説明

半導体装置の製造方法

【課題】容易にかつ安価に多層配線構造を構築することができる半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】半導体ウェハWの薄膜担持面に、予めシートフィルムに塗布形成した金属薄膜を押し付け、該金属薄膜を転写する。その金属薄膜に凹凸パターンを型押しすることによって該パターンを転写し、エッチングによって配線1および隣接する配線1間の溝部を形成する。続いて、その上にシートフィルムに塗布形成した絶縁薄膜を押し付け、該絶縁薄膜8を転写する。そして、その絶縁薄膜8に凹凸パターン有するスタンパ31を押し付けることによって該パターンを転写する。このような転写形成による成膜、凹凸面を有するスタンパを使用したパターンニングおよびエッチングを金属層および絶縁層の双方について繰り返すことによって多層配線構造を構築する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層配線構造を有する半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体装置の製造方法としてはフォトリソグラフィーを使用するものが最も一般的である。すなわち、半導体ウェハ等の基板にCVD(Chemical Vapor Deposition)やスパッタによって金属薄膜を成膜し、マスクを使用したパターン露光およびエッチングによってその金属薄膜に回路パターンを形成し、さらにその上にスピンコート法等によって絶縁膜を形成し、その絶縁膜をCMP(Chemical Mechanical Polishing)によって平坦化するという工程を繰り返すことによって多層配線構造を構築していた。
【0003】
一方、極めて高価な露光装置(ステッパ)を使用しないパターン形成技術としていわゆる「ナノインプリント」も提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。この技術は、スタンパの凹凸面をゲル状の絶縁薄膜に押しつけてその凹凸面を転写した後ゲル薄膜を加熱硬化し、そのゲル薄膜の凹部に金属を埋め込んで配線とするものである。
【0004】
【特許文献1】特開平6−267943号公報
【特許文献2】特開2003−100753号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、フォトリソグラフィーを使用してパターン形成を行う場合には、工程数が非常に多くなり、その結果製造コストも高くなるという問題があった。また、ナノインプリントを使用した場合には、高価な露光装置を使用することなく工程数も削減できるものの、金属膜の成膜はめっきやCVDによって行っており、大電力を必要とするとともに、金属膜を平坦化するためにはCMP等の平坦化技術も必要であるために、なお相応の工程数を必要としている。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、容易にかつ安価に多層配線構造を構築することができる半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、基板の薄膜担持面上に金属薄膜層を転写形成する第1転写工程と、第1成型体の表面を前記金属薄膜層に押し付けて当該表面の形状を転写する第1成型工程と、前記第1記成型体の表面形状が転写された前記金属薄膜層の上に絶縁薄膜層を転写形成する第2転写工程と、第2成型体の表面を前記絶縁薄膜層に押し付けて当該表面の形状を転写する第2成型工程と、を備えることを特徴とする。
【0008】
また、請求項2の発明は、請求項1の発明に係る半導体装置の製造方法において、前記第1成型工程の後に前記金属薄膜層をエッチングする第1エッチング工程と、前記第2成型工程の後に前記絶縁薄膜層をエッチングする第2エッチング工程と、をさらに備える。
【0009】
また、請求項3の発明は、基板の薄膜担持面上に金属薄膜層を転写形成する第1転写工程と、第1成型体の表面を前記金属薄膜層に押し付けて当該表面の形状を転写する第1成型工程と、前記第1記成型体の表面形状が転写された前記金属薄膜層の上に絶縁薄膜層を転写形成する第2転写工程と、前記絶縁薄膜層の上にレジスト膜を転写形成する第3転写工程と、第2成型体の表面を前記レジスト膜に押し付けて当該表面の形状を転写する第2成型工程と、前記第2記成型体の表面形状が転写された前記レジスト膜をエッチングすることによって前記絶縁薄膜層のうち前記レジスト膜の凹部直下を溝部として形成するエッチング工程と、を備えることを特徴とする。
【0010】
