説明

印刷装置、印刷方法、印刷物

【課題】特殊光沢インクにより得られる質感とカラーインクによる色表現性とを両立させて印刷を行う。
【解決手段】プリンタ20のCPU40は、印刷対象画像の印刷においてインク使用量の多いカラーインクの1つを主要インクとして特定する。そして、CPU40は、メタリックインクのドットがONとなった場合には、主要インクのドットがONとならないように、すなわち、メタリックインクと主要インクのドットが重畳しないように、同一のディザマスクを連続的に使用して、組織的ディザ法によりハーフトーン処理を行った後、印刷を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特殊光沢インクとカラーインクとを用いて印刷を行う印刷技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、印刷媒体上に、まず、下塗り層を形成し、当該下塗り層の上に、さらに印刷を行う方法が知られている(例えば、下記特許文献1)。かかる方法は、種々の印刷方法に利用でき、例えば、様々な色調のメタリック色を再現する場合にも利用できる。
【0003】
【特許文献1】特表2002−530229号公報
【特許文献2】特開平10−81026号公報
【特許文献3】特開平10−157167号公報
【0004】
メタリック色を再現するためには、例えば、印刷媒体上にメタリックインクの層を形成し、その上にカラーインクを重畳させて印刷すればよい。
【0005】
しかしながら、かかる重畳印刷を行うと、メタリック感と彩度が低下することが問題となっていた。また、例えば、カラーインクに顔料インクを用いる場合には、顔料インクの透明度が低いために、得られるメタリック感が小さいという課題が生じていた。こうした問題は、金属光沢感を発現する金属顔料を含有するメタリックインクに限らず、例えば、真珠光沢に類似した光沢感を発現する顔料を含有したインク等、発色以外の質感を発現させる種々の特殊光沢インクを用いる場合にも共通する問題であった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の問題を踏まえ、本発明が解決しようとする課題は、特殊光沢インクにより得られる質感とカラーインクによる色表現性とを両立させて印刷を行うことである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0008】
[適用例1]特殊光沢インクとカラーインクとを用いて印刷を行う印刷装置であって、
画像データを入力する入力部と、
前記入力した画像データに基づいて、前記特殊光沢インクにより形成される特殊光沢ドットと、前記カラーインクにより形成されるカラードットとの重畳を抑制しつつ、印刷媒体上の各位置での前記特殊光沢ドットと前記カラードットの形成の有無を判断するドット形成判断部と、
前記判断に基づき、前記特殊光沢インク及び前記カラーインクを前記印刷媒体上に吐出して、前記画像データの印刷を実行する印刷部と
を備えた印刷装置。
【0009】
かかる構成の印刷装置は、特殊光沢ドットとカラードットとの重畳を抑制した印刷を行う。したがって、両ドットの重畳によるカラードットの彩度の低下や特殊光沢ドットにより得られる質感の低下を抑制することができ、その結果、特殊光沢インクにより得られる質感とカラーインクによる色表現性とを両立させて印刷を行うことができる。
【0010】
[適用例2]適用例1記載の印刷装置であって、カラーインクは複数であり、更に、複数のカラーインクのうちから主要インクを特定する特定部を備え、ドット形成判断部は、特殊光沢ドットと、主要インクにより形成される主要インクドットとの重畳を抑制しつつ、判断を行う印刷装置。
【0011】
かかる構成の印刷装置は、複数のカラーインクのうちから主要インクを特定し、特殊光沢ドットと主要インクドットとの重畳を抑制した印刷を行う。したがって、カラーインクが複数ある場合であっても、特殊光沢ドットとカラードットとの重畳を効率的に抑制し、特殊光沢インクにより得られる質感とカラーインクによる色表現性とを両立させて印刷を行うことができる。
【0012】
[適用例3]特定部は、複数のカラーインクのうちで、画像データの印刷において相対的に使用量が多くなるインクを判断し、使用量が多くなるインクを主要インクとして特定する適用例2記載の印刷装置。
【0013】
かかる構成の印刷装置は、画像データの印刷において相対的に使用量が多くなるインクを主要インクとして特定する。相対的に使用量の多いインクは、印刷画像に影響が大きいので、特殊光沢インクにより得られる質感とカラーインクによる色表現性とを効率的に両立させて印刷を行うことができる。また、印刷装置が主要インクを特定するので、印刷装置のユーザは、簡単にかかる印刷を行うことができる。
【0014】
[適用例4]適用例3記載の印刷装置であって、更に、画像データを縮小して縮小画像データを生成する縮小部を備え、特定部は、縮小画像データに基づいて、使用量が多くなるインクの判断を行う印刷装置。
【0015】
かかる構成の印刷装置は、縮小画像データに基づいて、使用量が多いインクの判断を行うので、主要インクの特定に係る処理を効率的かつ迅速に行うことができる。
【0016】
[適用例5]適用例2ないし適用例4のいずれか記載の印刷装置であって、更に、入力した画像データを所定領域ごとに分割する分割部を備え、特定部は、分割された所定領域ごとに主要インクを特定する印刷装置。
【0017】
かかる構成の印刷装置は、分割された所定領域ごとに主要インクを特定するので、1つの画像印刷において使用されるインクの種類の傾向に領域ごとの偏りがあっても、特殊光沢インクにより得られる質感とカラーインクによる色表現性とを印刷画像全体に亘って両立させて印刷を行うことができる。
【0018】
[適用例6]分割部は、入力した画像データに存在するオブジェクトを検出し、オブジェクトごとの領域を前記所定領域として分割する適用例5記載の印刷装置。
【0019】
かかる構成の印刷装置は、オブジェクトごとに主要インクを特定するので、一つのオブジェクト内では、単一の主要インクが特定される。すなわち、一つのオブジェクトが複数の領域に分割され、それぞれの領域で異なる主要インクが特定され、それらに基づいて異なる特性のドット形成判断がされることがないので、印刷画像の分割領域の境界に対応する箇所に階調の不連続性が発生するなどして、印刷画質が低下することがない。
