説明

半導体装置の製造方法および半導体製造装置

【課題】ダイボンディング用ペーストを安定した塗布量で供給することのできるダイボンディング技術を提供する。
【解決手段】ダイボンディング用のペーストを供給するディスペンサは、シールディスク51を備えている。シールディスク51の上面には、吸入孔52に接続される吸入溝54と吐出孔53に接続される吐出溝55とが形成され、吸入溝54は、シールディスク51の上面において、吐出溝55の周囲全体を囲むように形成されている。このシールディスク51をディスペンサに取り付けることにより、バルブディスクとシールディスク51との摺動面にペーストが漏れ出す不具合を抑制することができるので、実装ベースに供給されるペーストの塗布量の変動を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造技術に関し、特に、ダイシングフィルムに貼り付けた半導体ウエハをダイシングして複数の半導体チップに分割した後、それぞれの半導体チップをダイシングフィルムから剥離する工程、および剥離された半導体チップをダイボンディング用のペーストを介して実装ベース上に搭載する工程に適用して有効な技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体チップ(以下、単にチップという)を配線基板やリードフレームなどの実装ベース上に搭載して半導体パッケージを組み立てる工程の一部として、半導体ウエハ(以下、単にウエハという)からチップを分離してこれをピックアップする工程と、ピックアップしたチップを実装ベース上に接着するペレット付け工程とがある。このピックアップ工程と、これに続くペレット付け工程は、ダイボンディング工程とも呼ばれる。
【0003】
ピックアップ工程では、まず所望の集積回路を形成したウエハの裏面にダイシングテープを貼り付けた状態でダイシングを行い、ウエハを複数個のチップに分割する。次に、ダイシングテープの裏面に針などを押し当ててチップを1個ずつ剥離した後、剥離したチップをコレットで保持しながら実装ベース上に搬送する。
【0004】
次のペレット付け工程では、ディスペンサと呼ばれるペースト塗布装置を使って実装ベース上にダイボンディング用のペースト(接着剤)を供給し、このペーストを介してチップを実装ベース上に接着する。また、あらかじめ半導体チップの裏面にダイアタッチフィルム(Die Attach Film)と呼ばれるフィルム状の接着材料を貼り付けておき、このダイアタッチフィルムを介してチップを実装ベース上に接着する方法もある。ダイアタッチフィルムを使用する場合は、ピックアップ工程でウエハの裏面にダイアタッチフィルムとダイシングテープとを貼り付けてダイシングを行う。そして、分割されたチップをダイアタッチフィルムと共にダイシングテープから剥離し、実装ベース上に搬送する。
【0005】
特開2004−146727号公報(特許文献1)は、ウエハシート上のウエハをダイシングした後、ウエハシートをエキスパンドすることによって、ウエハをチップに分割する技術を開示している。
【0006】
特開平11−214487号公報(特許文献2)は、ウエハシートをロックリングでエキスパンドする技術を開示している。
【0007】
特開2004−273895号公報(特許文献3)および特開2004−193241号公報(特許文献4)は、ダイアタッチフィルムを貼り付けたウエハをチップに分割する技術を開示している。
【0008】
特開2000−265943号公報(特許文献5)および特開2002−346462号公報(特許文献6)は、ペースト塗布装置のプランジャポンプに繋がったシールディスクの外周にかき取り溝を形成し、シール面から漏れたペーストをかき取り溝に集めることによって、シール面の密着性を向上させる技術を開示している。
【0009】
特開平9−162205号公報(特許文献7)は、磁石を用いた電気回路によって、ダイシングテープと針との接触、非接触を検出する技術を開示している。
【0010】
特開平11−344536号公報(特許文献8)、特開平11−183573号公報(特許文献9)、特開2000−147063号公報(特許文献10)および特開2003−121494号公報(特許文献11)は、プローブ試験用の針を磁石で半固定する技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2004−146727号公報
【特許文献2】特開平11−214487号公報
【特許文献3】特開2004−273895号公報
【特許文献4】特開2004−193241号公報
【特許文献5】特開2000−265943号公報
【特許文献6】特開2002−346462号公報
【特許文献7】特開平9−162205号公報
【特許文献8】特開平11−344536号公報
【特許文献9】特開平11−183573号公報
【特許文献10】特開2000−147063号公報
【特許文献11】特開2003−121494号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明者は、ダイアタッチフィルムを使用するダイボンディング工程、およびペースト塗布装置を使用するダイボンディング工程には、それぞれ次のような問題があることを見出した。
【0013】
ウエハをダイシングする際に使用するダイシングテープは、テープ基材とその一面に塗布した紫外線硬化型粘着剤で構成されている。このため、ダイシングテープに貼り付けたウエハをダイシングした後、ダイシングテープの裏面側から紫外線を照射して粘着剤を硬化させると、その粘着力が弱まり、チップがダイシングテープから剥離し易くなる。
【0014】
ところが、ウエハとダイシングテープとの間にダイアタッチフィルムが介在している場合は、フルカットダイシングを行っても隣接のダイアタッチフィルムが分離しきれず、チップがダイシングテープから剥離し難いという問題がある。
【0015】
また、ウエハとダイシングテープとの間にダイアタッチフィルムが介在している場合は、その後、ダイシングテープを引き延ばすことによって、ダイアタッチフィルムを切断する。なお、ウエハをダイシングする際、ダイアタッチフィルムは分離されていても、いなくともよい。しかし、ダイシングテープが引き延ばされた状態でチップをピックアップすると、チップに局所的な応力が加わって割れることがある。特に、最近は、半導体パッケージの高密度実装を推進するために、厚さを数十μm程度まで薄く加工したチップが多用されているため、ピックアップの際に割れが発生し易くなるという問題がある。
