説明

半導体装置用接着剤組成物および半導体装置用接着シート

【課題】 従来の接着剤が有する問題である温度変化が繰り返されることによる層間剥離の問題を解決し、反りや埋め込み等の不良を解決することを目的とする。すなわち応力緩和性、耐熱温度サイクル性に優れ電気的信頼性と、銅やポリイミド等と優れた接着性の半導体装置用接着剤組成物および半導体装置用接着シートを提供することにある。
【解決手段】 (A)エポキシ樹脂、(B)フェノール樹脂、(C)エポキシ樹脂またはエポキシ硬化剤と反応し得る官能基を有する不飽和カルボン酸誘導体及びエチレンを含有するビニル共重合体及び(D)シロキサン化合物を含有する半導体装置用接着剤組成物及びそれを用いた接着シート、前記(A)エポキシ樹脂と(B)フェノール樹脂の比率が官能基当量比で1:0.6〜1:1.4であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種の半導体を用いてなる半導体装置、特に、IC絶縁体層および導体回路から構成されるIC用基板にICチップを積層した構造を有する半導体装置、面実装型の半導体装置、ビルトアップ基板等に好適な接着剤組成物および接着シートに関するもので、中でもICチップを接着するため、または放熱板を接着するため、もしくはIC用基板をより高密度に積層するため、具体的にはICチップと回路基板、回路基板をより高密度に積層するための絶縁層同士、回路形成済みのFPC同士、FPCと回路基板、回路基板と保護フィルム、ICチップと放熱板、放熱板と回路基板等を接着するための接着剤組成物および接着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、ノートPC等の電子機器の小型・軽量化、高速・高機能化に伴い、ICチップも高集積・高速化し、実装技術もQFP(リードがパッケージの4辺に設けられたタイプ)から、BGA、CPS、MCM等の新たな実装形態へと発展してきた。それに伴い、ICチップを搭載する側もリードフレームからテープ基板、プリント基板と微細化、高密度化が可能な構造に変化している。特に、配線を積層する方式であるビルトアップ基板の役割が重要になってきている。
ところで、IC用基板を構成する絶縁体層には、通常、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、フェノ−ル樹脂などを用いた基板材料が使われている。ICパッケージの温度は駆動時にはICの発熱で100℃以上になるので、ICパッケージは室温〜高温(100℃以上)の温度変化に曝される。したがって、ICパッケージにはその場合に発生する応力の変化に耐えれる耐熱性、高温での耐湿度性、応力緩和性が求められている
特に近年、実装密度が上がり導体部の金属の配線が占める割合が多くなり異なる熱膨張率同士を貼り合わせする為、その場合の応力にも耐える必要性がある。しかしながら、前記材料の特性では長時間の温度変化に対する耐性、高温高温度下での耐性は十分なものではなかった。
【0003】
具体的には、室温〜高温(100℃以上)の温度変化が繰り返されると生じる応力によって、上記IC用基板を構成する絶縁体層とICチップもしくは積層基板の内部で接着剤層に起因する層間剥離を引き起こすことがあった。また実装密度を上げる方法として絶縁体層を積層して立体的に配線パタ−ンを形成する方法もありこの場合も同様の問題を抱えている。この積層型の高密度実装方法では積層する基材にガラスエポキシ基板の他には薄型にする目的でTAB基板、フレキシブル基板等を使用する場合が多くなってきたが、その多くがポリイミド樹脂等の材料である。
【0004】
一般的にポリイミド樹脂等は非常に接着しにくい。その為、それを積層する際には吸湿、界面の状態等が非常に影響する為、低吸湿性で優れた接着力の接着剤組成物が求められていた。また、この積層型の高密度実装方法は積層する場合配線パターンを埋め込む必要性もある。そのため埋め込む為のフロ−性と貼り合わせ時の発泡が起きない接着剤組成物が求められていた。
さらに近年、鉛フリー化によりIRリフロー温度が高くなると、接着剤に含まれる水分がリフロー時に気化する際に接着剤を押しのけ、膨れが生じるポップコーン現象と呼ばれる水蒸気爆発が発生しやすくなった。そこで、このポップコーン現象の原因となる水分を除去するため、リフロー前の半製品を防湿状態にして管理していた。しかし、防湿状態での管理には多大な作業とコストがかかるため、防湿状態の管理を必要とすることなくポップコーン現象の起きない接着剤組成物が求められていた。さらには、導体部分に使用する必要もあるため電気的な信頼性も必要となる。
このような接着剤組成物の要求に対して、エポキシ化スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体からなるジオレフィン系の樹脂を用いることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、このようなジオレフィン系の樹脂を用いた接着剤組成物では長期間熱にさらされると劣化し絶縁性が低下するという問題を有していた。
【0005】
