説明

半導体装置の製造方法及び基板処理装置

【課題】低温での成膜において基板の侵食を抑制する半導体装置の製造方法及び基板処理装置を提供する。
【解決手段】ウエハ14を処理室92に搬入する第1の工程と、第1の原料としての固体金属66を収容する生成室62に、第2の原料としての塩素含有物と第3の原料としての励起ガスを供給し、プラズマ励起して金属塩化物を生成する第2の工程と、前記第2の工程により生成した金属塩化物を前記処理室92に供給する第3の工程と、第4の原料としての還元性ガスを前記処理室92に供給する第4の工程と、ウエハ14を前記処理室92から搬出する第5の工程と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法及び基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
45nm世代以降のDRAM(Dynamic Random Access Memory)キャパシタの電極材料としては、チタン(Ti)や窒化チタン(TiN)、ルテニウム(Ru)、酸化ルテニウム(RuO2)、ルテニウム酸ストロンチウム(SrRuO3)等が検討されている。
【0003】
従来、例えばRu膜の成膜には、原料としてエチルシクロペンタジエニルルテニウム(Ru(EtCp)2)やオクタンジオナートルテニウム(Ru(OD)3)等の有機化合物を使用するRuO2-CVD(Chemical Vapor Deposition)法が用いられてきた。
しかし、RuO2-CVD法では、成膜過程中に供給される酸素(O2)又はRuO2膜中の酸素原子(O)等による界面の酸化や、アニール後の表面状態(morphology)の劣化、ステップカバレッジの改善の困難性等の問題があった。
【0004】
そこで、MCR-CVD(Metal Chloride Reduction Chemical Vapor Deposition)法が提案されている。MCR-CVC法は、塩素ラジカルを利用して成膜するため、膜中に酸素原子が含まれることがない。
また、MCR-CVD法では、基板との還元反応により金属膜を形成するため、金属膜形成後のアニールの必要がない。このため、アニールに伴う不純物の拡散が防止されるとともに、低温での成膜が可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、金属膜形成において基板との還元反応を用いると、基板が侵食されるという問題があった。
【0006】
本発明は、低温での成膜において基板の侵食を抑制する半導体装置の製造方法及び基板処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の特徴とするところは、基板を処理室に搬入する第1の工程と、第1の原料としての固体金属を収容する生成室に、第2の原料としての塩素含有物と第3の原料としての励起ガスを供給し、プラズマ励起して金属塩化物を生成する第2の工程と、前記第2の工程により生成した金属塩化物を前記処理室に供給する第3の工程と、第4の原料としての還元性ガスを前記処理室に供給する第4の工程と、基板を前記処理室から搬出する第5の工程と、を有することを特徴とする半導体装置の製造方法にある。
【0008】
好ましくは、前記第3の工程及び前記第4の工程は、同時に行われる又は交互に繰り返される。
【0009】
本発明の第2の特徴とするところは、プラズマを発生するプラズマ発生手段と、固体金属を収容する生成室と、前記生成室に塩素含有物を供給する第1のガス供給系と、前記生成室に励起ガスを供給する第2のガス供給系と、を備え、金属塩化物を生成する金属塩化物生成部と、前記金属塩化物生成部により生成された金属塩化物が供給され、基板を処理する処理室と、前記処理室に還元性ガスを供給する第3のガス供給系と、を有する基板処理装置にある。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、低温での成膜において基板の侵食を抑制する半導体装置の製造方法及び基板処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に用いられる基板処理装置の概略を示す斜視図である。
【図2】金属塩化物生成装置及びその周辺構造の概略図である。
【図3】処理炉及びその周辺構造の断面図である。
【図4】図3のA−A線断面図である。
【図5】基板処理工程のフロー図である。
【図6】図6(a)は、金属塩化物生成装置による金属塩化物生成工程のシーケンス図であり、図6(b)は、処理炉において基板上に金属膜を成膜する工程のシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の理解を助けるために、基板としてのシリコン(Si)上に、塩素含有物として塩素(Cl2)を用いて、金属膜としてニッケル(Ni)膜を成膜する場合を一例として説明する。