【0020】
[適用例7]分割部は、入力した画像データのエッジを検出し、検出したエッジにより閉じられた各々の領域をオブジェクトとして検出する適用例6記載の印刷装置。
かかる構成の印刷装置は、エッジにより閉じられた領域をオブジェクトとして検出するので、オブジェクトを確実に検出することができる。
【0021】
[適用例8]適用例2ないし適用例7のいずれか記載の印刷装置であって、ドット形成判断部は、特殊光沢ドットと主要インクドットとのうち、いずれか一方のドットについて、組織的ディザ法によりドット形成の有無を判断し、特殊光沢ドットと主要インクドットとのうち、他方のドットについて、一方のドットを形成すると判断した位置を除いて、組織的ディザ法によりドットの形成の有無を判断する印刷装置。
【0022】
かかる構成の印刷装置は、特殊光沢ドットと主要インクドットのうち、いずれか一方のドットが形成される位置には他方のドットが形成されないように、ドットの形成の有無を判断できるので、特殊光沢ドットと主要インクドットとの重畳を防止することができる。
【0023】
[適用例9]適用例2ないし適用例7のいずれか記載の印刷装置であって、特殊光沢ドットと主要インクドットとのうち、いずれか一方のドットについて、所定のディザマスクを用いて、組織的ディザ法によりドット形成の有無を判断し、特殊光沢ドットと前記主要インクドットとのうち、他方のドットについて、所定のディザマスクの各閾値の大小を入れ替えたディザマスクを用いて、組織的ディザ法によりドットの形成の有無を判断する印刷装置。
【0024】
かかる構成の印刷装置は、特殊光沢ドットと主要インクドットのうち、他方のドットについては、ディザマスクの閾値の大小を入れ替えたディザマスクを用いて、ドットの形成の有無を判断する。すなわち、ドット形成位置の優先順位が特殊光沢ドットと主要インクドットとで逆順になるので、特殊光沢ドットと主要インクドットのデューティが100に達するまでは、両ドットの重畳を防止することができる。
【0025】
[適用例10]適用例2ないし適用例7のいずれか記載の印刷装置であって、ドット形成判断部は、特殊光沢ドットと主要インクドットとのうち、いずれか一方のドットについて、組織的ディザ法によりドットの形成の有無を判断し、特殊光沢ドットと主要インクドットとのうち、他方のドットについて、組織的ディザ法によりドットを形成すると判断した位置については、誤差拡散法でのドットの形成の判断に用いる閾値を相対的に大きくした上で、誤差拡散法によりドットの形成の有無を判断する印刷装置。
【0026】
かかる構成の印刷装置は、組織的ディザ法によりドットを形成すると判断した位置については、誤差拡散法の閾値を相対的に大きくした上で、誤差拡散法によりドットの形成の有無を判断するので、当該位置においては、誤差拡散法によりドットが形成されにくくなる。したがって、特殊光沢ドットと主要インクドットとの重畳を抑制することができる。
【0027】
[適用例11]適用例2ないし適用例7のいずれか記載の印刷装置であって、特定部は、2種類のカラーインクを主要インクとして特定し、ドット形成判断部は、特殊光沢ドットと2種類の主要インクによりそれぞれ形成される2種類の主要インクドットとからなる第1のドット群のうちから選択した第2のドットについて、組織的ディザ法によりドット形成の有無を判断し、第1のドット群のうちから選択した第3のドットについて、第2のドットを形成すると判断した位置を除いて、組織的ディザ法によりドットの形成の有無を判断し、第1のドット群のうちから選択した第4のドットについて、所定のディザマスクの各閾値の大小を入れ替えたディザマスクを用いて、組織的ディザ法によりドットの形成の有無を判断する印刷装置。
【0028】
かかる構成の印刷装置は、特殊光沢ドットと、2種類の主要インクによりそれぞれ形成される2種類の主要インクドットとについて、適用例8と適用例9の方法を組み合わせて、ドットの形成の有無を判断するので、これら3種類のドットが互いに重畳することを抑制することができる。すなわち、主要インクを2種類特定しても、適用例2ないし適用例7のいずれかの作用効果を得ることができる。
【0029】
[適用例12]印刷部は、相対的に大きな大ドットと小さな小ドットとを形成可能であり、特殊光沢ドット及び/またはカラードットを小ドットで形成する適用例1ないし適用例11のいずれか記載の印刷装置。
【0030】
かかる構成の印刷装置は、特殊光沢ドット及び/またはカラードットを小ドットで形成するので、大ドットで形成する場合と比べて、特殊光沢ドットとカラードットとの重畳抑制効果を高めることができる。
【0031】
また、本発明は、上述の印刷装置としての構成のほか、適用例13の印刷方法、適用例14の印刷物としても実現することができる。
[適用例13]特殊光沢インクとカラーインクとを用いて印刷を行う印刷方法であって、特殊光沢インクにより形成される特殊光沢ドットと、カラーインクにより形成されるカラードットとの重畳を抑制しつつ、特殊光沢インク及びカラーインクを印刷媒体上に吐出して印刷を行う印刷方法。
【0032】
[適用例14]特殊光沢インクとカラーインクとを用いて印刷された印刷物であって、印刷媒体上の少なくとも一部の印刷領域内に、特殊光沢インクにより形成されるドットとカラーインクにより形成されるドットとを、重畳しないように混在させて印刷された印刷物。
【0033】
また、本発明は、上述した印刷装置、印刷方法、印刷物としての構成のほか、コンピュータプログラム、当該プログラムを記憶した記憶媒体等としても実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
A.印刷装置の概要:
図1は、本発明の実施例としてのプリンタ20の概略構成図である。図示するように、プリンタ20は、紙送りモータ74によって印刷媒体Pを搬送する機構と、キャリッジモータ70によってキャリッジ80をプラテン75の軸方向に往復動させる機構と、キャリッジ80に搭載された印刷ヘッド81を駆動してインクの吐出及びドット形成を行う機構と、これらの紙送りモータ74,キャリッジモータ70,印刷ヘッド81及び操作パネル93との信号のやり取りを司る制御ユニット30とから構成されている。
【0035】
キャリッジ80をプラテン75の軸方向に往復動させる機構は、プラテン75の軸と並行に架設され、キャリッジ80を摺動可能に保持する摺動軸73と、キャリッジモータ70との間に無端の駆動ベルト71を張設するプーリ72等から構成されている。
