説明

半導体装置

【課題】半導体装置に設けられる従来のチャージポンプ回路は電流駆動能力が低下する問題があった。
【解決手段】本発明の半導体装置は、第1の駆動トランジスタP11を介して蓄積された第1のポンピングキャパシタC1の電荷に基づき第1の制御信号を生成する第1チャージポンプ回路11と、第2の駆動トランジスタP21を介して蓄積された第2のポンピングキャパシタC2の電荷に基づき第2の制御信号を生成する第2チャージポンプ回路12と、第3の駆動トランジスタP32を介して端子OUT−端子VSS間の電荷の受け渡しを行う第3のチャージポンプ回路13と、第4の駆動トランジスタP42を介して端子OUT−端子VSS間の電荷の受け渡しを行う第4のチャージポンプ回路14と、を有し、第1、第3の駆動トランジスタは第2の制御信号に基づき導通状態が制御され、第2、第4の駆動トランジスタは第1の制御信号に基づき導通状態が制御される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体装置に関し、特にチャージポンプ回路を備えた半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体装置では、チップ面積を小さくすることで、コストの削減を実現している。一方、半導体装置には、電源回路の1つとして回路面積の大きなチャージポンプ回路を備えたものがある。そのため、チャージポンプ回路の面積削減は、半導体装置のコストを削減に大きな効果がある。しかし、チャージポンプ回路は、電源回路であるため高い電流駆動能力が要求される。このようなことから、高い電流駆動能力と小さな回路面積のチャージポンプ回路が要求されている。
【0003】
ここで、チャージポンプ回路の一例が特許文献1の図5(以下、チャージポンプ回路100と称す)に開示されている。チャージポンプ回路100は、基準電圧(例えば、接地電圧VSS)よりも低い電圧を出力する負電圧チャージポンプ回路である。このチャージポンプ回路100の回路図を図5に示す。図5に示すように、チャージポンプ回路100は、発振回路110、PMOSトランジスタ101、102、108、109、ポンピングキャパシタ104、111を有する。
【0004】
発振回路110からは互いに相補なクロックを出力し、この出力によって2系統のチャージポンプ回路を駆動する。片方のチャージポンプ回路はポンピングキャパシタ104と整流素子であるPMOSトランジスタ101、102で構成されており、もう一方のチャージポンプ回路はポンピングキャパシタ111と整流素子であるPMOSトランジスタ108、109で構成されている。
【0005】
続いて、チャージポンプ回路100の動作を説明する。発振回路110から出力された互いに相補なクロック信号によってポンピングキャパシタ104と111が逆相で駆動される。ポンピングキャパシタ104にハイレベルのクロック信号が入力されるとノード106の電位が上昇する。このとき、ポンピングキャパシタ111にはロウレベルのクロック信号が入力されてノード113の電位が降下する。そして、ノード106とノード113の電位差によってPMOSトランジスタ101がオンし、ノード106の電荷がVSSに放出される。
【0006】
引き続いて、ポンピングキャパシタ104にロウレベルのクロック信号が入力され、ノード106の電位が降下する。このとき、ポンピングキャパシタ111にはハイレベルのクロック信号が入力されてノード113の電位が上昇し、PMOSトランジスタ101がオフする。ノード106の電位が上記のVSSに放出された電荷分降下するので、基板とノード106の電位差によってPMOSトランジスタ102がオンし、基板の正の電荷がノード106に吸い上げられる。このような動作を繰り返しして基板電流を供給する。一方のチャージポンプ回路で基板の電荷を吸い上げている間に、もう一方のチャージポンプ回路で余った電荷をVSSに放出するので、リップルが少ない基板電流を供給できる。
【0007】
特許文献1では、分周回路と多段構成のチャージポンプ回路(特許文献1の図1等)を用いることによりチャージポンプ回路100の電流駆動能力を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平6−150652号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載のいずれのチャージポンプ回路においても、回路構成による電流駆動能力の低下が生じる。この問題を図5に示すチャージポンプ回路100を参照して詳細に説明する。