【0016】
また、チップのピックアップ工程では、ダイシングテープの裏面に針などを押し当ててチップを1個ずつ剥離するが、チップのサイズが大きい場合は、針の本数を増やし、チップのサイズが小さい場合は、針の本数を減らす必要がある。そのため、チップのサイズに応じて複数種類のピックアップ装置を用意しなければならないので、ピックアップ工程の設備コストが増加するという問題もある。
【0017】
次に、ペースト塗布装置を使用するダイボンディング工程の問題点を説明する。図34は、本発明者が検討したディスペンサの主要部を示す断面図、図35は、このディスペンサの機構部品であるシールディスクの平面図、図36は、図35のA−A線に沿った断面図である。
【0018】
ディスペンサ60は、主筒61と、主筒61の下端にボルト止めされたキャップ62と、キャップ62の下端にボルト止めされたブロック63とを備えている。ブロック63の内部には吸入ポート64と吐出ポート65とが設けられている。吐出ポート65の下端部にはノズル66が連結されており、吸入ポート64の一端部には、液送チューブ67を介してシリンジ68が接続されている。シリンジ68は、ダイボンディング用のペーストを貯蔵するタンクであり、このペーストを空気圧などによって吸入ポート64側に輸送する構造になっている。
【0019】
キャップ62の内部には、合成樹脂やセラミックなどからなる円筒状のシールディスク69が固定されている。シールディスク69には、前記吸入ポート64の他端部に連通される吸入孔70と、吐出ポート65の上端部に連通される吐出孔71とが設けられている。また、シールディスク69の上面の一部には、吸入孔70に接続される略円弧状の吸入溝72が形成され、他の一部には、吐出孔71に接続される略円弧状の吐出溝73が形成されている。
【0020】
シールディスク69の上部には、セラミックなどからなる円筒状のバルブディスク74が回転可能に配置されており、その下面がシールディスク69の上面に対して摺動しながら回転するようになっている。バルブディスク74には、その上下面を貫通する、例えば3本のプランジャ挿入孔75が形成されている。
【0021】
バルブディスク74の上部には、その下端部がプランジャ挿入孔75に挿入される、例えば3本のプランジャ76が上下動可能に配置されている。
【0022】
図示しないモータなどの回転駆動手段によってバルブディスク74を回転させると、図示しないカム機構によってモータの回転が上下運動に変換され、プランジャ76がバルブディスク74のプランジャ挿入孔75内で上下方向に進退する。
【0023】
バルブディスク74の回転によって、プランジャ挿入孔75がシールディスク69の吸入溝72と重なる位置に移動すると、プランジャ76が上昇し、プランジャ挿入孔75内に負圧が生じる。そのため、この負圧によって、シリンジ68内のペーストが液送チューブ67、吸入ポート64、吸入孔70および吸入溝72を通ってプランジャ挿入孔75内に吸入される。次に、バルブディスク74がさらに回転し、プランジャ挿入孔75が吐出溝73と重なる位置に移動すると、プランジャ76が下降し、プランジャ挿入孔75内のペーストを、吐出溝73、吐出孔71、吐出ポート65を通ってノズル66の先端から吐出させる。このようにして、バルブディスク74が一回転する毎にペーストの吸引と吐出が繰り返され、実装ベースの所定位置に所定量のペーストが塗布される。
【0024】
上記ディスペンサ60は、バルブディスク74の下面がシールディスク69の上面に対して摺動しながら回転する構造になっている。そのため、バルブディスク74の下面とシールディスク69の上面のそれぞれの平坦度のばらつきによって、摺動面に僅かな隙間が生じると、プランジャ76の下降によって加圧されたプランジャ挿入孔75内や吐出溝73内のペーストの一部が上記摺動面に漏れ出す。
【0025】
ところが、ダイボンディング用のペーストには、シリコンフィラーのような硬い充填剤が含まれているので、ペーストが摺動面に漏れ出した状態でバルブディスク74を回転し続けると、摺動面が摩耗して隙間が広がるために、ペーストが摺動面の外部に滲み出すようになる。その結果、実装ベースに供給されるペーストの塗布量が変動するという問題が生じる。また、摺動面の外部に滲み出したペーストがディスペンサ60の内部で固化すると、機構部品の円滑な動作を妨げることになるので、ディスペンサ60のメンテナンス頻度が増加するという問題も生じる。
【0026】
本発明の目的は、ダイアタッチフィルムを介してダイシングテープに貼り付けたチップを、割れや欠けが生じることなく、速やかにピックアップすることのできるダイボンディング技術を提供することにある。
【0027】
本発明の他の目的は、ダイシングテープに貼り付けたチップをピックアップする装置のコストを低減する技術を提供することにある。
【0028】
本発明の他の目的は、ダイボンディング用のペーストを安定した塗布量で実装基板上に供給することのできるダイボンディング技術を提供することにある。
【0029】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0030】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0031】
(1)本発明の好ましい一態様である半導体装置の製造方法は、
ディスペンサのノズルから吐出させたダイボンディング用のペーストを実装ベース上に供給した後、前記実装ベース上に前記ペーストを介して半導体チップを実装する工程を有する半導体装置の製造方法であって、
前記ディスペンサは、吸入ポートと吐出ポートとを備えたブロックと、前記ブロック上に固定され、前記ブロックに接する下面と前記下面に対抗する上面とを備えたシールディスクと、前記シールディスクの前記上面に当接して摺動回転する下面を備えると共に、その上下面を貫通するプランジャ挿入孔を備えたバルブディスクと、上下方向に移動可能に支持されると共に、その一部が前記バルブディスクの前記プランジャ挿入孔に挿入されるプランジャとを備え、
前記シールディスクは、前記ブロックの前記吸入ポートに連通される吸入孔と、前記ブロックの前記吐出ポートに連通される吐出孔とを備え、
前記シールディスクの前記上面には、前記吸入孔に接続される吸入溝と、前記吐出孔に接続される吐出溝とが形成され、
前記シールディスクの前記吸入溝は、前記シールディスクの前記上面において、前記吐出溝の周囲全体を囲むように形成されている。
【0032】
(2)本発明の好ましい一態様である半導体装置の製造方法は、