【0013】
比較例における成膜の際の反応を表す反応式を以下に示す。
(1)Ni + Cl* → NiCl (gas)
(2)NiCl (gas) → NiCl (ad)
(3)NiCl (ad) + Si → Ni (ad) + SiCl (gas)
(4)Ni (ad) + Si → NiSi
(5)NiSi + Si → NiSi2
Cl*は活性化された塩素、(gas)はガス状態、(ad)は吸着状態を示す。
【0014】
比較例においては、まず、塩素(Cl2)をプラズマ励起により活性化し、活性化された塩素(Cl*)が固体金属(Ni)表面と接触して金属塩化物(NiCl)を生成する(式(1))。この金属塩化物(NiCl)は、基板(Si)に吸着する(式(2))。吸着した金属塩化物(NiCl)は、基板(Si)と反応して金属原子(Ni)を生成するとともに、シリコン塩化物(SiCl)を生成し、このシリコン塩化物(SiCl)が脱離する(式(3))。金属原子(Ni)は、基板(Si)と反応して、シリサイド(ケイ化物)を生成する(式(4)、(5))。
【0015】
一方、本発明の一実施形態における成膜の際の反応を表す反応式を以下に示す。
(6)Cl2 + 2He* → 2Cl* + 2He*
(7)Ni + Cl* → NiCl (gas)
(8)NiCl (gas) → NiCl (ad)
(9)NiCl (ad) + H* → Ni (ad) + HCl (gas)
He*は活性化されたヘリウム、Cl*は活性化された塩素、H*は活性化された水素、(gas)はガス状態、(ad)は吸着状態を示す。
【0016】
本発明の一実施形態においては、ヘリウム(He)をプラズマ励起により活性化し、活性化されたHe(He*)がCl2と衝突して、活性化された塩素(Cl*)を生成する(式(6))。Cl*は、固体金属(Ni)と反応して、金属塩化物(NiCl)を生成する(式(7))。この金属塩化物(NiCl)は、基板(Si)に吸着する(式(8))。吸着した金属塩化物(NiCl)は、還元性ガス(活性化された水素:H*)と反応し、金属原子(Ni)を生成する(式(9))。
このように、本実施形態にかかる成膜の反応機構は、基板(Si)に吸着した金属塩化物(NiCl)と基板(Si)との反応によるものでなく、基板(Si)に吸着した金属塩化物(NiCl)と活性化した水素(H*)との還元反応によるものとなっている。
【0017】
次に、本発明の一実施形態にかかる基板処理装置10の構成について、図に基づいて説明する。
【0018】
[全体構成]
図1は、本発明の一実施形態としての基板処理装置10の斜透視図である。
基板処理装置10は筺体12を備え、シリコン等からなるウエハ(基板)14を収納したウエハキャリアとしてのカセット16が使用される。筐体12の正面壁12aの下方には、メンテナンス可能なように設けられた開口部としての正面メンテナンス口18が開設され、この正面メンテナンス口18を開閉する正面メンテナンス扉20が建て付けられている。
【0019】
正面メンテナンス扉20には、カセット搬入搬出口(基板収容器搬入搬出口)22が筐体12内外を連通するように開設されており、このカセット搬入搬出口22はフロントシャッタ(基板収容器搬入搬出口開閉機構)24によって開閉されるようになっている。
【0020】
カセット搬入搬出口22の筐体12内側には、カセットステージ(基板収容器受渡し台)26が設置されている。カセット16は、工程内搬送装置(非図示)によってカセットステージ26上に搬入及び、このカセットステージ26上から搬出されるようになっている。
カセット16は、工程内搬送装置によって、このカセット16内のウエハ14が垂直姿勢となり、カセット16のウエハ出し入れ口が上方向を向くようにカセットステージ26上に載置される。カセットステージ26は、このカセットステージ26上のカセット16を筐体12の後方に縦方向90°回転させ、このカセット16内のウエハ14が水平姿勢となり、カセット16のウエハ出し入れ口が筐体12の後方を向くように動作する構成となっている。
【0021】
筐体12内の前後方向の略中央部には、カセット棚(基板収容器載置棚)28が設置されており、このカセット棚28は複数段複数列にて複数個のカセット16を保管するように構成されている。カセット棚28には、後述するウエハ移載機構36の搬送対象となるカセット16が収納される移載棚30が設けられている。
また、カセットステージ26の上方には予備カセット棚32が設けられ、予備的にカセット16を保管するように構成されている。
【0022】
