説明

半導体製造装置および流量制御装置

【課題】半導体製造装置のガスの流量制御は、マスフローコントローラによって行われている。ここで使用される流量調整バルブは、流量を調整することに重点が置かれているため、閉鎖時にも微小ながらガスが流出する。このため、流量調整バルブの出力側に閉鎖特性の良好な開閉バルブが挿入されている。しかし、流量調整バルブと開閉バルブ間の流路系には、一定の容量を有するため、流量調整バルブが閉鎖されている間に、この流路系の圧力が流量調整バルブのリークを介して、上昇するという問題がある。このような出力側バルブ間空間の圧力上昇は、次に、開閉バルブが開いたときに、ガス被供給系への余剰のガス供給の原因となる。
【解決手段】本願発明は、マスフローコントローラのガス排出側の流量制御バルブと開閉バルブ間の圧力を計測することで、流量制御バルブの閉鎖時のリークガス流量を検知可能とした半導体製造装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造装置および半導体製造装置等の流量制御に用いる流量制御装置に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
日本特開平11−202945号公報(特許文献1)または米国特許第6125869号公報(特許文献2)には、マスフローコントローラ(Mass Flow Controller)の自己診断方法として、流量制御バルブが所定の開状態において流量制御バルブを含む前後の配管部に所定の圧力のガスを満たし、その後、流量制御バルブの出力側開閉バルブを開き、その際の出力側圧力変化を出力側に設けられたセンサで検出する技術が開示されている。
【0003】
日本特開平5−134764号公報(特許文献3)には、マスフローコントローラの使用状態の検査方法として、流量制御バルブを含む前後の配管部に設けられた複数の圧力センサ、温度センサ等の上方から算出された流量制御バルブへの印加電圧と実際の印加電圧を比較する技術が開示されている。
【0004】
日本特開2004−246826号公報(特許文献4)には、マスフローコントローラの流量制御方法または動作モニタ方法として、流量制御バルブを含む前後の配管部に設けられた複数の圧力センサの出力を流量制御バルブの制御に利用するとともに、流量を監視する技術が開示されている。
【0005】
日本特開2004−280688号公報(特許文献5)には、マスフローコントローラの流量制御方法または動作モニタ方法として、マスフローメータ(Mass Flow Meter)およびバイパス路を含む前後の配管部に設けられた複数の流量制御バルブ、圧力センサの出力を流量制御バルブの制御に利用するとともに、流量を監視する技術が開示されている。
【0006】
日本特開平5−233068号公報(特許文献6)には、マスフローコントローラの流量制御方法として、流量制御バルブの出力側の2箇所に設けられた圧力センサの出力を流量制御バルブの制御に利用する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−202945号公報
【特許文献2】米国特許第6125869号公報
【特許文献3】特開平5−134764号公報
【特許文献4】特開2004−246826号公報
【特許文献5】特開2004−280688号公報
【特許文献6】特開平5−233068号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
半導体製造装置等のガス等の流量制御は、サーマルマスフローセンサ(Thermal Mass Flow Sensor)とパラレルに設けられたバイパス路、および、サーマルマスフローセンサの出力を参照して制御される電磁制御の流量調整バルブ等から構成されるマスフローコントローラによって行われている。この流量調整バルブは、流量を調整することに重点が置かれているため、閉鎖時にも微小ながらガスが流出する。すなわち、閉鎖時流出ガスの存在が不可避である。このため、流量調整バルブの出力側(下流側またはガス排出側)に閉鎖特性の良好な開閉バルブを挿入するのが一般的である。
【0009】
しかし、流量調整バルブと開閉バルブ間の配管系は、一定の容量を有するため、流量調整バルブが閉鎖されている間に、このバルブ間空間の圧力が流量調整バルブのリークを介して(リークによって)、入力側(上流側又はガス流入側)圧力に向けて上昇するという問題がある。このような出力側バルブ間空間の圧力上昇は、次に、開閉バルブが開いたときに、ガス被供給系への余剰のガス供給の原因となる。