(a)半導体ウエハの裏面にダイシングフィルムを貼り付ける工程と、
(b)前記工程(a)の後、前記半導体ウエハをダイシングすることによって、前記半導体ウエハを複数個の半導体チップに分割する工程と、
(c)前記工程(b)の後、前記ダイシングフィルムの裏面をピックアップ手段で突き上げることによって、前記半導体チップを前記ダイシングフィルムから剥離する工程と、
(d)ディスペンサのノズルから吐出させたダイボンディング用のペーストを実装ベース上に供給する工程と、
(e)前記工程(c)でピックアップされた前記半導体チップを、前記ペーストを介して前記実装ベース上に実装する工程を有する半導体装置の製造方法であって、
前記ディスペンサは、吸入ポートと吐出ポートとを備えたブロックと、前記ブロック上に固定され、前記ブロックに接する下面と前記下面に対抗する上面とを備えたシールディスクと、前記シールディスクの前記上面に当接して摺動回転する下面を備えると共に、その上下面を貫通するプランジャ挿入孔を備えたバルブディスクと、上下方向に移動可能に支持されると共に、その一部が前記バルブディスクの前記プランジャ挿入孔に挿入されるプランジャとを備え、
前記シールディスクは、前記ブロックの前記吸入ポートに連通される吸入孔と、前記ブロックの前記吐出ポートに連通される吐出孔とを備え、
前記シールディスクの前記上面には、前記吸入孔に接続される吸入溝と、前記吐出孔に接続される吐出溝とが形成され、
前記シールディスクの前記吸入溝は、前記シールディスクの前記上面において、前記吐出溝の周囲全体を囲むように形成されている。
【0033】
(3)本発明の好ましい一態様である半導体装置の製造方法は、
(a)半導体ウエハの裏面にダイシングフィルムを貼り付ける工程と、
(b)前記工程(a)の後、前記半導体ウエハをダイシングすることによって、前記半導体ウエハを複数個の半導体チップに分割する工程と、
(c)前記工程(b)の後、前記ダイシングフィルムの裏面をピックアップ手段で突き上げることによって、前記半導体チップを前記ダイシングフィルムから剥離する工程とを含む半導体装置の製造方法であって、
前記ピックアップ手段は、前記ダイシングフィルムの裏面に接する先端部を有する複数本の針と、前記複数本の針の後端部を固定する磁石と、前記針の直径よりも僅かに大きい内径を有する複数の貫通孔を備え、前記複数の貫通孔のそれぞれに挿入された前記針を姿勢制御する針ホルダとを有し、
前記工程(c)は、前記ダイシングフィルムの裏面を前記複数本の針で突き上げる第1の工程と、前記第1の工程の後、前記ダイシングフィルムの裏面を、前記複数本の針の一部でさらに突き上げる第2の工程とを含んでいる。
【発明の効果】
【0034】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下の通りである。
【0035】
ダイアタッチフィルムを介してダイシングテープに貼り付けたチップを、割れや欠けが生じることなく、速やかにピックアップすることが可能となる。
【0036】
ダイシングテープに貼り付けたチップをピックアップする装置のコストを低減することが可能となる。
【0037】
ダイボンディング用のペーストを安定した塗布量で実装基板上に供給することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の一実施の形態である半導体装置の製造に用いる半導体チップの斜視図である。
【図2】半導体ウエハの研削工程を示す側面図である。
【図3】半導体ウエハにダイアタッチフィルムとダイシングテープを貼り付ける工程を示す側面図である。
【図4】半導体ウエハのダイシング工程を示す斜視図である。
【図5】半導体ウエハのダイシング工程を示す側面図である。
【図6】(a)、(b)、(c)は、半導体ウエハのダイシング工程におけるダイアタッチフィルムの状態を示す概略断面図である。
【図7】ピックアップ装置の外観斜視図である。
【図8】ピックアップ装置のウエハリングとエキスパンドリングの位置関係を示す概略平面図である。
【図9】ピックアップ装置のウエハリング、支持リングおよびエキスパンドリングの位置関係を示す概略断面図である。
【図10】吸着駒の主要部を示す一部破断斜視図である。
【図11】吸着駒の上面近傍の拡大斜視図である。
【図12】吸着駒の内部に収容されたピックアップユニットの一部破断断面図である。
【図13】ピックアップユニットの分解斜視図である。
【図14】(a)、(b)は、針ホルダの貫通穴に挿し込む針の本数を示す側面図である。
【図15】チップのピックアップ工程を示す側面図である。
【図16】チップのピックアップ工程を示す断面図である。
【図17】吸着コレットを装着したコレット駆動部の外観斜視図である。
【図18】チップのピックアップ工程を示す断面図である。
【図19】チップのピックアップ工程を示す断面図である。
【図20】チップのペレット付け工程を示す斜視図である。
【図21】チップのペレット付け工程を示す斜視図である。
【図22】針の固定方法の別例を示すピックアップユニットの一部破断断面図である。
【図23】針の固定方法の別例を示すピックアップユニットの一部破断断面図である。
【図24】チップのピックアップ方法の別例を示す断面図である。
【図25】チップのピックアップ方法の別例を示す断面図である。
【図26】チップのピックアップ方法の別例を示す断面図である。
【図27】チップのピックアップ方法の別例を示す断面図である。
【図28】チップのピックアップ方法の別例を示す断面図である。
【図29】ディスペンサの外観斜視図である。
【図30】図29に示すディスペンサの機構部品であるシールディスクの平面図である。
【図31】図30のA−A線に沿った断面図である。
【図32】チップのペレット付け工程を示す斜視図である。
【図33】チップのペレット付け工程を示す斜視図である。
【図34】本発明者が検討したディスペンサの主要部を示す断面図である。
【図35】図34に示すディスペンサの機構部品であるシールディスクの平面図である。
【図36】図35のA−A線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0040】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1である半導体装置の製造方法を図1〜図21を用いて工程順に説明する。
【0041】