また、請求項4の発明は、請求項1から請求項3のいずれかの発明に係る半導体装置の製造方法において、前記第2転写工程に、前記第1記成型体の表面形状が転写されることによって形成された前記金属薄膜層の溝部に空気を封入する工程を含ませている。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、金属薄膜層および絶縁薄膜層の双方について、転写形成による成膜および成型体を押し付けることによる表面形状転写によって形成しているため、従来一般的に使用されていたフォトリソグラフィーを用いることなく、容易にかつ安価に多層配線構造を構築することができる。
【0012】
また、請求項2の発明によれば、成型工程の後にエッチングを行っており、より確実に薄膜層の溝部を形成することができる。
【0013】
また、請求項3の発明によれば、金属薄膜層については転写形成による成膜および成型体を直接押し付けることによる表面形状転写によって形成し、絶縁薄膜層については転写形成による成膜および成型体をレジスト膜を介して間接的に押し付けることによる表面形状転写によって形成しているため、従来一般的に使用されていたフォトリソグラフィーを用いることなく、容易にかつ安価に多層配線構造を構築することができる。
【0014】
また、請求項4の発明によれば、金属薄膜層の溝部に空気を封入しているため、配線間の絶縁をより確実なものとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0016】
<1.第1実施形態>
半導体装置の製造プロセスについては後に詳述するが、その概略は薄膜層を転写形成することによる成膜と凹凸面を有するスタンパを使用したパターンニングとを繰り返すものである。図1は、薄膜層の転写形成を行う転写装置の構成例を示す概略図である。この転写装置10は、その内部が真空排気可能とされた処理容器11を備えている。処理容器11の側面部には排気口112が設けられるとともに、その排気口112に真空ポンプ12が接続されている。この真空ポンプ12は、図示を省略する制御ユニットからの動作指令に応じて作動し、排気口112を介して処理容器11内を真空排気することができる。
【0017】
また、処理容器11内には、第1プレート14および第2プレート15と、第1プレート14の第2プレート15に対する傾きを自動的に補正する傾斜補正機構18が配設されている。第1プレート14は、第2プレート15の上方にこれと軸線が一致するように傾斜補正機構18を介して吊設される。半導体ウェハWは第1プレート14の下面(第2プレート15と対向する面)に装着される。このため、第1プレート14の下面は、平坦性を確保するために研磨された石英板(図示省略)が設けられており、この石英板に半導体ウェハWが固定される。このように石英板を用いた理由は、石英が、半導体ウェハWを汚染する物質を含まないこと、および加工性がよく必要とする平坦性が容易に得られることなどから、半導体ウェハWを装着する材料として優れているからである。また、第1プレート14は、内部に加熱手段として加熱ヒータ141を具備している。この加熱ヒータ141は25℃〜300℃の間の温度となるように加熱制御される。
【0018】
もう一方のプレート、つまり第2プレート15は、第1プレート14の下方に第1プレート14と対向して配設される。また、第2プレート15は、後述するシートフィルムFが載置される石英製のステージと、シートフィルムFを加熱する加熱台とから構成されるとともに、その加熱台の内部に加熱手段として加熱ヒータ151が内蔵されている。この加熱ヒータ151も25℃〜300℃の間の温度となるように加熱制御される。なお、第1プレート14および第2プレート15は、静電チャック方式でシートフィルムFおよび半導体ウェハWをそれぞれ吸着保持するものであってもよいし、バキュームチャック方式で吸着保持するものであってもよい。
【0019】
また、加熱台の下面中央には、軸153が一体に垂設されている。この軸153は軸受191によって上下動自在に軸支され、加重機構としての加重モータ192によって鉛直方向に沿って上下動されるように構成されている。なお、軸受191は、軸153と処理容器11と間をシールして処理容器11内を気密に保つ機能も有する。
【0020】
傾斜補正機構18は、第1プレート14の外周を取り囲むように配設され、紙面の法線方向に延びる第1軸部材181を介して第1プレート14に連結され、第1軸部材181周りで第1プレート14を回動自在に支持するリング状の第1支持体182を備える。また、傾斜補正機構18は、第1支持体182の外周に配設され、紙面の幅方向に延びる第2軸部材183を介して第1支持体182に連結され、第2軸部材183周りで第1支持体182を回動自在に支持する第2支持体184を備えている。
