説明

半導体装置及びその製造方法

【課題】 Wプラグ表面の異常な酸化を抑制し、Wプラグを有する集積回路配線として配線抵抗の安定した半導体装置及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 下層配線11は、パターンの伸長途中に補助パターン11Sを設けている。絶縁膜を貫通するホール14及び14Dを介してタングステンプラグ15及びダミーのタングステンプラグ15Dが設けられている。上層配線層13の周辺には同じ層の他の配線層が比較的密なパターンで配されている。ダミーのタングステンプラグ15Dは、タングステンプラグ15から離れた補助パターン11S上に複数設けられ、下層配線11と結合されるが上層において電気的にはオープンになっている。CMP後などの洗浄時にタングステンプラグ15表面が純水に接触しても、ダミーのタングステンプラグ15Dによる多量の電子の供給源が確保される。これにより、タングステンプラグ15表面の酸化物の付着が抑えられ、抵抗上昇も抑制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CMP工程を伴って形成される配線接続部を有する半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置製造において、多層配線は一般的である。多層配線の形成技術において、コンタクトホールやビアホールにW(タングステン)プラグを形成するための、ブランケットW及びその後のWのエッチバック処理またはCMP(化学的機械的研磨)処理はよく知られている。
【0003】
集積回路配線において、コンタクトまたはビアとなるWプラグの分布が密の部分と疎の部分とでWのエッチング速度が変わる。これはいわゆるローディング効果と呼ばれる現象であり、疎の部分のWのエッチング速度が相対的に大きくなる。従って、比較的疎の部分のコンタクトホールまたはビアホールに埋め込まれたWプラグの上部が過度にエッチングされ埋め込み状態が良好でなくなる。この結果、Wプラグは上層のアルミニウム配線層との接触面積が減少し、高抵抗を招く。
【0004】
上記対策として、集積回路配線において、Wプラグ分布が疎の部分のWプラグ近傍に、配線や拡散層に接続されないダミーのホールを形成しWプラグと同じようにWを埋め込む。これにより、エッチバック時に露出するWプラグ分布の不均一性を改善し、ローディング効果を抑制する(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平6−85080号公報(段落番号[0026]、[0027]、第3頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記ローディング効果とは別の原因で、Wプラグの分布が密の部分に比べて疎の部分、より詳細には孤立したWプラグの配線抵抗が高くなるという問題がある。Wプラグの形成時、例えばWのブランケットをCMPにより平坦化除去するが、CMP後の洗浄時に純水に接触する。その際、Wプラグ表面に異常な酸化が発生する場合があり、これが配線抵抗上昇を招く。
【0006】
CMP後の洗浄時、通常、WはHO+Oと反応し(WO)、電子が媒介することでOHがWOに作用してWO42−となり、Wプラグ表面から離脱される。ところが、Wプラグが孤立していると電子の供給が追いつかずにWOのままWプラグ表面に留まってしまうことが少なくない。この結果、Wプラグは、表面に異常な酸化物が形成され、上質なWと上層のアルミニウム配線層との接触面積が減少するので、高抵抗を招く。
【0007】
本発明は上記のような事情を考慮してなされたもので、Wプラグ表面の異常な酸化を抑制し、Wプラグを有する集積回路配線として配線抵抗の安定した半導体装置及びその製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る半導体装置は、半導体集積回路の層間の絶縁膜を介して下層配線と上層配線の電気的接続をなすタングステンプラグと、前記下層配線のパターンの伸長途中に設けられ、前記タングステンプラグが接続される前記下層配線の接続用端部の幅より大きい補助パターンと、前記補助パターン上に複数まとめて設けられ、前記下層配線と結合されるが上層において電気的にはオープンになっているダミーのタングステンプラグと、を具備する。
【0009】
上記本発明に係る半導体装置によれば、ダミーのタングステンプラグは半導体集積回路を構成する電気回路としては意味を持たないが、下層配線と結合されている。これにより、洗浄時にタングステンプラグ表面が純水に接触しても、ダミーのタングステンプラグによる多量の電子の供給源が確保される。これにより、タングステンプラグ表面の酸化物の付着が抑えられ、抵抗上昇も抑制される。