【0010】
本願発明は、これらの課題を解決するためになされたものである。
【0011】
本発明の目的は、信頼性の高い半導体製造装置または半導体製造装置等の流量制御に用いる流量制御装置を提供することにある。
【0012】
本発明の前記並びにその他の目的と新規な特徴は本明細書の記述及び添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本願において開示される発明のうち代表的なものの概要を簡単に説明すれば下記の通りである。
【0014】
すなわち、本願の一つの発明は、マスフローコントローラのガス排出側の流量制御バルブと開閉バルブ間の圧力を計測することで、流量制御バルブが閉鎖している際に同流量制御バルブを通過するリークガス流量を検知可能とした半導体製造装置である。
【発明の効果】
【0015】
本願において開示される発明のうち代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば下記のとおりである。
【0016】
すなわち、マスフローコントローラのガス排出側の流量制御バルブと開閉バルブ間の圧力を計測することで、流量制御バルブが閉鎖している際に同流量制御バルブを通過するリークガス流量を検知可能とした半導体製造装置とすることで、ガス供給開始時における過剰供給等の発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本願の一実施の形態の半導体製造装置の要部を構成する流量制御装置(マスフローコントローラ)の構造を説明するための模式構成図である。
【図2】本願の一実施の形態の半導体製造装置の全体構成を示す模式構成図である。
【図3】本願の一実施の形態の半導体製造装置の要部を構成する流量制御装置(マスフローコントローラ)の流量制御バルブ(たとえばピエゾ効果アクチュエータ等による電磁駆動型制御バルブ)の要部断面構造図である。
【図4】本願の一実施の形態の半導体製造装置の要部を構成する流量制御装置(マスフローコントローラ)の開閉バルブ(たとえば空圧駆動開閉バルブ)の要部断面構造図である。
【図5】本願の一実施の形態の半導体製造装置における流量制御バルブ閉鎖時リーク検査シークエンスを示すブロックフロー図である。
【図6】図5における計算式を説明するための計算式説明図である。
【図7】図5における流量制御バルブ閉鎖時リーク検査における被測定領域の圧力変化の様子を示す圧力変化図である。
【図8】本願の一実施の形態の半導体製造装置の要部を構成する流量制御装置(マスフローコントローラ)の流量制御バルブに使用される各種のアクチュエータの代表的な特性の比較説明図である。
【図9】本願の一実施の形態の半導体製造装置の要部を構成する流量制御装置(マスフローコントローラ)の流量制御バルブの閉鎖時リークが大きいときの流量制御装置内通過ガス実流量の時間変化図である。
【図10】本願の一実施の形態の半導体製造装置の要部を構成する流量制御装置(マスフローコントローラ)の流量制御バルブの閉鎖時リークが小さいときの流量制御装置内通過ガス実流量の時間変化図である。
【図11】本願の一実施の形態の半導体製造装置の要部を構成する流量制御装置(マスフローコントローラ)の流量制御バルブの閉鎖時リークが大きいときのウエハ処理室直前のガス流路における通過ガス実流量の時間変化図である。
【図12】本願の一実施の形態の半導体製造装置の要部を構成する流量制御装置(マスフローコントローラ)の流量制御バルブの閉鎖時リークが小さいときのウエハ処理室直前のガス流路における通過ガス実流量の時間変化図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
〔実施の形態の概要〕
先ず、本願において開示される発明の代表的な実施の形態について概要を説明する。
【0019】
1.以下を含む半導体製造装置:
(a)ガス流入口およびガス排出口を有する流量制御装置;
(b)前記流量制御装置内に設けられた流量計測流路;
(c)前記流量計測流路と並列に設けられたバイパス流路;
(b)前記流量計測流路に設けられた流量センサ;
(c)前記流量制御装置内であって、前記流量計測流路および前記バイパス流路の前記ガス排出口側に設けられた流量制御バルブ;
(d)前記流量制御装置内に設けられ、前記流量センサおよび前記流量制御バルブを制御する流量制御回路;
(e)前記流量制御装置外であって、前記ガス排出口側に設けられ、それと接続されたウエハ処理室;
(f)前記流量制御バルブと前記ウエハ処理室の間のガス排出流路に設けられた開閉バルブ;
