説明

半導体製造装置、及び半導体装置の製造方法

【課題】リードフレームからランナー樹脂を分離することを容易にすることができる。
【解決手段】第1押さえ部材100は、ランナー樹脂320が一面側に凸状に湾曲する形状にリードフレーム300を保持している。第2押さえ部材200のうち第1押さえ部材100と対向する面は、凸状に湾曲したリードフレーム300に沿う形状を有している。制御部150は、ランナー樹脂320と重なる位置に設けられた貫通穴120を通して可動な複数のピン140を、両端部から中心部に向けて順次ランナー樹脂320を押し上げる方向に突出させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の樹脂封止後のリードフレーム上の不要な樹脂を除去する半導体製造装置、及び半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体部品の製造工程の一つに、半導体装置を樹脂封止した後にリードフレーム上から不要な樹脂(以下ランナー樹脂)を除去する工程がある。ランナー樹脂の除去方法として、ランナー樹脂をエジェクタピンによって押し上げることでリードフレームからランナー樹脂を分離除去するという方法が広く用いられている。
【0003】
半導体装置の樹脂封止には、信頼性を確保するためにリードフレームや半導体装置への密着性が高い樹脂が用いられる。この場合、ランナー樹脂の除去に際して、ランナー樹脂がリードフレーム上に付着したままとなることがある。この問題を解決するために、例えば特許文献1、及び2に記載の技術がある。
【0004】
特許文献1に記載の技術は、半導体部品近傍のランナー樹脂に凸状の樹脂溜まりを設け、リードフレームと半導体部品を同時に回転させるというものである。特許文献2に記載の技術は、リードフレームのエンド側を揺動台に乗せ、リードフレームのゲート側を移動するローラーで順次押し下げていくというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−237255号公報
【特許文献2】特開11−274188号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
環境への配慮から、封止用の樹脂として、ハロゲン系難燃材を用いない樹脂への切り替えが進んでいる。代替難燃材を用いた樹脂は、ハロゲン系難燃材を用いた樹脂に比べて一般に樹脂強度が低い。密着性が高く、樹脂強度が低い樹脂を用いた場合、ランナー樹脂をリードフレームから分離する工程において、分離が行われる前にランナー樹脂を破壊してしまうことがある。この場合、特許文献1、及び2に記載の技術ではランナー樹脂をリードフレームから分離除去することは困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、一面に半導体チップと、前記半導体チップを封止する封止樹脂と、前記封止樹脂に繋がっているランナー樹脂とを有するリードフレームを保持し、前記ランナー樹脂と重なる位置に貫通穴が複数設けられている第1押さえ部材と、
前記貫通穴を通して可動な複数のピンと、
前記リードフレームを挟んで前記第1押さえ部材と対向し、前記リードフレームを押さえ、前記第1押さえ部材と対向する面のうち前記ランナー樹脂と重なる位置に凹みを有する第2押さえ部材と、
前記複数のピンの動きを制御する制御部と、
を備え、
前記第1押さえ部材は、前記ランナー樹脂が前記一面側に凸状に湾曲する形状に前記リードフレームを保持し、
前記第2押さえ部材のうち前記第1押さえ部材と対向する面は、前記凹部を除いて凸状に湾曲した前記リードフレームに沿う形状を有し、
前記制御部は、前記複数のピンを前記リードフレームの両端部から中心部に向けて順次、前記ランナー樹脂を押し上げる方向に突出させる半導体製造装置が提供される。
【0008】
本発明によれば、第1押さえ部材及び第2押さえ部材によって押さえられたリードフレームが凸状に湾曲することで、リードフレームとランナー樹脂の境に剥離力が働く。また湾曲したランナー樹脂を両端部から中心に順に押し上げることで、ランナー樹脂の端部から発生する剥離線にランナー樹脂を押し上げる力が集中する。
【0009】
これにより、ランナー樹脂とリードフレームを分離させる力は樹脂強度を上回ることがなくなる。そのためランナー樹脂を破壊せずに、ランナー樹脂をリードフレームから分離することが可能となる。従ってリードフレームからランナー樹脂を分離することを容易にすることができる。
【0010】
本発明によれば、第1押さえ部材にリードフレームを載置する工程と、前記第1押さえ部材と対向し、前記第1押さえ部材と対向する面のうち前記リードフレームが有する半導体チップを封止する封止樹脂と繋がるランナー樹脂と重なる位置に凹みを有する第2押さえ部材によって前記リードフレームを押さえる工程と、複数のピンによって、前記ランナー樹脂を押し上げて、前記ランナー樹脂を前記リードフレームから分離する工程と、前記第2押さえ部材を前記リードフレームから離す工程と、を備え、前記第2押さえ部材によって前記リードフレームを押さえる工程において、前記リードフレームを凸状に湾曲させ、前記ライナー樹脂を前記リードフレームから分離する工程において、両端部から中心部に向けて順に、前記ランナー樹脂を押し上げる半導体装置の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、リードフレームからランナー樹脂を分離することを容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1の実施形態に係る半導体製造装置及びリードフレームを示す断面図である。
