説明

半導体集積回路

【課題】クロック信号の位相、デューティー比等の変動に対し耐性の強い、小型の半導体集積回路を提供する。
【解決手段】複数配設される回路部と、クロック信号の立ち上がりエッジから前記クロック信号を逓倍した周期の第1信号を生成する第1カウンタと、前記クロック信号の立ち下がりエッジから前記クロック信号を逓倍した周期の第2信号を生成する第2カウンタと、前記第1信号が転送される第1ラインと、前記第2信号が転送される第2ラインと、前記第1ライン及び前記第2ラインと接続され前記第1信号と前記第2信号との位相差から第3信号を生成し前記回路部に前記第3信号を出力する位相比較器と、を備え、前記位相比較器は、前記第1ライン及び前記第2ライン上に配設され且つ前記第1ライン及び前記第2ラインの末端と前記回路部との間に複数配設される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体集積回路に係り、特にクロック信号生成回路を有する半導体集積回路に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路において、クロック信号の位相、デューティー比等の変動により、配線毎のクロック信号の遅延時間にばらつきが発生し、それにより各回路の機能にエラーが生じる可能性がある。そこで、クロック信号を供給する各回路までのクロック信号の遅延時間を均一にする為に、クロック信号上にバッファをツリー状(以下クロックツリー)に配置する方法(特許文献1)が用いられている。
【0003】
しかし、クロックツリーの階層を多く形成すると、末端のセルに論理遅延が発生し、アクセスタイムが劣化する。さらに、クロックツリー構造にはバッファを必要とするため、半導体集積回路の面積が増大化する。
【0004】
よって、従来の技術では上述のような課題があったため、クロック信号の位相、デューティー比等の変動に対し耐性の強い、小型の半導体集積回路を提供することが困難であった。
【特許文献1】特開平11−194848号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、クロック信号の位相、デューティー比等の変動に対し耐性の強い、小型の半導体集積回路を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の一態様による半導体集積回路は、複数配設される回路部と、クロック信号の立ち上がりエッジから前記クロック信号を逓倍した周期の第1信号を生成する第1カウンタと、前記クロック信号の立ち下がりエッジから前記クロック信号を逓倍した周期の第2信号を生成する第2カウンタと、前記第1信号が転送される第1ラインと、前記第2信号が転送される第2ラインと、前記第1ライン及び前記第2ラインと接続され前記第1信号と前記第2信号との位相差から第3信号を生成し前記回路部に前記第3信号を出力する位相比較器と、を備え、前記位相比較器は、前記第1ライン及び前記第2ライン上に配設され且つ前記第1ライン及び前記第2ラインの末端と前記回路部との間に複数配設されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、クロック信号の位相、デューティー比等の変動に対し耐性の強い、小型の半導体集積回路を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
次に、本発明の実施の形態に係る半導体集積回路を図面に基づいて説明する。
【0009】
[本実施の形態に係る半導体集積回路の構成]
図1は、本実施の形態に係る半導体集積回路100の概略図である。図1に示すように、本実施の形態に係る半導体集積回路100は、主として、回路部10、第1カウンタ11、第2カウンタ12、インバータINV、バッファBUF、及び位相比較器13を有する。
【0010】
回路部10は、クロック信号CLKで動作する構成でマイコンやメモリとなり、半導体集積回路100内に複数配設される。図1において、回路部10は4つ配置されているが、その数に限定されるものではない。
【0011】
第1カウンタ11は、クロック端子11A、データ入力端子11B、及びデータ出力端子11Cを有する。第1カウンタ11は、クロック信号CLKをクロック端子11Aから入力し、クロック信号CLKの立ち上がりエッジを検出したら、クロック信号CLKを逓倍(例えば2倍)した周期の第1信号PUL1をデータ出力端子11Cから出力する。
【0012】