(g)前記流量制御バルブと前記開閉バルブの前記ガス排出流路の圧力を計測する圧力センサ;
(h)前記ウエハ処理室および前記流量制御装置を制御する製造装置制御系、
ここで、前記圧力センサによって、前記流量制御バルブと前記開閉バルブの前記ガス排出流路の圧力を計測することで、前記流量制御バルブが閉鎖している際に、前記流量制御バルブを通過するガス流量を検知可能とされている。
【0020】
2.前記1項の半導体製造装置において、前記圧力センサは、前記流量制御装置内に設けられている。
【0021】
3.前記1または2項の半導体製造装置において、前記流量制御バルブと前記開閉バルブの前記ガス排出流路の容積は、2cc以下である。
【0022】
4.前記1から3項のいずれか一つの半導体製造装置において、前記開閉バルブは、前記流量制御装置内に設けられている。
【0023】
5.前記1から4項のいずれか一つの半導体製造装置において、前記流量制御バルブが閉鎖している際に、前記流量制御バルブを通過するガス流量を検知するアルゴリズムを有する。
【0024】
6.前記1から5項のいずれか一つの半導体製造装置において、前記流量制御バルブと前記開閉バルブの前記ガス排出流路の容積は、1cc以下である。
【0025】
7.前記1から6項のいずれか一つの半導体製造装置において、前記流量制御バルブは、ピエゾ効果アクチュエータによって駆動されている。
【0026】
8.前記1から7項のいずれか一つの半導体製造装置において、前記開閉バルブは、ガス圧により駆動されている。
【0027】
9.前記1から8項のいずれか一つの半導体製造装置において、前記流量制御バルブと前記開閉バルブ間の前記ガス排出流路には、実質的にオリフィスが設けられていない。
【0028】
10.以下を含む流量制御装置:
(a)ガス流入口およびガス排出口;
(b)前記ガス流入口と前記ガス排出口の間に設けられた流量計測流路;
(c)前記流量計測流路と並列に設けられたバイパス流路;
(b)前記流量計測流路に設けられた流量センサ;
(c)前記流量計測流路および前記バイパス流路の前記ガス排出口側に設けられた流量制御バルブ;
(d)前記流量センサおよび前記流量制御バルブを制御する流量制御回路;
(e)前記流量制御バルブと前記ガス排出口間のガス排出流路に設けられた開閉バルブ;
(f)前記流量制御バルブと前記開閉バルブの前記ガス排出流路の圧力を計測する圧力センサ、
ここで、前記圧力センサによって、前記流量制御バルブと前記開閉バルブの前記ガス排出流路の圧力を計測することで、前記流量制御バルブが閉鎖している際に、前記流量制御バルブを通過するガス流量を検知可能とされている。
【0029】
11.前記10項の半導体製造装置において、前記流量制御バルブと前記開閉バルブの前記ガス排出流路の容積は、2cc以下である。
【0030】
12.前記10項の半導体製造装置において、前記流量制御バルブと前記開閉バルブの前記ガス排出流路の容積は、1cc以下である。
【0031】
13.前記10から12項のいずれか一つの半導体製造装置において、前記流量制御バルブは、ピエゾ効果アクチュエータによって駆動されている。
【0032】
14.前記10から13項のいずれか一つの半導体製造装置において、前記開閉バルブは、ガス圧により駆動されている。
【0033】
15.前記10から14項のいずれか一つの半導体製造装置において、前記流量制御バルブと前記開閉バルブ間の前記ガス排出流路には、実質的にオリフィスが設けられていない。
【0034】
〔本願における記載形式・基本的用語・用法の説明〕
1.本願において、実施の態様の記載は、必要に応じて、便宜上複数のセクションに分けて記載する場合もあるが、特にそうでない旨明示した場合を除き、これらは相互に独立別個のものではなく、単一の例の各部分、一方が他方の一部詳細または一部または全部の変形例等である。また、原則として、同様の部分は繰り返しを省略する。また、実施の態様における各構成要素は、特にそうでない旨明示した場合、理論的にその数に限定される場合および文脈から明らかにそうでない場合を除き、必須のものではない。
【0035】
2.同様に実施の態様等の記載において、材料、組成等について、「AからなるX」等といっても、特にそうでない旨明示した場合および文脈から明らかに、そうでない場合を除き、A以外の要素を主要な構成要素のひとつとするものを排除するものではない。たとえば、成分についていえば、「Aを主要な成分として含むX」等の意味である。
【0036】
3.同様に、図形、位置、属性等に関して、好適な例示をするが、特にそうでない旨明示した場合および文脈から明らかにそうでない場合を除き、厳密にそれに限定されるものではないことは言うまでもない。
