説明

半導体装置の製造方法および半導体装置

【課題】 半導体チップや回路基板の反りが小さく、表面の耐擦傷性が良好である半導体装置を効率よく製造する方法、およびこのような半導体装置を提供する。
【解決手段】 半導体装置を金型中に載置して、該金型と該半導体装置との間に供給した硬化性シリコーン組成物を圧縮成形することによりシリコーン硬化物で封止した半導体装置を製造する方法であって、前記硬化性シリコーン組成物が、(A)エポキシ基含有シリコーンと(B)エポキシ樹脂用硬化剤から少なくともなることを特徴とする、半導体装置の製造方法、およびこの製造方法により得られる半導体装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法、およびその方法により製造される半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置を樹脂封止するために、金型を用いたトランスファーモールド、液状の封止用樹脂によるポッティングあるいはスクリーン印刷等が行われている。近年、半導体素子の微細化にともない、電子機器の小型化、薄型化が要求され、500μm厚以下の薄型パッケージを樹脂封止する必要がでてきた。
【0003】
薄型パッケージを樹脂封止する場合、トランスファーモールドによれば、封止樹脂の厚さを精度良くコントロールすることができるものの、封止用樹脂の流動中に半導体チップが上下に移動したり、半導体チップに接続しているボンディングワイヤーが封止用樹脂の流動圧力により変形して、断線や接触等を起こすという問題があった。
【0004】
一方、液状の封止用樹脂によるポッティングあるいはスクリーン印刷では、ボンディングワイヤーの断線や接触は生じにくくなるものの、封止樹脂の厚さを精度良くコントロールすることが困難であったり、封止樹脂にボイドが混入しやすいという問題があった。
【0005】
これらの問題を解決するため、金型中に半導体装置を載置し、金型と半導体装置との間に封止用樹脂を供給して圧縮成形することにより、樹脂封止した半導体装置を製造する方法が提案されている(特許文献1〜3参照)。
【0006】
しかし、これらの方法において、従来の硬化性エポキシ樹脂組成物等の封止用樹脂を用いた場合には、半導体素子の微細化にともなう半導体チップの薄型化、回路基板の薄型化などにより、半導体チップや回路基板の反りが大きくなり、内部応力により半導体装置の破壊や動作不良等を生じやすいという問題があった。
【0007】
このため、半導体装置を金型中に載置して、該金型と該半導体装置との間に供給した各種の硬化性シリコーン組成物を圧縮成形することにより、柔軟なシリコーン硬化物で封止した半導体装置を製造する方法が提案されている(特許文献4〜6参照)。
【0008】
しかし、シリコーン硬化物は表面が脆弱で耐擦傷性が乏しいため、半導体装置の製造工程で表面に傷がつきやすく、取扱作業性に課題がある。
【特許文献1】特開平8−244064号公報
【特許文献2】特開平11−77733号公報
【特許文献3】特開2000−277551号公報
【特許文献4】特開2004−296555号公報
【特許文献5】特開2005−183788号公報
【特許文献6】特開2005−268565号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、半導体チップや回路基板の反りが小さく、表面の耐擦傷性が良好である半導体装置を効率よく製造する方法、およびこのような半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の半導体装置の製造方法は、半導体装置を金型中に載置して、該金型と該半導体装置との間に供給した硬化性シリコーン組成物を圧縮成形することによりシリコーン硬化物で封止した半導体装置を製造する方法であって、前記硬化性シリコーン組成物が、(A)エポキシ基含有シリコーンと(B)エポキシ樹脂用硬化剤から少なくともなることを特徴とする。
また、本発明の半導体装置は、上記の製造方法により得られることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の半導体装置の製造方法は、半導体チップや回路基板の反りが小さく、表面の耐擦傷性が良好である半導体装置を効率よく製造できるという特徴があり、また、本発明の半導体装置は、半導体チップや回路基板の反りが小さく、表面の耐擦傷性が良好であるという特徴がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
はじめに、本発明の半導体装置の製造方法を詳細に説明する。
本方法では、半導体装置を金型中に載置して、該金型と該半導体装置との間に供給した硬化性シリコーン組成物を圧縮成形することにより、半導体装置をシリコーン硬化物で封止する。このような金型を有する圧縮成形機としては、一般に使用されている圧縮成形機を用いることができ、半導体装置を挟持して、金型と半導体装置のキャビティに供給された硬化性シリコーン組成物を圧縮成形することのできる上型と下型、これらを加圧するためのクランプ、硬化性シリコーン組成物を加熱により硬化させるためのヒーター等を備えていればよい。このような圧縮成形機としては、特開平8−244064号公報、特開平11−77733号公報、あるいは特開2000−277551号公報に記載されている圧縮成形機が例示され、特に、装置が簡単であることから、特開2000−277551号公報に記載されている圧縮成形機であることが好ましい。
【0013】
すなわち、特開2000−277551号公報に記載されている圧縮成形機は、下型に半導体装置を載置して、上型と半導体装置との間に硬化性シリコーン組成物を供給した後、上型と下型とで半導体装置を挟持して硬化性シリコーン組成物を圧縮成形することができる。この圧縮成形機においては、上型の封止領域の側面を囲む枠状に形成され、この側面に沿って型開閉方向に昇降自在に支持されるとともに、型開き時に上型の成形面よりも下端面を突出させ下型に向け付勢して設けられたクランパを有する。上型あるいは下型が硬化性シリコーン組成物に直接接触する場合には、これらの金型の成形面をフッ素樹脂によりコーティングしておくことが好ましい。特に、この圧縮成形機は、金型およびシリコーン硬化物に対して剥離性を有するフィルムを、上型の封止領域を被覆する位置に供給する剥離性フィルムの供給機構とを備えている。このような圧縮成形機によれば、この剥離性フィルムを介して半導体装置を封止することにより、シリコーン硬化物が金型の成形面に付着したりすることを防止し、剥離性フィルムにより封止領域が確実に封止され、ばり等を発生させずに確実に封止することができる。
【0014】
この圧縮成形機は、金型およびシリコーン硬化物に対して剥離性を有するフィルムを、下型の半導体装置を載置する金型面を覆って供給する剥離性フィルムの供給機構を設けていることが好ましい。また、クランパの下端面に剥離性フィルムをエア吸着するとともに、上型の成形面とクランパの内側面とによって構成される封止領域の内底面側からエア吸引して封止領域の内面に剥離性フィルムをエア吸着する剥離性フィルムの吸着機構を設けることにより、剥離性フィルムが確実に金型面に支持されて封止することができる。また、剥離性フィルムの吸着機構としては、クランパの下端面で開口するエア孔と、クランパの内側面と上型の側面との間に形成されるエア流路に連通してクランパの内側面に開口するエア孔とを設け、これらのエア孔にエア吸引操作をなすエア機構を接続していることが好ましい。また、上型が、成形面に半導体装置上の半導体チップの搭載位置に対応して独立の成形部を成形するキャビティ凹部が設けられていてもよい。また、下型が、成形面に半導体装置上の半導体チップの搭載位置に対応して独立の成形部を成形するキャビティ凹部が設けられていてもよい。また、上型が、型開閉方向に可動に支持されるとともに、下型に向けて付勢して支持されていてもよい。また、下型の金型面に、半導体装置を封止する際に封止領域からオーバーフローする硬化性シリコーン組成物を溜めるオーバーフローキャビティが設けられ、半導体装置を押接するクランパのクランプ面に封止領域とオーバーフローキャビティとを連絡するゲート路が設けられていてもよい。
【0015】
また、下型に半導体装置を載置し、上型と半導体装置との間に硬化性シリコーン組成物を供給し、金型およびシリコーン硬化物との剥離性を有するフィルムにより封止領域を被覆し、上型と下型とで硬化性シリコーン組成物とともに半導体装置を狭持して封止する場合、半導体装置を狭持する際に、上型の封止領域の側面を囲む枠状に形成され、この側面に沿って型開閉方向に昇降自在に支持されるとともに、上型の成形面よりも下端面を突出させて下型に向け付勢して設けられたクランパを半導体装置に当接して、封止領域の周囲を封止し、徐々に上型と下型を近づけて封止領域内に硬化性シリコーン組成物を充填するとともに、上型と下型とを型締め位置で停止させ、封止領域内に硬化性シリコーン組成物を充填させて半導体装置を封止することが好ましい。