【0010】
チャージポンプ回路100では、基板から電荷を吸い上げるため、クロック信号がロウレベルである期間にノード106、113の電位が上昇する。そのため、この期間にPMOSトランジスタ101、108のゲート・ソース間電圧VGSが小さくなる。そして、PMOSトランジスタ101、108のゲート・ソース間電圧VGSが小さくなることで、PMOSトランジスタ101、108のオン抵抗が増大し、ハイレベルのクロック信号が与えられたポンピングキャパシタ104、111が十分にチャージアップされない問題が発生する。このように、十分にチャージアップされていないポンピングキャパシタ104、111により、次の電荷の吸い上げ動作を行った場合、ポンピングキャパシタ104、111による電荷の吸い上げ量が減少して、チャージポンプ回路100の電流駆動能力が低下する。
【0011】
また、基板から他の回路への電荷の供給が多くなる過負荷の状態においては、上記問題の状態よりもさらに電流駆動能力が低下する問題が発生する。過負荷の状態では、基板の電位は上記の状態よりもさらに低下する。そのため、クロック信号がロウレベルの期間のノード106、113の電位は、上記状態よりもさらに低下する。この過負荷の状態において例えば、ポンピングキャパシタ104にロウレベルのクロック信号が入力され、ポンピングキャパシタ111にハイレベルのクロック信号が入力されている状態を例にこの状態における問題を説明する。
【0012】
この場合、ポンピングキャパシタ104は、基板から電荷を吸い上げるため、ノード106の電位が上昇する。一方、ポンピングキャパシタ111にはクロック信号がロウレベルであった期間に基板から吸い上げた電荷が蓄積されており、ノード113の電位は接地電圧VSSより低い状態となる。このとき、PMOSトランジスタ108がノード106の電位に応じてオンするが、ノード106の電位がポンピングキャパシタ104による電荷の吸い上げ動作に応じて上昇しているため、オン抵抗が高い状態となる。そのため、ノード113の電位は、PMOSトランジスタ108がオンしても、接地電圧VSSよりも低い状態となる。一方、このノード113の電位が理想状態(例えば接地電圧VSS)であれば、PMOSトランジスタ101は完全なオフ状態となる。しかし、過負荷の状態では、ノード113の電位が接地電圧VSSよりも低くなるため、PMOSトランジスタ101が完全にオフ状態とならず、ノード106又はポンピングキャパシタ104に接地電圧VSSから電荷が流入する。そして、この流入した電荷により、ポンピングキャパシタ104により本来基板から吸い上げられるはずの電荷が十分に吸い上げられない状態となる。つまり、過負荷の状態においては、ポンピングキャパシタによる電荷の吸い上げ能力が大きく低下することになるため、チャージポンプ回路100の電流駆動能力がさらに低下する問題が発生する。
【0013】
上記説明より、チャージポンプ回路100では、電荷の吸い上げに伴い電位が上昇するノード106、104により、他方のチャージポンプ回路の駆動トランジスタ(PMOSトランジスタ101、108)をオンさせるため、電流駆動能力が低下する問題が発生する。特許文献1に記載のいずれのチャージポンプ回路においてもこの回路構成は、共通しているため、特許文献1に記載の技術では、回路構成に起因する駆動能力の低下が発生する。
【0014】
この駆動能力の低下の問題を解決するためには、ポンピングキャパシタの容量値を大きくすることが1つの手段であるが、この解決手段を用いた場合、回路面積が増大する問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明にかかる半導体装置の一態様は、相補関係を有する第1、第2のクロック信号を生成する発振回路と、第1の電流経路に設けられた第1の駆動トランジスタを介して前記第1のクロック信号の電圧レベルと基準電圧端子の電圧との電圧差に応じた電荷を第1のポンピングキャパシタに充電し、前記第1のポンピングキャパシタに蓄積された電荷に基づき第1の制御信号を生成する第1チャージポンプ回路と、第2の電流経路に設けられた第2の駆動トランジスタを介して前記第2のクロック信号の電圧レベルと前記基準電圧端子の電圧との電圧差に応じた電荷を第2のポンピングキャパシタに充電し、前記第2のポンピングキャパシタに蓄積された電荷に基づき第2の制御信号を生成する第2チャージポンプ回路と、第3の電流経路の導通状態を制御する第3の駆動トランジスタを有し、前記第3の電流経路を介して前記出力端子と前記基準電圧端子との間の電荷の受け渡しを行う第3のチャージポンプ回路と、第4の電流経路の導通状態を制御する第4の駆動トランジスタを有し、前記第4の電流経路を介して前記出力端子と前記基準電圧端子との間の電荷の受け渡しを行う第4のチャージポンプ回路と、を有し、前記第1、第3の駆動トランジスタは前記第2の制御信号に基づき導通状態が制御され、前記第2、第4の駆動トランジスタは前記第1の制御信号に基づき導通状態が制御される。