【0037】
4.さらに、特定の数値、数量に言及したときも、特にそうでない旨明示した場合、理論的にその数に限定される場合および文脈から明らかにそうでない場合を除き、その特定の数値を超える数値であってもよいし、その特定の数値未満の数値でもよい。
【0038】
5.「ウエハ」というときは、通常は半導体装置(半導体集積回路装置、電子装置も同じ)をその上に形成する単結晶シリコンウエハを指すが、エピタキシャルウエハ、SOI基板、LCDガラス基板等の絶縁基板と半導体層等の複合ウエハ等も含むことは言うまでもない。
【0039】
6.本願において、「半導体製造装置」とは、通常の半導体単体、半導体集積回路装置、および、液晶表示装置の製造に使用するCVD(Chemical Vapor Deposition)装置、エッチング装置、スパッタリング成膜装置、その他の表面処理装置等を含む。
【0040】
7.本願において、圧力は大気圧101300パスカルを基準として表示する。
【0041】
〔実施の形態の詳細〕
実施の形態について更に詳述する。各図中において、同一または同様の部分は同一または類似の記号または参照番号で示し、説明は原則として繰り返さない。
【0042】
また、添付図面においては、却って、煩雑になる場合または空隙との区別が明確である場合には、断面であってもハッチング等を省略する場合がある。これに関連して、説明等から明らかである場合等には、平面的に閉じた孔であっても、背景の輪郭線を省略する場合がある。更に、断面でなくとも、空隙でないことを明示するために、ハッチングを付すことがある。
【0043】
1.本願の一実施の形態の半導体製造装置における要部を構成する流量制御装置(マスフローコントローラ)の構造及び動作、ならびに、半導体製造装置の全体構成等の説明(主に図1および図2)
図1は本願の一実施の形態の半導体製造装置の要部を構成する流量制御装置(マスフローコントローラ)の構造を説明するための模式構成図である。図2は本願の一実施の形態の半導体製造装置の全体構成を示す模式構成図である。これらに基づいて、本願の一実施の形態の半導体製造装置における要部を構成する流量制御装置の構造及び動作、ならびに、半導体製造装置の全体構成等を説明する。ここでは、マスフローコントローラ内に下流側空圧開閉バルブ、圧力センサ等を内蔵した例を示すが、これらは外付けでもよい。
【0044】
図1に示すように、流量制御装置1(マスフローコントローラ)は、その主要部として、コンダクタンスの大きいバイパス流路5と、それに並列に連結されたコンダクタンスの小さい流量計測流路4をプロセスガス流入口2およびプロセスガス排出口3間のプロセスガス流路に有する。この流量計測流路4には、抵抗加熱体9,10を含む流量センサ6(サーマルマスフローセンサ)が設けられており、抵抗加熱体9,10とともに、ブリッジを形成するブリッジ型検出回路15により、流量を検出している。検出された流量データは、増幅補正回路16によって必要な増幅・補正がされた後、検出データ出力端子18を介して製造装置制御系27(図2)等に出力される。また、検出された流量データは、比較制御回路17に送られ、設定値等の入力端子19を介して製造装置制御系27から送られた流量設定データと比較され、その差分に対応して、ガス排出流路11に設けられた流量制御バルブ7のバルブの状態が制御される。なお、ブリッジ型検出回路15、増幅補正回路16、比較制御回路17等によって流量制御回路8が構成されている。流量制御バルブ7は、流量を安定制御するためのものであるから、一般的な空圧開閉バルブのようにシャットオフ特性は、良好ではなく、閉鎖状態でも若干のリークが伴う。このため、流量制御バルブ7とプロセスガス排出口3の間のガス排出流路11上には、開閉バルブ12(空圧開閉バルブ)が設けられている。この開閉バルブ12は、空圧入力端子21を介して、製造装置制御系27からの信号により、空圧制御されている。流量制御バルブ7と開閉バルブ12の間のガス排出流路11には、その部分の圧力を測定するために、圧力センサ14が設けられている。圧力センサ14の出力は、その検知圧力を出力する外部出力端子22を介して、直接、製造装置制御系27に供給可能である。また、圧力センサ14は、流量制御回路8を介して、製造装置制御系27等とデータのやり取りが可能とされている。すなわち、圧力センサ14から流量制御回路8、製造装置制御系27等にデータ及び信号を出力したり、流量制御回路8、製造装置制御系27等によって圧力センサ14が制御されたりすることができる構成となっている。