【特許文献1】特開2002−241728号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は前記課題を解決するためになされたもので、BGA、CSP、MCM等の新たな実装形態の半導体装置に使用され、従来の接着剤が有する問題である温度変化が繰り返されることによる絶縁体層と接着剤層、ICチップと接着剤層との間で生じる層間剥離の問題を解決し、反りや埋め込み等の不良を解決することを目的とする。すなわち応力緩和性、耐熱温度サイクル性に優れ電気的信頼性と、銅やポリイミドフィルム等との間で優れた接着性を有する半導体装置用接着剤組成物および半導体装置用接着シートを提供することにある。
更には、従来の接着剤が有する問題である、接着剤に含まれる水分がリフロー時に気化することによって発生するポップコーン現象を改善し、耐湿度性に優れた半導体装置用接着剤組成物および半導体装置用接着シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の半導体装置用接着剤組成物(以下、接着剤組成物と称す)は、(A)エポキシ樹脂、(B)フェノール樹脂、(C)エポキシ樹脂またはエポキシ硬化剤と反応し得る官能基を有する不飽和カルボン酸誘導体及びエチレンを含有するビニル共重合体及び(D)シロキサン化合物を含有することを特徴とする。また、前記(A)エポキシ樹脂と(B)フェノール樹脂の比率が官能基当量比で1:0.6〜1:1.4であることが好ましい。
また、前記ビニル共重合体の含有量が、接着剤組成物の全固形量の20〜80重量%であることが好ましく、ビニル共重合体中の不飽和カルボン酸誘導体の含有率が0.1〜40重量%であることが好ましい。また、前記ビニル共重合体の官能基当量が100〜2500であることが好ましい。
【0008】
また、(D)シロキサン化合物が一般式(1)又は一般式(2)で示される両末端にアミノ基を有するシロキサン化合物であることが好ましい。
【化1】

(式中のR1は、炭素数1〜10のアルキレン基を表し、m及びnは0〜10の整数を示す)
本発明の半導体装置用接着シート(以下、接着シートと称す)は、支持体の少なくとも一面に、前記記載の接着剤組成物が積層してなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、従来の接着剤が有する問題である温度変化が繰り返されることによる絶縁体層と接着剤層、ICチップと接着剤層との間で生じる層間剥離の問題を解決し、反りや埋め込み等の不良を解決することができる。すなわち応力緩和性、耐熱温度サイクル性に優れ電気的信頼性と、銅やポリイミドフィルム等との間で優れた接着性を有する接着剤組成物および接着シートを提供することができる。また、接着剤に含まれる水分がリフロー時に気化することによって発生するポップコーン現象を改善し、耐湿度性に優れた接着剤組成物および接着シートを提供するができる。更に電気特性、接着力に優れ、耐PCT性、耐リフロー性、加工性に優れた接着剤シートを工業的に提供することができ、本発明の接着剤組成物によって半導体装置の信頼性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の接着剤組成物は、(A)エポキシ樹脂、(B)フェノール樹脂、(C)エポキシ樹脂またはエポキシ硬化剤と反応し得る官能基を有する不飽和カルボン酸誘導体及びエチレンを含有するビニル共重合体及び(D)シロキサン化合物を必須成分として含有する硬化型接着剤組成物である。
本発明の接着剤組成物に用いる成分についてそれぞれ説明する。
【0011】
[(A)エポキシ樹脂]
エポキシ樹脂は分子内に2個以上のオキシシラン環を有している樹脂、例えば、グリシジルエーテル、グリシジルエステル、グリシジルアミン、線状脂肪族エポキサイト、脂環族エポキサイトなどいずれの構造でもよく、単独でも2種以上を併用することもできる。
具体的には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂などの二官能エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート型エポキシ樹脂、トリグリシジル−p−アミノフェノ−ル型エポキシ樹脂、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラグリシジルメタキシレンジアミン型エポキシ樹脂、テトラグリシジル−1,3−ビスアミノメチルシクロフェキサン型エポキシ樹脂などの多官能グリシジルアミン型エポキシ樹脂、テトラフェニルグリシジルエテルエタン型エポキシ樹脂、トリフェニルグリシジルエテルメタン型エポキシ樹脂などの多官能グリシジルエテル型エポキシ樹脂、フェノール型エポキシ樹脂、アルキルフェノール型エポキシ樹脂などの多官能レゾール型エポキシ樹脂、シクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェノール型エポキシ樹脂、クレゾール型エポキシ樹脂などの多官能ノボラック型エポキシ樹脂などが挙げられる。
これらの中でも特にビスフェノール型エポキシ樹脂が安価であるため、また、多官能エポキシ樹脂は絶縁性および耐熱性に優れるため好適に用いられる。
【0012】
これらのエポキシ樹脂のエポキシ当量は100〜4000が好ましく、より好ましくは100〜2000、特に好ましくは100〜1000のエポキシ当量のものである。エポキシ当量が100未満では、未硬化分が残りやすく発泡の原因となりやすい。エポキシ当量が4000を超えて大きいと、溶媒に溶けにくくなり、他の樹脂との相溶性が悪くなりやすい。