まず、図1に示すような単結晶シリコンからなるウエハ1Aを用意する。このウエハ1Aの主面には複数のチップ領域1A’が区画されており、それぞれのチップ領域1A’には、周知の半導体製造プロセスによって集積回路をが形成されている。
【0042】
次に、図2に示すように、ウエハ1Aの主面(図の下面側)に、集積回路を保護するためのバックグラインドテープ3を貼り付ける。そして、この状態でウエハ1Aの裏面(図の上面側)をグラインダで研削した後、この研削によって発生したダメージ層をウエットエッチング、ドライポリッシングまたはプラズマエッチングなどの方法によって除去することにより、ウエハ1Aの厚さを100μm以下、例えば30μm〜60μm程度まで薄くする。
【0043】
次に、ウエハ1Aの主面からバックグラインドテープ3を剥がした後、図3に示すように、ウエハ1Aの裏面にダイアタッチフィルム(Die Attach Film)4を貼り付け、さらにダイアタッチフィルム4の裏面にダイシングテープ5を貼り付ける。ダイアタッチフィルム4は、後述するウエハ1Aのダイシングによって得られるチップを他のチップや配線基板などの実装ベース上に搭載する際の接着層を構成する厚さ20〜100μm程度のフィルム状接着材料である。ダイシングテープ5は、ポリオレフィン(PO)、ポリ塩化ビニル(PVC)などからなるテープ基材の片面に紫外線硬化型感圧粘着剤などを塗布して粘着性(tackness)を持たせた厚さ90μm〜120μm程度のテープである。
【0044】
次に、図4に示すように、ダイシングテープ5の表面の周辺部にウエハリング6を接着した後、図5に示すように、ダイシングブレード7を使ってウエハ1Aをダイシングすることにより、前記複数のチップ領域1A’のそれぞれをチップ1に分割する。このとき、ダイシングテープ5は切断しない。また、ダイアタッチフィルム4は本来、完全に切断されることが望ましいが、図6(a)に示すように、一部を残して切断したり(ハーフカット)や、図6(b)に示すように、ダイアタッチフィルム4を切断することなく、ウエハ1Aのみをダイシングしたりしてもよい。また、図6(c)に示すように、ウエハ1Aのみをハーフカットしておき、後述するピックアップ装置を使って分離してもよい。
【0045】
次に、図7〜図9に示すように、複数のチップ1が接着された上記ダイシングテープ5をピックアップ装置10の支持リング11上に水平に位置決めし、ダイシングテープ5の周辺部に接着されたウエハリング6をエキスパンドリング12で保持する。図7は、ピックアップ装置10の外観斜視図、図8は、ウエハリング6とエキスパンドリング12の位置関係を示す概略平面図、図9は、ウエハリング6、支持リング11およびエキスパンドリング12の位置関係を示す概略断面図である。図9に示すように、支持リング11の内側には、チップ1を上方に突き上げるための吸着駒13が配置されている。吸着駒13は、図示しない駆動機構によって、水平方向および上下方向に移動できるようになっている。
【0046】
図10は、吸着駒13の主要部を示す一部破断斜視図、図11は、吸着駒13の上面近傍の拡大斜視図である。円柱状の外形を有する吸着駒13の内部には、ピックアップユニット15が収容されている。ピックアップユニット15の上面には、ダイシングテープ5の裏面を突き上げるための複数本の針16が設けられている。ピックアップユニット15は、図示しない駆動機構によって、吸着駒13の内部で上下動するようになっている。
【0047】
吸着駒13の上面の周辺部には、複数の吸引口30および同心円状に形成された複数の長溝31が設けられている。吸引口30は、ピックアップユニット15に形成された針16の先端を吸着駒13の上面から突出させるための穴を兼ねている。吸着駒13の内部は、図示しない吸引機構によって減圧されるようになっており、吸着駒13を上昇させてその上面をダイシングテープ5の裏面に接触させた際、ダイシングテープ5の裏面が吸着駒13の上面に密着する。
【0048】
図12は、吸着駒13の内部に収容されたピックアップユニット15の一部破断断面図、図13は、ピックアップユニット15の分解斜視図である。ピックアップユニット15は、複数本の針16と、永久磁石17と、永久磁石17を保持する磁石ホルダ18と、複数の貫通穴19が密に形成された針ホルダ20とで構成されている。複数本の針16は、鉄を主成分とする金属のような磁性体からなり、互いの寸法(長さおよび径)が等しくなるように加工されている。永久磁石17は、直方体状の外形を有し、その上面は、凹凸がないように平坦に加工されている。針ホルダ20に形成された貫通穴19の内径は、針16の直径よりも僅かに大きく、長さは針16の長さよりも短い。
【0049】
ピックアップユニット15を組み立てるには、磁石ホルダ18の上面に形成された溝21に永久磁石17を嵌め込んだ後、磁石ホルダ18の上面に立てたピン22を針ホルダ20のガイド穴23に挿入する。次に、ピンセットなどを使って針ホルダ20の貫通穴19に一本ずつ針16を挿し込む。このようにすると、複数本の針16は、それらの後端部が永久磁石17に吸引されてその上面に密着すると共に、針ホルダ20によって垂直に姿勢制御されるので、針ホルダ20の上面から突出した先端部の高さが同じになる。
【0050】
図14に示すように、針ホルダ20の貫通穴19に挿し込む針16の本数は、剥離の対象となるチップ1のサイズに応じて増減する。すなわち、チップ1のサイズが大きい場合(図14(a))は、針16の本数を増やし、チップ1のサイズが小さい場合(図14(b))は、針16の本数を減らす。いずれの場合も、複数本の針16の最外周部の位置がチップ1の最外周部とほぼ重なるように針16の本数を調整する。また、隣り合う針16と針16の間隔は、できるだけ狭くすることが望ましい。針16と針16の間隔が広いと、チップ1をピックアップする際、チップ1の全面でダイシングテープ5とダイアタッチフィルム4との界面が均等に剥離しなくなるので、特に厚さが薄いチップ1の場合、割れや欠けが発生する虞れがある。
【0051】
上記ピックアップユニット15は、磁性体からなる針16を貫通穴19に挿入し、永久磁石17で固定する方式を採用しているので、隣り合う針16と針16の間隔を非常に狭くすることができるという特徴がある。これに対し、例えば針16の後端部をネジなどで締め付けて固定する方式を採用した場合は、ネジの径が針16の径よりも大きいので、隣り合う針16と針16の間隔も広くなってしまう。
【0052】