【0045】
次に、図2により、本願の一実施の形態の半導体製造装置23の全体構成を説明する。図2に示すように、プロセスガス定圧ソース24(WFを例にとると、たとえば100000パスカル程度、以下特に断らない限り、ガスはWFとする)から供給されたプロセスガスはガス流入流路25を介して、図1で説明した流量制御装置1に供給される。その後、流量制御装置1を通過したプロセスガスは、ガス排出流路11を介して、半導体ウエハ28を処理するためのウエハ処理室26(プロセスチャンバ)に供給される。ここで、ウエハ処理室26、流量制御装置1等は、製造装置制御系27によって、直接又は間接的に制御されている。なお、製造装置制御系27は、半導体製造装置23に内蔵されている場合もあるが、半導体製造装置23の外部に設けられていてもよいし、半導体製造装置23に内蔵された制御系と半導体製造装置23の外部に設けられた制御系の両方を含む制御系であってもよい。
【0046】
2.本願の一実施の形態の半導体製造装置における要部を構成する流量制御装置(マスフローコントローラ)等に使用される流量制御バルブ及び開閉バルブの詳細説明(主に図3および図4、および図8)
このセクションでは、セクション1で説明した流量制御バルブ及び開閉バルブの構造の概要を説明する。
【0047】
図3は本願の一実施の形態の半導体製造装置の要部を構成する流量制御装置(マスフローコントローラ)の流量制御バルブ(たとえばピエゾ効果アクチュエータ等による電磁駆動型制御バルブ)の要部断面構造図である。図4は本願の一実施の形態の半導体製造装置の要部を構成する流量制御装置(マスフローコントローラ)の開閉バルブ(たとえば空圧駆動開閉バルブ)の要部断面構造図である。図8は本願の一実施の形態の半導体製造装置の要部を構成する流量制御装置(マスフローコントローラ)の流量制御バルブに使用される各種のアクチュエータの代表的な特性の比較説明図である。これらに基づいて、本願の一実施の形態の半導体製造装置における要部を構成する流量制御装置(マスフローコントローラ)等に使用される流量制御バルブ及び開閉バルブの詳細構造等を説明する。
【0048】
まず、図1に説明した流量制御装置1に内蔵された流量制御バルブ7の一例について説明する。図3に示すように、ピエゾ効果アクチュエータ駆動型の流量制御バルブ7は、ガス流入部31とガス排出部32の間に、比較的硬質の流量制御面43(通常、円環状)および、それを取り巻くように出力側空洞44(通常、円環状)が設けられている。これらに対向するように、金属ダイヤフラム33が配置されており、この金属ダイヤフラム33をピエゾ効果アクチュエータ34が微小変形して、金属ダイヤフラム33の下面と流量制御面43との間の微小間隔を制御することにより、ガス流量を制御している。
【0049】
なお、流量制御バルブ7のアクチュエータ34の形式には、図8に示すように、ピエゾ方式、ソレノイド方式、サーマル方式等があるが、ここで説明したピエゾ方式は、速度の速さ、駆動力等において優れているが、ソレノイド方式、サーマル方式等も適用できることは言うまでもない。
【0050】
一方、開閉バルブ12の方は、図4に示すように、プロセスガス流入部41とプロセスガス排出口3の間のプロセスガス流路にシールリング設置部40を設け、そこにシール樹脂リング38を設置し、それに対向するように金属ダイヤフラム37をシリンダ35との間に設ける。そして、空圧入力端子21から空圧室36に供給された圧搾空気(空圧)によってピストン39を駆動することで、金属ダイヤフラム37をシール樹脂リング38に押し付けることによって、完全閉鎖を達成する。
【0051】
ここで説明したように、流量制御バルブ7は原理的に完全閉鎖を達成できないので、図1に示したように、流量制御バルブ7の下流側には、開閉バルブ12を挿入して相互に連動して開閉するようにしている。
【0052】
3.本願の一実施の形態の半導体製造装置における流量制御バルブ閉鎖時リークチェックシークエンス等の説明(主に図5から図7)
このセクションでは、セクション1及び2の記載を踏まえて、流量制御バルブ閉鎖時リークチェックシークエンスを具体的に説明する。ここでは、フルスケールの流量が30sccm程度のマスフローコントローラを例にとり説明する。
【0053】
図5は本願の一実施の形態の半導体製造装置における流量制御バルブ閉鎖時リーク検査シークエンスを示すブロックフロー図である。図6は図5における計算式を説明するための計算式説明図である。図7は図5における流量制御バルブ閉鎖時リーク検査における被測定領域の圧力変化の様子を示す圧力変化図である。これらに基づいて、本願の一実施の形態の半導体製造装置における流量制御バルブ閉鎖時リークチェックシークエンス等を説明する。
