説明

厚膜用化学増幅型ポジ型ホトレジスト組成物及び厚膜レジストパターンの製造方法

【課題】接続端子などの製造に好適に用いることができ、かつ高感度な厚膜用化学増幅型ポジ型ホトレジスト組成物及び厚膜レジストパターンの製造方法を提供する。
【解決手段】支持体上に、膜厚5〜150μmの厚膜ホトレジスト層を形成するために用いられる厚膜用化学増幅型ポジ型ホトレジスト組成物であって、(A)活性光線又は放射線照射により酸を発生する化合物、(B)酸の作用によりアルカリに対する溶解性が増大する特定構造の樹脂、及び(C)アルカリ可溶性樹脂を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、厚膜用化学増幅型ポジ型ホトレジスト組成物及び厚膜レジストパターンの製造方法に関するものである。さらに詳しくは、本発明は、回路基板の製造、回路基板に実装するCSP(チップサイズパッケージ)、微小電気機械システム(MEMS)素子及びMEMS素子を組み込んだ小型機械(マイクロマシン)、並びに高密度実装を行うための貫通電極などの電子部品の製造において、バンプやメタルポストなどの接続端子、配線パターンなどの形成に好適に用いられる厚膜用化学増幅型ポジ型ホトレジスト組成物及び厚膜レジストパターンの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、精密微細加工技術の主流となっているホトファブリケーションとは、感光性樹脂組成物を被加工物表面に塗布して塗膜を形成し、ホトリソグラフィー技術によって塗膜をパターニングし、これをマスクとして化学エッチング、電解エッチング、及び/又は電気メッキを主体とするエレクトロフォーミングを行って、半導体パッケージなどの各種精密部品を製造する技術の総称である。
【0003】
近年、電子機器のダウンサイジングに伴い、半導体パッケージの高密度実装技術が進み、パッケージの多ピン薄膜実装化、パッケージサイズの小型化、フリップチップ方式による2次元実装技術、3次元実装技術に基づいた実装密度の向上が図られている。このような高密度実装技術においては、接続端子として、例えば、パッケージ上に突出したバンプ等の突起電極(実装端子)や、ウエーハ上のペリフェラル端子から延びる再配線と実装端子とを接続するメタルポストなどが基板上に高精度に配置される。
【0004】
上記のようなホトファブリケーションに使用される材料として厚膜用ホトレジストがある。厚膜用ホトレジストは、厚膜ホトレジスト層を形成するものであり、例えば、メッキ工程によるバンプやメタルポストの形成などに用いられている。バンプやメタルポストは、例えば、支持体上に膜厚約20μmの厚膜ホトレジスト層を形成し、所定のマスクパターンを介して露光し、現像して、バンプやメタルポストを形成する部分が選択的に除去(剥離)されたレジストパターンを形成し、この除去された部分(非レジスト部)に銅などの導体をメッキによって埋め込んだ後、その周囲のレジストパターンを除去することにより形成することができる。
【0005】
厚膜用ホトレジストとしては、パンプ形成用や配線形成用として用いられるキノンジアジド基含有化合物を有するポジ型感光性樹脂組成物が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
一方、従来のキノンジアジド基含有化合物を有するポジ型感光性樹脂組成物よりも高感度な感光性樹脂組成物として、酸発生剤を含む化学増幅型ホトレジストが知られている。化学増幅型ホトレジストの特徴は、放射線照射(露光)により、酸発生剤から酸が発生し、露光後の加熱処理により酸の拡散が促進されて、樹脂組成物中のベース樹脂などに対し酸触媒反応を起こし、そのアルカリ溶解性を変化させることである。化学増幅型レジストのうち、アルカリ不溶であったものがアルカリ可溶化するポジ型のものとしてメッキ用化学増幅型ホトレジスト組成物が開示されている(例えば、特許文献2,3参照)。
【0007】
上記のような厚膜用ホトレジスト組成物に対する要求項目としては、10μm以上の膜厚が形成できること、基板に対する密着性を有すること、バンプを形成するためのメッキを行う際に、耐メッキ液性及びメッキ液に対する良好な濡れ性を有していること、メッキによって得られる金属層がレジストパターンの形状に対応していること、メッキ処理後に剥離液により容易に剥離されること、などが挙げられる。また、メッキ技術の高度化により、複数回のメッキ工程や、より厳しい条件でのメッキ工程が必要になり、複数回のメッキ工程にも耐えられるような、メッキ工程そのものに対する耐性も求められている。
【0008】
しかしながら、特許文献2,3に記載された従来の化学増幅型ホトレジスト組成物を使用して厚膜ホトレジスト層を作成した場合、ホトレジスト組成物のメッキに対する応力耐性が十分でないために、メッキ処理により得られる金属層が膨らみ、良好なメッキ生成物のパターンを得ることが困難であった。また、耐メッキ液性も十分でなく、メッキ工程中やメッキ処理後の洗浄中のレジストに欠けやクラックが生じ、複数回のメッキ工程を同じレジストパターンで行うのは困難であった(耐メッキ性に劣る。)。また、特許文献1に記載された耐メッキ性に優れたナフトキノンジアジド基含有化合物を有する感光性樹脂組成物では、より高感度にすることが困難であった。
【0009】
そこで、近年になり、ポジ型の化学増幅型ホトレジスト組成物において、酸の作用によりアルカリに対する溶解性が増大する樹脂として、下記一般式(b3):
【化1】

(式(b3)中、R2bは水素原子又はメチル基、R3bは低級アルキル基を表し、Xb1はそれが結合している炭素原子と共に炭素数5〜20の炭化水素環を形成する。)
で表される構成単位を含む樹脂を用いる厚膜用化学増幅型ポジ型ホトレジスト組成物が提案されている(特許文献4参照)。このような厚膜用化学増幅型ポジ型ホトレジスト組成物は、メッキによる生成物の形状が良好でかつ安定し、応力耐性、耐メッキ液性、及び耐メッキ性に優れるため、接続端子などの製造に好適に用いることができる。
【特許文献1】特開2002−258479号公報
【特許文献2】特開2001−281862号公報
【特許文献3】特開2001−281863号公報
【特許文献4】特開2004−309775号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ここで、上記一般式(b3)において、Xb1が形成する炭素数5〜20の炭化水素環としては、例えばシクロヘキサン環やアダマンタン環などが挙げられる。しかしながら、このような炭化水素環は、酸による脱保護反応が比較的進行しにくいため、膜厚が厚くなるほど露光量が必要であり、高感度化が求められていた。
【0011】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、接続端子などの製造に好適に用いることができ、かつ高感度な厚膜用化学増幅型ポジ型ホトレジスト組成物及び厚膜レジストパターンの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、厚膜用化学増幅型ポジ型ホトレジスト組成物において、酸の作用によりアルカリに対する溶解性が増大する樹脂として、特定の構造の構成単位を有する樹脂を用いることによって、上記課題を解決することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明の第1の態様は、支持体上に、膜厚5〜150μmの厚膜ホトレジスト層を形成するために用いられる厚膜用化学増幅型ポジ型ホトレジスト組成物であって、(A)活性光線又は放射線照射により酸を発生する化合物、(B)酸の作用によりアルカリに対する溶解性が増大する樹脂、及び(C)アルカリ可溶性樹脂を含有し、前記(B)成分が、(B1)下記一般式(b1):
【化2】