本発明に好適に用いられるエポキシ樹脂は具体的には、油化シェルエポキシ社製:商品名;エピコート806、828、834、1001などのビスフェノール型、YX−4000、YX−4000H(ビフェニル型)などの2官能エポキシ樹脂、エピコート152、154、180S65、1032H60、157S70(多官能ノボラック型)、604(テトラグリシジルジフェニルメタン型)、HP−7200、HP−7200H(ジシクロ型)などの多官能エポキシ樹脂、日本化薬社製:商品名;EOCNI02S、103S、104S、1020(o−クレゾールノボラック型)、EPPN501H、502H(トリフェニルメタン型)などの多官能エポキシ樹脂を挙げることができる。難燃性を付与するためにハロゲン化エポキシ、特に臭素化エポキシを用いることは有効な手段である。臭素化エポキシの具体例としては、油化シェルエポキシ社製:商品名;エピコート5045、5046、5050、日本化薬社製:商品名;BREN−S、BREN−105、BREN−301などが挙げられる。又、リン化エポキシ等を使用しても何ら問題はない。
なお、エポキシ樹脂の含有量は、樹脂固形物全量に対して、3〜40重量%、好ましくは5〜25重量%である。
【0013】
また、本発明の接着剤組成物の硬化反応を促進させるためには、イミダゾール類、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン等アミン系触媒、トリフェニルホスフィン等リン系触媒等のエポキシ硬化剤を含有させることが好ましい。
【0014】
[(B)フェノール樹脂]
フェノール樹脂はエポキシ樹脂と反応して3次元網状構造を形成する。
具体的にはレゾールフェノール樹脂、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、レゾールシノール樹脂、キシレン樹脂などのフェノール誘導体、中でもフェノールノボラック樹脂は、反応性に優れ、半導体装置用途においても耐湿耐熱性に優れるため好ましい。また、前記エポキシ樹脂とフェノール樹脂の比率は官能基当量比で1:0.6〜1:1.4の比率、好ましくは1:0.7〜1:1.1の比率で使用する。エポキシ樹脂とフェノール樹脂の比率は官能基当量比で1:0.6よりフェノール樹脂の比率が小さいと硬化物が脆くなりやすい。1:1.4よりフェノール樹脂の比率が大きいと接着力が低下しやすい。
【0015】
[(C)エポキシ樹脂またはエポキシ硬化剤と反応し得る官能基を有する不飽和カルボン酸誘導体及びエチレンを含有するビニル共重合体]
本発明を構成するビニル共重合体は、少なくともエチレンと、前記エポキシ樹脂又はエポキシ硬化剤と反応し得る官能基を有する不飽和カルボン酸誘導体とを主要モノマー成分として含むものであって、その他に例えば、下記で述べる第3のモノマーを少量含んでいてもよい。上記エポキシ樹脂又はエポキシ硬化剤と反応し得る官能基としては、アミノ基、イソシアネート基、グリシジル基、カルボキシル基(無水物基を含む)、シラノール基、水酸基、ビニル基、メチロール基、メルカプト基、エステル基等があげられ、中でもアミノ基、カルボキシル基、グリシジル基、水酸基は、反応性に富むため好ましい。特に好ましい官能基はグリシジル基及びカルボキシル基である。これらの基を有する不飽和カルボン酸誘導体の具体例としては、例えば次のものが例示される。カルボキシル基を有するものとしては、アクリル酸、メタクリル酸、(無水)マレイン酸、カルボキシル基を有するプロピレン等のオレフィン類が挙げられ、グリシジル基を有するものとしては、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等が挙げられ、水酸基を含むものとしては、ヒドロキシメチルアクリレート、ヒドロキシメチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート等が挙げられる。また、上記エチレン及び官能基を有する不飽和カルボン酸誘導体と共重合可能な第3のモノマーとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等の(メタ)アクリル酸アルキル又はアリールエステル、酢酸ビニル等が挙げられる。
【0016】
上記ビニル共重合体中の不飽和カルボン酸誘導体の含有率は、0.1〜40重量%が好ましく、さらに好ましくは、0.8〜20重量%である。上記不飽和カルボン酸誘導体成分の共重合体内における含有率が0.1重量%未満であると、成分(A)または(B)との反応性が低く、有機溶剤への溶解度も低くなり、また、含有率が40重量%を超えると、塗料状態での安定性が悪くなりやすい。また、第3のモノマー成分が存在する場合、その含有量は、40重量%以下、さらに好ましくは30重量%以下である。
【0017】
本発明において、上記ビニル共重合体の好ましいものとしては、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸アルキルエステル−グリシジル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン−グリシジル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−グリシジル(メタ)アクリレート−酢酸ビニル共重合体が挙げられる。中でも、エチレン−(メタ)アクリル酸アルキルエステル−無水マレイン酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸アルキルエステル−グリシジル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン−グリシジル(メタ)アクリレート共重合体が好ましい。また、本発明の接着剤組成物には、上記ビニル共重合体を2種以上併用して用いることも好ましい。