【0016】
図1は本方法に好適に用いられる圧縮成形機の主要構成部分を示している。20は固定プラテン、30は可動プラテンであり、各々プレス装置に連繋して支持されている。プレス装置は、電動プレス装置、油圧プレス装置のどちらも使用でき、プレス装置により可動プラテン30が昇降駆動されて所要の樹脂封止がなされる。
【0017】
22は固定プラテン20に固設した下型ベースであり、23は下型ベース22に固定した下型である。下型23の上面には半導体装置16を載置するセット部を設ける。本方法で用いる半導体装置16は回路基板12上に複数個の半導体チップ10を縦横に等間隔で配置したものであってもよい。半導体装置16は半導体チップ10を上向きにして下型23に載置される。24は下型ベース22に取り付けたヒータである。ヒータ24により下型23が加熱され、下型23に載置された半導体装置16が加温される。26は上型と下型とのクランプ位置を規制する下クランプストッパであり、下型ベース22に立設されている。
【0018】
32は可動プラテン30に固設した上型ベース、33は上型ベース32に固定した上型ホルダ、34は上型ホルダ33に固定した上型である。本方法では回路基板12に半導体チップ10を実装した片面側を平板状に封止する。そのため、上型34の成形面を封止領域にわたって平坦面に形成している。36は上型34および上型ホルダ33の側面を囲む枠状に形成したクランパであり、上型ベース32に昇降自在に支持するとともにスプリング37により下型23に向けて常時付勢して設ける。上型34の成形面はクランパ36の端面よりも後退した位置にあり、封止領域は型締め時にクランパ36の内側面と上型34の成形面によって包囲された領域となる。なお、クランパ36を付勢する方法はスプリング37による他にエアシリンダ等の他の付勢手段を利用してもよい。
【0019】
38は上型ベース32に取り付けたヒータである。ヒータ38により上型ホルダ33、上型34が加熱され、型締め時に半導体装置16が加熱される。39は上型ベース32に立設した上クランプストッパである。上クランプストッパ39と下クランプストッパ26とは型締め時に端面が互いに当接するよう上型側と下型側に対向して配置される。プレス装置により可動プラテン30が降下した際に、上クランプストッパ39と下クランプストッパ26とが当接した位置が型締め位置であり、この型締め位置によって封止領域の封止樹脂厚が規定されることになる。
【0020】
40a、40bは上型34と下型23の成形面を被覆する幅寸法に形成された長尺体の剥離性フィルムである。剥離性フィルム40a、40bは封止時に硬化性シリコーン組成物が成形面に直に接しないように封止領域を被覆する目的で設けるものである。剥離性フィルム40a、40bは封止領域での成形面の凹凸にならって変形できるよう柔軟でかつ一定の強度を有するとともに、金型温度に耐える耐熱性、シリコーン硬化物および金型と容易に剥離できるフィルム材が好適に用いられる。このようなフィルムとしては、ポリテトラフルオロエチレン樹脂(PTFE)フィルム、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合樹脂(ETFE)フィルム、テトラフルオロエチレン−ペルフルオロプロピレン共重合樹脂(FEP)フィルム、ポリビニリデンフルオライド樹脂(PBDF)フィルム等のフッ素樹脂フィルム;ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)フィルム、ポリプロピレン樹脂(PP)フィルムが例示される。
【0021】
本方法では、回路基板12の片面側のみ封止する場合には、硬化性液状樹脂組成物に接する剥離性フィルムは上型34に供給する剥離性フィルム40aである。下型23の金型面を覆うように剥離性フィルム40bを供給するのは、剥離性フィルム40bの圧縮性、弾性を利用して回路基板12の厚さのばらつきを効果的に吸収できるようにし、これによってばり等を生じさせることなく確実に封止できるようにするためである。もちろん、上型34側にのみ剥離性フィルム40aを供給して封止することも可能である。
【0022】
42a、42bは剥離性フィルム40a、40bの供給ロールであり、44a、44bは剥離性フィルム40a、40bの巻取りロールである。図のように、供給ロール42a、42bと巻取りロール44a、44bは金型を挟んだ一方側と他方側に各々配置され、上型側の供給ロール42aと巻取りロール44aは可動プラテン30に取り付けられ、下型側の供給ロール42bと巻取りロール44bは固定プラテン20に取り付けられている。これによって、剥離性フィルム40a、40bは金型の一方側から他方側へ金型内を通過して搬送される。上型側の供給ロール42aと巻取りロール44aは可動プラテン30とともに昇降する。46はガイドローラ、48は剥離性フィルム40a、40bの静電防止のための静電除去装置(イオナイザー)である。
【0023】
上型34側に供給する剥離性フィルム40aはエア吸着により金型面に吸着して支持する。クランパ36にはクランパ36の端面で開口するエア孔36aと、クランパ36の内側面で開口するエア孔36bとを設け、これらエア孔36a、36bを金型外のエア機構に連絡する。上型ホルダ33にはクランパ36の内側面との摺動面にOリングを設け、エア孔36bからエア吸引する際にエア漏れしないようにしている。上型34の側面および上型ホルダ33の側面とクランパ36の内側面との間はエアを流通するエア流路となっており、エア孔36bからエア吸引することにより、上型34とクランパ36とによって形成された封止領域の内面に剥離性フィルム40aがエア吸着されるようになる。なお、エア孔36a、36bに連絡するエア機構はエアの吸引作用の他にエアの圧送作用を備えることも可能である。エア機構からエア孔36a、36bにエアを圧送することによって剥離性フィルム40aを金型面から容易に剥離させることができる。
【0024】
本方法では、上述した構成により、次に示す方法により半導体装置を封止することができる。図1で中心線CLの左半部は、可動プラテン30が上位置にある型開き状態を示す。この型開き状態で新しく金型面上に剥離性フィルム40a、40bを供給し、下型23に半導体装置16を載置する。半導体装置16は下型23の金型面を被覆する剥離性フィルム40bの上で位置決めして載置される。
【0025】
図1で中心線CLの右半部はエア機構を作動させて剥離性フィルム40aを上型34とクランパ36の端面にエア吸着した状態である。剥離性フィルム40aを金型面に近接して搬送し、エア孔36a、36bからエア吸引することによってクランパ36の端面に剥離性フィルム40aがエア吸着されるとともに、上型34の樹脂成形面とクランパ36の内側面に沿って剥離性フィルム40aがエア吸着される。剥離性フィルム40aは十分な柔軟性と伸展性を有しているから上型34とクランパ36とによって形成される凹部形状にならってエア吸着される。なお、クランパ36の端面に設けるエア孔36aは上型34の周方向に所定間隔をあけて複数配置される。
【0026】
剥離性フィルム40aを上型側の金型面にエア吸着する一方、下型23に載置した半導体装置16の回路基板12上に硬化性シリコーン組成物50を供給する。硬化性シリコーン組成物50は封止領域の内容積に合わせて必要量だけ供給するもので、ディスペンサー等により定量吐出して供給することが好ましい。
【0027】
図2は上型34と下型23とで半導体装置16を狭持した状態を示す。同図で中心線CLの左半部は上型34を降下させてクランパ36の端面が半導体装置16の回路基板12を押接している状態である。上型34はクランプ位置までは完全に降り切っておらず、クランパ36によって封止領域の周囲が閉止された状態で上型34により硬化性シリコーン組成物50が押されるようにして充填開始される。図2で中心線CLの右半部は、上型34が型締め位置まで降下した状態である。この型締め位置は、下クランプストッパ26と上クランプストッパ39の端面が当接した状態であり、型締め力によりスプリング37の付勢力に抗してクランパ36が上動し、封止領域が所定の厚さになる。
【0028】
上型34が型締め位置まで降下することによって、封止領域が所定の厚さにまで押し込められ、封止領域に完全に硬化性シリコーン組成物50が充填されることになる。図2に示すように、中心線CLの左半部では剥離性フィルム40aと上型34のコーナー部に若干の隙間が形成されているが、上型34が型締め位置まで降下することによって上型34と剥離性フィルム40aとの隙間はなくなり、硬化性シリコーン組成物50が完全に封止領域を充填している。
【0029】
