説明

半導体装置及びその製造方法

【課題】ウエハから複数の半導体装置を分離形成する際に、微小なクラック、微小なチッピング及び微小な応力の発生まで回避できるようにする。
【解決手段】ウエハ100におけるスクライブライン領域101に第1の溝102を形成した後、第1の溝102に、ウエハ構成材料とは異なる材料を充填して充填部103を形成する。ウエハ100上に形成した配線層104を覆うように保持部材106を貼付した後、ウエハ裏面側を研磨し、充填部103の端部を露出させる。その後、充填部103を除去した後、配線層104を貫通すると共に第1の溝102と接続する第2の溝107を形成する。保持部材106を剥離して個片の半導体装置110を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板側面がほぼ平坦な切断面である半導体装置及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子機器の小型化、薄型化が進むなかで、電子機器に使用される半導体装置に対してもより一層の薄型化が要求されていると共に、複数の半導体装置を積層して一つのパッケージに収容した積層型半導体装置の開発が進められている。具体的には、従来の半導体装置の厚さは200〜250μm程度であったが、最近では50μm程度の厚さの半導体装置が作製されるようになっており、さらなる薄型化も進められている。
【0003】
一般に、半導体装置は、シリコンウエハの表面(回路形成面)上に複数個まとめて形成される。回路形成面に複数個の半導体装置が形成されたウエハは、まずバックグラインディング工程にかけられる。バックグラインディング工程では、ウエハに形成された回路形成面の反対面(裏面)を研磨することにより、ウエハの厚さを減少させる。ウエハの厚さが所定の厚さまで薄くなった後、ウエハはメカニカルダイシング工程にかけられ、所定形状の半導体装置に分離される。メカニカルダイシング工程では、ウエハはスクライブラインに沿ってダイシングソーにより切削されて、個々の半導体装置に分離される。
【0004】
しかしながら、メカニカルダイシング工程では、ウエハはその厚さ方向にダイシングソーによって削られるため、その切断面には約0.1μmの高低差を持つ凹凸が発生する。この凹凸が起点となって、半導体装置の基板側部に微小なクラック又はチッピングが発生したり、半導体装置に対して過大な応力が発生したりする。
【0005】
この問題を解決するために、従来、複数個の半導体装置が形成されたウエハの表面側からウエハの厚さの途中までエッチングを行うことによってハーフカットを形成する工程と、その後、ウエハの表面側にテープ材を貼付した後、ウエハの裏面側を機械的に研磨する工程と、 その後、さらにエッチング又は化学的機械的研磨によりウエハを薄くして個々の半導体装置に分離する分離工程とを有する技術が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0006】
以下、従来の半導体装置の製造方法について、図11(a)〜(f)を参照しながら説明する。
【0007】
まず、図11(a)に示すように、その表面2aに複数の半導体装置12(図11(f)参照)が形成されたウエハ2を用意する。次に、図11(b)に示すように、ウエハ2の表面2a上に、各半導体装置を個々に分離する位置(以下、この分離位置をスクライブラインと称する)が開口されたレジスト層8を形成する。次に、図11(c)に示すように、ウエハ2上に露出するスクライブラインに対してエッチングを実施することにより、ハーフカット3を形成する。続いて、アッシングによりレジスト層8を除去する。
【0008】
次に、図11(d)に示すように、ウエハ2の上下を逆転し、ウエハ2の表面2a側の全体にバックグラインドテープ4を貼付すると共に、ウエハ2の裏面2b側の全体を露出させる。次に、図11(e)に示すように、ウエハ2の裏面2bに対して機械的研磨処理工程を実施する。ウエハ2の初期厚さは通常750μm程度であるが、ウエハ2の裏面2b側を研磨する(以下、この機械的研磨処理をバックグラインドと称する)ことにより、ウエハ2つまり各半導体装置は例えば20〜150μm程度の厚さまで薄型化される。このとき、バックグラインドテープ4は回路形成面を保護する。このバックグラインドでは、ウエハ2の厚さを半導体装置の最終の厚さ(所望の厚さ)までは研磨せず、所望の厚さよりも例えば10〜50μmだけ大きい厚さ(h)でバックグラインドを止める。これにより、各半導体装置はウエハ2の残部5により繋がった状態となる。続いて、ウエハ2つまり各半導体装置を所望の厚さまでエッチングする。これにより、残部5が除去されて、図11(f)に示すように、ウエハ2は個々の半導体装置12に分離される。
【0009】
以上のような処理工程を行うことにより、メカニカルダイシングに比べて低ダメージで半導体装置を個々に分離することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2003−179005号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、ウエハの表面側からスクライブラインにハーフカットを形成する従来の手法では、スクライブライン内の重ね合わせパターン、寸法管理パターン又は電気特性測定パターン等(以下、スクライブライン内に形成された前述の各パターンをスクライブアクセサリと称する)を完全には除去できない。このため、現実には各ハーフカットの深さがばらついてしまい、その結果、従来例の図11(f)に示す裏面エッチング後においてもウエハを滑らかに切断できないので、個々の半導体装置の基板側部に微小クラック又は微小チッピング等が発生する。
【0012】
さらに、ウエハの表面側からスクライブラインにハーフカットを形成する従来の手法では、ハーフカット内を中空にした状態で裏面研磨及び裏面エッチングを行うため、ハーフカット部が露出する直前において、ウエハに局所的ストレスがかかってしまうので、クラックが発生する。
【0013】
前記に鑑み、本発明は、メカニカルダイシングに起因するクラック、チッピング及び過大な応力を回避できるだけではなく、ウエハの表面側からスクライブラインにハーフカットを形成する従来技術でも生じてしまうような微小なクラック、微小なチッピング及び微小な応力をも回避できる半導体装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記の目的を達成するために、本発明に係る第1の半導体装置の製造方法は、少なくとも1つの半導体素子を有する第1の半導体装置を複数搭載したウエハを用意する工程(a)と、前記ウエハにおける隣接する前記第1の半導体装置間を分離するスクライブライン領域に第1の溝を形成する工程(b)と、前記第1の溝に、前記ウエハの構成材料とは異なる材料を充填して充填部を形成する工程(c)と、前記充填部上を含む前記ウエハ上に配線層を形成する工程(d)と、前記配線層を覆うように前記ウエハに保持部材を貼付する工程(e)と、前記ウエハにおける前記保持部材が貼付されていない裏面側を研磨し、前記充填部の端部を露出させる工程(f)と、前記工程(f)の後、前記ウエハの前記裏面側から前記充填部を除去し、前記第1の溝内に前記配線層の一部を露出させる工程(g)と、前記工程(g)の後、前記配線層を貫通すると共に前記第1の溝と接続する第2の溝を形成する工程(h)と、前記工程(h)の後、前記保持部材を剥離して前記複数の第1の半導体装置のそれぞれを個片に分離する工程(i)とを備えている。