【0054】
図7(および図1)に示すように、流量制御バルブ7および開閉バルブ12が開放状態にあるときは、流量制御バルブ7と開閉バルブ12の間のガス排出流路11の圧力は、比較的低い値P1(たとえば、−101300パスカル程度)に留まっている。この時点で、流量制御バルブ閉鎖時リークチェックを開始する(図5の閉鎖時リーク確認プロセススタート50)。閉鎖時リーク確認プロセススタート時点において、流量制御バルブ7と開閉バルブ12の間のガス排出流路11の圧力P1の測定が圧力センサ14を用いて行われる(図5の基準圧力測定51a)のとほぼ同時に、流量制御バルブ7と開閉バルブ12が閉鎖される。この圧力P1の値は、図2に示すウエハ処理室26の圧力に対応しており、真空処理装置であれば、真空、すなわち、大気圧に比べて非常に低い値であり、常圧処理装置であれば、大気圧程度である。
【0055】
この後、流量制御バルブ7と開閉バルブ12の間のガス排出流路11の圧力は、徐々に上昇する。X分後(たとえば0.2分後)に、再び流量制御バルブ7と開閉バルブ12の間のガス排出流路11の圧力P2(たとえば100000パスカル程度)の測定が圧力センサ14を用いて行われる(図5の到達圧力測定51b)。次に、図6に示す計算式が参照され、閉鎖時リーク量が計算される(図5の計算式参照ステップ52)。すなわち、流量制御バルブ7と開閉バルブ12の間のデッドスペースの容量Y=0.6cc程度としたとき、
閉鎖時リーク量(実測閉鎖時リーク量)は、0.1cc/分程度となる。なお、ここまでのアルゴリズムは、流量制御回路8または製造装置制御系27内に格納されている。
【0056】
次に、図5に示すように、この算出した実測閉鎖時リーク量と閾値として設定された設定閉鎖時リーク量(たとえば、0.15cc/分)が比較され、実測閉鎖時リーク量が設定閉鎖時リーク量より小さければ、問題なしとして、たとえば、生産が続行される(生産続行判断54)。反対に、実測閉鎖時リーク量が設定閉鎖時リーク量以上であれば、アラームが出される(アラーム生成ステップ55)。ここで、必要があるときは、流量制御バルブ7が交換等される(流量制御バルブ交換ステップ56)。
【0057】
4.本願の一実施の形態の半導体製造装置または流量制御装置についての考察(主に図9から図12)
このセクションでは、セクション1から3に説明した実施の形態のメリットや、それを使用しない場合の問題点などについて考察する。
【0058】
図9は本願の一実施の形態の半導体製造装置の要部を構成する流量制御装置(マスフローコントローラ)の流量制御バルブの閉鎖時リークが大きいときの流量制御装置内通過ガス実流量の時間変化図である。図10は本願の一実施の形態の半導体製造装置の要部を構成する流量制御装置(マスフローコントローラ)の流量制御バルブの閉鎖時リークが小さいときの流量制御装置内通過ガス実流量の時間変化図である。図11は本願の一実施の形態の半導体製造装置の要部を構成する流量制御装置(マスフローコントローラ)の流量制御バルブの閉鎖時リークが大きいときのウエハ処理室直前のガス流路における通過ガス実流量の時間変化図である。図12は本願の一実施の形態の半導体製造装置の要部を構成する流量制御装置(マスフローコントローラ)の流量制御バルブの閉鎖時リークが小さいときのウエハ処理室直前のガス流路における通過ガス実流量の時間変化図である。以下では、図1を参照しつつ、これらの図に基づいて、前記実施の形態のメリットや、それを使用しない場合の問題点などについて説明する。
【0059】
まず、閉鎖時リークが大きいときポイントA(図2および図3)における実流量の時間変化を図9により説明する。図9に示すように、流量制御バルブ7および開閉バルブ12が開くと、比較的短い時間で、流量は設定流量に向けて立ち上がり、急速に収束する。次に、閉鎖時リークが小さいときポイントA(図2および図3)における実流量の時間変化を図10により説明する。図10に示すように、このときも、流量制御バルブ7および開閉バルブ12が開くと、比較的短い時間で、流量は設定流量に向けて立ち上がり、急速に収束する。すなわち、ポイントA(図2および図3)における実流量の時間変化は、実質的に閉鎖時リーク量に依存しないことがわかる。これは、閉鎖時リークによる余剰ガスは、ポイントAよりも下流にあるからである。
【0060】