【0018】
ビニル共重合体は、接着剤組成物に可とう性を付与する目的で加えられ、上記のようにエチレン−(メタ)アクリル酸エステルを含むものが望ましい。エチレン−(メタ)アクリル酸エステルを含む共重合体は、主鎖にジエン結合を含まないため、高温放置時の熱劣化(弾性が無くなってしまう)が殆ど無く、長期にわたって応力緩和性を保持できる。また、エステル結合を側鎖に有しているため、比較的有機溶剤への溶解性が高く、かつ、加水分解しにくいため高温高湿環境下において接着剤組成物に接着させた電極の腐食が抑えられ、電気的信頼性が高い。この場合のアクリル酸エステルのモノマー比率としては5〜40モル%が好ましい。5モル%未満であると有機溶剤への溶解度が極端に低下し、塗工用溶液(塗料)には不向きであり、また40モル%を超える場合は、加水分解による電気特性の低下を招いてしまう。ビニル共重合体の重量平均分子量は1000〜2000000、好ましくは100000〜1000000である。なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)にて、スチレンを標準として測定した値である。前記ビニル共重合体の官能基当量は100〜2500であることが好ましい。
【0019】
本発明において、上記ビニル共重合体は、引張破断伸びが500%以上を有することが好ましい。さらに好ましくは700%以上である。本発明において、引張破断伸びとは、厚さ2mmのものについてJIS K6760に準拠して測定した値を意味する。引張破断伸びが500%未満であると、フィルム形成性に劣り、樹脂の硬化後における接着剤組成物層の可とう性も低くなる。また、上記ビニル共重合体は、有機溶剤に対する溶解度が5%以上であることが好ましく、より好ましくは10%以上、更に好ましくは60%以上である。溶解度が5%未満の場合は製膜時の厚さが極端に薄くなりやすい。なお、溶解度は、トルエン溶液100gに試料100gを加え、80℃で12時間撹拌して溶解した後、室温まで冷却し、次いで溶液をナイロン製600メッシュのフィルターで濾過して不溶残分の量(x)gを求めて、下記式にて求めることができる。
溶解度(%)=[(100g−(x)g)/100g]×100
【0020】
本発明において、上記ビニル共重合体は、エポキシ樹脂及びエポキシ硬化剤の総和100重量部に対して、20〜200重量部、好ましくは50〜150重量部の範囲で含有されることが好ましい。含有量が200重量部よりも多くなると、製膜性が悪化しやすい。また、20重量部よりも少なくなると、膜が脆くなりやすい。
【0021】
[(D)シロキサン化合物]
シロキサン化合物は反応基を有しているものが好ましく、反応基には水酸基、アルコキシ基、アミノ基、メタクリル基、エポキシ基等がある。さらに好ましくは、下記一般式(1)又は一般式(2)で示される両末端にアミノ基を有するシロキサン化合物である。また、下記一般式(1)と一般式(2)で示される両末端にアミノ基を有するシロキサン化合物の両者を含むシロキサン化合物でもよい。
【0022】
【化2】

(式中のR1は、炭素数1〜10のアルキレン基を表し、m及びnは0〜10の整数を示す。)
上記一般式(1)又は一般式(2)で示される両末端にアミノ基を有するシロキサン化合物としては、東芝シリコ−ン社製の商品名:TSL9306(ジアミノジシロキサン)、商品名:TSL9886(ジアミノポリシロキサン)、商品名:TSF4706(ジアミノジシロキサン)、商品名:XF42−A2645(ジアミノポリシロキサン)等を挙げることができる。
【0023】
上記シロキサン化合物の接着剤組成物中の比率は、全固形量の0.05〜10重量%、好ましくは0.3〜5重量%である。0.3重量%未満では、塗料としての相溶性や硬化後の吸湿率等が良くなく、10重量%を越えて大きいと常態に於ける接着力の低下が顕著となりやすい。
【0024】
本発明の接着剤組成物において、上記成分(A)、(B)、(C)及び所望によって添加されるエポキシ硬化剤の好ましい含有割合は、成分(A)が3〜40重量%、成分(B)が0.5〜50重量%、成分(C)が30〜80重量%、エポキシ硬化剤が0〜10重量%の範囲のものである。
【0025】
また、本発明の接着剤組成物には、熱膨張係数、熱伝導率の調整或いは作業性の制御等の目的で、無機又は有機フィラーを含有させることが好ましい。無機フィラーとしては、シリカ、アルミナ、酸化チタン、酸化ベリリウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、窒化チタン、窒化珪素、窒化硼素、硼化チタン、硼化タングステン、炭化珪素、炭化チタン、炭化ジルコニウム、炭化モリブデン、マイカ、クレイ、酸化亜鉛、カーボンブラック、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、三酸化アンチモン又はこれ等の表面をトリメチルシロキシル基等で処理したもの等があげられ、有機フィラーとしては、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリエステルイミド、ナイロン、シリコーン等があげられる。上記フィラーの含有量は、前記成分(A)、(B)、(C)及び(D)の総和100重量部に対して、2〜95重量部、好ましくは5〜50重量部の範囲である。