【0016】
本発明にかかる半導体装置では、出力端子から電荷の回収と排出とを行う電流経路が駆動トランジスタを制御する第1、第2の制御信号を生成するノードと分離して設けられる。そのため、第1、第2の制御信号の信号レベルは、出力端子から吸い上げられる電荷によるポンピングノードの電位の上昇の影響を受けない。従って、本発明にかかるチャージポンプ回路では、駆動トランジスタのオン・オフの状態を常に理想の状態とすることができ、電流駆動能力の低下を防ぐことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明にかかる半導体装置によれば、回路面積の増大を招くことなく電流駆動能力の低下を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施の形態1にかかる半導体装置の回路図である。
【図2】実施の形態1にかかる半導体装置の動作を示すタイミングチャートである。
【図3】実施の形態2にかかる半導体装置の回路図である。
【図4】実施の形態3にかかる半導体装置の回路図である。
【図5】特許文献1に記載のチャージポンプ回路の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
実施の形態1
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1に本実施の形態にかかる半導体装置内に設けられるチャージポンプ回路1の回路図を示す。図1に示すように、チャージポンプ回路1は、発振回路10、第1のチャージポンプ回路11、第2のチャージポンプ回路12、第3のチャージポンプ回路13、第4のチャージポンプ回路14を有する。このチャージポンプ回路1は、基準電圧として基準電圧端子から入力される接地電圧VSSを用いる。また、チャージポンプ回路1は、チャージポンプ回路が形成される半導体装置の基板領域の電圧を生成する。つまり、チャージポンプ回路1では、半導体装置の基板領域が出力端子に相当する。また、チャージポンプ回路1は、基準電圧よりも低い電圧(負電圧)を出力端子に出力するものとする。本実施の形態では、基準電圧として接地電圧VSSを用いる。そのため、本実施の形態では、基準電圧端子として接地端子を有する。
【0020】
発振回路10は、相補関係を有する第1、第2のクロック信号を出力する。発振回路10が出力する第1のクロック信号は、ノードND11を介して第1のチャージポンプ回路11及び第3のチャージポンプ回路13に与えられる。また、第2のクロック信号は、ノードND12を介して第2のチャージポンプ回路12及び第4のチャージポンプ回路14に与えられる。
【0021】
第1のチャージポンプ回路11は、第1の駆動トランジスタP11、第1のポンピングキャパシタC1を有する。第1のポンピングキャパシタC1は、一方の端子に第1のクロック信号が入力され、他方の端子が第1の制御信号が生成される第1のポンピングノードND1に接続される。本実施の形態では、第1の駆動トランジスタP11としてPMOSトランジスタを用いる。第1の駆動トランジスタP11は、第1のポンピングノードND1と接地端子との間に接続される。また、第1の駆動トランジスタP11のゲートは、第2のポンピングノードND2に接続され、第2のチャージポンプ回路12が生成する第2の制御信号により導通状態が制御される。以下の説明では、第1の駆動トランジスタP11を介して形成される電流経路を第1の電流経路と称す。第1のチャージポンプ回路11は、このような回路構成に基づき、第1の電流経路に設けられた第1の駆動トランジスタP11を介して第1のクロック信号の電圧レベルと接地電圧VSSとの電圧差に応じた電荷を第1のポンピングキャパシタC1に充電し、第1のポンピングキャパシタC1に蓄積された電荷に基づき第1の制御信号を生成する。
【0022】