【0036】
キャリッジ80には、カラーインクとして、シアンインクCと、マゼンタインクMと、イエロインクYと、ブラックインクKとをそれぞれ収容したカラーインク用のインクカートリッジ82〜85が搭載される。また、キャリッジ80には、メタリックインクSを収容したメタリックインク用のインクカートリッジ86が搭載される。キャリッジ80の下部の印刷ヘッド81には、上述の各色のカラーインク及びメタリックインクSに対応するノズル列が形成されている。キャリッジ80にこれらのインクカートリッジ82〜86を上方から装着すると、各カートリッジから印刷ヘッド81へのインクの供給が可能となる。
【0037】
なお、本実施形態において「カラーインク」という場合には、ブラックインクも含む意味であることとする。また、本実施例においては、印刷媒体に吐出されたインクがインク吸収層に浸透して、当該インク吸収層にて発色する染料インクを用いるものとしたが、顔料インクを用いてもよい。
【0038】
また、メタリックインクとは、印刷物がメタリック感を発現するインクであり、このようなメタリックインクとしては、例えば、金属顔料と有機溶剤と樹脂とを含む油性インク組成物を用いることができる。視覚的に金属的な質感を効果的に生じさせるためには、前述の金属顔料は、平板状の粒子であることが好ましく、この平板状粒子の平面上の長径をX、短径をY、厚みをZとした場合、平板状粒子のX−Y平面の面積より求めた円相当径の50%平均粒子径R50が0.5〜3μmであり、かつ、R50/Z>5の条件を満たすことが好ましい。このような金属顔料は、例えば、アルミニウムやアルミニウム合金によって形成することができ、また、金属蒸着膜を破砕して作成することも可能である。メタリックインクに含まれる金属顔料の濃度は、例えば、0.1〜10.0重量%とすることができる。もちろん、メタリックインクはこのような組成に限らず、メタリック感が生じる組成であれば他の組成を適宜採用することが可能である。
【0039】
本実施例では、メタリックインクSの組成は、アルミニウム顔料1.5重量%、グリセリン20重量%、トリエチレングリコールモノブチルエーテル40重量%、BYK−UV3500(ビックケミー・ジャパン株式会社製)0.1重量%とした。
【0040】
制御ユニット30は、CPU40や、ROM51、RAM52、EEPROM60がバスで相互に接続されて構成されている。制御ユニット30は、ROM51やEEPROM60に記憶されたプログラムをRAM52に展開し、実行することにより、入力部41、ドット形成判断部42、印刷部43、特定部44、縮小部45、分割部46として機能する。これらの各機能部の詳細については後述する。EEPROM60には、RGBの各階調値をCMYKの各階調値に変換するためのルックアップテーブル(LUT)62が記憶されている。
【0041】
制御ユニット30には、メモリカードスロット91が接続されており、メモリカードスロット91に挿入したメモリカードMCから画像データORGを読み込んで入力することができる。本実施例においては、メモリカードMCから入力する画像データORGは、レッド(R)、グリーン(G)、ブルー(B)の3色の色成分からなるデータである。
【0042】
また、制御ユニット30は、操作パネル93等を介したユーザからの指示を受けて、入力した画像データORG内の任意の領域に対して、R,G,Bの色成分からなる領域(以下、「カラー領域」という)以外に、メタリック色からなる領域(以下、「メタリック領域」という)を指定することができる。メタリック領域とカラー領域とは、重畳していても構わない(重畳領域は、「メタリックカラー領域」という)。つまり、同一領域内に、カラーインクのより形成されるドットと、メタリックインクにより形成されるドットとが混在する印刷が行われるように、それぞれの領域が指定されてもよい。
【0043】
以上のようなハードウェア構成を有するプリンタ20は、キャリッジモータ70を駆動することによって、印刷ヘッド81を印刷媒体Pに対して主走査方向に往復動させ、また、紙送りモータ74を駆動することによって、印刷媒体Pを副走査方向に移動させる。制御ユニット30は、キャリッジ80が往復動する動き(主走査)や、印刷媒体の紙送りの動き(副走査)に合わせて、印刷データに基づいて適切なタイミングでノズルを駆動することにより、印刷媒体P上の適切な位置に適切な色のインクドットを形成する。こうすることによって、プリンタ20は、印刷媒体P上にメモリカードMCから入力したカラー画像を印刷することが可能となっている。
【0044】
B.印刷処理:
プリンタ20における印刷処理について説明する。図2は、本実施形態における印刷処理のフローチャートである。印刷処理は、メタリックカラーの印刷を行う処理であり、ユーザが操作パネル93等を用いて、メモリカードMCに記憶された所定の画像の印刷指示操作を行うことで開始される。本実施例では、ユーザは、印刷指示操作と共に、印刷対象画像についてメタリック領域の指定を行う。印刷処理を開始すると、CPU40は、まず、特定部44の処理として、主要インク特定処理を行う(ステップS110)。この処理は、図3を用いて詳述する。図示するように、主要インク特定処理が開始されると、CPU40は、まず、メモリカードスロット91を介してメモリカードMCから印刷対象であるRGB形式の画像データORGを読み込んで入力する(ステップS111)。
【0045】
画像データORGを入力すると、CPU40は、縮小部45の処理として、入力した画像データORGを所定サイズに縮小し、縮小画像データRORGを生成する(ステップS112)。本実施例では、ニアレストネイバー法により画像データORGの16分の1のサイズの縮小画像データRORGを生成するものとしたが、縮小方法や縮小サイズは、特に限定するものではない。
【0046】
RGB形式の縮小画像データRORGを生成すると、CPU40は、EEPROM60に記憶されたLUT62に従い、縮小画像データRORG中のカラー領域について、プリンタ20が表現可能な色成分であるシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロ(Y)、ブラック(K)によるCMYK形式の画像データに変換する(ステップS115)。
【0047】
