説明

半導体装置の製造方法および半導体装置の製造装置

【課題】アルカリ現像液に含まれているレジスト成分を起因とする、半導体ウェハのパターン欠陥を抑制する。
【解決手段】図1に示すように、半導体ウェハ上の感光膜を液浸露光する(ステップS10)。なお、感光膜上には、トップコート膜が設けられていない。次に、半導体ウェハをアルカリ性の現像液に浸す(ステップS20)。次に、アルカリ性の現像液に浸した半導体ウェハを超純水によって洗浄する(ステップS30)。そして、二酸化炭素を含んだ水を用い、半導体ウェハを洗浄する(ステップS40)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法および半導体装置の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
回路パターンの微細化に伴い、ArFリソグラフィ(波長:193nm)では、所望の細さのパターンの形成が困難になってきている。近年では、ArF露光技術を延命するため、投影レンズと半導体ウェハ間の空間を液体で満たすことによって屈折率を変化させ、波長を134nmまで短波長化する液浸リソグラフィ技術が実用化されている。
【0003】
液浸リソグラフィでは、半導体ウェハと液浸水が直接接触している。このため、液浸リソグラフィを行う際、液浸露光用保護膜(トップコート)が使用されている。
【0004】
一方、露光機のスキャンスピードの向上や、コスト削減等を目的として、トップコートを使用する必要が無い高撥水性のトップコートレスレジストの適用評価が行われている。トップコートレスレジストは、現像前後での表面接触角が高い。したがって、トップコートレスレジストを使用する場合、現像欠陥対策として、現像後におけるリンスの高速回転化やリンスの高流量化が必要となる。
【0005】
特許文献1には、液浸露光する方法の一例が開示されている。具体的には、半導体ウェハ上に反射防止膜、レジスト、およびトップコート膜の塗布、そしてエッジ処理を行っている。次に、液浸露光を行う前に、水洗処理を行うことで浸水の影響を緩和することによって、液浸露光を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−026412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者が検討した結果、以下の問題があることが判明した。リンスの高速回転化や高流量化を行うことによって、欠陥を減らすことは可能である。しかし、リンスの高回転や高流量化によって、基板は大きく帯電する。基板が帯電すると、ゲート酸化膜の劣化や、帯電によるパーティクルの吸着に起因して歩留まり低下が起こる可能性がある。
【0008】
帯電を抑制する手法の一つとして、現像リンス(水)に炭酸(二酸化炭素)を溶解させることで水の比抵抗値を低減させる手法がある。二酸化炭素リンスを行うことによって帯電量は大幅に低減可能である。しかし、この技術では、アルカリ性の現像液と二酸化炭素リンスを接触させることによって、現像液中に溶けていたレジスト成分の再析出が起こり、パターン欠陥が増加してしまう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、トップコート膜を設けていない半導体ウェハ上の感光膜を液浸露光する工程と、
上記半導体ウェハをアルカリ性の現像液に浸す現像工程と、
上記半導体ウェハに付着した上記アルカリ性の現像液を超純水によって洗浄する超純水リンス工程と、
二酸化炭素を含んだ水を用い、上記半導体ウェハを洗浄する二酸化炭素リンス工程と、
を含む半導体装置の製造方法が提供される。
【0010】
さらに、本発明によれば、トップコート膜を設けていない半導体ウェハ上の感光膜を液浸露光する装置であって、超純水を放出する超純水リンスノズルと、
二酸化炭素を含んだ水を放出する二酸化炭素リンスノズルと、
上記超純水リンスノズルから超純水を放出して上記半導体ウェハを洗浄した後、上記二酸化炭素リンスノズルから二酸化炭素を含んでいる水を放出して上記半導体ウェハを洗浄するよう制御している制御部と、
を含む半導体装置の製造装置が提供される。
【0011】
本発明によれば、アルカリ性の現像液によって半導体ウェハ表面にパターンを現像した後、超純水によってアルカリ性の現像液を洗浄している。これによって、半導体ウェハに付着したアルカリ性の現像液は希釈される。つまり、半導体ウェハ状に付着しているアルカリ性の現像液の量が減るため、二酸化炭素を含む水との反応によって再析するレジスト成分(溶解生成物)の発生を抑制できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、超純水リンスを行うことで、アルカリ性の現像液中に溶けていたレジスト成分の再析出を抑制できる。これによって、半導体ウェハのパターン欠陥の発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態に係る半導体装置の製造方法を示すフローチャートである。