カセットステージ26とカセット棚28との間には、カセット搬送装置(基板収容器搬送装置)34が設置されている。カセット搬送装置34は、カセット16を保持したまま昇降可能なカセットエレベータ(基板収容器昇降機構)34aと、搬送機構としてのカセット搬送機構(基板収容器搬送機構)34bとで構成されている。カセット搬送装置34は、カセットエレベータ34aとカセット搬送機構34bとの連続動作により、カセットステージ26、カセット棚28、予備カセット棚32との間で、カセット16を搬送するように構成されている。
【0023】
カセット棚28の後方には、ウエハ移載機構(基板移載機構)36が設置されている。ウエハ移載機構36は、ウエハ14を水平方向に回転ないし直動可能なウエハ移載装置(基板移載装置)36a及び、このウエハ移載装置36aを昇降させるためのウエハ移載装置エレベータ(基板移載装置昇降機構)36bとで構成されている。ウエハ移載装置エレベータ36bは、筐体12の右側端部に設置されている。ウエハ移載機構36は、ウエハ移載装置36a及びウエハ移載装置エレベータ36bの連続動作により、ウエハ移載装置36aのツイーザ(基板保持体)36cをウエハ14の載置部として、ボート(基板保持具)38に対してウエハ14を装填(チャージング)及び脱装(ディスチャージング)するように構成されている。
【0024】
筐体12の後部上方には、処理炉40が設けられている。処理炉40の下端部は、炉口シャッタ(炉口開閉機構)42により開閉されるように構成されている。
【0025】
処理炉40の下方には、ボート38を処理炉40に昇降させる昇降機構としてのボートエレベータ(基板保持具昇降機構)44が設けられている。ボートエレベータ44の昇降台に連結された連結具としてのアーム46には、蓋体としてのシールキャップ48が水平に据え付けられており、このシールキャップ48は、ボート38を垂直に支持し、処理炉40の下端部を閉塞可能なように構成されている。
【0026】
ボート38は複数本の保持部材を備えており、複数枚(例えば、50枚〜150枚程度)のウエハ14をその中心を揃えて垂直方向に整列させた状態で、それぞれ水平に保持するように構成されている。
【0027】
カセット棚28の上方には、清浄化した雰囲気であるクリーンエアを供給するよう供給ファン及び防塵フィルタで構成されたクリーンユニット50が設けられており、クリーンエアを筐体12の内部に流通させるように構成されている。
【0028】
ウエハ移載装置エレベータ36b及びボートエレベータ44と対向する筐体12の左側端部には、クリーンエアを供給するよう供給フアン及び防塵フィルタで構成されたクリーンユニット(非図示)が設置されている。このクリーンユニットから吹き出されたクリーンエアは、ウエハ移載装置36a、ボート38を流通した後に、真空ポンプ132(非図示)に吸い込まれて、筐体12の外部に排気されるようになっている。
【0029】
[金属塩化物生成装置構成]
次に、基板処理装置10の金属塩化物生成装置60について説明する。
図2は、金属塩化物生成装置60及びその周辺構造の概略図を示す。金属塩化物生成装置60は、金属塩化物(金属塩素化合物)を生成する生成室62と、加熱装置であるヒータ64と、を有する。生成室62は、内部に金属原料としての固体金属66を配置するようになっている。
生成室62は、内壁に塩化物が付着するのを抑制するために、例えば200〜300℃に加熱されている。固体金属66としては、例えばNiやRu等が用いられる。
また、生成室62の内壁は、石英あるいはアルミナセラミックス等で構成されている。さらに、生成室62の内壁を固体金属66と同質の材料でコーティングするようにしてもよい。
【0030】
生成室62には、この生成室62内に塩素含有物としての塩素(Cl2)ガス及び励起ガスとしてのヘリウム(He)ガスを導入する導入部68と、この導入部68から導入されたガスをプラズマ励起させるプラズマ発生装置70が設けられている。
Cl2ガスに励起ガスを混合した場合、励起ガスを混合しない(Cl2ガス単独)場合と比較して、発生する活性化された塩素(Cl*)の密度が増大する。
【0031】
導入部68から導入される混合ガス(Cl2ガスとHeガス)の比率は、好ましくは、Cl2:1〜50%、Heガス:50〜99%であり、より好ましくは、Cl2:10%、Heガス:90%である。混合ガスがこの比率である場合、この比率でない場合と比較して、活性化された塩素(Cl*)を高密度で発生させることができる。
なお、塩素含有物としては、Cl2に代えて、塩化水素(HCl)を用いてもよい。また、励起ガスとしては、ヘリウム(He)に代えて、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)、窒素(N2)等を用いてもよい。
【0032】