(式(b1)中、R1bは水素原子又はメチル基を表す。)
で表される構成単位を含む樹脂を含有することを特徴とする厚膜用化学増幅型ポジ型ホトレジスト組成物である。
【0014】
また、本発明の第2の態様は、支持体と、本発明の厚膜用化学増幅型ポジ型ホトレジスト組成物からなる膜厚5〜150μmの厚膜ホトレジスト層とが積層された厚膜ホトレジスト積層体を得る積層工程と、該厚膜ホトレジスト積層体に選択的に活性光線又は放射線を照射する露光工程と、該露光工程後に現像して厚膜レジストパターンを得る現像工程とを含むことを特徴とする厚膜レジストパターンの製造方法である。
【0015】
なお、「構成単位」とは、重合体を構成するモノマー単位を示す。また、(メタ)アクリル酸とは、メタクリル酸、アクリル酸の一方又は両方を示す。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、接続端子などの製造に好適に用いることができ、かつ高感度な厚膜用化学増幅型ポジ型ホトレジスト組成物及び厚膜レジストパターンの製造方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の厚膜用化学増幅型ポジ型ホトレジスト組成物は、後述するような(A)活性光線又は放射線照射により酸を発生する化合物、(B)酸の作用によりアルカリに対する溶解性が増大する樹脂、及び(C)アルカリ可溶性樹脂を含有することを特徴とする。
【0018】
<(A)活性光線又は放射線照射により酸を発生する化合物>
本発明の厚膜用化学増幅型ポジ型ホトレジスト組成物に用いられる(A)活性光線又は放射線照射により酸を発生する化合物(以下、(A)成分という。)は、光酸発生剤であり、光により直接又は間接的に酸を発生する。
【0019】
このような光酸発生剤の第一の態様としては、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−ピペロニル−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[2−(2−フリル)エテニル]−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[2−(5−メチル−2−フリル)エテニル]−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[2−(5−エチル−2−フリル)エテニル]−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[2−(5−プロピル−2−フリル)エテニル]−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[2−(3,5−ジメトキシフェニル)エテニル]−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[2−(3,5−ジエトキシフェニル)エテニル]−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[2−(3,5−ジプロポキシフェニル)エテニル]−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[2−(3−メトキシ−5−エトキシフェニル)エテニル]−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[2−(3−メトキシ−5−プロポキシフェニル)エテニル]−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[2−(3,4−メチレンジオキシフェニル)エテニル]−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(3,4−メチレンジオキシフェニル)−s−トリアジン、2,4−ビス−トリクロロメチル−6−(3−ブロモ−4−メトキシ)フェニル−s−トリアジン、2,4−ビス−トリクロロメチル−6−(2−ブロモ−4−メトキシ)フェニル−s−トリアジン、2,4−ビス−トリクロロメチル−6−(2−ブロモ−4−メトキシ)スチリルフェニル−s−トリアジン、2,4−ビス−トリクロロメチル−6−(3−ブロモ−4−メトキシ)スチリルフェニル−s−トリアジン、2−(4−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(4−メトキシナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−[2−(2−フリル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−[2−(5−メチル−2−フリル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−[2−(3,5−ジメトキシフェニル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−[2−(3,4−ジメトキシフェニル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(3,4−メチレンジオキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、トリス(1,3−ジブロモプロピル)−1,3,5−トリアジン、トリス(2,3−ジブロモプロピル)−1,3,5−トリアジンなどのハロゲン含有トリアジン化合物、並びにトリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレ−トなどの下記一般式(a1)で表されるハロゲン含有トリアジン化合物が挙げられる。
【0020】
【化3】

【0021】
上記一般式(a1)中、R1a、R2a、R3aは、それぞれ独立にハロゲン化アルキル基を表し、該アルキル基の炭素数は1〜6である。
【0022】
また、光酸発生剤の第二の態様としては、α−(p−トルエンスルホニルオキシイミノ)−フェニルアセトニトリル、α−(ベンゼンスルホニルオキシイミノ)−2,4−ジクロロフェニルアセトニトリル、α−(ベンゼンスルホニルオキシイミノ)−2,6−ジクロロフェニルアセトニトリル、α−(2−クロロベンゼンスルホニルオキシイミノ)−4−メトキシフェニルアセトニトリル、α−(エチルスルホニルオキシイミノ)−1−シクロペンテニルアセトニトリル、並びにオキシムスルホネ−ト基を含有する下記一般式(a2)で表される化合物が挙げられる。
【0023】
【化4】

【0024】
上記一般式(a2)中、R4aは、1価、2価、又は3価の有機基を表し、R5aは、置換、未置換の飽和炭化水素基、不飽和炭化水素基、又は芳香族性化合物基を表し、nは1〜6の整数である。
【0025】
上記一般式(a2)中、R4aは、芳香族性化合物基であることが特に好ましく、このような芳香族性化合物基としては、例えばフェニル基、ナフチル基などの芳香族炭化水素基や、フリル基、チエニル基などの複素環基が挙げられる。これらは環上に適当な置換基、例えばハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、ニトロ基などを1個以上有していてもよい。また、R5aとしては炭素数1〜6の低級アルキル基が特に好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が挙げられる。
【0026】
上記一般式(a2)で表される光酸発生剤としては、n=1のとき、R4aがフェニル基、メチルフェニル基、メトキシフェニル基のいずれかであって、R5aがメチル基の化合物、具体的にはα−(メチルスルホニルオキシイミノ)−1−フェニルアセトニトリル、α−(メチルスルホニルオキシイミノ)−1−(p−メチルフェニル)アセトニトリル、α−(メチルスルホニルオキシイミノ)−1−(p−メトキシフェニル)アセトニトリル、〔2−(プロピルスルホニルオキシイミノ)−2,3−ジヒドロキシチオフェン−3−イリデン〕(o−トリル)アセトニトリルなどが挙げられる。n=2のとき、上記一般式で表される光酸発生剤としては、具体的には下記化学式(a2−1)〜(a2−8)で表される光酸発生剤が挙げられる。
【0027】
【化5】

【0028】
さらに、光酸発生剤の第三の態様としては、カチオン部にナフタレン環を有するオニウム塩を用いることができる。この「ナフタレン環を有する」とは、ナフタレンに由来する構造を有することを意味し、少なくとも2つの環の構造と、それらの芳香族性が維持されていることを意味する。このナフタレン環は炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルキル基、水酸基、炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルコキシ基などの置換基を有していてもよい。ナフタレン環に由来する構造は、1価基(遊離原子価が1つ)であっても、2価基(遊離原子価が2つ)以上であってもよいが、1価基であることが望ましい(ただし、このとき、上記置換基と結合する部分を除いて遊離原子価を数えるものとする)。ナフタレン環の数は1〜3が好ましい。
【0029】
このようなカチオン部にナフタレン環を有するオニウム塩のカチオン部としては、下記一般式(a3)で表される構造が好ましい。
【0030】
【化6】

【0031】
上記一般式(a3)中、R6a、R7a、R8aのうち少なくとも1つは下記一般式(a4)で表される基を表し、残りは炭素数1〜6の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、水酸基、又は炭素数1〜6の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシ基を表す。あるいは、R6a、R7a、R8aのうちの1つが下記一般式(a4)で表される基であり、残りの2つはそれぞれ独立して炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルキレン基であり、これらの末端が結合して環状になっていてもよい。
【0032】
【化7】