次に、ポイントB(図2および図3)における実流量の時間変化を見る。まず、閉鎖時リークが大きいときポイントB(図1)における実流量の時間変化を図11により説明する。図11に示すように、流量制御バルブ7および開閉バルブ12が開くと、比較的短い時間で、流量は設定流量に向けて立ち上がるが、設定流量を超えてオーバシュートし、その後時間をかけて設定流量に収束する。このような場合は、網掛け部分がガスの過剰供給に対応する。これに対して、閉鎖時リークが小さいときポイントB(図1)における実流量の時間変化を図12により説明する。図12に示すように、流量制御バルブ7および開閉バルブ12が開くと、比較的短い時間で、流量は設定流量に向けて立ち上がり、急速に収束する。すなわち、閉鎖時リークが小さいときは、ポイントAと同一の挙動を示す。これは、閉鎖時リークが小さいときは、流量制御バルブ7と開閉バルブ12の間のデッドスペースに余剰のガスが蓄積されていないからである。
【0061】
このように前記実施の形態のように、閉鎖時リークを簡単な手続きで確認可能な半導体製造装置23または流量制御装置1を使用することで、流量制御バルブ7と開閉バルブ12の間のデッドスペースに蓄積した余剰ガスによる種々の問題を回避することができる。なお、これらの問題が特に重要なマスフローコントローラ(流量制御装置)は、主にフルスケール流量が1sccm(Standard Cubic Centimeter per Minute、すなわち、摂氏0度、1気圧の条件で1cc/分)から1000sccm程度の範囲のものである。
【0062】
なお、流量制御バルブ7と開閉バルブ12の間のデッドスペースの容量が小さいほど、余剰ガスの蓄積による問題は小さくなるので、デッドスペースの容量は、できるだけ小さい方がよい。前記実施の形態では、たとえば0.6cc程度とされているが、実用的な範囲では、2cc以下が望ましい。また、量産上、1cc以下が特に好適である。
【0063】
このデッドスペースの容量を小さく押さえるには、開閉バルブ12および圧力センサ14のいずれか一方または、両方を流量制御装置1の内部に取り込むことが特に有効である。
【0064】
また、前記実施の形態においては、流量制御バルブ7と開閉バルブ12の間に実質的なオリフィスが存在しないので、流量制御装置または半導体製造装置の流量制御部としての自由度を確保することができる。
【0065】
5.サマリ
以上、本発明者によってなされた発明を実施形態に基づいて具体的に説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは言うまでもない。
【0066】
例えば、前記実施の形態では、流量制御装置内に開閉バルブ12および圧力センサを内蔵させた例について具体的に説明したが、本願発明はそれに限定されることなく、流量制御装置の外部に開閉バルブ12および圧力センサのいずれか一方または、両方を外付けしたものにも適用できることは言うまでもない。
【0067】
また、前記実施の形態では、開閉バルブとして空圧バルブを具体的に説明したが、本願発明はそれに限定されることなく、電磁バルブを使用したものでもよいことは言うまでもない。更に、前記実施の形態では、流量制御バルブとして、ピエゾアクチュエータを用いたものを中心に説明したが、本願発明はそれに限定されることなく、その他のアクチュエータを用いたものでもよいことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0068】
1 流量制御装置
2 プロセスガス流入口
3 プロセスガス排出口
4 流量計測流路
5 バイパス流路
6 流量センサ(マスフローメータ)
7 流量制御バルブ
8 流量制御回路
9,10 抵抗加熱体
11 ガス排出流路
12 下流側開閉バルブ(空圧開閉バルブ)
14 圧力センサ
15 ブリッジ回路
16 増幅補正回路
17 比較制御回路
18 検出データ出力端子
19 設定値等の入力端子
21 空圧入力口
22 検知圧力外部出力端子
23 半導体製造装置
24 プロセスガス定圧ソース
25 ガス流入流路
26 ウエハ処理室
27 製造装置制御系
28 半導体ウエハ
31 流量制御バルブのガス流入部
32 流量制御バルブのガス排出部
33 金属ダイヤフラム
34 ピエゾ効果アクチュエータ
35 シリンダ
36 空圧室
37 金属ダイヤフラム
38 シール樹脂リング
39 ピストン
40 シールリング設置部
41 開閉バルブのプロセスガス流入部
43 流量制御面
44 出力側空洞
50 閉鎖時リークチェックスタート
51a 基準圧力測定
51b 到達圧力測定
52 計算式参照
53 比較判定
54 生産続行
55 アラーム生成