導入部68と対向する壁面には、生成された金属塩化物を処理炉40に向けて排出する排出部72が設けられている。排出部72は、後述する第1のガス供給管100aに接続されている。
また、金属塩化物を搬送する排出部72等は、内壁に金属塩化物が付着するのを抑制するために、例えば200〜300℃に加熱されている。
【0033】
プラズマ発生装置70の誘導アンテナ70aの下方には、この誘導アンテナ70がCl2ガス等により腐食するのを防止するための仕切板74が設けられている。仕切板74は、例えば石英で構成される。
誘導アンテナ70aは、固体金属66との距離が50mm以下である場合、この距離が50mm以下でない場合と比較して、金属塩化物の生成量を増大することができる。また、固体金属66を500℃以上に加熱した場合、500℃以上に加熱しない場合と比較して、金属塩化物の生成量を増大することができる。
【0034】
[処理炉構成]
次に、基板処理装置10の処理炉40について説明する。
図3は、処理炉40及びその周辺構造の断面図を示す。処理炉40には加熱装置であるヒータ82が設けられている。ヒータ82の内側には、ウエハ14を収容可能な反応管84が設けられている。反応管84は、例えば石英で構成されている。
【0035】
反応管84の下方には、例えばステンレス等よりなるマニホールド86が設けられている。反応管84の下部およびマニホールド86の上部には、それぞれ環状のフランジが形成されている。反応管84とマニホールド86との各フランジ間にはOリング88が設けられており、反応管84とマニホールド86との間が気密にシールされている。マニホールド86の下部は、Oリング88を介して蓋体であるシールキャップ48により気密に閉塞されている。
処理炉40では、少なくとも、反応管84、マニホールド86及びシールキャップ48によりウエハ14を処理する処理室92が形成されている。
【0036】
シールキャップ48には、ボート支持台94を介してボート38が立設される。ボート支持台94はボート38を保持する保持体となっている。ボート38は、ボート支持台94に支持された状態で反応管84のほぼ中央部に配置されている。ボート38には、バッチ処理される複数のウエハ14が水平姿勢を保持しながら図3中上下方向に多段に積載されている。
【0037】
処理室92に収容されたウエハ14は、ヒータ82により所定の温度に加熱されるようになっている。ボート38は、ボートエレベータ44(図1参照)により図3において上下方向に昇降自在となっており、反応管84に出入り(昇降)することができるようになっている。
【0038】
ボート38の下方には、処理の均一性を向上するようにボート38を回転させるボート回転機構96が設けられている。ボート回転機構96により、ボート支持台94に保持されたボート38を回転させることができるようになっている。
【0039】
処理室92には、ガスを供給する第1のガス供給管100a及び第2のガス供給管100bが接続されている。
【0040】
第1のガス供給管100aには、上流から順に、流量制御装置であるマスフローコントローラ(MFC)102a、開閉弁であるバルブ104aが設けられている。
また、第1のガス供給管100aには、キャリアガスを供給する第1のキャリアガス供給管110aが接続されている。第1のキャリアガス供給管110aには、上流から順に、流量制御装置であるマスフローコントローラ(MFC)112a、開閉弁であるバルブ114aが設けられている。
【0041】
第1のガス供給管100aの端部は、石英製の第1のノズル120aに接続されている。第1のノズル120aは、処理室92を構成している反応管84の内壁とウエハ14との間の円弧状の空間を、図3において上下方向に延在している。第1のノズル120aの側面には、複数のガス供給孔122aが形成されている。ガス供給孔122aは互いに同一の開口面積を有し、下方から上方にわたり同一の開口ピッチで形成されている。
【0042】
第2のガス供給管100bには、上流から順に、流量制御装置であるマスフローコントローラ(MFC)102b、開閉弁であるバルブ104bが設けられている。
また、第2のガス供給管100bには、キャリアガスを供給する第2のキャリアガス供給管110bが接続されている。第2のキャリアガス供給管110bには、上流から順に、流量制御装置であるマスフローコントローラ(MFC)112b、開閉弁であるバルブ114bが設けられている。
【0043】
第1のキャリアガス供給管110a、第2のキャリアガス供給管110bから供給されるキャリアガスとしては、例えば、N2、He、Ne、Ar等の不活性ガスが用いられる。
【0044】
