説明

半導体装置及びその製造方法

【課題】 半導体装置、特に、高集積化し微細化されたLSIデバイスにおいて、開口部(例えば、ビア孔又は配線溝)の形成の際に多孔質低誘電率膜の表面に曝露する空孔を確実に塞ぐ。
【解決手段】 基板上に形成された、開口部を有する多孔質低誘電率膜と、多孔質低誘電率膜における開口部を構成する部分の表面に形成された、各々の直径が1nm以上であって且つ2nm以下である複数の微粒子が集積されてなる微粒子体膜とを備え、多孔質低誘電率膜における開口部を構成する部分の表面に曝露する空孔には、微粒子が充填されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置及びその製造方法、特に、高集積化し微細化されたLSIデバイス及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
低い抵抗を有し且つ高いエレクトロマイグレーション(EM)耐性を有するCu配線は、高集積化し微細化されたLSIデバイスにおける配線用の材料として期待されている。
【0003】
しかしながら、Cu配線の微細加工は、非常に困難である。このため、微細加工が施されたCu配線を実現するための有効な手法の1つとして、ビア孔・配線溝加工が施された下地膜に、Cu膜の埋め込みを行うダマシン法が挙げられ、該Cu膜の埋め込みを行う手段として、電解めっき法が挙げられる。
【0004】
以下に、ダマシン法によって形成されたCu配線を備える半導体装置の製造方法について、図4(a) 〜(c) 並びに図5(a) 及び(b) を参照しながら説明する(例えば、非特許文献1参照)。図4(a) 〜(c) 並びに図5(a) 及び(b) は、従来例に係る半導体装置の製造方法を示す要部工程断面図である。
【0005】
まず、図4(a) に示すように、基板(図示せず)上に形成された層間絶縁膜300に、バリアメタル301aを介してCu膜301bよりなる下部配線301を形成した後、層間絶縁膜300上に、低誘電率膜302を形成する。続いて、低誘電率膜302に対してドライエッチングを選択的に行うことにより、低誘電率膜302に下部配線301の上面を露出させるビア孔303を形成すると共に、低誘電率膜302にビア孔303と連通する配線溝304を形成する。次に、図4(b) に示すように、ビア孔303の側壁及び底部、配線溝304の側壁及び底部、並びに低誘電率膜302の上面に、例えば、TaN、TiN又はWNよりなるバリアメタル305を形成する。次に、図4(c) に示すように、バリアメタル305上に、Cuよりなる電界めっき用シード層306を形成する。
【0006】
次に、図5(a) に示すように、電解めっき法を用いて、ビア孔303及び配線溝304の内部にCuを埋め込むことにより、Cuよりなるめっき層307を形成する。このとき、シード層306を構成するCuは、めっき層307中へ拡散されるため、シード層306とめっき層307との境界線は、実質的に確認できなくなるので、図示していない。次に、図5(b) に示すように、CMP法を用いて、低誘電率膜302の表面が露出するまで、バリアメタル305及びめっき層307における配線溝304からはみ出している部分を除去し、表面の平坦化を行う。
【0007】
このようにして、ビア孔303内に、バリアメタル305を介して、Cuが埋め込まれてなる配線プラグを形成すると共に、配線溝304内に、バリアメタル305を介して、Cuが埋め込まれてなる上部配線308を形成する。
【0008】
また、最近のデバイス開発では、低誘電率膜の更なる低誘電率化を図ることを目的に、内部に空孔を有する低誘電率膜を利用することが検討されている。
【0009】
以下に、内部に空孔を有する低誘電率膜の形成方法について説明する。
【0010】
下部配線を有する層間絶縁膜上に、例えば、目標とする空孔のサイズ(例えば、孔径が約1[nm])とほぼ等しいサイズの有機物粒が含有されている溶液を塗布する。続いて、低温(具体的には、100[℃]〜200[℃]の温度)の下、塗布液に含有されている有機物粒を除去することにより、所望のサイズの空孔を有する、低誘電率膜形成用塗布層を形成することができる。このように、塗布液に含有される有機物粒として、所望のサイズを有する有機物粒を選択することにより、有機物粒が除去されてなる空孔を有する塗布層が形成されており、空孔のサイズは有機物粒のサイズに由来しており、有機物粒はポロジェン又はテンプレートと称される。
【0011】
また、下部配線を有する層間絶縁膜上に、例えば、内部に微細なサイズ(例えば、孔径が約1[nm])の空孔を有する物質(例えば、NCS等)が含有されている溶液を塗布することにより、所望のサイズの空孔を有する、低誘電率膜形成用塗布層を形成することができる(例えば、非特許文献2参照)。このように、塗布液に含有される物質として、内部に所望のサイズの空孔を有する物質を選択することにより、該空孔を有する塗布層が形成されている。
