説明

半導体装置

【課題】 半導体装置が機能するのに必要な半導体構造を製造できる有効領域を拡大する技術を提供する。
【解決方法】 本発明の半導体装置2では、その表面に形成されるパッド12の少なくとも一部が、半導体基板4の表面の外周の内側を一巡する耐圧保持部65上に形成されている。従来技術では耐圧保持部65の内側に形成されていたパッド12の少なくとも一部を耐圧保持部65上に形成することで、耐圧保持部65の内側のパッド領域10の面積を縮小することができる。これにより、耐圧保持部65の内側で半導体装置2が機能するのに必要な半導体構造を製造できる有効領域8を拡大することができる。また、パッド12と耐圧保持部65の間に導電膜を含む積層構造20を形成することで、耐圧保持部65に局所的な電界が印加されることがない。半導体装置2の耐圧特性が悪化することを防ぐことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性ワイヤを接続固定するパッドが表面に形成されている半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置と外部回路、あるいは半導体装置と他の半導体装置を電気的に接続するために、ワイヤボンディング方法が知られている。ワイヤボンディング方法では、半導体装置の表面にパッドを形成しておく。ワイヤボンディング方法では、一端が外部回路等に接続固定されている導電性ワイヤを半導体装置のパッド上にまで引き伸ばし、その導電性ワイヤをパッドに接続固定し、パッドに接続固定した導電性ワイヤをパッド上で切断する。
半導体装置は半導体基板を備えており、半導体基板内に複数の半導体領域が形成されている。複数の半導体領域を組み合わせることによって半導体素子が構成されている。前記パッドは、半導体素子を構成する少なくとも一つの半導体領域に導通している。
【0003】
種々のパッドを必要とする半導体装置が存在する。例えば電力制御用の半導体装置の場合、制御する電流が流れる導電性ワイヤを接続固定する少なくとも1つの電力用パッドと、半導体装置のオン・オフを切り換える信号を伝える導電性ワイヤを接続固定する小信号パッドを必要とする。小信号パッドにはこの他に、半導体装置を流れている電流量に対応する信号を伝える導電性ワイヤをボンディングするパッドや、半導体装置の温度に対応する信号を伝える導電性ワイヤをボンディングするパッドが存在することもある。
【0004】
高耐圧半導体装置の場合、半導体基板の終端領域に電界が集中しやすく、それが原因となって半導体装置の耐圧能力が低下することが知られている。この問題に対処するために半導体基板の表面の外周に沿って外周の内側を一巡するFLR(Field Limiting Ring)あるいはリサーフ構造等が形成されている耐圧保持部を設ける技術が知られている。
半導体装置の表面に、導電性ワイヤを接続固定するパッドと、耐圧保持部が設けられている半導体装置が特許文献1,2に開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開2004−158603号公報
【特許文献2】特開平8−306937号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
耐圧保持部を利用して耐圧能力を向上させている半導体装置では、耐圧保持部の内側に半導体装置が機能するのに必要な半導体領域の組合せ構造(半導体構造)を収容しなければならない。
また、耐圧保持部を利用して耐圧能力を向上させている半導体装置では、半導体素子を構成する半導体領域に導通しているパッドを、耐圧保持部の内側の領域に形成しなければならない。
【0007】
パッドの下方に位置する半導体基板には、半導体素子を構成する半導体領域群の組合せ構造を製造できないことが多い。パッドに印加する電圧によって半導体素子の動作が不安定になることを避ける必要があったり、あるいはパッドに現れる電圧が予定外に変動することを避けるためにパッドの下方に厚い酸化膜を形成する必要があったりする。厚い酸化膜を形成する範囲には、半導体構造を製造できないことが多い。従って、パッドが大型であるほど、半導体素子を構成する半導体構造を作り込める有効領域が縮小する。