【0015】
本発明に係る第1の半導体装置の製造方法において、前記工程(b)は、前記ウエハにおける前記第1の半導体装置が形成された領域に、少なくとも1つの貫通ビア形成用ホールを形成する工程を含み、前記工程(c)は、前記貫通ビア形成用ホール内に前記材料を充填して貫通ビアを形成する工程を含み、前記工程(f)は、前記貫通ビアの端部を露出させる工程を含んでいてもよい。この場合、前記工程(f)と前記工程(g)との間に、前記工程(f)で露出させた前記貫通ビアの端部に第2の半導体装置を接続することにより、前記貫通ビアを介して前記第1の半導体装置と前記第2の半導体装置とを電気的に接続する工程(j)と、前記充填部の端部を露出させたまま、前記貫通ビアと前記第2の半導体装置との接続部を含む前記第2の半導体装置の周囲を保護膜によって被覆する工程(k)とをさらに備えていてもよい。また、前記工程(h)と前記工程(i)との間に、前記保護膜を除去する工程(l)をさらに備えていてもよい。
【0016】
本発明に係る第2の半導体装置の製造方法は、少なくとも1つの半導体素子を有する第1の半導体装置を複数搭載したウエハを用意する工程(a)と、前記ウエハ上に配線層を形成する工程(b)と、前記配線層を覆うように前記ウエハに保持部材を貼付する工程(c)と、前記ウエハにおける前記保持部材が貼付されていない裏面側を研磨し、前記ウエハを薄くする工程(d)と、前記工程(d)の後、前記ウエハにおける隣接する前記第1の半導体装置間を分離するスクライブライン領域に、前記ウエハの前記裏面側から前記配線層に達する第1の溝を形成すると共に、前記ウエハにおける前記第1の半導体装置が形成された領域に、前記ウエハの前記裏面側から前記配線層に達する少なくとも1つの貫通ビア形成用ホールを形成する工程(e)と、前記第1の溝及び貫通ビア形成用ホールにそれぞれ、前記ウエハの構成材料とは異なる材料を充填して充填部及び貫通ビアを形成する工程(f)と、前記ウエハの前記裏面側から前記充填部を除去し、前記第1の溝内に前記配線層の一部を露出させる工程(g)と、前記工程(g)の後、前記配線層を貫通すると共に前記第1の溝と接続する第2の溝を形成する工程(h)と、前記工程(h)の後、前記保持部材を剥離して前記複数の第1の半導体装置のそれぞれを個片に分離する工程(i)とを備えている。
【0017】
本発明に係る第2の半導体装置の製造方法において、前記工程(f)と前記工程(g)との間に、前記ウエハの前記裏面側を研磨し、前記充填部及び前記貫通ビアのそれぞれの端部をさらに露出させる工程(j)と、前記工程(j)で露出させた前記貫通ビアの端部に第2の半導体装置を接続することにより、前記貫通ビアを介して前記第1の半導体装置と前記第2の半導体装置とを電気的に接続する工程(k)と、前記充填部の端部を露出させたまま、前記貫通ビアと前記第2の半導体装置との接続部を含む前記第2の半導体装置の周囲を保護膜によって被覆する工程(l)とをさらに備えていてもよい。この場合、前記工程(h)と前記工程(i)との間に、前記保護膜を除去する工程(m)をさらに備えていてもよい。
【0018】
本発明に係る第1又は第2の半導体装置の製造方法において、前記第1の溝は、前記スクライブライン領域における幅方向の両端部にそれぞれ、前記スクライブライン領域の長さ方向に延伸するように形成されてもよい。
【0019】
本発明に係る第1又は第2の半導体装置の製造方法において、前記第1の溝の側壁面における凹凸の高低差は0.05μm以下であってもよい。
【0020】
本発明に係る第1又は第2の半導体装置の製造方法において、前記材料は、Cuを含む導電性材料であってもよい。
【0021】
本発明に係る第1又は第2の半導体装置の製造方法において、前記充填部は、前記第1の溝の壁面上に酸化シリコン膜及びバリア膜を順次形成した後に前記材料を前記第1の溝に充填することにより形成されてもよい。
【0022】
本発明に係る半導体装置は、少なくとも1つの半導体素子が形成された基板と、前記基板上に形成された配線層とを備え、前記基板の側面における凹凸の高低差は0.05μm以下である。
【0023】
本発明に係る半導体装置において、前記基板を貫通する貫通ビアをさらに備えていてもよい。この場合、前記基板における前記配線層が形成されていない裏面側に前記貫通ビアの端部が露出しており、前記貫通ビアの前記端部に他の半導体装置が接続されていてもよい。
【発明の効果】
【0024】
本発明によると、メカニカルダイシングに起因するクラック、チッピング及び過大な応力が半導体装置に生じることを回避できるだけではなく、さらに微小なクラック、微小なチッピング及び微小な応力が半導体装置に生じることをも回避できる。従って、高信頼性を持つ半導体装置を高歩留まりで提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1(a)〜(d)は、第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法の各工程を示す断面図である。
【図2】図2(a)〜(d)は、第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法の各工程を示す断面図である。
【図3】図3(a)〜(d)は、第1の実施形態の第1変形例に係る半導体装置の製造方法の各工程を示す断面図である。
【図4】図4(a)〜(d)は、第1の実施形態の第1変形例に係る半導体装置の製造方法の各工程を示す断面図である。
【図5】図5(a)〜(d)は、第1の実施形態の第2変形例に係る半導体装置の製造方法の各工程を示す断面図である。
【図6】図6(a)〜(d)は、第1の実施形態の第2変形例に係る半導体装置の製造方法の各工程を示す断面図である。
【図7】図7(a)〜(c)は、第1の実施形態の第2変形例に係る半導体装置の製造方法の各工程を示す断面図である。
【図8】図8(a)〜(d)は、第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法の各工程を示す断面図である。
【図9】図9(a)〜(c)は、第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法の各工程を示す断面図である。
【図10】図10(a)〜(c)は、第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法の各工程を示す断面図である。