【0012】
上記いずれの場合においても、所望のサイズの空孔を有する塗布層の形成後、温度が400℃の下、熱処理によって該塗布層を焼しめることにより、内部に所望のサイズ(例えば、孔径が約1[nm]〜約2[nm])の空孔を有する低誘電率膜を形成することができる。
【非特許文献1】IEEE,IITC2003、P97〜99、Fig.7
【非特許文献2】IEEE,IITC2004、P175〜177、Fig.1
【非特許文献3】IEEE,IITC2004、P39〜41
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、従来例に係る半導体装置の製造方法では、以下に示す問題があった。従来例に係る半導体装置の製造方法における問題について、図6(a) 及び(b) を参照しながら説明する。図6(a) 及び(b) は、従来例に係る半導体装置の製造方法を示す要部工程断面図である。
【0014】
内部に空孔を有する低誘電率膜(以下、多孔質低誘電率膜と記す)302を用いた場合、従来例に係る半導体装置の製造方法では、ビア孔303及び配線溝304の形成工程(前述した図4(a) 参照)の際に、多孔質低誘電率膜302におけるドライエッチングが施された領域、すなわち、ビア孔303の側壁並びに配線溝304の底部及び側壁には、孔径が約1[nm]〜約2[nm]の空孔(図示せず)が曝露する。
【0015】
このため、バリアメタル305の形成工程(前述した図4(b) 参照)の際に、表面に空孔が曝露されているビア孔303の側壁並びに配線溝304の底部及び側壁に、バリアメタル305が直接形成されるため、図6(a) に示すように、該空孔を通じて、バリアメタル305を構成する材料(例えば、TaN、TiN又はWN等)が、多孔質低誘電率膜302中へ拡散されることにより、拡散領域400が形成されて、バリアメタル305のバリア性が低下するという問題があった。
【0016】
そのため、バリアメタル305はバリア膜としての機能を充分に果たすことができないため、めっき層307の形成工程(前述した図5(a) 参照)の際に、図6(b) に示すように、バリアメタル305を通過し、更には、空孔を通じて、めっき層307を構成する材料Cuが、多孔質低誘電率膜302中へ拡散されるので、Cu拡散領域401が形成される。更に、半導体装置が動作する際にも、めっき層307を構成する材料Cuが、多孔質低誘電率膜302中へ拡散される。
【0017】
このように、従来例に係る半導体装置の製造方法では、バリアメタル305のバリア性が低下するので、半導体装置の製造時及び半導体装置の動作時に、めっき層307を構成する材料Cuが、多孔質低誘電率膜302中へ拡散される。このため、Cu拡散領域401が形成されることにより、図6(b) に示すように、経路Rを通じて、上部配線308と上部配線308との間にリーク電流が発生するため、半導体装置の動作不良を引き起こすので、半導体装置の歩留まりの著しい低下を招くという問題もあった。
【0018】
これらの問題を解決する手法として、ビア孔及び配線溝の形成工程の際に、多孔質低誘電率膜の表面に、ドライエッチングの際に発生するプラズマ副生成物を堆積させることにより、多孔質低誘電率膜の表面に曝露されている空孔を塞ぐ方法が提案されている(例えば、非特許文献3参照)。
【0019】
しかしながら、上記方法では、多孔質低誘電率膜(特に、多孔質低誘電率膜における空孔が曝露されている部分)の表面に、プラズマ副生成物を再現性良く堆積させることが困難であるので、多孔質低誘電率膜の表面に曝露されている空孔を確実に塞ぐことが困難であった。
【0020】
前記に鑑み、本発明の目的は、ビア孔及び配線溝の形成の際に多孔質低誘電率膜の表面に曝露する空孔を確実に塞ぐことにより、バリアメタルのバリア性を確保すると共に、高信頼性を有し且つ微細構造を有する配線を実現することができる、半導体装置及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
前記の課題を解決するために、本発明に係る半導体装置は、基板上に形成された、開口部を有する多孔質低誘電率膜と、多孔質低誘電率膜における開口部を構成する部分の表面に形成された、各々の直径が1nm以上であって且つ2nm以下である複数の微粒子が集積されてなる微粒子体膜とを備え、多孔質低誘電率膜における開口部を構成する部分の表面に曝露する空孔には、微粒子が充填されていることを特徴とする。
【0022】
