説明

半導体装置及びそれを備えた半導体リレー装置

【課題】半導体装置及び半導体リレー装置において、製造コストを抑えつつ、CR積の値を小さくする。
【解決手段】双方向スイッチ1を構成する2つのMOSFETのうち、一方のMOSFET2に、化合物半導体で構成されたユニポーラ型化合物半導体装置を用い、他方のMOSFET3に、シリコンで構成されたSi−MOSFETを用いる。ここで、ユニポーラ型化合物半導体装置の中には、Si−MOSFETよりもCR積の値が小さいものが多く存在する。従って、一方のMOSFET2にユニポーラ型化合物半導体装置を用いたことにより、両方のMOSFET2、3にSi−MOSFETを用いた場合に比べて、装置全体のCR積の値を小さくできる蓋然性が高まる。また、Si−MOSFETよりも製造コストの高いユニポーラ型化合物半導体装置を2つ用いた場合に比べて、製造コストを抑えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、出力端子間に双方向の電流を流すことが可能な(正負両極性の信号制御可能な)双方向スイッチ等の半導体装置、及びこの半導体装置を備えた半導体リレー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、双方向スイッチ等の半導体装置における出力用のスイッチング素子としては、一般的に、シリコンで構成されたSi−MOSFETが用いられることが多い。図3は、この種の双方向スイッチ101の回路構成の例を示す。従来の双方向スイッチ101は、2つのSi−MOSFET(以下、MOSFETと略す)102、103を有しており、これらのMOSFET102、103は、お互いのソース(電極)同士が接続されることにより、逆直列に接続されている。従来の双方向スイッチ101は、MOSFET102、103を上記のように接続したことにより、MOSFET102、103のドレイン(電極)に接続された出力端子107、108から双方向の電流を取り出し得るようにしている。すなわち、従来の双方向スイッチ101では、MOSFETが、ドレインからソースに向かう方向と、ソースからドレインに向かう方向の両方向に電流を流せるという性質を利用して、出力端子間における正負両極性の信号制御を可能にしている。
【0003】
一般に、双方向スイッチの主たる性能指標として、スイッチ・オフ状態(出力端子間の遮断時)における出力端子間容量(Cout)と、スイッチ・オン状態(出力端子間の導通時)における抵抗(オン抵抗(Ron))とがある。双方向スイッチに用いられているMOSFETには、ゲート幅が広いと、オン抵抗は小さくなるが、ゲート部分の容量(出力端子間容量の一部)が大きくなり、ゲート幅が狭いと、オン抵抗は大きくなるが、出力端子間容量が小さくなるという性質がある。このため、MOSFETの出力端子間容量とオン抵抗とは、トレード・オフの関係にあり、耐圧が同じMOSFET同士であれば、出力端子間容量とオン抵抗との積(CR積)は、ほぼ一定になる。
【0004】
双方向スイッチ101では、2つのMOSFET102、103が、(逆)直列に接続されているので、双方向スイッチ101全体のオン抵抗と出力端子間容量とは、図4と図5とに示されるようになる。すなわち、双方向スイッチ101全体のオン抵抗R’は、図4に示されるように、MOSFET102の抵抗R1とMOSFET103の抵抗R2とを直列に接続したものであるので、
R’=R1+R2・・・(1)
となる。また、双方向スイッチ101全体の出力端子間容量C’は、図5に示されるように、MOSFET102の出力端子間容量C1とMOSFET103の出力端子間容量C2とを直列に接続したものであるので、
C’=(C1×C2)/(C1+C2)・・・(2)
となる。
【0005】
上記の(1)式及び(2)式より、双方向スイッチ101全体のCR積C’R’は、
C’R’=(R1×C1×C2+R2×C2×C1)/(C1+C2)・・・(3)
となる。この(3)式より、双方向スイッチ101全体のCR積C’R’の値は、双方向スイッチ101を構成する2つのMOSFET102、103のCR積R1×C1、R2×C2の値に左右されることが分かる。また、一般に、MOSFETのCR積の値は、MOSFETを構成する物質の物性に依存する。
【0006】