【図2】図1に示す半導体製造装置及びリードフレームを示す断面図である。
【図3】図1に示すリードフレームを示す平面図である。
【図4】図1に示す半導体製造装置を用いた半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図5】第2の実施形態に係る半導体製造装置及びリードフレームを示す断面図である。
【図6】本発明の課題を説明するための断面図である。
【図7】本発明の課題を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0014】
図1は第1の実施形態に係る半導体製造装置400を示す断面図である。図1は後述する図2のA−A’断面を示す。半導体製造装置400は、第1押さえ部材100と、複数のピン140と、第2押さえ部材200と、制御部150を備える。以下詳細に説明する。
【0015】
第1押さえ部材100は、一面に半導体チップ340と、半導体チップ340を封止する封止樹脂310と、封止樹脂310に繋がっているランナー樹脂320とを有するリードフレーム300を保持し、ランナー樹脂320と重なる位置に貫通穴120が複数設けられている。複数のピン140は貫通穴120を通して可動である。第2押さえ部材200はリードフレーム300を挟んで第1押さえ部材100と対向し、凹部220を有し、リードフレーム300を押さえる。制御部150は複数のピン140の動きを制御する。
【0016】
第1押さえ部材100は、ランナー樹脂320が一面側に凸状に湾曲する形状にリードフレーム300を保持する。第1押さえ部材100のうち、一面側においてリードフレーム300を保持する部分は、ランナー樹脂320が伸びる方向においてアーチ形の構造を有する。第2押さえ部材200のうち第1押さえ部材100と対向する面は、凹部220を除いて凸状に湾曲したリードフレーム300に沿う形状を有する。制御部150は、複数のピン140をリードフレーム300の両端部から中心部に向けて順次、ランナー樹脂320を押し上げる方向に突出させる。
【0017】
図2は図1に示す半導体製造装置400の断面図と垂直な方向の断面図である。第1押さえ部材100のうち、一面側においてリードフレーム300を保持する部分は、ランナー樹脂320が伸びる方向と垂直な方向において平坦な構造を有する。第2押さえ部材200は、第1押さえ部材100と対向する面のうちランナー樹脂320と重なる位置において凹部を有する。
【0018】
図3は図1に示す半導体製造装置400により保持されるリードフレーム300を示す平面図である。リードフレーム300は固定穴360を有している。リードフレーム300は第1押さえ部材100が有する固定ピン(図示せず)を固定穴360に通すことで固定される。ランナー樹脂320は直線状に伸びており、半導体チップ340及び封止樹脂310はランナー樹脂320の両側に線対称に位置している。
【0019】
図4は図1に示す半導体製造装置400を用いた半導体装置の製造方法を示す断面図である。まずリードフレーム300が、第1押さえ部材100に載置される(図4(a))。次いでリードフレーム300を、第1押さえ部材100と対向するように第2押さえ部材200で押さえ、凸状に湾曲させる(図4(b))。そして制御部150により複数のピン140を両端部から中心部に向けて順次、第1押さえ部材100の第2押さえ部材200と対向する面から突出させる(図4(c)(d))。これによりランナー樹脂320が押し上げられて、リードフレーム300から分離される(図4(e))。その後第2押さえ部材200を引き上げる。
【0020】
次に第1の実施形態の作用及び効果について説明する。図6は比較例に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。比較例では、ランナー樹脂分離除去工程中においてリードフレーム300は平坦である。またランナー樹脂320は、複数のピン140により全ての部分において同時に押し上げられる。
【0021】
本実施形態によれば、第1押さえ部材100及び第2押さえ部材200によって押さえられたリードフレーム300が凸状に湾曲することで、第2押さえ部材200の凹部220に位置するリードフレーム300とランナー樹脂320の境に剥離力が働く。また湾曲したランナー樹脂320を両端部から中心に順に押し上げることで、ランナー樹脂320の端部から発生する剥離線にランナー樹脂320を押し上げる力が集中する。さらにランナー樹脂320の一端は開放端となっているため、ピン140からランナー樹脂320に過大な力が加わった場合、ランナー樹脂320が反ることによりその力が緩和される。そのため、ランナー樹脂320とリードフレーム300を分離させる力は樹脂強度を上回ることがなくなる。