【図2】本実施形態に係る半導体装置の製造方法の超純水リンス工程における半導体ウェハの回転数に伴う欠損箇所の数を示す図である。
【図3】本実施形態に係る半導体装置の製造方法の超純水リンス工程における半導体ウェハに対するノズルの移動速度に伴う欠損箇所の数を示す図である。
【図4】本実施形態に係る半導体装置の製造方法の二酸化炭素リンス工程における半導体ウェハの回転速度に伴う欠陥個所の数を示す図である。
【図5】本実施形態に係る半導体装置の製造装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0015】
図1は、本実施形態に係る半導体装置の製造方法を示すフローチャートである。
図1に示すように、半導体ウェハ上の感光膜を液浸露光する(ステップS10)。なお、感光膜上には、トップコート膜が設けられていない。次に、半導体ウェハをアルカリ性の現像液に浸す(ステップS20)。次に、アルカリ性の現像液に浸した半導体ウェハを超純水によって洗浄する(ステップS30)。そして、二酸化炭素を含んだ水を用い、半導体ウェハを洗浄する(ステップS40)。
【0016】
なお、超純水リンス工程(ステップS30)において、半導体ウェハの回転数は1500rpm以下であり、半導体ウェハに対するノズルの移動速度は50mm/sec以下であることが好ましい。さらに、超純水リンス工程(ステップS30)および二酸化炭素リンス工程(ステップS40)における吐出方法は、スタティックリンスあるいはスキャンリンスのどちらでもよい。なお、アルカリ性の現像液に半導体ウェハを浸す前に行うプリウェットシーケンスには、超純水と二酸化炭素を含んだ水のどちらを用いてもよい。
もよい。
【0017】
以下、本実施形態に係る半導体装置の製造方法について詳細に説明する。
【0018】
まず、半導体ウェハ表面上にトップコートレス用の感光膜を形成する。このとき、感光膜上にはトップコート膜を設けない。
【0019】
次に、トップコート膜を設けていない感光膜に対して、液浸露光を行うことによって、パターンを転写する(ステップS10)。この時、水が常時流動している状態で、露光は行われている。なお、感光膜上へのパターンの転写は、ArFレーザーやKrFレ−ザ−を用いて行っている。
【0020】
次に、露光した半導体ウェハをアルカリ性の現像液に浸す(ステップS20)。これによって、半導体ウェハ上の感光膜は部分的に除去される。つまり、アルカリ性の現像液に半導体ウェハを浸すことによって、転写した回路図のパターンが半導体ウェハ上に現れる。アルカリ性の現像液には、例えば、水酸化テトラメチルアンモニウム(TetraMethyl Ammonium Hydroxide;TMAH)やオクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチルー4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(Octadecyl−3−(3,5−di−t−butylー4−hydroxyphenyl)propionate;ODP)が含まれている。
【0021】
次に、超純水を用いて半導体ウェハ表面に付着している余分なアルカリ性の現像液を洗浄する(ステップS30)。この操作を行うことによって、半導体ウェハ表面に残留していたアルカリ性の現像液は、希釈される。つまり、アルカリ性の現像液中に溶解しているレジスト成分も希釈されるため、半導体ウェハ上に再析出する可能性のあったレジスト成分の量を、減らすことができる。ただし、本実施形態に係る半導体装置はトップコート膜を設けていない。このため、超純水で洗浄することにより、半導体ウェハ表面において摩擦が発生する。この摩擦によって、半導体ウェハ表面上には帯電が発生する。ここで用いる超純水は電気を通しにくく、比抵抗値は、例えば、17MΩ程度である。
【0022】
次に、二酸化炭素を含んだ水を用いて、超純水で洗浄済みの半導体ウェハを洗浄する(ステップS40)。これによって、半導体ウェハにおける帯電は抑制される。半導体ウェハは、上記で述べたように電気を通しにくいため、超純水リンスによって表面に帯電が発生してしまう。そこで、導電性を有している二酸化炭素を含んでいる水で、半導体ウェハを洗浄する。これによって、半導体ウェハ表面に帯電した静電気を逃がすことができる。なお、二酸化炭素を含んでいる水の比抵抗値は0.2〜1.0MΩであることが好ましい。