半導体装置16の封止面については、剥離性フィルム40aを介して狭持することにより、クランパ36によって封止領域の周囲部分が確実に閉止され、もれを生じさせずに封止することができる。回路基板12の表面に回路パターンが形成されていて表面に僅かに段差が形成されているといったような場合でも剥離性フィルム40aを介して狭持することにより、段差部分が吸収され、型締め時に封止領域の外側に硬化性シリコーン組成物が流出することを防止することができる。また、回路基板12の下面に配置される剥離性フィルム40bも、厚さ方向の弾性により半導体装置の厚さのばらつきを吸収して、確実な封止を可能にすることができる。
【0030】
型締めし、硬化性シリコーン組成物50が加熱されて硬化した後、型開きしてシリコーン硬化物で封止した半導体装置を取り出す。剥離性フィルム40a、40bを介して封止しているから、シリコーン硬化物が成形面に付着することがなく、剥離性フィルム40a、40bが金型から簡単に剥離することから、型開き操作と半導体装置の取り出し操作はきわめて容易である。エア孔36a、36bからエアを吹き出して剥離性フィルム40aを金型面から分離するようにしてもよい。型開きして、供給ロール42a、42bと巻取りロール44a、44bを作動させ、剥離性フィルム40a、40bとともに封止した半導体装置を金型外に搬送する。
【0031】
図3は本方法により封止した半導体装置である。上型34は成形面を平坦面に形成したものであるから成形部の上面は平坦面に形成されて得られる。図のように隣接する半導体チップ10の中間位置でシリコーン硬化物14と回路基板12とを切断することによって個片の半導体装置とすることもできる。この切断には、ダイシングソー、レーザー等を用いることができる。また、本方法では、上型34の成形面に、回路基板12上に実装されている各々の半導体チップ10の実装位置に対応したキャビティ凹部を設け、各キャビティ凹部で半導体チップ10を独立させて封止することもできる。このようにして得られる半導体装置についても、隣接する半導体チップの中間位置でシリコーン硬化物と回路基板とを切断することによって個片の半導体装置とすることができる。
【0032】
本方法で用いる硬化性シリコーン組成物は、(A)エポキシ基含有シリコーンと(B)エポキシ樹脂用硬化剤から少なくともなることを特徴とする。このような(A)成分のシリコーンは、エポキシ基を含有することを特徴とし、例えば、(A1)平均単位式:
(R13SiO1/2)a(R22SiO2/2)b(R3SiO3/2)c
で表されるオルガノポリシロキサンが例示される。上式中、R1、R2、およびR3は同じか、または異なり、置換もしくは非置換の一価炭化水素基またはエポキシ基含有一価有機基である。この一価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基等のアルキル基;ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基;フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;クロロメチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等のハロゲン置換アルキル基が例示され、好ましくは、アルキル基、アリール基であり、特に好ましくは、メチル基、フェニル基である。また、エポキシ基含有一価有機基としては、2−グリシドキシエチル基、3−グリシドキシプロピル基、4−グリシドキシブチル基等のグリシドキシアルキル基;2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基、3−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピル基、2−(3,4−エポキシ−3−メチルシクロヘキシル)−2−メチルエチル基等のエポキシシクロアルキルアルキル基;4−オキシラニルブチル基、8−オキシラニルオクチル基等のオキシラニルアルキル基が例示され、好ましくは、グリシドキシアルキル基、エポキシシクロアルキルアルキル基であり、特に好ましくは、3−グリシドキシプロピル基、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基である。
【0033】
また、上式中、R3の20モル%以上はアリール基であることが必要であり、好ましくは、50モル%以上がアリール基であり、特に好ましくは、80モル%以上がアリール基である。これは、R3の内、アリール基の占める割合が上記範囲の下限未満であると、得られるシリコーン硬化物の接着性が低下したり、機械的強度が低下する傾向があるからである。R3のアリール基としては、特に、フェニル基であることが好ましい。
【0034】
また、上式中、a、b、およびcはそれぞれ、0≦a≦0.8、0≦b≦0.8、0.2≦c≦0.9、かつa+b+c=1を満たす数であり、aは、式:R13SiO1/2で表されるシロキサン単位の割合を示す数であるが、本成分が式:R3SiO3/2で表されるシロキサン単位のみからなると、粘度が高くなり、得られる組成物の取扱作業性が低下する傾向があることから、好ましくは、0<a≦0.8を満たす数であり、より好ましくは、0.3≦a≦0.8を満たす数である。bは、式:R22SiO2/2で表されるシロキサン単位の割合を示す数であるが、適度な分子量で、得られるシリコーン硬化物から本成分が滲み出しにくく、また、得られるシリコーン硬化物の機械的強度が優れることから、好ましくは、0≦b≦0.6を満たす数である。cは、式:R3SiO3/2で表されるシロキサン単位の割合を示す数であるが、本組成物の取扱作業性が良好であり、得られるシリコーン硬化物の接着性、機械的強度、および可撓性が良好であることから、好ましくは、0.4≦c≦0.9を満たす数である。
【0035】
(A1)成分は、一分子中に少なくとも2個の前記エポキシ基含有一価有機基を有することが必要である。(A1)成分中のエポキシ基含有一価有機基の含有量は特に限定されないが、本成分のエポキシ当量(本成分の質量平均分子量を一分子中のエポキシ基の数で割った値)が100〜2,000の範囲内であることが好ましく、さらには、100〜1,000の範囲内であることが好ましく、特に、100〜700の範囲内であることが好ましい。これは、エポキシ当量が上記範囲の下限未満では、得られるシリコーン硬化物の可撓性が低下する傾向があり、一方、上記範囲の上限を超えると、得られる組成物の硬化性が低下したり、得られるシリコーン硬化物の接着性や機械的強度が低下する傾向があるからである。また、(A1)成分は、一種のオルガノポリシロキサン、あるいは二種以上のオルガノポリシロキサンからなる混合物であってもよい。(A1)成分の25℃における性状は特に限定されず、例えば、液状、固体状が挙げられる。(A1)成分が固体状である場合には、有機溶剤を用いたり、加熱したりすることで、他の成分と均一に混合することができる。なお、他の成分との配合性や取扱作業性が良好であることから、(A1)成分は25℃で液状であることが好ましい。また、(A1)成分の質量平均分子量は特に限定されないが、好ましくは、500〜10,000の範囲内であり、特に好ましくは、750〜3,000の範囲内である。
【0036】
このような(A1)成分としては、次のようなオルガノポリシロキサンが例示される。なお、式中、a、b、およびcは前記のとおりであるが、下式においては、aおよびbは0ではない。また、式中、c'およびc"はそれぞれ、0.1<c'<0.8、0<c"<0.2、0.2≦c'+c"≦0.9、かつ、0.2≦c'/(c'+c")を満たす数であり、Gは3−グリシドキシプロピル基を表し、Eは2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基を表す。
[G(CH3)2SiO1/2]a[C65SiO3/2]c
[E(CH3)2SiO1/2]a[C65SiO3/2]c
[G(CH3)2SiO1/2]a[(CH3)2SiO2/2]b[C65SiO3/2]c
[E(CH3)2SiO1/2]a[(CH3)2SiO2/2]b[C65SiO3/2]c
[GCH3SiO2/2]b[C65SiO3/2]c
[ECH3SiO2/2]b[C65SiO3/2]c
[G(CH3)2SiO1/2]a[C65SiO3/2]c'[CH3SiO3/2]c"
[E(CH3)2SiO1/2]a[C65SiO3/2]c'[CH3SiO3/2]c"
[C65SiO3/2]c'[GSiO3/2]c"
[C65SiO3/2]c'[ESiO3/2]c"
【0037】