【0010】
なお、上記本発明に係る半導体装置は、タングステンプラグ近傍の上層配線が密のときにタングステンプラグから離れた場所になるべく多くのできるだけ多くのダミーのタングステンプラグを配し、多量の電子の供給源を確保することが目的である。次のいずれかの特徴を有することにより、より効果的に、高抵抗になり難い、また高信頼性の得られるタングステンプラグが実現される。
前記補助パターンは、前記下層配線から分岐した配線路の端部に形成されていることを特徴とする。
前記補助パターンは、前記下層配線の伸長路上に形成されていることを特徴とする。
前記ダミーのタングステンプラグは、前記補助パターン上にマトリクス状に配列されていることを特徴とする。
前記ダミーのタングステンプラグ上には前記上層配線と同じ導電材料で島状部材が形成されていることを特徴とする。
前記下層配線は、前記半導体集積回路に関係するメタル配線、半導体素子を構成するポリシリコン層、シリサイド層のうちのいずれかであることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る半導体装置の製造方法は、半導体ウェーハにおける半導体集積回路形成に関し、接続用端部の幅より大きい補助パターンを伸長途中に付加した下層配線を形成する工程と、前記下層配線上に層間の絶縁膜を形成する工程と、前記層間の絶縁膜を貫通して底部に下層配線及び補助パターンの各領域を露出させる、配線用、ダミー用を含む複数のホールを形成する工程と、前記各ホール内へのバリアメタルの被覆を介して前記各ホールを同時に埋め込むタングステンを堆積する工程と、前記各ホール上面のレベルまで前記タングステンを研磨除去し、配線用、ダミー用それぞれのタングステンプラグを形成するCMP工程と、前記タングステンプラグそれぞれを覆うように上層配線部材を形成する工程と、前記上層配線部材を選択的にエッチングすることにより、前記配線用のタングステンプラグと接続する上層配線を形成するパターニング工程と、を具備する。
【0012】
上記本発明に係る半導体装置の製造方法によれば、タングステンプラグを形成するCMP工程後は純水洗浄を伴う。このとき、配線用のタングステンプラグと同じように下層配線に接続される補助パターン上のダミーのタングステンプラグが設けられる。よって、タングステンプラグ表面が純水に接触しても、ダミーのタングステンプラグによる多量の電子の供給源が確保される。これにより、タングステンプラグ表面は電子の供給により酸化物のイオン化が促進され、酸化物の付着が抑えられる。
【0013】
なお、上記本発明に係る半導体装置の製造方法は、前記パターニング工程に関し、前記上層配線と同時に前記ダミー用のタングステンプラグと接続する島状部材を形成することを特徴とする。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本発明の第1実施形態に係る半導体装置の要部を示す平面図である。破線の下層配線11と上層配線層13は図示しない層間の絶縁膜により隔てられている。下層配線11は、パターンの伸長途中に補助パターン11Sを設けている。絶縁膜を貫通するホール14及び14Dを介してタングステンプラグ15及びダミーのタングステンプラグ15Dが設けられている。上層配線層13の周辺には同じ層の他の配線層(13)が比較的密なパターンで配されている。
【0015】
下層配線11は、図示しない半導体ウェーハまたはICチップにおける半導体集積回路に関係するメタル配線である。下層配線11は、例えばアルミニウムを主成分とするメタル配線である。その他、下層配線11は、半導体素子を構成するゲートのポリシリコン層またはシリサイド層であることも考えられる。下層配線11に付加された補助パターン11Sは、下層配線11の伸長途中において、下層配線11の接続用端部の幅W1より大きい寸法を有する。より具体的には、補助パターン11Sは、W1よりも大きいW2を1辺とする広い面積のランド形状である。また、上層配線層13は、例えばアルミニウムを主成分とするメタル配線である。
【0016】
タングステンプラグ15は、ホール14に図示しないバリアメタルを介して埋め込まれたW(タングステン)でなり、下層配線11と上層配線13の電気的接続を担っている。
一方、ダミーのタングステンプラグ15Dは、タングステンプラグ15から離れた補助パターン11S上に複数設けられ、下層配線11と結合されるが上層において電気的にはオープンになっている。島状部材13Iは、上層配線13と同じ導電材料で形成されているが、電気回路的には意味を持たない。島状部材13Iは、タングステンの拡散バリア等のキャップ機能が伴うと考えられるが、支障なければ無くてもよい。
