説明

半導体装置

【課題】ハンプの発現を抑制し、かつ特性がばらつくことを抑制できる半導体装置を提供する。
【解決手段】半導体層に設けられ、素子形成領域を区画する素子分離膜200と、素子形成領域上に形成され、両端がそれぞれ素子分離膜200上に延伸するゲート電極130と、素子形成領域内に形成され、ゲート電極130の直下に位置するチャネル形成領域を挟んで配置されるソース領域およびドレイン領域となる不純物領域110とを備える。ゲート電極130は、両端それぞれにおいて、素子形成領域と素子分離膜200の境界上の少なくとも一部に、他の領域より仕事関数が高い高仕事関数領域124を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハンプを抑制した半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、チップシュリンクの要求に応えるために、さらなるトランジスタの 高集積化が求められている。その解決策の一つとしてSTI(Shallow Trench isolation)と呼ばれる素子分離技術がある。しかし、STIを採用すると、拡散層部とSTI部の境界部分において、ゲート酸化膜が、他の部分と比較して薄くなってしまい、このため寄生トランジスタが形成されてしまう。
【0003】
図4は、寄生トランジスタが形成されたトランジスタにおける、ゲート電圧と、ドレイン電流との関係を示す図である。本図において、Aは、メイントランジスタにおけるゲート電圧と、ドレイン電流との関係を示す曲線であり、Bは、寄生トランジスタにおけるゲート電圧と、ドレイン電流との関係を示す曲線である。寄生トランジスタが形成されたトランジスタは、等価的に閾値電圧の異なる二つのトランジスタが並列に接続されているものと見なすことができる。このため、寄生トランジスタが形成されたトランジスタにおいて、ゲート電圧と、ドレイン電流との関係を示す曲線は、Cに示すように、曲線AとBを合わせた曲線になる。このため、寄生トランジスタが形成されると、曲線Cに示すようにハンプ特性が発現する。
【0004】
ハンプ特性を抑制する従来技術としては、例えば特許文献1に記載の技術がある。本文献に記載されている電界効果トランジスタは、ソース及びドレイン領域と、ソース及びドレイン領域間のチャネル領域と、基板内の分離領域と、チャネル領域上のゲート・ドーパントを含むゲートとを含む。ゲートは、少なくともチャネル領域及び分離領域とオーバラップする領域に、ゲート・ドーパントが実質的に空乏状態にされた領域を含んでいる。空乏領域の下方のチャネル角部領域のしきい値電圧が、角部領域間のチャネル領域に比較して増加するため、ハンプ特性が改善される、とされている。
【0005】
また、ハンプ特性は改善されないが、ゲート電極に関する従来技術として、例えば特許文献2に記載の技術がある。本文献に記載されているMISFETは、ゲート電極にn領域とp領域を有する。さらに、この2つの領域は、抵抗性接触の金属配線で接続されている。これによりn領域とp領域の電圧は常に等しくなる。また、nソース領域とnドレイン領域を含むMISFETの素子領域は素子分離用絶縁膜によって他のMISFETと分離されている。このような構成を有することで、MISFETは、オフ時にはしきい値が高いためにリーク電流が小さくなり、オン時にはしきい値が低いためにオン電流が大きくなる。
【特許文献1】特開2000−101084号公報
【特許文献2】特開2004−303911号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載の技術において、空乏状態にされた領域には、この領域に隣接する領域から不純物が拡散する。このため、空乏状態にされた領域の不純物濃度のばらつきが大きくなり、その結果、半導体装置の特性のばらつきが大きくなる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、半導体層に設けられ、素子形成領域を区画する素子分離膜と、
前記素子形成領域上に形成され、両端がそれぞれ前記素子分離膜上に延伸するゲート電極と、
前記素子形成領域内に形成され、前記ゲート電極の直下に位置するチャネル形成領域を挟んで配置されるソース領域およびドレイン領域と、
を備え、
前記ゲート電極は、両端それぞれにおいて、前記素子形成領域と前記素子分離膜の境界上の少なくとも一部に、他の領域より仕事関数が高い高仕事関数領域を有する半導体装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、前記ゲート電極は、両端それぞれにおいて、前記素子形成領域と前記素子分離膜の境界上の少なくとも一部に、他より仕事関数が高い高仕事関数領域を有する。このため、寄生トランジスタの閾値電圧はメイントランジスタの閾値電圧より高くなる。従って、ハンプの発現を抑制できる。また、空乏化領域を用いていないため、半導体装置の特性がばらつくことを抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0010】