(A1)成分を調製する方法は特に限定されず、例えば、フェニルトリアルコキシシランとエポキシ基含有一価有機基を有するアルコキシシラン、例えば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランや2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランとの共加水分解・縮合反応により調製する方法;フェニルトリクロロシランやフェニルトリアルコキシシランの加水分解・縮合反応により調製されたシラノール基含有オルガノポリシロキサンと前記のようなエポキシ基含有一価有機基を有するアルコキシシランとの脱アルコール縮合反応により調製する方法;フェニルトリクロロシランやフェニルトリアルコキシシランをジメチルクロロシラン等のケイ素原子結合水素原子含有シラン類存在下で共加水分解・縮合反応して調製したケイ素原子結合水素原子含有オルガノポリシロキサンとエポキシ基含有一価有機基を有するオレフィンとのヒドロシリル化反応により調製する方法;フェニルトリクロロシランやフェニルトリアルコキシシランの加水分解・縮合反応して調製したオルガノポリシロキサンと分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチル(3−グリシドキシプロピル)シロキサン・ジメチルシロキサン共重合体もしくは分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチル{2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル}シロキサン・ジメチルシロキサン共重合体とを塩基性触媒の存在下で平衡反応する方法;式:C65SiO3/2で表されるシロキサン単位からなるオルガノポリシロキサンと環状メチル(3−グリシドキシプロピル)シロキサンもしくは環状メチル{2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル}シロキサンとを塩基性触媒の存在下で平衡反応する方法;C65SiO3/2で表されるシロキサン単位からなるオルガノポリシロキサンと環状メチル(3−グリシドキシプロピル)シロキサンもしくは環状メチル{2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル}シロキサンと環状ジメチルシロキサンとを酸性触媒または塩基性触媒の存在下で平衡反応する方法が挙げられる。
【0038】
また、その他の(A)成分として、例えば、(A2)一般式:
A−R5−(R42SiO)m42Si−R5−A
で表されるオルガノポリシロキサンが挙げられる。上式中、R4は脂肪族不飽和結合を有さない置換もしくは非置換の一価炭化水素基であり、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等のシクロアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基;3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等のハロゲン化アルキル基が例示され、好ましくはアルキル基であり、特に好ましくはメチル基である。また、上式中、R5は二価有機基であり、具体的には、エチレン基、メチルエチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基等のアルキレン基;エチレンオキシエチレン基、エチレンオキシプロピレン基、エチレンオキシブチレン基、プロピレンオキシプロピレン基等のアルキレンオキシアルキレン基が例示され、好ましくはアルキレン基であり、特に好ましくはエチレン基である。また、上式中、mは主鎖であるジオルガノシロキサンの重合度を表す1以上の整数であり、得られるシリコーン硬化物が良好な可撓性を有することから、mは10以上の整数であることが好ましく、その上限は限定されないが、500以下の整数であることが好ましい。
【0039】
また、上式中、Aは、平均単位式:
(XR42SiO1/2)d(SiO4/2)e
で表されるシロキサン残基である。上式中、R4は脂肪族不飽和結合を有さない置換もしくは非置換の一価炭化水素基であり、前記と同様の基が例示され、好ましくはアルキル基であり、特に好ましくはメチル基である。また、上式中、Xは単結合、水素原子、前記R1で表される基、エポキシ基含有一価有機基、またはアルコキシシリルアルキル基であり、このR4で表される基としては、前記と同様の基が例示され、エポキシ基含有一価有機基としては、2−グリシドキシエチル基、3−グリシドキシプロピル基、4−グリシドキシブチル基等のグリシドキシアルキル基;2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基、3−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピル基等の3,4−エポキシシクロヘキシルアルキル基;4−オキシラニルブチル基、8−オキシラニルオクチル基等のオキシラニルアルキル基が例示され、アルコキシシリルアルキル基としては、トリメトキシシリルエチル基、トリメトキシシリルプロピル基、ジメトキシメチルシリルプロピル基、メトキシジメチルシリルプロピル基、トリエトキシシリルエチル基、トリプロポキシシリルプロピル基が例示される。但し、一分子中、少なくとも1個のXは単結合であり、この単結合を介して上記ジオルガノポリシロキサン中のR5に結合している。また、一分子中の少なくとも2個のXはエポキシ基含有一価有機基であることが必要であり、好ましくはグリシドキシアルキル基であり、特に好ましくは3−グリシドキシプロピル基である。また、上式中、dは正数であり、eは正数であり、d/eは0.2〜4の正数である。
【0040】
(A2)成分の分子量は特に限定されないが、その質量平均分子量が500〜1,000,000の範囲内であることが好ましい。さらに、(A2)成分の25℃における性状は限定されないが、液状であることが好ましく、その粘度としては、50〜1,000,000mPa・sの範囲内であることが好ましい。このような(A2)成分のジオルガノシロキサンは、例えば、特開平6−56999号公報に記載の製造方法により調製することができる。
【0041】
上記組成物において、(A)成分として、上記(A1)成分または(A2)成分のいずれか一方、あるいは上記(A1)成分と(A2)成分の混合物を用いることができるが、少なくとも(A2)成分を用いることが好ましい。すなわち、(A)成分としては、(A2)成分のみ、あるいは(A1)成分と(A2)成分の混合物であることが好ましい。(A)成分として(A1)成分と(A2)成分の混合物を用いる場合、(A2)成分の含有量は特に限定されないが、好ましくは(A1)成分100質量部に対して0.1〜800質量部の範囲内であり、さらに好ましく、1〜500質量部の範囲内であり、特に好ましくは、10〜200質量部の範囲内である。これは、(A2)成分の含有量が上記範囲の下限未満であると、得られるシリコーン硬化物の可撓性が低下するからであり、一方、上記範囲の上限を超えると、得られる組成物の粘度が高くなる傾向があるからである。
【0042】
(B)成分のエポキシ樹脂用硬化剤は、(A)成分中のエポキシ基と反応して、上記組成物を硬化させるための成分であり、エポキシ基と反応する官能基を一分子中に好ましくは2個以上有する化合物である。この官能基として、具体的には、1級アミノ基、2級アミノ基、水酸基、フェノール性水酸基、カルボン酸基、酸無水物基、メルカプト基、シラノール基が例示され、反応性とポットライフの観点から、フェノール性水酸基であることが好ましい。すなわち、(B)成分はフェノール性水酸基を有する化合物であることが好ましく、具体的には、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールA系化合物等のフェノール樹脂;フェノール性水酸基を有するオルガノシロキサンが例示され、好ましくは、フェノール性水酸基を一分子中に少なくとも2個有するオルガノシロキサンである。このフェノール性水酸基当量(本成分の質量平均分子量を一分子中のフェノール性水酸基の数で割った値)としては、1,000以下であることが好ましくは、反応性が高いことから、特に、500以下であることが好ましい。
【0043】
(B)成分の内、フェノール性水酸基を有するオルガノシロキサンは、得られるシリコーン硬化物の可撓性を向上させることができることから、一般式:
63SiO(R62SiO)nSiR63
で表されるオルガノシロキサンであることが好ましい。上式中、R6は同じか、または異なる、置換もしくは非置換の一価炭化水素基またはフェノール性水酸基含有一価有機基である。この一価炭化水素基としては、前記と同様の基が例示され、好ましくは、アルキル基、アリール基であり、特に好ましくは、メチル基、フェニル基である。また、フェノール性水酸基含有有機基としては、次のような基が例示される。なお、式中のR7は二価有機基であり、具体的には、エチレン基、メチルエチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基等のアルキレン基;エチレンオキシエチレン基、エチレンオキシプロピレン基、エチレンオキシブチレン基、プロピレンオキシプロピレン基等のアルキレンオキシアルキレン基が例示され、好ましくはアルキレン基であり、特に好ましくはプロピレン基である。
【0044】
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