従来の双方向スイッチには、上記のようなシリコンで構成されたSi−MOSFETを用いるものに加えて、特許文献1に示されるような、SiC(炭化珪素)等の化合物半導体で構成されたMOSFET(ユニポーラ型化合物半導体装置)を用いるものがある。SiCを用いたMOSFETのような、オン抵抗が小さい(CR積の値が小さい)化合物半導体で構成されたユニポーラ型化合物半導体装置を用いた双方向スイッチは、スイッチング速度が速く、高周波の出力信号を制御できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−135081号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
双方向スイッチに求められるスイッチング速度は、年々速くなっているので、双方向スイッチに求められるCR積の値は、年々小さくなっている。しかしながら、上記図3に示されるような従来の2つのSi−MOSFETで構成された双方向スイッチでは、現在の双方向スイッチに要求される(小さな)CR積の値を得ることが困難になってきている。
【0009】
これに対して、上記特許文献1に示されるような化合物半導体で構成された2つのユニポーラ型化合物半導体装置を用いた双方向スイッチによれば、現在の双方向スイッチに要求される(小さな)CR積の値を得ることが可能である。
【0010】
しかしながら、化合物半導体自体の製造コストがSiよりも高いので、上記特許文献1に示されるような2つのユニポーラ型化合物半導体装置を用いた双方向スイッチは、従来の2つのSi−MOSFETで構成された双方向スイッチよりも製造コストが高くなる。
【0011】
本発明は、上記課題を解決するものであり、双方向スイッチに用いた場合に、現在の双方向スイッチに要求される小さなCR積の値を得ることが可能で、しかも、製造コストを抑えることが可能な半導体装置、及びそれを備えた半導体リレー装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の半導体装置は、2つのMOSFET(Metal−Oxide−Semiconductor Field−Effect Transistor)を備え、これらのMOSFETのソース同士が逆直列に接続された半導体装置において、前記2つのMOSFETのうち、一方のMOSFETは、化合物半導体で構成されたユニポーラ型化合物半導体装置であり、他方のMOSFETは、シリコンで構成されたSi−MOSFETであることを特徴とする。
【0013】
この半導体装置において、前記化合物半導体は、炭化珪素(SiC)又は窒化ガリウム(GaN)であることが望ましい。
【0014】
この半導体装置において、前記2つのMOSFETは、耐電圧値が実質的に同じであることが望ましい。
【0015】
この半導体装置において、前記Si−MOSFETのオン抵抗値は、前記ユニポーラ型化合物半導体装置のオン抵抗値以下であることが望ましい。
【0016】
また、本発明の半導体リレー装置は、前記半導体装置と、入力信号に基づいて発光する発光素子と、前記発光素子からの光を受光して、光起電力を発生するフォトダイオードアレイと、前記フォトダイオードアレイと接続されて、前記フォトダイオードアレイで発生する光起電力の有無に応じて、前記2つのMOSFETのゲートの充電と放電とを切り換えることにより、前記2つのMOSFETの開閉を行う充放電回路と、前記2つのMOSFETのそれぞれのドレインと接続された2つのリレー出力端子とを備え、前記入力信号に応答して前記2つのMOSFETを同時に開閉することにより、前記2つのリレー出力端子間の導通と遮断とを切り換えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の半導体装置によれば、2つのMOSFETのうち、一方のMOSFETに、化合物半導体で構成されたユニポーラ型化合物半導体装置を用い、他方のMOSFETに、シリコンで構成されたSi−MOSFETを用いている。ここで、化合物半導体で構成されたユニポーラ型化合物半導体装置の中には、例えば炭化珪素(SiC)又は窒化ガリウム(GaN)で構成されたMOSFETのように、CR積の値が小さいものが多く存在する。従って、一方のMOSFETにユニポーラ型化合物半導体装置を用いたことにより、両方のMOSFETにSi−MOSFETを用いた場合に比べて、半導体装置全体のCR積の値を小さくできる蓋然性が高まる。これにより、本半導体装置を双方向スイッチに用いた場合に、現在の双方向スイッチに要求される小さなCR積の値を得ることができる可能性が高くなる。また、本発明の半導体装置によれば、一般にSiよりも製造コストの高い化合物半導体で構成されたユニポーラ型化合物半導体装置を2つ用いた場合に比べて、製造コストを抑えることが可能になる。従って、本半導体装置を双方向スイッチに用いた場合に、双方向スイッチ全体の製造コストを抑えることが可能になる。