第2のチャージポンプ回路12は、第2の駆動トランジスタP21、第2のポンピングキャパシタC2を有する。第2のポンピングキャパシタC2は、一方の端子に第2のクロック信号が入力され、他方の端子が第2の制御信号が生成される第2のポンピングノードND2に接続される。本実施の形態では、第2の駆動トランジスタP21としてPMOSトランジスタを用いる。第2の駆動トランジスタP21は、第2のポンピングノードND2と接地端子との間に接続される。また、第2の駆動トランジスタP21のゲートは、第1のポンピングノードND1に接続され、第1のチャージポンプ回路11が生成する第1の制御信号により導通状態が制御される。以下の説明では、第2の駆動トランジスタP21を介して形成される電流経路を第2の電流経路と称す。第2のチャージポンプ回路12は、このような回路構成に基づき、第2の電流経路に設けられた第2の駆動トランジスタP21を介して第2のクロック信号の電圧レベルと接地電圧VSSとの電圧差に応じた電荷を第2のポンピングキャパシタC2に充電し、第2のポンピングキャパシタC2に蓄積された電荷に基づき第2の制御信号を生成する。
【0023】
第3のチャージポンプ回路13は、第1の整流素子、第3の駆動トランジスタP32、第3のポンピングキャパシタC3を有する。第3のポンピングキャパシタC3は、一方の端子に第1のクロック信号が入力され、他方の端子が第3のポンピングノードND3に接続される。第1の整流素子は、PMOSトランジスタP31が用いられる。PMOSトランジスタP31は、第3のポンピングノードND3と基板領域との間に接続され、ゲートが第3のポンピングノードND3に接続される。つまり、PMOSトランジスタP31は、基板領域から第3のポンピングノードND3に向かって順方向に接続されるダイオードとして機能する。本実施の形態では、第3の駆動トランジスタP32としてPMOSトランジスタを用いる。第3の駆動トランジスタP32は、第3のポンピングノードND3と接地端子との間に接続され、ゲートに第2のポンピングノードND2が接続される。つまり、第3の駆動トランジスタP32は、第2の制御信号により導通状態が制御される。以下の説明では、第3の駆動トランジスタP32を介して形成される電流経路を第3の電流経路と称す。このような回路構成に基づき、第3のチャージポンプ回路13は、第1のクロック信号に基づき基板領域からの電荷の回収と、第3の電流経路を介した接地端子への電荷の排出とを行う。
【0024】
第4のチャージポンプ回路14は、第2の整流素子、第4の駆動トランジスタP42、第4のポンピングキャパシタC4を有する。第4のポンピングキャパシタC4は、一方の端子に第2のクロック信号が入力され、他方の端子が第4のポンピングノードND4に接続される。第2の整流素子は、PMOSトランジスタP41が用いられる。PMOSトランジスタP41は、第4のポンピングノードND4と基板領域との間に接続され、ゲートが第4のポンピングノードND4に接続される。つまり、PMOSトランジスタP41は、基板領域から第4のポンピングノードND4に向かって順方向に接続されるダイオードとして機能する。本実施の形態では、第4の駆動トランジスタP42としてPMOSトランジスタを用いる。第4の駆動トランジスタP42は、第4のポンピングノードND4と接地端子との間に接続され、ゲートに第4のポンピングノードND4が接続される。つまり、第4の駆動トランジスタP42は、第1の制御信号により導通状態が制御される。以下の説明では、第4の駆動トランジスタP42を介して形成される電流経路を第4の電流経路と称す。このような回路構成に基づき、第4のチャージポンプ回路14は、第2のクロック信号に基づき基板領域からの電荷の回収と、第4の電流経路を介した接地端子への電荷の排出とを行う。
【0025】
続いて、チャージポンプ回路1の動作について説明する。チャージポンプ回路1の動作を示すタイミングチャートを図2に示す。図2に示すように、チャージポンプ回路1は、発振回路10が生成する第1のクロック信号(図2のノードND11の信号)と第2のクロック信号(図2のノードND12の信号)とに基づき動作する。
【0026】
まず、タイミングT1では、第1のクロック信号がロウレベルからハイレベルに切り替わり、第2のクロック信号がハイレベルからロウレベルに切り替わる。このクロックの切り替わりに応じて、第1のポンピングノードND1の電位及び第3のポンピングノードND3の電位が上がり、第2のポンピングノードND2の電位及び第4のポンピングノードND4の電位は下がる。
【0027】
