
【0031】
工程P6では、半導体装置10を保管容器21に収納する(図3(e)参照)。この保管容器21に収納する半導体装置10は、長期間、出荷の予定がないものである。まず、長期間保管する予定の半導体装置10を、保管容器21の容器本体22に形成された基板ガイド部24に沿って挿入する。このときの半導体装置10は、保護テープ14が貼られたままの状態である。容器本体22に半導体装置10を収納し終わったあと、容器本体22に蓋23を被せて遮断する。
【0032】
工程P7では、保管容器の中の脱気を行う。まず、半導体装置10を収納した保管容器21を、防湿袋25に入れる(図3(f)参照)。次に、脱気装置(図示せず)によって、防湿袋25の中の脱気26を行う。また、置換装置(図示せず)によって、防湿袋25の中の酸素を不活性ガスに置換するようにしてもよい。このとき、保管容器21の中まで十分に脱気を行うことは難しいため、わずかな酸素が防湿袋25の中に残っている状態である。しかしながら、半導体装置10のアルミ電極13が形成された表面10aには、保護テープ14が貼り付けられているため、アルミ電極13と、防湿袋25の中に残った空気中の酸素との接触を抑制することができる。よって、アルミ電極13は、空気中に含まれる湿気および有害ガスとの接触がない状態を長期間維持することが可能になる。
【0033】
工程P8では、半導体装置に貼った保護テープに紫外線(UV)を照射する(図3(g)参照)。まず、保管容器21に保管されている半導体装置10の出荷日が決定したとする。これに合わせて、半導体装置10に貼った保護テープ14を除去する準備を行う。保管容器21から半導体装置10を取り出し、保護テープ14に紫外線27を照射する。これにより、保護テープ14の粘着層が硬化する。
【0034】
工程P9では、半導体装置から保護テープを剥離する(図3(h)参照)。保護テープ14は、粘着層が硬化したことにより、半導体装置10からの剥離が容易になっている。
【0035】
工程P10では、半導体装置を出荷する。このときの半導体装置10に形成されたアルミ電極13は、長期間、大気中に含まれている湿気および有害ガスとの接触がなかったので、腐食や変色のない状態になっている。
【0036】
以上詳述したように、本実施形態によれば、以下に示す効果が得られる。
(1)本実施形態によれば、半導体装置10に形成されたアルミ電極13側の面(表面10a)に保護テープ14を貼り保管容器21に保管するので、アルミ電極13と、保管容器21の中に滞留する湿気および有害ガスとが接触しない状態を長期間、維持することが可能になる。よって、アルミ電極13の腐食や変色を抑制することができる。更に、半導体装置10の裏面10bを研磨するときに貼り付けた保護テープをそのままの状態で保管するので、製造工程を増やすことなく、従来のスピンコートで利用されない材料を廃棄することがないので、材料コストを抑え、環境にも影響の少ない製造工程で半導体装置10を保管することができる。
(2)本実施形態によれば、半導体装置10に貼り付けた保護テープ14は、紫外線27を照射することによって粘着層が硬化するので、半導体装置10から剥離することが可能になる。よって、半導体装置10を汚したり、負荷を与えたりすることなく、綺麗な状態を維持することができ、これにより、洗浄するなどの工程が必要なく、コストを抑えることができる。
(3)本実施形態によれば、半導体装置10を保管容器21に収納し、更に、防湿性を有する防湿袋25に入れて脱気26をしているので、半導体装置10同士の接触がなく、半導体装置10に形成された回路などを破壊することなく、保管することができる。
【0037】
なお、本実施形態は上記に限定されず、以下のような形態で実施することもできる。
(変形例1)前記実施形態では、半導体装置10の表面10aを保護する保護テープ14は、UVテープを使用した。これを、少なくとも基材フィルムに粘着層が備えられた保護テープであれば、他の構成の保護テープを使用するようにしてもよい。これによれば、前記実施形態と同様に、半導体装置10に形成されたアルミ電極13と、大気中の湿気および有害ガスとの接触を防止することが可能になり、アルミ電極13の腐食や変色を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】一実施形態である、半導体装置を模式的に示す斜視図。
【図2】(a)〜(d)は、半導体装置の保管方法を模式的に示す工程断面図。
【図3】(e)〜(h)は、半導体装置の保管方法を模式的に示す工程断面図。
【図4】半導体装置の保管方法を工程順に示す工程図。
【符号の説明】
【0039】
10…半導体装置、11…シリコン基板、12…製品チップ、13…アルミ電極、14…保護テープ、15…グラインダ、16…真空吸着盤、17…スピンドル、18…ノズル、19…純水、21…保管容器、22…容器本体、23…蓋、24…基板ガイド部、25…防湿袋、26…脱気、27…紫外線(UV)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミ電極が形成された半導体装置の表面に保護テープを貼り付ける貼付工程と、
前記半導体装置の裏面を研磨する研磨工程と、
前記半導体装置に前記保護テープを貼った状態で出荷するまで保管する保管工程と
を有する半導体装置の保管方法。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置の保管方法であって、
前記保管工程のあとであって出荷する前に、前記半導体装置に貼った前記保護テープを紫外線(UV)照射によって取り除く紫外線照射工程を有することを特徴とする半導体装置の保管方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の半導体装置の保管方法であって、
前記保管工程は、前記半導体装置を収納した保管容器を、防湿性を有する袋に入れて脱気処理していることを特徴とする半導体装置の保管方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の半導体装置の保管方法であって、
前記保管工程は、前記研磨工程終了後から出荷までの期間が、所定期間以内であれば前記保護テープを取り除き、前記所定期間以上であれば前記保護テープを貼ったまま保管することを特徴とする半導体装置の保管方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−24769(P2006−24769A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−201885(P2004−201885)
【出願日】平成16年7月8日(2004.7.8)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】