【0018】
また、本発明の半導体リレー装置によれば、製造コストを抑えつつ、半導体装置(例えば双方向スイッチ)の部分における2つのMOSFETの両方にSi−MOSFETを用いた場合に比べて、半導体装置の部分におけるCR積の値を小さくできる蓋然性が高まる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係る半導体装置である双方向スイッチの回路構成図。
【図2】上記双方向スイッチを用いた半導体リレー装置の回路構成図。
【図3】従来例の双方向スイッチの回路構成図。
【図4】従来例の双方向スイッチ全体のオン抵抗を説明するための回路図。
【図5】従来例の双方向スイッチ全体の出力端子間容量を説明するための回路図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態に係る半導体装置である双方向スイッチについて、図面を参照して説明する。図1は、本実施形態の双方向スイッチの回路構成を示す。この双方向スイッチ1は、2つのMOSFET(Metal−Oxide−Semiconductor Field−Effect Transistor)2、3を備えている。これらのMOSFET2、3のうち、一方のMOSFET2は、化合物半導体で構成されたユニポーラ型化合物半導体装置のMOSFETであり、他方のMOSFET3は、シリコンで構成されたSi−MOSFETである。図に示されるように、これらのMOSFET2、3は、お互いのソース(電極)同士が接続されることにより、逆直列に接続されている。本双方向スイッチ1では、MOSFET2、3を上記のように接続したことにより、MOSFET2、3のドレイン(電極)に接続された出力端子7、8から双方向の電流を取り出し得るようにしている。すなわち、双方向スイッチ1では、MOSFET2、3が、ドレインからソースに向かう方向と、ソースからドレインに向かう方向の両方向に電流を流せるという性質を利用して、出力端子7、8間における正負両極性の信号制御を可能にしている。
【0021】
上記のように、一方のMOSFET2として、化合物半導体で構成されたユニポーラ型化合物半導体装置を用いた理由は、以下の通りである。一般に、化合物半導体は、Siよりも優れた物性を有している。このため、化合物半導体で構成されたユニポーラ型化合物半導体装置の中には、例えば炭化珪素(SiC)又は窒化ガリウム(GaN)で構成されたMOSFETのように、CR積の値が小さいものが多く存在する。従って、一方のMOSFET2にユニポーラ型化合物半導体装置を用いたことにより、両方のMOSFET2、3にSi−MOSFETを用いた場合に比べて、双方向スイッチ1全体のCR積の値を小さくできる蓋然性が高まる。これにより、現在の双方向スイッチに要求される小さなCR積の値を得ることができる可能性が高くなる。
【0022】
また、現在のところ、一般に、化合物半導体の製造コストは、シリコンの製造コストよりも高い。従って、上記のように、2つのMOSFET2、3のうち、1つのMOSFET3をSi−MOSFETとしたことにより、ユニポーラ型化合物半導体装置を2つ用いた双方向スイッチに比べて、双方向スイッチ全体の製造コストを抑えることが可能になる。
【0023】
なお、図1に示される回路構成においては、上記の双方向スイッチ1は、制御回路4に接続されている。この制御回路4は、双方向スイッチ1の2つの制御用入力端子5、6に接続されている。これらの制御用入力端子5、6のうちの高電位側の入力端子である制御用入力端子5は、MOSFET2、3の両方のゲートに接続されている。制御回路4は、制御用入力端子5、6に制御信号を入力することにより、2つのMOSFET2、3を同時に開閉して、外部出力端子7、8間の導通と遮断とを切り換える。また、図1中のD1、D2は、それぞれMOSFET2、3における、いわゆる寄生ダイオードである。
【0024】
上記の2つのMOSFET2、3の耐電圧値は、(実質的に)同じである。これにより、双方向スイッチ1において、双方向(外部出力端子7から外部出力端子8に向かう方向、及び外部出力端子8から外部出力端子7に向かう方向の両方)に、同じ電圧を印加することができるようになる。
【0025】
上記の双方向スイッチ1において、Si−MOSFETであるMOSFET3のオン抵抗値は、ユニポーラ型化合物半導体装置であるMOSFET2のオン抵抗値以下である。これにより、双方向スイッチ1全体のCR積の値を、より確実に小さくすることができる。以下に、その理由について説明する。
【0026】