【0033】
上記一般式(a4)中、R9a、R10aは、それぞれ独立して水酸基、炭素数1〜6の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシ基、又は炭素数1〜6の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基を表し、R11aは、単結合又は置換基を有していてもよい炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を表し、p及びqはそれぞれ独立して0〜2の整数であり、p+qは3以下である。ただし、R10aが複数存在する場合、それらは互いに同じであっても異なっていてもよい。また、R9aが複数存在する場合、それらは互いに同じであっても異なっていてもよい。
【0034】
上記R6a、R7a、R8aのうち、前記一般式(a4)で表される基の数は、化合物の安定性の点から、好ましくは1つであり、残りは炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルキレン基であり、これらの末端が結合して環状になっていてもよい。この場合、上記2つのアルキレン基は、硫黄原子を含めて3〜9員環を構成する。環を構成する原子(硫黄原子を含む)の数は、好ましくは5〜6である。
【0035】
また、上記アルキレン基が有していてもよい置換基としては、酸素原子(この場合、アルキレン基を構成する炭素原子と共にカルボニル基を形成する)、水酸基などが挙げられる。
【0036】
また、フェニル基が有していてもよい置換基としては、水酸基、炭素数1〜6の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシ基、又は炭素数1〜6の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基などが挙げられる。
【0037】
これらのカチオン部として好適なものとしては、下記化学式(a5)、(a6)で表されるものなどを挙げることができ、特に化学式(a6)で表される構造が好ましい。
【0038】
【化8】

【0039】
このようなカチオン部としては、ヨ−ドニウム塩であってもスルホニウム塩であってもよいが、酸発生効率などの点からスルホニウム塩が望ましい。
【0040】
したがって、カチオン部にナフタレン環を有するオニウム塩のアニオン部として好適なものとしては、スルホニウム塩を形成可能なアニオンが望ましい。
【0041】
このような光酸発生剤のアニオン部としては、水素原子の一部又は全部がフッ素化されたフルオロアルキルスルホン酸イオン又はアリールスルホン酸イオンが挙げられる。

【0042】
フルオロアルキルスルホン酸イオンにおけるアルキル基は、炭素数1〜20の直鎖状でも分岐状でも環状でもよく、発生する酸の嵩高さとその拡散距離から、炭素数1〜10であることが好ましい。特に、分岐状や環状のものは拡散距離が短いため好ましい。具体的には、安価に合成可能なことから好ましいものとして、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、オクチル基などを挙げることができる。
【0043】
アリールスルホン酸イオンにおけるアリール基は、炭素数6〜20のアリール基であって、アルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもされていなくてもよいフェニル基、ナフチル基が挙げられ、安価に合成可能なことから、炭素数6〜10のアリール基が好ましい。具体的には好ましいものとして、フェニル基、トルエンスルホニル基、エチルフェニル基、ナフチル基、メチルナフチル基などを挙げることができる。
ることができる。
【0044】
上記フルオロアルキルスルホン酸イオン又はアリールスルホン酸イオンにおいて、水素原子の一部又は全部がフッ素化されている場合のフッ素化率は、好ましくは10〜100%、さらに好ましくは50〜100%であり、特に水素原子を全てフッ素原子で置換したものが、酸の強度が強くなるので好ましい。このようなものとしては、具体的には、トリフルオロメタンスルホネート、パ−フルオロブタンスルホネート、パーフルオロオクタンスルホネート、パーフルオロベンゼンスルホネートなどが挙げられる。
【0045】
中でも、好ましいアニオン部としては、下記一般式(a7)で表されるものが挙げられる。
【0046】
【化9】

【0047】
上記一般式(a7)において、R12aは、下記一般式(a8)、(a9)で表される構造や、化学式(a10)で表される構造である。
【0048】
【化10】

【0049】
上記一般式(a8)中、lは1〜4の整数であり、一般式(a9)中、R13aは水素原子、水酸基、炭素数1〜6の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、または炭素数1〜6の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシ基を示し、mは1〜3の整数である。中でも、安全性の観点からトリフルオロメタンスルホネート、パーフルオロブタンスルホネートが好ましい。
【0050】
また、アニオン部としては、下記一般式(a11)、(a12)で表される窒素を含有するものを用いることもできる。
【0051】
【化11】

【0052】
上記一般式(a11)、(a12)中、Xa1は、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された直鎖状又は分岐状のアルキレン基を表し、該アルキレン基の炭素数は2〜6であり、好ましくは3〜5、最も好ましくは炭素数3である。また、Xa2、Xa3は、それぞれ独立に少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された直鎖状又は分岐状のアルキル基を表し、該アルキル基の炭素数は1〜10であり、好ましくは1〜7、より好ましくは1〜3である。
【0053】
a1のアルキレン基の炭素数又はXa2、Xa3のアルキル基の炭素数が小さいほどレジスト溶媒への溶解性も良好であるため好ましい。
【0054】
また、Xa1のアルキレン基又はXa2、Xa3のアルキル基において、フッ素原子で置換されている水素原子の数が多いほど、酸の強度が強くなるため好ましい。該アルキレン基又はアルキル基中のフッ素原子の割合、すなわちフッ素化率は、好ましくは70〜100%、さらに好ましくは90〜100%であり、最も好ましくは、全ての水素原子がフッ素原子で置換されたパーフルオロアルキレン基又はパーフルオロアルキル基である。
【0055】
このようなカチオン部にナフタレン環を有するオニウム塩として好ましいものとしては、下記化学式(a13)、(a14)で表される化合物が挙げられる。
【0056】
【化12】

【0057】
さらに、光酸発生剤の別の態様としては、ビス(p−トルエンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(1,1−ジメチルエチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(2,4−ジメチルフェニルスルホニル)ジアゾメタンなどのビススルホニルジアゾメタン類;p−トルエンスルホン酸2−ニトロベンジル、p−トルエンスルホン酸2,6−ジニトロベンジル、ニトロベンジルトシレ−ト、ジニトロベンジルトシラート、ニトロベンジルスルホナート、ニトロベンジルカルボナート、ジニトロベンジルカルボナートなどのニトロベンジル誘導体;ピロガロールトリメシラート、ピロガロールトリトシラート、ベンジルトシラート、ベンジルスルホナート、N−メチルスルホニルオキシスクシンイミド、N−トリクロロメチルスルホニルオキシスクシンイミド、N−フェニルスルホニルオキシマレイミド、N−メチルスルホニルオキシフタルイミドなどのスルホン酸エステル;N−ヒドロキシフタルイミド、N−ヒドロキシナフタルイミドなどのトリフルオロメタンスルホン酸エステル類;ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスファート、(4−メトキシフェニル)フェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホナート、ビス(p−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホナート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスファート、(4−メトキシフェニル)ジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、(p−tert−ブチルフェニル)ジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナートなどのオニウム塩;ベンゾイントシラート、α−メチルベンゾイントシラートなどのベンゾイントシレート類;その他のジフェニルヨ−ドニウム塩、トリフェニルスルホニウム塩、フェニルジアゾニウム塩、ベンジルカルボナ−トなどが挙げられる。
【0058】
さらに、光酸発生剤の第四の態様としては、下記一般式(a15)で表される化合物が挙げられる。
【0059】
【化13】

