説明

半導体装置

【課題】所望のキャリア移動度、ドレイン電流を得ることができ、高出力動作することができる、かつ、ゲートの漏れ電流を減少することができるMESFETを用いた半導体装置を得ることを目的とする。
【解決手段】本発明の一実施形態における半導体装置20は、第1導電型の半導体基板2と、半導体基板2上に形成され、第2導電型の半導体層よりなるドレイン領域3およびソース領域3と、半導体基板2上であってドレイン領域3とソース領域3の間に形成され、第2導電型の2層以上の半導体層よりなるチャネル領域4と、チャネル領域4上に形成され、チャネル領域4とショットキー接触をなすゲート電極5とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関し、特にMESFETを備えた半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の中で用いられるトランジスタとして、MESFET(metal-semiconductor Field Effect Transistor)が広く知られている。図4は、従来のMESFETを備えた半導体装置50の構成を示した図である。この半導体装置50は、絶縁基板1、絶縁基板1上に形成され、p型不純物を含む半導体層からなる緩衝層2、緩衝層2上に形成され、n型半導体層からなるソース・ドレイン領域3、緩衝層2上であってソース領域とドレイン領域の間に形成され、n型半導体層からなるチャネル領域4、チャネル領域4上に形成され、金属からなるゲート電極5、を備える。半導体装置50におけるMESFETは、緩衝層2、ソース・ドレイン領域3、チャネル領域4、ゲート電極5により構成される。
【0003】
このMESFETは、ゲートに加える電圧により、ショットキー接合界面直下に形成される空乏層によってキャリアの通路であるチャネルの幅を制御し、ドレイン・ソース間を流れる電流を制御している。このようなMESFETが下記非特許文献1に開示されている。
【0004】
【非特許文献1】元山裕孝、「超LSI総合事典」、株式会社サイエンスフォーラム、昭和63年3月31日第1版第1刷発行、P.414、“ショットキー(バリア)ゲート電界効果トランジスタ”
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のMESFETは、チャネル領域として1層の半導体層を用いた構成であり、MESFET動作時において、ゲート電圧によりチャネル領域に形成される空乏層を制御し、ドレイン電流を制御している。しかしながら、チャネル領域に半導体単層膜を用いているので、ゲート電圧を調整して空乏層幅をなくしても、キャリア通路断面積が一定となる。よって、ドレイン電流も飽和してしまうことになり、更なるドレイン電流の増加を期待できなくなってしまう。このように、従来のMESFETは、チャネル領域が単層で構成されているため、所望のキャリア移動度、ドレイン電流を得られないという問題があった。
【0006】
また、チャネル層とゲート電極の間に障壁層がないので、ゲートの漏れ電流が増加し、これによりチャネル中の電子の移動が悪化してしまい、トランジスタ動作が改善しないという問題があった。
【0007】
そこで本発明はかかる問題を解決するためになされたものであり、所望のキャリア移動度、ドレイン電流を得ることができ、高出力動作することができる、かつ、ゲートの漏れ電流を減少することができるMESFETを備えた半導体装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態における半導体装置は、第1導電型の半導体基板と、半導体基板上に形成され、第2導電型の半導体層よりなるドレイン領域およびソース領域と、半導体基板上であってドレイン領域とソース領域の間に形成され、第2導電型の2層以上の半導体層よりなるチャネル領域と、チャネル領域上に形成され、チャネル領域とショットキー接触をなすゲート電極とを備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一実施形態における半導体装置によれば、チャネル領域に2層以上の半導体層を備える構成である。従って、ゲート電圧を制御して、半導体物性上の移動度、バンドギャップ等の適正なチャネル層を選択することができるため、所望のキャリア移動度、ドレイン電流を得ることとができ、高出力動作することができる。
【0010】
また、チャネル領域の最上層に障壁層を形成することにより、ゲート漏れ電流が減少し、チャネル中の電子の移動を改善することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
<実施の形態1>