【0008】
導電性ワイヤを接続固定するだけであれば小型のパッドで足りるのに対し、パッドに接続固定した導電性ワイヤの延長部をパッド上で切断する場合には、それ以上に大きなパッドを必要とする。パッド上で導電性ワイヤを切断する場合には、パッドに接続固定されている導電性ワイヤを工具によってパッドに押し付け、その状態で導電性ワイヤの延長部を引っ張ることによって切断する。その為、導電性ワイヤを切断する際に、半導体装置の表面に引き摺り痕がついてしまう。半導体装置の表面を覆っている保護膜の表面に引き摺り痕が形成されて保護膜が損傷することを避ける必要がある。引き摺り痕によって保護膜の表面が損傷することを避けるためには、引き摺り痕の形成範囲にまで広がっているパッドを必要とする。パッドに引き摺り痕形成領域を確保する必要があることからパッドが大型化してしまう。パッドを小型化するのは難しい。
耐圧保持部を利用して耐圧能力を向上させている半導体装置では、耐圧保持部の内側にパッドを形成する必要があるところ、そのパッドを小型化するのが困難であることから、半導体素子を構成する半導体構造を作り込める有効領域が縮小してしまう。
【0009】
以上をまとめると、下記の事情が存在していることがわかる。
(1)半導体基板の表面の外周の内側を一巡する耐圧保持部によって耐圧能力を向上させている半導体装置の場合、半導体素子を構成する半導体領域と導通するパッドを耐圧保持部の内側に収容しなければならない。
(2)ワイヤボンディング方法では、半導体装置の保護膜の表面が損傷することを避けるために、大型のパッドが必要とされ、パッドを小型化することが難しい。
(3)耐圧保持部を利用して耐圧能力を向上させている半導体装置では、パッドの存在によって、半導体素子を構成する半導体構造を作り込める有効領域が縮小してしまう。
本発明では、耐圧保持部の内側に占めるパッドの面積を小型化し、半導体素子を構成する半導体構造を作り込める有効領域を拡大する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
従来の技術では、耐圧保持部によって耐圧能力を向上させている半導体装置の場合、耐圧保持部の内側に形成されている半導体構造を構成する半導体領域に導通するパッドを耐圧保持部の内側の領域に留めなければならなかった。
本発明者は、パッドのうち、半導体構造を構成する半導体領域に導通する部分については耐圧保持部の内側の領域に形成しなければならないものの、保護膜が損傷することを避けるための摺り痕形成領域については、耐圧保持部上あるいはその外側に形成できることに着目した。
もっとも、不用意に耐圧保持部上にパッドを伸ばすと、パッドの電圧が耐圧保持構造に影響し、耐圧能力が低下してしまう。本発明者は、パッドの電圧が耐圧保持部の特性に影響しないようする技術を活用することによって、耐圧保持部の内側から少なくとも耐圧保持部上にまでパッドの伸ばすことに成功し、耐圧保持部の内側に占めるパッドの面積を小型化に成功した。
なお、通常は、耐圧保持部上またはその外側に摺り痕形成領域が確保される向きで導電性ワイヤを接続するが、逆方向に用いてもよい。いずれの接続方向でも、耐圧保持部の内側に占めるパッドの面積を小型化することができる。
【0011】
本発明で創作された半導体装置は半導体基板を備えており、耐圧保持部とパッドが形成されている。耐圧保持部は、半導体基板の表面の外周の内側を一巡している。耐圧保持部よりも内側の半導体基板内には複数の半導体領域が形成されており、複数の半導体領域を組み合わせることによって半導体素子が構成されている。パッドは、耐圧保持部よりも内側から少なくとも耐圧保持部上に伸びており、半導体素子を構成する少なくとも一つの半導体領域に導通している。少なくとも耐圧保持部の半導体基板とパッド間には、半導体基板の側から第1絶縁膜と導電膜と第2絶縁膜の順に積層されている積層構造が形成されている。パッドは、その積層構造によって耐圧保持部から絶縁されている。
【0012】
本発明の半導体装置では、従来技術では耐圧保持部よりも内側の領域に配置されていたパッドの少なくとも一部を、耐圧保持部上に形成する。これにより、耐圧保持部よりも内側の領域に形成されるパッドの面積を縮小することができ、半導体装置が機能するのに必要な半導体構造を製造できる有効面積を拡大することができる。