【図11】図11(a)〜(f)は、従来の半導体装置の製造方法の各工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置及びその製造方法について、図面を参照しながら説明する。
【0027】
図1(a)〜(d)及び図2(a)〜(d)は、第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法の各工程を示す断面図である。
【0028】
まず、図1(a)に示すように、表面に複数の半導体素子(図示省略)が集積して形成された半導体装置を複数搭載した、例えばシリコンよりなるウエハ100を用意する。続いて、ウエハ100の表面100a側における各スクライブライン領域101の幅方向の両端部に、ドライエッチング手法を用いて、例えば幅5μm、深さ50μmの第1の溝102を形成する。第1の溝102は、スクライブライン領域101の長さ方向に延伸している。ここで、第1の溝102の側壁面における凹凸の高低差は0.05μm以下である。
【0029】
次に、図1(b)に示すように、第1の溝102に例えばCuを埋め込むことにより、充填部103を形成する。尚、第1の溝102の幅はスクライブライン101の幅である例えば60μmから80μmまでの範囲で任意に設定することが可能であるが、第1の溝102の幅を広げると、Cuの埋め込み時間が長くなるため、コストの観点からは第1の溝102の幅を小さくしておくことが適切である。
【0030】
次に、図1(c)に示すように、充填部103上を含むウエハ100の表面100a上に、多層構造の配線105を有する絶縁膜(以下、多層配線層と称する)104を形成する。ここで、充填部103上に位置する部分の多層配線層104中には、充填部103と接続するように配線105が壁状に積層されている。このような構造は、下側の配線層と上側の配線層とを接続するビアホールの形成と同時に充填部103上に位置する部分に溝を形成し、当該溝及びビアホールに配線材料を埋め込む工程を、各配線層において繰り返し行うことによって形成することができる。尚、多層配線層104における充填部103上に位置する部分が絶縁膜であってもよい。
【0031】
次に、図1(d)に示すように、多層配線層104を覆うようにウエハ100の表面100a側の全体に亘って、例えば厚さ750μm程度の単結晶シリコンからなるキャリア(保持部材)106を貼付する。
【0032】
次に、図2(a)に示すように、ウエハ100の裏面100b側を充填部103が露出するまで研磨する。具体的には、初期厚さ約750μmのウエハ100を厚さ約50μmになるまで研磨し、充填部103の先端部を研磨後のウエハ100の裏面100bから約0.05μm突き出させる。
【0033】
次に、図2(b)に示すように、ウエハ100の裏面100b側から充填部103をウェットエッチングにより除去する。これにより、第1の溝102内に多層配線層104の一部が露出する。
【0034】
次に、図2(c)に示すように、ウエハ100の裏面100b側から、第1の溝102内に露出した多層配線層104に対してウェットエッチングを行うことにより、多層配線層104を貫通すると共に第1の溝102と接続する第2の溝107を形成する。これによって、多層配線層104を含む各半導体装置はキャリア106を介してつながっているものの、実質的には個々に分離された状態となる。
【0035】
最後に、図2(d)に示すように、キャリア106を剥離除去することにより、ウエハ100が分割されてなる基板108上に多層配線層104が設けられた個片の半導体装置110を分離して得ることができる。
【0036】
以上のように、本実施形態の製造方法によると、メカニカルダイシングを用いる場合と比べて、半導体装置110を低ダメージで分離して得ることができる。これにより、メカニカルダイシングに起因するクラック、チッピング及び過大な応力の回避が可能となる。
【0037】
また、本実施形態の製造方法によると、リソグラフィーとドライエッチングとによりウエハ100を切断することができる。さらに、スクライブライン領域101の幅方向の両端部のみをエッチングすることにより、スクライブライン領域101内に形成されたスクライブアクセサリの影響による不均一エッチングを回避できるため、半導体装置110の側面つまり基板108の側面における凹凸の高低差を0.05μm以下に抑えることができる。一方、ウエハの表面側からスクライブラインにハーフカットを形成する従来例では、ハーフカット形成時にスクライブアクセサリがマスクとなってエッチングが不均一となったり、又はエッチング残渣が発生したりする等の不具合が発生する結果、チップ側面の凹凸の高低差を0.05μm以下に抑えることはできない。
【0038】
また、本実施形態の製造方法によると、ウエハ100を切断するための第1の溝102内に例えばCuを埋め込んだ状態でウエハ100の裏面研磨を行うため、ウエハ100に局所的ストレスがかかることがない。
【0039】
このように、本実施形態の製造方法においては、半導体装置110の側面における凹凸の高低差を0.05μm以下に抑えることができると共にウエハ切断時に局所的ストレスがかかることがないので、前述の従来例で生じてしまうような微小なクラック、微小なチッピング及び微小な応力をも回避できる。従って、高信頼性を持つ半導体装置110を高歩留まりで提供することができる。
【0040】
尚、本実施形態の図2(b)に示す充填部103の除去工程及び図2(c)に示す第2の溝107の形成工程において、ウェットエッチングを用いたが、これに代えて、ドライエッチングを用いてもよい。
【0041】
また、本実施形態において、第1の溝102に埋め込む材料として導電性材料のCuを用いたが、これに限られず、ウエハ100の構成材料(本実施形態ではシリコン)とは異なる材料、好ましくは、シリコンに対するエッチング選択比が大きい材料、例えば、Cuを主成分とする合金材料、W若しくはAlなどを含む他の導電性材料、又はポリイミドなどの絶縁性材料等を用いてもよい。
【0042】
また、本実施形態において、ウエハ100の保持部材として単結晶シリコンからなるキャリア106を用いたが、ウエハ100の保持部材がこれに限定されないことは言うまでもない。
【0043】
(第1の実施形態の第1変形例)
以下、本発明の第1の実施形態の第1変形例に係る半導体装置及びその製造方法について、図面を参照しながら説明する。
【0044】
図3(a)〜(d)及び図4(a)〜(d)は、本変形例に係る半導体装置の製造方法の各工程を示す断面図である。
【0045】
まず、図3(a)に示すように、表面に複数の半導体素子(図示省略)が集積して形成された半導体装置を複数搭載した、例えばシリコンよりなるウエハ100を用意する。続いて、ウエハ100の表面100a側における前述の半導体装置が形成された領域に、ドライエッチング手法を用いて、例えば直径5μm、深さ50μmの貫通ビア形成用ホール111を形成する。このとき、同時に、ウエハ100の表面100a側における各スクライブライン領域101の幅方向の両端部に、ドライエッチング手法を用いて、例えば幅5μm、深さ50μmの第1の溝102を形成する。第1の溝102は、スクライブライン領域101の長さ方向に延伸している。ここで、第1の溝102の側壁面における凹凸の高低差は0.05μm以下である。