【化7】

【0045】
また、上式中、nは0〜1,000の範囲内の整数であり、好ましくは、0〜100の範囲内の整数であり、特に好ましくは、0〜20の範囲内の整数である。これは、nが上記範囲の上限を超えると、(A)成分への配合性や取扱作業性が低下する傾向があるからである。
【0046】
このような(B)成分としては、次のようなオルガノシロキサンが例示される。なお、式中のxは1〜20の整数であり、yは2〜10の整数である。
【化8】

【化9】

【化10】

【化11】

【化12】

【化13】

【化14】

【化15】

【化16】

【0047】
このような(B)成分を調製する方法は特に限定されないが、例えば、アルケニル基含有フェノール化合物とケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサンとをヒドロシリル化反応する方法が挙げられる。
【0048】
(B)成分の25℃における性状は特に限定されず、液状、固体状のいずれでもよいが、取扱いの容易さから、液状であることが好ましい。(B)成分が25℃において液体である場合、その粘度は1〜1,000,000mPa・sの範囲内であることが好ましく、特に、10〜5,000mPa・sの範囲内であることが好ましい。これは、25℃における粘度が上記範囲の下限未満であると、得られるシリコーン硬化物の機械的強度が低下する傾向があり、一方、上記範囲の上限を超えると、得られる硬化性シリコーン組成物の取扱作業性が低下する傾向があるからである。
【0049】
(B)成分の含有量は特に限定されないが、好ましくは(A)成分100質量部に対して0.1〜500質量部の範囲内であり、特に好ましくは、0.1〜200質量部の範囲内である。また、(B)成分がフェノール性水酸基を有する場合には、本組成物中の全エポキシ基に対する(B)成分中のフェノール性水酸基がモル比で0.2〜5の範囲内となる量であることが好ましく、さらには、0.3〜2.5の範囲内となる量であることが好ましく、特には、0.8〜1.5の範囲内となる量であることが好ましい。これは、上記組成物中の全エポキシ基に対する(B)成分中のフェノール性水酸基のモル比が上記範囲の下限未満であると、得られる硬化性シリコーン組成物が十分に硬化しにくくなる傾向があり、一方、上記範囲の上限を超えると、得られるシリコーン硬化物の機械的特性が著しく低下する傾向があるからである。
【0050】
上記組成物には、任意の成分として(C)硬化促進剤を含有してもよい。このような(C)成分としては、三級アミン化合物、アルミニウムやジルコニウム等の有機金属化合物;ホスフィン等の有機リン化合物;その他、異環型アミン化合物、ホウ素錯化合物、有機アンモニウム塩、有機スルホニウム塩、有機過酸化物、これらの反応物が例示される。例えば、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリ(p−メチルフェニル)ホスフィン、トリ(ノニルフェニル)ホスフィン、トリフェニルホスフイン・トリフェニルボレート、テトラフェニルホスフィン・テトラフェニルボレート等のリン系化合物;トリエチルアミン、ベンジルジメチルアミン、α−メチルベンジルジメチルアミン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7等の第3級アミン化合物;2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物が例示される。なお、上記組成物の可使時間を延ばすことができるので、カプセル化された硬化促進剤が好ましい。カプセル化された硬化促進剤としては、アミン系硬化促進剤を含有するビスフェノールA型エポキシ樹脂からなるカプセル型アミン系硬化促進剤(例えば、旭化成株式会社製のHX-3088)が入手可能である。
【0051】
上記組成物において、(C)成分の含有量は特に限定されないが、(A)成分100質量部に対して50質量部以下であることが好ましく、さらには、0.01〜50質量部の範囲内であることが好ましく、特には、0.1〜5質量部の範囲内であることが好ましい。
【0052】
また、上記組成物には、得られるシリコーン硬化物の機械的強度を向上させるために(D)充填剤を含有してもよい。このような(D)成分としては、ガラス繊維、アルミナ繊維、アルミナとシリカを成分とするセラミック繊維、ボロン繊維、ジルコニア繊維、炭化ケイ素繊維、金属繊維等の繊維状充填剤;溶融シリカ、結晶性シリカ、沈澱シリカ、ヒュームドシリカ、焼成シリカ、酸化亜鉛、焼成クレイ、カーボンブラック、ガラスビーズ、アルミナ、タルク、炭酸カルシウム、クレイ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硫酸バリウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、炭化ケイ素、マグネシア、チタニア、酸化ベリリウム、カオリン、雲母、ジルコニア等の無機系充填剤;金、銀、銅、アルミニウム、ニッケル、パラジウム、これらの合金や真鍮、形状記憶合金、半田等の金属微粉末;セラミック、ガラス、石英、有機樹脂等の微粉末表面に金、銀、ニッケル、銅等の金属を蒸着またはメッキした微粉末;およびこれらの2種以上の混合物が例示され、好ましくは、アルミナ、結晶性シリカ、窒化アルミニウム、窒化ホウ素等の熱伝導性粉末、あるいは溶融シリカ、沈澱シリカ、ヒュームドシリカ、コロイダルシリカ等の補強性粉末である。得られるシリコーン硬化物に導電性および熱伝導性を付与するためには、銀粉末が好ましい。また、得られるシリコーン硬化物に熱伝導性を付与する場合には、アルミナ粉末が好ましい。それらの形状としては、破砕状、球状、繊維状、柱状、フレーク状、鱗状、板状、コイル状が例示される。その粒径は特に限定されないが、通常、最大粒径が200μm以下であり、平均粒子径が0.001〜50μmの範囲内であることが好ましい。
【0053】
上記組成物において、(D)成分の含有量は特に限定されないが、(A)成分100質量部に対して5,000質量部以下であることが好ましく、さらには、10〜4,000質量部の範囲内であることが好ましく、特には、50〜4,000質量部の範囲内であることが好ましい。また、(D)成分として、上記の金属微粉末や熱伝導性粉末以外の充填剤を用いる場合には、(D)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して2,000質量部以下であることが好ましく、さらには、10〜2,000質量部の範囲内であることが好ましく、特には、50〜1,000質量部の範囲内であることが好ましい。なお、この形状が板状や鱗片状である場合は、得られるシリコーン硬化物の特定方向での硬化収縮率を減少することができるので好ましい。
【0054】
また、上記組成物には、得られる硬化性シリコーン組成物の硬化性、作業性などを改善し、得られるシリコーン硬化物の接着性を向上させたり、弾性率を調整するため、(E)有機エポキシ化合物を含有しても良い。この(E)成分の25℃における性状は限定されず、液体あるいは固体であるが、好ましくは、液状である。このような(E)成分としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂が例示される。上記組成物において、この(E)成分の含有量は限定されないが、(A)成分100質量部に対して500質量部以下であることが好ましく、特に、0.1〜500質量部の範囲内であることが好ましい。
【0055】
さらに、上記組成物には、(A)成分中に(D)成分を良好に分散させるため、あるいは得られるシリコーン硬化物の半導体チップや回路基板等への接着性を向上させるために(F)カップリング剤を含有してもよい。この(F)成分としては、チタネートカップリング剤、シランカップリング剤等のカップリング剤が例示される。このチタネートカップリング剤としては、i−プロポキシチタントリ(i−イソステアレート)が例示される。また、このシランカップリング剤としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ基含有アルコキシシラン;N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基含有アルコキシシラン;3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト基含有アルコキシシランが例示される。上記組成物において、この(F)成分の含有量は特に限定されないが、(A)成分100質量部に対して10質量部以下であることが好ましく、特に、0.01〜10質量部の範囲内であることが好ましい。
【0056】
また、上記組成物には、その他任意の成分として、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、メチルフェニルジエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン等のアルコキシシランを含有してもよい。
【0057】
上記組成物は、(A)成分、(B)成分、および必要によりその他の成分を混合することにより調製される。これらの成分を混合する方法は特に限定されないが、(A)成分、(B)成分、およびその他の任意の成分を同時に配合する方法;(A)成分と(B)成分をプレミックスした後、その他任意の成分を配合する方法が例示される。これらの成分を混合する混合装置は特に限定されず、例えば、一軸または二軸の連続混合機、二本ロール、ロスミキサー、ホバートミキサー、デンタルミキサー、プラネタリミキサー、ニーダーミキサーが挙げられる。
【0058】
本方法において用いられる硬化性シリコーン組成物は、半導体チップやその結線部の保護剤という用途の他に、シリコーン硬化物を半導体チップや回路基板の絶縁層、あるいは半導体チップや回路基板の緩衝層として利用することができる。本方法において、シリコーン硬化物の性状は限定されず、例えば、ゴム状、硬質ゴム状、レジン状が挙げられ、特に、その複素弾性率が2GPa以下であることが好ましい。
【0059】
本方法によりシリコーン硬化物で封止した半導体装置としては、半導体チップを実装した回路基板、回路基板に電気的に接続する前の半導体チップ、あるいは個片の半導体半導体装置に切断前の半導体ウェハーが例示される。このような半導体装置としては、半導体チップとその配線基板および複数のリード線が半導体チップと配線基板とをワイヤーボンディングした半導体装置を図3に示した。図3で示される半導体装置は、半導体チップ10がダイボンド剤によって、ポリイミド樹脂製、エポキシ樹脂製、BTレジン製、あるいはセラミック製の回路基板12に搭載した後、金線あるいはアルミニウム線からなるボンディングワイヤによって回路基板12上にワイヤボンディグンされている。なお、他の半導体装置として、半導体チップがハンダボールあるいは導電性バンプにより回路基板に電気的に接続されているものが例示され、この半導体装置では、ハンダボールあるいは導電性バンプを補強する目的でアンダーフィル剤が封入されていてもよい。このアンダーフィル剤としては、硬化性エポキシ樹脂組成物、硬化性シリコーン組成物が用いられる。図3で示される半導体装置では、シリコーン硬化物で封止した後に、この半導体装置を他の回路基板に接合するために、半導体チップ10が実装されている回路基板12の下面に外部電極、例えばハンダボールを形成されている。回路基板上に複数個の半導体チップが同時に封止された場合は、ソーイング若しくは打ち抜きによって個々の半導体装置に切断される。
【0060】
本方法において、上記のような圧縮成形機を用いて半導体装置をシリコーン硬化物により封止する際、硬化性シリコーン組成物が直接金型面に接触すると、金型面にヌメリ感を有する物質が付着することがあるので、前記のような剥離性フィルムを介して圧縮成形することが好ましい。剥離性フィルムを使用することにより、連続的に封止することが可能となり、金型の清掃等の間隔を伸ばすことができるので、生産効率を高めることができる。
【0061】
本方法において、圧縮成形の条件は限定されないが、回路基板や半導体チップへの応力を低減させることから、加熱温度は60℃〜130℃の範囲内であることが好ましい。また、金型を予め加熱しておくことにより、圧縮成形のサイクルタイムを短縮することができる。さらに、用いる硬化性シリコーン組成物の種類にもよるが、予め下型により余熱されている回路基板上に硬化性シリコーン組成物を滴下することにより、硬化性シリコーン組成物の広がり性をコントロールすることもできる。
【0062】
次に、本発明の半導体装置を説明する。
本発明の半導体装置は、上記の方法により製造されることを特徴とする。このような半導体装置は、封止樹脂にボイドの混入がないので、外観不良や耐湿性の低下を招来することがない。また、本発明の半導体装置は、封止樹脂の厚さが精度良くコントロールされているので、電子機器の小型化、薄型化に対応することができる。
【実施例】
【0063】
本発明の半導体装置の製造方法および半導体装置を実施例、比較例により詳細に説明する。なお、実施例中の質量平均分子量は、トルエンを溶媒としてゲルパーミェーションクロマトグラフィーで測定した標準ポリスチレン換算の質量平均分子量である。
【0064】
[参考例1]
式:
X−CH2CH2−[(CH3)2SiO]33(CH3)2Si−CH2CH2−X
{式中、Xは、平均単位式:
[G(CH3)2SiO1/2]9[−(CH3)2SiO1/2]1[SiO4/2]6
(式中、Gは3−グリシドキシプロピル基を表す。)
で表されるシロキサン残基である。}
で表されるジメチルポリシロキサン(質量平均分子量=36,000、粘度=4,720mPa・s、エポキシ当量=360)31.0質量部、式:
【化17】