【0013】
耐圧保持部上にパッドを形成した場合、たとえ耐圧保持部とパッドの間を絶縁しても、パッドの電圧によってパッドから発生した電界が、パッドと対向している範囲の耐圧保持部に局所的に影響してしまう。この局所的な影響によって耐圧保持部の電界分布が大きく変化すると、半導体装置の耐圧特性が悪化してしまう。
本発明の半導体装置では、耐圧保持部とパッドの間に、耐圧保持部の側から順に第1絶縁膜と導電膜と第2絶縁膜が積層されている積層構造が形成されている。すなわち、耐圧保持部とパッドの間に、耐圧保持部とパッドの双方から絶縁されている導電膜が形成されている。
本発明の半導体装置では、パッドと耐圧保持部の間に両者から絶縁されている導電膜を形成しているために、パッドから発生した電界が耐圧保持部に直接的に印加されることがなく、導電膜を介して耐圧保持部に印加される。この結果、耐圧保持部に対するパッドの電圧の影響が緩和される。耐圧特性保持部の電界分布がパッドの電圧によって大きく変化することがなく、半導体装置の耐圧特性が低下することを防ぐことができる。
【0014】
本発明の半導体装置では、導電膜がパッドよりも広く広がっていることが好ましい。すなわち、導電膜が、パッドのうちの耐圧保持部上に形成されている部分に対応する対応領域と、その対応領域から耐圧保持部上に広がっている拡大領域を備えていることが好ましい。
この場合、パッドと耐圧保持部間の相互作用がより確実に遮断される。パッドの電圧によって半導体装置の耐圧特性が低下することを確実に防ぐことができる。
【0015】
本発明の半導体装置では、パッドが耐圧保持部よりもさらに外側に伸びていてもよい。この場合、耐圧保持部よりも外側に位置しているパッドは半導体基板から絶縁しておく。
これにより、耐圧保持部よりも内側に形成されるパッドの面積をさらに縮小することができ、半導体装置が機能するのに必要な半導体構造を製造できる有効領域をさらに拡大することができる。
【0016】
本発明の半導体装置では、パッドのうちの耐圧保持部上に形成されている部分の形状において、耐圧保持部の周方向に測定した幅が、周方向に直交する方向に測定した幅よりも広いことが好ましい。
本発明の半導体装置では、耐圧保持部が半導体基板の外周に沿って一巡している。すなわち、耐圧保持部は半導体装置の周方向に沿って広く形成されている。
そのため、耐圧保持部上に形成されているパッドの形状を、耐圧保持部の形状にあわせて周方向に沿って広く形成することによって、パッドのうちの耐圧保持部上に形成されている部分の面積を広く形成することができる。これによって、耐圧保持部よりも内側に形成されているパッドの面積をさらに縮小することができ、半導体装置が機能するのに必要な半導体構造を製造できる有効領域をさらに拡大することができる。
【0017】
本発明の半導体装置では、耐圧保持部とパッドの間に形成されている積層構造が耐圧保持部の全域に渡って形成されていることが好ましい。これにより、耐圧保持部と導電膜が対向している領域の面積をさらに広げることができる。パッド電圧にとって耐圧保持部に印加される電界の強度をさらに弱めることができ、半導体装置の耐圧特性が悪化する現象を確実に防ぐことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、耐圧保持部よりも内側に形成されるパッドの面積を縮小することができる。半導体装置が機能するのに必要な半導体構造を製造できる有効領域を拡大することができる。これにより、半導体装置の電気的特性を向上することができ、良質な半導体装置を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に説明する実施例の主要な特徴を最初に整理する。
(特徴1)導電性ワイヤは、パッドのうちの耐圧保持部上に形成されている部分に接続固定されている。
(特徴2)導電性ワイヤは、耐圧保持部の外側から内側に引っ張ることによって切断されている。
(特徴3)導電性ワイヤは、耐圧保持部の内側から外側に引っ張ることによって切断されている。
(特徴4)導電性ワイヤは、耐圧保持部の周方向に引っ張ることによって切断されている。
【実施例】
【0020】