【0046】
次に、図3(b)に示すように、貫通ビア形成用ホール111及び第1の溝102に例えばCuを埋め込みことにより、貫通ビア112及び充填部103を形成する。ここで、貫通ビア112とウエハ100(つまり基板)との電気的短絡を防止するために、Cuの埋め込み前に、貫通ビア形成用ホール111及び第1の溝102のそれぞれの内壁面上に、例えば、厚さ0.1μmの酸化シリコン膜と厚さ0.05μmの窒化タンタル膜とを順次形成し、その後、貫通ビア形成用ホール111内及び第1の溝102内にCuを埋め込む。尚、窒化タンタル膜は、Cuの酸化シリコン膜中への拡散を防止するためのバリア膜として形成するが、バリア膜材料が窒化タンタル膜に限られないことは言うまでもない。また、第1の溝102の幅はスクライブライン101の幅である例えば60μmから80μmまでの範囲で任意に設定することが可能であるが、第1の溝102の幅を広げると、Cuの埋め込み時間が長くなるため、コストの観点からは第1の溝102の幅を小さくしておくことが適切である。
【0047】
次に、図3(c)に示すように、貫通ビア112上及び充填部103上を含むウエハ100の表面100a上に、多層構造の配線105を有する絶縁膜(以下、多層配線層と称する)104を形成する。ここで、充填部103上に位置する部分の多層配線層104中には、充填部103と接続するように配線105が壁状に積層されている。このような構造は、下側の配線層と上側の配線層とを接続するビアホールの形成と同時に充填部103上に位置する部分に溝を形成し、当該溝及びビアホールに配線材料を埋め込む工程を、各配線層において繰り返し行うことによって形成することができる。尚、多層配線層104における充填部103上に位置する部分が絶縁膜であってもよい。
【0048】
次に、図3(d)に示すように、多層配線層104を覆うようにウエハ100の表面100a側の全体に亘って、例えば厚さ750μm程度の単結晶シリコンからなるキャリア(保持部材)106を貼付する。
【0049】
次に、図4(a)に示すように、ウエハ100の裏面100b側を貫通ビア112及び充填部103が露出するまで研磨する。具体的には、初期厚さ約750μmのウエハ100を厚さ約50μmになるまで研磨し、貫通ビア112及び充填部103のそれぞれの先端部を研磨後のウエハ100の裏面100bから約0.05μm突き出させる。
【0050】
次に、図4(b)に示すように、ウエハ100の裏面100b上に貫通ビア112を覆うレジスト膜121を形成した後、当該レジスト膜121をマスクとして、ウエハ100の裏面100b側から充填部103をウェットエッチングにより除去する。これにより、第1の溝102内に多層配線層104の一部が露出する。
【0051】
次に、図4(c)に示すように、レジスト膜121をマスクとして、ウエハ100の裏面100b側から、第1の溝102内に露出した多層配線層104に対してウェットエッチングを行うことにより、多層配線層104を貫通すると共に第1の溝102と接続する第2の溝107を形成する。これにより、多層配線層104を含む各半導体装置はキャリア106を介してつながっているものの、実質的には個々に分離された状態となる。
【0052】
最後に、図4(d)に示すように、レジスト膜121及びキャリア106を剥離除去することにより、ウエハ100が分割されてなり且つ貫通ビア112を有する基板108上に多層配線層104が設けられた個片の半導体装置110を分離して得ることができる。
【0053】
以上のように、本変形例の製造方法によると、メカニカルダイシングを用いる場合と比べて、半導体装置110を低ダメージで分離して得ることができる。これにより、メカニカルダイシングに起因するクラック、チッピング及び過大な応力の回避が可能となる。
【0054】
また、本変形例の製造方法によると、リソグラフィーとドライエッチングとによりウエハ100を切断することができる。さらに、スクライブライン領域101の幅方向の両端部のみをエッチングすることにより、スクライブライン領域101内に形成されたスクライブアクセサリの影響による不均一エッチングを回避できるため、半導体装置110の側面つまり基板108の側面における凹凸の高低差を0.05μm以下に抑えることができる。一方、ウエハの表面側からスクライブラインにハーフカットを形成する従来例では、ハーフカット形成時にスクライブアクセサリがマスクとなってエッチングが不均一となったり、又はエッチング残渣が発生したりする等の不具合が発生する結果、チップ側面の凹凸の高低差を0.05μm以下に抑えることはできない。
【0055】
また、本変形例の製造方法によると、ウエハ100を切断するための第1の溝102内に例えばCuを埋め込んだ状態でウエハ100の裏面研磨を行うため、ウエハ100に局所的ストレスがかかることがない。
【0056】
このように、本変形例の製造方法においては、半導体装置110の側面における凹凸の高低差を0.05μm以下に抑えることができると共にウエハ切断時に局所的ストレスがかかることがないので、前述の従来例で生じてしまうような微小なクラック、微小なチッピング及び微小な応力をも回避できる。従って、高信頼性を持つ半導体装置110を高歩留まりで提供することができる。
【0057】
さらに、本変形例によると、半導体装置110の側面つまり基板108の側面が、貫通ビア112の形成時に形成した酸化シリコン膜によって被覆されているため、微小なクラック、微小なチッピング及び微小な応力の発生がさらに抑制されるため、信頼性をより一層向上させることができる。
【0058】
尚、本変形例の図4(b)に示す充填部103の除去工程及び図4(c)に示す第2の溝107の形成工程において、ウェットエッチングを用いたが、これに代えて、ドライエッチングを用いてもよい。
【0059】
また、本変形例において、貫通ビア形成用ホール111及び第1の溝102に埋め込む材料として導電性材料のCuを用いたが、これに限られず、ウエハ100の構成材料(本変形例ではシリコン)とは異なる導電性材料、好ましくは、シリコンに対するエッチング選択比が大きい導電性材料、例えば、Cuを主成分とする合金材料、又はW若しくはAlなどを含む他の導電性材料等を用いてもよい。
【0060】
また、本変形例において、ウエハ100の保持部材として単結晶シリコンからなるキャリア106を用いたが、ウエハ100の保持部材がこれに限定されないことは言うまでもない。
【0061】
(第1の実施形態の第2変形例)
以下、本発明の第1の実施形態の第2変形例に係る半導体装置及びその製造方法について、図面を参照しながら説明する。
【0062】
図5(a)〜(d)、図6(a)〜(d)及び図7(a)〜(c)は、本変形例に係る半導体装置の製造方法の各工程を示す断面図である。
【0063】