【0026】
また、本発明の接着剤組成物には、被着体との密着性を向上させるために、カップリング剤を添加することが好ましい。カップリング剤としては、シランカップリング剤、チタンカップリング剤及びアルミニウムカップリング剤が好ましく使用される。
【0027】
上記必須成分(A)〜(D)及びその他の添加剤は、有機溶剤に溶解して接着剤溶液の形態で使用される。好ましく使用される有機溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ピリジン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、キシレン、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、エタノール、メタノール、メチルセロソルブ等いくつかの種類と量を適宜選択して使用するこのができる。またこれらの溶媒を用いて、少なくとも固形分を5%以上で調整する。好ましくは5%以上が良い。固形分が10%未満であると、均一な接着シートの作製が難しくなる。
【0028】
本発明の接着シートは、支持体の少なくとも一面に上記接着剤組成物よりなる層が積層された構成を有するものであって、上記接着剤溶液を支持体の少なくとも一面に塗布乾燥することによって作製される。支持体としては、銅やアルミニウム等の金属からなる金属層、剥離性フィルム、絶縁性フィルム、剥離紙等が使用でき、特に、金属層、剥離性フィルム及び絶縁性フィルムが好ましく使用される。
【0029】
剥離性フィルム及び絶縁性フィルムに用いられるフィルム材質としては、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略す。)等のポリエステル類、ポリエチレン等のポリオレフィン類、ポリイミド、ポリアミド、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルケトン、トリアセチルセルロース等が好ましいものとして挙げられ、さらに好ましくは、ポリエステル類、ポリオレフィン類及びポリイミドがあげられる。剥離性フィルムとしては、これらのフィルム材質よりなるフィルムに、シリコーン等の離型剤で剥離処理を施したものが好ましく使用される。
【0030】
これらのフィルムの片面または両面に、前記接着剤組成物を有機溶媒に溶解してなる接着剤溶液を塗布し、乾燥して接着剤層を形成し、好ましくはこの接着剤層を半硬化状態とする。
特に加工使用条件、例えば硬化時間の短縮、導体パターンの埋め込み等でフロー性や発泡を押さえる為、半硬化状態を適宜コントロールする。半硬化状態のコントロール方法は限定しないが、エージング等でコントロールすることが好ましい。
接着剤層の乾燥後の厚さは、3〜400μm、好ましくは5〜100μmである。
接着剤層を形成したフィルムの保管時には、必要に応じて剥離性フィルムを貼着し、使用時には剥がして用いる。また、接着剤を単層で使用する場合は支持体を剥離性フィルムとすることが望ましく、支持体側も剥がして用いる。
本発明の接着シートとしては、金属層の少なくとも一面に、前記接着剤組成物と絶縁性フィルムまたは剥離性フィルムが順次積層してなるものや、絶縁性フィルムの両面に、前記接着剤組成物と絶縁性フィルムまたは剥離性フィルムが順次積層してなるものを挙げることができる。
【0031】
本発明の接着剤組成物および接着シートは、種々の電子部品において適用できるが、絶縁体層および導体回路を具備して構成されるIC用基板の回路面またはその裏面にICチップを積層した半導体に特に好適である。具体的には、TAB技術を利用したT−BGA、FPCやガラスエポキシ基板を用いたビルドアップ基板または面実装型のCSP半導体などがある。具体的には、上記半導体装置において、そのICチップとIC用基板の絶縁体層および/または導体回路とを接着もしくは回路を形成する接着剤、回路基板同士の接着そしてそれを保護する保護フィルムとの接着剤として好適である。
【実施例】
【0032】
以下、本発明を実施例に基づいてより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[接着剤組成物の塗料の調製]
(A)エポキシ樹脂、(B)フェノール樹脂、(C)エポキシ樹脂またはエポキシ硬化剤と反応し得る官能基を有する不飽和カルボン酸誘導体及びエチレンを含有するビニル共重合体、(D)シロキサン化合物、シランカップリング剤、エポキシ硬化剤及びその他の化合物をトルエンにそれぞれ表1に示す重量%(固形分)となるように常温〜80℃程度で溶解して溶液を作製し、該溶液を固形分率35重量%になるように含有して本発明の接着剤組成物及び比較用の接着剤組成物の塗料を得た。なお、表1に示した実施例1〜24及び比較例1〜7における各化合物は表2に示したのものを使用した。また、フィラーの含有量は、成分(A)、(B)、(C)及び(D)の総和100重量部に対する部数である。
【0033】
【表1】

【0034】
【表2】

【0035】
次に前記接着剤組成物を用いて下記の特性評価を行った。
[相容性]