本発明に係る半導体装置によると、多孔質低誘電率膜における開口部を構成する部分の表面に曝露されている空孔のサイズと同等のサイズ(例えば、直径が1[nm]〜2[nm])を有する微粒子を選択することにより、該部分の表面に曝露されている空孔を微粒子によって充填することができるので、該空孔を通じて、開口部の内部に埋め込まれている材料(例えば、導電性材料)が、多孔質低誘電率膜中へ拡散されることを防止することが可能になる。
【0023】
本発明に係る半導体装置において、開口部の内部には、多孔質低誘電率膜との間に微粒子体膜が介在するように、ビア又は配線となる導電性部材が埋め込まれていることが好ましい。
【0024】
このようにすると、前述したように、多孔質低誘電率膜における開口部を構成する部分の表面に曝露されている空孔は、微粒子体膜を構成する微粒子によって充填されているので、該空孔を通じて、開口部の内部に埋め込まれている導電性材料(例えば、ビア部材又は配線部材)が、多孔質低誘電率膜中へ拡散されることを防止することができる。
【0025】
このため、本発明に係る半導体装置では、配線部材が埋め込まれてなる配線と配線との間に、リーク電流が発生することはないため、高信頼性を有し且つ微細構造を有する配線を実現することができるので、半導体装置の信頼性の向上を図ると共に半導体装置の歩留まりの向上を図ることができる。
【0026】
本発明に係る半導体装置において、少なくとも導電性材料と微粒子体膜との間には、バリア膜が介在していることが好ましい。
【0027】
このようにすると、前述したように、多孔質低誘電率膜における開口部を構成する部分の表面に曝露されている空孔は、微粒子体膜を構成する微粒子によって充填されているので、表面に空孔が曝露されている多孔質低誘電率膜上に、バリア膜が直接形成されることはない。
【0028】
このため、該空孔を通じて、バリア膜を構成する材料が、多孔質低誘電率膜中へ拡散されることはないため、バリア膜のバリア性を充分に確保することができるので、開口部の内部に埋め込まれている導電性材料(例えば、ビア部材又は配線部材)が、多孔質低誘電率膜中へ拡散されることを確実に防止することができる。
【0029】
したがって、本発明に係る半導体装置では、配線部材が埋め込まれてなる配線と配線との間に、リーク電流が発生することはないため、高信頼性を有し且つ微細構造を有する配線を確実に実現することができるので、半導体装置の信頼性の向上を図ると共に半導体装置の歩留まりの向上をより一層図ることができる。
【0030】
本発明に係る半導体装置において、導電性材料はCuであることが好ましい。
【0031】
また、本発明に係る半導体装置において、微粒子は、フラーレン又は二酸化ケイ素よりなることが好ましい。
【0032】
本発明に係る半導体装置の製造方法は、基板上に多孔質低誘電率膜を形成する工程(a)と、多孔質低誘電率膜に開口部を形成する工程(b)と、多孔質低誘電率膜における開口部を構成する部分の表面に、各々の直径が1nm以上であって且つ2nm以下である複数の微粒子を含む溶液を塗布した後、溶液における溶媒を除去することにより、複数の微粒子が集積されてなる微粒子体膜を形成する工程(c)とを備えることを特徴とする。
【0033】
本発明に係る半導体装置の製造方法によると、微粒子体膜の形成の際に、多孔質低誘電率膜における開口部を構成する部分の表面に、該部分の表面に曝露されている空孔のサイズと同等のサイズ(例えば、直径が1[nm]〜2[nm])を有する微粒子を塗布することができるので、微粒子体膜を構成する微粒子によって、開口部の形成の際に該部分の表面に曝露する空孔を充填することができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明の半導体装置及びその製造方法によると、微粒子体膜を構成する微粒子によって、多孔質低誘電率膜における開口部を構成する部分の表面に曝露されている空孔を充填することができるので、バリア膜のバリア性を確保すると共に、高信頼性を有し且つ微細構造を有する配線を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下に、本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0036】
以下に、本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法について、図1(a) 及び(b) 並びに図2(a) 及び(b) を参照しながら説明する。図1(a) 及び(b) 並びに図2(a) 及び(b) は、本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す要部工程断面図である。
【0037】