【0060】
上記一般式(a15)中、Xa4は、原子価sの硫黄原子又はヨウ素原子を表し、sは1又は2である。nは括弧内の構造の繰り返し単位数を表す。R14aは、Xa4に結合している有機基であり、炭素数6〜30のアリール基、炭素数4〜30の複素環基、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数2〜30のアルケニル基、又は炭素数2〜30のアルキニル基を表し、R14aは、アルキル、ヒドロキシ、アルコシキ、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコシキカルボニル、アリールオキシカルボニル、アリールチオカルボニル、アシロキシ、アリールチオ、アルキルチオ、アリール、複素環、アリールオキシ、アルキルスルフィニル、アリールスルフィニル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、アルキレンオキシ、アミノ、シアノ、ニトロの各基、及びハロゲンからなる群より選ばれる少なくとも1種で置換されていてもよい。R14aの個数はs+n(s−1)+1であり、R14aはそれぞれ互いに同じであっても異なっていてもよい。また、2個以上のR14aが互いに直接、又は−O−、−S−、−SO−、−SO−、−NH−、−NR15a−、−CO−、−COO−、−CONH−、炭素数1〜3のアルキレン基、若しくはフェニレン基を介して結合し、Xa4を含む環構造を形成してもよい。R15aは炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基である。
【0061】
a5は下記一般式(a16)で表される構造である。
【0062】
【化14】

【0063】
上記一般式(a16)中、Xa7は炭素数1〜8のアルキレン基、炭素数6〜20のアリーレン基、又は炭素数8〜20の複素環化合物の2価の基を表し、Xa7は炭素数1〜8のアルキル、炭素数1〜8のアルコキシ、炭素数6〜10のアリール、ヒドロキシ、シアノ、ニトロの各基、及びハロゲンからなる群より選ばれる少なくとも1種で置換されていてもよい。Xa8は−O−、−S−、−SO−、−SO−、−NH−、−NR15a−、−CO−、−COO−、−CONH−、炭素数1〜3のアルキレン基、又はフェニレン基を表す。nは括弧内の構造の繰り返し単位数を表す。n+1個のXa7及びn個のXa8はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。R15aは前述の定義と同じである。
【0064】
a6−はオニウムの対イオンである。その個数は1分子当たりn+1であり、そのうち少なくとも1個は下記一般式(a17)で表されるフッ素化アルキルフルオロリン酸アニオンであって、残りは他のアニオンであってもよい。
【0065】
【化15】

【0066】
上記一般式(a17)中、R16aは水素原子の80%以上がフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。tはその個数を示し、1〜5の整数である。t個のR16aはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0067】
上記一般式(a15)で表されるオニウムイオンの好ましい具体例としては、トリフェニルスルホニウム、トリ−p−トリルスルホニウム、4−(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム、ビス[4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド、ビス〔4−{ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]スルホニオ}フェニル〕スルフィド、ビス{4−[ビス(4−フルオロフェニル)スルホニオ]フェニル}スルフィド、4−(4−ベンゾイル−2−クロロフェニルチオ)フェニルビス(4−フルオロフェニル)スルホニウム、4−(4−ベンゾイルフェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム、7−イソプロピル−9−オキソ−10−チア−9,10−ジヒドロアントラセン−2−イルジ−p−トリルスルホニウム、7−イソプロピル−9−オキソ−10−チア−9,10−ジヒドロアントラセン−2−イルジフェニルスルホニウム、2−[(ジフェニル)スルホニオ]チオキサントン、4−[4−(4−tert−ブチルベンゾイル)フェニルチオ]フェニルジ−p−トリルスルホニウム、4−(4−ベンゾイルフェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム、ジフェニルフェナシルスルホニウム、4−ヒドロキシフェニルメチルベンジルスルホニウム、2−ナフチルメチル(1−エトキシカルボニル)エチルスルホニウム、4−ヒドロキシフェニルメチルフェナシルスルホニウム、オクタデシルメチルフェナシルスルホニウム、ジフェニルヨードニウム、ジ−p−トリルヨードニウム、ビス(4−ドデシルフェニル)ヨードニウム、ビス(4−メトキシフェニル)ヨードニウム、(4−オクチルオキシフェニル)フェニルヨードニウム、ビス(4−デシルオキシ)フェニルヨードニウム、4−(2−ヒドロキシテトラデシルオキシ)フェニルフェニルヨードニウム、4−イソプロピルフェニル(p−トリル)ヨードニウム、又は4−イソブチルフェニル(p−トリル)ヨードニウムが挙げられる。
【0068】
上記一般式(a15)のアニオン成分は、上記一般式(a17)で表されるフッ素化アルキルフルオロリン酸アニオンを少なくとも1個有する。残りのアニオン成分は他のアニオンであってよい。他のアニオンとしては、特に限定されず、従来公知のアニオンを用いることができる。例えば、F、Cr、Br、Iなどのハロゲンイオン;OH;ClO;FSO、ClSO、CHSO、CSO、CFSOなどのスルホン酸イオン類;HSO、SO2−などの硫酸イオン類;HCO、CO2−などの炭酸イオン類;HPO、HPO2−、PO3−などのリン酸イオン類;PF、PFOHなどのフルオロリン酸イオン類;BF、B(C、B(CCFなどのホウ酸イオン類;AlCl;BiFなどが挙げられる。その他、SbF、SbFOHなどのフルオロアンチモン酸イオン類、あるいはA、AsFOHなどのフルオロヒ素酸イオン類も挙げられるが、これらは毒性の元素を含むため好ましくない。
【0069】
上記一般式(a17)で表されるフッ素化アルキルフルオロリン酸アニオンにおいて、R16aはフッ素原子で置換されたアルキル基を表し、好ましい炭素数は1〜8、さらに好ましい炭素数は1〜4である。アルキル基の具体例としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、オクチルなどの直鎖アルキル基;イソプロピル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチルなどの分岐アルキル基;さらにシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクヘキシルなどのシクロアルキル基などが挙げられ、アルキル基の水素原子がフッ素原子に置換された割合は、通常、80%以上、好ましくは90%以上、さらに好ましくは100%である。フッ素原子の置換率が80%未満である場合には、上記一般式(a15)で表されるオニウムフッ素化アルキルフルオロリン酸塩の酸強度が低下する。
【0070】
特に好ましいR16aは、炭素数が1〜4、かつフッ素原子の置換率が100%の直鎖状又は分岐状のパーフルオロアルキル基であり、具体例としては、CF、CFCF、(CFCF、CFCFCF、CFCFCFCF、(CFCFCF、CFCF(CF)CF、(CFCが挙げられる。R16aの個数tは、1〜5の整数であり、好ましくは2〜4、特に好ましくは2又は3である。
【0071】
好ましいフッ素化アルキルフルオロリン酸アニオンの具体例としては、[(CFCFPF、[(CFCFPF、[((CFCF)PF、[((CFCF)PF、[(CFCFCFPF、[(CFCFCFPF、[((CFCFCFPF、[((CFCFCFPF、[(CFCFCFCFPF、又は[(CFCFCFPFが挙げられ、これらのうち、[(CFCFPF、[(CFCFCFPF、[((CFCF)PF、[((CFCF)PF、[((CFCFCFPF、又は[((CFCFCFPFが特に好ましい。
【0072】
上記一般式(a15)で表されるオニウムフッ素化アルキルフルオロリン酸塩のうち、下記一般式(a18)で表されるジフェニル[4−(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムトリフルオロトリスフルオロアルキルホスファートが特に好ましく用いられる。
【0073】
【化16】