なお、二酸化炭素を含んだ水で半導体ウェハを洗浄する前に、超純水で半導体ウェハに付着した成分は、すでに希釈されている。このため、レジスト成分の再析出も起こりにくくなる。
【0023】
また、超純水の比抵抗値は17MΩ程度であるため、超純水は電気を通しにくい。このため、超純水を用いた半導体ウェハの洗浄時間・半導体ウェハの回転数・リンス流量の最適化が必要である。
【0024】
次に、二酸化炭素を含んだ水で洗浄した半導体ウェハに対して、窒素ブローを行う(ステップS50)。ウェハ中心で窒素ブローを行うことで、乾燥を促進することができる。窒素ブロー後に二酸化炭素リンスノズルを外周部までスキャンさせた場合、さらに乾燥を促進させることができる。
【0025】
最後に、表面に水分が残っている半導体ウェハをスピンドライする(ステップS60)。これにより、半導体ウェハ表面上にある水分は、回転によって発生した遠心力によって吹き飛ばされる。以上の工程により、半導体ウェハの液浸露光は完了する。
【0026】
以下、超純水リンス工程(ステップS30)、および二酸化炭素リンス工程(ステップS40)におけるリンス条件について詳細に述べる。
【0027】
図2は、本実施形態に係る半導体装置の製造方法の超純水リンス工程における半導体ウェハの回転数に伴う欠損箇所の数を示す図である。
図2に示すように、超純水リンスの回転数は、高いほど欠陥の抑制には優位である。しかし、半導体ウェハの帯電を抑制するという観点から、超純水リンスの回転数は、1500rpm以下が好ましい。一方、レジストパターン上に水が残ってしまった場合、閉塞やサテライトといった欠陥が発生しやすい。このため、超純水リンスの回転数は、500rpm以上が好ましい。このとき超純水を吐出する専用ノズルの取り付けも必要である。ここで、超純水の供給方法はウェハセンタ吐出であってもスキャン吐出であってもよい。
【0028】
図3は、本実施形態に係る半導体装置の製造方法の超純水リンス工程における半導体ウェハに対するノズルIN/OUTの移動速度に伴う欠損箇所の数を示す図である。
図3に示すように、超純水リンスを行う際、ノズルのスキャンスピードは低速であればあるほど欠陥の発生数は減少する。これは、ノズルのスキャンスピードが、例えば75mm/secの場合、半導体ウェハ上に欠陥が発生してしまっている。一方、ノズルのスキャンスピードが、例えば50mm/secの場合、半導体ウェハ上に欠陥が発生することはなく、レジストパターン上にのみ欠陥が発生している。このように、ノズルのスキャンスピードを遅くすればするほど、欠陥の数を抑制できる。このため、超純水リンスにおけるノズルのスキャンスピードは、50mm/sec以下であることが好ましい。ただし、ノズルのスキャンスピードが、遅すぎた場合、リンスの処理時間が長くなり、半導体ウェハ表面における帯電量は増えてしまう。このため、ノズルのスキャンスピードは、25mm/sec以上であることが好ましい。
【0029】
以上のように、超純水リンス工程における条件の最適化を行うことによって、超純水による洗浄によって発生する半導体ウェハ表面への帯電を出来る限り抑制することができる。
【0030】
図4は、本実施形態に係る半導体装置の製造方法の二酸化炭素リンス工程における半導体ウェハの回転速度に伴う欠陥個所の数を示す図である。
図4に示すように、窒素ブロー後のノズルのスキャンスピードが、例えば、5.0mm/secの場合、半導体ウェハ上に欠陥が発生していることが図4から分かる。しかしながら、超純水リンスを行う際と同様に、ノズルのスキャンスピードを遅くすればするほど、二酸化炭素リンスの処理時間が長くなってしまう。これによって、半導体ウェハへの帯電量が多くなるため、二酸化炭素リンス工程におけるノズルのスキャンスピードは、2.0mm/sec以上、かつ5.0mm/sec以下に設定することが好ましい。
【0031】
なお、窒素ブロー後の二酸化炭素リンスを行う際、初期回転数を2500rpm以上3000rpm以下の範囲に設定することが好ましい。なぜなら、初期回転数は、3000rpm以上に設定することによって、ミスト欠陥が発生してしまうからである。ミスト欠陥は、初期回転から外周に向けて低速回転になるよう設定することによって、抑制することができる。
【0032】
上記工程により半導体ウェハにパターンの現像を行った半導体ウェハをエッチングする。これによって、パターン欠陥のない半導体ウェハを得ることが出来る。
【0033】
次に、半導体装置の製造装置について説明する。
【0034】
図5は、本実施形態に係る半導体装置の製造装置を示す図である。