まず、図5(a)に示すように、表面に複数の半導体素子(図示省略)が集積して形成された半導体装置(以下、第1の半導体装置と称する)を複数搭載した、例えばシリコンよりなるウエハ100を用意する。続いて、ウエハ100の表面100a側における前述の第1の半導体装置が形成された領域に、ドライエッチング手法を用いて、例えば直径5μm、深さ50μmの貫通ビア形成用ホール111を形成する。このとき、同時に、ウエハ100の表面100a側における各スクライブライン領域101の幅方向の両端部に、ドライエッチング手法を用いて、例えば幅5μm、深さ50μmの第1の溝102を形成する。第1の溝102は、スクライブライン領域101の長さ方向に延伸している。ここで、第1の溝102の側壁面における凹凸の高低差は0.05μm以下である。
【0064】
次に、図5(b)に示すように、貫通ビア形成用ホール111及び第1の溝102に例えばCuを埋め込みことにより、貫通ビア112及び充填部103を形成する。ここで、貫通ビア112とウエハ100(つまり基板)との電気的短絡を防止するために、Cuの埋め込み前に、貫通ビア形成用ホール111及び第1の溝102のそれぞれの内壁面上に、例えば、厚さ0.1μmの酸化シリコン膜と厚さ0.05μmの窒化タンタル膜とを順次形成し、その後、貫通ビア形成用ホール111内及び第1の溝102内にCuを埋め込む。尚、窒化タンタル膜は、Cuの酸化シリコン膜中への拡散を防止するためのバリア膜として形成するが、バリア膜材料が窒化タンタル膜に限られないことは言うまでもない。また、第1の溝102の幅はスクライブライン101の幅である例えば60μmから80μmまでの範囲で任意に設定することが可能であるが、第1の溝102の幅を広げると、Cuの埋め込み時間が長くなるため、コストの観点からは第1の溝102の幅を小さくしておくことが適切である。
【0065】
次に、図5(c)に示すように、貫通ビア112上及び充填部103上を含むウエハ100の表面100a上に、多層構造の配線105を有する絶縁膜(以下、多層配線層と称する)104を形成する。ここで、充填部103上に位置する部分の多層配線層104中には、充填部103と接続するように配線105が壁状に積層されている。このような構造は、下側の配線層と上側の配線層とを接続するビアホールの形成と同時に充填部103上に位置する部分に溝を形成し、当該溝及びビアホールに配線材料を埋め込む工程を、各配線層において繰り返し行うことによって形成することができる。尚、多層配線層104における充填部103上に位置する部分が絶縁膜であってもよい。
【0066】
次に、図5(d)に示すように、多層配線層104を覆うようにウエハ100の表面100a側の全体に亘って、例えば厚さ750μm程度の単結晶シリコンからなるキャリア(保持部材)106を貼付する。
【0067】
次に、図6(a)に示すように、ウエハ100の裏面100b側を貫通ビア112及び充填部103が露出するまで研磨する。具体的には、初期厚さ約750μmのウエハ100を厚さ約50μmになるまで研磨し、貫通ビア112及び充填部103のそれぞれの先端部を研磨後のウエハ100の裏面100bから約0.05μm突き出させる。
【0068】
次に、図6(b)に示すように、ウエハ100(つまり第1の半導体装置)の裏面100b側に露出した貫通ビア112の端部に第2の半導体装置150をボンディングする。これにより、貫通ビア112を介して第1の半導体装置と第2の半導体装置150とが電気的に接続される。
【0069】
次に、図6(c)に示すように、貫通ビア112と第2の半導体装置150との接続部を含む第2の半導体装置150の周囲全体を例えばレジストからなる保護膜151によって被覆する。
【0070】
次に、図6(d)に示すように、ウエハ100の裏面100b側から充填部103をウェットエッチングにより除去する。これにより、第1の溝102内に多層配線層104の一部が露出する。ここで、充填部103のエッチング時には貫通ビア112は保護膜151によってマスクされている。
【0071】
次に、図7(a)に示すように、ウエハ100の裏面100b側から、第1の溝102内に露出した多層配線層104に対してウェットエッチングを行うことにより、多層配線層104を貫通すると共に第1の溝102と接続する第2の溝107を形成する。これによって、多層配線層104を含む各半導体装置はキャリア106を介してつながっているものの、実質的には個々に分離された状態となる。
【0072】
次に、図7(b)に示すように、第2の半導体装置150を被覆、保護していた保護膜151を例えばアッシングにより除去する。
【0073】
最後に、図7(c)に示すように、キャリア106を剥離除去することにより、ウエハ100が分割されてなる基板108上に多層配線層104が設けられ且つ基板108を貫通する貫通ビア112を介して第2の半導体装置150と電気的に接続された個片の第1の半導体装置110を分離して得ることができる。
【0074】
以上のように、本変形例の製造方法によると、メカニカルダイシングを用いる場合と比べて、第1の半導体装置110を低ダメージで分離して得ることができる。これにより、メカニカルダイシングに起因するクラック、チッピング及び過大な応力の回避が可能となる。
【0075】
また、本変形例の製造方法によると、リソグラフィーとドライエッチングとによりウエハ100を切断することができる。さらに、スクライブライン領域101の幅方向の両端部のみをエッチングすることにより、スクライブライン領域101内に形成されたスクライブアクセサリの影響による不均一エッチングを回避できるため、第1の半導体装置110の側面つまり基板108の側面における凹凸の高低差を0.05μm以下に抑えることができる。一方、ウエハの表面側からスクライブラインにハーフカットを形成する従来例では、ハーフカット形成時にスクライブアクセサリがマスクとなってエッチングが不均一となったり、又はエッチング残渣が発生したりする等の不具合が発生する結果、チップ側面の凹凸の高低差を0.05μm以下に抑えることはできない。
【0076】
また、本変形例の製造方法によると、ウエハ100を切断するための第1の溝102内に例えばCuを埋め込んだ状態でウエハ100の裏面研磨を行うため、ウエハ100に局所的ストレスがかかることがない。
【0077】
このように、本変形例の製造方法においては、第1の半導体装置110の側面における凹凸の高低差を0.05μm以下に抑えることができると共にウエハ切断時に局所的ストレスがかかることがないので、前述の従来例で生じてしまうような微小なクラック、微小なチッピング及び微小な応力をも回避できる。従って、高信頼性を持つ第1の半導体装置110を高歩留まりで提供することができる。
【0078】
また、本変形例によると、第1の半導体装置110の側面つまり基板108の側面が、貫通ビア112の形成時に形成した酸化シリコン膜によって被覆されているため、微小なクラック、微小なチッピング及び微小な応力の発生がさらに抑制されるため、信頼性をより一層向上させることができる。