上記実施例1〜24および比較例1〜7の接着剤組成物の塗料を、乾燥後の厚さが25μmとなるように、剥離処理を施した厚さ38μmのポリエステルフィルム上に塗布し、熱風循環型乾燥機中にて130℃で5分間乾燥した後、剥離処理を施した厚さ50μmのポリエチレンフィルムを貼り合わせた。その後乾燥した接着剤組成物を顕微鏡により、(A)エポキシ樹脂、(B)フェノール樹脂及び(C)ビニル共重合体の相容状態を確認し、班模様や縞模様等の分離がみられたものを相容性が悪いと判断してその結果を表3に示した。相容性が良好なものを○、悪いものを×とした。表3から明らかなように実施例1〜24に基づく本発明の接着剤組成物では相容状態が良好であった。これに対して比較例4、比較例7のものでは相容状態が悪かった。
【0036】
[接着力]
[ポリイミドフィルムとの接着力(PI接着力)]
実施例1〜24および比較例1〜7の接着剤組成物の塗料を、乾燥後の厚さが25μmとなるように、剥離処理を施した厚さ38μmのポリエステルフィルム上に塗布し、熱風循環型乾燥機中にて130℃で5分間乾燥して接着剤層を形成した後、該接着剤層の表面に剥離処理を施した厚さ50μmのポリエチレンフィルムを貼り合わせ接着シートを作製した。
その後、ポリエチレンフィルムを剥離しながら、この接着シートを厚さ50μmのポリイミドフィルム(商品名:ユーピレックス50S、宇部興産社製)に熱圧着した。
次いで、ポリエステルフィルムを剥がして、厚さ50μmのポリイミドフィルム(商品名:ユーピレックス50S、宇部興産社製)に熱圧着し、さらに150℃で1時間加熱して接着剤層を硬化させ、接着力評価用ポリイミドフィルムを作製し初期の接着力を測定した。
また同様の評価用試料を使い恒温恒湿試験後の接着力を測定した。
恒温恒湿試験は恒温恒湿槽を用いて、以下に示す条件で行った。温度:121℃、湿度:100%RH、時間:300時間。接着力測定方法は、ポリイミドフィルム面を台に固定して、別のポリイミドフィルムの端をテンシロン(島津製作所社製)により180°方向に引き剥がして測定し、その結果を表3に示した。
表3から明らかなように実施例1〜24に基づく本発明の接着シートでは、初期及び恒温恒湿試験後の接着力が2.2(N/cm)以上あり十分な接着力を有していた。これに対して比較例1〜7のものでは、恒温恒湿試験後の接着力が0であり、半導体装置用としては使用に耐えうるものではなかった。
【0037】
[銅箔との接着力(Cu接着力)]
実施例1〜24および比較例1〜7の接着剤組成物の塗料を、乾燥後の厚さが25μmとなるように、剥離処理を施した厚さ38μmのポリエステルフィルム上に塗布し、熱風循環型乾燥機中にて130℃で5分間乾燥して接着剤層を形成した後、該接着剤層の表面に剥離処理を施した厚さ50μmのポリエチレンフィルムを貼り合わせて接着シートを作製した。
その後、ポリエチレンフィルムを剥離しながら、この接着シートを厚さ18μmの銅箔(商品名:JTC−A、ジャパンエナジー社製)に熱圧着した。
次いで、ポリエステルフィルムを剥がして、厚さ18μmの銅箔(商品名:JTC−A、ジャパンエナジー社製)に熱圧着し、さらに150℃で1時間加熱して接着剤層を硬化させ、接着力評価用銅箔試料を作製し初期の接着力を測定した。
また同様の評価用試料を使い恒温恒湿試験後の接着力を測定した。
恒温恒湿試験は恒温恒湿槽を用いて、以下に示す条件で行った。温度:121℃、湿度:100%RH、時間:300時間。接着力測定方法は、銅箔面を台に固定して、別の銅箔の端をテンシロン(島津製作所社製)により180°方向に引き剥がして測定し、その結果を表3に示した。
表3から明らかなように実施例1〜24に基づく本発明の接着シートでは、初期及び恒温恒湿試験後の接着力が2.6(N/cm)以上あり十分な接着力を有していた。これに対して比較例1〜3、比較例5及び比較例7のものでは、恒温恒湿試験後の接着力が2(N/cm)未満であり半導体装置用としては使用に耐えうるものではなかった。
【0038】
[耐リフロー性]
実施例1〜24および比較例1〜7の接着剤組成物の塗料を、乾燥後の厚さが25μmとなるように、剥離処理を施した厚さ38μmのポリエステルフィルム上に塗布し、熱風循環型乾燥機中にて130℃で5分間乾燥して接着シートを作製した後、剥離処理を施した厚さ50μmのポリエチレンフィルムを貼り合わせた。
その後、ポリエチレンフィルムを剥離しながら、この接着シートを厚さ200μm、大きさ2.5cm×2.5cmの銅部分をエッチングしたガラスエポキシ基板(商品名;CCL−EL170、三菱瓦斯化学社製)に熱圧着した。
次いで、ポリエステルフィルムを剥がして、0.9cm×0.7cmのガラスチップを、140℃で3分間、0.1MPaの圧力で熱圧着し、90℃で1時間、さらに150℃で2時間加熱して接着剤層を硬化させ、各実施例及び比較例共に5個の耐リフロー性評価試料を得た。
この評価試料を、恒温恒湿槽中に85℃、85%RHの条件で48時間曝露し、その後260℃に設定されたIRリフロー炉を通過させ、層間剥離、発泡の有無を観察して、結果を表3に示した。表3には5個の試料の中で層間剥離及び発泡が無く良好なものの数(良好の個数/5個)を記した。
表3から明らかなように実施例1〜24に基づく本発明の接着シートでは、層間剥離及び発泡が無く5個全てが良好であった。これに対して比較例1〜7の接着シートでは、層間剥離又は発泡のいずれかが生じて5個全てが良好なものはなかった。
【0039】
[耐温度サイクル性(TCT性)]
上記実施例1〜24および比較例1〜7の接着剤組成物の塗料を、乾燥後の厚さが50μmとなるように、剥離処理を施した厚さ38μmのポリエステルフィルム上に塗布し、熱風循環型乾燥機中にて130℃で5分間乾燥して接着シートを作製した後、剥離処理を施した厚さ50μmのポリエチレンフィルムを貼り合わせた。