また、上記ピックアップユニット15は、針ホルダ20の貫通穴19に挿し込む針16の本数を変更するだけで、サイズの異なる複数種類のチップ1のピックアップが行えるという特徴がある。これにより、チップ1のサイズに応じて複数種類のピックアップユニットを用意しなくとも済むので、ピックアップ装置のコスト低減が可能となる。さらに、貫通穴19に挿入する針16の本数は、針16を抜き差しするだけで短時間に変更できるので、サイズの異なる複数種類のチップ1が混在する製造ラインにおいても、ピックアップ作業を迅速に進めることが可能となる。
【0053】
上記ピックアップ装置10に位置決めされたダイシングテープ5上のチップ1をピックアップするには、まず、ダイシングテープ5に紫外線を照射する。これにより、ダイシングテープ5に塗布された粘着剤が硬化してその粘着性が低下するので、ダイシングテープ5とダイアタッチフィルム4との界面が剥離し易くなる。
【0054】
次に、図15に示すように、ピックアップ装置10のエキスパンドリング12を下降させることによって、ダイシングテープ5の周辺部に接着されたウエハリング6を下方に押し下げる。このようにすると、ダイシングテープ5が、その中心部から周辺部に向かう強い張力を受けて水平方向に弛みなく引き伸ばされるので、ダイアタッチフィルム4も同時に引き伸ばされる。前述したように、ダイアタッチフィルム4は、ウエハ1Aのダイシング工程でチップ1とチップ1との間の領域がハーフカットされているので、引き伸ばされたダイアタッチフィルム4はこの領域で切断され、チップ単位で互いに分離される。
【0055】
ダイアタッチフィルム4を切断、分離するためには、エキスパンドリング12を高速で、かつ相当量下げることによって、ダイシングテープ5を急速に引き延ばすことが望ましい。ダイシングテープ5やダイアタッチフィルム4の種類にもよるが、本実施の形態では、例えば10mm/秒の速度で10mm以上下げる。
【0056】
次に、ダイシングテープ5に加わっている水平方向の張力を小さくするために、エキスパンドリング12を低速で僅かに上昇させる。上昇の速度と量は、例えば10mm/秒未満、3mm程度以下である。さらにこの後、必要に応じて、エキスパンドリング12を例えば10mm/秒未満の低速、かつ3mm程度以下の範囲で下降させ、ダイシングテープ5に加わる水平方向の張力が、チップ1のピックアップに最適な大きさになるまで微調整を行ってもよい。
【0057】
次に、図16に示すように、剥離の対象となるチップ1の真下に吸着駒13を移動させると共に、このチップ1の上方に吸着コレット33を移動させる。吸着コレット33の中央部には、内部が減圧できる吸着口34が設けられており、剥離の対象となる1個のチップ1のみを選択的に吸着、保持できるようになっている。図17に示すように、吸着コレット33は、コレット駆動部35の下端部に取り付けられている。コレット駆動部35は、図示しない移動機構に支持されており、この移動機構によって、水平方向および上下方向に移動できるようになっている。
【0058】
次に、図18に示すように、吸着駒13を上昇させてその上面をダイシングテープ5の裏面に接触させると共に、吸着駒13の内部を減圧する。これにより、剥離の対象となるチップ1の下方のダイシングテープ5が吸着駒13の上面に密着する。またこれと同時に、吸着コレット33を下降させてその底面をチップ1の上面に接触させると共に、吸着口34の内部を減圧する。これにより、剥離の対象となるチップ1が吸着コレット33の底面に密着する。
【0059】
次に、図19に示すように、吸着駒13に内蔵されたピックアップユニット15を上昇させ、針16の先端を吸着駒13の上面から突き上げることによって、ダイシングテープ5を押し上げる。またこれと同時に、吸着コレット33を上方に引き上げることにより、チップ1がダイシングテープ5から剥離し、吸着コレット33によって上方に引き上げられる。
【0060】
ピックアップユニット15の針16の先端でダイシングテープ5を押し上げる際、ダイシングテープ5に水平方向の強い張力が加わっていると、剥離の対象となるチップ1に隣接したチップ1の下方のダイシングテープ5も同時に押し上げられるので、剥離の対象以外のチップ1がダイシングテープ5から剥離する虞れがある。しかし、前述したように、本実施の形態では、あらかじめダイシングテープ5に加わる水平方向の張力を、チップ1のピックアップに最適な大きさに設定しておくので、剥離の対象以外のチップ1がダイシングテープ5から剥離することはない。
【0061】
また、針16の先端でダイシングテープ5を押し上げる際、針16と針16の間隔が広いと、剥離の対象となるチップ1の全面でダイシングテープ5とダイアタッチフィルム4との界面が均等に剥離しなくなるので、特に厚さが薄いチップ1の場合、割れや欠けが発生する虞れがある。しかし、前述したように、本実施の形態のピックアップユニット15は、針16と針16の間隔が極めて狭いので、ダイシングテープ5とダイアタッチフィルム4とを均等に剥離させることができる。
【0062】
このようにして、ダイシングテープ5から剥離されたチップ1は、吸着コレット33に吸着された状態で、コレット駆動部35により次工程(ペレット付け工程)に搬送される。図20に示すように、ペレット付け工程に搬送されたチップ1は、配線基板40などの実装ベース上に実装される。そして、コレット駆動部35が再びピックアップ装置10に戻ると、前述した手順に従って、次のチップ1がダイシングテープ5から剥離され、配線基板40上に実装される。以後、同様の手順に従って所定数のチップ1がダイシングテープ5から1個ずつ剥離され、配線基板40上に実装される(図21)。その後、配線基板40を加熱し、チップ1の裏面に接着されたダイアタッチフィルム4を熱硬化させることにより、ペレット付け工程が完了する。
【0063】
なお、前記図12および図13に示したピックアップユニット15は、針ホルダ20の貫通穴19に挿入した磁性体の針16の後端部を永久磁石17で固定したが、さらに針ホルダ20にも磁性を付与すれば、針16をより確実に保持することができる。また、例えば図22に示すように、針16の中途部に幅広のフランジ29を設けることによって、針16の高さを規制すると共に、針ホルダ20の上面に押さえ板24を固定し、この押さえ板24と針ホルダ20とで針16を保持するようにしてもよい。押さえ板24は、ネジなどを使って針ホルダ20に固定するが、押さえ板24に磁性を付与することによって、針ホルダ20に固定してもよい。この場合、針16の後端部を支えるホルダ25にも磁性を付与すれば、針16をより確実に保持することができる。ホルダ25と押さえ板24とに磁性を付与した場合は、両者の磁力線がそれらの間で閉じるので、両者の保磁力の劣化を抑制することができる。また、例えば図23に示すように、ホルダ25の上面に立てた細いゴムチューブ26で針16の後端部を支えるようにしてもよい。この場合も、針ホルダ20の上面に押さえ板24を固定したり、さらに押さえ板24に磁性を付与したりすれば、針16をより確実に保持することができる。