第2のガス供給管100bの端部は、石英製の第2のノズル120bに接続されている。第2のノズル120bは、処理室92を構成している反応管84の内壁とウエハ14との間の円弧状の空間を、図3において上下方向に延在している。第2のノズル120bの側面には、複数のガス供給孔122bが形成されている。ガス供給孔122bは互いに同一の開口面積を有し、下方から上方にわたり同一の開口ピッチで形成されている。
【0045】
第3のガス供給管100cには、上流から順に、流量制御装置であるマスフローコントローラ(MFC)102c、開閉弁であるバルブ104cが設けられている。第3のガス供給管100cは、下流で第2のガス供給管100bと合流し、この第3のガス供給管100cの端部は、第2のノズル120bに接続されている。
【0046】
処理室92には、この処理室92内の雰囲気を排気するガス排気管130の一端部が接続されている。ガス排気管130の他端部は、真空ポンプ132に接続されており、処理室92の内部を真空排気することができるようになっている。ガス排気管130には、処理室92内を所定の圧力に制御するAPC(Auto Pressure Controller)等の圧力調整器134が設けられている。圧力調整器134は、弁を開閉して処理室92の真空排気の起動・停止ができるとともに、弁開度を調節して圧力調整可能になっている。
【0047】
処理室92内には、プラズマを発生するプラズマ発生装置140の電極142a、142bが配置されている。
【0048】
以上のMFC102a、102b、102c、112a、112b、バルブ104a、104b、104c、114a、114b、圧力調整器134、ヒータ82、真空ポンプ132、ボート回転機構96、ボートエレベータ44、プラズマ発生装置140等の基板処理装置10を構成する部材は、制御部であるコントローラ150に接続されている。
【0049】
コントローラ150は、MFC102a、102b、112a、112bの流量調整、バルブ104a、104b、114a、114bの開閉動作、ヒータ82の温度調節、真空ポンプ132の起動・停止、圧力調整器134の弁の開閉及び圧力調整動作、ボートエレベータ44の昇降動作、ボート回転機構96の回転速度調節、プラズマ発生装置140の起動・停止等を制御するようになっている。
【0050】
図4は、図3のA−A線断面図を示す。
処理室92を構成する反応管84の内壁の下部から上部には、ウエハ14の積載方向に沿うようにして、バッファ管152が設けられている。
【0051】
バッファ管152の外側に、第1のノズル120aが設けられており、この第1のノズル120aのガス供給孔122aから、金属塩化物生成装置60で生成された金属塩化物が供給される。
【0052】
バッファ管152の内側に、第2のノズル120bが設けられており、この第2のノズル120bのガス供給孔122bから、還元性ガス及び励起ガスが供給される。還元性ガスとしては、例えば水素(H2)等が用いられる。励起ガスとしては、上述のように例えばHe等が用いられる。
【0053】
また、バッファ管152の内側に、プラズマ発生装置140の電極142a、142bが設けられている。プラズマ発生装置140は、電極142a、142bと、この電極142a、142bに接続された高周波電源144及び同調ユニット146と、電極142a、142bの汚染を防止するための保護管148a、148bを備える。電極142a、142bはそれぞれ、保護管148a、148bに覆われている。
【0054】
したがって、バッファ管152内に供給された還元性ガス(例えばH2)は、プラズマ発生装置140によって励起される。励起された還元性ガス(例えばH*)は、バッファ管排出孔154を通って、ウエハ14に向かって供給される。
還元性ガス(例えばH2)に励起ガスを混合した場合、励起ガスを混合しない(H2単独)場合と比較して、励起した還元性ガス(例えばH*)の密度が増大する。
【0055】
[半導体装置の製造方法]
次に、本発明の実施形態にかかる半導体装置(デバイス)の製造工程の一工程として、基板処理装置10を用いて基板上に金属膜を形成する基板処理工程について説明する。
【0056】
以下、ウエハ14上にNi膜を形成する場合を例に説明する。基板処理装置10を構成する各部の動作は、コントローラ150によって制御される。
図5は、本発明の実施形態にかかる基板処理工程のフロー図を示す。図6(a)は、金属塩化物生成装置60による金属塩化物生成工程のシーケンス図を示し、図6(b)は、処理炉40においてウエハ14上にNi膜を成膜する工程のシーケンス図を示す。
【0057】
<基板搬入工程(S102)>
ステップ(S102)において、ウエハ14を処理炉40に搬入する。
