説明

単相同期交流モータ

【課題】位相シフト回路を設けることなく、単相交流同期モータを回転させることができる発明を提供する。
【解決手段】2つの固定子極12,14を有する固定子16と2つの回転子極18,20を有する回転子22から構成された永久磁石型の単相交流同期モータ10であって、回転子22の位置を検出する1個のデジタル型ホールIC32が配され、このホールIC32の取り付け位置が、スロットの境目を0°として回転方向への角度をθ°とした場合に、100°〜120°、または、280°〜300°の範囲に配され、制御回路は位相シフト機能を有さないものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの固定子極を有する固定子と、2つの回転子極を有する回転子から構成された永久磁石型の単相同期交流モータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、単相同期交流モータ(以下、単にモータという)の制御装置については種々提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
従来のモータ及びその駆動装置について、図6及び図7に基づいて説明する。
【0004】
図6は、従来のモータ100の概念図を示すものであり、2つの固定子極102,104の間に2つの回転子極106,108を有する回転子が回転自在に配されている。また、一対の固定子極102,104の間には、回転子110の回転子極106,108の位置を検出するためのアナログ型のホールIC112が配されている。
【0005】
図7は、モータ100の駆動装置114の回路図である。
【0006】
モータ100の固定子巻線120と交流電源116との間にトライアック118が直列に配されている。このトライアック118は、前記したホールIC112からのパルス上の位置信号と、交流電源116の極性を処理する電子回路によって制御され、この電子回路は、位相をシフトさせる位相シフト回路120とXOR回路122から構成されている。
【0007】
ところで、上記ホールIC112は、一般的に検出精度が高いアナログ型が用いられている。このアナログ型のホールIC112は、固定子101の発生する磁束の影響に弱いため、その配置位置は発生磁束の影響の受け難い図6に示すような固定子極106,108の間のスロットに配置する必要がある。しかし、この位置で回転子極106,108の磁極の位置を検出しても通電ロジックが作れずモータ100を正常に駆動できないため、上記したように位相シフト回路120を設けて位相制御を行いモータ100を駆動させている。
【特許文献1】特開平4−67788号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のように固定子極102,108の間のスロットにアナログ型のホールIC112を設ける必要があるため、位相シフト回路120が必要であり、また、図6に示すように、配線基板124が、固定子101の基部から先端部まで覆う大きさで設ける必要があり、配線基板124の形状が大きくなるという問題点がある。
【0009】
そこで、本発明は上記問題点に鑑み、位相シフト回路を設けることなく、単相交流同期モータを回転させることができる発明を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に係る発明は、2つの固定子極を有する固定子と、2つの回転子極を有する回転子から構成された永久磁石型であって、前記回転子極の位置を検出する1個のホールICが配され、前記固定子巻線と交流電源との間にトライアックが配され、前記交流電源からの電源電圧と前記ホールICからのパルス状の位置信号に基づいて前記トライアックをON/OFFする制御回路が配された単相交流同期モータにおいて、前記ホールICがデジタル型であり、前記2つの固定子極の先端部側の境目を0°として回転方向への角度をθ°とした場合に、前記ホールICが100°=<θ°=<120°、または、280°=<θ°=<300°の範囲に配され、前記制御回路は、位相シフト機能を有さないことを特徴とする単相交流同期モータである。
【0011】
請求項2に係る発明は、前記固定子の一対の固定子鉄心の基部が互いに連結されたU字型であり、前記一対の固定子鉄心の基部近傍に固定子巻線がそれぞれ巻回され、前記一対の固定子鉄心の先端部の間に前記回転子が回転自在に配され、前記固定子の側部に沿って配線基板が配され、前記配線基板に前記1個のホールICが取り付けられると共に、前記ホールICが100°=<θ°=<120°の範囲に配され、前記配線基板が前記固定子鉄心の連結部から前記回転子の半分の位置まで覆う大きさであることを特徴とする請求項1記載の単相交流同期モータである。
【0012】
請求項3に係る発明は、前記制御回路が、XOR回路であることを特徴とする請求項1記載の単相交流同期モータである。
【0013】
請求項4に係る発明は、前記回転子の断面形状が略楕円形状であり、前記一対の固定子極の内周面が円弧状であり、前記回転子と前記固定子極のギャップが不均一であることを特徴とする請求項1記載の単相交流同期モータである。
【0014】