で表されるオルガノトリシロキサン(粘度=3,800mPa・s、フェノール性水酸基当量=317)14.0質量部、アミン系硬化促進剤を40質量%含有するビスフェノールA型エポキシ樹脂の混合物からなるカプセル型アミン系硬化促進剤(旭化成株式会社製のHX−3721)10.0質量部、球状非晶質シリカ微粉末(株式会社アドマテックス製のアドマファイン、平均粒子径=1.5μm)60.0質量部、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン1質量部を混合して硬化性シリコーン組成物を調製した。この硬化性シリコーン組成物の粘度、この硬化性シリコーン組成物を硬化して得られるシリコーン硬化物の複素弾性率、接着性、および反りを次のようにして評価し、それらの結果を表1に示した。
【0065】
[粘度]
硬化性シリコーン組成物の25℃における粘度を、E型粘度計(株式会社トキメック製のDIGITAL VISCOMETER DV-U-E II型)を用いて、回転数2.5rpmの条件で測定した。
【0066】
[複素弾性率]
硬化性シリコーン組成物を70mmHgで脱泡した後、幅10mm、長さ50mm、深さ2mmのキャビティを有する金型に充填し、150℃、2.5MPaの条件で60分間プレス硬化させた後、180℃のオーブン中で2時間2次加熱してシリコーン硬化物の試験片を作製した。この試験片をARES粘弾性測定装置(Reometric Scientific社製のRDA700)を使用し、ねじれ0.05%、振動数1Hzの条件で、25℃における複素粘弾性率を測定した。
【0067】
[接着性]
硬化性シリコーン組成物約1cm3を、被着体{ガラス板(パルテック製のフロート板ガラス)、ニッケル板(パルテック製のSPCC−SB)、銅板(パルテック製のC1100P)、アルミニウム板(パルテック製のA1050P)、金メッキ板(日本テストパネル製のC2801P)}上に塗布し、125℃のオーブン中で2時間加熱した後、180℃のオーブン中で2時間加熱して接着性評価用試験体を作製した。これらの試験体からシリコーン硬化物をデンタルスパチュラを用いて剥がした際の剥離モードを顕微鏡下で目視により観察した。この剥離モードが、凝集破壊した場合をCF、薄皮が残った状態で界面剥離した場合をTCF、界面剥離した場合をAF、として評価した。
【0068】
[反り]
ポリイミド樹脂製フィルム(宇部興産株式会社製のUpilex125S、厚さ=125μm)上に金型{10mm×50mm×1mm(厚さ)}をセットし、硬化性シリコーン組成物を金型中に充填した後、テフロン(登録商標)シートで覆い、110℃で10分間プレス成型した。その後、金型からポリイミドに接着した半硬化状態のシリコーン硬化物を取り出し、180℃の熱風循環式オーブン中で2時間ポストキュアした。その後、室温まで冷却し、ポリイミド樹脂製フィルムの反りを次のようにして測定した。ポリイミド樹脂製フィルムを平らなテーブルの上に置き、長方形の距離の短い方向をテーブル上に固定し、反対側の端部2点のテーブルからの距離をノギスにより測定した。この2点の平均値を反りとした。
【0069】
[参考例2]
式:
X−CH2CH2−[(CH3)2SiO]85(CH3)2Si−CH2CH2−X
{式中、Xは、平均単位式:
[G(CH3)2SiO1/2]9[−(CH3)2SiO1/2]1[SiO4/2]6
(式中、Gは3−グリシドキシプロピル基を表す。)
で表されるシロキサン残基である。}
で表されるジメチルポリシロキサン(質量平均分子量=78,000、粘度=22,000mPa・s、エポキシ当量=450)20.0質量部、ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン株式会社製のエピコート828、エポキシ当量=190)8.0質量部、式:
【化18】

で表されるオルガノトリシロキサン(粘度=2,600mPa・s、フェノール性水酸基当量=330)23.0質量部、アミン系硬化促進剤を35質量%含有するビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合物からなるカプセル型アミン系硬化促進剤(旭化成株式会社製のHXA−4921HP)5.0質量部、乾式シリカ微粉末(平均一次粒径=7〜16nm)4質量部、および球状非晶質シリカ微粉末(平均粒子径=1.5μm)40.0質量部を混合して硬化性シリコーン組成物を調製した。この硬化性シリコーン組成物およびシリコーン硬化物の特性を参考例1と同様にして評価し、その結果を表1に示した。
【0070】
[参考例3]
平均単位式:
【化19】

で表されるオルガノポリシロキサン(質量平均分子量=1,000、粘度=1,290mPa・s、エポキシ当量=267)8.9質量部、式:
X−CH2CH2−[(CH3)2SiO]85(CH3)2Si−CH2CH2−X
{式中、Xは、平均単位式:
[G(CH3)2SiO1/2]9[−(CH3)2SiO1/2]1[SiO4/2]6
(式中、Gは3−グリシドキシプロピル基を表す。)
で表されるシロキサン残基である。}
で表されるジメチルポリシロキサン(質量平均分子量=78,000、粘度=22,000mPa・s、エポキシ当量=450)10.0質量部、式:
【化20】