図1は、実施形態にかかる半導体装置の構成を示す平面概略図である。本図に示す半導体装置は、素子分離膜200、ゲート電極130、並びにソース領域およびドレイン領域となる2つの不純物領域110を備える。素子分離膜200は半導体層に設けられ、素子形成領域を区画する。ゲート電極130は、素子形成領域上に形成され、両端が素子分離膜200上に延伸する。不純物領域110は、素子形成領域内に形成され、ゲート電極130の下に位置するチャネル形成領域を挟んで配置されている。
【0011】
素子形成領域と素子分離膜200の境界のうちゲート電極130の下に位置する2つの領域は、それぞれ寄生トランジスタ領域202である。寄生トランジスタ領域202には、寄生トランジスタが形成される。本実施形態において、ゲート電極130は、他の領域より仕事関数が高い高仕事関数領域124を有する。高仕事関数領域124は、素子形成領域と素子分離膜200の境界上すなわち寄生トランジスタ領域202上に位置する2つの領域それぞれの少なくとも一部に形成されている。このため、素子形成領域と素子分離膜200の境界における閾値電圧、即ち寄生トランジスタの閾値電圧がトランジスタ本体の閾値電圧と比べて高くなり、この結果、ハンプの発現を抑制できる。また、空乏化領域を用いていないため、半導体装置の特性がばらつくことを抑制できる。
【0012】
図2は、図1のA−A´断面図である。半導体層100は、例えばシリコンウェハ又はSOI基板のシリコン層である。素子形成領域のチャネル形成領域に位置する半導体層100は、第1導電型(例えばp型)である。図1に示した不純物領域110は、第2導電型(例えばn型)である。素子分離膜200は、例えばSTIである。
【0013】
ゲート電極130は、ポリシリコンパターン120を有している。ポリシリコンパターン120は、高仕事関数領域124を除いて第2導電型である。高仕事関数領域124は、第1導電型である。
【0014】
電界効果型トランジスタにおいて、ゲート電極を構成するポリシリコン層の導電型が基板となる半導体層と同じである場合のゲート電極の仕事関数は、逆である場合と比較して大きくなる。このため、上記実施形態に示すように、ポリシリコンパターン120が第1導電型の高仕事関数領域124を有していると、高仕事関数領域124の下に位置する領域において、寄生トランジスタの閾値電圧が高くなる。このため、ハンプの発現を抑制できる。
【0015】
また、高仕事関数領域124は、ゲート電極130の延伸方向で見た場合に、寄生トランジスタ領域202の全域を覆っている。このため、寄生トランジスタ全体の閾値電圧が高くなり、ハンプの発現をさらに抑制できる。
【0016】
また、高仕事関数領域124は、ゲート電極130の延伸方向で見た場合に、寄生トランジスタ領域202の周囲上にも形成されている。このため、ゲート電極130の延伸方向にマスクずれが生じても、高仕事関数領域124は寄生トランジスタ領域202上を覆うことができる。
【0017】
また、高仕事関数領域124は2つの不純物領域110のいずれにも面しておらず、ポリシリコンパターン120は、不純物領域110に面する領域のすべてが第2導電型である。このため、ゲート電極130の幅方向にマスクずれが生じても、不純物領域110に第1導電型の不純物が導入されて部分的に第1導電型になることを抑制できる。
【0018】
なお、ゲート電極130は、ポリシリコンパターン120上に位置する導電層140を有している。このため、高仕事関数領域124を形成してもゲート電極130の抵抗が上昇することを抑制できる。導電層140は、たとえばシリサイド層である。
【0019】
図3の各図は、図1及び図2に示した高仕事関数領域124の形成方法を説明するための断面図である。図3(A)に示すように、シリコン層100には、素子分離膜200、ゲート絶縁膜(図示せず)、及びポリシリコンパターン120が形成されている。まず、ポリシリコンパターン120上にレジストパターン50を形成する。レジストパターン50は、ポリシリコンパターン120のうち高仕事関数領域124が形成される領域を覆っている。
【0020】
ついで、図3(B)に示すように、ポリシリコンパターン120及びレジストパターン50をマスクとして半導体層100及びポリシリコンパターン120に第2導電型の不純物を導入する。これにより、素子形成領域に不純物領域110が形成され、かつポリシリコンパターン120のうちレジストパターン50で覆われていない領域は、第2導電型になる。なお、高仕事関数領域124が形成される領域には第2導電型の不純物が導入されない。
【0021】
その後、図3(C)に示すように、レジストパターン50を除去する。ついでポリシリコンパターン120上にレジストパターン60を形成する。レジストパターン60は、高仕事関数領域124が形成される領域を除いたポリシリコンパターン120、及び不純物領域110を覆っている。
【0022】
ついで、図3(D)に示すように、レジストパターン60をマスクとして第1導電型の不純物を導入する。これにより、ポリシリコンパターン120には高仕事関数領域124が形成される。なお、形成されるトランジスタがCMOSトランジスタである場合、本工程において第1チャネル型のトランジスタのソース領域及びドレイン領域が形成されてもよい。
【0023】
その後、図3(E)に示すように、レジストパターン60を除去する。