【0022】
さらに図7に示すように、ランナー樹脂320を押し上げる力は、ランナー樹脂320に対し垂直方向の分力と、中心方向に収縮させる分力のみを構成する。これにより、ランナー樹脂320を破壊せずにランナー樹脂320をリードフレーム300から分離することが可能となる。従ってリードフレーム300からランナー樹脂320を分離することを容易にすることができる。
【0023】
図5は第2の実施形態に係る半導体製造装置420を示す断面図であり、第1の実施形態に係る図1に対応している。本実施形態における半導体製造装置420は、第1押さえ部材100の形状を除いて第1の実施形態に係る半導体製造装置400と同様の構成である。本実施形態では、第1押さえ部材100のリードフレーム300を保持する部分は、少なくとも1つ以上の凸部によって構成されている。具体的には複数の凸部が、ランナー樹脂320と重なる位置において、両端部から中心部に向けて順次高くなっている。
【0024】
本実施形態における半導体装置の製造方法は、第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法と同様である。
【0025】
本実施形態においても、第1押さえ部材100及び第2押さえ部材200によって押さえられたリードフレーム300が凸状に湾曲している。また湾曲したランナー樹脂320を両端部から中心に順に押し上げている。よって第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0026】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【符号の説明】
【0027】
100 第1押さえ部材
120 貫通穴
140 ピン
150 制御部
200 第2押さえ部材
220 凹部
300 リードフレーム
310 封止樹脂
320 ランナー樹脂
340 半導体チップ
360 固定穴
400 半導体製造装置
420 半導体製造装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一面に半導体チップと、前記半導体チップを封止する封止樹脂と、前記封止樹脂に繋がっているランナー樹脂とを有するリードフレームを保持し、前記ランナー樹脂と重なる位置に貫通穴が複数設けられている第1押さえ部材と、
前記貫通穴を通して可動な複数のピンと、
前記リードフレームを挟んで前記第1押さえ部材と対向し、前記リードフレームを押さえ、前記第1押さえ部材と対向する面のうち前記ランナー樹脂と重なる位置に凹部を有する第2押さえ部材と、
前記複数のピンの動きを制御する制御部と、
を備え、
前記第1押さえ部材は、前記ランナー樹脂が前記一面側に凸状に湾曲する形状に前記リードフレームを保持し、
前記第2押さえ部材のうち前記第1押さえ部材と対向する面は、前記凹部を除いて凸状に湾曲した前記リードフレームに沿う形状を有し、
前記制御部は、前記複数のピンを前記リードフレームの両端部から中心部に向けて順次、前記ランナー樹脂を押し上げる方向に突出させる半導体製造装置。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体製造装置において、
前記第1押さえ部材の前記リードフレームを保持する部分は、前記ランナー樹脂が伸びる方向においてアーチ型の構造を有する半導体製造装置。
【請求項3】
請求項1に記載の半導体製造装置において、
前記第1押さえ部材の前記リードフレームを保持する部分が、少なくとも1つ以上の凸部によって構成される半導体製造装置。
【請求項4】
第1押さえ部材にリードフレームを載置する工程と、
前記第1押さえ部材と対向し、前記第1押さえ部材と対向する面のうち前記リードフレームが有する半導体チップを封止する封止樹脂と繋がるランナー樹脂と重なる位置に凹部を有する第2押さえ部材によって前記リードフレームを押さえる工程と、
前記第1押さえ部材の貫通穴を通して可動な複数のピンによって、前記ランナー樹脂を押し上げて、前記ランナー樹脂を前記リードフレームから分離する工程と、
前記第2押さえ部材を前記リードフレームから離す工程と、
を備え、
前記第2押さえ部材によって前記リードフレームを押さえる工程において、前記リードフレームを凸状に湾曲させ、
前記ランナー樹脂を前記リードフレームから分離する工程において、両端部から中心部に向けて順に、前記ランナー樹脂を押し上げる半導体装置の製造方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−189576(P2011−189576A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−56450(P2010−56450)
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】