で表されるオルガノトリシロキサン(粘度=2,600mPa・s、フェノール性水酸基当量=330)19.0質量部(本組成物中のエポキシ基に対する本成分中のフェノール性水酸基のモル比が1.0となる量)、カーボンブラック(電気化学工業株式会社製のデンカブラック)0.1質量部、アミン系硬化促進剤を35質量%含有するビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合物からなるカプセル型アミン系硬化促進剤(旭化成株式会社製のHXA−4921HP)1.0質量部、球状非晶質シリカ(電気化学工業株式会社製、平均粒径=3.3μm)54.0質量部、球状非晶質シリカ(電気化学工業株式会社製、平均粒径=0.3μm)6.0質量部、および3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン1質量部を混合して硬化性シリコーン組成物を調製した。この硬化性シリコーン組成物およびシリコーン硬化物の特性を参考例1と同様に評価し、その結果を表1に示した。
【0071】
[参考例4]
平均単位式:
【化21】

で表されるオルガノポリシロキサン(質量平均分子量=1,000、粘度=1,290mPa・s、エポキシ当量=267)13.0質量部、式:
X−CH2CH2−[(CH3)2SiO]85(CH3)2Si−CH2CH2−X
{式中、Xは、平均単位式:
[G(CH3)2SiO1/2]9[−(CH3)2SiO1/2]1[SiO4/2]6
(式中、Gは3−グリシドキシプロピル基を表す。)
で表されるシロキサン残基である。}
で表されるジメチルポリシロキサン(質量平均分子量=78,000、粘度=22,000mPa・s、エポキシ当量=450)6.0質量部、式:
【化22】

で表されるオルガノトリシロキサン(粘度=2,600mPa・s、フェノール性水酸基当量=330)16.0質量部、球状非晶質シリカ(電気化学工業株式会社製、平均粒径=3.3μm)49.0質量部、球状非晶質シリカ(電気化学工業株式会社製、平均粒径=0.3μm)5.0質量部、アミン系硬化促進剤を40質量%含有するビスフェノールA型エポキシ樹脂からなるカプセル型アミン系硬化促進剤(旭化成株式会社製のHX−3721)1.0質量部、柱状晶硫酸バリウム粉末(堺化学工業株式会社製、B−30)10.0質量部を混合して硬化性シリコーン組成物を調製した。この硬化性シリコーン組成物およびシリコーン硬化物の特性を参考例1と同様に評価し、その結果を表1に示した。
【0072】
[参考例5]
式:
X−CH2CH2−[(CH3)2SiO]85(CH3)2Si−CH2CH2−X
{式中、Xは、平均単位式:
[G(CH3)2SiO1/2]9[−(CH3)2SiO1/2]1[SiO4/2]6
(式中、Gは3−グリシドキシプロピル基を表す。)
で表されるシロキサン残基である。}
で表されるジメチルポリシロキサン(質量平均分子量=78,000、粘度=22,000mPa・s、エポキシ当量=450)12.0質量部、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン1.0質量部、球状非晶質シリカ微粉末(株式会社アドマテックス製のアドマファイン、平均粒子径=1.5μm)38.0質量部、柱状晶硫酸バリウム粉末(堺化学工業株式会社製)15.0質量部、アミン系硬化促進剤を40質量%含有するビスフェノールA型エポキシ樹脂からなるカプセル型アミン系硬化促進剤(旭化成株式会社製のHX−3721)1.0質量部、鱗片状ガラス粉末(日本板硝子株式会社製、平均粒子径=15μm)8.0質量部、式:
【化23】

で表されるポリジメチルシロキサン(粘度=80mPa・s、フェノール性水酸基当量=700)15.0質量部を混合して硬化性シリコーン組成物を調製した。この硬化性シリコーン組成物およびシリコーン硬化物の特性を参考例1と同様に評価し、その結果を表1に示した。
【0073】
[参考例6]
平均単位式:
【化24】

で表されるオルガノポリシロキサン(質量平均分子量=1,000、粘度=1,290mPa・s、エポキシ当量=267)4.0質量部、式:
X−CH2CH2−[(CH3)2SiO]85(CH3)2Si−CH2CH2−X
{式中、Xは、平均単位式:
[G(CH3)2SiO1/2]9[−(CH3)2SiO1/2]1[SiO4/2]6
(式中、Gは3−グリシドキシプロピル基を表す。)
で表されるシロキサン残基である。}
で表されるジメチルポリシロキサン(質量平均分子量=78,000、粘度=22,000mPa・s、エポキシ当量=450)5.0質量部、式:
【化25】

で表されるオルガノトリシロキサン(粘度=2,600mPa・s、フェノール性水酸基当量=330)9.0質量部、球状アルミナ(マイクロン社製、平均粒径=8.0μm)80.0質量部、アミン系硬化促進剤を40質量%含有するビスフェノールA型エポキシ樹脂からなるカプセル型アミン系硬化促進剤(旭化成株式会社製のHX−3721)1.5質量部を混合して硬化性シリコーン組成物を調製した。この硬化性シリコーン組成物およびシリコーン硬化物の特性を参考例1と同様に評価し、その結果を表1に示した。
【0074】
[参考例7]
ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン株式会社製のエピコート828、エポキシ当量=190)27.0質量部、液状のメチルヘキサヒドロ無水フタル酸(日立化成工業株式会社製のHN−5500)11.0質量部、アミン系硬化促進剤を40質量%含有するビスフェノールA型エポキシ樹脂からなるカプセル型アミン系硬化促進剤(旭化成株式会社製のHX−3088)1.0質量部、球状非晶質シリカ微粉末(株式会社アドマテックス製のアドマファイン、平均粒子径=1.5μm)60.0質量部、および3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン1質量部を混合して硬化性エポキシ樹脂組成物を調製した。この硬化性エポキシ樹脂組成物およびエポキシ樹脂硬化物の特性を参考例1と同様に評価し、その結果を表1に示した。
【0075】
[参考例8]
分子鎖両末端がジメチルビニルシリル基で封鎖されたジメチルポリシロキサン(粘度=2,000mPa・s)85.3質量部、分子鎖両末端がトリメチルシリル基で封鎖されたメチルハイドロジェンポリシロキサン(粘度=50mPa・s)1.3質量部、白金の13−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体(本組成物中の白金金属の含有量が質量単位で5ppmとなる量)、および乾式シリカ微粉末(平均一次粒子径=7〜16nm)12.3質量部を混合して硬化性シリコーン組成物を調製した。この硬化性シリコーン組成物およびシリコーン硬化物の特性について、硬化性シリコーン組成物の粘度を回転数20rpmで測定した以外は参考例1と同様に評価し、その結果を表1に示した。
【0076】
【表1】