ウエハ14を収納したカセット16がカセットステージ26に供給されるのに先立って、カセット搬入搬出口22がフロントシャッタ24によって開放される。次いで、カセット16はカセット搬入搬出口22から搬入され、カセットステージ26上にウエハ14が垂直姿勢であって、カセット16のウエハ出し入れ口が上方向を向くように載置される。その後、カセット16は、カセットステージ26によって、カセット16内のウエハ14が水平姿勢となり、カセット16のウエハ出し入れ口が筐体12の後方を向けるように、筐体12の後方に縦方向90°回転させられる。
【0058】
続いて、カセット16は、カセット棚28又は予備カセット棚32の指定された棚位置へカセット搬送装置34によって自動的に搬送されて受け渡され、一時的に保管された後、カセット棚28又は予備カセット棚32からカセット搬送装置34によって移載棚30に移載されるか、もしくは直接移載棚30に搬送される。
【0059】
カセット16が移載棚30に移載されると、ウエハ14はカセット16からウエハ移載装置36aのツイーザ36cによってウエハ出し入れ口を通じてピックアップされ、処理炉40の下方にあるボート38に装填(チャージング)される。ボート38にウエハ14を受け渡したウエハ移載装置36aはカセット16に戻り、次のウエハ14をボート38に装填する。
【0060】
予め指定された枚数のウエハ14がボート38に装填されると、炉口シャッタ42によって閉じられていた処理炉40の下端部が、炉口シャッタ42によって、開放される。続いて、ウエハ14群を保持したボート38は、シールキャップ48がボートエレベータ44によって上昇されることにより、処理炉40内へ搬入(ローディング)される。
【0061】
<昇温・圧力調整工程(S104)>
ステップ104(S104)において、処理室92(ウエハ14)を昇温し、圧力を調整する。
ヒータ82に供給する電力を調整し、ウエハ14の温度を昇温させ、このウエハ14の表面温度が所定の処理温度となるように制御する。また、圧力調整器134により、処理室92内の圧力が所定の処理圧力となるように制御する。
【0062】
処理室92内の温度を0℃以上700℃以下とした場合、温度がこの範囲にない場合と比較して、効率的にウエハ14上に金属膜を形成することができる。処理室92内の温度は、例えば300℃なるように設定する。
また、処理室92内の圧力を1Pa以上10000Pa以下とした場合、圧力がこの範囲にない場合と比較して、効率的にウエハ14上に金属膜を形成することができる。処理室92内の圧力は、例えば133Paとなるように設定する。
なお、真空ポンプ132は、少なくとも基板搬入工程(S102)から後述の基板搬出工程(S114)までの間は、常に作動させた状態とする。
【0063】
<金属塩化物生成工程(S106)>
ステップ106(S106)において、金属塩化物生成装置60により金属塩化物(NiCl (gas))を生成する。
基板搬入工程(S102)、昇温工程(S104)の一方で、処理炉40に供給する金属塩化物(NiCl (gas))を生成する。
【0064】
図6(a)に示すように、まず、固体金属66(Ni)が配置された生成室62を真空排気する。生成室62内が所定の雰囲気となったら、圧力調整器134の弁を閉じ真空排気を停止し、Cl2ガス及びHeガスを導入する。そして、プラズマ発生装置70の誘導アンテナ70aに、例えば13.56MHzの高周波を印加する。
このようにして所定量の金属塩化物(NiCl (gas))を生成したら、Cl2ガスとHeガスの導入及びプラズマ発生装置70の印加を停止し、生成室62を真空排気する。
なお、金属塩化物金属塩化物(NiCl (gas))生成後の真空排気は、少なくとも後述する繰り返し工程(S112)で繰り返される分を含む金属塩化物供給工程(S108)の終了以降に行うのが望ましい。
【0065】
<金属塩化物供給工程(S108)>
ステップ108(S108)において、処理炉40の処理室92内に金属塩化物(NiCl (gas))を供給する。
図6(b)に示すように、圧力調整器134の弁を開いて、真空ポンプ132により処理室92内を真空排気する。所定時間、真空排気したら、圧力調整器134の弁を閉じ真空排気を停止する。
続いて、バルブ104aを開きMFC102aで流量調整しながら、金属塩化物生成装置60の排出部72から第1のガス供給管100aを介して、金属塩化物(NiCl (gas))を第1のノズル120aに供給する。
このようにして、金属塩化物(NiCl (gas))の処理室92内への供給を開始する。
【0066】
バルブ104aを開いて金属塩化物(NiCl (gas))の供給を開始した後、所定時間が経過したら、バルブ104aを閉じ、処理室92内への金属塩化物(NiCl (gas))の供給を停止する。
【0067】
そして、再度、圧力調整器134の弁を開いて、真空ポンプ132により処理室92内を真空排気する。