【0079】
さらに、本変形例によると、次のような効果を得ることができる。すなわち、半導体装置同士をボンディングする場合、一般的に、ボンディング部が脆弱化しやすい。それに対して、本変形例の製造方法を用いれば、第1の半導体装置110を分離する際に機械的な圧力が全くかからないため、第1の半導体装置110と第2の半導体装置150とのボンディング部が脆弱化することを抑制することができる。
【0080】
尚、本変形例の図6(d)に示す充填部103の除去工程及び図7(a)に示す第2の溝107の形成工程において、ウェットエッチングを用いたが、これに代えて、ドライエッチングを用いてもよい。
【0081】
また、本変形例において、貫通ビア形成用ホール111及び第1の溝102に埋め込む材料として導電性材料のCuを用いたが、これに限られず、ウエハ100の構成材料(本変形例ではシリコン)とは異なる導電性材料、好ましくは、シリコンに対するエッチング選択比が大きい導電性材料、例えば、Cuを主成分とする合金材料、又はW若しくはAlなどを含む他の導電性材料等を用いてもよい。
【0082】
また、本変形例において、ウエハ100の保持部材として単結晶シリコンからなるキャリア106を用いたが、ウエハ100の保持部材がこれに限定されないことは言うまでもない。
【0083】
また、本変形例において、第2の半導体装置150の保護膜151としてレジストを用いたが、レジストの代わりに、積層チップ間充填ポリマー(アフターフィリング)を用いてもよい。この場合、本変形例の図7(b)に示す保護膜151の除去工程を省略できるのみならず、本変形例では図示していない、積層チップ間にボンディング部保護用ポリマーを充填する工程を省略できる。また、保護膜151として、レジストの代わりに、リソグラフィーによるパターニングが可能な感光性ポリイミドを用いてもよい。この場合、ポリイミドからなる保護膜151を除去することなくチップ保護ポリマー(オーバーコート)として用いることができる。
【0084】
(第2の実施形態)
以下、本発明の第2の実施形態に係る半導体装置及びその製造方法について、図面を参照しながら説明する。
【0085】
図8(a)〜(d)、図9(a)〜(c)及び図10(a)〜(c)は、本実施形態に係る半導体装置の製造方法の各工程を示す断面図である。
【0086】
まず、図8(a)に示すように、表面に複数の半導体素子(図示省略)が集積して形成され且つその上に多層配線層204及び表面保護膜(図示省略)が形成された半導体装置(以下、第1の半導体装置と称する)を複数搭載した、例えばシリコンよりなるウエハ200を用意する。ここで、多層配線層204は、多層構造の配線105を有する絶縁膜である。続いて、多層配線層204を覆うようにウエハ200の表面200a側の全体に亘って、例えば厚さ750μm程度の単結晶シリコンからなるキャリア(保持部材)206を貼付する。
【0087】
次に、図8(b)に示すように、ウエハ200の裏面200b側を、初期厚さ約750μmが厚さ約100μmになるまで研磨する。
【0088】
次に、図8(c)に示すように、ウエハ200の裏面200a側における前述の第1の半導体装置が形成された領域に、ドライエッチング手法を用いて、例えば直径30μmの貫通ビア形成用ホール211を多層配線層204に達するように形成する。このとき、同時に、ウエハ200の裏面200b側における各スクライブライン領域201の幅方向の両端部に、ドライエッチング手法を用いて、例えば幅5μmの第1の溝202を多層配線層204に達するように形成する。第1の溝202は、スクライブライン領域201の長さ方向に延伸している。ここで、第1の溝202の側壁面における凹凸の高低差は0.05μm以下である。また、第1の溝202上に位置する部分の多層配線層204中には、配線205が壁状に積層されている。このような構造は、下側の配線層と上側の配線層とを接続するビアホールの形成と同時に第1の溝202上に位置する部分に溝を形成し、当該溝及びビアホールに配線材料を埋め込む工程を、各配線層において繰り返し行うことによって形成することができる。尚、多層配線層204における第1の溝202上に位置する部分が絶縁膜であってもよい。
【0089】
次に、図8(d)に示すように、貫通ビア形成用ホール211及び第1の溝202に例えばCuを埋め込みことにより、貫通ビア212及び充填部203を形成する。ここで、貫通ビア212とウエハ200(つまり基板)との電気的短絡を防止するために、Cuの埋め込み前に、貫通ビア形成用ホール211及び第1の溝202のそれぞれの内壁面上に、例えば、厚さ0.1μmの酸化シリコン膜を形成した後、当該酸化シリコン膜のうち貫通ビア形成用ホール211内及び第1の溝202内の多層配線層204上に形成されている部分を除去する。続いて、貫通ビア形成用ホール211及び第1の溝202のそれぞれの内壁面上に前記酸化シリコン膜を介して、例えば厚さ0.05μmの窒化タンタル膜を形成し、その後、貫通ビア形成用ホール211内及び第1の溝202内にCuを埋め込む。尚、窒化タンタル膜は、Cuの酸化シリコン膜中への拡散を防止するためのバリア膜として形成するが、バリア膜材料が窒化タンタル膜に限られないことは言うまでもない。また、第1の溝202の幅はスクライブライン201の幅である例えば60μmから80μmまでの範囲で任意に設定することが可能であるが、第1の溝202の幅を広げると、Cuの埋め込み時間が長くなるため、コストの観点からは第1の溝202の幅を小さくしておくことが適切である。
【0090】
次に、図9(a)に示すように、ウエハ200の裏面200b側を、貫通ビア212及び充填部203のそれぞれの先端部が約0.05μm突き出るまで研磨する。続いて、ウエハ200(つまり第1の半導体装置)の裏面200b側に露出した貫通ビア212の端部に第2の半導体装置250をボンディングする。これにより、貫通ビア212を介して第1の半導体装置と第2の半導体装置250とが電気的に接続される。
【0091】
次に、図9(b)に示すように、貫通ビア212と第2の半導体装置250との接続部を含む第2の半導体装置250の周囲全体を例えばレジストからなる保護膜251によって被覆する。
【0092】
次に、図9(c)に示すように、ウエハ200の裏面200b側から充填部203をウェットエッチングにより除去する。これにより、第1の溝202内に多層配線層204の一部が露出する。ここで、充填部203のエッチング時には貫通ビア212は保護膜251によってマスクされている。
【0093】
次に、図10(a)に示すように、ウエハ200の裏面200b側から、第1の溝202内に露出した多層配線層204に対してウェットエッチングを行うことにより、多層配線層204を貫通すると共に第1の溝202と接続する第2の溝207を形成する。これによって、多層配線層204を含む各半導体装置はキャリア206を介してつながっているものの、実質的には個々に分離された状態となる。
【0094】