【0074】
上記一般式(a18)中、uは1〜8の整数であり、好ましくは1〜4の整数である。
【0075】
上記(A)成分の光酸発生剤として、好ましくは一般式(a2)、(a18)の中から選ばれる少なくとも1種を用いるものであって、一般式(a2)中、好ましいnの値は2であり、また、好ましいR4aは、2価の炭素数1〜8の置換若しくは非置換のアルキレン基、又は置換若しくは非置換の芳香族基であり、また、好ましいR5aは、炭素数1〜8の置換若しくは非置換のアルキル基、又は置換若しくは非置換のアリ−ル基である。
【0076】
上述したような(A)成分は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0077】
(A)成分の含有量は、厚膜用化学増幅型ポジ型ホトレジスト組成物の固形分中、0.05〜5質量%とすることが好ましい。(A)成分の配合量を0.05質量%以上とすることによって充分な感度が得られるようになり、また、5質量%以下とすることによって溶剤に対する溶解性が向上して均一な溶液が得られ、保存安定性が向上する傾向がある。
【0078】
<(B)酸の作用によりアルカリに対する溶解性が増大する樹脂>
本発明の厚膜用ポジ型化学増幅型ホトレジスト組成物に用いられる(B)酸の作用によりアルカリに対する溶解性が増大する樹脂(以下、(B)成分という。)は、(B1)下記一般式(b1):
【化17】

(式(b1)中、R1bは水素原子又はメチル基を表す。)
で表される構成単位を含む樹脂を含有するものである。
【0079】
(B1)構成単位としては、上記一般式(b1)で表される構成単位のうち1種を用いてもよいが、構造の異なる2種以上の構成単位を用いてもよい。(B)成分は、この(B1)構成単位を有することから、酸による脱保護反応が進行しやすく、より高感度化が実願可能となる。
【0080】
また、(B)成分は、前記(B1)構成単位及び(B2)下記一般式(b2):
【化18】

(式(b2)中、R2bは水素原子又はメチル基、R3bは低級アルキル基を表し、Xb1はそれが結合している炭素原子と共に炭素数5〜20の炭化水素環を形成する。)
で表される構成単位を含む共重合体からなる樹脂、又は、前記(B1)構成単位を含む樹脂と前記(B2)構成単位を含む樹脂との混合樹脂を含有することが好ましい。
【0081】
上記一般式(b2)中、R3bで表される低級アルキル基は、直鎖状及び分岐状のいずれであってもよく、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、各種ペンチルなどの各基が挙げられる。これらの中でも、高コントラストで、解像度、焦点深度幅などが良好な点から、炭素数2〜4の低級アルキル基が好適である。
【0082】
また、Xb1はそれが結合している炭素原子と共に炭素数5〜20の単環式又は多環式の炭化水素環を形成する。単環式炭化水素環としては、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタンなどを例示することができる。多環式炭化水素環としては、2環式炭化水素環、3環式炭化水素環、4環式炭化水素環などを例示することができる。具体的には、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカンなどの多環式炭化水素環などが挙げられる。Xb1が、それが結合している炭素原子と共に形成する、炭素数5〜20の炭化水素環としては、上記のうち特にシクロヘキサン環及びアダマンタン環が好ましい。
【0083】
このような、上記一般式(b2)で表される構成単位の好ましい具体例としては、下記のものを挙げることができる。
【0084】
【化19】