これにより、ウエハ14に吸着せずに処理室92内に残留する金属塩化物(NiCl (gas))が排気される。すなわち、ウエハ14には、吸着した金属塩化物(NiCl (ad))が所定量存在する状態となっている。
所定時間、真空排気したら、圧力調整器134の弁を閉じ真空排気を停止する。
【0068】
<還元性ガス供給工程(S110)>
バルブ104bを開きMFC102bで流量調整しながら、第2のガス供給管100bを介して、還元性ガスとしてのH2ガスを第2のノズル120bに供給するとともに、バルブ104cを開きMFC102cで流量調整しながら、第3のガス供給管100cを介して、励起ガスとしてのHeガスを第2のノズル120bに供給する。
このようにして、還元性ガス及び励起ガスの処理室92内への供給を開始する。
【0069】
この際、プラズマ発生装置140の電極142a、142bに高周波電源144から高周波を印加する。これにより、励起ガスとともにバッファ管152内に供給されるH2はプラズマ励起され、活性化された水素(H*)が生成される。
【0070】
活性化された水素(H*)は、ウエハ14に吸着した金属塩化物(NiCl (ad))と反応し、ウエハ14上に金属原子(Ni)を生成する。
【0071】
バルブ104b、バルブ104cを開いてH2ガス、Heガスの供給を開始した後、所定時間が経過したら、バルブ104b、バルブ104cを閉じ、処理室92内へのH2ガス、Heガスの供給を停止する。
この際、ウエハ14に吸着している金属塩化物(NiCl (ad))の実質的に全てを活性化された水素(H*)と反応させることが好ましい。
【0072】
そして、圧力調整器134の弁を開いて、真空ポンプ132により処理室92内を真空排気する。
これにより、処理室92内に残留するH2ガス、Heガスが排気される。すなわち、ウエハ14には、Ni膜が形成された状態となっている。
【0073】
<繰り返し工程(S112)>
工程S108、S110を1サイクルとして、このサイクルを所定回数繰り返すことにより、ウエハ14上に所望膜厚のNi膜が形成される。
なお、必要に応じて、金属塩化物生成工程S106を行うようにしてもよい。
【0074】
金属塩化物の供給(金属塩化物供給工程(S108))と還元性ガスの供給(還元性ガス供給工程(S110))とを交互に切り換える(サイクル)回数でウエハ14上に成膜される膜厚を制御するようにすることもできる。
【0075】
<基板搬出工程(S114)>
その後、上述した基板搬入工程(S102)に示した手順とは逆の手順により、所望膜厚のNi膜が形成された後のウエハ14を、処理室92内から搬出して、基板処理工程を完了する。
【0076】
上記実施形態においては、金属塩化物を供給して真空排気した後、還元性ガスを供給する基板処理工程について説明したが、これに限らず、金属塩化物と還元性ガスを同時に処理室92内に供給するようにしてもよい。すなわち、金属塩化物供給工程(S108)と還元性ガス供給工程(S110)を同時に行うようにしてもよい。
【0077】
このように、本実施形態に係る半導体装置の製造方法及び基板処理装置は、(1)基板を処理する処理室と分離して設けられた生成室において、金属塩素化合物を生成すること、(2)金属膜形成の反応機構が、基板に吸着した金属塩化物と基板との反応によるものでなく、基板に吸着した金属塩化物と活性化した還元性ガス(例えば活性化された水素)との還元反応によるものであること、を特徴とする。
【0078】
[本発明の好ましい態様]
以下に、本発明の好ましい態様について付記する。
【0079】
本発明の一態様によれば、基板を処理室に搬入する第1の工程と、第1の原料としての固体金属を収容する生成室に、第2の原料としての塩素含有物と第3の原料としての励起ガスを供給し、プラズマ励起して金属塩化物を生成する第2の工程と、前記第2の工程により生成した金属塩化物を前記処理室に供給する第3の工程と、第4の原料としての還元性ガスを前記処理室に供給する第4の工程と、基板を前記処理室から搬出する第5の工程と、を有することを特徴とする半導体装置の製造方法が提供される。
【0080】
好ましくは、前記第3の工程及び前記第4の工程は、同時に行われる又は交互に繰り返される。
【0081】
好ましくは、第1の原料である固体金属としてルテニウム(Ru)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、タングステン(W)及びアルミニウム(Al)のいずれかを用いる。
【0082】
好ましくは、第2の原料である塩素化合物として塩素(Cl2)又は塩化水素(HCl)を用いる。
【0083】
好ましくは、第3の原料である励起用ガスとしてヘリウム(He)、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)及び窒素(N2)のいずれかを用いる。