色変換を行うと、CPU40は、変換した画像データに基づいて、画像データORGの印刷を行うためのインク使用量が最も多くなるインクの種類を判断し、当該インクの種類を主要インクとして特定する(ステップS116)。本実施例においては、上記ステップS112で生成した縮小画像データRORGを用いて主要インクの特定を行った。こうすれば、効率的かつ迅速に主要インクを特定できるからである。ただし、画像データORGの縮小処理は必須ではなく、画像データORGから直接主要インクの特定を行ってもよい。こうすれば、主要インクの特定精度が向上する。
【0048】
また、主要インクの特定方法は、縮小画像データRORGについて、CMYKの色別に各画素の階調値の合計値を算出し、当該合計値が最も大きい色のインクを主要インクとして特定する構成とした。こうすれば、インク使用量が最も多く、印刷画像に対して影響の大きい主要インクを簡単に特定することができる。ただし、主要インクを特定する構成は、この限りではなく、種々の構成をとり得る。例えば、色別の階調値の合計値に色別の重み付け係数を乗じて評価値を算出し、当該評価値が最も大きい色のインクを主要インクとして特定してもよい。具体的には、例えば、メタリックインクSと重畳すると彩度の影響を受けやすいシアンインクC、マゼンタインクM、イエロインクYの重み付け係数を、メタリックインクSと重畳しても彩度の影響を受けにくいブラックインクKの重み付け係数よりも大きくして、評価値を算出してもよい。あるいは、変換した画像データに基づいてハーフトーン処理を行い、その結果により、インク使用量が最も多いインクの種類を主要インクとして特定してもよい。
【0049】
主要インクを特定すると、CPU40は、主要インクの種類を主要インク情報としてRAM52に記憶して(ステップS117)、処理を印刷処理に戻す。
【0050】
主要インク特定処理が終了すると、CPU40は、入力部41の処理として、画像データORGを入力する(ステップS120)。そして、CPU40は、上記ステップS117で記憶した主要インク情報を入力する(ステップS130)。
【0051】
画像データORG及び主要インク情報を入力すると、CPU40は、上記ステップS115と同様に、画像データORG中のカラー領域について、RGB形式をCMYK形式に色変換する(ステップS140)。
【0052】
色変換処理を行うと、CPU40は、ドット形成判断部42の処理として、メタリックインクについて、発現させるメタリック感の程度をドットの分布によって表すハーフトーン処理を行う(ステップS150)。ここでは、周知の組織的ディザ法を用いる。なお、本実施例では、ユーザがメタリック領域の指定をする際に、印刷物に発現させるメタリック感の程度を併せて入力する構成とし、CPU40は、入力したメタリック感の程度に対応するデューティとなるようにハーフトーン処理を行うものとした。ただし、デューティは、予め定められたものなどであってもよい。
【0053】
メタリックインクについて、ハーフトーン処理を行うと、CPU40は、カラーインクの1つを選択し(ステップS160)、選択したインクが上記ステップS110で特定した主要インクであるか否かを判断する(ステップS170)。その結果、選択したインクが主要インクでなければ(ステップS170:NO)、CPU40は、予め用意したディザマスクを用いて組織的ディザ法により、当該インクの階調をドットの分布によって表すハーフトーン処理を行う(ステップS200)。なお、本実施例では、ブルーノイズ特性を有するディザマスクを用いており、当該ディザマスクは、上述したステップS150や後述するステップS180で用いるディザマスクと同一のものである。
【0054】
一方、選択したインクが上記ステップS110で特定した主要インクであれば(ステップS170:YES)、CPU40は、ドット形成判断部42の処理として、同一のディザマスクの連続使用によるハーフトーン処理を行う(ステップS180)。ここでのハーフトーン処理については、図4を用いて詳述する。この処理が開始されると、CPU40は、画像データORGの階調値画素データDn(nは画素位置を表す)を入力する(ステップS181)。画素データを入力すると、CPU40は、印刷処理のステップS150において、画素位置nのメタリックインクのドットがONと判断されたか否かを判断する(ステップS182)。
【0055】
その結果、メタリックインクのドットがONと判断されていれば(ステップS182:YES)、CPU40は、主要インクのドットをOFFに決定する(ステップS186)。一方、メタリックインクのドットがOFFと判断されていれば(ステップS182:NO)、CPU40は、画素データDnに、メタリックインクの階調値Vsを加えて次式(1)により、修正画素データRDnを算出する(ステップS183)。
RDn=Dn+Vs・・・(1)
【0056】
修正画素データRDnを算出すると、CPU40は、修正画素データRDnが、画素位置nに対応するディザマスクの閾値THn以上であるか否かを判断する(ステップS184)。その結果、修正画素データRDnが閾値THn以上であれば(ステップS184:YES)、CPU40は、画素位置nにおける主要インクのドットをONに決定する(ステップS185)。一方、修正画素データRDnが閾値THn未満であれば(ステップS184:NO)、CPU40は、処理を上記ステップS186に進める。こうして、主要インクのドットのON/OFFを決定すると、CPU40は、処理を印刷処理に戻す。
【0057】
かかるハーフトーン処理は、メタリックインクのドットをONにした位置では、主要インクのドットはOFFとし、当該位置を除いて、主要インクのドットのON/OFFを決定するので、メタリックインクのドットと主要インクのドットとが重畳することがない。なお、上述の例では、上記ステップS183において、画素データDnにメタリックインクの階調値Vsを加えた修正画素データRDnを基に主要インクのドットのON/OFFを判断することで、主要カラーインクのドット発生も正確に判断できる。
【0058】
また、図2では、メタリックインクのドットのON/OFFを先に決定し、主要インクのドットのON/OFFを、メタリックインクのドットONの位置を避けて決定する構成としたが、ドットのON/OFFの決定順序は、特に限定するものではなく、主要インクのドットのON/OFFを先に決定し、メタリックインクのドットのON/OFFを、主要インクのドットONの位置を避けて決定する構成としてもよい。
【0059】