【0077】
[実施例1]
本実施例において、図3で示した半導体装置を作製した。すなわち、70mm×160mmサイズのBT樹脂製回路基板(厚さ200μmのBT樹脂フィルムの片面に、厚さ17μmのエポキシ樹脂製接着剤層を介して厚さ18μmの銅箔が積層されており、この銅箔により回路パターンが形成され、この回路パターンのワイヤボンディングするための部分を除き、回路基板の表面は感光性ソルダーマスクにより被覆されている。)に厚さ35μmのエポキシ樹脂製ダイボンド剤層を介して10mm×10mmサイズの半導体チップを接合した。次に、この半導体チップのバンプと回路パターンとを電気的に接続するため金製ボンディングワイヤによりワイヤボンディングした。この回路基板には、合わせて27個の半導体チップが9個ずつ3ブロックに分けて実装されており、それぞれ回路パターンにワイヤーボンディングされている。
【0078】
この半導体チップを実装したBT樹脂製回路基板上の所定の箇所に参考例1で調製した硬化性シリコーン組成物を室温で塗布した後、この回路基板を図1で示される圧縮成形機(アピックヤマダ社製、圧縮成型機、型式MZ−635−01)の下型に載置した。次に、この圧縮成型機の下型と上型(金型の汚染防止、シリコーン硬化物の離型性向上のため、この上型の内側にはテトラフルオロエチレン樹脂製剥離性フィルムがエア吸引により密着している。上金型に40mm×170mm×1mmの凹みあり)を合わせ、回路基板を狭持した状態で、150℃で35kgf/cm2の荷重をかけて3分間圧縮成形した。その後、シリコーン硬化物で封止された半導体装置を金型から取り出し、これを180℃のオーブンで1時間加熱処理した。この半導体装置は、半導体チップ表面上における厚さが400μmであるシリコーン硬化物で封止されていた。この半導体装置の外観、反り、耐擦傷性を次のように評価し、それらの結果を表2に示した。
【0079】
[外観]
シリコーン硬化物で封止した半導体装置について、中心部の厚みと外周部の厚みの差が5%未満である場合を○、5%以上、10%未満である場合を△、10%以上である場合を×、として評価した。
【0080】
[反り]
半導体装置を個片に切断する前の、シリコーン硬化物で封止した回路基板の長辺側を固定した時の他端長辺側の高さを測定し、これを反りとして示した。
【0081】
[耐擦傷性]
シリコーン硬化物の表面をポリプロピレン樹脂製へらで擦り、表面が白く傷ついた場合を×、薄く白くなる場合を△、白くならない場合を○、として評価した。
【0082】
[実施例2]
実施例1において、参考例1で調製した硬化性シリコーン組成物の代わりに参考例2で調製した硬化性シリコーン組成物を用いた以外は実施例1と同様にして半導体装置を作製した。この半導体装置の特性を実施例1と同様に評価し、その結果を表2に示した。
【0083】
[実施例3]
実施例1において、参考例1で調製した硬化性シリコーン組成物の代わりに参考例3で調製した硬化性シリコーン組成物を用いた以外は実施例1と同様にして半導体装置を作製した。この半導体装置の特性を実施例1と同様に評価し、その結果を表2に示した。
【0084】
[実施例4]
実施例1において、参考例1で調製した硬化性シリコーン組成物の代わりに参考例4で調製した硬化性シリコーン組成物を用いた以外は実施例1と同様にして半導体装置を作製した。この半導体装置の特性を実施例1と同様に評価し、その結果を表2に示した。
【0085】
[実施例5]
実施例1において、参考例1で調製した硬化性シリコーン組成物の代わりに参考例5で調製した硬化性シリコーン組成物を用いた以外は実施例1と同様にして半導体装置を作製した。この半導体装置の特性を実施例1と同様に評価し、その結果を表2に示した。
【0086】
[実施例6]
実施例1において、参考例1で調製した硬化性シリコーン組成物の代わりに参考例6で調製した硬化性シリコーン組成物を用いた以外は実施例1と同様にして半導体装置を作製した。この半導体装置の特性を実施例1と同様に評価し、その結果を表2に示した。
【0087】
[比較例1]
実施例1において、参考例1で調製した硬化性シリコーン組成物の代わりに参考例7で調製した硬化性エポキシ樹脂組成物を用いた以外は実施例1と同様にして半導体装置を作製した。この半導体装置の特性を実施例1と同様に評価し、その結果を表2に示した。
【0088】
[比較例2]
実施例1において、参考例1で調製した硬化性シリコーン組成物の代わりに参考例8で調製した硬化性シリコーン組成物を用いた以外は実施例1と同様にして半導体装置を作製した。この半導体装置の特性を実施例1と同様に評価し、その結果を表2に示した。
【0089】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明の半導体装置の製造方法で用いられる圧縮成形機の構成を示す説明図である。
【図2】本発明の半導体装置の製造方法で用いられる圧縮成形機により半導体装置を樹脂封止する状態を示す説明図である。
【図3】本発明の実施例で作製した半導体装置の断面図である。
【符号の説明】
【0091】
10 半導体チップ
12 回路基板
14 シリコーン硬化物
16 半導体装置
20 固定プラテン
22 下型ベース
23 下型
24 ヒータ
26 下クランプストッパ
30 可動プラテン
32 上型ベース
33 上型ホルダ
34 上型
34a キャビティ凹部
36 クランパ
36a、36b エア孔
37 スプリング
38 ヒータ
39 上クランプストッパ
40a、40b 剥離性フィルム
42a、42b 供給ロール
44a、44b 巻取りロール
46 ガイドローラ
48 静電除去装置
50 硬化性シリコーン組成物


【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体装置を金型中に載置して、該金型と該半導体装置との間に供給した硬化性シリコーン組成物を圧縮成形することによりシリコーン硬化物で封止した半導体装置を製造する方法であって、前記硬化性シリコーン組成物が、(A)エポキシ基含有シリコーンと(B)エポキシ樹脂用硬化剤から少なくともなることを特徴とする、半導体装置の製造方法。
【請求項2】
(A)成分が、(A1)平均単位式:
(R13SiO1/2)a(R22SiO2/2)b(R3SiO3/2)c
{式中、R1、R2、およびR3は同じか、または異なる、置換もしくは非置換の一価炭化水素基またはエポキシ基含有一価有機基(但し、R3の20モル%以上はアリール基)であり、a、b、およびcはそれぞれ、0≦a≦0.8、0≦b≦0.8、0.2≦c≦0.9、かつa+b+c=1を満たす数である。}
で表され、一分子中に少なくとも2個の前記エポキシ基含有一価有機基を有するオルガノポリシロキサンおよび/または(A2)一般式:
A−R5−(R42SiO)m42Si−R5−A
{式中、R4は脂肪族不飽和結合を有さない置換もしくは非置換の一価炭化水素基であり、R5は二価有機基であり、Aは平均単位式:
(XR42SiO1/2)d(SiO4/2)e
(式中、R4は前記と同じであり、Xは単結合、水素原子、前記R4で表される基、エポキシ基含有一価有機基、またはアルコキシシリルアルキル基であり、但し、一分子中、少なくとも1個のXは単結合であり、少なくとも2個のXはエポキシ基含有一価有機基であり、dは正数であり、eは正数であり、d/eは0.2〜4の正数である。)
で表されるシロキサン残基であり、mは1以上の整数である。}
で表されるジオルガノシロキサンであることを特徴とする、請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
(B)成分がフェノール性水酸基を有する化合物であることを特徴とする、請求項1記載の製造方法。
【請求項4】
(B)成分が、フェノール性水酸基を一分子中に少なくとも2個有するオルガノシロキサンである、請求項3記載の製造方法。
【請求項5】
(B)成分が、一般式:
63SiO(R62SiO)nSiR63
{式中、R6は置換もしくは非置換の一価炭化水素基またはフェノール性水酸基含有一価有機基(但し、一分子中、少なくとも2個のR6は前記フェノール性水酸基含有一価有機基)であり、nは0〜1,000の整数である。}
で表されオルガノシロキサンである、請求項4記載の製造方法。
【請求項6】
(B)成分の含有量が、(A)成分100質量部に対して0.1〜500質量部であることを特徴とする、請求項1記載の製造方法。
【請求項7】
硬化性シリコーン組成物が、さらに、(C)硬化促進剤を含有することを特徴とする、請求項1記載の製造方法。
【請求項8】
(C)成分がカプセル型アミン系硬化促進剤であることを特徴とする、請求項7記載の製造方法。
【請求項9】
(C)成分の含有量が、(A)成分100質量部に対して50質量部以下であることを特徴とする、請求項7記載の製造方法。
【請求項10】
硬化性シリコーン組成物が、さらに、(D)充填剤を含有することを特徴とする、請求項1記載の製造方法。
【請求項11】
(D)成分の含有量が、(A)成分100質量部に対して2,000質量部以下であることを特徴とする、請求項10記載の製造方法。
【請求項12】
硬化性シリコーン組成物が、さらに、(E)有機エポキシ化合物を含有することを特徴とする、請求項1記載の製造方法。
【請求項13】
(E)成分の含有量が、(A)成分100質量部に対して500質量部以下であることを特徴とする、請求項12記載の製造方法。
【請求項14】
硬化性シリコーン組成物が、さらに、(F)カップリング剤を含有することを特徴とする、請求項1記載の製造方法。
【請求項15】
(F)成分の含有量が、(A)成分100質量部に対して10質量部以下であることを特徴とする、請求項14記載の製造方法。
【請求項16】
シリコーン硬化物の複素弾性率が2GPa以下であることを特徴とする、請求項1記載の製造方法。
【請求項17】
請求項1乃至16のいずれか1項に記載の製造方法により得られる半導体装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−224146(P2007−224146A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−46872(P2006−46872)
【出願日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【出願人】(000110077)東レ・ダウコーニング株式会社 (338)
【Fターム(参考)】