まず、図1(a) に示すように、基板(図示せず)上に形成された層間絶縁膜100に、バリアメタル101aを介してCu膜101bよりなる下部配線101を形成した後、層間絶縁膜100上に、多孔質低誘電率膜102を形成する。このとき、多孔質低誘電率膜102を構成する材料として、例えば、メチル含有ポリシロキサン(MSQ:Methylsilsesquioxane)系の膜を用いる。
【0038】
このように、本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法では、多孔質低誘電率膜102を構成する材料として、低誘電率を有するMSQを用いており、更には、MSQの更なる低誘電率化を図ることを目的に、内部に空孔を有する多孔質MSQを用いる。
【0039】
次に、多孔質低誘電率膜102上に所望のパターンを有するフォトレジスト103を形成した後、フォトレジスト103をマスクとして、多孔質低誘電率膜102に対してドライエッチングを選択的に行う。これにより、多孔質低誘電率膜102に下部配線101の上面を露出させるビア孔104を形成すると共に、多孔質低誘電率膜102にビア孔104と連通する配線溝105を形成する。このとき、多孔質低誘電率膜102に対して施されるドライエッチングに用いられるドライエッチングガスとして、例えば、一般的な反応性ガスであるCHF3 、CF2 2 又はC5 8 等よりなるガスを用いる。
【0040】
ここで、多孔質低誘電率膜102へのドライエッチングが進行するに従って、図1(a) に示すように、ビア孔104の側壁並びに配線溝105の底部及び側壁には、多孔質低誘電率膜102を構成するMSQに含まれるSi-O-C骨格とドライエッチングガスとの反応生成物(C元素及びF元素を含む)よりなる、堆積膜106が形成される。
【0041】
次に、図1(b) に示すように、多孔質低誘電率膜102へのドライエッチングの後、アッシングにより、フォトレジスト103を除去する。続いて、アッシング後のウエハの洗浄を行う。このとき、アッシング工程又は洗浄工程の際に、堆積膜106も除去される。これにより、多孔質低誘電率膜102における堆積膜106が除去された領域、すなわち、ビア孔104の側壁並びに配線溝105の底部及び側壁には、孔径が約1[nm]〜約2[nm]の空孔(図示せず)が曝露する。
【0042】
次に、図2(a) に示すように、ビア孔104の側壁並びに配線溝105の底部及び側壁に、例えば、イソプロピルアルコール等の有機溶剤中に、フラーレン(C60)又はシリカ(SiO2 )よりなる直径が約1[nm]〜約2[nm]の微粒子が混合された溶液を塗布する。該溶液を塗布する手法として、例えば、レジストの塗布工程等の際に用いられるスピンコータ装置を用い、スピンコート法により、ウエハを水平に保持した状態で、ビア孔104の側壁並びに配線溝105の底部及び側壁に、該溶液を滴下しウエハを回転させることにより、該溶液を均一に塗布する方法が挙げられる。
【0043】
次に、微粒子が混合された溶液に対して、例えば、温度が50℃〜200℃の下、30秒間の加熱乾燥を行うことにより、溶媒(例えば、イソプロピルアルコール等)を除去する。これにより、ビア孔104の側壁並びに配線溝105の底部及び側壁に、多孔質低誘電率膜102の表面に曝露されている空孔を埋め込むように、膜厚が約1[nm]〜約5[nm]であって、各々の直径が約1[nm]〜約2[nm]である複数の微粒子が集積されてなる微粒子体膜107を形成することができる。
【0044】
ここで、微粒子体膜107について、図3を参照しながら詳細に説明する。
【0045】
図3は、微粒子体膜107が形成された多孔質低誘電率膜102の表面近傍の拡大図であって、具体的には、図2(a) に示している部分Aの拡大図である。
【0046】
図3に示すように、多孔質低誘電率膜102の表面に形成された微粒子体膜107を構成する微粒子200のなかには、空孔201内部に入り込む微粒子200aがある。このように、空孔201を通じて、又は空孔201が互いに連結している連結部202を介して、微粒子200が多孔質低誘電率膜102内に拡散されることはあっても、空孔201の孔径Wは約1[nm]以下であり、微粒子200の直径は約1[nm]〜約2[nm]であるため、空孔201内に入り込んでいる微粒子200aは、多孔質低誘電率膜102の表面からの深さが約1[nm]〜約2[nm]の位置に存在しており、多孔質低誘電率膜102の表面領域に留まっている。
【0047】
このように、本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法では、微粒子体膜107の形成の際に、多孔質低誘電率膜102におけるビア孔104及び配線溝105を構成する部分の表面に、該部分の表面に曝露されている空孔201のサイズと同等のサイズを有する微粒子200を塗布することができるので、図3に示すように、微粒子体膜107を構成する微粒子200によって、ビア孔104及び配線溝105の形成の際に該部分の表面に曝露する空孔201を充填することができる。