【0021】
このように構成された傾斜補正機構18においては、第1プレート14は、第1支持体182により紙面法線方向に沿った第1軸部材181周りに回動自在に支持されるとともに、第2支持体184により紙面幅方向に沿った第2軸部材183周りに回動自在に支持されており、第2プレート15が多少傾いていたとしても、いわゆる軸回動によって第1プレート14を第2プレート15に平行にすることができる。
【0022】
また、傾斜補正機構18を構成する第2支持体184は支柱部185を介して処理容器11内の天井部から吊設されている。より詳しく説明すると、この支柱部185は、軸受193によって上下動自在に枢支され、上端には下方への落下を防止するフランジ194が一体に突設されている。なお、軸受193は、支柱部185と処理容器11と間をシールして処理容器11内を気密に保つ機能も有する。また、フランジ194は荷重センサ195と連結されており、半導体ウェハWとシートフィルムFとの間に印加される荷重は荷重センサ195によって検出される。
【0023】
このような転写装置10を使用した転写処理手順について図2を参照しつつ説明する。図2は、薄膜を転写形成する手順を示す図である。ここでは、図2(a)に示す如く、金属の配線1と絶縁層2とが形成された半導体ウェハWに金属薄膜を転写形成する場合を例に説明する。まず、薄膜担持面(ここでは配線1および絶縁層2が形成され、薄膜を形成すべき面)を下方に向けた状態で半導体ウェハWを第1プレート14の下面に装着する。また、第2プレート15上には、その表面に予め金属薄膜5を塗布形成してなるシートフィルムFを金属薄膜5が上を向くように装着する。ここでは、金属薄膜5が半導体ウェハWに転写すべき薄膜であり、この金属薄膜5が半導体ウェハWの薄膜担持面に対向するように半導体ウェハWおよびシートフィルムFが配置されることとなる。なお、図2においては図示の便宜上、下側に半導体ウェハWを記載し、上側にシートフィルムFを記載しており、転写装置10にて実際に処理される配置関係とは上下が逆となっている。
【0024】
次に、加熱ヒータ141に通電して第1プレート14を加熱して半導体ウェハWを所望の温度に加熱するとともに、加熱ヒータ151に通電して第2プレート15を加熱してシートフィルムFを所望の温度に加熱する。また、真空ポンプ12によって処理容器11内が所望の真空度となるように真空排気する。
【0025】
そして、処理容器11内が所望の真空度になった後、加重モータ192による加重操作を開始する。これによって、図2(b)に示すように、第2プレート15が鉛直方向に沿って上昇してシートフィルムFを半導体ウェハWに押し付ける。このとき、第1プレート14と傾斜補正機構18は、第2プレート15によって一体に押し上げられる。
【0026】
この押上時に、第1プレート14が第2プレート15に対して傾斜しているときは、第2プレート15が第1プレート14に当接したとき、傾斜補正機構18によって第1プレート14の傾斜が自動的に補正される。すなわち、第1プレート14は傾斜補正機構18によって鉛直方向に対して傾斜可能に保持されているので、例えば図1紙面上において第1プレート14の左方が若干下方となるように小角度傾斜しているとすると、まず第2プレート15の左端側が第1プレート14に接触して第1プレート14を押し上げる。このため、第1プレート14は第1軸部材181を回動中心として時計方向に回動して半導体ウェハWとシートフィルムFとの接触面積が右方に徐々に拡がっていく。そして、第1プレート14の傾斜が完全に補正され第2プレート15と平行になると、基板WとシートフィルムFとが全面にわたって等しい圧力で押し付けられる。
【0027】
そして、加重モータ192によって加重を続け、荷重センサ195によって所望の荷重が検知されると、加重モータ192はその荷重が維持されるように加重動作を継続する。また、その間も処理容器11内が所定の真空度となるように排気され続けるとともに、半導体ウェハWおよびシートフィルムFは所定の温度となるように加熱され続けている。そして、所定時間の上記加重動作が終了すると、加重モータ192は加重を解除して第2プレート15を下降させる。このとき、真空ポンプ12による真空排気も停止する。
【0028】
上記した一連の処理の結果、薄膜担持面に配線1と絶縁層2とが形成された半導体ウェハWが金属薄膜5を挟んでシートフィルムFと密着して一体となる。こうして形成された密着物を処理容器11から取り出し、図2(c)に示すようにシートフィルムFを剥離することによって、図2(d)に示すような金属薄膜5が転写形成された半導体ウェハWを得ることができる。