ユニポーラ型化合物半導体装置であるMOSFET2のオン抵抗(値)、出力端子間容量(値)を、R1、C1とし、Si−MOSFETであるMOSFET3のオン抵抗(値)、出力端子間容量(値)を、R2、C2とすると、以下の関係式が成立する。
C1×R1≪C2×R2・・・(4)
この場合に、MOSFET3のオン抵抗値R2が、MOSFET2のオン抵抗値R1以下である(R1≧R2)とすると、
C1≪C2・・・(5)
の関係式が成立する。ここで、双方向スイッチ1全体のオン抵抗値Rは、
R=R1+R2・・・(6)
で表され、双方向スイッチ1全体の出力端子間容量値Cは、
C=(C1×C2)/(C1+C2)・・・(7)
で表される。そして、上記の(5)式と(7)式より、
C=(C1×C2)/(C1+C2)≒C1・・・(8)
となる。ここで、上記の(5)式、(6)式及び(8)式より、双方向スイッチ1全体のCR積の値は、
CR=C1(R1+R2)・・・(9)
になる。そして、上記の(5)式より、出力端子間容量値C1の値は、C2よりも非常に小さい値であるため、上記(9)式におけるC1(R1+R2)の値(双方向スイッチ1全体のCR積の値)も非常に小さな値になる。このように、Si−MOSFETであるMOSFET3のオン抵抗値を、ユニポーラ型化合物半導体装置であるMOSFET2のオン抵抗値以下にすることにより、双方向スイッチ1全体のCR積の値を、より確実に小さくすることができる。
【0027】
次に、Si−MOSFETのオン抵抗値を、ユニポーラ型化合物半導体装置のオン抵抗値以下にすることにより、双方向スイッチ1全体のCR積の値を小さくできる理由について、R1、C1、R2、C2の数値の例を挙げて説明する。なお、以下の説明では、説明(計算)を簡単にするために、オン抵抗値R1、R2、及び出力端子間容量値C1、C2の単位を、敢えて記載しない。
【0028】
例えば、ユニポーラ型化合物半導体装置であるMOSFET2のCR積の値(C1×R1)を10、Si−MOSFETであるMOSFET3のCR積の値(C2×R2)を1000とする。このとき、Si−MOSFETであるMOSFET3のオン抵抗値R2が、ユニポーラ型化合物半導体装置であるMOSFET2のオン抵抗値R1と同じ値(R1=R2=1)であったとすると、C1=10、C2=1000になる。この場合、双方向スイッチ1全体のオン抵抗値Rは、上記(6)式より、R=1+1=2となり、双方向スイッチ1全体の出力端子間容量値Cは、上記(7)式より、C=(10×1000)/(10+1000)≒9.9となる。従って、双方向スイッチ1全体のCR積の値は、
C×R=9.9×2=19.8・・・(10)
になる。
【0029】
また、MOSFET2、3のCR積の値が上記と同じ場合(C1×R1=10、C2×R2=1000)において、MOSFET3のオン抵抗値R2が、MOSFET2のオン抵抗値R1よりも小さいときについて考える。例えば、R1=0.5、R2=1とすると、C1=20、C2=1000になる。この場合、双方向スイッチ1全体のオン抵抗値Rは、上記(6)式より、R=0.5+1=1.5となり、双方向スイッチ1全体の出力端子間容量値Cは、上記(7)式より、C=(20×1000)/(20+1000)≒19.6となる。従って、双方向スイッチ1全体のCR積の値は、
C×R=19.6×1.5=29.4・・・(11)
になる。
【0030】
これに対して、MOSFET2、3のCR積の値が上記と同じ場合(C1×R1=10、C2×R2=1000)において、MOSFET3のオン抵抗値R2が、MOSFET2のオン抵抗値R1よりも大きいときについて考える。例えば、R1=1、R2=100とすると、C1=C2=10になる。この場合、双方向スイッチ1全体のオン抵抗値Rは、上記(6)式より、R=1+100=101となり、双方向スイッチ1全体の出力端子間容量値Cは、上記(7)式より、C=(10×10)/(10+10)=5となる。従って、双方向スイッチ1全体のCR積の値は、
C×R=5×101=505・・・(12)
になる。
【0031】
上記の(10)〜(12)式からも、Si−MOSFETであるMOSFET3のオン抵抗値を、ユニポーラ型化合物半導体装置であるMOSFET2のオン抵抗値以下にすることにより、双方向スイッチ1全体のCR積の値を小さくできることが分かる。
【0032】