【0064】
本実施の形態では、ピックアップユニット15に装着した複数本の針16を使ってチップ1を突き上げたが、例えば図24に示すように、複数本の針16とその内側に配置した突き上げ用のブロック27とを使い、チップ1を二段階方式で突き上げることもできる。この方法は、ダイシングテープ5とダイアタッチフィルム4との接着力が大きい場合や、チップ1のサイズが大きい場合に用いて特に有効である。
【0065】
上記ブロック27は、針16よりも直径が大きい柱状体からなり、その平坦な上面がダイシングテープ5の裏面に面接触するようになっている。また、針16とブロック27とは、互いに独立して上下動できるようになっており、待機時には、針16の先端とブロック27の上面とが同じ高さになっている。この場合も、剥離の対象となるチップ1のサイズが大きい場合は針16の本数を増やし、チップ1のサイズが小さい場合は、針16の本数を減らす。
【0066】
針16とブロック27とを使ってチップ1を突き上げるには、図25に示すように、吸着駒13を上昇させてその上面をダイシングテープ5の裏面に接触させると共に、吸着駒13の内部を減圧する。これにより、剥離の対象となるチップ1の下方のダイシングテープ5が吸着駒13の上面に密着する。またこれと同時に、吸着コレット33を下降させてその底面をチップ1の上面に接触させると共に、吸着口34の内部を減圧する。これにより、剥離の対象となるチップ1が吸着コレット33の底面に密着する。
【0067】
次に、図26に示すように、吸着駒13に内蔵されたピックアップユニット15を上昇させ、針16の先端とブロック27の上面とを吸着駒13の上面から同時に突き上げることによって、ダイシングテープ5を押し上げる。ダイシングテープ5とダイアタッチフィルム4との接着力が小さい場合や、チップ1のサイズが小さい場合は、この突き上げによってチップ1がダイシングテープ5から剥離するので、突き上げと同時に吸着コレット33を上方に引き上げればよい。
【0068】
一方、ダイシングテープ5とダイアタッチフィルム4との接着力が大きい場合や、チップ1のサイズが大きい場合は、チップ1の周辺部のみがダイシングテープ5から剥離し、中央部は剥離しない。この場合は、次に、図27に示すように、ブロック27の上面のみをさらに上方に突き上げる。このようにすると、チップ1の周辺部から中央部に向かってダイシングテープ5の剥離が進行するので、吸着コレット33を上方に引き上げることにより、チップ1がダイシングテープ5から完全に剥離し、吸着コレット33によって上方に引き上げられる。
【0069】
ブロック27の数は、一個に限定されるものではなく、径の小さい複数個のブロックを組み合わせてもよい。また、図28に示すように、径の大きいブロック27の中心を中空に加工してその中に径の小さいブロック28を配置し、2個のブロック27、28を互いに独立して上下動できるようにしてもよい。この場合は、まず複数個の針16と2個のブロック27、28とを同時に突き上げた後、2個のブロック27、28のみをさらに上方に突き上げ、次に中心のブロック28のみをさらに上方に突き上げる三段階突き上げ方式を採用することができる。
【0070】
また、例えば前記ピックアップユニット15に装着した複数本の針16のうち、チップ1の周辺部に接する複数個の針16とチップ1の中央部に接する複数個の針16とを互いに独立して上下動させることにより、複数個の針16だけで上記した二段階または三段階の突き上げを行うことが可能になる。
【0071】
上記した二段階突き上げ方式や三段階突き上げ方式は、ダイアタッチフィルム4を使用しないペレット付け方法、すなわちダイシングテープ5の表面に直接接着したチップ1をピックアップしてペレット付け工程に搬送した後、あらかじめペースト塗布装置を使って実装ベース上に塗布した接着剤(ペースト)でチップ1を実装ベース上に接着する場合にも適用することができる。また、この場合は、ピックアップユニット15に超音波発信器を取り付け、振動針16やブロック27、28を超音波振動させながら突き上げることによって、チップ1をダイシングテープ5から速やかに剥離させることもできる。
【0072】
(実施の形態2)
前記実施の形態1では、主としてダイアタッチフィルム4を用いたチップ1のダイボンディング方法について説明したが、本実施の形態では、ペーストを用いたチップ1のダイボンディング方法について説明する。
【0073】
図29は、本実施の形態で使用するディスペンサの外観斜視図、図30は、このディスペンサの機構部品であるシールディスクの平面図、図31は、図30のA−A線に沿った断面図である。
【0074】
本実施の形態のディスペンサ50は、シールディスク51の構造のみが前記図34〜図36に示したディスペンサ60と相違しているので、その他の機構部品は、前記ディスペンサ60の機構部品と同一の符号を使って説明する。
【0075】
図30および図31に示すように、円筒状のシールディスク51の内部には、吸入ポート64に連通される吸入孔52と、吐出ポート65に連通される吐出孔53とが設けられている。また、シールディスク51の上面には、吸入孔52に接続される吸入溝54と、吐出孔53に接続される吐出溝55とが形成されている。
【0076】
吐出溝55の位置および形状は、前記ディスペンサ60のシールディスク69に形成された吐出溝73の位置および形状と同一である。これに対し、吸入溝54は、シールディスク51の上面において、吐出溝55の周囲全体を囲むように形成されているという特徴がある。
【0077】
また、吸入溝54の位置および形状が変更されたことに伴い、シールディスク51の上面において、吸入溝54に接続される吸入孔52の位置も変更されている。また、吸入溝54の幅は、吸入孔52の近傍で最も広く、吸入孔52から離れた領域で狭くなっている。吸入孔52は、シールディスク51の下面において吸入ポート64に連通されるので、シールディスク51の下面における吸入孔52の位置は、シールディスク69に形成された吐出溝73の位置と同一である。このため、図31に示すように、吸入孔52は、シールディスク51の上下面に対して斜め方向に貫通している。一方、吐出孔53は、シールディスク51の上下面に対して直角方向に貫通している。なお、吸入孔52は、必ずしも斜め方向に貫通している必要はなく、吐出孔53よりも中心側に位置する部分に配置して直角方向に貫通してさせてもよい。