(第1実施例)
図1に、本発明を具現化した半導体装置2を示す。半導体装置2では、終端耐圧領域18が半導体基板4の外周の内側を一巡している。終端耐圧領域18には、耐圧保持部65が形成されている。耐圧保持部65にはFLR65aとFLR65bが形成されている。耐圧保持部65の内側には、半導体装置が機能するのに必要な半導体構造を製造できる有効領域8とパッド領域10が形成されており、終端耐圧領域18の耐圧保持部65の外側には非有効領域6が形成されている。
パッド領域10から耐圧保持部65に至る範囲の半導体装置2の表面には、パッド12が形成されている。パッド12と耐圧保持部65の間には、積層構造20が形成されている。積層構造20は、パッド12のうちの耐圧保持部65上に形成されている部分に対応する対応領域24と、その対応領域24から耐圧保持部65上に広がっている拡大領域26を備えている。積層構造20はまた、パッド12のうちのパッド領域10に形成されている部分と半導体基板4の間にも形成されている。積層構造20は、図2に示すように、第1絶縁膜74と導電膜76と第2絶縁膜78を順に積層することで構成されている。積層構造20は、パッド12と耐圧保持部65を絶縁している。
半導体装置2の有効領域8の表面にはエミッタ電極パッド16が露出しており、エミッタ電極パッド16に導電性ワイヤ22がボンディングされている。導電性ワイヤ22は、エミッタ電極パッド16と外部回路(図示されていない)を電気的に接続している。図示番号14はトレンチゲート電極用の導電性ワイヤを示し、パッド12にボンディングされている。トレンチゲート電極用の導電性ワイヤ14は、パッド12と外部回路(図示されていない)を電気的に接続している。
パッド領域10の半導体基板4内には半導体構造が形成されていない。パッド領域10が小さいほど、半導体装置が機能するのに必要な半導体構造を製造できる有効領域8を広くすることができる。
【0021】
半導体装置2のII−II断面における断面図を図2に示す。
図2に示すように、半導体装置2の有効領域8には、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(Insulated Gate Bipolar Transistorであり、以下ではIGBTという)が形成されている。半導体装置2は、n型の半導体基板4に形成されており、n型の半導体基板4が未加工状態で残っている部分によって、ドリフト領域46が形成されている。ドリフト領域46の表面側に、p型不純物を低濃度に含むボディ領域48が積層されている。ボディ領域48の表面に臨む位置に、n型不純物を高濃度に含んでいるエミッタ領域54が形成されている。エミッタ領域54は、ボディ領域48によって、ドリフト領域46から隔てられている。
エミッタ領域54の表面から、エミッタ領域54とボディ領域48を貫通し、ドリフト領域46に達するトレンチ56が形成されている。トレンチ56の底面と壁面はゲート絶縁膜60で被覆されており、トレンチ56の内側にトレンチゲート電極58が充填されている。トレンチゲート電極58が形成されている範囲の半導体装置2の表面には酸化膜52が形成されている。酸化膜52の表面を含む有効領域8内の半導体装置2の表面には、エミッタ電極パッド16が形成されている。エミッタ電極パッド16は、エミッタ領域54に導通している。
また、半導体装置2のパッド領域10から耐圧保持部65に至る範囲の表面には積層構造20が形成されており、積層構造20の表面にパッド12が形成されている。トレンチゲート電極58は図示しない断面で、パッド12に接続されている。パッド12が形成されているパッド領域10には、p型不純物を高濃度に含むp型拡散領域50が形成されている。p型拡散領域50は、半導体基板4の表面に臨む位置に形成されており、p型不純物を含むボディ領域48の終端部と接続し、電気的に導通している。
半導体基板4の裏面側には、p型不純物を高濃度に含むコレクタ領域44が形成されている。半導体装置2の裏面には、コレクタ電極42が形成されている。コレクタ電極42は、コレクタ領域44と導通している。
【0022】