このとき、第1のポンピングノードND1の電位が上がることで、第1のポンピングノードND1に生成される第1の制御信号により制御される第2の駆動トランジスタP21及び第4の駆動トランジスタP42は、ゲート・ソース間電圧VGSが実質的にゼロとなり、オフする。そして、第4の駆動トランジスタP42がオフし、第4のポンピングノードND4の電位が下がることで、第2の整流素子(例えば、PMOSトランジスタP41)が基板領域から第4のポンピングノードND4に電流を流す。この電流により、第4のチャージポンプ回路14は、第4のポンピングキャパシタC4に基板から電荷を吸い上げる。このとき、第4のポンピングノードND4の電位が上昇するが、第4のポンピングノードND4と第2の制御信号が生成される第2のポンピングノードND2とは直流的に絶縁されているため、第2の制御信号の電位は変動しない。
【0028】
一方、第2のポンピングノードND2の電位が下がることで、第2のポンピングノードND2に生成される第2の制御信号により制御される第1の駆動トランジスタP11及び第3の駆動トランジスタP32は、ゲート・ソース間電圧VGSが閾値以上となり、オンする。そして、第1の駆動トランジスタP11がオンすることで、第1の電流経路が形成され、第1のポンピングノードND1は接地電圧VSSとなる。また、第1のポンピングキャパシタC1の両端には、接地電圧VSSとクロック信号のハイレベル(例えば、電源電圧)との電位差が生じる。そして、第1のポンピングキャパシタC1には、この電位差に応じた電荷が蓄積される。また、第2のポンピングノードND2の電位が下がることで、第3の駆動トランジスタP32がオンする。これにより、第3の電流経路が形成され、第3のポンピングノードND3の電位は接地電圧VSSとなる。そして、第3のポンピングキャパシタC3に蓄積された電荷のうち接地電圧VSSと第1のクロック信号のハイレベル電圧との電圧差に基づき蓄積される電荷よりも多くなる電荷(余った電荷)は第3の電流経路を介して接地端子に排出される。なお、このとき、第1の整流素子(PMOSトランジスタP31)の両端の電圧は、ダイオードの逆方向電圧となるため、第3のポンピングキャパシタC3から基板領域方向には電流は流れない。
【0029】
続いて、タイミングT2では、第1のクロック信号がハイレベルからロウレベルに切り替わり、第2のクロック信号がロウレベルからハイレベルに切り替わる。このクロックの切り替わりに応じて、第1のポンピングノードND1の電位及び第3のポンピングノードND3の電位が下がり、第2のポンピングノードND2の電位及び第4のポンピングノードND4の電位は上がる。
【0030】
このとき、第1のポンピングノードND1の電位が下がることで、第1のポンピングノードND1に生成される第1の制御信号により制御される第2の駆動トランジスタP21及び第4の駆動トランジスタP42は、ゲート・ソース間電圧VGSが閾値以上となり、オンする。そして、第2の駆動トランジスタP21がオンすることで、第2の電流経路が形成され、第2のポンピングノードND2は接地電圧VSSとなる。また、第2のポンピングキャパシタC2の両端には、接地電圧VSSとクロック信号のハイレベル(例えば、電源電圧)との電位差が生じる。そして、第2のポンピングキャパシタC2には、この電位差に応じた電荷が蓄積される。また、第1のポンピングノードND1の電位が下がることで、第4の駆動トランジスタP42がオンする。これにより、第4の電流経路が形成され、第4のポンピングノードND4の電位は接地電圧VSSとなる。そして、第4のポンピングキャパシタC4に蓄積された電荷のうち接地電圧VSSと第1のクロック信号のハイレベル電圧との電圧差に基づき蓄積される電荷よりも多くなる電荷(余った電荷)は第4の電流経路を介して接地端子に排出される。なお、このとき、第2の整流素子(PMOSトランジスタP41)の両端の電圧は、ダイオードの逆方向電圧となるため、第4のポンピングキャパシタC4から基板領域方向には電流は流れない。
【0031】
一方、第2のポンピングノードND2の電位が上がることで、第2のポンピングノードND2に生成される第2の制御信号により制御される第1の駆動トランジスタP11及び第3の駆動トランジスタP32は、ゲート・ソース間電圧VGSが実質的にゼロとなり、オフする。そして、第3の駆動トランジスタP32がオフし、第3のポンピングノードND3の電位が下がることで、第1の整流素子(例えば、PMOSトランジスタP31)が基板領域から第3のポンピングノードND3に電流を流す。この電流により、第3のチャージポンプ回路13は、第3のポンピングキャパシタC3に基板から電荷を吸い上げる。このとき、第3のポンピングノードND3の電位が上昇するが、第3のポンピングノードND3と第1の制御信号が生成される第1のポンピングノードND1とは直流的に絶縁されているため、第1の制御信号の電位は変動しない。