請求項5に係る発明は、前記回転子の断面形状が真円形状であり、前記一対の固定子極の内周面が楕円形状であり、前記回転子と前記固定子極のギャップが不均一であることを特徴とする請求項1記載の単相交流同期モータである。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る発明の単相交流同期モータであると、ホールICがデジタル型であるため、従来のアナログ型に比べて、回転子の発生磁束に対して影響を受けることが少ない。そのため、固定子巻線が巻回されている位置にも配置することができるので、、このホールICを100°〜120°、または、280°〜300°の範囲に配することにより、機械的に位相をシフトさせ、従来必要とされていた位相シフト機能を設けることなく正常に回転させることができる。
【0016】
請求項2に係る発明の単相交流同期モータであると、ホールICが100°〜120°の範囲に配されているため、ホールICが取り付けられている配線基板が固定子鉄心の連結部から回転子の半分の位置まで覆う大きさで形成することができ、配線基板の形状を小さくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態の単相交流同期モータ(以下、モータという)10について図1〜図5に基づいて説明する。
【0018】
(1)モータ10の構成
図1に示すように、モータ10は、2つの固定子極12,14を有する固定子16と、2つの回転子極(S極、N極)18,20を有する回転子22から構成された永久磁石型の単相交流同期モータである。
【0019】
固定子16の固定子鉄心24はU字型であって、固定子極12,14の基部が連結部26によって連結されている。
【0020】
一対の固定子極12,14の基部近傍にはそれぞれ固定子巻線28,30が巻回されている。この固定子16には、回転子22の回転子極18,20の位置を検出するためのデジタル型のホールIC32が取り付けられている。この取り付け位置については後から詳しく説明する。
【0021】
一対の固定子極の内周面は円弧状であり、回転子22の断面形状は真円形状でなく、略楕円形状となっている。これにより、回転子22と一対の固定子極12,14とのギャップが不均一になり起動トルクが得やすい。なお、一対の固定子極12,14の内周面を円弧状でなくやや不均一な楕円形状となし、回転子22の断面形状を真円形状となし、回転子22と一対の固定子極12,14とのギャップが不均一になるようにしてもよい。
【0022】
固定子16の側部には、配線基板42が配され、この配線基板42の上端部は、回転子22の大きさに沿って半円弧状に切り欠かれている。この配線基板42には、モータ10の駆動装置38が配置されている。
【0023】
(2)駆動装置38の構成
次に、モータ10の駆動装置38について図1に基づいて説明する。
【0024】
固定子巻線28が交流電源34の一端部と接続され、固定子巻線30はトライアック36の一端部と接続され、このトライアック36の他端部は交流電源34の他端部と接続されることにより、トライアック36が固定子巻線28,30と交流電源34に対し直列に配されている。
【0025】
ホールIC32の出力線と、交流電源34の一端部が、それぞれXOR回路40の入力端子にそれぞれ接続されている。このXOR回路40の出力端子がトライアック36のトリガー端子に接続されている。
【0026】
(3)ホールIC32の取り付け位置
次に、配線基板42に取り付けられたホールIC32の配置について図2及び図3に基づいて説明する。
【0027】
図2において、回転子22を時計回りの方向(C.W)に回転させる場合には次の位置に配する。
【0028】
一対の固定子極12,14の先端部側の極の境目(すなわちスロット部分)を0°として、回転方向への角度をθ°として、100°〜120°の範囲、または、280°〜300°の範囲にホールIC32を配する。この場合にホールIC32はデジタル型であるため、固定子16の側部に取り付けても、固定子16からの発生磁束に対し影響を受けることがない。図2においては、θ1またはθ2の範囲で取り付けるように図示している。
【0029】
図3において、反時計回りの方向(C.C.W)に回転させる場合には、前記した極の境目を0°とし、回転方向への角度をθ°として、100°〜120°、または、280°〜300°の範囲に取り付ける。図3においては、θ3またはθ4の範囲に取り付けるように図示している。
【0030】
上記のように、極の境目から予めθ1、θ2、θ3またはθ4の範囲で位相を機械的にシフトさせて取り付けているため、駆動装置38において従来のように位相シフト回路を設けることなくモータ10を正常に回転させることができる。
【0031】
また、ホールIC32がデジタル型であるため、アナログ型よりもコストが安く、コストを削減することができる。
【0032】
さらに、位相シフト回路を設ける必要がないため、駆動装置38の構成が簡単になり、コストの削減となる。
【0033】
(4)モータ10の回転状態
次に、位相シフト回路を設けることなくモータ10が正常に回転する理由を、図4及び図5に基づいて説明する。なお、この説明では回転子22は時計回りの方向(C.W)に回転させるものとする。
【0034】
図4は、交流電源の電圧波形と、モータ電流の電圧波形と、ホールIC32のバルス状の位置信号を示している。
【0035】
図5は、図4の波形図のおける(1)〜(5)の状態における回転子22の回転状態を示している。
【0036】