上述したように、本実施形態の双方向スイッチ1によれば、2つのMOSFET2、3のうち、一方のMOSFET2に、化合物半導体で構成されたユニポーラ型化合物半導体装置を用い、他方のMOSFET3に、シリコンで構成されたSi−MOSFETを用いた。ここで、化合物半導体で構成されたユニポーラ型化合物半導体装置の中には、例えば炭化珪素(SiC)又は窒化ガリウム(GaN)で構成されたMOSFETのように、CR積の値が小さいものが多く存在する。従って、一方のMOSFET2にユニポーラ型化合物半導体装置を用いたことにより、両方のMOSFET2、3にSi−MOSFETを用いた場合に比べて、双方向スイッチ1全体のCR積の値を小さくできる蓋然性が高まる。これにより、現在の双方向スイッチに要求される小さなCR積の値を得ることができる可能性が高くなる。また、本実施形態の双方向スイッチ1によれば、一般にSiよりも製造コストの高い化合物半導体で構成されたユニポーラ型化合物半導体装置を2つ用いた場合に比べて、双方向スイッチ1全体の製造コストを抑えることが可能になる。
【0033】
次に、図2を参照して、本実施形態の双方向スイッチ1を用いた(備えた)半導体リレー装置10の回路構成の一例について説明する。半導体リレー装置10は、上記の双方向スイッチ1に加えて、入力端子11、12から入力される入力信号に基づいて発光する発光素子13(例えばLED)と、発光素子13からの光を受光して、光起電力を発生するフォトダイオードアレイ14とを備えている。また、半導体リレー装置10は、フォトダイオードアレイ14と接続された充放電回路15を備えている。
【0034】
充放電回路15は、デプレッション型のMOSFET16と、抵抗17と、エンハンスメント型のMOSFET18とを備えている。MOSFET16のドレインとゲートとは、それぞれフォトダイオードアレイ14の高電位側(アノード側)と低電位側(カソード側)とに接続されている。また、MOSFET18のドレインとソースとは、それぞれMOSFET16のソースとゲートとに接続されている。また、MOSFET18のドレインとゲートとは、直接接続され(短絡され)ている。
【0035】
上記の充放電回路15は、フォトダイオードアレイ14で発生する光起電力の有無に応じて、MOSFET2、3のゲートの充電と放電とを切り換えることにより、MOSFET2、3の開閉を行う。また、上記の外部出力端子7、8は、2つのMOSFET2、3のそれぞれのドレインと接続されており、請求項におけるリレー出力端子として機能する。双方向スイッチ1では、入力端子11、12から入力される入力信号に応答して2つのMOSFET2、3が同時に開閉される。これにより、外部出力端子7、8間の導通と遮断とが、切り換えられる。
【0036】
次に、上記の半導体リレー装置10において行われる、外部出力端子7、8間の導通と遮断との切り替え処理について詳細に説明する。入力端子11、12から信号が入力されると、この入力信号に基づいて、発光素子13が発光する。フォトダイオードアレイ14は、発光素子13からの光を受光すると、光起電力を発生する。これにより、電流が図中の矢印Aの方向に流れる。この時点では、デプレッション型で、ノーマル・オンのタイプのMOSFET16が導通状態のままであるので、フォトダイオードアレイ14から矢印Aの方向に流れた電流は、矢印Bの経路に流れる。これにより、抵抗17の両端に、図に示されるような電位差が生じる。
【0037】
そして、抵抗17における+側と−側の電位差が所定のレベル以上に達すると、エンハンスメント型のMOSFET18におけるゲート・ソース間の電位差、及びドレイン・ソース間の電位差が所定のレベル以上になって、MOSFET18がオフ(非導通状態)からオン(導通状態)に切り換わる。これにより、矢印Bの経路から流れてきた電流が、抵抗17を通らず、MOSFET18のドレイン・ソース間を流れるので、デプレッション型のMOSFET16のゲートが所定の電位になり、MOSFET16がオンからオフに切り換わる。このため、フォトダイオードアレイ14から矢印Aの方向に流れた電流は、矢印Bの経路に流れず、矢印Cの経路に流れるようになる。この電流により、2つのMOSFET2、3のゲートに電荷が蓄積されるので、MOSFET2、3のゲート・ソース間に電位差が発生して、MOSFET2、3は、オン(導通状態)(閉じた状態)になり、外部出力端子7、8間は導通され、リレーが閉じられる。
【0038】
これに対して、入力端子11、12から信号が遮断されて、発光素子13が発光しなくなると、フォトダイオードアレイ14において光起電力が生じなくなる。これにより、外部出力端子7、8間が導通した状態においては存在した、抵抗17における+側と−側の電位差(MOSFET18のドレイン・ソース間の電位差に相当)が無くなってしまうので、MOSFET18がオンからオフに切り換わる。このため、デプレッション型のMOSFET16のゲートに電圧がかからなくなるので、MOSFET16がオフからオンに切り換わる。これにより、2つのMOSFET2、3のゲートに蓄積されていた電荷が、矢印Bの経路を通って、MOSFET2、3のソース側に流れ、放電されるので、MOSFET2、3は、オフ(非導通状態)(開いた状態)になる。このため、外部出力端子7、8間は遮断されて、リレーが開放される。