ここで説明を図2に戻す。ハーフトーン処理を行うと、CPU40は、全てのインクの種類について、上記ステップS160〜S200の処理が終了したか否かを判断し(ステップS210)、処理が終了していないインクの種類があれば(ステップS210:NO)、処理を上記ステップS160に戻し、当該未処理のインクの種類について、ステップS160〜S200の処理を行う。なお、特に図示していないが、本実施例においては、上記ステップS150〜S210(ステップSSTともいう)の処理は、画素単位で繰り返し行う構成としたが、所定の領域単位で繰り返し行う構成としたり、画像全体を単位として行う構成としたりしてもよい。
【0060】
一方、全てのインクの種類について処理を終了していれば(ステップS210:YES)、CPU40は、印刷部43の処理として、ハーフトーン処理した印刷データに基づいて、キャリッジモータ70、モータ74、印刷ヘッド81等を駆動し、印刷ヘッド81からメタリックインク及びカラーインクを吐出して、メタリックカラーの印刷を実行する(ステップS220)。こうして、印刷処理は終了となる。
【0061】
かかる構成のプリンタ20は、カラーインクの中から主要インクを特定する。そして、メタリック領域では、当該主要インクにより形成されるドットとメタリックインクにより形成されるドットとが、印刷媒体上で重畳しないように、主要インクとメタリックインクのドットの形成の有無を決定し、そのようなドット配置で印刷を実行する。したがって、メタリック領域の印刷物は、メタリックインクにより形成されるドットがメタリック感を十分に発現することができ、また、主要インクにより形成されるドットが彩度を十分に表現することができるので、メタリックインクによるメタリック感とカラーインクによる色表現性とを両立させて印刷を行うことができる。また、主要インクは、画像データORGの印刷のためにインク使用量が最も多いインクであるため、すなわち、画像全体への影響の大きなインクであるため、上述の効果を効率的に得ることができる。なお、かかる方法は、メタリックインク及び主要インクのデューティの合計が100以下の場合に可能である。また、本実施形態は、プリンタ20が搭載するカラーインクが単数の場合であっても適用できることは言うまでもない。また、CPU40が主要インクを特定するので、プリンタ20のユーザは、簡単に上述の印刷を行うことができる。
【0062】
C.変形例:
上述の実施形態の変形例について説明する。
C−1.変形例1:
実施例においては、図2に示した印刷処理において、ステップS180とステップS200とで同一のディザマスクを用いて、各色のハーフトーン処理を行ったが、ステップS180とS200とで用いるディザマスクは、相互に異なるものを用いてもよい。こうすれば、メタリックインクと、主要インク以外のカラーインクのドットについても重畳を抑制することができ、カラーインクによる色表現性を向上させることができる。
【0063】
C−2.変形例2:
変形例2としての印刷処理の流れを図5及び図6に示す。図3及び図4に示した実施例と異なる点は、画像データORGを所定領域に分割し、当該分割領域ごとに主要インクの特定を行う点である。以下、この点について詳しく説明する。なお、図5及び図6において、実施例と同様の処理については、図3及び図4と同一の符号を付して、説明を簡略化する。CPU40は、変形例2としての印刷処理を開始すると、まず、主要インク特定処理を行う(ステップS310)。
【0064】
この処理では、CPU40は、図6に示すとおり、実施例と同様に、画像データORGを入力し(ステップS111)、縮小画像データRORGを生成する(ステップS112)。そして、CPU40は、分割部46の処理として、縮小画像データRORGを複数の領域に分割する(ステップS313)。本実施例では、画像データORGを16分割するものとした。
【0065】
縮小画像データRORGを分割すると、CPU40は、各分割領域の座標を分割領域情報としてRAM52に記憶し(ステップS314)、分割領域ごとに色変換処理を行い、主要インクを特定後、主要インク情報をRAM52に記憶し(ステップS315〜S317)、処理を印刷処理に戻す。ステップS315〜S317の処理は、分割領域ごとに行う点を除き、実施例におけるステップS115〜S117(図3参照)と同様である。
【0066】
主要インク決定処理を行うと、CPU40は、画像データORGを入力し(ステップS120)、さらに、上記ステップS314で記憶した分割領域情報と、上記ステップS317で記憶した主要インク情報とを入力する(ステップS330)。
【0067】
そして、CPU40は、実施例と同様に色変換処理を行い(ステップS140)、分割領域を移動する(ステップS345)。ここでは、上記ステップS313で分割された分割領域の一つが順次選択される。本実施例では、最初に選択される分割領域は、画像データORGの左上端の領域とした。なお、本実施例においては、入力する分割領域情報は、縮小画像データRORGにおける座標であるため、これを基にして対応する画像データORGの座標を算出することで、画像データORGの分割領域が特定される。
【0068】
分割領域を移動すると、CPU40は、移動した分割領域について、図2のステップSSTに示した処理を実行する。すなわち、メタリックインク及び主要インクについては、ドットが重畳しないように、ディザマスク連続使用による組織的ディザ法でのハーフトーン処理を行い、主要インク以外のカラーインクについては、通常の組織的ディザ法によるハーフトーン処理を行う。
【0069】
ステップSSTの処理を実行すると、CPU40は、画像データORGの全ての分割領域について上記ステップSSTの処理が終了したか否かを判断する(ステップS355)。その結果、処理を未実行の分割領域があれば(ステップS355:NO)、CPU40は、処理を上記ステップS345に戻して分割領域を移動させ、移動先の分割領域についてステップSSTの処理を実行する。
【0070】
一方、全ての分割領域についてステップSSTの処理が終了していれば(ステップS355:YES)、CPU40は、実施例と同様に、画像データORGの印刷を実行する(S220)。
【0071】
かかる構成のプリンタ20は、画像データORGを複数の分割領域に分割し、当該分割領域ごとに主要インクを特定し、主要インクとメタリックインクのドットが重畳しないようにハーフトーン処理を行う。したがって、画像データORG全体のうち、使用されるインクの種類の傾向に領域ごとの偏りがあっても、偏りのある領域ごとに、画像への影響の大きなインクとメタリックインクのドットの重畳を防止するので、メタリックインクによるメタリック感とカラーインクによる色表現性との両立性を印刷画像全体に亘って実現することができる。