半導体装置2の終端耐圧領域18の半導体基板4の表面に臨む位置に、p型不純物を高濃度に含むガードリング66a、66bが形成されている。ガードリング66a、66bは、半導体装置2のオフ時に空乏層を終端耐圧領域18の広い範囲に伸ばし、電界が集中して半導体装置2の耐圧特性が低下することを防ぐ。ガードリング66a、66bの形成本数は必要な耐圧特性によって変化し、図2に示すように2本形成される場合もあれば、3本以上が形成される場合もあれば、1本のみ形成される場合もある。
パッド領域10から終端耐圧領域18に至る範囲の半導体基板4の表面には、酸化膜52が形成されている。酸化膜52には、ガードリング66a、66bに対応する位置にコンタクトホール62a、62が形成されている。ガードリング66a、66bに対応する位置の酸化膜52の表面には、導電性のフィールドプレート64a、64bが形成されている。ガードリング66aとフィールドプレート64aはコンタクトホール62aを通して導通している。ガードリング66aとフィールドプレート64aによってFLR65aが形成されている。ガードリング66bとフィールドプレート64bはコンタクトホール62bを通して導通している。ガードリング66bとフィールドプレート64bによってFLR65bが形成されている。
酸化膜52の表面に、積層構造20が形成されている。積層構造20は、第1絶縁膜74と導電膜76と第2絶縁膜78を順に積層することで構成されている。第1絶縁膜74は、フィールドプレート64a、64bの表面を覆っている。積層構造20の表面にパッド12が形成されている。積層構造20は、パッド12と耐圧保持部65を絶縁し、相互作用を遮断している。
【0023】
本実施例の半導体装置2では、図1に示すように、半導体装置2をボンディング装置(図示されていない)にセットしてワイヤボンディング処理を実行する。ボンディング装置は、導電性ワイヤ14をパッド12に接続固定し、導電性ワイヤ14の延長部分を切断する。それに先立って、導電性ワイヤ14の図示しない端部は、外部回路に接続固定されている。ボンディング装置は、導電性ワイヤ14をパッド12に接続固定した後に、導電性ワイヤ14の延長部分を引っ張って導電性ワイヤ14を切断する。この際に、パッド12に引き摺り痕28が形成される。その様子を図8〜図12のワイヤボンディング方法の手順を用いて説明する。
【0024】
図8〜図12は、外部回路146と半導体装置2をワイヤボンディングする方法を示す。図8に示すように、導電性ワイヤ14はボンディング装置のクランプ138及びウェッジ・ツール134を通って、その先端がウェッジ・ツール134の底面134aから突出している。クランプ138は導電性ワイヤ14を把持する機能を持っている。クランプ138は支え136によってウェッジ・ツール134と連結されており、クランプ138とウェッジ・ツール134は相対的に移動できる。
このワイヤボンディング方法では、まず図9に示すように、ウェッジ・ツール134の底面134aを外部回路146のパッド148に押し付け、導電性ワイヤ14に超音波振動を加えてパッド148と導電性ワイヤ14をボンディングする。パッド148の表面にボンディング痕150が形成される。
次に図10に示すように、導電性ワイヤ14とクランプ138とウェッジ・ツール134の全体を次のボンディング先である半導体装置2のパッド12上に移動する。この際に、導電性ワイヤ14はウェッジ・ツール134の底面134aから引き出される。次に図11に示すように、ウェッジ・ツール134の底面134aを半導体装置2のパッド12に押し付け、導電性ワイヤ14に超音波振動を加えてパッド12と導電性ワイヤ14をボンディングする。パッド12表面にボンディング痕152が形成される。
【0025】
パッド12に導電性ワイヤ14をボンディング後、図11に示すように、ウェッジ・ツール134をパッド12上に置いたまま、クランプ138をウェッジ・ツール134に対して矢印154の方向に移動させる。これによりパッド12とウェッジ・ツール134に挟まれた導電性ワイヤ14は引きちぎられる。この際に、図12に示すように、引きちぎられた導電性ワイヤ14はパッド12の表面に引き摺り痕28を形成する。その後、ウェッジ・ツール134とクランプ138は一体となって矢印156の方向に引き上げられ、ワイヤボンディング方法を終了する。