その後、ポリエチレンフィルムを剥離しながら、この接着シートを厚さ200μm、大きさ2.5cm×2.5cmの銅部分をエッチングしたガラスエポキシ基板(商品名:CCL−EL170、三菱瓦斯化学社製)に熱圧着した。
次いで、ポリエステルフィルムを剥がして、0.9cm×0.7cmのガラスチップを、140℃で3分間、0.1MPaの圧力で熱圧着し、90℃で1時間、さらに150℃で1時間加熱して接着剤層を硬化させ、各実施例及び比較例共に5個の耐温度サイクル性評価試料を得た。
この評価試料を用いて、−65℃〜150℃の温度サイクル試験を行った。
但し、この場合、150℃および−65℃ではそれぞれ30分間の温度履歴を必須とし、[高温−低温]を1サイクルとして、1000サイクルの条件で実施した。
温度サイクル試験実施後、層間剥離、発泡の有無を観察し結果を表3に示した。表3には5個の試料の中で層間剥離及び発泡が無く良好なものの数(良好の個数/5個)を記した。
表3から明らかなように実施例1〜24に基づく本発明の接着シートでは、層間剥離及び発泡が無く5個全てが良好であった。これに対して比較例1〜7の接着シートでは、層間剥離又は発泡のいずれかが生じて5個全てが良好なものはなかった。
【0040】
[吸湿率]
上記実施例1〜24および比較例1〜7の接着剤組成物の塗料を、乾燥後の厚さが60μmとなるように、剥離処理を施した厚さ38μmのポリエステルフィルム上に塗布し、熱風循環型乾燥機中にて130℃で5分間乾燥して接着剤層を形成し接着シートを作製した後、剥離処理を施した厚さ50μmのポリエチレンフィルムを貼り合わせた。
その後、ポリエチレンフィルムとポリエステルフィルムを剥がして、さらに150℃で1時間加熱して接着剤層を硬化させ、5cm×5cmの吸湿率評価用試料を作製し吸湿率を測定した。吸湿条件は恒温恒湿槽を用いて、以下に示す条件で行った。温度:121℃、湿度:100%RH、時間:24時間。その後下記式により吸湿率を算出し結果を表3に示した。
吸湿率(%)=(吸湿後の試料重量−吸湿前の試料重量)/吸湿前の試料重量×100
表3から明らかなように実施例1〜24に基づく本発明の接着シートでは、吸湿率が0.7%以下であって実用上問題の無い結果であった。これに対して比較例1、3、5及び6では吸湿率が1.3%以上あり半導体装置用として実用上問題のある結果であった。
【0041】
[伸び率]
上記実施例1〜24および比較例1〜7の接着剤組成物の塗料を、乾燥後の厚さが60μmとなるように、剥離処理を施した厚さ38μmのポリエステルフィルム上に塗布し、熱風循環型乾燥機中にて130℃で5分間乾燥して接着剤層を形成し接着シートを作製した後、剥離処理を施した厚さ50μmのポリエチレンフィルムを貼り合わせた。
その後、ポリエチレンフィルムとポリエステルフィルムを剥がして、さらに160℃で1時間加熱して接着剤層を硬化させ、1cm×12cmの伸び率評価用試料を作製し伸び率を評価した。
伸び率の測定方法はテンシロン(島津製作所社製)により測定して下記式により伸び率を算出し結果を表3に示した。
伸び率(%)=(引張り後の試料長さ−引張り前の試料の長さ)/引張り前の試料の長さ×100
表3から明らかなように実施例1〜24に基づく本発明の接着シートでは、伸び率が130%以上であって応力緩和性に優れていることが確認された。これに対して比較例1〜3、5及び7では伸び率が100%未満であり応力緩和性に劣ることが確認された。
【0042】
[反り]
上記実施例1〜24および比較例1〜7の接着剤組成物の塗料を、乾燥後の厚さが60μmとなるように、剥離処理を施した厚さ38μmのポリエステルフィルム上に塗布し、熱風循環型乾燥機中にて130℃で5分間乾燥して接着剤層を形成し接着シートを作製した後、剥離処理を施した厚さ50μmのポリエチレンフィルムを貼り合わせた。
その後、ポリエチレンフィルムとポリエステルフィルムを剥離しながら厚さ75μmのポリイミドフィルム(商品名:ユーピレックス75S、宇部興産社製)を接着剤層の両面に熱圧着した。それを70mm幅に裁断した後、160℃で1時間加熱して接着剤層を硬化させ、ポリイミドフィルム積層体を作製した。硬化したポリイミドフィルム積層体を70mm×5mmに裁断して、反り特性評価試料とした。この評価試料を、水平台に凸状態になるように置き、デジタル測定顕微鏡(商品名:STM−UM オリンパス社製)で凸部の高さを測定した。その結果を表3に示す。
表3から明らかなように実施例1〜24に基づく本発明の接着シートでは、反りが1.5mm以下であって実用上問題の無い結果であった。これに対して比較例2、3及び7では反りが3mm以上あり半導体装置用としては実用上問題のある結果であった。なお、比較例1及び5については、試料が巻きついて反りの測定が不可能であった。
【0043】
[発泡及び埋め込み性]
上記実施例1〜24および比較例1〜7の接着剤組成物の塗料を、乾燥後の厚さが25μmとなるように、剥離処理を施した厚さ38μmのポリエステルフィルム上に塗布し、熱風循環型乾燥機中にて130℃で5分間乾燥して接着剤層を形成した後、剥離処理を施した厚さ50μmのポリエチレンフィルムを貼り合わせ接着シートを作製した。
またフレキシブル基板(商品名:エスパネックス、新日鐵化学社製)にフォトレジスト膜を熱圧着、エッチング、レジスト膜剥離を経て、導体/導体間距離25μm/25μmの梯子型回路を作製し、その回路上にポリエチレンフィルムを剥離しながら、この接着シートを熱圧着した。次いで、ポリエステルフィルムを剥がして160℃で1時間加熱して接着剤層を硬化させ、発泡及び埋め込み性評価試料とした。