【0085】
このような一般式(b2)で表される構成単位としては、上記一般式(b2)で表される構成単位のうち1種を用いてもよいが、構造の異なる2種以上の構成単位を用いてもよい。(B)成分は、この(B2)構成単位を有するため、露光前後のアルカリに対する溶解変化(コントラスト)が高い。
【0086】
さらに、(B)成分に含有される樹脂は、(B1)構成単位及び(B2)構成単位の他に、(B3)エーテル結合を有する重合性化合物から誘導された構成単位を含むことが好ましい。このような(B3)構成単位を含むことによって、現像時の基板との密着性、耐メッキ液性が良好となる。
【0087】
(B3)構成単位は、エーテル結合を有する重合性化合物から誘導された構成単位である。エーテル結合を有する重合性化合物としては、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートなどのエーテル結合及びエステル結合を有する(メタ)アクリル酸誘導体などのラジカル重合性化合物を例示することができ、好ましくは、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレートである。これらの化合物は単独又は2種以上組み合わせて使用できる。
【0088】
さらに、(B)成分に含有される樹脂は、物理的、化学的特性を適度にコントロールする目的で他の重合性化合物を構成単位として含むことができる。ここで「他の重合性化合物」とは、前出の(B1)構成単位、(B2)構成単位、及び(B3)構成単位以外の重合性化合物の意味である。このような重合性化合物としては、公知のラジカル重合性化合物や、アニオン重合性化合物が挙げられる。例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸などのモノカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などのジカルボン酸、2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸、2−メタクリロイルオキシエチルマレイン酸、2−メタクリロイルオキシエチルフタル酸、2−メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸などのカルボキシル基及びエステル結合を有するメタクリル酸誘導体などのラジカル重合性化合物;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル類;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル類;フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸アリールエステル類;マレイン酸ジエチル、フマル酸ジブチルなどのジカルボン酸ジエステル類;スチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレン、クロロメチルスチレン、ビニルトルエン、ヒドロキシスチレン、α−メチルヒドロキシスチレン、α−エチルヒドロキシスチレンなどのビニル基含有芳香族化合物;酢酸ビニルなどのビニル基含有脂肪族化合物;ブタジエン、イソプレンなどの共役ジオレフィン類;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのニトリル基含有重合性化合物;塩化ビニル、塩化ビニリデンなどの塩素含有重合性化合物;アクリルアミド、メタクリルアミドなどのアミド結合含有重合性化合物を挙げることができる。
【0089】
さらに、このような(B)成分としては、本発明の効果に支障を来たさない範囲であれば、上記以外の公知の酸の作用によりアルカリに対する溶解性が増大する樹脂を配合した共重合体、あるいは混合樹脂としてもよい。
【0090】
(B)成分の全構成単位に対する(B1)構成単位の含有量は、メッキ耐性等に悪影響を及ぼさず、かつ高感度化を実現できるという観点から、0.1〜20モル%とすることが好ましく、さらには1〜10モル%とすることが好ましい。
【0091】
(B)成分の全構成単位に対する(B2)構成単位の含有量は、30〜55モル%とすることが好ましく、さらには35〜55モル%とすることが好ましい。
【0092】
また、(B)成分の全構成単位に対する(B1)構成単位及び(B2)構成単位の合計含有量は、30〜60モル%とすることが好ましく、さらには35〜55モル%とすることが好ましい。
【0093】
また、(B)成分に含有される樹脂のポリスチレン換算質量平均分子量(以下、質量平均分子量という。)は、好ましくは10,000〜600,000であり、より好ましくは50,000〜600,000であり、さらに好ましくは230,000〜550,000である。質量平均分子量を上記範囲とすることにより、所望とする剥離性能、膜強度、及びクラック耐性が得られ、さらに高感度化が実現可能である。
【0094】
さらに、(B)成分に含有される樹脂は、分散度が1.05以上であることが好ましい。ここで、分散度とは、質量平均分子量を数平均分子量で除した値のことである。分散度を上記範囲内とすることにより、所望とするメッキに対する応力耐性が得られる。
【0095】
(B)成分の含有量は、(B)成分及び(C)成分の合計質量100質量部に対し、5〜95質量部、好ましくは10〜90質量部とされる。5質量部以上とすることにより、メッキ時にクラックが発生しにくくなるため好ましく、95質量部以下とすることにより感度が向上する傾向があるため好ましい。
【0096】
<(C)アルカリ可溶性樹脂>
本発明の厚膜用化学増幅型ポジ型ホトレジスト組成物に用いられる(C)アルカリ可溶性樹脂(以下、(C)成分という。)としては、(C1)ノボラック樹脂、(C2)ポリヒドロキシスチレン樹脂、(C3)アクリル樹脂、及び(C4)ポリビニル樹脂の中から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0097】
[(C1)ノボラック樹脂]
(C1)ノボラック樹脂としては、質量平均分子量が1,000〜50,000であることが好ましい。
【0098】
このような(C1)ノボラック樹脂は、例えばフェノール性水酸基を持つ芳香族化合物(以下、単に「フェノール類」と称する)とアルデヒド類とを酸触媒下で付加縮合させることにより得られる。この際に使用されるフェノール類としては、例えばフェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、o−エチルフェノール、m−エチルフェノール、p−エチルフェノール、o−ブチルフェノール、m−ブチルフェノール、p−ブチルフェノール、2,3−キシレノール、2,4−キシレノール、2,5−キシレノール、2,6−キシレノール、3,4−キシレノール、3,5−キシレノール、2,3,5−トリメチルフェノール、3,4,5−トリメチルフェノール、p−フェニルフェノール、レゾルシノール、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、ピロガロール、フロログリシノール、ヒドロキシジフェニル、ビスフェノールA、没食子酸、没食子酸エステル、α−ナフトール、β−ナフトールなどが挙げられる。
【0099】
また、アルデヒド類としては、例えばホルムアルデヒド、フルフラール、ベンズアルデヒド、ニトロベンズアルデヒド、アセトアルデヒドなどが挙げられる。付加縮合反応時の触媒は、特に限定されるものではないが、例えば酸触媒では、塩酸、硝酸、硫酸、蟻酸、シュウ酸、酢酸などが使用される。
【0100】
本発明においては、o−クレゾールを使用すること、樹脂中の水酸基の水素原子を他の置換基に置換すること、あるいは嵩高いアルデヒド類を使用することにより、樹脂の柔軟性を一層向上させることが可能である。
【0101】
[(C2)ポリヒドロキシスチレン樹脂]
(C2)ポリヒドロキシスチレン樹脂としては、質量平均分子量が1,000〜50,000であることが好ましい。
【0102】
このような(C2)ポリヒドロキシスチレン樹脂を構成するヒドロキシスチレン系化合物としては、p−ヒドロキシスチレン、α−メチルヒドロキシスチレン、α−エチルヒドロキシスチレンなどが挙げられる。さらに、(C2)ポリヒドロキシスチレン樹脂は、スチレン樹脂との共重合体とすることが好ましく、このようなスチレン樹脂を構成するスチレン系化合物としては、スチレン、クロロスチレン、クロロメチルスチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレンなどが挙げられる。
【0103】
[(C3)アクリル樹脂]
(C3)アクリル樹脂としては、質量平均分子量が50,000〜800,000であることが好ましい。
【0104】
このような(C3)アクリル樹脂としては、エーテル結合を有する重合性化合物から誘導されたモノマー、及びカルボキシル基を有する重合性化合物から誘導されたモノマーを含有することが好ましい。
【0105】
上記エーテル結合を有する重合性化合物としては、2−メトキシエチル(メタ)アクリラート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリラート、3−メトキシブチル(メタ)アクリラート、エチルカルビトール(メタ)アクリラート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリラート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリラート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリラートなどのエーテル結合及びエステル結合を有する(メタ)アクリル酸誘導体などを例示することができ、好ましくは、2−メトキシエチルアクリラート、メトキシトリエチレングリコールアクリラートである。これらの化合物は、単独で使用することも、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0106】
上記カルボキシル基を有する重合性化合物としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸などのモノカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などのジカルボン酸、2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸、2−メタクリロイルオキシエチルマレイン酸、2−メタクリロイルオキシエチルフタル酸、2−メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸などのカルボキシル基及びエステル結合を有する化合物などを例示することができ、好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸である。これらの化合物は、単独で使用することも、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0107】
[(C4)ポリビニル樹脂]
(C4)ポリビニル樹脂としては、質量平均分子量が10,000〜200,000であることが好ましく、50,000〜100,000であることがより好ましい。
【0108】
このような(C4)ポリビニル樹脂は、ポリ(ビニル低級アルキルエーテル)であり、下記一般式(c1)で表されるビニル低級アルキルエーテルの単独又は2種以上の混合物を重合することにより得られる(共)重合体からなる。
【0109】
【化20】