図13に示すように、パッド12がボンディング痕152と同程度の面積である場合、引き摺り痕28がパッド12を超えて形成され、半導体装置2の表面の保護膜が損傷する。保護膜に損傷した場合、損傷から半導体装置2の内部に不純物などが進入し、半導体装置2の特性低下及び破損の原因となる。その為、パッド12上で導電性ワイヤ14を切断する場合には、引き摺り痕28の形成範囲を含む程度にまでパッド12を拡大して形成する必要がある。
【0026】
半導体装置2のパッド12に引き摺り痕28が形成されるのは、導電性ワイヤ14を引きちぎる場合に限らない。ウェッジ・ツール134に導電性ワイヤ14を切断するためのワイヤ・カッタが存在し、導電性ワイヤ14をカッタで切断する場合にも、引き摺り痕28が形成されることがある。この場合でも、半導体装置2の保護膜に損傷が生じるのをさけるためには、パッド12を拡大して引き摺り痕28がパッド12内に留まるようにしておく必要があった。
【0027】
本実施例の半導体装置2でも、図1に示すように、導電性ワイヤ14との接続固定に必要な領域だけではなく、引き摺り痕28が形成される領域を含む程度に広いパッド12を形成する。その為、引き摺り痕28がパッド12の外側に形成されることがない。半導体装置2の有効領域8に損傷が生じるのを防ぐことができる。
それに対して、図7は耐圧保持部65の内側に位置するパッド512のサイズを図1の場合と同じサイズとし、しかも、パッド512を耐圧保持部65の内側に留めた場合を示す。この場合、引き摺り痕28がパッド12の外側に形成され、有効領域8に損傷が生じてしまう。
【0028】
本実施例の半導体装置2では、引き摺り痕28が形成される領域を覆う程度に広く形成されたパッド12を利用するとともに、パッド12の一部が耐圧保持部65上に形成されている。そのため、図6に示すようにパッド412の全てが耐圧保持部65の内側に形成されていた従来技術の半導体装置402に比べて、本実施例のパッド領域10の面積を縮小することができる。これによって、半導体装置2内の有効領域8の面積を拡大することができ、半導体装置2の電気的特性を向上することができる。
【0029】
さらに本実施例の半導体装置2では、図2に示すように、耐圧保持部65とパッド12の間に積層構造20が形成されている。積層構造20は、耐圧保持部65の側から第1絶縁膜74と導電膜76と第2絶縁膜78の順に積層されて形成されており、これによって、耐圧保持部65とパッド12の間には、耐圧保持部65のFLR65a、65bとパッド12の両方から絶縁された導電膜76が形成される。また、図1に示すように、本実施例の半導体装置2では、耐圧保持部65上に形成される積層構造20(導電膜76を含む)が、耐圧保持部65上に形成されるパッド12に比べて広く形成されている。
【0030】
耐圧保持部65とパッド12の間に導電物質で形成された層が存在しない場合、パッド12から発生した電界が、パッド12と対向する領域の耐圧保持部65に局所的に印加される。この局所的な電界により耐圧保持部65における半導体基板4内の電界分布が大きく変化すると、半導体装置の耐圧特性が悪化してしまう。
本実施例の半導体装置2では、耐圧保持部65とパッド12の間に導電膜76が形成されている。その為、パッド12から発生した電界は、耐圧保持部65に直接的には印加されず、導電膜76を介して耐圧保持部65に印加される。また、図1に示すように、耐圧保持部65上に形成されている導電膜76が、耐圧保持部65上に形成されているパッド12に比べて広いことから、パッド12から発生した電界は導電膜76を通過する際に、その範囲が広がる。耐圧保持部65に局所的な電界が印加されることを抑制することができる。この結果、耐圧保持部65の電界分布が大きく変化することがなく、半導体装置2の耐圧特性が悪化することを防ぐことができる。
【0031】
本実施例の半導体装置2では、第1絶縁膜74と第2絶縁膜78がポリイミドなどの誘電率の低い絶縁膜であることが好ましい。第2絶縁膜78の誘電率が低いと、パッド12の電荷によって導電膜76が分極する程度を抑えることができる。第1絶縁膜74の誘電率が低いと、導電膜76の分極によって耐圧保持部65の表面に帯電する電荷量を抑制することができる。パッド12と耐圧保持部65の間の相互作用を弱めることができる。パッド12が耐圧保持部65上に配置されることによる悪影響を実質的に防ぐことができる。