【0017】
ダミーのタングステンプラグ15Dは、タングステンプラグ15との離間距離が小さい方が好ましいが、タングステンプラグ15の周辺が他の配線パターンが密の状態である場合、離れた場所になるべく多く設ける。ダミーのタングステンプラグ15Dは、ここでは、補助パターン11S上に16個、マトリクス状に配列されている。補助パターン11Sは下層配線11から分岐した配線路11tの端部に設けられているが、これに限らず、下層配線11の伸長路上に設けてもよい。
【0018】
上記実施形態の構成によれば、ダミーのタングステンプラグ15Dは、半導体集積回路を構成する電気回路としては意味を持たないが、下層配線11と結合されている。これにより、CMP後などの洗浄時にタングステンプラグ15表面が純水に接触しても、ダミーのタングステンプラグ15Dによる多量の電子の供給源が確保される。これにより、孤立したタングステンプラグ15であっても、その表面の酸化物の付着が抑えられ、抵抗上昇も抑制される。以下、製造方法にて説明する。
【0019】
図2(a)〜(c)は、それぞれ本発明の第2実施形態に係る半導体装置の製造方法の要部を工程順に示す断面図であり、前記第1実施形態の構成を実現する工程の要部を順に示している。図1と同様の箇所には同一の符号を付して説明する。
図2(a)に示すように、下層配線11は、フォトリソグラフィ工程及びエッチング工程を経て、パターンの伸長途中に補助パターン11Sを伴い形成される。CVD法により層間の絶縁膜12が形成される。次に、フォトリソグラフィ技術及び異方性エッチング技術を用いて、絶縁膜12を貫通し底部に下層配線11及び補助パターン11Sの領域を露出させる複数のホール14及び14Dを形成する。ダミー用のホール14Dは、ホール14からどのくらい遠く離れているかにもよるが、ホール14と同じ大きさなら、なるべく多く(10個以上)設けるとよい。次に、各ホール14,14D内へのバリアメタル(図示せず)の被覆を介して各ホール14,14Dを同時に埋め込むW(タングステン)を堆積する(Wブランケット)。Wブランケットは、スパッタ法またはメタルCVD法を用いて達成することができる。
【0020】
次に、図2(b)に示すように、WブランケットはCMP技術を用いて研磨除去される。すなわち、Wを各ホール14,14D上面のレベルまで研磨除去し、配線用、ダミー用それぞれのタングステンプラグ15,15Dを形成し、平坦化する。このCMP工程途中やCMP工程後にはウェーハの純水洗浄があり、各ホール14,14D上面のWは、純水に接触する。WはHO+Oと反応し(WO)、電子が媒介することでOHがWOに作用してWO42−となり、Wプラグ表面から離脱される。Wプラグ15と下層配線11を介して電気的につながるWプラグ15Dが設けられているため、電子の供給を補うことができる。よって、Wプラグ表面は、WOを留める状態にはなり難く、酸化物の付着が抑制される。
【0021】
次に、図2(c)に示すように、Wプラグ15,15Dを覆うように上層配線部材を形成し、フォトリソグラフィ工程、エッチング工程を経て上層配線層13を形成する。上層配線層13は、例えばアルミニウムを主成分とするメタル配線であり、図示しないが少なくともTiN等を含む薄いバリアメタル上に主配線部材のAl、Al上にTiN等を含む薄い保護用メタルを有する。島状部材13Iは、上層配線13と同一工程で形成される同一の部材であるが、電気回路的には意味を持たない。島状部材13Iは、タングステンの拡散バリア等のキャップ機能が伴うと考えられるが、支障なければ無くてもよい。
【0022】
上記実施形態の方法によれば、Wプラグを形成するCMP工程後は純水洗浄を伴う。このとき、配線用のWプラグ15と同じように下層配線に接続されるダミーのWプラグ15Dが設けられる。よって、Wプラグ15表面が純水に接触しても、ダミーのWプラグ15Dによる多量の電子の供給源が確保される。これにより、Wプラグ15表面は電子の供給により酸化物のイオン化が促進され、酸化物の付着が抑えられる。この結果、孤立したWプラグ15であっても高抵抗になり難く、高信頼性の得られるWプラグを有する多層配線が実現される。
【0023】
図3は、図1の変形例を示す平面図である。同様の箇所に同一の符号を付してある。補助パターン11Sは、下層配線11の伸長路に沿うように設けてある。ダミーのWプラグ15Dは、下層配線11と接続される関係上、上層配線側の空き領域に応じて、Wプラグ15から離れたところでも、複数配備すれば効果が期待できる。
【0024】