第2カウンタ12は、クロック端子12A、データ入力端子12B、及びデータ出力端子12Cを有する。第2カウンタ12は、クロック信号CLKをクロック端子12Aから入力し、クロック信号CLKの立ち下がりエッジを検出したら、クロック信号CLKを逓倍(例えば2倍)した周期の第2信号PUL2をデータ出力端子12Cから出力する。
【0013】
第1カウンタ11の出力端子11Cは、第2カウンタ12の入力端子12Bと接続される。また、第2カウンタ12の出力端子12Cは、インバータINV1を介して第1カウンタ11の入力端子11Aと接続される。
【0014】
位相比較器13は、第1のデータ入力端子13A、第2のデータ入力端子13B、及びデータ出力端子13Cを有する。データ入力端子13Aは第1カウンタ11の出力端子11Cとを介して接続され、データ入力端子13Bは第2カウンタ12の出力端子12Cとを介して接続される。上記の接続とは逆に、データ入力端子13Aは出力端子12Cと接続され、データ入力端子13Bは出力端子11Cと接続されても構わない。なお、以下には、データ入力端子13Aは第1カウンタ11の出力端子11Cと接続され、データ入力端子13Bは第2カウンタ12の出力端子12Cと接続される場合を例に説明する。
【0015】
第1カウンタ11の出力端子11Cと位相比較器13のデータ入力端子13Aとは、第1ライン80により接続される。第2カウンタ12の出力端子12Cと位相比較器13のデータ入力端子13Bとは、第2ライン90により接続される。よって、第1ライン80には第1信号PUL1が転送され、第2ライン90には第2信号PUL2が転送される。
【0016】
第1ライン80及び第2ライン90上には、状況に応じて適宜バッファBUFを配設することができる。本実施の形態では、第1ライン80上にバッファBUF1が配設され、第2ライン90上にバッファBUF2が配設されているが、バッファBUFの数は図1に示したものに限定されるものではない。
【0017】
位相比較器13は、入力された第1信号PUL1及び第2信号PUL2から第1信号PUL1及び第2信号PUL2の位相差分の第3信号PUL3を生成し、出力端子13Cから第3信号PUL3を出力する。
【0018】
位相比較器13は、複数配設される回路部10に対応して複数配設され、第1ライン80及び第2ライン90の末端と回路部10との間に配設される。よって、第1ライン80は、第1カウンタ11から複数に枝分かれして各位相比較器13のデータ入力端子13Aまで配設される。同じように、第2ライン90も第2カウンタ12から複数に枝分かれして各位相比較器13のデータ入力端子13Bまで配設される。なお、図1において位相比較器13は回路部10の数に合わせて4つ配置されているが、その数に限定されるものではない。
【0019】
位相比較器13は、EX−ORゲート(Exclusive OR)で形成される。もしくは、入力にインバータINVを介してからEX−NORゲートで形成されてもよい。本実施の形態は、位相比較器13は、第1のインバータINV2(第1インバータ)、第2のインバータINV3(第2インバータ)、及びEX−NORゲート(以下、比較器と称する)14から形成される。よって、位相比較器13の入力端子13A、13BはインバータINV2、INV3の入力端子となる。また、位相比較器13の出力端子13Cは、比較器14の出力端子となる。
【0020】
インバータINV2は、第1信号PUL1を入力し第1信号PUL1を反転させた反転信号REV1(第1反転信号)を比較器14へ出力する。インバータINV3は、第2信号PUL2を入力し第2信号PUL2を反転させた反転信号REV2(第2反転信号)を比較器14へ出力する。比較器14は、入力された反転信号REV1及び反転信号REV2から反転信号REV1及び反転信号REV2の位相差分の第3信号PUL3を生成し、回路部10へ出力する。
【0021】
前述したように、位相比較器13は、第1ライン80及び第2ライン90の末端と回路部10との間に配設される。よって、第1ライン80及び第2ライン90は、位相比較器13と回路部10との間に配設されるラインや第1カウンタ11及び第2カウンタ12に入力するクロック信号CLKが転送されるラインよりも長く引き回す構成となっており、本実施の形態はそれを特徴としている。
【0022】
以下に、第1ライン80及び第2ライン90を長く引き回す理由を説明する。
【0023】