【0029】
次に、図3はパターンニングを行う成型装置の構成例を示す概略図である。この成型装置30は、凹凸面31aを下方に向けた状態でスタンパ(成型体)31を吸着して保持する固定ステージ41と、薄膜形成面(薄膜Lが形成された面)を上方に向けた状態で半導体ウェハWを吸着して保持する可動ステージ42とを備えている。スタンパ31は、石英または金属のように表面形状を凹凸面31aとして加工することができる硬質材料によって構成されている。凹凸面31aは、半導体ウェハWの薄膜上に形成すべき凹凸パターンを有している。より具体的には、凹凸面31aには、半導体ウェハWの薄膜に形成すべき溝に対応した凸部または突条部が形成されるとともに、これらの凸部または突条部の間が凹部として形成されている。なお、固定ステージ41および可動ステージ42は、静電チャック方式でスタンパ31および半導体ウェハWをそれぞれ吸着保持するものであってもよいし、バキュームチャック方式でそれぞれ吸着保持するものであってもよい。
【0030】
固定ステージ41および可動ステージ42は、スタンパ31および半導体ウェハWをそれぞれ吸着保持する保持面が上下に対向する状態で設けられている。可動ステージ42には、鉛直方向に沿って設けられたボールねじ43に螺合するボールナット44が結合されている。このボールナット44は、リニアガイド45,46によって鉛直方向に摺動自在に案内されるブラケット47に固定されている。ボールねじ43にはモータ48からの回転力が伝達されるようになっている。したがって、モータ48を正転または逆転させることにより、ボールねじ43が回転し、ボールナット44に結合された可動ステージ42が鉛直方向に沿って昇降する。これにより、可動ステージ42を固定ステージ41に対して近接または離間させることができる。
【0031】
パターンニングを行う際には、スタンパ31を固定ステージ41に吸着保持させるとともに、ゲル状の薄膜Lが表面に形成された半導体ウェハWを可動ステージ42に吸着保持させ、スタンパ31の凹凸面31aと薄膜Lとを相対向させた状態で、可動ステージ42を上昇させて、固定ステージ41に接近させる。やがて、半導体ウェハWの薄膜Lとスタンパ31とが当接して密着する。このとき、薄膜Lがゲル状であるため、凹凸面31aの凸部または突条部は薄膜L内に入り込んでいく。一方、凹凸面31aの凹部は平坦面であるため、凸部または突条部以外の領域においては、薄膜Lの表面が平坦化される。
【0032】
固定ステージ41および可動ステージ42の少なくともいずれか一方には、ランプやヒータ等からなる加熱機構411,421が内蔵されている。この加熱機構411,421は、固定ステージ41および可動ステージ42が近接してスタンパ31と半導体ウェハWとが密着したとき、必要に応じて通電されて発熱し、薄膜Lを硬化させる。
【0033】
その後、モータ48を逆転させて可動ステージ42を固定ステージ41から離間させることによって、スタンパ31の凹凸面31aの形状を薄膜Lに転写することができる。すなわち、薄膜Lには凹凸面31aの凸部または突条部に対応した凹部または溝部が形成されるとともに、凹凸面31aの凹部に対応した凸部が形成されることとなる。なお、加熱による薄膜Lの硬化処理はスタンパ31と半導体ウェハWとを離間させた後に行うようにしても良い。
【0034】
次に、本発明に係る半導体装置の製造方法について、図4〜図13を参照しつつ説明する。まず、半導体ウェハWの薄膜担持面上に金属薄膜5を転写形成する(図4)。この金属薄膜5の転写形成は図1の転写装置10によって図2に示したのと同様の手順にて行われる。この際に、シートフィルムFに塗布形成される金属薄膜5は、パターンニング可能な程度の硬度を有するものであり、例えばペースト状或いはゲル状のコロイド金属にて構成される。従って、半導体ウェハWの薄膜担持面上に転写形成される金属薄膜5もパターンニング可能な程度に軟質なものである。なお、上述した図2においては、配線1と絶縁層2とが既に形成された半導体ウェハWに金属薄膜5を転写形成していたが、ここではベアの半導体ウェハWの表面を薄膜担持面とし、その上に金属薄膜5を転写形成している。図2に示す手法によって形成された金属薄膜5は、非常に高い平坦性を有する金属の薄膜層である。
【0035】