図1は、本発明の実施の形態1におけるMESFETを備えた半導体装置20の構成を示した図である。本実施の形態における半導体装置20は、絶縁基板1と、絶縁基板1上に形成され、例えばp型(第1導電型)不純物を含むSi半導体よりなる緩衝層2、緩衝層2上に形成され、例えばn型(第2導電型)Si半導体層よりなるソース・ドレイン領域3、緩衝層2上であってソース・ドレイン領域3の間に形成され、2層以上のn型半導体層よりなるチャネル領域4、チャネル領域4上に形成され、チャネル領域4とショットキー接触をなすゲート電極5、を備える。本実施の形態では、チャネル領域4は、下層からSi層6/SiGe層7/InAs層8の3層で形成する。半導体装置20におけるMESFETは、緩衝層2(半導体基板)、ソース・ドレイン領域3、チャネル領域4(Si層6/SiGe層7/InAs層8)、ゲート電極5より構成される。
【0012】
ここで、Si層6中におけるSi金属の移動度は、1350cm2/V・Sである。SiGe層7中におけるSiGe金属の移動度は、約1350〜3600cm2/V・Sである。InAs層6中におけるInAs金属の移動度は、約33000cm2/V・Sである。すなわち、チャネル領域4は、下層から移動度が大きくなるように形成した構成である。
【0013】
次に、半導体装置20(MESFET)の動作について説明する。上述した様に、半導体装置20(MESFET)は、拡散層からなるソース・ドレイン領域3の間にチャネル領域4がある。このチャネル領域4はソース・ドレイン領域3と同一の電導型で形成されている。チャネル領域4の上にはショットキ接合を形成する金属が直接接触しており、この金属がゲート電極5となる。
【0014】
チャネル領域4がソース・ドレイン領域3と同一の導電型で形成されているため、ソースドレイン間に電位差を与えると、チャネル領域4のうち空乏化していない領域が導電領域となり電流が流れる。すなわち、ショットキ接合に順方向となるゲート電圧を加えることで、チャネル領域4の空乏層幅が最下層側から減少していき、その結果この導電領域が大きくなりチャネル電流が増える。以上より、半導体装置20は、ゲート電圧でチャネル電流を制御することで、トランジスタ動作を実現させている。
【0015】
また、本実施の形態におけるチャネル領域4は、Si層6/SiGe層7/InAs層8の3層で形成しており、ゲート電圧を制御することで、最下層から空乏化していない領域を制御し、導電領域となる層を選択することができる。すなわち、小さいドレイン電流を流したいときは、Si層6のみ導電領域となるようにゲート電圧を調整する。また、ドレイン電流を大きくしたいときは、Si層6/SiGe層7/InAs層8の3層が導電領域となるようにゲート電圧を調整する。
【0016】
以上より、本実施の形態における半導体装置20のチャネル領域4は、2層以上の半導体層を備え、かつ下層から移動度が大きくなるように形成した構成のため、ゲートに加える電圧で空乏層を制御し、キャリアの通路であるチャネル層を制御することにより、所望のキャリア移動度、ドレイン電流を得ることができる。また、チャネル層の最上層に移動度が大きいInAs層8を備えたので、キャリアが通過するチャネル層が最上層になるほど、キャリア移動度が増加し、高ドレイン電流を得ることができる。
【0017】
また、キャリア最下層に、移動度が小さいSi層6を備えたので、ON電流印加時、空乏層幅が減少し、ドレイン電流が流れ始める瞬間のドレイン電流のオーバーシュートを低減させることができる。
【0018】
<実施の形態2>
図2は、本発明の実施の形態2におけるMESFETを備えた半導体装置30の構成を示した図である。本実施の形態における半導体装置30(MESFET)のチャネル領域4は、下層からSi層6/SiGe層7/GaAs層9の3層で形成する。また、ゲート電極5は、Pt金属で形成する。その他の構成は実施の形態1と同様のため、説明を省略する。
【0019】
ここで、Si層6中におけるSi金属の移動度およびバンドギャップは、1350cm2/V・S、1.11eVである。SiGe層7中におけるSiGe金属の移動度およびバンドギャップは、約1350〜3600cm2/V・S、0.66〜1.11eVである。GaAs層9中におけるGaAs金属の移動度およびバンドギャップは、8500cm2/V・S、1.42eVである。すなわち、チャネル領域4は、下層から移動度が大きくなるように形成し、かつ最上層にバンドギャップの大きいGaAs層9を形成した構成である。半導体装置30の動作は実施の形態1における半導体装置20の動作と同様のため、説明を省略する。
【0020】
以上より、本実施の形態における半導体装置30は、チャネル層表面にバンドギャップの大きいGaAsの障壁層を備えたので、ゲートの漏れ電流が減少し、チャネル中の電子の移動を改善することができる。また、ゲート電極5にショットキーバリア障壁の高いPt金属を備えたので、電位障壁が0.85eVまで高められることになり、さらにゲートの漏れ電流を減少させる効果を奏する。
【0021】