【0078】
シールディスク51は、上下面の平坦度を向上させるために、セラミック材料で構成されており、特に、バルブディスク74の下面が摺動するシールディスク51の上面は、その平坦度(凸部と凹部の段差)が0.001mm以下になるように加工されている。これにより、プランジャ挿入孔75内や吐出溝55内のペーストの一部が摺動面に漏れ出し難くなるので、ペーストに含まれる充填剤などによる摺動面の摩耗を抑制することができる。
【0079】
また、ディスペンサ50の上面において、吐出溝55の周囲全体を吸入溝54で囲むことにより、プランジャ挿入孔75内や吐出溝55内のペーストの一部が摺動面に漏れ出した場合でも、このペーストを吸入溝54内に回収することができるので、ペーストが摺動面の外部に滲み出す不具合を抑制することができる。
【0080】
このように、本実施の形態のシールディスク51をディスペンサ50に取り付けることにより、バルブディスク74とシールディスク51との摺動面にペーストが漏れ出す不具合を抑制することができるので、実装ベースに供給されるペーストの塗布量の変動を抑制することができる。また、摺動面の外部に滲み出したペーストがディスペンサ50の内部で固化する不具合も抑制できるので、ディスペンサ50のメンテナンス頻度を減らすことができる。また、摺動面の外部に滲み出したペーストの固化をさらに確実に防ぐため、図30および図31に示すように、シールディスク51の側壁面にエッジ56を形成し、吸入溝54の外側の摺動面に漏れ出したペーストをエッジ56内に回収するようにしてもよい。
【0081】
ダイボンディング用のペーストを使ってチップ1を配線基板上にペレット付けするには、まず図32に示すように、上記ディスペンサ50を使って配線基板41のチップ搭載領域にペースト57を供給する。次に、図33に示すように、ダイシングテープから剥離したチップ1をコレット駆動部35の吸着コレット33に吸着、保持して配線基板41上に搬送し、ペースト57の上にチップ1を重ねる。ダイシングテープからチップ1を剥離するには、例えば前記実施の形態1の図24〜図28に示した多段階突き上げ方式のピックアップ装置などを使用する。
【0082】
その後、配線基板41を加熱してペースト57を熱硬化させることにより、ペレット付け工程が完了する。
【0083】
以上、本発明者によってなされた発明を前記実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0084】
ダイシングテープを強い張力で引き延ばしてダイアタッチフィルムを切断、分離した後、ダイシングテープに加わる張力を小さくしてからチップをピックアップする前記実施の形態のピックアップ方法は、ダイシングテープの裏面を針やブロックで突き上げることによってチップをピックアップする場合に限らず、例えばダイシングテープの裏面に吸着駒を接触させてダイシングテープを下方に吸引し、吸着コレットによってチップをピックアップする場合にも適用することができる。
【0085】
前記実施の形態においては、厚さを30μm〜60μm程度まで薄く加工したチップのダイボンディングに適用した場合について説明したが、60μm以上の厚いチップのダイボンディングに本発明を適用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明は、半導体製造工程の一つであるダイボンディング工程に適用して有効な技術である。
【符号の説明】
【0087】
1 半導体チップ
1A 半導体ウエハ
1A’ チップ領域
3 バックグラインドテープ
4 ダイアタッチフィルム
5 ダイシングテープ
6 ウエハリング
7 ダイシングブレード
10 ピックアップ装置
11 支持リング
12 エキスパンドリング
13 吸着駒
15 ピックアップユニット
16 針
17 永久磁石
18 磁石ホルダ
19 貫通穴
20 針ホルダ
21 溝
22 ピン
23 ガイド穴
24 押さえ板
25 ホルダ
26 ゴムチューブ
27、28 ブロック
29 フランジ
30 吸引口
31 長溝
33 吸着コレット
34 吸着口
35 コレット駆動部
40、41 配線基板
50 ディスペンサ
51 シールディスク
52 吸入孔
53 吐出孔
54 吸入溝
55 吐出溝
56 エッジ
57 ペースト
60 ディスペンサ
61 主筒
62 キャップ
63 ブロック
64 吸入ポート
65 吐出ポート
66 ノズル
67 液送チューブ
68 シリンジ
69 シールディスク
70 吸入孔
71 吐出孔
72 吸入溝
73 吐出溝
74 バルブディスク
75 プランジャ挿入孔
76 プランジャ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスペンサのノズルから吐出させたダイボンディング用のペーストを実装ベース上に供給した後、前記実装ベース上に前記ペーストを介して半導体チップを実装する工程を有する半導体装置の製造方法であって、
前記ディスペンサは、吸入ポートと吐出ポートとを備えたブロックと、前記ブロック上に固定され、前記ブロックに接する下面と前記下面に対抗する上面とを備えたシールディスクと、前記シールディスクの前記上面に当接して摺動回転する下面を備えると共に、その上下面を貫通するプランジャ挿入孔を備えたバルブディスクと、上下方向に移動可能に支持されると共に、その一部が前記バルブディスクの前記プランジャ挿入孔に挿入されるプランジャとを備え、
前記シールディスクは、前記ブロックの前記吸入ポートに連通される吸入孔と、前記ブロックの前記吐出ポートに連通される吐出孔とを備え、
前記シールディスクの前記上面には、前記吸入孔に接続される吸入溝と、前記吐出孔に接続される吐出溝とが形成され、