図5に示すように、半導体ウェハは、ウェハ吸着板100に吸着固定される。このウェハ吸着板100は、モーター102を動力源として任意の回転速度で回転することができる。また、アルカリ現像液に半導体ウェハを浸す工程(ステップS20)、アルカリ現像液に浸した半導体ウェハを超純水によって洗浄する工程(ステップS30)、および二酸化炭素を含んだ水を用い、半導体ウェハを洗浄する工程(ステップS40)はそれぞれウェハ吸着板100上で行われる。なお、アルカリ現像液は現像液供給ノズル10から、超純水は超純水供給ノズル20から、二酸化炭素を含んだ水は二酸化炭素添加ノズル30から供給される。これら、現像液供給ノズル10、超純水供給ノズル20、および二酸化炭素添加ノズル30の配置は、図5に示した順番でなくても良く、順不同である。
【0035】
現像液供給ノズル10、超純水供給ノズル20、および二酸化炭素添加ノズル30は、それぞれ制御部50によって動作を制御されている。この制御部50は、主に、超純水供給ノズル20から超純水を放出した後、二酸化炭素添加ノズル30から二酸化炭素を含んでいる水を放出するように制御している。さらに、制御部50は、現像液供給ノズル10、超純水供給ノズル20、および二酸化炭素添加ノズル30の移動や、ウェハ吸着板100の回転も同時に制御する。
【0036】
次に本実施形態による効果について説明する。
【0037】
アルカリ性の現像液によって半導体ウェハ表面にパターンを現像した後、超純水によってアルカリ性の現像液を洗浄している。これによって、半導体ウェハに付着したアルカリ性の現像液は希釈される。つまり、半導体ウェハ上に付着しているアルカリ性の現像液の量が減る。このため、二酸化炭素を含む水との反応によって再析出するレジスト成分(溶解生成物)の発生を抑制できる。したがって、半導体ウェハのパターン欠陥の発生を抑制できる。
【0038】
さらに、超純水リンスを行った後、帯電した半導体ウェハを二酸化炭素を含んでいる水を用いて洗浄することで半導体ウェハ上の帯電を抑制できる。これによって、電気配線のショート、微粒子の付着といった歩留まりの低下も抑制できる。
【0039】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【符号の説明】
【0040】
10 現像液供給ノズル
20 超純水供給ノズル
30 二酸化炭素添加ノズル
50 制御部
100 ウェハ吸着板
102 モーター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トップコート膜を設けていない半導体ウェハ上の感光膜を液浸露光する工程と、
前記半導体ウェハをアルカリ性の現像液に浸す現像工程と、
前記半導体ウェハに付着した前記アルカリ性の現像液を超純水によって洗浄する超純水リンス工程と、
二酸化炭素を含んだ水を用い、前記半導体ウェハを洗浄する二酸化炭素リンス工程と、
を含む半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記超純水リンス工程における前記半導体ウェハの回転数は1500rpm以下であり、ノズルの移動速度が75mm/sec以下である請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記二酸化炭素リンス工程における前記半導体ウェハに対するノズルの移動速度は、50mm/sec以下である請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記超純水リンス工程および前記二酸化炭素リンス工程における前記超純水および前記二酸化炭素を含んだ水の吐出方法は、スタティックリンスあるいはスキャンリンスである請求項1乃至3のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
トップコート膜を設けていない半導体ウェハ上の感光膜を液浸露光する装置であって、超純水を放出する超純水リンスノズルと、
二酸化炭素を含んだ水を放出する二酸化炭素リンスノズルと、
前記超純水リンスノズルから超純水を放出して前記半導体ウェハを洗浄した後、前記二酸化炭素リンスノズルから二酸化炭素を含んでいる水を放出して前記半導体ウェハを洗浄するよう制御している制御部と、
を含む半導体装置の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−74114(P2013−74114A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−212057(P2011−212057)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】