【0032】
(第2実施例)
本発明の半導体装置では、パッド12が耐圧保持部65よりも外側の非有効領域6に形成されているともに、非有効領域6の半導体基板から絶縁されている部分をさらに備えていることが好ましい。
図3に、本発明の第2実施例の半導体装置102を示す。本実施例の半導体装置102では、パッド112が、耐圧保持部65の内側から上部を通り越して外側にまで伸びている。パッド112と耐圧保持部65の間、ならびに、パッド112と耐圧保持部65よりも外側の非有効領域6の半導体基板の間に、第1実施例の半導体装置2と同様の積層構造120が形成されている。
本実施例の半導体装置102では、パッド112の少なくとも一部が非有効領域6に形成されていることによって、パッド領域110の面積をさらに縮小することができ、半導体装置102が機能するのに必要な半導体構造を製造できる有効領域108の面積をさらに拡大することができる。
【0033】
(第3実施例)
本発明の半導体装置では、パッドのうちの耐圧保持部上に形成されている部分の形状において、耐圧保持部の周方向に測定した幅が、周方向に直交する方向に測定した幅よりも広いことが好ましい。
図4に、本発明の第3実施例の半導体装置202を示す。本実施例の半導体装置202では、パッド212の少なくとも一部が耐圧保持部65上に形成されている。パッド212の耐圧保持部65上に形成された部分では、該部分の周方向230に測定した幅L1と周方向230に直交する方向に測定した幅L2において、L1>L2の関係を持って形成されている。また、パッド212と耐圧保持部65の間には第1実施例の半導体装置2と同様な積層構造220が形成されている。この実施例では、導電性ワイヤ14が、耐圧保持部65の周方向230に引っ張ることによって切断されている。
本実施例の半導体装置202では、図4に示すように、耐圧保持部65が半導体装置202の周方向230に沿って広く形成されている。その為、パッド212のうちの耐圧保持部65上に形成されている部分を、周方向230に広く形成することによって、耐圧保持部65の上にパッド202を広く形成することができる。これにより、耐圧保持部65の内側に形成されるパッド領域210の面積をさらに縮小することができ、半導体装置202が機能するのに必要な半導体構造を製造できる有効領域208をさらに拡大することができる。
【0034】
(第4実施例)
本発明の半導体装置では、積層構造が耐圧保持部の全域に亘って形成されていることが好ましい。
図5に、本発明の第3実施例の半導体装置302を示す。本実施例の半導体装置302では、パッド312の少なくとも一部が耐圧保持部65上に形成されている。また、パッド312と耐圧保持部65の間には第1実施例の半導体装置2と同様な積層構造320が形成されている。本実施例の半導体装置302では、積層構造320が耐圧保持部65の全域に亘って形成されている。
本実施例の半導体装置302では、図5に示すように、積層構造320が耐圧保持部65の全域に亘って形成されている。その為、導電膜76と耐圧保持部65が対向している領域の面積をさらに広げることができる。これにより、耐圧保持部65に印加される電界をさらに弱めることができ、半導体装置302の耐圧特性が悪化してしまうことを防ぐことができる。
【0035】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】第1実施例の半導体装置を示した図である。
【図2】第1実施例の半導体装置の断面図である。
【図3】第2実施例の半導体装置を示した図である。
【図4】第3実施例の半導体装置を示した図である。
【図5】第4実施例の半導体装置を示した図である。
【図6】従来技術の半導体装置を示した図である。
【図7】従来技術の半導体装置を示した図である。
【図8】ワイヤボンディング方法の手順を示した図である。
【図9】ワイヤボンディング方法の手順を示した図である。
【図10】ワイヤボンディング方法の手順を示した図である。
【図11】ワイヤボンディング方法の手順を示した図である。