次に、図10(b)に示すように、第2の半導体装置250を被覆、保護していた保護膜251を例えばアッシングにより除去する。
【0095】
最後に、図10(c)に示すように、キャリア206を剥離除去することにより、ウエハ200が分割されてなる基板208上に多層配線層204が設けられ且つ基板208を貫通する貫通ビア212を介して第2の半導体装置250と電気的に接続された個片の第1の半導体装置210を分離して得ることができる。
【0096】
以上のように、本実施形態の製造方法によると、メカニカルダイシングを用いる場合と比べて、第1の半導体装置210を低ダメージで分離して得ることができる。これにより、メカニカルダイシングに起因するクラック、チッピング及び過大な応力の回避が可能となる。
【0097】
また、本実施形態の製造方法によると、リソグラフィーとドライエッチングとによりウエハ200を切断することができる。さらに、スクライブライン領域201の幅方向の両端部のみをエッチングすることにより、スクライブライン領域201内に形成されたスクライブアクセサリの影響による不均一エッチングを回避できるため、第1の半導体装置210の側面つまり基板208の側面における凹凸の高低差を0.05μm以下に抑えることができる。一方、ウエハの表面側からスクライブラインにハーフカットを形成する従来例では、ハーフカット形成時にスクライブアクセサリがマスクとなってエッチングが不均一となったり、又はエッチング残渣が発生したりする等の不具合が発生する結果、チップ側面の凹凸の高低差を0.05μm以下に抑えることはできない。
【0098】
また、本実施形態の製造方法によると、ウエハ200を切断するための第1の溝202内に例えばCuを埋め込んだ状態でウエハ200の裏面研磨を行うため、ウエハ200に局所的ストレスがかかることがない。
【0099】
このように、本実施形態の製造方法においては、第1の半導体装置210の側面における凹凸の高低差を0.05μm以下に抑えることができると共にウエハ切断時に局所的ストレスがかかることがないので、前述の従来例で生じてしまうような微小なクラック、微小なチッピング及び微小な応力をも回避できる。従って、高信頼性を持つ第1の半導体装置210を高歩留まりで提供することができる。
【0100】
また、本実施形態によると、第1の半導体装置210の側面つまり基板208の側面が、貫通ビア212の形成時に形成した酸化シリコン膜によって被覆されているため、微小なクラック、微小なチッピング及び微小な応力の発生がさらに抑制されるため、信頼性をより一層向上させることができる。
【0101】
また、本実施形態によると、次のような効果を得ることができる。すなわち、半導体装置同士をボンディングする場合、一般的に、ボンディング部が脆弱化しやすい。それに対して、本実施形態の製造方法を用いれば、第1の半導体装置210を分離する際に機械的な圧力が全くかからないため、第1の半導体装置210と第2の半導体装置250とのボンディング部が脆弱化することを抑制することができる。
【0102】
さらに、本実施形態によると、多層配線層204及び表面保護膜(図示省略)の形成後に貫通ビア形成用ホール211及び第1の溝202を形成する。このため、従来の半導体製造プロセスに、貫通ビア形成用ホール211及び第1の溝202の形成工程を追加するだけで実施可能であるので、プロセス開発コストを大きく低減することができる。
【0103】
尚、本実施形態の図9(c)に示す充填部203の除去工程及び図10(a)に示す第2の溝207の形成工程において、ウェットエッチングを用いたが、これに代えて、ドライエッチングを用いてもよい。
【0104】
また、本実施形態において、貫通ビア形成用ホール211及び第1の溝202に埋め込む材料として導電性材料のCuを用いたが、これに限られず、ウエハ200の構成材料(本実施形態ではシリコン)とは異なる導電性材料、好ましくは、シリコンに対するエッチング選択比が大きい導電性材料、例えば、Cuを主成分とする合金材料、又はW若しくはAlなどを含む他の導電性材料等を用いてもよい。
【0105】
また、本実施形態において、ウエハ200の保持部材として単結晶シリコンからなるキャリア206を用いたが、ウエハ200の保持部材がこれに限定されないことは言うまでもない。
【0106】
また、本実施形態において、第2の半導体装置250の保護膜251としてレジストを用いたが、レジストの代わりに、積層チップ間充填ポリマー(アフターフィリング)を用いてもよい。この場合、本実施形態の図10(b)に示す保護膜251の除去工程を省略できるのみならず、本実施形態では図示していない、積層チップ間にボンディング部保護用ポリマーを充填する工程を省略できる。また、保護膜251として、レジストの代わりに、リソグラフィーによるパターニングが可能な感光性ポリイミドを用いてもよい。この場合、ポリイミドからなる保護膜251を除去することなくチップ保護ポリマー(オーバーコート)として用いることができる。
【0107】
また、本実施形態において、第1の半導体装置210の裏面側に露出した貫通ビア212を介して第2の半導体装置250を第1の半導体装置210にボンディングした例を説明したが、これに代えて、第1の実施形態の第1変形例のように、第1の半導体装置210の貫通ビア212の先端部を露出させた状態で製造工程を完了させてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0108】
以上に説明したように、本発明に係る半導体装置及びその製造方法は、メカニカルダイシングに起因するクラック、チッピング及び過大な応力の回避だけではなく、微小なクラック、微小なチッピング及び微小な応力が半導体装置に生じることを防止できるものであり、特に、基板側面がほぼ平坦な切断面である半導体装置及びその製造方法として有用である。
【符号の説明】
【0109】
100、200 ウエハ
100a、200a ウエハ表面
100b、200b ウエハ裏面
101、210 スクライブライン領域
102、202 第1の溝
103、203 充填部
104、204 多層配線層
105、205 配線
106、206 キャリア
107、207 第2の溝
108、208 基板
110、210 半導体装置(第1の半導体装置)
111、211 貫通ビア形成用ホール
112、212 貫通ビア
121 レジスト膜
150、250 第2の半導体装置
151、251 保護膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの半導体素子を有する第1の半導体装置を複数搭載したウエハを用意する工程(a)と、
前記ウエハにおける隣接する前記第1の半導体装置間を分離するスクライブライン領域に第1の溝を形成する工程(b)と、
前記第1の溝に、前記ウエハの構成材料とは異なる材料を充填して充填部を形成する工程(c)と、
前記充填部上を含む前記ウエハ上に配線層を形成する工程(d)と、
前記配線層を覆うように前記ウエハに保持部材を貼付する工程(e)と、