【0072】
また、上述の分割領域は、画像データのエッジにより閉じられた各々の領域としてもよい。例えば、入力したRGB形式の画像データORGにおけるレッド、グリーン、ブルーの各階調値R,G,Bを用いて、各画素の輝度値Yを次式(2)により算出し、微分オペレータを用いて輝度のエッジを検出し、所定値以上の強さのエッジにより閉じられた領域を分割領域として設定してもよい。
Y=0.29891×R+0.58661×G+0.11448×B・・・(2)
【0073】
こうすれば、画像データに存在するオブジェクトを確実に検出し、当該オブジェクト単位で領域の分割を行うことができる。その結果、一つの閉じられたオブジェクト内では、単一の主要インクが特定され、単一の方法のハーフトーン処理が実行されるので、一つのオブジェクトに対して、複数の分割領域が割り当てられ、当該複数の分割領域間で異なる主要インクが特定されて、異なる方法のハーフトーン処理が実行されることがない。したがって、印刷画像の分割領域の境界に対応する箇所に階調の不連続性が発生するなどして、印刷画質が低下することがない。なお、オブジェクトの検出は、エッジ検出によるものに限るものではなく、他の手法によってもよい。例えば、所定の色相範囲にある領域を検出してもよいし、所定形状のパターンマッチングにより検出してもよい。
【0074】
C−3.変形例3:
実施例においては、CPU40は、メタリックインクと主要インクとで同一のディザマスクを連続的に使用して、組織的ディザ法によりハーフトーン処理を行うことで、メタリックインクと主要インクのドットの重畳を抑制する構成について示したが、これらのインクの重畳の抑制は、実施例の方法に限るものではなく、種々の方法により実現することができる。例えば、実施例の印刷処理におけるステップS180のハーフトーン処理に代えて、図7に示すハーフトーン処理を行ってもよい。以下、図7のハーフトーン処理について具体的に説明する。なお、図4と同様の処理については、図4と同一の符号を付して、説明を簡略化する。
【0075】
具体的には、CPU40は、画像データORGの画素データDnを入力する(ステップS181)。画素データDnを入力すると、CPU40は、図2のステップS150におけるメタリックインクのハーフトーン処理に用いたディザマスクのうち、画素位置nに対応する位置の閾値THnを修正して修正閾値RTHnを算出する(ステップS481)。具体的には、修正閾値RTHnは、閾値THnとディザマスクの閾値の最大値THmaxとを用いて、次式(3)により算出する。例えば、ディザマスクの閾値が0から255までで設定されており、THnの閾値が200であれば、修正閾値RTHnは55(=255−200)となる。
RTHn=THmax−THn・・・(3)
【0076】
修正閾値RTHnを算出すると、CPU40は、画素データDnが修正閾値RTHn以上であるか否かを判断する(ステップS482)。その結果、画素データDnが修正閾値RTHn以上であれば(ステップS482:YES)、主要インクのドットをONに決定し(ステップS185)、画素データDnが修正閾値RTHn未満であれば(ステップS482:NO)、主要インクのドットをOFFに決定する(ステップS186)。
【0077】
すなわち、図7の方法では、メタリックインクのドットの形成の判断に用いたディザマスクの各閾値と大小関係を入れ替えた閾値からなるディザマスクを用いて主要インクのドットの形成の判断を行っているのである。かかる修正閾値RTHnで構成されるディザマスクは、もとのディザマスクに対して、ドットの形成のされやすさを逆にしたものに相当する。その結果、同じディザマスクを用いたものと考えれば、メタリックインクは、閾値の小さな箇所から順にドットが形成され、主要インクは、閾値の大きな箇所から順にドットが形成されることとなる。なお、かかる方法は、以降、ディザマスクの逆順使用の方法という。
【0078】
かかる構成のハーフトーン処理を行えば、メタリックインク及び主要インクのデューティの合計が100以下であれば、両インクのドットの重畳を防止することができ、デューティの合計が100を超える場合であっても、両インクのドットが重畳するのは、デューティの合計が100を超えた分だけとなるので、両インクのドットの重畳を抑制することができる。したがって、実施例と同様に、メタリックインクによるメタリック感とカラーインクによる色表現性との両立性を向上させることができる。また、本変形例の構成であれば、メタリックインク及び主要インクのデューティの合計が100を超える印刷を行う場合にも適用することができる。
【0079】
C−4.変形例4:
メタリックインクと主要インクのドットの重畳を抑制する構成は、上述の実施形態に示した、組織的ディザ法のみを用いた構成に限らず、種々の構成が可能である。例えば、実施例の印刷処理におけるステップS180の処理に代えて、図8に示すように、誤差拡散法によりハーフトーン処理を行ってもよい。以下、図8のハーフトーン処理について、具体的に説明する。なお、図4と同様の処理については、図4と同一の符号を付して、説明を簡略化する。
【0080】
具体的には、CPU40は、変形例3と同様に、画像データORGの画素データDnを入力する(ステップS181)。画素データを入力すると、CPU40は、上記ステップS150でメタリックインクのドットがONに決定されたか否かを判断し(ステップS182)、その結果、ドットがONに決定していれば(ステップS182:YES)、誤差拡散法においてドットの形成の有無の判断を行う閾値THn2に所定値βを加えて、相対的に大きな修正閾値RTHn2を算出する(ステップS583)。
【0081】
修正閾値RTHn2を算出すると、CPU40は、修正閾値RTHn2を用いて、誤差拡散法により、主要インクのドットの形成の有無を決定する(ステップS584)。また、ステップS584では、メタリックインクのドットがOFFに決定している場合には(ステップS182:NO)、CPU40は、閾値THn2を用いて、誤差拡散法により、主要インクのドットの形成の有無を決定する。
【0082】