次に、図3の成型装置30を使用して金属薄膜5にパターンニングを行う。すなわち、半導体ウェハW上の平坦な金属薄膜5にスタンパ31を押し付けて(図5)、両者を密着させる(図6)。このときに、スタンパ31の凹凸面31aのうち凸部が金属薄膜5内に埋入するとともに、凹部に対応する領域においては金属薄膜5が平坦化される。その後、スタンパ31を半導体ウェハWから離間させてから加熱機構421(図3参照)を使用して所定温度所定時間の熱処理を行って金属薄膜5を硬化させる。その結果、スタンパ31の凹凸面31aの形状(凹凸パターン)が金属薄膜5に転写され、金属薄膜5の上面には凸部5aおよび凹部5bが形成される(図7)。
【0036】
続いて、パターンニングがなされた金属薄膜5のエッチングを行う。エッチング手法としては、金属薄膜5の性質に応じて公知のドライエッチングまたはウェットエッチングを採用することができるが、ここではドライエッチングであるRIE(Reactive Ion Etching)を行っている。金属薄膜5をエッチングすることによって、凹部5b底部のウェハ表面を完全に露出させる(図8)。なお、このときに金属薄膜5の凸部5aもエッチングされることとなるが凹部5bよりも厚いため、凹部5b底部のウェハ表面が露出してもなお金属薄膜として残留しており、その残留した金属薄膜が金属の配線1となる。そして、隣接する配線1相互間のウェハ表面が露出した領域(元の凹部5bに対応する領域)が溝部6となる。
【0037】
次に、半導体ウェハWの薄膜担持面上に絶縁薄膜8を転写形成する(図9)。この絶縁薄膜8の転写形成も図1の転写装置10によって図2に示したのと同様の手順にて行われる。但し、この場合、シートフィルムFに塗布形成されるのは金属薄膜5に代えて絶縁薄膜8であり、例えばゲル状のSOG(Spin on Glass)や低比誘電率材料(low k材料)にて構成される。図2に示した手法によって半導体ウェハWに絶縁薄膜8を転写形成することにより、溝部6にも確実に絶縁材を充填することができるとともに、絶縁薄膜8を非常に高い平坦性を有する絶縁材料の薄膜層とすることができる。
【0038】
次に、図3の成型装置30を使用して絶縁薄膜8にパターンニングを行う。すなわち、半導体ウェハW上の平坦な絶縁薄膜8にスタンパ31を押し付けて密着させる(図10)。このときに、スタンパ31の凹凸パターンのうち凸部が絶縁薄膜8内に埋入するとともに、凹部に対応する領域においては絶縁薄膜8が平坦化される。なお、絶縁薄膜8のパターンニングに使用するスタンパ31の凹凸パターンと金属薄膜5のパターンニングに使用するそれとではパターン形状自体は当然異なる。
【0039】
その後、スタンパ31を半導体ウェハWから離間させてから、或いは離間させる前に所定温度所定時間の熱処理を行って絶縁薄膜8を硬化させる。その結果、スタンパ31の凹凸パターンが絶縁薄膜8に転写され、絶縁薄膜8の上面には凸部8aおよび凹部8bが形成される(図11)。
【0040】
続いて、パターンニングがなされた絶縁薄膜8のエッチングを行う。エッチング手法としては、例えば、上記と同様のドライエッチングを採用することができる。絶縁薄膜8をエッチングすることによって、凹部8b底部の下層配線1を完全に露出させる(図12)。なお、このときに絶縁薄膜8の凸部8aもエッチングされることとなるが凹部8bよりも厚いため、凹部8b底部の配線1が露出してもなお絶縁薄膜として残留しており、その残留した絶縁薄膜が層間絶縁層2となる。そして、隣接する層間絶縁層2相互間の配線1が露出した領域(元の凹部8bに対応する領域)がビアホール3となる。
【0041】
その後、さらに半導体ウェハWの薄膜担持面上に金属薄膜5を転写形成する(図13)。これは図1と同様の工程であり、図2に示した手法によって半導体ウェハWに金属薄膜5を転写形成することにより、ビアホール3にも確実に金属(ビアプラグ)を充填することができるとともに、金属薄膜5を非常に高い平坦性を有する金属の薄膜層とすることができる。以降、上述したのと同様のプロセスを繰り返し実行することにより、半導体ウェハWに多層配線構造を構築することができる。
【0042】
このように、第1実施形態においては、金属層および絶縁層の双方について、転写形成による成膜、凹凸面を有するスタンパを使用したパターンニングおよびエッチングによって形成しており、これを繰り返すことによって多層配線構造を構築している。図2に示した転写形成による成膜を行えば、下方の溝部への確実な充填と薄膜の平坦化を同時にかつ容易に行うことができる。また、凹凸面を有するスタンパを使用したパターンニングにより、安価にしかも高い解像度にてパターン転写を行うことが可能となる。その結果、従来一般的に使用されていたフォトリソグラフィー、CVDやめっきによる成膜およびCMPによる平坦化を用いることなく多層配線構造を構築することができ、高価な露光装置が不要となり、また工程数や電力消費量も著しく低減することができる。従って、半導体ウェハWに容易にかつ安価に多層配線構造を構築することができる。