前記ウエハにおける前記保持部材が貼付されていない裏面側を研磨し、前記充填部の端部を露出させる工程(f)と、
前記工程(f)の後、前記ウエハの前記裏面側から前記充填部を除去し、前記第1の溝内に前記配線層の一部を露出させる工程(g)と、
前記工程(g)の後、前記配線層を貫通すると共に前記第1の溝と接続する第2の溝を形成する工程(h)と、
前記工程(h)の後、前記保持部材を剥離して前記複数の第1の半導体装置のそれぞれを個片に分離する工程(i)とを備えていることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置の製造方法において、
前記工程(b)は、前記ウエハにおける前記第1の半導体装置が形成された領域に、少なくとも1つの貫通ビア形成用ホールを形成する工程を含み、
前記工程(c)は、前記貫通ビア形成用ホール内に前記材料を充填して貫通ビアを形成する工程を含み、
前記工程(f)は、前記貫通ビアの端部を露出させる工程を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の半導体装置の製造方法において、
前記工程(f)と前記工程(g)との間に、
前記工程(f)で露出させた前記貫通ビアの端部に第2の半導体装置を接続することにより、前記貫通ビアを介して前記第1の半導体装置と前記第2の半導体装置とを電気的に接続する工程(j)と、
前記充填部の端部を露出させたまま、前記貫通ビアと前記第2の半導体装置との接続部を含む前記第2の半導体装置の周囲を保護膜によって被覆する工程(k)とをさらに備えていることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の半導体装置の製造方法において、
前記工程(h)と前記工程(i)との間に、
前記保護膜を除去する工程(l)をさらに備えていることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項5】
少なくとも1つの半導体素子を有する第1の半導体装置を複数搭載したウエハを用意する工程(a)と、
前記ウエハ上に配線層を形成する工程(b)と、
前記配線層を覆うように前記ウエハに保持部材を貼付する工程(c)と、
前記ウエハにおける前記保持部材が貼付されていない裏面側を研磨し、前記ウエハを薄くする工程(d)と、
前記工程(d)の後、前記ウエハにおける隣接する前記第1の半導体装置間を分離するスクライブライン領域に、前記ウエハの前記裏面側から前記配線層に達する第1の溝を形成すると共に、前記ウエハにおける前記第1の半導体装置が形成された領域に、前記ウエハの前記裏面側から前記配線層に達する少なくとも1つの貫通ビア形成用ホールを形成する工程(e)と、
前記第1の溝及び貫通ビア形成用ホールにそれぞれ、前記ウエハの構成材料とは異なる材料を充填して充填部及び貫通ビアを形成する工程(f)と、
前記ウエハの前記裏面側から前記充填部を除去し、前記第1の溝内に前記配線層の一部を露出させる工程(g)と、
前記工程(g)の後、前記配線層を貫通すると共に前記第1の溝と接続する第2の溝を形成する工程(h)と、
前記工程(h)の後、前記保持部材を剥離して前記複数の第1の半導体装置のそれぞれを個片に分離する工程(i)とを備えていることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の半導体装置の製造方法において、
前記工程(f)と前記工程(g)との間に、
前記ウエハの前記裏面側を研磨し、前記充填部及び前記貫通ビアのそれぞれの端部をさらに露出させる工程(j)と、
前記工程(j)で露出させた前記貫通ビアの端部に第2の半導体装置を接続することにより、前記貫通ビアを介して前記第1の半導体装置と前記第2の半導体装置とを電気的に接続する工程(k)と、
前記充填部の端部を露出させたまま、前記貫通ビアと前記第2の半導体装置との接続部を含む前記第2の半導体装置の周囲を保護膜によって被覆する工程(l)とをさらに備えていることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の半導体装置の製造方法において、
前記工程(h)と前記工程(i)との間に、
前記保護膜を除去する工程(m)をさらに備えていることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜7のうちのいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法において、
前記第1の溝は、前記スクライブライン領域における幅方向の両端部にそれぞれ、前記スクライブライン領域の長さ方向に延伸するように形成されることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜8のうちのいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法において、
前記第1の溝の側壁面における凹凸の高低差は0.05μm以下であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜9のうちのいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法において、
前記材料は、Cuを含む導電性材料であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項11】
請求項1〜10のうちのいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法において、
前記充填部は、前記第1の溝の壁面上に酸化シリコン膜及びバリア膜を順次形成した後に前記材料を前記第1の溝に充填することにより形成されることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項12】
少なくとも1つの半導体素子が形成された基板と、
前記基板上に形成された配線層とを備え、
前記基板の側面における凹凸の高低差は0.05μm以下であることを特徴とする半導体装置。
【請求項13】
請求項12に記載の半導体装置において、
前記基板を貫通する貫通ビアをさらに備えていることを特徴とする半導体装置。
【請求項14】
請求項13に記載の半導体装置において、
前記基板における前記配線層が形成されていない裏面側に前記貫通ビアの端部が露出しており、
前記貫通ビアの前記端部に他の半導体装置が接続されていることを特徴とする半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−96693(P2011−96693A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−246044(P2009−246044)
【出願日】平成21年10月27日(2009.10.27)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】