以上説明したように本発明によれば、ダミーのタングステンプラグは補助パターン上に設けられ半導体集積回路を構成する電気回路としては意味を持たないが、下層配線と結合されている。これにより、洗浄時にタングステンプラグ表面が純水に接触しても、ダミーのタングステンプラグによる多量の電子の供給源が確保される。上層配線とつながるタングステンプラグ周辺が他の配線が多く、ダミーのタングステンプラグを近くに設けることができなくても、下層配線の伸長途中の離れたところに数多くのダミーのタングステンプラグを設ければよい。これにより、孤立したタングステンプラグ表面の酸化物の付着が抑えられ、抵抗上昇も抑制される。この結果、Wプラグ表面の異常な酸化を抑制し、Wプラグを有する集積回路配線として配線抵抗の安定した半導体装置及びその製造方法を提供することができる。
【0025】
なお、本発明は、上述した実施形態及び方法に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々の変更、応用を実施することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】第1実施形態に係る半導体装置の要部を示す断面図。
【図2】第2実施形態に係る半導体装置の製造方法の要部を示す各断面図。
【図3】図1の変形例を示す各平面図。
【符号の説明】
【0027】
11…下層配線、11S…補助パターン、12…層間の絶縁膜、13…上層配線層、13I…島状部材、14,14D…ホール、15…タングステン(W)プラグ、15D…ダミーのタングステン(W)プラグ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体集積回路の層間の絶縁膜を介して下層配線と上層配線の電気的接続をなすタングステンプラグと、
前記下層配線のパターンの伸長途中に設けられ、前記タングステンプラグが接続される前記下層配線の接続用端部の幅より大きい補助パターンと、
前記補助パターン上に複数まとめて設けられ、前記下層配線と結合されるが上層において電気的にはオープンになっているダミーのタングステンプラグと、
を具備する半導体装置。
【請求項2】
前記補助パターンは、前記下層配線から分岐した配線路の端部に形成されている請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記補助パターンは、前記下層配線の伸長路上に形成されている請求項1に記載の半導体装置。
請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記ダミーのタングステンプラグは、前記補助パターン上にマトリクス状に配列されている請求項1〜3いずれか一つに記載の半導体装置。
【請求項5】
前記ダミーのタングステンプラグ上には前記上層配線と同じ導電材料で島状部材が形成されている請求項1〜4いずれか一つに記載の半導体装置。
【請求項6】
前記下層配線は、前記半導体集積回路に関係するメタル配線、半導体素子を構成するポリシリコン層、シリサイド層のうちのいずれかである請求項1〜5いずれか一つに記載の半導体装置。
【請求項7】
半導体ウェーハにおける半導体集積回路形成に関し、接続用端部の幅より大きい補助パターンを伸長途中に付加した下層配線を形成する工程と、
前記下層配線上に層間の絶縁膜を形成する工程と、
前記層間の絶縁膜を貫通して底部に下層配線及び補助パターンの各領域を露出させる、配線用、ダミー用を含む複数のホールを形成する工程と、
前記各ホール内へのバリアメタルの被覆を介して前記各ホールを同時に埋め込むタングステンを堆積する工程と、
前記各ホール上面のレベルまで前記タングステンを研磨除去し、配線用、ダミー用それぞれのタングステンプラグを形成するCMP工程と、
前記タングステンプラグそれぞれを覆うように上層配線部材を形成する工程と、
前記上層配線部材を選択的にエッチングすることにより、前記配線用のタングステンプラグと接続する上層配線を形成するパターニング工程と、
を具備する半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記パターニング工程に関し、前記上層配線と同時に前記ダミー用のタングステンプラグと接続する島状部材を形成する請求項7に記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−129029(P2007−129029A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−319640(P2005−319640)
【出願日】平成17年11月2日(2005.11.2)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】