クロック信号CLKは、他の信号(アドレス信号やデータ信号等、図示せず)よりも高い周波数(例えば2倍)で動作するため、伝送するラインの配線抵抗や浮遊容量(以下、配線時定数と称する)による波形のなまりが信号に与える影響が他の信号よりも大きい。よって、配線時定数が大きすぎるとクロック信号CLKがフルスイングしなくなり、動作不良を引き起こしてしまう。
【0024】
そのため、クロック信号CLK、第1信号PUL1、第2信号PUL2、第1反転信号REV1、第2反転信号REV2、及び第3信号PUL3が転送される各ラインは、アドレス信号やデータ信号等の他の信号が転送されるラインよりも小さい配線時定数で形成されることが必要である。例えば、上述の信号が転送される各ラインは、配線時定数を信号の1/2周期未満で形成される。
【0025】
しかし、本実施の形態に係る半導体集積回路100の構成は、上述したように、
第1カウンタ11及び第2カウンタ12により、クロック信号CLKを、クロック信号CLKを逓倍した周期の第1信号PUL1及び第2信号PUL2に変換している。よって、第1信号PUL1及び第2信号PUL2は、クロック信号CLKよりも低い周波数となるため、配線時定数により多少波形なまっても動作には大きく影響しなくなる。
【0026】
以上より、第1信号PUL1及び第2信号PUL2が転送される第1ライン及び第2ラインを長く引き回すことが可能となる。
【0027】
ただし、第1ライン80上及び第2ライン90上に形成されるインバータINV2及びインバータINV3が、第1ライン80の配線時定数と第2ライン90の配線時定数とが異なる位置に配置されると、インバータ2及びインバータ3で生成される反転信号REV1、REV2の位相が変化してしまう。反転信号REV1、REV2の位相が変化すると、反転信号REV1、REV2の位相差から生成される第3信号PUL3のデューティー比が変化してしまう。そうなると、クロック信号CLKとは異なったデューティー比の第3信号PUL3が各回路10に転送されるため、各回路10での動作にエラーが生じる可能性がある。よって、インバータINV2及びインバータINV3は、第1ライン80の配線時定数と第2ライン90の配線時定数とが等しくなる位置に配設される。
【0028】
なお、図1の第1ライン80上及び第2ライン90上に記載されている抵抗やコンデンサは、実際に部品として配設される物ではなく、第1ライン80及び第2ライン90が持つ配線抵抗と浮遊容量を示している。
【0029】
本実施の形態で形成されることにより、高いクロック周波数や高いデューティー比で使用した場合でも、配線時定数によるクロック周波数及びデューティー比を変動させることなく、各回路へ転送することが可能となる。また、クロックの転送経路上に配設するバッファを少なくすることができるため、半導体集積回路100を小さい面積で形成することができる。
【0030】
[本実施の形態に係る半導体集積回路100の動作]
次に、本実施の形態に係る半導体集積回路100の動作を図2を参照して説明する。図2は、クロック信号CLKが回路10まで転送される際の各部位での信号の状態を示すグラフである。
【0031】
クロック信号CLKは、第1カウンタ11のクロック端子11A及び第2カウンタ12のクロック端子12Aに転送される。
【0032】
第1カウンタ11は、クロック信号CLKの立ち上がりエッジから第1信号PUL1を生成し、データ出力端子11Cから第1ライン80に第1信号PUL1を出力する。
【0033】
第2カウンタ12は、クロック信号CLKの立ち下がりエッジから第2信号PUL2を生成し、データ出力端子12Cから第2ライン90に第2信号PUL2を出力する。
【0034】
第1信号PUL1及び第2信号PUL2は、クロック信号CLKを逓倍した(例えば2倍)周期で生成される。よって、図2に示すように、2周期のクロック信号CLKにつき、1周期の第1信号PUL1及び第2信号PUL2が生成される。
【0035】
第1ライン80及び第2ライン90は、本実施の形態に係る半導体集積回路100において、他のラインに比べ長く引き回されるため、配線時定数が高くなる。よって、第1ライン80及び第2ライン90を伝送する第1信号PUL1及び第2信号PUL2は、図2に示すように、配線時定数によって波形がなまる。
【0036】
インバータINV2は、第1信号PUL1を反転させた第1反転信号REV1を生成し比較器14へ出力する。インバータINV3は、第2信号PUL2を反転させた第2反転信号REV2を生成し比較器14へ出力する。
【0037】
比較器14は、第1反転信号REV1及び第2反転信号REV2の位相差から第3信号PUL3を生成し、回路10へ出力する。