前記シールディスクの前記吸入溝は、前記シールディスクの前記上面において、前記吐出溝の周囲全体を囲むように形成されていることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記シールディスクの前記上面において、前記吸入溝の幅は、前記吸入孔の近傍で最も広く、前記吸入孔から離れた領域で狭くなっていることを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記シールディスクの前記吸入孔は、前記吐出孔よりも中心側に位置する部分に配置されて前記シールディスクを貫通し、前記吐出孔は、前記吸入孔よりも外側に位置する部分に配置されて前記シールディスクをその上下面に対して直角方向に貫通していることを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記シールディスクは、セラミック材料で構成され、前記シールディスクの前記上面は、その平坦度が0.001以下になるように加工されていることを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記シールディスクの側壁面には、前記シールディスクの前記上面に漏れ出した前記ペーストを回収するエッジが設けられていることを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
(a)半導体ウエハの裏面にダイシングフィルムを貼り付ける工程と、
(b)前記工程(a)の後、前記半導体ウエハをダイシングすることによって、前記半導体ウエハを複数個の半導体チップに分割する工程と、
(c)前記工程(b)の後、前記ダイシングフィルムの裏面をピックアップ手段で突き上げることによって、前記半導体チップを前記ダイシングフィルムから剥離する工程と、
(d)ディスペンサのノズルから吐出させたダイボンディング用のペーストを実装ベース上に供給する工程と、
(e)前記工程(c)でピックアップされた前記半導体チップを、前記ペーストを介して前記実装ベース上に実装する工程を有する半導体装置の製造方法であって、
前記ディスペンサは、吸入ポートと吐出ポートとを備えたブロックと、前記ブロック上に固定され、前記ブロックに接する下面と前記下面に対抗する上面とを備えたシールディスクと、前記シールディスクの前記上面に当接して摺動回転する下面を備えると共に、その上下面を貫通するプランジャ挿入孔を備えたバルブディスクと、上下方向に移動可能に支持されると共に、その一部が前記バルブディスクの前記プランジャ挿入孔に挿入されるプランジャとを備え、
前記シールディスクは、前記ブロックの前記吸入ポートに連通される吸入孔と、前記ブロックの前記吐出ポートに連通される吐出孔とを備え、
前記シールディスクの前記上面には、前記吸入孔に接続される吸入溝と、前記吐出孔に接続される吐出溝とが形成され、
前記シールディスクの前記吸入溝は、前記シールディスクの前記上面において、前記吐出溝の周囲全体を囲むように形成されていることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項7】
(a)半導体ウエハの裏面にダイシングフィルムを貼り付ける工程と、
(b)前記工程(a)の後、前記半導体ウエハをダイシングすることによって、前記半導体ウエハを複数個の半導体チップに分割する工程と、
(c)前記工程(b)の後、前記ダイシングフィルムの裏面をピックアップ手段で突き上げることによって、前記半導体チップを前記ダイシングフィルムから剥離する工程とを含む半導体装置の製造方法であって、
前記ピックアップ手段は、前記ダイシングフィルムの裏面に接する先端部を有する複数本の針と、前記複数本の針の後端部を固定する磁石と、前記針の直径よりも僅かに大きい内径を有する複数の貫通孔を備え、前記複数の貫通孔のそれぞれに挿入された前記針を姿勢制御する針ホルダとを有し、
前記工程(c)は、前記ダイシングフィルムの裏面を前記複数本の針で突き上げる第1の工程と、前記第1の工程の後、前記ダイシングフィルムの裏面を、前記複数本の針の一部でさらに突き上げる第2の工程とを含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記ピックアップ手段に装着する前記針の本数を、前記半導体チップのサイズに応じて増減することを特徴とする請求項7記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
ダイボンディング用のペーストを実装ベース上に供給するディスペンサを備えた半導体製造装置であって、
前記ディスペンサは、吸入ポートと吐出ポートとを備えたブロックと、前記ブロック上に固定され、前記ブロックに接する下面と前記下面に対抗する上面とを備えたシールディスクと、前記シールディスクの前記上面に当接して摺動回転する下面を備えると共に、その上下面を貫通するプランジャ挿入孔を備えたバルブディスクと、上下方向に移動可能に支持されると共に、その一部が前記バルブディスクの前記プランジャ挿入孔に挿入されるプランジャとを備え、
前記シールディスクは、前記ブロックの前記吸入ポートに連通される吸入孔と、前記ブロックの前記吐出ポートに連通される吐出孔とを備え、
前記シールディスクの前記上面には、前記吸入孔に接続される吸入溝と、前記吐出孔に接続される吐出溝とが形成され、
前記吸入溝は、前記シールディスクの前記上面において、前記吐出溝の周囲全体を囲むように形成されていることを特徴とする半導体製造装置。
【請求項10】
前記シールディスクの前記上面において、前記吸入溝の幅は、前記吸入孔の近傍で最も広く、前記吸入孔から離れた領域で狭くなっていることを特徴とする請求項9記載の半導体製造装置。
【請求項11】
前記シールディスクの前記吸入孔は、前記吐出孔よりも中心側に位置する部分に配置されて前記シールディスクを貫通し、前記吐出孔は、前記吸入孔よりも外側に位置する部分に配置されて前記シールディスクをその上下面に対して直角方向に貫通していることを特徴とする請求項9記載の半導体製造装置。
【請求項12】
前記シールディスクは、セラミック材料で構成され、前記シールディスクの前記上面は、その平坦度が0.001mm以下になるように加工されていることを特徴とする請求項9記載の半導体製造装置。
【請求項13】
前記シールディスクの側壁面には、前記シールディスクの前記上面に漏れ出した前記ペーストを回収するエッジが設けられていることを特徴とする請求項9記載の半導体製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【公開番号】特開2010−232678(P2010−232678A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−140402(P2010−140402)
【出願日】平成22年6月21日(2010.6.21)
【分割の表示】特願2005−13690(P2005−13690)の分割
【原出願日】平成17年1月21日(2005.1.21)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】