【0032】
タイミングT3以降の期間は、タイミングT1における動作と、タイミングT2における動作が繰り返し行われる。
【0033】
上記説明より、本発明にかかる半導体装置内に設けられるチャージポンプ回路1では、基板領域から電荷を吸い上げる第3のポンピングノードND3及び第4のポンピングノードND4と、電荷を排出する接地端子と、を接続する電流経路が、第1、第2の制御信号の電位を生成する第1のポンピングノードND1及び第2のポンピングノードND2と直流的に分離される回路構成を有する。そのため、チャージポンプ回路1は、第3のポンピングノードND3及び第4のポンピングノードND4の電荷の吸い上げによる電位変動が第1、第2の制御信号の電位に影響を及ぼさない。従って、チャージポンプ回路1では、第1乃至第4の駆動トランジスタの駆動能力を低減することがない。また、第1乃至第4の駆動トランジスタにより形成される第1乃至第4の電流経路を基板領域の電位によらず常に理想状態とすることができる。つまり、チャージポンプ回路1では、回路構成に起因する電流駆動能力の低下は発生せず、第3のポンピングキャパシタC3及び第4のポンピングキャパシタC4の容量値により決まる電流駆動能力を十分に発揮させることができる。つまり、本発明にかかる半導体装置内に設けられるチャージポンプ回路1は、必要最小限の回路面積で形成することができる。
【0034】
また、チャージポンプ回路1では、駆動トランジスタのゲート・ソース間電圧VGSが基板電位の影響で低下しないため、第3のポンピングノードND3及び第4のポンピングノードND4の充放電が短時間で行える。このことから、本発明にかかる半導体装置内に設けられるチャージポンプ回路1は、チャージポンプの動作速度低下を改善することができる。
【0035】
また、第1、第2の制御信号は、第1、第2のクロック信号の振幅範囲をレベルシフトさせたものに相当する。この第1、第2の制御信号は、本実施の形態にかかるチャージポンプ回路1では、第1、第2の制御信号を第1のチャージポンプ回路11及び第2のチャージポンプ回路12により生成する。通常、レベルシフトした信号を生成するためには、レベルシフト回路等を用いるが、レベルシフト回路では、レベルシフト後の振幅範囲に相当する別電源が必要となる。しかし、本実施の形態にかかるチャージポンプ回路1では。レベルシフトさせた信号を第1のチャージポンプ回路11及び第2のチャージポンプ回路12により生成することで、この別電源を必要としない。このようなことから、本発明にかかる半導体装置内に設けられるチャージポンプ回路1では、簡易な回路構成で実現することができ、回路面積の増大を防ぐことができる。
【0036】
実施の形態2
実施の形態2にかかるチャージポンプ回路2の回路図を図3に示す。図3に示すように、チャージポンプ回路2は、実施の形態1にかかるチャージポンプ回路1の第1、第2の整流素子をNMOSトランジスタを用いて実現したものである。実施の形態2にかかるチャージポンプ回路2では、第1の整流素子としてNMOSトランジスタN31が用いられ、第2の整流素子としてNMOSトランジスタN41が用いられる。
【0037】
NMOSトランジスタN31は、ソース(バックゲート端子が接続される端子)が基板領域に接続され、ドレインが第3のポンピングノードND3に接続され、ゲートが第2のポンピングノードND2に接続される。つまり、NMOSトランジスタN31は、第2の制御信号により導通状態が制御される。NMOSトランジスタN41は、ソース(バックゲート端子が接続される端子)が基板領域に接続され、ドレインが第4のポンピングノードND4に接続され、ゲートが第1のポンピングノードND1に接続される。つまり、NMOSトランジスタN41は、第1の制御信号により導通状態が制御される。
【0038】
このように、第3の駆動トランジスタP32と第1の駆動素子(又は第4の駆動トランジスタP42と第2の駆動素子)が逆の極性のトランジスタにより構成されている場合、同一の制御信号に基づき、駆動トランジスタと整流素子とが導通する状態を排他的に制御することができる。つまり、チャージポンプ回路2のポンプ動作(基板領域からの電荷の回収と、接地端子への電荷の排出と、を行う動作)は、チャージポンプ回路1と実質的に同じになる。
【0039】