また、本実施の形態における半導体装置30のチャネル領域は、2層以上の半導体層を備え、かつ下層から移動度が大きくなるように形成し、さらにキャリア最下層に、移動度が小さいSi層6を備えたので、実施の形態1における半導体装置20と同様の効果を奏する。
【0022】
<実施の形態3>
図3は、本発明の実施の形態3におけるMESFETを備えた半導体装置40の構成を示した図である。本実施の形態における半導体装置40(MESFET)のチャネル領域4は、下層からSi層6/SiGe層7/GaN層10の3層で形成する。また、ゲート電極5は、Pt金属で形成する。その他の構成は実施の形態1と同様のため、説明を省略する。
【0023】
ここで、Si層6中におけるSi金属の移動度およびバンドギャップは、1350cm2/V・S、1.11eVである。SiGe層7中におけるSiGe金属の移動度およびバンドギャップは、約1350〜3600cm2/V・S、0.66〜1.11eVである。GaN層10中におけるGaN金属の移動度およびバンドギャップは、600cm2/V・S、3.44eVである。すなわち、チャネル領域4は、最上層にバンドギャップの大きいGaN層10を形成した構成である。半導体装置40の動作は実施の形態1における半導体装置20の動作と同様のため、説明を省略する。
【0024】
以上より、本実施の形態における半導体装置40は、チャネル層表面にGaAsより更にバンドギャップの大きいGaNの障壁層を備えたので、ゲートの漏れ電流が更に減少し、チャネル中の電子の移動を改善させることができる。また、ゲート電極5にショットキーバリア障壁の高いPt金属を備えたので、電位障壁が0.85eVまで高められることになり、さらにゲートの漏れ電流を減少させる効果を奏する。
【0025】
また、本実施の形態における半導体装置40のチャネル領域は、2層以上の半導体層を備え、かつキャリア最下層に、移動度が小さいSi層6を備えたので、実施の形態1における半導体装置20と同様の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施の形態1におけるMESFETを備えた半導体装置の構成を示した図である。
【図2】本発明の実施の形態2におけるMESFETを備えた半導体装置の構成を示した図である。
【図3】本発明の実施の形態3におけるMESFETを備えた半導体装置の構成を示した図である。
【図4】従来技術におけるMESFETを備えた半導体装置の構成を示した図である。
【符号の説明】
【0027】
1 絶縁基板、2 緩衝層、3 ソース・ドレイン領域、4 チャネル領域、5 ゲート電極、6 Si層、7 SiGe層、8 InAs層、9 GaAs層、10 GaN層、20,30,40,50 半導体装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電型の半導体基板と、
前記半導体基板上に形成され、第2導電型の半導体層よりなるドレイン領域およびソース領域と、
前記半導体基板上であって前記ドレイン領域とソース領域の間に形成され、第2導電型の2層以上の半導体層よりなるチャネル領域と、
前記チャネル領域上に形成され、前記チャネル領域とショットキー接触をなすゲート電極と、を備える半導体装置。
【請求項2】
前記チャネル領域は、他層よりもキャリア移動度が小さい半導体層が最下層に配置される請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記チャネル領域は、他層よりもバンドギャップが大きい半導体層が最上層に配置される請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記チャネル領域は、下層からSi層/SiGe層/InAs層の3層で形成される請求項1に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記チャネル領域は、下層からSi層/SiGe層/GaAs層の3層で形成される請求項1に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記チャネル領域は、下層からSi層/SiGe層/GaN層の3層で形成される請求項1に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記ゲート電極はPtで形成される請求項1から6のいずれかに記載の半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−164374(P2009−164374A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−1113(P2008−1113)
【出願日】平成20年1月8日(2008.1.8)
【出願人】(503121103)株式会社ルネサステクノロジ (4,790)
【Fターム(参考)】