かかる構成のプリンタ20では、メタリックインクによるドットの形成の有無の判断は、組織的ディザ法により行い、主要インクによるドットの形成の判断は、誤差拡散法により行う。また、メタリックインクのドットがONに決定している場合には、誤差拡散法に用いる閾値THn2を相対的に大きくしてから、主要インクのドットの形成の有無を決定する構成(ステップS182〜S584)とした。かかる構成とすることにより、メタリックインクにより形成されるドットがONとなる箇所については、主要インクにより形成されるドットがONになりにくいために、両ドットの重畳を抑制することができる。その結果、メタリックインクによるメタリック感とカラーインクによる色表現性との両立性を向上させることができる。
【0083】
また、上述の例では、主要インクについては、誤差拡散法により、主要インク以外のカラーインクは、組織的ディザ法によりハーフトーン処理を行う構成としたが、全てのカラーインクについて誤差拡散法によりハーフトーン処理を行ってもよい。こうすれば、上記ステップS110の主要インク特定処理を省略することができ、処理を簡略化できる。また、メタリックインクと主要インクとでハーフトーン処理の方法を入れ替えてもよい。
【0084】
C−5.変形例5:
上述の実施形態においては、CPU40が1種類の主要インクを特定し、当該1種類の主要インクのドットとメタリックインクのドットとの重畳を抑制する構成を例示したが、主要インクは、2種類のカラーインクであってもよい。例えば、CPU40は、上記ステップS110の主要インク特定処理では、縮小画像データRORGの印刷を行うためのインク使用量が最も多くなるカラーインク(インクAという)及び2番目に多くなるカラーインク(インクBという)の種類を主要インクとして特定してもよい。
【0085】
かかる場合、CPU40は、インクA、インクB、メタリックインクSからなる全3種類のインクうち、いずれか2種類のインクについては、図4に示した同一のディザマスクの連続使用の方法によりハーフトーン処理を行い、残りの1種類のインクについては、図7に示したディザマスクの逆順使用の方法により、ハーフトーン処理を行ってもよい。こうすれば、3種類のインクの重畳を抑制することができる。
【0086】
なお、上述のディザマスクの連続使用において、最初にディザマスクを適用するインク(インクX)、当該インクに続けて同一ディザマスクを適用するインク(インクY)、ディザマスクを逆順使用するインク(インクZ)の組み合わせC(X,Y,Z)は、(A,B,S)、(A,S,B)、(B,A,S)、(B,S,A)、(S,A,B)、(S,B,A)の6通りが考えられるが、メタリックインクSとインク使用量が最も多くなるインクAとの重畳を極力避けることを考慮すれば、(A,B,S)、(A,S,B)、(S,A,B)、(S,B,A)の組み合わせが望ましい。
【0087】
C−6.変形例6:
実施例においては、図3に示した主要インク特定処理において、CPU40は、縮小画像データRORGの印刷を行うためのインク使用量が最も多くなるインクの種類を主要インクとして特定したが、主要インクは、かかるインクに限るものではなく、複数のカラーインクの中で相対的に、メタリックインクにより形成されるドットとの重畳を避けたいインクの種類としてもよい。例えば、ユーザが、プリンタ20が搭載するカラーインクの中で最も彩度を強調したいインクの種類を操作パネル93で入力し、CPU40は、それを受け付けて、当該インクの種類を主要インクとして特定してもよい。
【0088】
C−7.変形例7:
プリンタ20が、相対的に大きな大ドットと小さな小ドットとを形成可能な構成である場合には、メタリックインクにより形成されるドット及び/または主要インクにより形成されるドットを、小ドットで形成するように制御してもよい。こうすれば、インクの滲みなどが生じても、確実に両ドットの重畳を抑制することができる。
【0089】
C−8.変形例8:
上述した実施形態においては、メタリックインクとカラーインクとによりメタリックカラーの印刷を行う構成について例示したが、本発明は、メタリックカラーの印刷に限るものではなく、カラーインクと種々の特殊光沢インクを用いた印刷に適用することができる。特殊光沢材とは、印刷を経た印刷媒体表面において特殊光沢を呈するインクであり、メタリック感を発現する顔料を含有するメタリックインクのほかに、印刷媒体表面に印刷されたインクの光学的特性が反射角依存性を有し、見る角度によって様々な見え方を呈するインクとしてもよい。かかるインクとしては、具体的には、メタリックインクのほかに、媒体表面への定着後に真珠光沢感を発現する顔料を含有する真珠光沢インク、媒体表面への定着後に乱反射を起こしていわゆるラメ感やなし地感を発現するよう微小凹凸を有する顔料を含有するラメインクやなし地インクなどを用いることができる。
【0090】
C−9.変形例9:
上述した実施形態においては、プリンタ20が図2の印刷処理の全てを実行する構成としたが、プリンタ20にコンピュータが接続される場合には、印刷処理の一部を当該コンピュータが実行してもよい。かかる場合、コンピュータとプリンタ20とによって構成される印刷システムは、広義の印刷装置として捉えることができる。
【0091】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を脱しない範囲において、種々なる態様で実施できることは勿論である。例えば、本発明は、インクジェットプリンタのほか、特殊光沢トナーとカラートナーとを印刷媒体上に付着させて印刷を行うレーザプリンタなど種々の印刷装置に適用することができる。また、印刷装置としての構成の他、印刷方法、印刷物、プログラム、記憶媒体等としても実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明の実施例としてのプリンタ20の概略構成図である。
【図2】プリンタ20における印刷処理の手順を示すフローチャートである。
【図3】印刷処理における主要インク決定処理の手順を示すフローチャートである。
【図4】印刷処理におけるステップS180の処理の手順を示すフローチャートである。
【図5】変形例としての印刷処理の手順を示すフローチャートである。
【図6】変形例としての印刷処理における主要インク決定処理の手順を示すフローチャートである。
【図7】変形例としての印刷処理におけるステップS180の処理の手順を示すフローチャートである。