図5が示すように、ホールIC32は、N極の回転子極20が近付いた場合にHレベルとなり、S極の回転子極18が近付いた場合にはLレベルになるような位置信号を出力する。
【0037】
XOR回路40に、交流電源34の電圧と、上記したホールIC32からの位置信号が入力すると、それに基づいて制御信号が出力され、トライアック36がON/OFFされる。位置信号がLレベルで、交流電源34の電圧がマイナスのときのみトライアック36がON状態となって固定子巻線28,30にモータ電流が流れてモータ0を回転させる。
【0038】
そして、図5に示すように、回転子22は、図4の波形図に基づいて正常に回転さすることができる。
【0039】
(5)配線基板42の大きさについて
上記したようにホールIC32は、配線基板42に取り付けられ、この配線基板42は固定子16の側部に配されている。
【0040】
時計回りの方向で回転させる場合に、ホールIC32を図2に示すように、θ2の範囲に取り付けると、配線基板42の大きさは固定子16の連結部26から回転子22の半分の位置の大きさで形成することができる。すなわち、回転子22の半分の大きさの配線基板42であると、その上端部にホールIC32を取り付けると、θ2の範囲でホールIC32を取り付けることができる。したがって、従来のように配線基板42の寸法を大きく取る必要がなく小型ができ、コストを削減することができる。
【0041】
反時計回りの方向で回転させる場合に、ホールIC32を図3に示すように、θ3の範囲に取り付けると、配線基板42の大きさは固定子16の連結部26から回転子22の半分の位置の大きさで形成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明に係る単相交流同期モータは、例えば食器洗浄器に用いられるポンプ等に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の一実施形態を示す単相交流同期モータと駆動装置の説明図である。
【図2】時計回りの方向に回転するときのホールICの取り付け位置を示す説明図である。
【図3】反時計回りの方向に回転するときのホールICの取り付け位置を示す説明図である。
【図4】交流電源の電圧波形とモータ電流の波形と位置信号の波形を示す波形図である。
【図5】時計回りに回転する回転子の回転状態を説明する図である。
【図6】従来の単相交流同期モータの説明図である。
【図7】従来の単相交流同期モータの駆動装置の回路図である。
【符号の説明】
【0044】
10 単相交流同期モータ
12 固定子極
14 固定子極
16 固定子
18 回転子極
20 回転子極
22 回転子
24 固定子鉄心
26 連結部
28 固定子巻線
30 固定子巻線
32 ホールIC
34 交流電源
36 トライアック
38 駆動装置
40 XOR回路
42 配線基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの固定子極を有する固定子と、2つの回転子極を有する回転子から構成された永久磁石型であって、
前記回転子極の位置を検出する1個のホールICが配され、
前記固定子巻線と交流電源との間にトライアックが配され、
前記交流電源からの電源電圧と前記ホールICからのパルス状の位置信号に基づいて前記トライアックをON/OFFする制御回路が配された単相交流同期モータにおいて、
前記ホールICがデジタル型であり、
前記2つの固定子極の先端部側の境目を0°として回転方向への角度をθ°とした場合に、前記ホールICが100°=<θ°=<120°、または、280°=<θ°=<300°の範囲に配され、
前記制御回路は、位相シフト機能を有さない
ことを特徴とする単相交流同期モータ。
【請求項2】
前記固定子の一対の固定子鉄心の基部が互いに連結されたU字型であり、
前記一対の固定子鉄心の基部近傍に固定子巻線がそれぞれ巻回され、
前記一対の固定子鉄心の先端部の間に前記回転子が回転自在に配され、
前記固定子の側部に沿って配線基板が配され、
前記配線基板に前記1個のホールICが取り付けられると共に、前記ホールICが100°=<θ°=<120°の範囲に配され、
前記配線基板が前記固定子鉄心の連結部から前記回転子の半分の位置まで覆う大きさである
ことを特徴とする請求項1記載の単相交流同期モータ。
【請求項3】
前記制御回路が、XOR回路である
ことを特徴とする請求項1記載の単相交流同期モータ。
【請求項4】
前記回転子の断面形状が略楕円形状であり、
前記一対の固定子極の内周面が円弧状であり、
前記回転子と前記固定子極のギャップが不均一である
ことを特徴とする請求項1記載の単相交流同期モータ。
【請求項5】
前記回転子の断面形状が真円形状であり、
前記一対の固定子極の内周面が楕円形状であり、
前記回転子と前記固定子極のギャップが不均一である
ことを特徴とする請求項1記載の単相交流同期モータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−180641(P2006−180641A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−372358(P2004−372358)
【出願日】平成16年12月22日(2004.12.22)
【出願人】(398061810)日本電産シバウラ株式会社 (197)
【Fターム(参考)】