【0084】
好ましくは、第4の原料である還元性ガスとして水素(H2)又は活性化された水素若しくは活性化された塩素等の活性化されたハロゲン原料を用いる。
【0085】
好ましくは、生成室に供給する第2の原料としての塩素化合物と第3の原料としての励起ガスとの比率は、第2の原料が1〜50%、第3の原料が50〜99%である。
さらに好ましくは、上記比率は、第2の原料が10%、第3の原料が90%である。
【0086】
好ましくは、生成室の内壁は、石英又はアルミナセラミックスからなる。
【0087】
好ましくは、生成室の内壁は、第1の原料である固体金属と同等(同質)の材料でコーティングが施されている。
【0088】
好ましくは、生成室の内壁の温度は、200℃以上300以下である。
【0089】
好ましくは、生成室内の第1の原料である固体金属の温度は、500℃以上である。
【0090】
本発明の他の態様によれば、プラズマを発生するプラズマ発生手段と、固体金属を収容する生成室と、前記生成室に塩素含有物を供給する第1のガス供給系と、前記生成室に励起ガスを供給する第2のガス供給系と、を備え、金属塩化物を生成する金属塩化物生成部と、前記金属塩化物生成部により生成された金属塩化物が供給され、基板を処理する処理室と、前記処理室に還元性ガスを供給する第3のガス供給系と、を有する基板処理装置が提供される。
【0091】
好ましくは、プラズマ発生手段は誘導性アンテナを備え、生成室には、誘導性アンテナとこの生成室内に収容された固体金属とを仕切る仕切板が設けられている。
さらに好ましくは、仕切板は石英からなる。
【0092】
好ましくは、プラズマ発生手段は誘導性アンテナを備え、この誘導性アンテナと生成室内に収容された固体金属との距離が50mm以内である。
【0093】
好ましくは、金属塩化物生成部と処理室とを接続する接続部の温度は、200℃以上300℃以下である。
【0094】
好ましくは、金属塩化物の供給と還元性ガスの供給とを交互に切り換え、この切り換える回数で膜厚を制御する。
【0095】
好ましくは、処理室内の温度は、0℃以上700℃以下である。
【0096】
好ましくは、処理室内の圧力は、1Pa以上10000Pa以下である。
【符号の説明】
【0097】
10 基板処理装置
12 筺体
14 ウエハ
28 カセット棚
30 移載棚
34 カセット搬送装置
36 ウエハ移載機構
38 ボート
40 処理炉
60 金属塩化物生成装置
62 生成室
66 固体金属
68 導入部
70a 誘導アンテナ
72 排出部
74 仕切板
92 処理室
100a 第1のガス供給管
100b 第2のガス供給管
100c 第3のガス供給管
110a 第1のキャリアガス供給管
110b 第2のキャリアガス供給管
110b ガス供給孔
120a 第1のノズル
120b 第2のノズル
130 ガス排気管
132 真空ポンプ
134 圧力調整器
140 プラズマ発生装置
150 コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を処理室に搬入する第1の工程と、
第1の原料としての固体金属を収容する生成室に、第2の原料としての塩素含有物と第3の原料としての励起ガスを供給し、プラズマ励起して金属塩化物を生成する第2の工程と、
前記第2の工程により生成した金属塩化物を前記処理室に供給する第3の工程と、
第4の原料としての還元性ガスを前記処理室に供給する第4の工程と、
基板を前記処理室から搬出する第5の工程と、
を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記第3の工程及び前記第4の工程は、同時に行われる又は交互に繰り返されることを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
プラズマを発生するプラズマ発生手段と、
固体金属を収容する生成室と、
前記生成室に塩素含有物を供給する第1のガス供給系と、
前記生成室に励起ガスを供給する第2のガス供給系と、
を備え、金属塩化物を生成する金属塩化物生成部と、
前記金属塩化物生成部により生成された金属塩化物が供給され、基板を処理する処理室と、
前記処理室に還元性ガスを供給する第3のガス供給系と、
を有する基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−54311(P2012−54311A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−194016(P2010−194016)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】