【0048】
更には、図3に示すように、空孔201内に入り込んでいる微粒子200aは、多孔質低誘電率膜102の表面領域に留まっており、多孔質低誘電率膜102の内部領域にまで侵入することがないため、多孔質低誘電率膜102内に存在する空孔201が微粒子200によって完全に充填されることはないので、多孔質低誘電率膜102の低誘電率化を充分に確保することができる。
【0049】
次に、図2(b) に示すように、ビア孔104の底部及び側壁、配線溝105の底部及び側壁、並びに多孔質低誘電率膜102の上面に、例えば、TaN、TiN又はWN等よりなるバリアメタル108を形成する。続いて、バリアメタル108上に、電解めっき法に用いられるシード層としてのCu膜を形成した後、電解めっき法により、ビア孔104及び配線溝105の内部にCuを埋め込むことにより、Cuよりなる埋め込み層109を形成する。続いて、CMP法により、多孔質低誘電率膜102の表面が露出するまで、バリアメタル108及び埋め込み層109における配線溝105からはみ出している部分を除去し、表面の平坦化を行う。
【0050】
このようにして、ビア孔104内に、微粒子体膜107及びバリアメタル108を介して、Cuが埋め込まれてなる配線プラグを形成すると共に、配線溝105内に、微粒子体膜107及びバリアメタル108を介して、Cuが埋め込まれてなる上部配線110を形成する。
【0051】
以上のように、本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法によると、図2(a) に示すように、ビア孔104の側壁並びに配線溝105の底部及び側壁に、複数の微粒子200が集積されてなる微粒子体膜107を形成することにより、図3に示すように、微粒子体膜107を構成する微粒子200によって、多孔質低誘電率膜102におけるビア孔104及び配線溝105を構成する部分の表面に曝露されている空孔201を充填することができる。
【0052】
このため、表面に空孔201が曝露されている多孔質低誘電率膜102上に、バリアメタル108が直接形成されることはなく、図2(b) に示すように、微粒子体膜107を介して、バリアメタル108を形成することができるので、空孔201を通じて、バリアメタル108を構成する材料が、多孔質低誘電率膜102中へ拡散されることを防止することができるので、バリアメタル108のバリア性を充分に確保することができる。
【0053】
更には、図2(b) に示すように、ビア孔104及び配線溝105の内部に、多孔質低誘電率膜102との間に微粒子体膜107及びバリアメタル108が介在するように、埋め込み層109を形成することができるので、埋め込み層109を構成する材料Cuが、多孔質低誘電率膜102中へ拡散されることを確実に防止することができる。
【0054】
このように、本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法によって製造された半導体装置では、ビア孔104の側壁並びに配線溝105の底部及び側壁、すなわち、多孔質低誘電率膜102におけるビア孔104及び配線溝105を構成する部分の表面には、該部分の表面に曝露されている空孔を充填するようにして、微粒子体膜107が形成されている。
【0055】
このため、半導体装置の製造時及び半導体装置の動作時に、埋め込み層109を構成する材料Cuが、バリアメタル108を通過し、更には、空孔を通じて、多孔質低誘電率膜102中へ拡散されることを防止することができるので、Cu拡散領域(前述した図6(b):401参照)が形成されることはない。
【0056】
したがって、本発明に係る半導体装置では、上部配線110と上部配線110との間に、リーク電流が発生することはないため、高信頼性を有し且つ微細構造を有するCu−Low K配線を実現することができるので、半導体装置の信頼性の向上を図ると共に半導体装置の歩留まりの向上を図ることができる。
【0057】
尚、本発明の一実施形態に係る半導体装置及びその製造方法では、Cuよりなる上部配線110を具体例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、例えば、W、Al又はAu等よりなる配線を用いた場合においても、本発明の一実施形態に係る半導体装置及びその製造方法と同様の効果を得ることができる。
【0058】
また、本発明の一実施形態に係る半導体装置及びその製造方法では、微粒子体膜107の形成の際に、図2(a) に示すように、溶媒(例えば、イソプロピルアルコール等)中に、微粒子が混合された溶液を用いたが、本発明はこれに限定されることはなく、例えば、溶媒中に、微粒子及び炭化水素系アルコール界面活性剤が混合された溶液を用いても良い。