【0110】
上記一般式(c1)において、R1cは炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルキル基である。
【0111】
このような(C4)ポリビニル樹脂は、ビニル系化合物から得られる重合体であり、このようなポリビニル樹脂としては、具体的には、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリヒドロキシスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニル安息香酸、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルエチルエーテル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルフェノール、及びこれらの共重合体などが挙げられる。中でも、ガラス転移点の低さに鑑みてポリビニルメチルエーテルが好ましい。
【0112】
このような(C)成分の含有量は、上記(B)成分100質量部に対して、5〜95質量部とすることが好ましく、より好ましくは10〜90質量部とされる。5質量部以上とすることによりクラック耐性を向上させることができ、95質量部以下とすることにより現像時の膜減りを防ぐことができる傾向がある。
【0113】
<(D)酸拡散制御剤>
本発明の厚膜用化学増幅型ポジ型ホトレジスト組成物には、レジストパターン形状、引き置き安定性などの向上のために、さらに(D)酸拡散制御剤(以下、(D)成分という。)を含有させることが好ましい。(D)成分としては、従来化学増幅型レジストにおける酸拡散制御剤として公知のものの中から任意のものを適宜選択して用いることができる。特に、(D1)含窒素化合物を含有させることが好ましく、さらに必要に応じて、(D2)有機カルボン酸又はリンのオキソ酸若しくはその誘導体を含有させることができる。
【0114】
(D1)含窒素化合物:
(D1)成分である含窒素化合物としては、例えば、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリベンジルアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、n−ヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、n−オクチルアミン、n−ノニルアミン、エチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノジフェニルアミン、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、プロピオンアミド、ベンズアミド、ピロリドン、N−メチルピロリドン、メチルウレア、1,1−ジメチルウレア、1,3−ジメチルウレア、1,1,3,3−テトラメチルウレア、1,3−ジフェニルウレア、イミダゾール、ベンズイミダゾール、4−メチルイミダゾール、8−オキシキノリン、アクリジン、プリン、ピロリジン、ピペリジン、2,4,6−トリ(2−ピリジル)−S−トリアジン、モルホリン、4−メチルモルホリン、ピペラジン、1,4−ジメチルピペラジン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンなどを挙げることができる。これらのうち、特にトリエタノールアミンのようなアルカノールアミンが好ましい。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0115】
(D1)成分は、(B)成分及び(C)成分の合計質量100質量部に対して、通常0〜5質量部の範囲で用いられ、特に0〜3質量部の範囲で用いられることが好ましい。
【0116】
(D2)有機カルボン酸又はリンのオキソ酸若しくはその誘導体:
有機カルボン酸としては、例えば、マロン酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、安息香酸、サリチル酸などが好適であり、特にサリチル酸が好ましい。リンのオキソ酸若しくはその誘導体としては、リン酸、リン酸ジ‐n‐ブチルエステル、リン酸ジフェニルエステルなどのリン酸又はそれらのエステルのような誘導体、ホスホン酸、ホスホン酸ジメチルエステル、ホスホン酸‐ジ‐n‐ブチルエステル、フェニルホスホン酸、ホスホン酸ジフェニルエステル、ホスホン酸ジベンジルエステルなどのホスホン酸及びそれらのエステルのような誘導体、ホスフィン酸、フェニルホスフィン酸などのホスフィン酸及びそれらのエステルのような誘導体が挙げられ、これらの中で特にホスホン酸が好ましい。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0117】
(D2)成分は、(B)成分及び(C)成分の合計質量100質量部に対して、通常0〜5質量部の範囲で用いられ、特に0〜3質量部の範囲で用いられることが好ましい。また、(D2)成分は、(D1)成分に対して同量用いられることが好ましい。これは、(D2)成分と(D1)成分とが塩を形成して安定化するためである。
【0118】
本発明の厚膜用化学増幅型ポジ型ホトレジスト組成物には、本質的な特性を損なわない範囲で、さらに所望により混和性のある添加物、例えばレジスト膜の性能を改良するための付加的樹脂、可塑剤、接着助剤、安定剤、着色剤、界面活性剤、増感剤などの慣用されているものを添加含有させることができる。
【0119】
さらに、本発明の厚膜用化学増幅型ポジ型ホトレジスト組成物には、粘度調整のため有機溶剤を適宜配合することができる。有機溶剤としては具体的には、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソアミルケトン、2−ヘプタノンなどのケトン類;エチレングリコール、エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノアセテート、ジプロピレングリコール、及びジプロピレングリコールモノアセテートのモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテル、又はモノフェニルエーテルなどの多価アルコール類及びその誘導体;ジオキサンのような環式エーテル類;蟻酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ピルビン酸メチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、ピルビン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸メチル、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテートなどのエステル類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類を挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0120】
例えばスピンコート法を用いて、好ましくは5μm以上の膜厚を得るためには、これらの溶剤の使用量は、厚膜用化学増幅型ポジ型ホトレジスト組成物における固形分濃度が30質量%から65質量%になる範囲とすることが好ましい。固形分濃度が30質量%未満の場合は、接続端子の製造に好適な厚膜を得ることが困難であり、65質量%を超えると組成物の流動性が著しく悪化し、取り扱いが困難な上、スピンコート法では、均一なレジストフィルムが得られにくい。
【0121】
本発明の厚膜用化学増幅型ポジ型ホトレジスト組成物の調製は、例えば、上記各成分を通常の方法で混合、攪拌するだけでよく、必要に応じ、ディゾルバー、ホモジナイザー、3本ロールミルなどの分散機を用いて分散、混合させてもよい。また、混合した後で、さらにメッシュ、メンブレンフィルターなどを用いて濾過してもよい。
【0122】
本発明の厚膜用化学増幅型ポジ型ホトレジスト組成物は、支持体上に、5〜150μm、より好ましくは10〜120μm、さらに好ましくは10〜100μmの膜厚の厚膜ホトレジスト層を形成するのに適している。この厚膜ホトレジスト積層体は、支持体上に本発明の厚膜用化学増幅型ポジ型ホトレジスト組成物からなる厚膜ホトレジスト層が積層されているものである。
【0123】
支持体としては、特に限定されず、従来公知のものを用いることができ、例えば、電子部品用の基板や、これに所定の配線パターンが形成されたものなどを例示することができる。この基板としては、例えば、シリコン、窒化シリコン、チタン、タンタル、パラジウム、チタンタングステン、銅、クロム、鉄、アルミニウムなどの金属製の基板やガラス基板などが挙げられる。配線パターンの材料としては、例えば銅、ハンダ、クロム、アルミニウム、ニッケル、金などが用いられる。
【0124】
上記のような厚膜ホトレジスト積層体は、例えば以下のようにして製造することができる。すなわち、上述したように調製した厚膜用化学増幅型ポジ型ホトレジスト組成物の溶液を支持体上に塗布し、加熱により溶媒を除去することによって所望の塗膜を形成する。支持体上への塗布方法としては、スピンコート法、スリットコート法、ロールコート法、スクリーン印刷法、アプリケーター法などの方法を採用することができる。本発明の組成物の塗膜のプレベーク条件は、組成物中の各成分の種類、配合割合、塗布膜厚などによって異なるが、通常は70〜150℃、好ましくは80〜140℃で、2〜60分間程度である。
【0125】
厚膜ホトレジスト層の膜厚は、5〜150μm、好ましくは10〜120μm、より好ましくは10〜100μmの範囲である。
【0126】
そして、このようにして得られた厚膜ホトレジスト積層体を用いてレジストパターンを形成するには、得られた厚膜ホトレジスト層に、所定のパターンのマスクを介して、活性光線又は放射線、例えば波長が300〜500nmの紫外線又は可視光線を選択的に照射(露光)する。
【0127】
ここで、活性光線とは、酸を発生するために酸発生剤を活性化させる光線を意味する。放射線の線源としては、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、アルゴンガスレーザーなどを用いることができる。また、放射線とは、紫外線、可視光線、遠紫外線、X線、電子線、イオン線などを意味する。放射線照射量は、組成物中の各成分の種類、配合量、塗膜の膜厚などによって異なるが、例えば超高圧水銀灯使用の場合、100〜10,000mJ/cmである。
【0128】
そして、露光後、公知の方法を用いて加熱することにより酸の拡散を促進させて、この露光部分の厚膜ホトレジスト層のアルカリ溶解性を変化させる。ついで、例えば、所定のアルカリ性水溶液を現像液として用いて、不要な部分を溶解、除去して所定のレジストパターンを得る。
【0129】
現像液としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水、エチルアミン、n−プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、ピロール、ピペリジン、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]−5−ノナンなどのアルカリ類の水溶液を使用することができる。また、前記アルカリ類の水溶液にメタノール、エタノールなどの水溶性有機溶媒や界面活性剤を適当量添加した水溶液を現像液として使用することもできる。
【0130】
現像時間は、組成物各成分の種類、配合割合、組成物の乾燥膜厚によって異なるが、通常1〜30分間であり、また現像の方法は液盛り法、ディッピング法、パドル法、スプレー現像法などのいずれでもよい。現像後は、流水洗浄を30〜90秒間行い、エアーガンや、オーブンなどを用いて乾燥させる。
【0131】
そして、このようにして得られたレジストパターンの非レジスト部(アルカリ現像液で除去された部分)に、例えばメッキなどによって金属などの導体を埋め込むことにより、メタルポストやバンプなどの接続端子を形成することができる。なお、メッキ処理方法は特に制限されず、従来から公知の各種方法を採用することができる。メッキ液としては、特にハンダメッキ、銅メッキ、金メッキ、ニッケルメッキ液が好適に用いられる。残っているレジストパターンは、最後に、定法に従って、剥離液などを用いて除去する。
【実施例】
【0132】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0133】
[合成例1]
<(B−1)酸の作用によりアルカリに対する溶解性が増大する樹脂>
下記化学式(z1)で表される(B1)構成単位45モル%、2−メトキシエチルアクリレート40モル%、nーブチルアクリレート10モル%、アクリレート5モル%を仕込み、重合を行うことにより、質量平均分子量200,000の(Z−1)樹脂を得た。
【化21】