一方、チャージポンプ回路2では、整流素子としてダイオードを用いないため、チャージポンプ回路1よりも電流駆動能力を高める効果を有する。これは、整流素子としてダイオードを用いた場合、ダイオードの順方向電圧により、第3のポンピングキャパシタC3及び第4のポンピングキャパシタC4に蓄積できる電荷量が減少するのに対して、整流素子としてトランジスタ(特にMOSトランジスタ)を用いた場合、第3のポンピングキャパシタC3及び第4のポンピングキャパシタC4に蓄積できる電荷量をダイオードを用いた場合よりも増やすことができるためである。つまり、実施の形態2にかかるチャージポンプ回路2は、実施の形態1にかかるチャージポンプ回路1よりも電流駆動能力を高めることができる。
【0040】
実施の形態3
実施の形態3にかかるチャージポンプ回路3の回路図を図4に示す。チャージポンプ回路3は、チャージポンプ回路2を変形例して正電圧チャージポンプを示すものである。図4に示すように、チャージポンプ回路3では、出力端子は、基板領域ではなく、例えば電源供給先の回路(不図示)が接続される。また、基準電圧端子として電源端子が用いられており、基準電圧として電源電圧VDDが与えられる。さらに、チャージポンプ回路3では、第1乃至第4の駆動トランジスタとしてNMOSトランジスタが用いられ、整流素子としてPMOSトランジスタが用いられる。なお、図4では、第1の駆動トランジスタとしてNMOSトランジスタN11が示され、第2の駆動トランジスタとしてNMOSトランジスタN21が示され、第3の駆動トランジスタとしてN32が示され、第4の駆動トランジスタとしてNMOSトランジスタN42が示され、第1の整流素子としてPMOSトランジスタP33が示され、第2の整流素子としてPMOSトランジスタP43が示されている。チャージポンプ回路3の回路素子の接続はチャージポンプ回路2と実質的に同じであるため、説明を省略する。
【0041】
続いて、チャージポンプ回路3の動作について説明する。ここでは、第1のチャージポンプ回路11及び第3のチャージポンプ回路13の動作について説明する。なお、第2のチャージポンプ回路12及び第4のチャージポンプ回路14の動作は、第1のチャージポンプ回路11及び第3のチャージポンプ回路13の動作と対になるものであり、実施的には同じ動作となるため、ここでは、説明を省略する。
【0042】
第3のポンピングキャパシタ104の一方の端子にハイレベルの第1のクロック信号が入力されると、第3のポンピングノードND3の電位がVDDに到達後、電源電圧分上昇するので、出力端子OUTと第2のポンピングノードND4の電位差によって第1の整流素子P33を介して、第3のポンピングノードND3から出力端子OUTへ電荷の流出が起きる。一方、第1のポンピングノードND1は、実施の形態1にかかるチャージポンプ回路1の動作と同様に、第1の駆動トランジスタN11がオフしているため、出力端子OUTと直流的に絶縁されているため、電位を保持する。
【0043】
このように、昇圧型のチャージポンプ回路を構成した場合においても、チャージポンプ回路3では、出力端子と第1、第2の制御信号を生成するノードとを直流的に絶縁することで、第1、第2の制御信号の電圧レベルに出力電圧の影響が及ぶのを避けることができる。これにより、チャージポンプ回路3においても、チャージポンプ回路1、2と同様に電流駆動能力を向上させ、回路規模の増大を防止することができる。
【0044】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0045】
1〜3 チャージポンプ回路
10 発振回路
11〜14 チャージポンプ回路
C1〜C4 ポンピングキャパシタ
N11、N21、N32、N42 NMOSトランジスタ(駆動トランジスタ)
N31、N41 NMOSトランジスタ(整流素子)
ND1〜ND4 ポンピングノード
ND11、ND12 ノード
OUT 出力端子
P11、P21、P32、P42 PMOSトランジスタ(駆動トランジスタ)
P31、P33、P41、P43 PMOSトランジスタ(整流素子)
VDD 電源電圧
VSS 接地電圧

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相補関係を有する第1、第2のクロック信号を生成する発振回路と、
第1の電流経路に設けられた第1の駆動トランジスタを介して前記第1のクロック信号の電圧レベルと基準電圧端子の電圧との電圧差に応じた電荷を第1のポンピングキャパシタに充電し、前記第1のポンピングキャパシタに蓄積された電荷に基づき第1の制御信号を生成する第1チャージポンプ回路と、