【図8】変形例としての印刷処理におけるステップS180の処理の手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0093】
20…プリンタ
30…制御ユニット
40…CPU
41…入力部
42…ドット形成判断部
43…印刷部
44…特定部
45…縮小部
46…分割部
51…ROM
52…RAM
60…EEPROM
62…LUT
70…キャリッジモータ
71…駆動ベルト
72…プーリ
73…摺動軸
74…紙送りモータ
75…プラテン
80…キャリッジ
81…印刷ヘッド
82〜86…インクカートリッジ
91…メモリカードスロット
93…操作パネル
P…印刷媒体
MC…メモリカード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特殊光沢インクとカラーインクとを用いて印刷を行う印刷装置であって、
画像データを入力する入力部と、
前記入力した画像データに基づいて、前記特殊光沢インクにより形成される特殊光沢ドットと、前記カラーインクにより形成されるカラードットとの重畳を抑制しつつ、印刷媒体上の各位置での前記特殊光沢ドットと前記カラードットの形成の有無を判断するドット形成判断部と、
前記判断に基づき、前記特殊光沢インク及び前記カラーインクを前記印刷媒体上に吐出して、前記画像データの印刷を実行する印刷部と
を備えた印刷装置。
【請求項2】
請求項1記載の印刷装置であって、
前記カラーインクは複数であり、
更に、前記複数のカラーインクのうちから主要インクを特定する特定部を備え、
前記ドット形成判断部は、前記特殊光沢ドットと、前記主要インクにより形成される主要インクドットとの重畳を抑制しつつ、前記判断を行う
印刷装置。
【請求項3】
前記特定部は、前記複数のカラーインクのうちで、前記画像データの印刷において相対的に使用量が多くなるインクを判断し、該使用量が多くなるインクを前記主要インクとして特定する請求項2記載の印刷装置。
【請求項4】
請求項3記載の印刷装置であって、
更に、前記画像データを縮小して縮小画像データを生成する縮小部を備え、
前記特定部は、前記縮小画像データに基づいて、前記使用量が多くなるインクの判断を行う
印刷装置。
【請求項5】
請求項2ないし請求項4のいずれか記載の印刷装置であって、
更に、前記入力した画像データを所定領域ごとに分割する分割部を備え、
前記特定部は、前記分割された所定領域ごとに前記主要インクを特定する
印刷装置。
【請求項6】
前記分割部は、前記入力した画像データに存在するオブジェクトを検出し、該オブジェクトごとの領域を前記所定領域として分割する請求項5記載の印刷装置。
【請求項7】
前記分割部は、前記入力した画像データのエッジを検出し、該検出したエッジにより閉じられた各々の領域を前記オブジェクトとして検出する請求項6記載の印刷装置。
【請求項8】
請求項2ないし請求項7のいずれか記載の印刷装置であって、
前記ドット形成判断部は、
前記特殊光沢ドットと前記主要インクドットとのうち、いずれか一方のドットについて、組織的ディザ法によりドット形成の有無を判断し、
前記特殊光沢ドットと前記主要インクドットとのうち、他方のドットについて、前記一方のドットを形成すると判断した位置を除いて、組織的ディザ法によりドットの形成の有無を判断する
印刷装置。
【請求項9】
請求項2ないし請求項7のいずれか記載の印刷装置であって、
前記特殊光沢ドットと前記主要インクドットとのうち、いずれか一方のドットについて、所定のディザマスクを用いて、組織的ディザ法によりドット形成の有無を判断し、
前記特殊光沢ドットと前記主要インクドットとのうち、他方のドットについて、前記所定のディザマスクの各閾値の大小を入れ替えたディザマスクを用いて、組織的ディザ法によりドットの形成の有無を判断する
印刷装置。
【請求項10】
請求項2ないし請求項7のいずれか記載の印刷装置であって、
前記ドット形成判断部は、
前記特殊光沢ドットと前記主要インクドットとのうち、いずれか一方のドットについて、組織的ディザ法によりドットの形成の有無を判断し、
前記特殊光沢ドットと前記主要インクドットとのうち、他方のドットについて、前記組織的ディザ法によりドットを形成すると判断した位置については、誤差拡散法でのドットの形成の判断に用いる閾値を相対的に大きくした上で、誤差拡散法によりドットの形成の有無を判断する
印刷装置。
【請求項11】
請求項2ないし請求項7のいずれか記載の印刷装置であって、
前記特定部は、2種類のカラーインクを前記主要インクとして特定し、
前記ドット形成判断部は、
前記特殊光沢ドットと前記2種類の主要インクによりそれぞれ形成される2種類の主要インクドットとからなる第1のドット群のうちから選択した第2のドットについて、組織的ディザ法によりドット形成の有無を判断し、
前記第1のドット群のうちから選択した第3のドットについて、前記第2のドットを形成すると判断した位置を除いて、組織的ディザ法によりドットの形成の有無を判断し、
前記第1のドット群のうちから選択した第4のドットについて、前記所定のディザマスクの各閾値の大小を入れ替えたディザマスクを用いて、組織的ディザ法によりドットの形成の有無を判断する
印刷装置。
【請求項12】
前記印刷部は、相対的に大きな大ドットと小さな小ドットとを形成可能であり、前記特殊光沢ドット及び/または前記カラードットを前記小ドットで形成する請求項1ないし請求項11のいずれか記載の印刷装置。
【請求項13】
特殊光沢インクとカラーインクとを用いて印刷を行う印刷方法であって、
前記特殊光沢インクにより形成される特殊光沢ドットと、前記カラーインクにより形成されるカラードットとの重畳を抑制しつつ、前記特殊光沢インク及び前記カラーインクを前記印刷媒体上に吐出して印刷を行う
印刷方法。
【請求項14】
特殊光沢インクとカラーインクとを用いて印刷された印刷物であって、
印刷媒体上の少なくとも一部の印刷領域内に、前記特殊光沢インクにより形成されるドットと前記カラーインクにより形成されるドットとを、重畳しないように混在させて印刷された
印刷物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−76317(P2010−76317A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−248644(P2008−248644)
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】