【0134】
[合成例2]
<(B−2)酸の作用によりアルカリに対する溶解性が増大する樹脂>
下記化学式(z2)で表される(B2)構成単位45モル%、2−メトキシエチルアクリレート40モル%、nーブチルアクリレート10モル%、アクリレート5モル%を仕込み、重合を行うことにより、質量平均分子量200,000の(Z−2)樹脂を得た。
【化22】

【0135】
[実施例1]
以下の各成分をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに混合して均一溶液とした後、孔径1μmのメンブレンフィルターを通して濾過し、固形分質量濃度40質量%の厚膜用化学増幅型ポジ型レジスト組成物を調製した。
【0136】
(A)成分:
下記化学式(z3)で表される化合物(K−1S(商品名):サンアプロ社製) ;1質量部
【化23】

(B)成分:
(Z−1)樹脂と(Z−2)樹脂とを1:99のモル比で混合したアクリル樹脂 ;40質量部
(C)成分:
m−クレゾールとp−クレゾールとをホルムアルデヒド及び酸触媒の存在下で付加縮合して得たノボラック樹脂 ;60質量部
その他の成分:
増感剤:1,5−ジヒドロキシナフタレン ;1質量部
【0137】
[実施例2〜4、比較例1]
(B)成分における(Z−1)樹脂と(Z−2)樹脂との混合比を表1のように変更したほかは、実施例1と同様にして厚膜用化学増幅型ポジ型レジスト組成物を調製した。
【0138】
<露光特性評価>
5インチの金基板上に、上記実施例1〜4、比較例1で調製した各組成物をスピンナー塗布した後、乾燥して約20μmの膜厚を有する厚膜ホトレジスト層を得た。この厚膜ホトレジスト層をホットプレートにより130℃で6分間プレベークした。プレベーク後、PLA−501F(コンタクトアライナー:キャノン社製)を用い、スペース20μmのホールパターンのマスクを介して、パターン露光を行い、ホットプレートにより74℃で5分間の露光後加熱(PEB)を行った。その後、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(NMD−W:東京応化工業社製)を用いた浸漬法により、5分間の現像処理を行い、流水洗浄し、窒素ブローしてパターン状硬化物を得た。これを顕微鏡で観察し、レジストパターンを形成するのに必要な最低限の露光量を測定した。また、スペース20μmのマスクに対応したパターン状硬化物間の距離を測定した。結果を表1に示す。
【0139】
<形状評価>
上記の露光特性評価で得られたレジストパターンを顕微鏡で観察し、テーパー角を求めた。結果を表1に示す。
【0140】
【表1】

【0141】
表1に示される通り、(B1)構成単位を有する実施例1〜4の厚膜用化学増幅型ポジ型レジスト組成物は、比較例1の厚膜用化学増幅型ポジ型レジスト組成物よりも高感度であった。例えば(Z−1)樹脂を10モル%混合することにより、(Z−2)樹脂単独の場合の2倍の感度が得られた。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に、膜厚5〜150μmの厚膜ホトレジスト層を形成するために用いられる厚膜用化学増幅型ポジ型ホトレジスト組成物であって、
(A)活性光線又は放射線照射により酸を発生する化合物、(B)酸の作用によりアルカリに対する溶解性が増大する樹脂、及び(C)アルカリ可溶性樹脂を含有し、
前記(B)成分が、(B1)下記一般式(b1):
【化1】

(式(b1)中、R1bは水素原子又はメチル基を表す。)
で表される構成単位を含む樹脂を含有することを特徴とする厚膜用化学増幅型ポジ型ホトレジスト組成物。
【請求項2】
前記(B)成分が、前記(B1)構成単位及び(B2)下記一般式(b2):
【化2】

(式(b2)中、R2bは水素原子又はメチル基、R3bは低級アルキル基を表し、Xb1はそれが結合している炭素原子と共に炭素数5〜20の炭化水素環を形成する。)
で表される構成単位を含む共重合体からなる樹脂、又は、前記(B1)構成単位を含む樹脂と前記(B2)構成単位を含む樹脂との混合樹脂を含有することを特徴とする厚膜用化学増幅型ポジ型ホトレジスト組成物。
【請求項3】
前記(B)成分の全構成単位に対して、前記(B1)構成単位を0.1〜20モル%の割合で含むことを特徴とする請求項1又は2記載の厚膜用化学増幅型ポジ型ホトレジスト組成物。
【請求項4】
前記(B)成分の全構成単位に対して、前記(B1)構成単位及び前記(B2)構成単位を30〜60モル%の割合で含むことを特徴とする請求項2又は3記載の厚膜用化学増幅型ポジ型ホトレジスト組成物。
【請求項5】
前記(B)成分及び(C)成分の合計質量100質量部に対して、前記(A)成分を0.1〜20質量部、前記(B)成分を5〜95質量部、及び前記(C)成分を5〜95質量部の割合で含有することを特徴とする請求項1から4いずれか記載の厚膜用化学増幅型ポジ型ホトレジスト組成物。
【請求項6】
前記(C)成分が、(C1)ノボラック樹脂、(C2)ポリヒドロキシスチレン樹脂、(C3)アクリル樹脂、及び(C4)ポリビニル樹脂から選ばれる1種以上の樹脂を含有することを特徴とする請求項1から5いずれか記載の厚膜用化学増幅型ポジ型ホトレジスト組成物。
【請求項7】
さらに、(D)酸拡散制御剤を含有することを特徴とする請求項1から6いずれか記載の厚膜用化学増幅型ポジ型ホトレジスト組成物。
【請求項8】
支持体と、請求項1から7いずれか記載の厚膜用化学増幅型ポジ型ホトレジスト組成物からなる膜厚5〜150μmの厚膜ホトレジスト層とが積層された厚膜ホトレジスト積層体を得る積層工程と、該厚膜ホトレジスト積層体に選択的に活性光線又は放射線を照射する露光工程と、該露光工程後に現像して厚膜レジストパターンを得る現像工程とを含むことを特徴とする厚膜レジストパターンの製造方法。


【公開番号】特開2008−151953(P2008−151953A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−338854(P2006−338854)
【出願日】平成18年12月15日(2006.12.15)
【出願人】(000220239)東京応化工業株式会社 (1,407)
【Fターム(参考)】