56 交換
A マスフローコントローラ中心部
B ウエハ処理室直前のガス流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含む半導体製造装置:
(a)ガス流入口およびガス排出口を有する流量制御装置;
(b)前記流量制御装置内に設けられた流量計測流路;
(c)前記流量計測流路と並列に設けられたバイパス流路;
(b)前記流量計測流路に設けられた流量センサ;
(c)前記流量制御装置内であって、前記流量計測流路および前記バイパス流路の前記ガス排出口側に設けられた流量制御バルブ;
(d)前記流量制御装置内に設けられ、前記流量センサおよび前記流量制御バルブを制御する流量制御回路;
(e)前記流量制御装置外であって、前記ガス排出口側に設けられ、それと接続されたウエハ処理室;
(f)前記流量制御バルブと前記ウエハ処理室の間のガス排出流路に設けられた開閉バルブ;
(g)前記流量制御バルブと前記開閉バルブの前記ガス排出流路の圧力を計測する圧力センサ;
(h)前記ウエハ処理室および前記流量制御装置を制御する製造装置制御系、
ここで、前記圧力センサによって、前記流量制御バルブと前記開閉バルブの前記ガス排出流路の圧力を計測することで、前記流量制御バルブが閉鎖している際に、前記流量制御バルブを通過するガス流量を検知可能とされている。
【請求項2】
前記1項の半導体製造装置において、前記圧力センサは、前記流量制御装置内に設けられている。
【請求項3】
前記2項の半導体製造装置において、前記流量制御バルブと前記開閉バルブの前記ガス排出流路の容積は、2cc以下である。
【請求項4】
前記3項の半導体製造装置において、前記開閉バルブは、前記流量制御装置内に設けられている。
【請求項5】
前記4項の半導体製造装置において、前記流量制御バルブが閉鎖している際に、前記流量制御バルブを通過するガス流量を検知するアルゴリズムを有する。
【請求項6】
前記2項の半導体製造装置において、前記流量制御バルブと前記開閉バルブの前記ガス排出流路の容積は、1cc以下である。
【請求項7】
前記4項の半導体製造装置において、前記流量制御バルブは、ピエゾ効果アクチュエータによって駆動されている。
【請求項8】
前記7項の半導体製造装置において、前記開閉バルブは、ガス圧により駆動されている。
【請求項9】
前記1項の半導体製造装置において、前記流量制御バルブと前記開閉バルブ間の前記ガス排出流路には、実質的にオリフィスが設けられていない。
【請求項10】
以下を含む流量制御装置:
(a)ガス流入口およびガス排出口;
(b)前記ガス流入口と前記ガス排出口の間に設けられた流量計測流路;
(c)前記流量計測流路と並列に設けられたバイパス流路;
(b)前記流量計測流路に設けられた流量センサ;
(c)前記流量計測流路および前記バイパス流路の前記ガス排出口側に設けられた流量制御バルブ;
(d)前記流量センサおよび前記流量制御バルブを制御する流量制御回路;
(e)前記流量制御バルブと前記ガス排出口間のガス排出流路に設けられた開閉バルブ;
(f)前記流量制御バルブと前記開閉バルブの前記ガス排出流路の圧力を計測する圧力センサ、
ここで、前記圧力センサによって、前記流量制御バルブと前記開閉バルブの前記ガス排出流路の圧力を計測することで、前記流量制御バルブが閉鎖している際に、前記流量制御バルブを通過するガス流量を検知可能とされている。
【請求項11】
前記10項の半導体製造装置において、前記流量制御バルブと前記開閉バルブの前記ガス排出流路の容積は、2cc以下である。
【請求項12】
前記10項の半導体製造装置において、前記流量制御バルブと前記開閉バルブの前記ガス排出流路の容積は、1cc以下である。
【請求項13】
前記11項の半導体製造装置において、前記流量制御バルブは、ピエゾ効果アクチュエータによって駆動されている。
【請求項14】
前記13項の半導体製造装置において、前記開閉バルブは、ガス圧により駆動されている。
【請求項15】
前記10項の半導体製造装置において、前記流量制御バルブと前記開閉バルブ間の前記ガス排出流路には、実質的にオリフィスが設けられていない。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−118654(P2011−118654A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−275233(P2009−275233)
【出願日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】