【0039】
本半導体リレー装置10によれば、製造コストを抑えつつ、双方向スイッチ1の部分における2つのMOSFET2、3の両方にSi−MOSFETを用いた場合に比べて、双方向スイッチ1の部分におけるCR積の値を小さくできる蓋然性が高まる。
【0040】
なお、本発明は、上記実施形態の構成に限られず、発明の趣旨を変更しない範囲で種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、双方向スイッチ1の2つのMOSFET2、3の耐電圧値が実質的に同じである場合の例を示したが、双方向スイッチを構成する2つのMOSFETの耐電圧値は、必ずしも実質的に同じである必要はない。ただし、これらのMOSFETの耐電圧値には、大きな差がない方が好ましい。また、上記実施形態では、Si−MOSFETであるMOSFET3のオン抵抗値が、ユニポーラ型化合物半導体装置であるMOSFET2のオン抵抗値以下である場合の例を示した。しかしながら、双方向スイッチにおいて、Si−MOSFETのオン抵抗値は、必ずしもユニポーラ型化合物半導体装置のオン抵抗値以下である必要はなく、ユニポーラ型化合物半導体装置のオン抵抗値より多少大きくてもよい。
【符号の説明】
【0041】
1 双方向スイッチ(半導体装置)
2 MOSFET(ユニポーラ型化合物半導体装置)
3 MOSFET(Si−MOSFET)
7、8 外部出力端子(リレー出力端子)
10 半導体リレー装置
13 発光素子
14 フォトダイオードアレイ
15 充放電回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つのMOSFET(Metal−Oxide−Semiconductor Field−Effect Transistor)を備え、これらのMOSFETが、お互いのソース同士が接続されることにより、逆直列に接続された半導体装置において、
前記2つのMOSFETのうち、一方のMOSFETは、化合物半導体で構成されたユニポーラ型化合物半導体装置であり、他方のMOSFETは、シリコンで構成されたSi−MOSFETであることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記化合物半導体は、炭化珪素(SiC)又は窒化ガリウム(GaN)であることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記2つのMOSFETは、耐電圧値が実質的に同じであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記Si−MOSFETのオン抵抗値は、前記ユニポーラ型化合物半導体装置のオン抵抗値以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項3の少なくともいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記請求項1乃至4の少なくともいずれか一項に記載の半導体装置と、
入力信号に基づいて発光する発光素子と、
前記発光素子からの光を受光して、光起電力を発生するフォトダイオードアレイと、
前記フォトダイオードアレイと接続されて、前記フォトダイオードアレイで発生する光起電力の有無に応じて、前記2つのMOSFETのゲートの充電と放電とを切り換えることにより、前記2つのMOSFETの開閉を行う充放電回路と、
前記2つのMOSFETのそれぞれのドレインと接続された2つのリレー出力端子とを備え、
前記入力信号に応答して前記2つのMOSFETを同時に開閉することにより、前記2つのリレー出力端子間の導通と遮断とを切り換えることを特徴とする半導体リレー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−12981(P2013−12981A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−145311(P2011−145311)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】