【0038】
なお、インバータINV2及びインバータINV3は、第1ライン80及び第2ライン90の配線時定数が等しくなる位置に配設される為、インバータINV2及びインバータINV3の閾値電圧も等しく設定される。そのように形成されることにより、第1反転信号REV1と第2反転信号REV2との位相差が、第1信号PUL1と第2信号PUL2との位相差とほぼ同一に形成される。
【0039】
よって、クロック信号CLKの周波数及びデューティー比とほぼ同一の第3信号PUL3が比較器14から回路10へ転送される。
【0040】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、様々な変更、置換等が可能である。たとえば、上記の実施の形態では、クロック信号CLKの転送先はマイコンやメモリ等となる回路部10であったが、図3に示すようにそれがメモリセルアレイ110でも良い。本発明は、半導体集積回路100の大きさに関係なく、クロック信号CLKが転送される半導体集積回路100であれば本発明の範囲に含まれる。
【0041】
また、上記の実施の形態では、第1カウンタ11及び第2カウンタ12はフリップフロップで形成されたが、同一の動作を行うものであれば、論理ゲートを組み合わせたものでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】この発明の一実施の形態による半導体集積回路100の構成図である。
【図2】同半導体集積回路100内部をクロック信号CLKが転送される際の各部位でのクロック信号CLKの状態を示すグラフである。
【図3】回路部10の他の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0043】
10…回路部、11…第1カウンタ、11A、12A…クロック端子、11B、12B、13A、13B…データ入力端子、11C、12C、13C…データ出力端子、12…第2カウンタ、13…位相比較器、14…比較器、80…第1ライン、90…第2ライン、100…半導体集積回路、110…メモリセルアレイ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数配設される回路部と、
クロック信号の立ち上がりエッジから前記クロック信号を逓倍した周期の第1信号を生成する第1カウンタと、
前記クロック信号の立ち下がりエッジから前記クロック信号を逓倍した周期の第2信号を生成する第2カウンタと、
前記第1信号が転送される第1ラインと、
前記第2信号が転送される第2ラインと、
前記第1ライン及び前記第2ラインと接続され前記第1信号と前記第2信号との位相差から第3信号を生成し前記回路部に前記第3信号を出力する位相比較器と、
を備え、
前記位相比較器は、前記第1ライン及び前記第2ライン上に配設され且つ前記第1ライン及び前記第2ラインの末端と前記回路部との間に複数配設される
ことを特徴とする半導体集積回路。
【請求項2】
前記位相比較器は、
前記第1ラインと接続され前記第1信号を反転させた第1反転信号を生成する第1インバータと、
前記第2ラインと接続され前記第2信号を反転させた第2反転信号を生成する第2インバータと、
前記第1インバータ及び前記第2インバータと接続され前記第1反転信号と前記第2反転信号との位相差から前記第3信号を生成する比較器と、
からなることを特徴とする請求項1記載の半導体集積回路。
【請求項3】
前記第1インバータ及び前記第2インバータは、前記第1ラインの配線時定数と前記第2ラインの配線時定数とが等しくなる位置に配設される
ことを特徴とする請求項1記載の半導体集積回路。
【請求項4】
前記第1ライン及び前記第2ラインの配線時定数は、前記第1ライン及び前記第2ライン上を伝送する前記第1信号及び前記第2信号の1/2周期未満となる
ことを特徴とする請求項1記載の半導体集積回路。
【請求項5】
前記第1ライン及び前記第2ライン上には、バッファが配設される
ことを特徴とする請求項1記載の半導体集積回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−41156(P2010−41156A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−199131(P2008−199131)
【出願日】平成20年8月1日(2008.8.1)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】