【0024】
以上、本実施形態によれば、ゲート電極130は、寄生トランジスタ領域202上に位置する2つの領域それぞれの少なくとも一部に、他の領域より仕事関数が高い高仕事関数領域124を有する。このため、寄生トランジスタの閾値電圧がメイントランジスタの閾値電圧と比べて高くなり、ハンプの発現が抑制される。このため、トランジスタの特性がばらつくことを抑制でき、かつオフリークを低減することができる。また空乏化領域を用いていないため、電界効果トランジスタの特性がばらつくことを抑制できる。
【0025】
また、高仕事関数領域124は2つの不純物領域110のいずれにも面していない。このため、ゲート電極130の幅方向にレジストパターン50の位置がずれても、不純物領域110に第1導電型の不純物が導入されて部分的に第1導電型になることを抑制できる。
【0026】
また、ゲート電極130は、ポリシリコンパターン120上に位置する導電層140を有している。このため、高仕事関数領域124を形成してもゲート電極130の抵抗が上昇することを抑制できる。
【0027】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。例えばマスクずれを考慮しなくてよい場合は、ゲート電極130の幅方向で見た場合に、高仕事関数領域124はポリシリコンパターン120の全体に形成されていてもよい。また本実施形態において、第1導電型としてp型を例示し、第2導電型としてn型を例示したが、第1導電型がn型であり、第2導電型がp型であってもよい。また、本実施形態において、高仕事関数領域124はポリシリコンパターン120の導電型を変えることにより形成されたが、他の方法により形成されてもよい。
【0028】
また、図3(B)を用いて説明した工程において、高仕事関数領域124が形成される領域に第2導電型の不純物を導入してもよい。この場合、図3(D)を用いて説明した工程において、第1導電型の不純物の導入量を、高仕事関数領域124が形成される領域の導電型が逆転する量にする。
【0029】
また、高仕事関数領域124を構成する材料を、ゲート電極130の他の領域を構成する材料と異ならせることにより、高仕事関数領域124の仕事関数を他の領域と比較して高くしてもよい。
【0030】
このように、高仕事関数領域124の形成方法は様々である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】実施形態にかかる半導体装置の構成を示す平面概略図である。
【図2】図1のA−A´断面図である。
【図3】各図は、図1及び図2に示した高仕事関数領域の形成方法を説明するための断面図である。
【図4】寄生トランジスタが形成されたトランジスタにおける、ゲート電圧と、ドレイン電流との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0032】
50 レジストパターン
60 レジストパターン
100 半導体層
110 不純物領域
120 ポリシリコンパターン
124 高仕事関数領域
130 ゲート電極
140 導電層
200 素子分離膜
202 寄生トランジスタ領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体層に設けられ、素子形成領域を区画する素子分離膜と、
前記素子形成領域上に形成され、両端がそれぞれ前記素子分離膜上に延伸するゲート電極と、
前記素子形成領域に形成され、前記ゲート電極の下に位置するチャネル形成領域を挟んで配置されるソース領域およびドレイン領域と、
を備え、
前記ゲート電極は、両端それぞれにおいて、前記素子形成領域と前記素子分離膜の境界上の少なくとも一部に、他の領域より仕事関数が高い高仕事関数領域を有する半導体装置。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記チャネル形成領域に位置する前記半導体層は第1導電型であり、
前記ゲート電極は、第2導電型であり、
前記高仕事関数領域は、前記ゲート電極の一部に形成され、前記境界上に位置する第1導電型領域である半導体装置。
【請求項3】
請求項2に記載の半導体装置において、
前記ゲート電極は、
第2導電型の半導体パターンと、
前記半導体パターンに形成され、前記高仕事関数領域である前記第1導電型領域と、
前記半導体パターン上に形成された導電層と
を有する半導体装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の半導体装置において、前記第1導電型領域は、前記ソース領域及び前記ドレイン領域のいずれにも面していない半導体装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2010−87436(P2010−87436A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−257918(P2008−257918)
【出願日】平成20年10月3日(2008.10.3)
【出願人】(302062931)NECエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】