【図12】ワイヤボンディング方法の手順を示した図である。
【図13】ワイヤボンディング方法における従来技術の問題点を示す。
【符号の説明】
【0037】
2・・・・・半導体装置
4・・・・・半導体基板
6・・・・・非有効領域
8・・・・・有効領域
10・・・・パッド領域
12・・・・パッド
14・・・・導電性ワイヤ
16・・・・エミッタ電極パッド
18・・・・終端耐圧領域
20・・・・積層構造
22・・・・導電性ワイヤ
24・・・・対応領域
26・・・・拡大領域
28・・・・引き摺り痕
42・・・・コレクタ電極
44・・・・コレクタ領域
46・・・・ドリフト領域
48・・・・ボディ領域
50・・・・p型拡散領域
52・・・・酸化膜
54・・・・エミッタ領域
56・・・・トレンチ
58・・・・トレンチゲート電極
60・・・・ゲート絶縁膜
62・・・・コンタクトホール
62a、62b・・・コンタクトホール
64・・・・フィールドプレート
64a、64b・・・フィールドプレート
65・・・・耐圧保持部
65a、65b・・・FLR
66・・・・ガードリング
66a、66b・・・ガードリング
74・・・・第1絶縁膜
76・・・・導電膜
78・・・・第2絶縁膜
102・・・半導体装置
108・・・有効領域
110・・・パッド領域
112・・・パッド
120・・・積層構造
134・・・ウェッジ・ツール
134a・・・ウェッジ・ツールの底面
136・・・支え
138・・・クランプ
146・・・外部回路
148・・・リード
150・・・ボンディング痕
152・・・ボンディング痕
154・・・矢印
156・・・矢印
202・・・半導体装置
208・・・有効領域
210・・・パッド領域
212・・・パッド
220・・・積層構造
230・・・周方向
302・・・半導体装置
312・・・パッド
320・・・積層構造
402・・・半導体装置
412・・・パッド
512・・・パッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板の表面の外周の内側を一巡している耐圧保持部と、
前記耐圧保持部よりも内側に形成されており、前記半導体基板内に形成されている複数の半導体領域を組み合わせて構成されている半導体素子と、
前記耐圧保持部よりも内側から少なくとも前記耐圧保持部上に伸びており、前記半導体素子を構成する少なくとも一つの半導体領域に導通しているとともに、前記耐圧保持部から絶縁されているパッドと、
少なくとも前記耐圧保持部の半導体基板と前記パッド間に形成されており、前記半導体基板の側から第1絶縁膜と導電膜と第2絶縁膜の順に積層されている積層構造と、
を備えている半導体装置。
【請求項2】
前記導電膜は、前記パッドのうちの前記耐圧保持部上に形成されている部分に対応する対応領域と、その対応領域から前記耐圧保持部上に広がっている拡大領域を備えていることを特徴とする請求項1の半導体装置。
【請求項3】
前記パッドは、前記耐圧保持部よりもさらに外側に伸びており、前記耐圧保持部よりも外側に位置しているパッドが前記半導体基板から絶縁されていることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記パッドのうちの前記耐圧保持部上に形成されている部分の形状において、前記耐圧保持部の周方向に測定した幅が、前記周方向に直交する方向に測定した幅よりも広いことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第1絶縁膜と導電膜と第2絶縁膜が、前記耐圧保持部の全域に亘って形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の半導体装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2009−141256(P2009−141256A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−318471(P2007−318471)
【出願日】平成19年12月10日(2007.12.10)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】