その後顕微鏡により発泡及び埋め込み性状態を判定して結果を表3に示した。発泡に関しては、発泡が無いものを○、発泡が生じたものを×とした。また、埋め込み性に関しては、回路に十分充填できたものを○、できないものを×とした。
表3から明らかなように実施例1〜24に基づく本発明の接着シートでは、発泡が生じなく、回路への充填も良好で埋め込み性についても何等問題がなかった、これに対して比較例1、4〜6では発泡又は埋め込み性が悪く半導体装置用としては実用上問題のある結果であった。
【0044】
[電気特性]
上記実施例1〜24および比較例1〜7の接着剤組成物の塗料を、乾燥後の厚さが25μmとなるように、剥離処理を施した厚さ38μmのポリエステルフィルム上に塗布し、熱風循環型乾燥機中にて130℃で5分間乾燥して接着剤層を形成した後、剥離処理を施した厚さ50μmのポリエチレンフィルムを貼り合わせ接着シートを作製した。
またフレキシブル基板(商品名:エスパネックス、新日鐵化学社製)にフォトレジスト膜を熱圧着、エッチング、レジスト膜剥離を経て、導体/導体間距離25μm/25μmのくし型回路を作製し、その回路上にポリエチレンフィルムを剥離しながら、この接着シートを熱圧着した。次いで、ポリエステルフィルムを剥がして160℃で1時間加熱して接着剤層を硬化させ、電気特性評価試料とした。次にこの試料を温度:130℃、湿度:85%RHの恒温恒湿槽に、直流電圧5Vを加えながら300時間曝した。その後、恒温恒湿槽から取り出して、くし型回路の導体(銅箔部)への電食の有無について観察し、その結果を表3に示した。くし型回路の導体(銅箔部)への電食が無いものを○、電食があるもの×とした。
表3から明らかなように実施例1〜24に基づく本発明の接着シートでは、くし型回路の導体(銅箔部)への電食が無く実用上問題がないものであった。これに対して比較例2〜7のものでは電食が発生し半導体装置用としては実用上問題のある結果であった。
【0045】
【表3】

【0046】
上記表のように、本発明の接着剤組成物および接着シートは、電気特性、接着力、耐リフロー性及びTCT性に優れ、吸湿率、伸び率が大きく応力緩和性に優れ、反り、発泡、埋め込み性等の加工性に優れているため半導体装置の信頼性を向上させることができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エポキシ樹脂、(B)フェノール樹脂、(C)エポキシ樹脂またはエポキシ硬化剤と反応し得る官能基を有する不飽和カルボン酸誘導体及びエチレンを含有するビニル共重合体及び(D)シロキサン化合物を含有することを特徴とする半導体装置用接着剤組成物。
【請求項2】
前記(A)エポキシ樹脂と(B)フェノール樹脂の比率が官能基当量比で1:0.6〜1:1.4であることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置用接着剤組成物。
【請求項3】
前記ビニル共重合体の含有量が、全固形量の20〜80重量%であることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置用接着剤組成物。
【請求項4】
前記ビニル共重合体中の不飽和カルボン酸誘導体の含有率が0.1〜40重量%であることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置用接着剤組成物。
【請求項5】
前記ビニル共重合体の官能基当量が100〜2500であることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置用接着剤組成物。
【請求項6】
前記(D)シロキサン化合物が一般式(1)又は一般式(2)で示される両末端にアミノ基を有するシロキサン化合物であることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置用接着剤組成物。
【化1】

(式中のR1は、炭素数1〜10のアルキレン基を表し、m及びnは0〜10の整数を示す)
【請求項7】
前記(D)シロキサン化合物が全固形量の0.05〜10重量%であることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置用接着剤組成物。
【請求項8】
支持体の少なくとも一面に、請求項1乃至7のいずれかに記載の半導体装置用接着剤組成物が積層してなることを特徴とする半導体装置用接着シート。
【請求項9】
金属層の少なくとも一面に、請求項1乃至7のいずれかに記載の半導体装置用接着剤組成物と絶縁性フィルムまたは剥離性フィルムが順次積層してなることを特徴とする半導体装置用接着シート。
【請求項10】
絶縁性フィルムの両面に、請求項1乃至7のいずれかに記載の半導体装置用接着剤組成物と絶縁性フィルムまたは剥離性フィルムが順次積層してなることを特徴とする半導体装置用接着シート。

【公開番号】特開2006−213872(P2006−213872A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−29858(P2005−29858)
【出願日】平成17年2月4日(2005.2.4)
【出願人】(000153591)株式会社巴川製紙所 (457)
【Fターム(参考)】