【0043】
<2.第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態の半導体装置製造プロセスが第1実施形態と相違するのは、絶縁薄膜8へのパターンニング工程であり、残余のプロセスは同じである。第2実施形態における、絶縁薄膜8へのパターンニングについて図14から図17を参照しつつ説明する。なお、第1実施形態と同一の要素については同一の符号を付している。
【0044】
第2実施形態では、半導体ウェハWに絶縁薄膜8を転写形成した後(第1実施形態の図9の後)、さらにその絶縁薄膜8の上にレジスト膜9を転写形成している(図14)。このレジスト膜9の転写形成も図1の転写装置10によって図2に示したのと同様の手順にて行われる。但し、この場合、シートフィルムFに塗布形成されるのはレジスト膜9である。
【0045】
次に、図3の成型装置30を使用してレジスト膜9にパターンニングを行う。すなわち、レジスト膜9にスタンパ31を押し付けて密着させることにより、スタンパ31の凹凸パターンをレジスト膜9の表面に転写する(図15)。その結果、レジスト膜9の上面には凸部9aおよび凹部9bが形成される。なお、レジスト膜9のパターンニングに使用するスタンパ31の凹凸パターンは図10に示した絶縁薄膜8のパターンニングに使用するスタンパ31の凹凸パターンと同じである。
【0046】
続いて、パターンニングがなされたレジスト膜9のエッチングを行う。エッチング手法としては、例えば、上記と同様のドライエッチングを採用することができる。レジスト膜9をエッチングすることによって、凹部9bのみならずその下部に位置する絶縁薄膜8も腐食され、やがて下層配線1が完全に露出する(図16)。なお、このときにレジスト膜9の凸部9aもエッチングされることとなるが一部は残留する。このため、例えば薬液を使用したレジスト除去処理を行うことにより、残留しているレジスト膜9を完全に剥離除去する(図17)。その結果、エッチングされなかった絶縁薄膜8が層間絶縁層2となり、隣接する層間絶縁層2相互間の配線1が露出した領域(元の凹部9bに対応する領域)がビアホール3となり、図12の構造と同様のものが得られることとなる。
【0047】
このようにしても第1実施形態と同様の効果が得られる。第1実施形態では絶縁薄膜8に凹凸面を有するスタンパを使用して直接にパターンニングを行っていたのに対して、第2実施形態では同じスタンパを使用してレジスト膜を介したパターンニングを行っており、いわば間接パターンニングを行っている。
【0048】
<3.第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態について説明する。第3実施形態の半導体装置製造プロセスが第1実施形態と相違するのは、半導体ウェハWへの絶縁薄膜8の転写形成工程であり、残余のプロセスは同じである。第3実施形態における、絶縁薄膜8の転写形成について図18および図19を参照しつつ説明する。なお、第1実施形態と同一の要素については同一の符号を付している。
【0049】
第3実施形態においては、第1実施形態の図8の後、金属の下層配線1が形成された半導体ウェハWに絶縁薄膜8を転写形成するときに、溝部6に空気を封入してエアギャップ7を形成している(図18)。具体的には、シートフィルムFに塗布形成する絶縁薄膜8の粘度を高くするとともに、第1プレート14と第2プレート15との間に作用する荷重を低くすることによって、溝部6に空気を封入する。
【0050】
残余のプロセスについては第1実施形態と同じであり、2層目の金属薄膜5を転写形成してビアホール3に金属を充填した状態は図19のようになる。このようにすれば、同一層の配線間の絶縁はエアギャップ7によって維持されることとなる。空気は現在開発されているいわゆる低比誘電率材料よりもさらに比誘電率が低く(概ねk=1)、いわば究極の低比誘電率材料であり、第3実施形態のようにすれば第1実施形態と同様の効果に加えて同一層の配線間における絶縁をほぼ完璧なものとすることができる。もっとも、より上層の構造を配線1のみによって支えることとなるため、配線構造の強度に関しては第1および第2実施形態のようにした方が高くなる。
【0051】
<4.変形例>
以上、本発明の実施の形態について説明したが、この発明はその趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記第2実施形態の如きレジストを使用した間接パターンニングを金属薄膜5に対するパターンニングに適用するようにしても良い。