【0059】
このようにすると、界面活性剤は分散剤として機能するので、溶媒中に混合された微粒子の分散化を図ることができるので、ビア孔104の側壁並びに配線溝105の底部及び側壁に、複数の微粒子が均一に集積されてなる微粒子体膜107を形成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、高信頼性を有し且つ微細構造を有する配線を実現することができるので、特に、高集積化し微細化されたLSI配線を備える半導体装置及びその製造方法に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】(a) 及び(b) は、本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す要部工程断面図である。
【図2】(a) 及び(b) は、本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す要部工程断面図である。
【図3】微粒子体膜が形成された多孔質低誘電率膜の表面近傍の拡大図である。
【図4】(a) 〜(c) は、従来例に係る半導体装置の製造方法を示す要部工程断面図である。
【図5】(a) 及び(b) は、従来例に係る半導体装置の製造方法を示す要部工程断面図である。
【図6】(a) 及び(b) は、従来例に係る半導体装置の製造方法を示す要部工程断面図である。
【符号の説明】
【0062】
100 層間絶縁膜
101 下部配線
101a バリアメタル
101b Cu膜
102 多孔質低誘電率膜
103 フォトレジスト
104 配線溝
105 ビア孔
106 堆積膜(C元素及びF元素を含む薄膜)
107 微粒子体膜
108 バリアメタル
109 埋め込み層
110 上部配線
200 微粒子
201 空孔
202 連結部
W 孔径
300 層間絶縁膜
301 下部配線
301a バリアメタル
301b Cu膜
302 低誘電率膜
303 ビア孔
304 配線溝
305 バリアメタル
306 シード層
307 めっき層
308 上部配線
400 拡散領域
401 Cu拡散領域
R 経路










【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に形成された、開口部を有する多孔質低誘電率膜と、
前記多孔質低誘電率膜における前記開口部を構成する部分の表面に形成された、各々の直径が1nm以上であって且つ2nm以下である複数の微粒子が集積されてなる微粒子体膜とを備え、
前記多孔質低誘電率膜における前記開口部を構成する部分の表面に曝露する空孔には、前記微粒子が充填されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記開口部の内部には、前記多孔質低誘電率膜との間に前記微粒子体膜が介在するように、ビア又は配線となる導電性材料が埋め込まれていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
少なくとも前記導電性材料と前記微粒子体膜との間には、バリア膜が介在していることを特徴とする請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記導電性材料はCuであることを特徴とする請求項2に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記微粒子は、フラーレン又は二酸化ケイ素よりなることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項6】
基板上に多孔質低誘電率膜を形成する工程(a)と、
前記多孔質低誘電率膜に開口部を形成する工程(b)と、
前記多孔質低誘電率膜における前記開口部を構成する部分の表面に、各々の直径が1nm以上であって且つ2nm以下である複数の微粒子を含む溶液を塗布した後、前記溶液における溶媒を除去することにより、前記複数の微粒子が集積されてなる微粒子体膜を形成する工程(c)とを備えることを特徴とする半導体装置の製造方法。



【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−48785(P2007−48785A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−228769(P2005−228769)
【出願日】平成17年8月5日(2005.8.5)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】