第2の電流経路に設けられた第2の駆動トランジスタを介して前記第2のクロック信号の電圧レベルと前記基準電圧端子の電圧との電圧差に応じた電荷を第2のポンピングキャパシタに充電し、前記第2のポンピングキャパシタに蓄積された電荷に基づき第2の制御信号を生成する第2チャージポンプ回路と、
第3の電流経路の導通状態を制御する第3の駆動トランジスタを有し、前記第3の電流経路を介して前記出力端子と前記基準電圧端子との間の電荷の受け渡しを行う第3のチャージポンプ回路と、
第4の電流経路の導通状態を制御する第4の駆動トランジスタを有し、前記第4の電流経路を介して前記出力端子と前記基準電圧端子との間の電荷の受け渡しを行う第4のチャージポンプ回路と、を有し、
前記第1、第3の駆動トランジスタは前記第2の制御信号に基づき導通状態が制御され、
前記第2、第4の駆動トランジスタは前記第1の制御信号に基づき導通状態が制御される半導体装置。
【請求項2】
前記第1のポンピングキャパシタは、一方の端子に前記第1のクロック信号が入力され、他方の端子が前記第1の制御信号が生成される第1のポンピングノードに接続され、
前記第1の駆動トランジスタは、前記第1のポンピングノードと前記基準電圧端子との間に接続され、
前記第2のポンピングキャパシタは、一方の端子に前記第2のクロック信号が入力され、他方の端子が前記第2の制御信号が生成される第2のポンピングノードに接続され、
前記第2の駆動トランジスタは、前記第2のポンピングノードと前記基準電圧端子との間に接続される請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第3のチャージポンプ回路は、
一方の端子に前記第1のクロック信号が入力され、他方の端子が第3のポンピングノードに接続され、前記電荷を蓄積する第3のポンピングコンデンサと、
前記第3のポンピングノードと前記出力端子との間に接続され、前記出力端子から前記第3のポンピングコンデンサに向かって電流を流す第1の整流素子と、を有し、
前記第3の駆動トランジスタは、前記第3のポンピングノードと前記基準電圧端子との間に接続され、
前記第4のチャージポンプ回路は、
一方の端子に前記第2のクロック信号が入力され、他方の端子が第4のポンピングノードに接続され、前記電荷を蓄積する第4のポンピングコンデンサと、
前記第4のポンピングノードと前記出力端子との間に接続され、前記出力端子から前記第4のポンピングコンデンサに向かって電流を流す第2の整流素子と、を有し、
前記第4の駆動トランジスタは、前記第4のポンピングノードと前記基準電圧端子との間に接続される請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第1、第2の整流素子は、ダイオード接続されたトランジスタであって、前記トランジスタのアノード端子に対応する端子は前記出力端子に接続される請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第1の整流素子は、前記第3の駆動トランジスタとは逆の極性を有するトランジスタであって、制御端子に前記第2の制御信号が入力され、
前記第2の整流素子は、前記第4の駆動トランジスタとは逆の極性を有するトランジスタであって、制御端子に前記第1の制御信号が入力される請求項3に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第1乃至第4の駆動トランジスタは、同一の極性を有するトランジスタである請求項1乃至5に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記基準電圧端子は、接地端子、又は、電源端子である請求項1乃至6のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記第1、第2のクロック信号は、接地電圧から電源電圧に至る振幅範囲を有する請求項1乃至7のいずれか1項に記載の半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−50172(P2011−50172A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−196333(P2009−196333)
【出願日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】