【0052】
また、第2実施形態の間接パターンニングと第3実施形態のエアギャップ形成とを組み合わせて多層配線構造を構築するようにしても良い。
【0053】
また、上記各実施形態においては、パターンニング工程の後にエッチングを行うことによって溝部6およびビアホール3を形成していたが、これに限定されるものではなく、スタンパ31の凹凸パターンを調節したり、モータ48の押し付け荷重を制御することによって、パターンニングのみにより溝部6およびビアホール3を形成するようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】薄膜の転写形成を行う転写装置の構成例を示す概略図である。
【図2】薄膜を転写形成する手順を示す図である。
【図3】パターンニングを行う成型装置の構成例を示す概略図である。
【図4】半導体装置の製造工程の一例を示す図である。
【図5】半導体装置の製造工程の一例を示す図である。
【図6】半導体装置の製造工程の一例を示す図である。
【図7】半導体装置の製造工程の一例を示す図である。
【図8】半導体装置の製造工程の一例を示す図である。
【図9】半導体装置の製造工程の一例を示す図である。
【図10】半導体装置の製造工程の一例を示す図である。
【図11】半導体装置の製造工程の一例を示す図である。
【図12】半導体装置の製造工程の一例を示す図である。
【図13】半導体装置の製造工程の一例を示す図である。
【図14】半導体装置の製造工程の他の例を示す図である。
【図15】半導体装置の製造工程の他の例を示す図である。
【図16】半導体装置の製造工程の他の例を示す図である。
【図17】半導体装置の製造工程の他の例を示す図である。
【図18】半導体装置の製造工程の他の例を示す図である。
【図19】半導体装置の製造工程の他の例を示す図である。
【符号の説明】
【0055】
1 配線
2 層間絶縁層
3 ビアホール
5 金属薄膜
6 溝部
7 エアギャップ
8 絶縁薄膜
9 レジスト膜
10 転写装置
30 成型装置
W 半導体ウェハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の薄膜担持面上に金属薄膜層を転写形成する第1転写工程と、
第1成型体の表面を前記金属薄膜層に押し付けて当該表面の形状を転写する第1成型工程と、
前記第1記成型体の表面形状が転写された前記金属薄膜層の上に絶縁薄膜層を転写形成する第2転写工程と、
第2成型体の表面を前記絶縁薄膜層に押し付けて当該表面の形状を転写する第2成型工程と、
を備えることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の半導体装置の製造方法において、
前記第1成型工程の後に前記金属薄膜層をエッチングする第1エッチング工程と、
前記第2成型工程の後に前記絶縁薄膜層をエッチングする第2エッチング工程と、
をさらに備えることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項3】
基板の薄膜担持面上に金属薄膜層を転写形成する第1転写工程と、
第1成型体の表面を前記金属薄膜層に押し付けて当該表面の形状を転写する第1成型工程と、
前記第1記成型体の表面形状が転写された前記金属薄膜層の上に絶縁薄膜層を転写形成する第2転写工程と、
前記絶縁薄膜層の上にレジスト膜を転写形成する第3転写工程と、
第2成型体の表面を前記レジスト膜に押し付けて当該表面の形状を転写する第2成型工程と、
前記第2記成型体の表面形状が転写された前記レジスト膜をエッチングすることによって前記絶縁薄膜層のうち前記レジスト膜の凹部直下を溝部として形成するエッチング工程と、
を備えることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の半導体装置の製造方法において、
前記第2転写工程は、前記第1記成型体の表面形状が転写されることによって形成された前記金属薄膜層の溝部に空気を封入する工程を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate


【公開番号】特開2007−88374(P2007−88374A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−278208(P2005−278208)
【出願日】平成17年9月26日(2005.9.26)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】